第1の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、前記ウェーブレット変換器により変換された後の信号を使用して各サブキャリア帯域での狭帯域雑音の有無を検出するノイズ検出器と、前記等化器から出力される信号と前記ノイズ検出器から出力される狭帯域雑音の有無情報を用いて送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有することとしたものである。この構成により、電力線伝送路の狭帯域雑音による変動に対して十分に追従することが可能となり、結果として伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第2の発明は、ノイズ検出器は、前記ウェーブレット変換器により変換された後の信号の出力が所定の値を超えている場合、狭帯域ノイズであると判断することとしたものである。この構成により、電力線伝送路の狭帯域雑音による変動に対して十分に追従することが可能となり、結果として伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第3の発明は、ノイズ検出器によりノイズ有りと判定された場合、前記伝送路推定器は判定されたサブキャリアを不使用とすることとしたものである。この構成により、電力線伝送路の狭帯域雑音による変動に対して十分に追従することが可能となり、結果として伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第4の発明は、受信装置は受信した信号を自動的に利得を調節するAGC回路をさらに有し、前記ノイズ検出器は、前記AGC回路からの出力により、利得の変動が所定の値を超えた場合、広帯域のノイズがあると判定することとしたものである。この構成により、電力線伝送路の広帯域雑音による変動に対して十分に追従することが可能となり、結果として伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第5の発明は、伝送路として電力線を用いる場合に、前記伝送路推定器は、電源周期期間連続して伝送路推定用フレームを使用して電源周期1周期分の伝送路推定を行い、どのタイミングで雑音による変動や伝送路変動が起きたのかを把握し、その区間では信号を出さないようにするもしくは送信装置のシンボルマッパの一次変調の多値度を下げる、あるいは周波数ダイバーシチあるいは時間ダイバーシチあるいは両方のダイバーシチを用いることによって全体の伝送効率を向上させることができる。このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となり、効率よく信号を送受信することができるという作用を有する。
第6の発明は、前記伝送路推定器は、各サブキャリアにおいて変動の影響があるしきい値よりも小さい場合は、変動があっても使用することにより良好な伝送効率を維持するようにする。このような構成にすることにより、さらに伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第7の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、送信装置から送られる送信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器と、前記等化器から出力される信号と前記判定器から出力される判定値を用いて送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器とを有することとしたものである。このような構成により、通常の伝送路推定専用フレームとデータフレームを使用した伝送路推定を行うことができるため、結果として伝送効率を高めることができる。
第8の発明は、前記伝送路推定器は、伝送路を推定するために必要なシンボル数よりもデータフレーム内のシンボル数が少ない場合でも正確に伝送路推定を行うこととする。このような構成により、様々なフレーム長に対応してデータフレームを使用した伝送路推定を行うことができるため、結果として伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第9の発明は、前記伝送路推定器は、伝送路推定専用フレームにおいて不使用と判断されたサブキャリアにおいてもデータフレームでは伝送路推定が行えるようにすることとした。このような構成により、伝送路推定において不使用となったサブキャリアにおいてもデータフレームにおいて伝送路推定が行えるようになり、結果として伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第10の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、伝送路推定要求に対して複数回の伝送路推定を行うこととする。このような構成にすることにより、各伝送路に合わせて伝送効率を最も高いところで維持することができるという作用を有する。
第11の発明は、前記伝送路推定器は、伝送路推定結果と前記伝送路推定器で使用するしきい値変更を組み合わせることとする。このような構成により、さらに伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第12の発明は、前記伝送路推定器は、推定の複数結果と再送を組み合わせ、各サブキャリアで得られた結果に対して、その変動が大きいサブキャリアは不使用とするあるいは得られた結果の中で最小値を選ぶこととする。このような構成により、さらに伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第13の発明は、伝送路として電力線を使用する通信装置であって、前記伝送路推定器は、伝送路推定要求に対して2回の伝送路推定を行うものとし、2回の伝送路推定のうち少なくとも1回は電源周期に同期した伝送路変動に同期しないで伝送路推定を行うこととしたので、2回の伝送路推定のうち少なくとも1回は電源周期に同期した伝送路変動に遭遇しないで伝送路推定を行うことができる。このような構成により、より伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第14の発明は、伝送路として電力線を使用する通信装置であって、前記伝送路推定器は、伝送路が周期的に変動していると判断した場合はフレームを分割することで再送されるデータ量を抑えることができる。このような構成により、より、伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第15の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、伝送路の状態と送信装置に求める伝送データ量とにより伝送路推定を行うことにする。このような構成により、伝送路含めたトータルなシステムで最適化を行うことができ、しかも安定した通信ができるという作用を有する。
第16の発明は、前伝送路推定器は、伝送路の状態と伝送したいデータのアプリケーションの種類とにより伝送路推定を行うこととする。このような構成により、伝送路含めたトータルなシステムで最適化を行うことができ、しかも安定した通信ができるという作用を有する。
第17の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、伝送路の群遅延を軽減した伝送路推定を行うこととする。このような構成にすることにより、周波数利用効率は低下するが群遅延偏差が大きい伝送路においてキャリア間干渉が大幅に軽減でき、また周波数偏差に対しても耐性があるので、システムトータルとしての伝送速度は向上できるという作用を有する。
第18の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、所望の伝送速度が得られない場合、送信装置からの送信データに冗長度を設けることにより伝送路推定を行うこととする。このような構成にすることにより、Waveletのインパルス応答長と同じ長さだけ送りたい情報に冗長度を持たせることにより、伝送効率は劣化するが位相が扱えるため遅延検波ができたり、さらに通常のデジタル通信で使われている様々な技術がDWMCに応用できたり、また一部分に適用することでもシステム性能を向上させることができるという作用を有する。
