本発明は、電磁波の送信と受信を行うことが可能な半導体装置に関する。
近年、電磁波の送信と受信を行うことが可能な半導体装置の開発が進められている。このような半導体装置は、RFID(Radio Frequency IDentification)、RFチップ、RFタグ、ICチップ、ICタグ、ICラベル、無線チップ、無線タグ、電子チップ、電子タグ、無線プロセッサ、無線メモリ等と呼ばれる(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−282050号公報 (第11−14頁、第5図)
電磁波の送信と受信を行うことが可能な半導体装置は、少なくとも、搬送波を交流の電気信号に変換するアンテナと、アンテナが変換した交流の電気信号を用いて電源電圧を生成する電源回路を有する。なお、搬送波とは、キャリアともよばれ、音声や映像などの低周波の信号を伝送する電磁波のことを指す。
半導体装置は、搬送波を用いて電源電圧を生成するため、瞬間的な消費電流が大きいと、電圧降下が発生することがあった。また、電圧降下が発生すると、半導体装置の各回路に動作エラーが生じてしまうことがあった。
そこで、本発明は、瞬間的な消費電流を低減することにより、電圧降下の発生を抑制することを課題とする。また、電圧降下の発生を抑制して、動作エラーの発生を抑制することを課題とする。また、電圧降下の発生を抑制して、電源の安定化を実現させた半導体装置を提供することを課題とする。
本発明の半導体装置は、搬送波を交流の電気信号に変換するアンテナと、電気信号を用いて電源電圧を生成し、かつ、生成した電源電圧を非同期カウンタに供給する電源回路(回路ともいう)と、非同期カウンタとを有する。半導体装置は、アンテナを用いて電磁波の送信と受信を行い、また、アンテナと電源回路を用いて電源電圧の生成を行う。
本発明の半導体装置の第1の構成では、非同期カウンタが複数のフリップフロップ回路を有する。複数のフリップフロップ回路の各々は、絶縁表面を有する基板上に設けられた薄膜トランジスタを複数有する。非同期カウンタは、1MHz〜100MHz(1MHz以上100MHz以下)の動作特性を示す。搬送波の周波数は、860MHz〜960MHz(860MHz以上960MHz以下)又は1GHz〜5GHz(1GHz以上5GHz以下)である。なお、1MHz〜100MHzの動作特性を示す非同期カウンタとは、周波数が1MHz〜100MHzの制御信号に基づいて、動作することが可能な非同期カウンタを意味する。絶縁表面を有する基板とは、例えば、ガラス又はプラスチックからなる基板に相当する。
上記の第1の構成では、非同期カウンタが薄膜トランジスタを複数有し、なおかつ、非同期カウンタが1MHz〜100MHzの動作特性(動作性能ともいう)を示す点を特徴とする。上記特徴から、複数のフリップフロップ回路のうちの一端のフリップフロップ回路の入力端子に信号が入力されてから、複数のフリップフロップ回路のうちの他端のフリップフロップ回路の出力端子から信号が出力されるまでの期間を、搬送波の1周期よりも長くすることができる。そのため、瞬間的な消費電流を低減し、電源の安定化を実現することができる。
本発明の半導体装置の第2の構成では、非同期カウンタが複数のフリップフロップ回路を有する。複数のフリップフロップ回路の各々は、単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタを複数有する。トランジスタのチャネル長は、0.5μm〜50μm(0.5μm以上50μm以下)である。搬送波の周波数は、860MHz〜960MHz又は1GHz〜5GHzである。単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタとは、多くの場合において、単結晶シリコン基板を用いたトランジスタである。
また、上記とは異なる本発明の半導体装置の第2の構成では、非同期カウンタが複数のフリップフロップ回路を有する。複数のフリップフロップ回路の各々は、絶縁表面を有する基板上に設けられた薄膜トランジスタを複数有する。薄膜トランジスタのチャネル長は、3μm〜100μm(3μm以上100μm以下)である。搬送波の周波数は、13.56MHzである。
上記の第2の構成では、トランジスタのチャネル長を、上述の範囲内で設計することにより、トランジスタの駆動能力を低くする。そして、1つのフリップフロップ回路における処理期間(入力端子に信号が入力されてから、出力端子から信号が出力されるまでの期間)を増大させる。そうすると、複数のフリップフロップ回路のうちの一端のフリップフロップ回路の入力端子に信号が入力されてから、複数のフリップフロップ回路のうちの他端のフリップフロップ回路の出力端子から信号が出力されるまでの期間を、搬送波の1周期よりも長くすることができる。そのため、瞬間的な消費電流を低減し、電源の安定化を実現することができる。
本発明の半導体装置の第3の構成は、アンテナ、電源回路(第1の回路ともいう)及び非同期カウンタに加えて、遅延回路(第2の回路ともいう)を有する。非同期カウンタは、m個(mは自然数)のフリップフロップ回路を有し、遅延回路は、抵抗素子、容量素子及び複数のインバータから選択された1種又は複数種を有する。遅延回路は、m個のフリップフロップ回路から選択されたn個(nは自然数、1≦n≦m)のフリップフロップ回路の出力端子に接続されている。
