JP4762195B2 - 真空遮断器 - Google Patents

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本発明は、主接点を真空スイッチ管内に収納し、真空中で電流の遮断、投入を行なう真空遮断器に関し、特に、真空スイッチ管の一部または全体を固体絶縁物からなるモールドに埋設して支持した真空遮断器のチャタリング抑制構造に関するものである。
開閉可能に配設された一対の主接点を真空スイッチ管内に収納し、真空中で電流の遮断、投入を行なう真空遮断器においては、主接点を閉極(投入)したときの衝撃力および反発力によって主接点間の接離を繰り返す現象(チャタリング)が発生する。有負荷状態でチャタリングが発生した場合、主接点間にアークが発生し、このアークの熱によって主接点の消耗が加速し、電気的開閉寿命が短縮される。
接点投入時のチャタリングを抑制するために、例えば特許文献1では、油圧オリフィス式のダンパを使用し、可動側接点と接続された可動軸の振動を緩和した真空遮断器が提示されている。また、特許文献2では、接点との間にチャタリングに影響を与える固有振動数を有する部材が介在しない位置に、3枚以上の積層板からなる積層構造の固定導体を配設し、この固定導体を弾性体によって弾性支持し、接点投入時のチャタリングを抑制した開閉機器が提示されている。
特開平7−245046号公報 特開2006−164654号公報
このように、真空遮断器においてはチャタリングの継続時間をできる限り短くする必要があるが、特許文献1に記載のものでは高価なダンパを追加する必要があり、高精度な設定が要求されるため組立てコストが高くなるという問題点があった。また、特許文献2に記載のものでは、3枚以上の積層板からなる積層構造の固定導体を弾性体によって弾性支持しているが、いったん組み込まれた積層板の固有振動数の微調整が困難であるため、チャタリングの抑制に最適な積層板の枚数や板厚等の条件出しに時間を要するという問題があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、主接点投入時のチャタリングを、簡単な機構で確実に抑制することが可能な真空遮断器を提供することを目的とする。
本発明による真空遮断器は、開閉可能に配設された一対の接点を真空スイッチ管内に収納し、真空中で電流の遮断、投入を行う真空遮断器であって、真空スイッチ管の少なくとも一部を覆い、その脚部にて真空スイッチ管を支持する固体絶縁物からなるモールドと、モールドの脚部がモールド固定部材により固定される取付けベースと、取付けベースに支柱固定部材により固定され取付けベースを支持する支柱を備え、取付けベースは、積層された複数枚の鋼板からなり、これら複数枚の鋼板を締結するベース締結部材が、モールド固定部材及び支柱固定部材と異なる位置に、調整自在に配設されているものである。
本発明によれば、積層された複数枚の鋼板からなる取付けベースを締結するベース締結部材を、モールド固定部材及び支柱固定部材と異なる位置に、調整自在に配設することにより、モールドにて支持された主回路部の固有振動数に応じて取付けベースの固有振動数を容易に微調整することが可能であり、簡単な機構で、主接点投入時のチャタリングを確実に抑制することが可能である。
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における真空遮断器の構成を示す断面模式図、図2は外観図である。開閉可能に配設された一対の主接点(固定側接点2、可動側接点3)は、真空スイッチ管(VST)1内に収納され、固定側接点2の接続端子4と可動側接点3の接続端子5がVST1の両側に設けられている。可動接点側3の接続端子5は,可とう導体6を介して他の機器(図示せず)に接続されるとともに、主回路を電気的に絶縁するための絶縁ロッド7、接圧ばね8を介して可動側接点3を駆動する操作機構9に接続されている。また、固定側接点2の接続端子4は、接続導体(図示せず)を介して他の機器(図示せず)に接続されている。