第19の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、所望伝送速度が満たせない時に送信装置が送信電力を増加させて所望伝送速度を満たそうとする場合は、送信電力の利得増加分に比例して他の既存システムの使用帯域付近のサブキャリアを不使用とすることとする。このような構成にすることにより、送信装置の送信電力を増加させても、他の既存システムへの影響を増加させることはなく、より遠くまで信号を伝送することが可能となり、しかもこれらのことが、サブキャリアを複数本不使用とするだけで柔軟に対応できるという作用を有する。
第20の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、前記等化器出力の信号を用いて求めるCINR(キャリア電力対(雑音+干渉波)電力比)と前記ウェーブレット変換後に求める伝送路のSNR(信号電力対雑音電力比)を使用して送信装置の送信電力を制御することとする。このような構成にすることにより、伝送路のSNRと伝送路推定時に得られるCINRの利得差から送信装置の送信電力を制御でき、送信装置の消費電力を抑え、他既存システムへの妨害を軽減することができるという作用を有する。
第21の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、前記ウェーブレット変換後の受信信号を用いて求められる伝送路のSNRを使用して最大伝送速度で且つ送信電力最小となるように送信装置の各サブキャリアの利得を制御することとする。このような構成にすることにより、さらに伝送速度を向上させることができるという作用を有する。
第22の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、前記等化器出力の信号を用いて求められるCINRを使用して送信装置の各サブキャリアの利得を制御することとする。このような構成により、伝送路推定を複数回行わなければならないが、電力線通信装置で簡単な手順で送信装置の送信電力制御ができるという作用を有する。
第23の発明は、デジタルウェーブレットマルチキャリア変調処理を行う通信装置であって、受信装置は受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、受信信号をウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、受信信号を検出するためのキャリア検出器と、受信信号に同期するための同期回路と、伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器と、伝送路推定を行った結果を利用して、送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、前記等化器から出力される信号を使用して判定を行う判定器とを有するとともに、前記伝送路推定器は、前記ウェーブレット変換後の受信信号を用いて求められる受信レベルを使用して全サブキャリアの中からMAXレベルを抽出し、offsetレベルを設定して(MAXレベル−offsetレベル)以上のレベルで受信されているサブキャリアの利得を一律βだけ下げる、あるいはそれらのサブキャリアを不使用とすることとする。このような構成にすることにより、受信装置のダイナミックレンジ不足による伝送速度劣化を改善でき、複雑な伝送路でにおいても伝送速度を向上させることができるという作用を有する。
第24の発明は、伝送路推定器を有する受信装置と、受信装置から送信される伝送路推定結果に基づく情報を使用して送信データフレームを決定する送信装置とを有する通信装置であって、前記送信装置は、前記伝送路推定器から得た伝送路推定結果に基づく情報を情報信号の先頭に置いた送信データフレームを送信することとする。このような構成にすることにより、TMI信号をはじめに処理することが可能となるため、TMIの情報を使って情報信号の処理をすばやく行うことができる。
第25の発明は、前記送信装置は、伝送路推定結果に基づく情報を情報信号の先頭に置くとともに、伝送路推定結果に基づく情報にダイバーシティ処理を施すこととする。このような構成にすることにより、システムディレイが小さく、高耐性を持つTMI信号を生成できる。
第26の発明は、複数のサブキャリアを有するマルチキャリア信号を電力線に重畳して通信を行う通信装置であって、前記複数のサブキャリアのうち少なくとも1つのサブキャリアをウェーブレット変換して同相信号および直交信号を生成するウェーブレット変換器と、前記ウェーブレット変換器により生成された同相信号および直交信号の歪みを補正する等化器と、前記等化器により歪みが補正された同相信号および直交信号のノイズ量を検出し、検出されたノイズ量に基づいて、前記少なくとも1つのサブキャリアに使用する一次変調の多値度を決定する伝送路推定器と、を有する。
この構成により、電力線伝送路の狭帯域雑音による変動に対して十分に追従することが可能となり、結果として伝送効率を高めることができるという作用を有する。
第27の発明は、前記伝送路推定器は、前記ノイズ量を検出するためのフレームを電源周期に応じて前記電力線に出力することを特徴とする。
このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となる。
第28の発明は、前記伝送路推定器は、複数の前記フレームを前記電源周期の1周期に前記電力線に出力することを特徴とする。このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となる。
第29の発明は、前記伝送路推定器は、前記電源周期の半周期毎に少なくとも1つの前記フレームを前記電力線に出力することを特徴とする。このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となる。
第30の発明は、前記伝送路推定器は、前記ノイズ量が検出された時間においては信号を出力しないことを特徴とする。このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となり、効率よく信号を送受信することができるという作用を有する。
第31の発明は、前記伝送路推定器は、前記ノイズ量が検出された時間においては、前記少なくとも1つのサブキャリアについて決定された一次変調の多値度を下げることを特徴とする。このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となり、効率よく信号を送受信することができるという作用を有する。
第32の発明は、前記伝送路推定器は、前記ノイズ量が検出された時間においては、前記少なくとも1つのサブキャリアの周波数ダイバーシチまたは時間ダイバーシチの少なくとも一方を用いることを特徴とする。このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となり、効率よく信号を送受信することができるという作用を有する。
以下、本発明の実施例について、図1〜図18を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1における受信装置を示すブロック図である。なお、送信装置は従来技術で説明を行った図19の送信装置299と同じである。