上記の第3の構成では、フリップフロップ回路の出力端子に遅延回路を接続する。そうすると、非同期カウンタが含む複数のフリップフロップ回路のうち、一端に配置されたフリップフロップ回路の入力端子に信号が入力されてから、他端に配置されたフリップフロップ回路の出力端子から信号が出力されるまでの期間を、搬送波の1周期よりも長くすることができる。そのため、瞬間的な消費電流を低減し、電源の安定化を実現することができる。
また、本発明の半導体装置は、アンテナが変換する前記電気信号を復調する復調回路を有する。復調回路は、上述のいずれかの構成の非同期カウンタを有する。
また、本発明の半導体装置は、アンテナが変換する前記電気信号を復調する復調回路と、復調回路により復調された信号の解析を行う命令解析回路を有する。復調回路と命令解析回路の一方又は両方は、上述のいずれかの構成の非同期カウンタを有する。
また、本発明の半導体装置は、アンテナに負荷変調を加える変調回路を有する。変調回路は、上述のいずれかの構成の非同期カウンタを有する。
また、本発明の半導体装置は、データを記憶する記憶素子を複数含む記憶回路と、記憶回路に対するデータの書き込みとデータの読み出しを制御する制御回路を有する。記憶回路と制御回路の一方又は両方は、上述のいずれかの構成の非同期カウンタを有する。
また、本発明の半導体装置は、データを記憶する記憶素子を複数含む記憶回路と、前記記憶回路に対するデータの書き込みとデータの読み出しを制御する制御回路と、前記アンテナに負荷変調を加える変調回路と、前記記憶回路に記憶されたデータを前記変調回路に供給する記憶制御回路を有する。記憶回路、制御回路、変調回路及び記憶制御回路から選択された一つ又は複数は、上述のいずれかの構成の非同期カウンタを有する。
なお、上記の構成において、アンテナ、非同期カウンタおよび電源電圧を生成する回路は、同一の絶縁表面上に設けられていてもよい。また、アンテナ、非同期カウンタ、電源電圧を生成する回路および遅延回路として機能する回路は、同一の絶縁表面上に設けられていてもよい。
搬送波は、一定期間毎に変調されるものであり、搬送波の1周期とは、その1つの一定期間である。また、トランジスタには、1つのチャネル形成領域を含むもの、複数のチャネル形成領域を含むものがある。トランジスタが複数のチャネル形成領域を含む場合、そのチャネル長は、複数のチャネル領域のチャネル長の合計の値である。
上記構成を有する本発明は、瞬間的な消費電流を低減することにより、電圧降下の発生を抑制して、さらに、動作エラーの発生を抑制することができる。また、瞬間的な消費電流を低減することにより、電源の安定化を実現することができる。
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
本発明の半導体装置の構成について、図1を参照して説明する。本発明の半導体装置100は、命令解析回路と記憶制御回路を含む回路101、記憶回路103、アンテナ104、電源回路109、復調回路110及び変調回路111を有する。半導体装置100は、アンテナ104と電源回路109を必須の構成要素としており、他の要素は、半導体装置100の用途に従って、適宜設けられる。
命令解析回路と記憶制御回路を含む回路101は、復調回路110から入力される信号に基づき、命令の解析、記憶回路103の制御、外部に送信するデータの変調回路111への出力などを行う。
記憶回路103は、記憶素子を含む回路107と、データの書き込みやデータの読み出しを制御する制御回路108を有する。記憶回路103には、少なくとも、半導体装置自体の識別番号が記憶されている。識別番号は、他の半導体装置と区別するために用いられる。
また、記憶回路103は、有機メモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、マスクROM(Read Only Memory)、PROM(Programmable Read Only Memory)、EPROM(Electrically Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)及びフラッシュメモリから選択された一種又は複数種を有する。有機メモリは、一対の導電層間に有機化合物を含む層が挟まれた3層の積層体を含む。有機メモリは、構造が単純であるため、作成工程を簡略化することができ、費用を削減することができる。また、構造が単純であるために、積層体の面積を小型化することが容易であり、大容量化を容易に実現することができる。また、不揮発性であり、電池を内蔵する必要がないという長所がある。従って、記憶回路103として、有機メモリを用いることが好ましい。
アンテナ104は、リーダ/ライタ112から供給された搬送波を、交流の電気信号に変換する。また、変調回路111により、負荷変調が加えられる。
電源回路109は、アンテナ104が変換した交流の電気信号を用いて電源電圧を生成し、各回路に電源電圧を供給する。
復調回路110は、アンテナ104が変換した交流の電気信号を復調し、復調した信号を、命令解析回路と記憶制御回路を含む回路101に供給する。
変調回路111は、命令解析回路と記憶制御回路を含む回路101から供給される信号に基づき、アンテナ104に負荷変調を加える。
リーダ/ライタ112は、アンテナ104に加えられた負荷変調を、搬送波として受信する。また、リーダ/ライタ112は、搬送波を半導体装置100に送信する。
なお、搬送波とは、リーダ/ライタ112が発する電磁波である。搬送波の周期は、通信の規格によるが、代表的には、13.56MHz、860MHz〜960MHz、2.45GHzがある。