VST1は、その少なくとも一部(本実施の形態では全体)を、固体絶縁物からなるVSTモールド10に覆われ、その脚部10aにて支持されている。VSTモールド10の脚部10aは、取付けベース13にVSTモールド固定部材(ボルト)15により固定されている。取付けベース13は、積層された8枚の厚さ6mmの鋼板14からなるものである。さらに、取付けベース13は、支柱固定部材(ボルト)16により支柱12と固定され、支柱12により支持されている。これらの支柱12は、操作機構9を取付けたユニットベース11に接続されている。
本実施の形態による取付けベース13は、図3に示すように、VSTモールド固定部材であるボルト15と、支柱固定部材であるボルト16が、それぞれ異なる位置に配設されている。すなわち、VSTモールド締結部15aと支柱締結部16aが、異なる位置となっている。さらに、ベース締結部材であるボルト17が、ボルト15、ボルト16の両方と異なる位置に配設され、ボルト17の締め付けトルクは調整自在となっている。なお、図3において、17aはボルト17の頭、17bはナットを示している。ボルト17は、取付けベース13の積層間を貫通し、ナット17bにより8枚の鋼板14を締結している。
図4は、取付けベース13におけるベース締結部材(ボルト)17の配置例を示している。図4では、ボルト17は、取付けベース13の6箇所にほぼ均等に配設され、積層された8枚の鋼板14を締結しており、その締め付けトルクは調整自在である。ただし、本発明において、ボルト17の個数は6個に限定されるものでなく、適宜変更することができる。また、本実施の形態では、図5に示すように、取付けベース13の四隅を、円柱状の4本の支柱12によって支持している。
次に動作について説明する。操作機器9により可動側接点3を固定側接点2に対して並進運動させることで、主回路電流の遮断、投入を行なう。投入の場合、開状態にある可動側接点3を、操作機構9の駆動力により一定の速度で投入方向に運動させる。可動側接点3が固定側接点2と衝突すると、可動側接点3は固定側接点2に対してバウンズを繰り返しながら次第に減衰し、最終的に投入状態に落ち着く。
このように、可動側接点3が投入動作によって固定側接点2に衝突すると、固定側接点2に衝撃荷重が加わり、固定側接点2は可動側接点3と離れる方向に動こうとする。このとき、固定側接点2に加わった衝撃荷重は、VSTモールド10を介して取付けベース13、支柱12、ユニットベース11に加わる。
本実施の形態では、固定側接点2に加わった衝撃荷重が取付けベース13に加わる際に、VSTモールド固定部材であるボルト15と支柱固定部材であるボルト16では、逆方向に衝撃荷重が加わり、それぞれの部分において逆方向に僅かに移動する。このときに取付けベース13の積層間で摩擦力が発生するため運動エネルギーが消費され、支柱12への衝撃力を低減し、固定側接点2から可動側接点3への反発力が低減される。さらに、取付けベース13の積層間を貫通して締結するボルト17が、積層間に生じる摩擦力を増大させるため、支柱12への衝撃力の低減効果を向上させ、固定側接点2から可動側接点3への反発力の低減効果も向上させている。
固定側接点2から可動側接点3への反発力が低減することにより、可動側接点3が反発力によって戻る距離も低減されるので、可動側接点3が再度、固定側接点2に接するまでの時間が短縮され、可動側接点3と固定側接点2間が離れている間に発生するアーク時間すなわちチャタリングの継続時間も短縮される。
このように、チャタリングの継続時間には、VSTモールド10にて支持された主回路部とその固定部である取付けベース13の固有振動数が影響する。主回路部と固定部の固有振動数が異なることにより、接点投入時の衝撃力が消費されて減衰し、チャタリング抑制効果が得られるため、主回路部の固有振動数に応じて取付けベース13の固有振動数を変化させる必要がある。その手段として、本実施の形態では、取付けベース13を締結しているボルト17の締め付けトルクが調整自在に設けられており、これにより取付けベース13の積層間の摩擦力を調整し、固定振動数を微調整するものである。
取付けベース13の固有振動数を変化させる他の手段としては、取付けベース13を構成する鋼板14の大きさ、厚さ及び枚数等の条件を変化させる方法もある。しかし、これらの方法は、部品の追加または変更を伴うため対応に時間を要し、組立後の微調整も難しい。これに対し、本実施の形態では、まず取付けベース13を構成する鋼板14の厚さ及び枚数を最適化しておき、さらにこれらを締結しているボルト17の締め付けトルクを調整することにより、積層間の摩擦力の微調整を行うことができる。