図1において、310はアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、320は受信信号をウェーブレット変換して同相信号をおよび直交信号を生成する複素ウェーブレット変換器、330は送信装置から送られてくる送信信号を検出するためのキャリア検出器、340は受信信号に同期するための同期回路、350は伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器、360は複素ウェーブレット変換後の信号を使用して各サブキャリア帯域での狭帯域雑音の有無を検出するノイズ検出器、370は等化器350から出力される信号とノイズ検出器から出力される狭帯域雑音の有無情報を用いて送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調を決定する伝送路推定器、380は等化器350から出力される信号を使用して判定を行う判定器である。
このように構成された受信装置について、その動作を図1〜図3を用いて説明する。
図2は、等化器出力信号のスキャッターを示す図、図3は、電力線伝送路における雑音特性を示す図である。
図1において受信信号をA/D変換器310ではアナログ信号からデジタル信号に変換し、複素ウェーブレット変換器320では受信したデジタル信号をウェーブレット変換し、キャリア検出器330では送信装置から送られてくる信号を検出し、同期回路340ではプリアンブル信号を用いて受信信号に同期するように複素ウェーブレット変換器320のウェーブレット変換タイミングを調整し、等化器350では伝送路の影響を除去し、ノイズ検出器360では使用帯域内に存在する狭帯域雑音を検出し、伝送路推定器370では伝送路の状況を推定して送信装置で使用するシンボルマッパの一次変調方式を決定し、判定器380では等化器350から出力される信号を使って判定を行う。
図2は、送信装置のシンボルマッパで全サブキャリア2PAMを選択した場合における受信装置の等化器出力のスキャッター(全サブキャリア分)を示している。通常伝送路推定を行う場合、伝送路推定用に既知フレームを送信装置から送信してもらい、受信装置の伝送路推定器370においては、信号点配置(2PAMの場合±1)からの分散をノイズ量としてCINR(キャリア電力対(雑音+干渉波)電力比)を測定する。各サブキャリアにおいて測定されたCINRを用いて各サブキャリアで使用する一次変調(たとえば16PAMや8PAMなど)を選択し、送信装置299へ知らせる。これが送受信装置で通常行われている伝送路推定である。
ここで電力線通信に本発明の通信方式を適用した場合について説明する。電力線通信において、使用できる帯域として2M〜30Mが考えられている。図3は、電力線通信が使用する帯域における雑音特性を示している。この帯域は電力線通信以外にもアマチュア無線や短波放送などが使用しているため、図3に示すように電力線通信にとっては狭帯域雑音としてそれら既存システムが存在する。これらの狭帯域雑音が常時存在する場合は、伝送路推定時にあるサブキャリアにおいてCINRが劣化するためその帯域と同じ帯域を使用しているサブキャリアを不使用とすることで対処可能である。またこれらの狭帯域雑音レベルが伝送路推定時に得た雑音レベル以下で常時存在すれば、狭帯域雑音が存在したりしなかったりしてもCINRは劣化しないので問題とはならない。
しかしながら、これらの狭帯域雑音が不定期にあらわれたり消えたりして伝送路推定時の雑音レベルよりも大きくなる場合などがある時は、次に行われる伝送路推定時まで誤ったり誤らなかったりと不安定になり、誤り訂正を行っていた場合においても最悪時はフレーム再送要求を行わないといけなくなり伝送効率を落としてしまうことになる。
このようなことを防ぐ目的で図1に示すようにノイズ検出を行う。具体的には複素ウェーブレット変換器320においてウェーブレット変換を行い、各サブキャリアにおける出力を測定すると、図3を反映した値が複素ウェーブレット変換器から出力される。
ここで、全サブキャリアの平均値や中央値などを求めて、その値からたとえば12dB以上大きな値を持つサブキャリアをチェックしておき、システムが不安定になる場合にはここでチェックされたサブキャリアを不使用とする。
また複素ウェーブレット変換器320の出力を使って、キャリア検出器330、同期回路340、等化器350は制御されており、これらのブロックでは全サブキャリアの値を利用して平均値などを求めて処理されている。この場合、高レベルの狭帯域雑音が入力されてそれらの回路で処理を行うと、特性が大幅に劣化することが考えられる。そのため、ノイズ検出器360においてチェックされたサブキャリアをこれらの回路で不使用とすることで高性能を維持することができる。
これらの構成により、電力線通信に本方式を適用した場合は、他システムから受ける狭帯域雑音の影響を軽減でき良好な伝送路推定が可能となり、またキャリア検出や同期精度も向上させることができる。
なお、実施例1においては複素ウェーブレット変換器320を用いているが、本発明の通信装置はこれに限定されるものではなく、各サブキャリアの位相が確認できるようなウェーブレット変換器で適用することが可能である。
各サブキャリアで位相ずれが生じない場合には、同相信号が得られるウェーブレット変換器であれば本発明の通信装置に適用することが可能である。
図4は、本発明の実施例2における受信装置を示すブロック図である。なお、送信装置は図19の送信装置299と同じである。
また図4と図1の受信装置との違いはAGC(Automatic Gain Control)回路390のみである。他の回路は図1で説明した回路と同じであるので、説明は実施例1における説明に準じる。390は受信信号の利得を自動的に調節するAGC回路である。次に図4と図5を使用して電力線通信に本方式を適用した場合についての動作を説明する。図5は、電力線伝送路において広帯域雑音が付加された場合の雑音特性を示す図である。
実施例1との違いは、AGC回路で使用している利得を含めてノイズ検出器360によるノイズ検出を行うことである。
実施例1においては狭帯域雑音の有無を検出できたが、この検出に加えてAGC回路の利得を検出することにより、本実施例1で知りえなかった広帯域雑音の影響を知ることが可能となる。図5は、時間軸において高レベルのインパルス雑音を連続して発生する電気機器の有無による電力線伝送路の振幅スペクトルを示している。
具体的には、時間軸において高レベルのインパルスノイズを発生する電気機器をONすることにより、電力線通信で使用すると思われる帯域(2Mから30M)全てで雑音レベルが増加する。このような場合、実施例1では広帯域雑音の有無は判断できないため、本実施例2における受信装置では、AGC回路390の利得を使うことにより広帯域雑音の有無を判断する。
本方式により狭帯域および広帯域雑音を検出することができ、検出した場合は再送回数などと合わせて伝送路推定を行うことにより、劣悪な電力線通信伝送路においても良好な通信が行えるようになる。
たとえば、狭帯域雑音が不規則に存在するサブキャリアは不使用とする。狭帯域ノイズが無い場合でも、ノイズ検出器360は、AGC回路390からの出力により広帯域雑音が存在し且つ通常の伝送路推定では再送が頻発してしまう時はランダムな広帯域雑音が原因でシステムが不安定になっていると考えて、伝送路推定に使用しているしきい値を緩和したり複数回伝送路推定を行ってその中で各サブキャリアにおいて最小のCINR値を使用して各サブキャリアの一次変調を決定する。このようにすることにより、様々な雑音が存在する電力線通信伝送路下でも良好な通信を行うことが可能である。
本発明の実施例2に記載の通信装置により、電力線通信に本方式を適用した場合は、他システムから受ける狭帯域雑音の影響を軽減でき、且つ電気機器などから発せられる時間軸での高レベルのインパルス雑音による広帯域雑音の影響を軽減して良好な伝送路推定が可能となる。
本発明の実施例3における受信装置の伝送路推定器を説明する。本実施例においては、通信装置の受信装置、送信装置は、実施例1あるいは2と同じ構成である。
図7は、電源周期の時間を使って伝送路推定を行う場合のフレーム構成図を示している。
次に動作について説明する。図6は、通常の伝送路推定器の動作を説明するためのフレーム構成図を示している。
通常は図6に示されるように、送受信するフレームの中に伝送路推定用フレームを付加する(図中、「CE用フレーム」が伝送路推定用フレーム)。
一般的にこのような構成の伝送路推定方法では、この伝送路推定用フレームは、伝送路が大きく変動し過去の伝送路推定結果を使用したのでは誤りが多く発生し、その結果再送が頻発するようになった時に再度不定期的に使用される。