上記の命令解析回路と記憶制御回路を含む回路101、記憶回路103、電源回路109、復調回路110及び変調回路111の各回路は、その構成に応じて、カウンタ(カウンタ回路ともいう)を有する。カウンタは、クロック信号の分周回路として用いられたり、一定数をカウントして各種制御信号を生成する際に用いられたりする回路である。
カウンタには、同期カウンタと非同期カウンタがある。同期カウンタは、クロック信号に同期して、カウンタの値が更新される構成を有する。非同期カウンタは、クロック信号に同期せず、前段のフリップフロップ回路の出力をもとに、次段のフリップフロップ回路の動作が決定する構成を有する。
本発明は、カウンタとして、非同期カウンタを用いることを特徴とする。より詳しくは、1カウントに要する期間が、搬送波の1周期よりも長い非同期カウンタを用いることを特徴とする。そして、非同期カウンタのクロック信号に同期しない動作を積極的に用いることにより、瞬間的な消費電流を低減して、電圧降下の発生を抑制し、さらに動作エラーの発生を抑制する。また、瞬間的な消費電流を低減することにより、電源の安定化を実現する。
以下に、非同期カウンタの構成について、図2、3を参照して説明する。
非同期カウンタ120は、直列に接続された複数のフリップフロップ回路131〜134を有する(図2(A)参照)。複数のフリップフロップ回路131〜134の各々は、NAND回路251〜256、インバータ回路257、258を有する(図3参照)。複数のフリップフロップ回路131〜134の各々は、少なくとも2つの入力端子(図3では、入力端子1、入力端子2、入力端子3の3つを図示)と2つの出力端子(図3では、出力端子4、出力端子5の2つを図示)を有する。複数のフリップフロップ回路131〜134の各々は、ディレイフリップフロップ(D−FF)であり、データ信号が入力端子1に、クロック信号が入力端子2に、セット信号が入力端子3に入力され、出力端子4から出力XQが出力され、出力端子5から出力Qが出力される。なお、入力端子3はなくてもよい。また、プリセット信号が入力される入力端子を有していてもよい。
非同期カウンタ120が有する複数のフリップフロップ回路131〜134のうちの1つを、1段とよぶことがある。例えば、図2に示す非同期カウンタ120は、4つのフリップフロップ回路を有しているので、4段の非同期カウンタである。
非同期カウンタ120が有する複数のフリップフロップ回路131〜134のうち、クロック信号が入力される初段のフリップフロップ回路を、一端のフリップフロップ回路とよぶことがある。そして、最終段のフリップフロップ回路を、他端のフリップフロップ回路とよぶことがある。例えば、非同期カウンタ120では、一端のフリップフロップ回路はフリップフロップ回路131であり、他端のフリップフロップ回路はフリップフロップ回路134である。
そして、非同期カウンタ120が1カウントに要する期間とは、複数のフリップフロップ回路のうち、一端のフリップフロップ回路の入力端子に信号が入力されてから、他端のフリップフロップ回路の出力端子から信号が出力されるまでの期間に相当する。例えば、図2に示す非同期カウンタ120では、フリップフロップ回路131の入力端子に信号が入力されてから、フリップフロップ回路134の出力端子から信号が出力されるまでの期間に相当する。
非同期カウンタ120が有するフリップフロップ回路は、ディレイフリップフロップに限らず、JKフリップフロップ(JK−FF)、トグルフリップフロップ(T−FF)、リセットセットフリップフロップ(RS−FF)、リセットセットトグルフリップフロップ(RST−FF)を用いた構成など、他の公知の回路構成でも構わない。非同期カウンタ120の段数も特に制限はなく、回路の機能や目的から適宜決定すればよい。
本発明に用いる非同期カウンタ120は、1カウントに要する期間が、搬送波の1周期よりも長いものであり、以下の3つの構成に大別される。第1の構成は、絶縁表面を有する基板上に設けられた薄膜トランジスタを用いることを特徴とする。第2の構成は、トランジスタのサイズに特徴を有する。第3の構成は、回路の構成に特徴を有する。
第1の構成は、薄膜トランジスタを用いることを特徴とする。具体的には、絶縁表面を有する基板上に設けられた薄膜トランジスタの特性を積極的に利用することを特徴とする。
絶縁表面を有する基板上に設けられた薄膜トランジスタからなる非同期カウンタは、典型的には、1MHz〜100MHzの動作特性を示し、非同期カウンタの1段あたりの時間は、典型的には、1nsec〜100nsecである。この場合、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間は、10nsec〜1000nsecとなる。一方、860MHz〜960MHz帯の搬送波を用いる場合は、搬送波の1周期は約1nsecである。
従って、薄膜トランジスタを用いることにより、1カウントに要する期間を、搬送波の1周期よりも長くすることができる。その結果、瞬間的な消費電流を低減させて、電源の安定化を実現し、なおかつ、電圧降下の発生を抑制し、動作エラーを防止することができる。この効果は、搬送波が860MHz〜960MHz帯、あるいは1GHz以上の帯において有効である。