取付けベース13を構成する鋼板14の枚数及び厚さの条件を変えた場合の真空遮断器における投入速度とチャタリング時間の関係を図6に示す。図中、横軸は投入速度(m/s)、縦軸はチャタリング時間(ms)を示しており、白い三角(△)は厚さ6mmの鋼板を8枚積層したもの、黒い四角は厚さ6mmの鋼板を6枚積層したもの、白い丸(○)は厚さ6mmの鋼板を4枚積層したもの、黒い三角は厚さ4.5mmの鋼板を9枚積層したもの、白い四角(□)は厚さ9mmの鋼板を5枚積層したものをそれぞれ示している。
全体として、投入速度が大きくなるとチャタリング時間は長くなる傾向にあるが、今回の実験では、厚さ6mmの鋼板を8枚積層したもの(△)が最もチャタリング時間を短く抑制できた。同じ厚さ6mmの鋼板を用いた場合でも、6枚(黒い四角)、4枚(○)の場合には衝撃荷重が加わったときの摩擦力が小さくなり、また剛性が弱くなるため固有振動数が小さくなり、8枚(△)の場合に比べてチャタリング抑制効果が低下する。
また、厚さ6mmの鋼板4枚の場合(○)と厚さ9mmの鋼板5枚の場合(□)を比較すると、剛性の点では後者(□)が勝っていると考えられるが、厚さ9mmの鋼板の場合は鋼板1枚当たりの重量が大きいため、積層間の移動が小さいと考えられ、チャタリング抑制効果においては前者(○)が勝っている。これらの実験結果から、鋼板の厚さは6mm以下が望ましいことが明らかになった。このように、取付けベース13を構成する鋼板14の枚数及び厚さの条件を変更することにより、取付けベース13の剛性及び固有振動数の調整を行うことができる。
なお、本実施の形態では、厚さ6mmの鋼板14を8枚積層した取付けベース13を用いたが、取付けベース13を構成する鋼板14の厚さ、枚数、及び材質については、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
取付けベース13を構成する鋼板14の枚数及び厚さの条件を変更した例を図7に示す。図7では、厚さ6mmの鋼板14を7枚と、厚さ4.5mmの鋼板14aを1枚の合計8枚を組み合わせて積層した取付けベース13を用いている。図3に示す構造と比べると、積層枚数が同じなので衝撃荷重が加わったときの摩擦力はほぼ同等であるが、取付けベース13の剛性が弱くなっているため、取付けベース13の固有振動数は小さくなる。
さらに、取付けベース13を支持する支柱としては、図5に示すような円柱状の支柱12以外に、図8及び図9に示すようなブロック状(下駄の歯状)の支柱12aを用いてもよい。図8は、ブロック状の支柱12aを片側3本の支柱固定部材(ボルト)16で固定した例を示しており、図9は、支柱固定部材(ボルト)16の本数を片側5本に増加して剛性を向上させた例を示している。このように、支柱の形状及び支柱固定部材16の本数や位置を変更することによっても、剛性を調整することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、積層された複数枚の鋼板14からなる取付けベース13を締結するベース締結部材であるボルト17を、モールド固定部材であるボルト15及び支柱固定部材であるボルト16と異なる位置に配設し、ボルト17の締め付けトルクが調整自在であるので、VSTモールド10にて支持された主回路部の固有振動数に応じて取付けベース13の固有振動数を容易に微調整することが可能であり、簡単な機構で、主接点投入時のチャタリングを確実に抑制することが可能である。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、取付けベース13の固有振動数の微調整を行う方法として、取付けベース13を締結しているボルト17の締め付けトルクを調整すること、および取付けベース13を構成する鋼板14の枚数及び厚さの条件を変更すること等を示した。本実施の形態では、さらに、取付けベース13を構成する鋼板14に、切欠き部18または穴19を設けることにより、取付けベース13の剛性及び固有振動数の微調整を行うものである。