あるいは再送が頻発してから伝送路推定を行うのでは効率が悪いので、ある最大時間を決めていてその周期に合わせて伝送路推定を行うこともある。
図6では伝送路の瞬時変動に対しては、過去の伝送路推定結果と大きく異なる場合には判定誤りが起こって再送が頻発することになるので再伝送路推定を行うことにより対処できるが、たとえば伝送路の瞬時変動が電源周期(50Hzだと20ms)あるいはその半周期(50Hzだと10ms)に同期して起こる場合はそのたびに再伝送路推定を行っていては伝送効率が大きく劣化してしまう。
このような劣化を防ぐために、本発明の実施例3における伝送路推定器370は、たとえば電源周期期間連続して伝送路推定用フレームを用いて電源周期1周期分の伝送路推定の動作を行う。
その結果、どのタイミングで雑音による変動や伝送路変動が起きたのかを把握し、その区間では信号を出さないようにするもしくは、一次変調の多値度を下げる、あるいは周波数且つ時間ダイバーシチを行ってそのフレームに耐性を持たせることなどを行うことによって全体の伝送効率を向上させることができる。
また、違う周期で起こる変動に対してはその周期に合わせて伝送路推定を行う必要がある。さらにトータルの伝送路推定時間がほぼ1周期分になるようにして連続ではなく、ランダムに伝送路推定を行うことも可能である。
このような構成により、たとえば電源周期に同期した雑音の変動や伝送路変動に対して予測することが可能となり、効率よく信号を送受信することが可能となる。
本発明の実施例4における通信装置に用いる伝送路推定器370について説明する。
本実施例では、実施例3の通信装置の構成・動作を使用してある周期において伝送路推定を行う。
さらに加えて、本実施例における伝送路推定器370は、その時、雑音の変動や伝送路の変動が1周期の間で存在するが、各サブキャリアにおいて伝送路変動の影響がしきい値よりも小さい場合(誤りに影響しない場合)は、変動があってもそのサブキャリアを使用することにより良好な伝送効率を維持するようにする。
このような構成にすることにより、実施例3における通信装置と比較してさらに伝送効率を高めることが可能となる。
本発明の実施例5における伝送路推定器について説明する。
図8に本発明の実施例5における受信装置のブロック図を示す。
なお、送信装置299は図19と同じものを使用するものとする。
使用しているブロックは番号が同じブロックは実施例1、2などで説明したものと同じ説明となるので、説明を略す。
本実施例が従来方式と異なる点は、伝送路推定器370に判定器380からの判定信号が入力されている点である。
通常は図6のように通信開始前などに一度伝送路推定を行い、次の伝送推定は伝送路が大きく変動した場合か伝送路推定を行う周期の最大時間を超えた場合などに行われる。この場合の伝送路推定フレームは専用フレームを使用するのが通常である。
しかしながら、伝送路推定回数によっては伝送効率が劣化する。よって、本方式では伝送路推定器370と判定器380を判定帰還形の回路構成にすることにより、伝送路推定時に求めるCINRにおいて判定値を使って各サブキャリアにおける判定値からの分散をCINRとして求めることで、伝送路推定フレームのみでなく通常のデータフレームにおいても伝送路推定を行うこととする。
図9は、伝送路推定専用フレームとデータフレームを使用して伝送路推定を行う場合のフレーム構成図である。
伝送路変動により通信開始時に行った伝送路推定結果とデータフレームで行っている伝送路推定との間に違いが生じてくることが考えられる。この時、伝送路推定用フレームで測定した伝送路推定結果とデータフレームで測定した伝送路推定結果において誤りが生じる程度の違いを生じた場合は送信装置299側へ伝送路推定結果の更新を依頼して伝送路推定結果を更新する。更新する場合は、データフレームで得られた結果を用いてもよいし、再度専用フレームを使用して伝送路推定を行ってもよい。なお、本実施例の受信装置の判定帰還形の回路構成を、実施例1あるいは2の受信装置に対しても適用可能である。
このような構成により、通常の伝送路推定専用フレームとデータフレームを使用した伝送路推定を行うことができるため、結果として伝送効率を高めることができる。
本発明の実施例6における通信装置に用いられる伝送路推定器について説明する。ここでは、通信装置の構成としては実施例5の通信装置の構成を使用する。実施例5と異なる点は、伝送路推定器370のデータフレームを用いた伝送路推定方法である。
伝送路推定を行う場合、雑音を平均化する目的であるシンボル以上(必要シンボル数をSとする)の平均が必要である。しかしながら、各データフレームが必ずSシンボル以上で構成されている保証はない。そのため、平均する単位はフレーム単位ではなく、Sシンボル単位としてSシンボルに到達するまでフレームが変わっても平均を続けることとする。
具体的には以下のような形で伝送路推定器は平均を行う。
一般的には、伝送路推定器は、受信装置で受信する1フレームにおいて、伝送路推定に必要なシンボル数が入っていれば、1フレームで伝送路推定を完結することができる。
しかしながら、伝送路推定用ではない通常のデータをやり取りするためのフレームを伝送路推定に使用すると、ペイロードデータ内には数シンボルしかない場合が出てくる。
そのため、複数フレームを使用して伝送路推定専用フレームを使用した場合に相当する1回の伝送路推定を行う必要がでてくる。
たとえば、1フレームは受信装置の制御に必要なプリアンブル信号と情報を送るペイロードデータ信号から構成されるとして、伝送路推定に必要なシンボル数を128としたときに、通信しているときのフレーム内に含まれている(伝送路推定に使用できる)ペイロードデータ内のシンボル数を8とする。
この場合、伝送路推定器は、受信信号を16フレーム受信することで16×8=128で、128シンボル平均した伝送路推定結果(通常の伝送路推定と同じレベル)を得ることができるようになる。
このような構成により、様々なフレーム長に対応してデータフレームを使用した伝送路推定を行うことができるため、結果として伝送効率を高めることができる。
本発明の実施例7における通信装置の伝送路推定器について説明する。本実施例の通信装置のブロック構成は、図19に示されるような従来方式あるいは実施例5において記載した通信装置のブロック構成を使用する。
本実施例においては、通信装置における受信装置の伝送路推定器370の動作が他の実施例と異なるので、以下にその動作を説明する。
伝送路として電力線を用いる通信においては既存システムの使用帯域については一部分(たとえばアマチュア無線使用帯域)のみ常に不使用としている。それ以外の帯域では、伝送路推定結果によって不使用となったサブキャリアについては信号を出さないのが通常である。
しかしながら、このままではデータフレームで伝送路推定を行う場合、不使用としているサブキャリアでは伝送路推定を行うことができない。よって、そのようなサブキャリアにおいても擬似データを与え、データフレームで伝送路推定ができるようにする。
データフレームでは判定帰還形による判定データを使用しているため、ここでの擬似データは多値度を固定しておくのが都合よく、耐性の観点から最低多値度(たとえば2PAM)を使用するのがよい。
このような構成により、伝送路推定結果によって不使用となったサブキャリアにおいてもデータフレームを用いて伝送路推定が行えるようになり、結果として伝送効率を高めることが可能となる。
本発明の実施例8における通信装置の伝送路推定器について説明する。本実施例の通信装置のブロック構成は、実施例1、2あるいは5に記載の通信装置のブロック構成を使用し、伝送路推定器370の動作として、伝送路推定を複数回行うものとする。
伝送路推定器370の複数回の伝送路推定を行う場合の動作としてどのようにして伝送路推定値を決定するかについて示す。
伝送路推定器370の伝送路推定は受信信号中の各サブキャリアにおけるCINRを測定して行うが、電力線等の伝送路の場合は周期的にあるいは非周期的に伝送路が変動するため、複数回伝送路推定を行った場合は各サブキャリアの伝送路推定値はほとんど同じ値を示したり、大きく変動したりする。