なお、比較のため、単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタについて述べる。単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタを有する非同期カウンタは、典型的には、1GHz以上の動作特性を示し、非同期カウンタの1段あたりの遅延時間は、典型的には、0.01nsec〜0.1nsecである。この場合、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間は、0.1nsec〜1nsecとなる。一方、860MHz〜960MHz帯の搬送波を用いる場合は、搬送波の1周期が約1nsecである。従って、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間は、搬送波の1周期よりも短い。
第2の構成は、トランジスタのサイズに特徴を有する。非同期カウンタが1カウントに要する期間は、非同期カウンタを構成するトランジスタのサイズを最適化することにより制御することができる。一般に、トランジスタの駆動能力は、トランジスタのチャネル長が大きいほど低く、また、トランジスタのチャネル幅が小さいほど低い。
例えば、単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタであって、チャネル長0.1μmのトランジスタを有する非同期カウンタが数GHzの動作特性を示す場合、非同期カウンタの1段あたりの遅延時間は、典型的には、0.01nsec〜0.1nsecである。この場合、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間は、0.1nsec〜1nsecとなる。一方、860MHz〜960MHz帯の搬送波を用いる場合は、1周期が約1nsecである。従って、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間は、搬送波の1周期よりも短い。
そこで、本発明の第2の構成では、単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタのチャネル長を大きく設計することにより、トランジスタの駆動能力を低くする。そして、非同期カウンタの1段あたりの遅延時間を増大させ、非同期カウンタが1カウントに要する期間を、搬送波の1周期よりも長くする。
例えば、単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタのチャネル長を0.5μm〜50μmに設計すると、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間を、搬送波の1周期より長くすることが可能となる。この構成は、特に、搬送波が860MHz〜960MHz帯、あるいは1GHz以上の帯において有効である。
また、例えば、絶縁表面を有する基板上に設けられた薄膜トランジスタであって、チャネル長0.5μmの薄膜トランジスタを有する非同期カウンタが10MHz〜100MHzの動作特性を示す場合、非同期カウンタの1段あたりの遅延時間は、典型的には、0.1nsec〜1nsecである。この場合、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間は、1nsec〜10nsecとなる。一方、13.56MHz帯の搬送波を用いる場合は、1周期が約75nsecである。従って、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間は、搬送波の1周期よりも短い。
そこで、本発明の第2の構成では、薄膜トランジスタのチャネル長を大きく設計することにより、薄膜トランジスタの駆動能力を低くする。そして、非同期カウンタの1段あたりの遅延時間を増大させ、非同期カウンタが1カウントに要する期間を搬送波の1周期よりも長くする。薄膜トランジスタの特性に依存するが、代表的には、チャネル長を3μm〜100μmとすると、10段前後の非同期カウンタが1カウントに要する期間が搬送波の1周期より長くすることができる。この構成は、特に、搬送波が13.56MHz帯において有効である。
より詳しくは、通常の半導体装置では、非同期カウンタに用いるトランジスタのチャネル長と、周辺の論理回路に用いるトランジスタのチャネル長は同じであるが、本発明は、非同期カウンタに用いるトランジスタのチャネル長を大きく設計する。そして、非同期カウンタの1段あたりの遅延時間を増大させ、1カウントに要する期間を搬送波の1周期よりも長くする。そして、搬送波の1周期の期間に消費される消費電流を低減することを特徴とする。
例えば、回路101、103、109、110、111から選択された1種又は複数種に含まれる非同期カウンタを第1の回路とよび、回路101、103、109、110、111を構成する回路であって、非同期カウンタ以外の回路を第2の回路とよぶ。第2の回路は、第1の回路と同様、フリップフロップ回路を有する。第2の回路は、例えば、静止レジスタ、シフトレジスタに相当する。上記の第2の構成では、第1の回路が含むフリップフロップ回路のトランジスタのチャネル長L1は、第2の回路が含むフリップフロップ回路を構成するトランジスタのチャネル長L2よりも大きい。つまり、L1>L2を満たす。