図10は、本実施の形態における真空遮断器の取付けベースの構成例を示す図であり、(a)は取付けベース13の上面図、(b)は(a)中A−Aで示す部分の断面図である。図10に示す例では、積層された8枚の鋼板14のうち、両端となる上下1枚ずつに切欠き部18を設け、さらに、8枚の鋼板14を貫通する穴19を複数個設けている。このように、取付けベース13を構成する鋼板14に切欠き部18や穴19を設けることにより、取付けベース13の剛性が弱くなるため固有振動数は小さくなる。
なお、切欠き部18を設ける位置は、取付けベース13の両端の鋼板14に限定されるものではなく、いずれか1枚または複数枚の鋼板14に切欠き部18を設けて剛性を調整することができる。さらに、穴19の数や位置も任意に決定でき、全ての鋼板14を貫通する穴であってもよいし、貫通しない穴であってもよい。
以上のように、本実施の形態によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、さらに取付けベース13の剛性及び固有振動数の微調整が可能となり、より確実なチャタリング抑制効果が得られる。
本発明は、主接点を真空スイッチ管内に収納し、真空中で電流の遮断、投入を行なう真空遮断器、特に、真空スイッチ管の一部または全体を固体絶縁物からなるモールドに埋設して支持したものに利用可能である。
本発明の実施の形態1における真空遮断器の構成を示す断面模式図である。 本発明の実施の形態1における真空遮断器を示す外観図である。 本発明の実施の形態1における真空遮断器の取付けベースの構成例を示す部分拡大断面図である。 本発明の実施の形態1における真空遮断器のベース締結部材の配置例を示す平面図である。 本発明の実施の形態1における真空遮断器の支柱とベース締結部材の配置例を示す斜視図である。 真空遮断器における投入速度とチャタリング時間の関係を示している。 本発明の実施の形態1における真空遮断器の取付けベースの他の構成例を示す部分拡大断面図である。 本発明の実施の形態1における真空遮断器の取付けベースを支持する支柱の他の形状例を示す斜視図である。 本発明の実施の形態1における真空遮断器の取付けベースを支持する支柱の他の形状例を示す斜視図である。 本発明の実施の形態2における真空遮断器の取付けベースの構成例を示す上面図及び断面図である。
符号の説明
1 真空スイッチ管(VST)、2 固定側接点、3 可動側接点、
4、5 接続端子、6 可とう導体、7 絶縁ロッド、8 接圧バネ、9 操作機構、10 VSTモールド、10a 脚部、11 ユニットベース、12、12a 支柱、13 取付けベース、14、14a 鋼板、15 VSTモールド固定部材(ボルト)、15a VSTモールド締結部、16 支柱固定部材(ボルト)、16a 支柱締結部、17 ベース締結部材(ボルト)、17a 頭、17b ナット、18 切欠き部、
19 穴。

Claims (4)

  1. 開閉可能に配設された一対の接点を真空スイッチ管内に収納し、真空中で電流の遮断、投入を行う真空遮断器であって、前記真空スイッチ管の少なくとも一部を覆い、その脚部にて前記真空スイッチ管を支持する固体絶縁物からなるモールドと、前記モールドの脚部がモールド固定部材により固定される取付けベースと、前記取付けベースに支柱固定部材により固定され前記取付けベースを支持する支柱を備え、前記取付けベースは、積層された複数枚の鋼板からなり、これら複数枚の鋼板を締結するベース締結部材が、前記モールド固定部材及び前記支柱固定部材と異なる位置に、調整自在に配設されていることを特徴とする真空遮断器。
  2. 請求項1記載の真空遮断器であって、前記取付けベースは、厚さ6mm以下の鋼板を複数枚積層してなることを特徴とする真空遮断器。
  3. 請求項1記載の真空遮断器であって、前記取付けベースは、厚さ6mm以下の2種類以上の厚さの鋼板を組み合わせて複数枚積層してなることを特徴とする真空遮断器。
  4. 請求項1記載の真空遮断器であって、前記取付けベースは、複数枚の鋼板のいずれか1枚または複数枚に、切欠き及び穴のいずれか一方または両方が設けられていることを特徴とする真空遮断器。
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