図10は、伝送路推定を複数回行った場合に伝送路変動がほとんどなかった場合のCINRを示すグラフである。
図10の場合はガウス雑音のような背景雑音のみによる影響程度しかない。この場合は伝送路推定器370は、複数回の伝送路推定で得られた結果に対して、初期値としては各サブキャリアにおける最大値を使用し、送信装置299からの再送が多くなってきた場合は、中央値を使用し、通信が安定しなければ最小値を使用するのが好ましい。
ここで中央値はSORTなどの演算が膨大となるので、統計的に最大値と中央値の差(たとえば2dB)を求めておき、その値と最大値を利用することで中央値を使用したときと同等の結果を得るようにすることもできる。
このような構成にすることにより、各伝送路に合わせて伝送効率を最も高いところで維持することが可能となる。
本発明の実施例9における通信装置の伝送路推定器370について説明する。本実施例における通信装置のブロック構成は実施例8に記載したものと同一のブロック構成である。本実施例において、伝送路推定器370が推定する伝送路は、実施例8で考えた伝送路とほぼ同じ伝送路を考える。
実施例8と異なる点としては、背景雑音がガウス分布ではなかったり、また伝送路の減衰特性(たとえば多くのサブキャリアのCINR値がしきい値付近にある場合など)によっては、伝送路推定で求めたCINRから送信装置のシンボルマッパで使用する一次変調方式を決定するときに使用するしきい値が最初に設定している値では不適切になる場合を考慮する点にある。
本実施例における伝送路推定器370は、上記した知見に基づき、各しきい値を高めに設定変更(マージンをもたせる)して再送なども含めたシステム全体での伝送効率が向上するように制御する。これはCINRの分布によってはしきい値を変更するだけで大きく伝送効率が変わる場合があるからである。このような構成により、実施例8における通信装置よりもさらに伝送効率を高めることが可能となる。
本発明の実施例10における通信装置の伝送路推定器370について説明する。本実施例では、実施例8で考えた伝送路とほぼ同じ伝送路を考える。実施例8と異なる点としては、複数得た伝送路推定結果を見た場合、伝送路特性が大きく変動している点にある。図11に伝送路推定を複数回行った場合に伝送路変動がある場合のCINRを示すグラフについて示す。このような伝送路では、伝送路変動が起きる毎にその範囲によっては誤りが多くなり、誤り訂正を行っていたとしてもその時のフレームは再送となる可能性がある。
よって、本実施例における伝送路推定器370は、上記した知見に基づき、各サブキャリアで得られたCINRに対して、その変動が大きいサブキャリアに対しては不使用とする、あるいは得られた結果の中で最小値を選ぶことによって再送を減らすことにより、再送なども含めたシステム全体での伝送効率が向上するように制御できる。
このような構成により、実施例8よりもさらに伝送効率を高めることが可能となる。
本発明の実施例11における通信装置の伝送路推定器370について説明する。本実施例では、実施例10で考えた伝送路とほぼ同じ伝送路を考える。
実施例10の伝送路と異なる点としては、電力線を伝送路として用いることで、伝送路変動が電源周期あるいはその半周期に同期して起こる点にある。
図11に示されるような伝送路では、伝送路変動が起きる毎にその範囲によっては誤りが多くなり、誤り訂正を行っていたとしてもその時のフレームは再送となる可能性がある。
この時、伝送路推定の要求に対して1回の伝送路推定で処理すると、伝送路推定タイミングによっては真の伝送路容量よりも低く見積もる可能性がある。この場合、システムとしては安定して動作するかもしれないが伝送速度は遅くなる。
もし、上位層にバッファなどが十分用意されており再送による影響は考慮しなくてもよい環境下では、なるべく真の伝送路容量に近いところで伝送路推定結果が得られるのが好ましい。
よって、本実施例における伝送路推定器370は、上記した知見に基づき、伝送路推定要求に対して、電源周期あるいはその半周期に同期しないタイミングで2度伝送路推定を行うこととし、得られた伝送路推定結果を利用して各サブキャリアでCINRが大きい方の値を選択するようにする。これにより、2回の伝送路推定のうち少なくとも1回は電源周期に同期した伝送路変動に遭遇しないで伝送路推定を行うことができる。また各サブキャリアにおいてCINRの結果がよい方を取るため伝送速度が高いレベルで保持される。
このような構成により、簡単な処理で電源周期に同期した伝送路変動がある電力線伝送路環境下でも良好な伝送路推定を行うことが可能である。
本発明の実施例12における通信装置の伝送路推定器370について説明する。本実施例では、実施例10で考えた伝送路とほぼ同じ伝送路を考える。
図23は、DWMC伝送方式における送信フレーム内の構成例を示す図である。
受信信号のフレーム構成は図23のような同期や等化処理に必要なプリアンブル信号と情報用信号からなるフレームで伝送されることを仮定する。通常、電力線伝送路は無線の伝送路と比較すると非常にゆっくりと変化することがわかっている。また、瞬時変動としては電気機器のON/OFFなどによって起こされる。さらに、電源に同期した伝送路変動なども考えられる。
本実施例における伝送路推定器370は、上記した知見に基づき、非常にゆっくりした伝送路変動に対しては、長周期(秒から分間隔)的に伝送路推定を行えば十分であるし、電気機器のON/OFFによる瞬時変動に対しては伝送路状態が大きく変わるため再伝送路推定を行う必要がある。電源に同期した周期的な伝送路変動に対しては実施例8と同様に実施例1あるいは2の通信装置を使用することで伝送路の周期変動がどこで起きるかが予測できるため、その時間には信号伝送を行わないようにするあるいはフレームを細かく分割することでプリアンブルのオーバーヘッドは増加するが再送されるデータ量を抑えることができる。
このような構成により、再送されるデータ量を軽減することが可能であるため、伝送効率を高めることが可能となる。
本発明の実施例13における通信装置の伝送路推定器370について説明する。本実施例では、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用する。
通常伝送路推定を行う場合は図10や図11のようにCINRを取得し、送信装置のシンボルマッパで使用する一次変調を決定し、通信を行う伝送路において最大効率で伝送するように各パラメータを設定する。
しかしながら状況によっては伝送方式に冗長度を適応的に持たせることにより、システムを安定に運用を行うことができる場合もある。
本実施例の通信装置は上記した知見に基づき、以下のような動作を行う。
伝送路推定器370は、伝送路自体が混雑していない場合で、伝送しようとするデータ量が伝送路容量(伝送路推定で得られた容量)よりも少ない場合は、しきい値付近で判定している多値度に対しては1ランク下げる(たとえば4PAMから2PAM)、あるいは全てのしきい値に対してマージン(たとえば2dB)を持たせる、さらに複数回の伝送路推定を行っている場合は最小値を使用して多値度を決定するようにする。
これらの方式は通信装置にウェーブレット変換を用いて各サブキャリアで低サイドローブのスペクトルを持つように設計しているため、伝送路推定器370で各サブキャリアで詳細なCINRが得られるからできる。
なお本方式は、ウェーブレット変換だけではなく、OFDM/OQAM(この場合の多値度はMQAM:Mは多値数)、Filtered OFDM、Filtered Multitone方式など用いた他の低サイドローブのスペクトルを実現するマルチキャリア通信にも適用できる。
また本方式は、特性は劣化するが従来からよく使用されているFFT(Fast Fourier Transform)ベースのマルチキャリア通信方式に対しても適用することが可能である。
このような構成により、伝送路含めたトータルなシステムで最適化を行うことができ、しかも安定した通信ができる。
本発明の実施例14における通信装置の伝送路推定器370について説明する。