第3の構成は、回路構成に特徴を有する。第3の構成は、非同期カウンタを構成する論理回路の出力端子に遅延回路を接続することを特徴とする。より詳しくは、第3の構成では、複数のフリップフロップ回路131〜134に加えて、遅延回路121〜124を有することを特徴とする(図2(A)参照)。遅延回路121〜124は、抵抗素子125、容量素子126、又は直列に接続された複数(偶数個)のインバータ回路127、128から選ばれた1つ又は複数に相当する(図2(B)〜(D)参照)。遅延回路は、複数のフリップフロップ回路から選択された1つ又は複数の出力端子に接続される。つまり、遅延回路121〜124は、1つの素子、複数の素子、複数のインバータ、1つの素子と複数のインバータ、複数の素子と複数のインバータのいずれかに相当する。1つの素子とは、抵抗素子125または容量素子126に相当する。複数の素子とは、1つの抵抗素子125と1つの容量素子126、1つの抵抗素子125と複数の容量素子、複数の抵抗素子と1つの容量素子126、複数の抵抗素子、複数の容量素子、複数の抵抗素子と複数の容量素子に相当する。
遅延回路として、容量素子を用いる場合は、次段のフリップフロップ回路の入力端子の寄生容量を用いてもよい。つまり、次段の論理回路を構成するトランジスタのチャネル幅を大きくし、そのトランジスタのゲート容量を用いてもよい。遅延回路121〜124の配置による遅延時間は、受信する搬送波に応じて、適宜設定するとよい。
なお、上記の説明では、第1の構成、第2の構成、第3の構成の各々について別々に説明したが、本発明は、第1の構成、第2の構成及び第3の構成から選択された複数の構成を有していてもよい。つまり、本発明は、複数の構成を組み合わせた構成でもよい。複数の構成を組み合わせることにより、非同期カウンタが1カウントに要する期間を、搬送波の1周期よりも長くしてもよい。
本発明の非同期カウンタ120が奏する有利な効果について、時間と電流の関係を示すグラフを用いて説明する(図4(A)参照)。グラフに示す波形は、非同期カウンタ120が「1111」から「0000」に変化する動作を行ったときの波形である。また、比較のために、グラフには、同期カウンタの波形と、本発明とは異なる非同期カウンタの波形を示す。また、同期カウンタと非同期カウンタは、いずれも4桁の2進カウンタである。
本発明と異なる非同期カウンタとは、上述の第1の構成、第2の構成及び第3の構成に該当しない構成の非同期カウンタという意味である。具体的には、本発明と異なる非同期カウンタとは、以下の4つの場合のいずれかに該当する。1つは非同期カウンタが薄膜トランジスタを有し、1MHz〜100MHzの動作特性を示さない場合、1つは非同期カウンタが単結晶シリコンをチャネル部に用いたトランジスタを有し、チャネル長が0.5〜50μmを満たさない場合である。また、1つは非同期カウンタが薄膜トランジスタを有し、チャネル長が3〜100μmを満たさない場合、1つは遅延回路を有していない場合である。
波形141は同期カウンタの波形であり、波形142は本発明とは異なる非同期カウンタの波形である。波形143と波形144は、前述した第1の構成、第2の構成又は第3の構成の非同期カウンタ120の波形である。波形141、波形142及び波形143は、それぞれカウンタの1段あたりの遅延時間が異なっている。
波形141から、同期カウンタは、1つの動作に時間Aが必要である。また、波形141から、1つの動作を行うのに、同期カウンタに最大で電流aが流れていることが分かる。波形142から、非同期カウンタは、1つの動作に時間Bが必要であり、最大で電流bが流れていることが分かる。波形143から、非同期カウンタ120は、1つの動作に時間Cが必要であり、最大で電流cが流れることが分かる。波形144から、非同期カウンタ120は、1つの動作に時間Dが必要であり、最大で電流dが流れることが分かる。
時間A、時間B、時間C、時間Dは、A<B<C<Dを満たし、電流値a、電流値b、電流値c、電流値dは、a>b>c>dを満たす。このグラフから、本発明は、非同期カウンタを用いることにより、1カウントに要する期間を制御し、瞬間的な消費電流を低減することができるという有利な効果を奏することが分かる。この効果は、リーダ/ライタから送信される電磁波を基に、電源電圧を生成する半導体装置にとって、特に有利な効果である。その理由として、電磁波を基に、電源電圧を生成する半導体装置は、搬送波の1周期の期間に消費される電流が大きいと、電圧降下が生じ、動作エラーが生じる可能性があるからである。
なお、上記の効果は、1つの動作に必要な時間が、搬送波の1周期よりも大きい場合に限る。そこで、以下には、一例として、搬送波の1周期が時間Eの場合に生じる電圧降下について、図4(B)、(C)を用いて説明する。
図4(B)において、波形145は搬送波の波形である。また図4(C)において、波形146〜149は、電圧降下を起因として、電源電圧(VDD)から低下した電圧値を示す。動作エラーが生じない電圧値はVa以上とする。
波形148と波形149は、第1の構成、第2の構成又は第3の構成を有する非同期カウンタ120に生じた電圧降下の波形である。また、波形146は同期カウンタに生じた電圧降下の波形、波形147は本発明の第1の構成、第2の構成及び第3の構成に当てはまらない非同期カウンタに生じた電圧降下の波形である。時間A、時間B、時間C、時間Dは、A<B<E<C<Dを満たす。
図4(C)から、本発明に用いる非同期カウンタ120は、Va以下にまで電圧値が下がっていないことが分かる。これは、非同期カウンタ120のカウンタの1段あたりの遅延時間を制御することにより、1カウントに要する期間が搬送波の1周期より大きく設定され、搬送波の1周期の期間に消費される消費電流を低減することができているためである。
一方、波形146および波形147は、Va以下にまで電圧値が下がってしまうことが分かる。これは、同期カウンタおよび非同期カウンタの1カウントに要する期間が、搬送波の1周期の期間よりも短いためである。また、搬送波の1周期の期間に消費される消費電流が大きいためである。