本実施例では、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の電力線通信装置を使用する。
通常伝送路推定を行う場合は図10や図11のようにCINRを取得し、送信装置のシンボルマッパで使用する一次変調を決定し、通信を行う伝送路において最大効率で伝送するように各パラメータを設定する。
しかしながら状況によっては伝送方式に冗長度を適応的に持たせることにより、システムを安定に運用を行うことができる場合もある。
本実施例においては上記した知見に基づき、伝送路推定器370は以下のような動作を行う。
伝送路自体が混雑していない場合で、伝送しようとするデータ量が伝送路容量(伝送路推定で得られた容量)よりも少ない場合は、送るデータの種類(Voip,data,Streamingなど)の情報を上位レイヤから受け取ることにより、ファイルなどのデータであれば即時性が必要ないため(再送が起こる可能性があるが、リアルタイムを要求されるデータではないため問題ない。)、最大効率を考えて通常の伝送方式で通信を行い、またVoip通信では即時性が重要であるので、効率よりも安定性が重要であると考えて伝送路容量が足りるのであれば最低に近い多値度を各サブキャリアで選択するようにするかあるいは周波数ダイバーシチ且つ時間ダイバーシチを行ってフレーム自体に耐性を持たせることなどが考えられ、さらにStreamingなどでは映像が伝送されるため容量とVoipほどではないが即時性が必要となるので、この場合は送りたい情報に合わせた形で必要最低限度の多値化で各サブキャリアの多値度を決定する。
これらの方式は通信装置にウェーブレット変換を用いて各サブキャリアで低サイドローブのスペクトルを持つように設計して。伝送路推定器で各サブキャリアで詳細なCINRが得られるからできる。なお本方式は、ウェーブレット変換だけではなく、OFDM/OQAM(この場合の多値度はMQAM:Mは多値数)など用いた他の低サイドローブのスペクトルを実現するマルチキャリア通信にも適用できる。また本方式は、特性は劣化するが従来からよく使用されているFFT(Fast Fourier Transform)ベースのマルチキャリア通信方式(たとえばADSLや802.11aやg)に対しても適用することが可能である。
このような構成にすることにより、アプリケーションを考慮した伝送路推定を行うことで伝送路を含めたトータルなシステムで最適化を行うことができ、しかも安定した通信ができる。
本発明の実施例15における通信装置の伝送路推定器370について説明する。
本実施例では、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用する。
通常の方法で伝送路推定を行った場合に所望の伝送速度を満たさなかった時、伝送路の群遅延によるWaveletフィルタバンクの直交崩れが原因で所望のCINRが取れない可能性がある。
通常、受信信号に同期して受信装置では復調処理が行われるが、全てのサブキャリアに対して同期が取れているわけではない。
つまり、実際の伝送路上では簡単に直交崩れが起きる可能性が高い。伝送路において大きな群遅延が存在する帯域にあるサブキャリアは直交崩れが大きいため、大きなキャリア間干渉やシンボル間干渉を生じる。その結果、その帯域においては干渉波が存在するためにCINRは低く見積もられる。
この問題を解決するために、本実施例の通信装置では、使用できるサブキャリアはたとえば偶数番号を持つサブキャリアのみに限定する。
これにより周波数利用効率は低下するが、直交崩れによるキャリア間干渉を大幅に軽減できるため、多少の群遅延が伝送路内に存在してもキャリア間干渉の影響をほとんど受けなくなるため、システムトータルとしての伝送速度は向上する可能性がある。また隣接キャリアとはほとんどオーバーラップしなくなるため、周波数偏差に対しても耐性がある。
図22は、DWMC伝送方式における送信スペクトル例を示す図である。
図22のような構成にすることにより、周波数利用効率は低下するが群遅延偏差が大きい伝送路においてキャリア間干渉が大幅に軽減でき、また周波数偏差に対しても耐性があるので、システムトータルとしての伝送速度は向上する可能性がある。
本発明の実施例16における通信装置の伝送路推定器370について説明する。
本実施例では、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用する。
通常の方法で伝送路推定を行った場合に所望の伝送速度を満たさなかった場合には伝送路が劣悪な環境であることが考えられる。劣悪な環境下では同期検波ではなく、遅延検波の方が伝送効率は下がるが耐性があるため使用したいケースが存在するが、DWMCはReal変調であり各サブキャリアには位相がないので遅延検波ができない。
しかしながら、送信データに冗長度をつけることによってDWMCでも位相を使った遅延検波が可能となる方法がある。
本実施例の伝送路推定器370は、上記の知見に基づき、以下のような動作を行う。
Waveletのインパルス応答長を4T(Tはシンボル周期)とした場合(フィルタ長で言えば4M;Mは全サブキャリア数)、各サブキャリアで伝送するデータを4T区間で同じとする。伝送効率は0.25となるが、最低でも4T毎にFFTと同じ位相が取り扱うことができ、遅延検波が可能となる。
これは、DWMCでも4T連続した情報を用いると最低でも4T毎に正弦波となる性質を利用している。もちろん、Waveletのインパルス応答長が8Tになれば、各サブキャリアで伝送するデータを8T区間で同じとする必要がある。なお、位相が扱えることにより、通常のデジタル通信で使われている様々な技術がDWMCに応用できるようになる。全データに対して上記の処理を行うと伝送効率が悪くなるため、必要最低限の部分に使用するだけでもシステムを向上できる。たとえば、プリアンブル信号やパイロット信号のみに適用することでシステム性能を向上させることができる。
このような構成にすることにより、Waveletのインパルス応答長と同じ長さだけ送りたい情報に冗長度を持たせることにより、伝送効率は劣化するが位相が扱えるため遅延検波ができたり、さらに通常のデジタル通信で使われている様々な技術がDWMCに応用できたり、また一部分に適用することでもシステム性能を向上させることが可能である。
本発明の実施例17における通信装置の伝送路推定器370について説明する。
本実施例では、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用する。
本実施例では送信装置299の出力電力は最大電力あるいは法が定める最大電力よりも小さいと仮定する。
通信装置は、通常の方法で伝送路推定を行った場合に所望の伝送速度を満たさなかった場合、その時の伝送路推定結果を用いて送信装置の増幅器の利得をいくら増加させると所望の伝送速度になるか計算し、その計算結果に基づいて、送信装置299の送信電力を制御する。
通常、Waveletベースのマルチキャリア通信では一部の既存システム(たとえばアマチュア無線など)が使用している帯域と同じ帯域を使っているサブキャリアは既存システムへの妨害となるため不使用としている。サブキャリアを不使用とすることでノッチを形成している。
図12は、DWMC伝送方式における振幅スペクトルの図である。
図12は、アマチュア無線が使用している帯域と同一の帯域を使用しているサブキャリアを不使用とした場合の振幅スペクトルを示している。図12に示されるように数本のサブキャリアを不使用とするだけで、30dB以上のノッチが形成されていることがわかる。
これは、Waveletベースのサブキャリアが低サイドローブの振幅スペクトルであるから実現できている。図22にDWMC伝送方式における送信スペクトル例を示す。ここで使用しているサブキャリアの振幅スペクトルの第一サイドローブは−35dBである。しかしながら、送信電力を増加させると、各サブキャリアのサイドローブも一緒に持ち上げられるため既存システムへの妨害が増加する。
これを防ぐため、本実施例における伝送路推定器370は、送信装置299の増幅器の利得を上げた分だけノッチが深くなるように、それらの帯域付近でさらにサブキャリアを不使用とする。