本発明の半導体装置の作製方法について、図面を参照して説明する。より詳しくは、薄膜トランジスタ、記憶素子及びアンテナとして機能する導電層を含む半導体装置の作製方法について図面を参照して説明する。薄膜トランジスタは、非同期カウンタ、電源回路等の半導体装置を構成する各回路を構成する素子である。
基板701(基体ともよぶ)の一表面に、剥離層702を形成する(図5(A)参照)。基板701は、絶縁表面を有する。基板701がガラスからなる場合は、その面積や形状に大きな制限はない。そのため、基板701として、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形の単結晶シリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。また、基板701がプラスチックからなる場合、作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性のプラスチックを用いる必要がある。後述するが、好適には、ガラスからなる基板701上に薄膜トランジスタを設けた後、当該薄膜トランジスタを剥離して、剥離したトランジスタをプラスチックからなる基板上に設けるとよい。
上記の工程では、剥離層702は、基板701の全面に設けているが、必要に応じて、基板701の全面に剥離層702を設けた後に、フォトリソグラフィ法によりパターニングして、選択的に設けてもよい。また、基板701に接するように剥離層702を形成しているが、必要に応じて、基板701に接するように下地となる絶縁層を形成し、当該絶縁層に接するように剥離層702を形成してもよい。
剥離層702は、公知の手段(スパッタリング法やプラズマCVD法等)により、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)等から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる層を、単層又は積層して形成する。剥離層702として珪素を含む層を形成した場合、その珪素を含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれの場合でもよい。
次に、剥離層702を覆うように、下地となる絶縁層703を形成する。絶縁層703は、公知の手段(スパッタリング法やプラズマCVD法等)により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む層を、単層又は積層で形成する。珪素の酸化物材料とは、珪素(Si)と酸素(O)を含む物質であり、酸化珪素、窒素を含む酸化珪素等が該当する。珪素の窒化物材料とは、珪素と窒素(N)を含む物質であり、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素等が該当する。下地となる絶縁層703は、基板701からの不純物の侵入を防止するブロッキング膜として機能する。
次に、絶縁層703上に、非晶質半導体層704を形成する。非晶質半導体層704は、公知の手段(スパッタリング法、LPCVD法、プラズマCVD法等)により形成する。続いて、非晶質半導体層704を公知の結晶化法(レーザ結晶化法、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法とレーザ結晶化法を組み合わせた方法等)により結晶化して、結晶質半導体層を形成する。その後、得られた結晶質半導体層を所望の形状にパターニングして、結晶質半導体層706〜710を形成する(図5(B)参照)。
結晶質半導体層706〜710の作成工程の一例について、以下に説明する。まず、プラズマCVD法を用いて、非晶質半導体層を形成する。次に、結晶化を助長する金属元素であるニッケルを含む溶液を非晶質半導体層上に保持させた後、非晶質半導体層に脱水素化の処理(500℃、1時間)と、熱結晶化の処理(550℃、4時間)を行って結晶質半導体層を形成する。その後、必要に応じてレーザ光を照射し、フォトリソグラフィ法を用いたパターニング処理によって結晶質半導体層706〜710を形成する。レーザ結晶化法で結晶質半導体層706〜710を形成する場合、気体レーザ又は固体レーザを用いる。気体レーザと固体レーザは、連続発振又はパルス発振のどちらでもよい。
なお、結晶化を助長する金属元素を用いて非晶質半導体層の結晶化を行うと、低温で短時間の結晶化が可能となるうえ、結晶の方向が揃うという利点がある一方、金属元素が結晶質半導体層に残存するためにオフ電流が上昇し、特性が安定しないという欠点がある。そこで、結晶質半導体層上に、ゲッタリングサイトとして機能する非晶質半導体層を形成するとよい。ゲッタリングサイトとなる非晶質半導体層には、リンやアルゴンの不純物元素を含有させる必要があるため、好適には、アルゴンを高濃度に含有させることが可能なスパッタリング法で形成するとよい。その後、加熱処理(RTA法やファーネスアニール炉を用いた熱アニール等)を行って、非晶質半導体層中に金属元素を拡散させ、続いて、当該金属元素を含む非晶質半導体層を除去する。そうすると、結晶質半導体層中の金属元素の含有量を低減又は除去することができる。
次に、結晶質半導体層706〜710を覆うゲート絶縁層705を形成する。ゲート絶縁層705は、公知の手段(プラズマCVD法やスパッタリング法)により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む層を、単層又は積層して形成する。
次に、ゲート絶縁層705上に、第1の導電層と第2の導電層を積層して形成する。第1の導電層は、公知の手段(プラズマCVD法やスパッタリング法)により、20〜100nmの厚さで形成する。第2の導電層は、公知の手段により、100nm〜400nmの厚さで形成する。
第1の導電層と第2の導電層は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、等から選択された元素又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成する。または、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素に代表される半導体材料により形成する。
第1の導電層と第2の導電層の組み合わせの例を挙げると、窒化タンタルからなる層とタングステンからなる層、窒化タングステンからなる層とタングステンからなる層、窒化モリブデンからなる層とモリブデンからなる層等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、第1の導電層と第2の導電層を形成した後に、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層構造ではなく、3層構造の場合は、モリブデンからなる層とアルミニウムからなる層とモリブデンからなる層の積層構造を採用するとよい。
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成し、ゲート電極とゲート線を形成するためのエッチング処理を行って、ゲート電極として機能する導電層716〜725を形成する。
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成し、結晶質半導体層706、708〜710に、イオンドープ法又はイオン注入法により、N型を付与する不純物元素を低濃度に添加して、不純物領域711、713〜715とチャネル形成領域780、782〜784を形成する。N型を付与する不純物元素は、15族に属する元素を用いれば良く、例えばリン(P)、砒素(As)を用いる。
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成し、結晶質半導体層707に、P型を付与する不純物元素を添加して、不純物領域712とチャネル形成領域781を形成する。P型を付与する不純物元素は、例えばボロン(B)を用いる。
次に、ゲート絶縁層705と導電層716〜725を覆うように、絶縁層を形成する。絶縁層は、公知の手段(プラズマCVD法やスパッタリング法)により、珪素、珪素の酸化物又は珪素の窒化物の無機材料を含む層や、有機樹脂などの有機材料を含む層を、単層又は積層して形成する。次に、絶縁層を、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングして、導電層716〜725の側面に接する絶縁層(サイドウォールともよぶ)739〜743を形成する(図5(C)参照)。また、絶縁層739〜743の作成と同時に、絶縁層705をエッチングして、絶縁層734〜738を形成する。絶縁層739〜743は、後にLDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際のドーピング用のマスクとして用いる。
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成する。そして、そのレジストマスクと絶縁層739〜743をマスクとして用いて、結晶質半導体層706、708〜710にN型を付与する不純物元素を添加して、第1の不純物領域(LDD領域ともよぶ)727、729、731、733と、第2の不純物領域726、728、730、732とを形成する。第1の不純物領域727、729、731、733の不純物元素の濃度は、第2の不純物領域726、728、730、732の不純物元素の濃度よりも低い。上記工程を経て、Nチャネル型の薄膜トランジスタ744、746〜748と、Pチャネル型の薄膜トランジスタ745が完成する。
続いて、薄膜トランジスタ744〜748を覆うように、絶縁層を単層又は積層して形成する(図6(A)参照)。薄膜トランジスタ744〜748を覆う絶縁層は、公知の手段(SOG法、液滴吐出法等)により、珪素の酸化物や珪素の窒化物等の無機材料、ポリイミド、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ、シロキサン等の有機材料等により、単層又は積層で形成する。シロキサンとは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。また、置換基として、フルオロ基を用いてもよい。また、置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
例えば、薄膜トランジスタ744〜748を覆う絶縁層が3層構造の場合、1層目の絶縁層749として酸化珪素を含む層を形成し、2層目の絶縁層750として樹脂を含む層を形成し、3層目の絶縁層751として窒化珪素を含む層を形成するとよい。
なお、絶縁層749〜751を形成する前、又は絶縁層749〜751のうちの1つ又は複数を形成した後に、半導体層の結晶性の回復や半導体層に添加された不純物元素の活性化、半導体層の水素化を目的とした加熱処理を行ってもよい。加熱処理には、熱アニール、レーザアニール法又はRTA法などを適用するとよい。