なお、振幅スペクトルのサイドローブがどのように減衰するかはあらかじめわかっているため、送信装置299の増幅器の利得の増加量とサブキャリアの不使用とする本数は一意に決まる。
このような構成にすることにより、送信装置299の送信電力を増加させても、他の既存システムへの影響を増加させることはなく、より遠くまで信号を伝送することが可能となる。しかもこれらのことが、サブキャリアを複数本不使用とするだけで柔軟に対応できる。
本発明の実施例18における通信装置の伝送路推定器370について説明する。
本実施例では、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用し、伝送路推定要求に対して伝送路推定は複数回行うものとする。受信装置のダイナミックレンジは40dBとする。
全サブキャリア数は300とする。ここでは説明を簡単にするために伝送路は静的な伝送路で動かないと仮定する。
まず、事前に無信号区間を使用して伝送路の雑音レベルを測定する。雑音レベルは等化器の係数やAGCの利得を使用することによって容易に求められる。
次に通常の伝送路推定(送信装置は最大電力で送信する)を行い、各サブキャリアの受信信号レベルとCINR値を推定する。受信信号レベルと雑音レベルから伝送路のSNR(信号電力対雑音電力比)が簡易的に求められる。ここでのSNRはほぼ伝送路が持つSNRが求まるが、伝送路推定時に得られるCINRは受信装置のダイナミックレンジに依存する。
そのため、受信装置のダイナミックレンジが不足している環境下では平均SNRと平均CINRの関係から伝送速度を劣化させないで送信装置299の出力電力を下げることが可能である。
図13は、受信した信号レベルの模式図である。
図13は、受信信号がない時の雑音レベルおよび送信装置が最大電力で信号を送信したときに受信装置で受信した信号レベルおよび伝送路推定時に得られるCINRを示す。図13では最大電力で送信装置から出力した場合、受信装置では最大80dBμV、最小60dBμVで受信している。また伝送路推定時に得られるCINRは受信装置のダイナミックレンジが40dBであるため最大40dB、最小20dBとなる。伝送路のSNRでは最小でも60dBμVあるが、CINRでは20dBしかない。
これは、受信装置のダイナミックレンジが40dBしかないために送信電力を40dBも損していることになる。よって、伝送路のSNRと伝送路推定時のCINRとの利得差を用いると、伝送速度に影響を与えずに送信装置の増幅器の利得を下げることができる。このような構成にすることにより、伝送路のSNRと伝送路推定時に得られるCINRの利得差から送信装置の送信電力を制御でき、送信装置の消費電力を抑え、他既存システムへの妨害を軽減することができる。
本発明の実施例19における通信装置の伝送路推定器370について説明する。本実施例における通信装置のブロック構成は、実施例18と同じ通信装置のブロック構成を仮定する。
実施例18の方法では送信電力を下げることにより送信装置の消費電力を抑え、他の既存システムへの妨害を軽減できたが、伝送速度を向上できなかった。
本実施例では実施例18の特徴に加えて通信装置の伝送速度を向上させる方法について説明する。
伝送路推定器370は、実施例18と同様に伝送路推定時に伝送路のSNRを求める。各サブキャリアにおいて求めたSNRを使用して伝送速度が最大且つ送信電力最小となるためには、各サブキャリアにおいてどれだけ利得を下げることができるか計算する。
送信電力を制御しない場合は、伝送路推定時に受信装置から送信装置299へ各サブキャリアで使用する一次変調の多値度あるいはそれに対応する情報を知らせる。
ここでは、その情報に加えて各サブキャリアで制御する利得情報も知らせることにする。送信装置は、多値度の情報で各サブキャリアを一次変調し、利得情報を用いて各サブキャリアの送信電力を制御する。
図13,14に示されるような受信信号に本方式を適用すると受信装置で得られるSNRはほぼフラットになり、伝送速度は最大にできる。伝送速度が最大に保たれているかはCINRで正確に判断できる。
なお、利得を下げるサブキャリアはすべて最高多値度を選択するという条件のもとでは多値度の情報と利得の情報を2つに分けて送る必要はなく、多値度情報か利得情報かを受信装置から送信装置へ知らせればよい。言い換えると、利得情報があるサブキャリアは多値度は最高多値度ということで利得情報を用いてそのサブキャリアの利得を下げる必要があり、多値度情報があるサブキャリアはその情報で多値化して利得は制御しないようにする。ただし、このような条件下では利得の下げ幅は小さくなる。
このような構成にすることにより、実施例18と比べて伝送速度を向上させることができる。
本発明の実施例20における通信装置の伝送路推定器370について説明する。本実施例では、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用する。
伝送路推定器370は、伝送路推定要求に対して伝送路推定は複数回行うものとする。
ここでは説明を簡単にするために伝送路は静的な伝送路で動かないと仮定する。
まず、最初に通常の伝送路推定(送信装置は最大電力で送信する)を行う。受信装置における伝送路推定結果から最高多値度を示したサブキャリアの利得だけを一律にαだけ下げる。ここでαは多値度を決定する時に使用するしきい値の差から求める。ここでも説明を簡単にするために使用多値度は16PAM〜2PAMとし各しきい値の差は一律6dBとする。よって、ここではαは6dBである。第1回目の伝送路推定結果を多値度あるいはそれに対応する情報を送信装置299へ知らせ、2回目の伝送路推定を行うことも同時に知らせる。2回目の伝送路推定では、送信装置299は最大多値度(ここでは16PAM)のサブキャリアのみ6dBだけ利得を下げて送信し、受信装置で2回目の伝送路推定を行い、1回目の結果と比較して伝送速度が下がっていれば2回目で伝送路推定は終了し、ひとつ前の(ここでは1回目の)伝送路推定結果が今回の伝送路推定要求に対しての結果として送信装置299に知らせる。もし伝送速度が2回目の方が1回目の結果よりも伝送速度が速い場合は、3回目の伝送路推定を行う。3回目では2回目で得た伝送路推定結果を使用して同様に送信装置299は最高多値度のサブキャリアのみを6dBだけ利得を下げて送信し、受信装置で3回目の伝送路推定を行う。
この動作において、送信装置299は、1、2回とも利得を下げるサブキャリアはその和12dBだけ利得を下げる必要がある。
つまり、N回目の伝送路推定を行う時は、N−1回目に得た伝送路推定結果と累積した利得を使用する。伝送速度が下がるまで同様な計算を繰り返し、伝送速度が下がった時点で伝送路推定を中止し、ひとつ前の結果を最終結果としてとして使用する。ここで具体的な例を図13、15〜17を使用して説明する。
図15は、サブキャリア番号1〜100までのサブキャリアの利得を6dBだけ下げた時に受信する信号レベルの模式図、図16は、サブキャリア番号1〜100までのサブキャリアの利得を12dB、サブキャリア番号101〜200までのサブキャリアの利得を6dBだけ下げた時に受信する信号レベルの模式図、図17は、サブキャリア番号1〜100までのサブキャリアの利得を18dB、サブキャリア番号101〜200までのサブキャリアの利得を12dB、サブキャリア番号201〜300までのサブキャリアの利得を6dBだけ下げた時に受信する信号レベルの模式図である。
まず、通常の伝送路推定を行う。図13が受信した信号レベルの模式図であると仮定する。図13から最大電力で送信装置から出力した場合、受信装置では最大80dBμV、最小60dBμVで受信できている。また伝送路推定時に得られるCINR値は受信装置のダイナミックレンジが40dBなので最大40dB、最小20dBとなる。ここで最高多値度(ここでは16PAM)を選択しているサブキャリア番号1〜100までのサブキャリアの利得を6dB下げる。ここで2回目の伝送路推定を行うと、図15に示すようにCINRは40dB、36dB、26dBとなる。同じように16PAMを選択したサブキャリア番号1〜200までのサブキャリアの利得を12dB、6dB下げる。ここで3回目の伝送路推定を行うと、図16に示すようにCINRは40dB、36dB、32dBとなる。ここでサブキャリア全て16PAMが選択されることになる。よって、全サブキャリアに対して利得を18dB、12dB、6dB下げる。同じように4回目の伝送路推定を行うと3回目と同じように全サブキャリアで16PAMが選択される。ここで4回目と3回目で伝送速度が同じとなるため処理を終了し3回目の結果をこの時の伝送路推定結果として通信に使用する。この例では3回目と4回目が偶然同じ速度になったが、実際の伝送路特性は複雑であるため一般的に同じになることはない。
よってこの処理は、伝送速度が劣化するところまで続けられ、速度が劣化した時点で1つ前の結果をその時の伝送路推定結果とすることになる。
なおシステムを簡略化するために、伝送路推定を2回限定として使用することでも、本方式を使わない場合と比較してαdBだけ受信装置のダイナミックレンジを有効活用できる。また最高多値度のみ利得を下げたが、最高多値度に限定しなくても同様な効果は得られる(たとえば8PAM以上のサブキャリアで利得を下げる)。このような構成により、伝送路推定を複数回行わなければならないが、電力線通信装置で簡単な手順で送信装置の送信電力制御ができる。
さらに、本実施例では、CINR値を使って送信装置299の利得を制御したが、各サブキャリアのSNRを使用して送信装置299の電力制御を行うことも可能である。
本発明の実施例21における通信装置の伝送路推定器370について説明する。ここでは、通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用する。
伝送路推定は複数回行うものとし、その時受信信号レベルも測定する(雑音レベル測定は不要)。最初の伝送路推定時の受信レベルが図18(a)と仮定する。全サブキャリアの中からMAXレベルを抽出し、offsetレベルを設定して(MAXレベル−offsetレベル)以上のレベルで受信されているサブキャリアの利得を一律βだけ下げる。次に2回目の伝送路推定を行い、1回目と伝送速度を比較し伝送速度が劣化していればひとつ前のCINRの結果と利得情報を伝送路推定結果とする。もし伝送速度が向上している場合は、同様に3回目を実施する。このようにして伝送速度が劣化する時まで同様な作業を繰り返し、伝送速度が劣化した場合は1つ前のCINR結果と利得情報を最終結果とする。図18に例を示す。図18は、ダイナミックレンジが不足する場合の伝送路推定特性の模式図である。
最初の伝送路推定で図18(a)が得られ、ここでサブキャリア番号1〜100までのサブキャリアの利得を18dB下げる。次に2回目の伝送路推定を行い、CINRの結果から伝送速度が向上していることを確認する。さらに3回目を行い、offset値の設定によっては全てのサブキャリアの利得を18dBさらに下げて伝送速度が向上したかどうか判断して、劣化した場合伝送路推定を終了し1つ前のCINR値と利得情報を最終結果とする。
図18の例ではoffsetの値によっては2回目と3回目が偶然同じ速度になる場合が存在するが、実際の伝送路特性は複雑であるため一般的に同じになることはないと考える。よってこの処理は、伝送速度が劣化するところまで続けられ、速度が劣化した時点で1つ前の結果をその時の伝送路推定結果とすることになる。伝送路のSNRによっては利得を下げたサブキャリアは特性が劣化するかもしれないが、図18のように受信装置のダイナミックレンジが不足しているような伝送路であればあるサブキャリアの利得を下げたおかげで全体のダイナミックレンジ不足が緩和され、結果として伝送速度が向上するかもしれない。図18(a)のような特性を示す伝送路では、本方式は大変有効である。
つまり、図18のような場合、受信レベルが大きいサブキャリアの利得を大きく下げることによって、システム全体の伝送速度が向上する。電力線伝送路においては減衰特性や雑音特性が複雑であるためこのような方法は有効であると考える。なお、伝送路推定を複数回行うのは大変であるため、伝送路推定を2回と限定し、簡易的に受信レベルが(MAXレベル−offsetレベル)以上のサブキャリアについては思い切って不使用として2回目の伝送路推定を行って速度が向上したか確かめてもよい。あるいは不使用ではなく、大幅に利得を下げて同様に2回の処理でCINRを決定してもよい。このような構成にすることにより、受信装置のダイナミックレンジ不足による伝送速度劣化を改善でき、複雑な伝送路でにおいても伝送速度を向上させることができる。
本発明の実施例22における通信装置のブロック構成は図19の従来方式あるいは実施例1あるいは2の通信装置のブロック構成を使用する。
本実施例における通信装置のフレーム構成例を図26に示す。図26は、本発明の実施例22における通信装置のフレーム構成例を示す図である。
図26において、このフレーム構成は、送信装置299が受信装置の伝送路推定器370から得た情報に基づいて、受信装置に向けて送信するデータを示している。
図中、PREは受信装置の同期処理や等化処理などで使用するプリアンブル信号、SYNCはデータスタートを識別するSYNC信号、TMIは伝送路推定結果に基づく情報を示す信号、FCはフレームコントロール用信号、PLは情報信号を示す。
TMIの伝送路推定結果に基づく情報は、受信装置の伝送路推定器370が推定した結果そのもの、あるいは、推定に基づき、送受信で用いる変復調を規定する情報であっても良い。
通常のフレーム構成では下記に示すように制御信号(PREとSYNC)が先頭にあり、その後情報信号が続く。本実施例では、伝送路推定結果情報を情報信号の先頭部分におく。図26の例ではSYNCの後、FC1の前になる。このような構成にすることにより、TMI信号をはじめに処理することが可能となるため、TMIの情報を使って情報信号の処理をすばやく行うことができる。
本発明の実施例23における通信装置のブロック構成は、実施例22で開示した通信装置と同じブロック構成を考える。
ここでは伝送路推定結果情報に対してダイバーシティ(周波数ダイバーシティ、時間ダイバーシティなど)処理を行い、その情報をTMI信号とする。しかしながら、通常伝送路推定結果の情報量は詳細になればそれだけ多くなるため、大量な情報に高利得なダイバーシティ処理すると伝送効率が下がってしまう(TMI信号が数〜数十シンボルになる可能性がある)。TMI信号には高耐性が必要である。そのためTMI信号に高利得ダイバーシティ処理を行いたい場合は、伝送路推定を行った時だけ詳細な伝送路推定結果情報を情報信号として通信装置でやり取りを行い、その情報をメモリなどに格納しておき、通常の通信状態ではその情報が格納されている場所がわかる情報(INDEXなど)のみを伝送する。
この時必要な情報量は少なくなる(通常は数ビット)ため、伝送効率を下げないでダイバーシティ利得を大幅に向上することが可能となる。なお、TMI信号に対して高利得を得る方法として、ダイバーシティのほかに誤り訂正があるが、高利得な誤り訂正は一般的にシステムディレイが大きい。TMI信号の処理がシステムディレイで遅れるとシステム全体のパフォーマンスに影響するので適用は困難である。
本実施例ではTMI信号に対しては高利得ダイバーシティ処理のみであり、高利得な誤り訂正を使用しないため、システムディレイは小さい。このような構成にすることにより、システムディレイが小さく、高耐性を持つTMI信号を生成できる。
なお、一連の方式は電力線通信に適用した場合について記述し、またマルチキャリア通信としてはウェーブレットベースのOFDMを使った場合について記述した。しかし、本方式はウェーブレットベースのOFDMだけでなく、OFDM/OQAM(この場合の一次変調方式の多値度はMQAM:Mは多値数)、Filtered OFDM、Filtered Multitone方式などの方式を用いた他の低サイドローブのスペクトルを実現するマルチキャリア通信にも適用できるし、また特性は劣化するが従来からよく使用されているFFTベースのマルチキャリア通信方式に対しても適用することが可能である。
また、伝送路としても電力線の伝送路に限られず、電話線を伝送路として利用するデジタル通信装置等にも適用することが可能である。