次に、フォトリソグラフィ法により、絶縁層749〜751をエッチングして、第2の不純物領域726、728、730、732、不純物領域785を露出させる開口部を形成する。続いて、開口部を充填するように、導電層を形成し、当該導電層をパターン加工して、ソース配線又はドレイン配線として機能する導電層752〜761を形成する。
導電層752〜761は、公知の手段(プラズマCVD法やスパッタリング法)により、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ネオジウム(Nd)等から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、アルミニウムを主成分とし珪素を含む材料、アルミニウムを主成分とし、ニッケル、炭素及び珪素から選択された1種又は複数種とを含む材料に相当する。導電層752〜761は、例えば、バリア層と珪素を含むアルミニウム層とバリア層の積層構造、バリア層と珪素を含むアルミニウム層と窒化チタン層とバリア層の積層構造を採用するとよい。なお、珪素を含むアルミニウム層が含むシリコンは、0.1wt%〜5wt%とする。また、バリア層とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜に相当する。アルミニウムや珪素を含むアルミニウムは、抵抗値が低く、安価であるため、導電層752〜761を形成する材料として最適である。また、上層と下層のバリア層を設けると、アルミニウムや珪素を含むアルミニウムのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンからなるバリア層を形成すると、結晶質半導体層上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元して、結晶質半導体層とバリア層の接続不良の発生を抑制することができる。
次に、導電層752〜761を覆うように、絶縁層762を形成する(図6(B)参照)。絶縁層762は、公知の手段(SOG法、液滴吐出法等)を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。絶縁層762は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。
続いて、フォトリソグラフィ法により、絶縁層762をエッチングして、導電層757、759、761を露出させる開口部を形成する。続いて、開口部を充填するように、導電層を形成する。導電層は、公知の手段(プラズマCVD法やスパッタリング法)を用いて、導電性材料により形成する。次に、導電層をパターン加工して、導電層763〜765を形成する。
導電層763〜765は、記憶素子が含む一対の導電層のうちの一方の導電層となる。従って、好適には、導電層763〜765は、チタン、又はチタンを主成分とする合金材料若しくは化合物材料により、単層又は積層で形成するとよい。チタンは、抵抗値が低いため、記憶素子のサイズの縮小につながり、高集積化を実現することができる。また、導電層763〜765を形成するためのフォトリソグラフィ工程においては、下層の薄膜トランジスタ744〜748にダメージを与えないために、ウエットエッチング加工を行うとよく、エッチング剤にはフッ化水素又はアンモニア過水を用いるとよい。
次に、導電層763〜765を覆うように、絶縁層766を形成する。絶縁層766は、公知の手段(SOG法、液滴吐出法等)を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。また、絶縁層766は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。続いて、フォトリソグラフィ法により、絶縁層766をエッチングして、導電層763〜765を露出させる開口部767〜769を形成する。
次に、導電層765に接するように、アンテナとして機能する導電層786を形成する(図7(A)参照)。導電層786は、公知の手段(プラズマCVD法、スパッタリング法、印刷法、液滴吐出法)を用いて、導電性材料により形成する。好ましくは、導電層786は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。
具体的には、導電層786は、スクリーン印刷法により、銀を含むペーストを用いて形成し、その後、50〜350℃の加熱処理を行って形成する。又は、スパッタリング法によりアルミニウム層を形成し、当該アルミニウム層をパターン加工することにより形成する。アルミニウム層のパターン加工は、ウエットエッチング加工を用いるとよく、ウエットエッチング加工後は200〜300℃の加熱処理を行うとよい。
次に、導電層763、764に接するように有機化合物を含む層787を形成する(図7(B)参照)。有機化合物を含む層787は、公知の手段(液滴吐出法や蒸着法等)により形成する。続いて、有機化合物を含む層787に接するように、導電層771を形成する。導電層771は、公知の手段(スパッタリング法や蒸着法等)により形成する。
以上の工程を経て、導電層763、有機化合物を含む層787及び導電層771の積層体からなる記憶素子789と、導電層764、有機化合物を含む層787及び導電層771の積層体からなる記憶素子790が完成する。
なお、上記の作成工程では、有機化合物を含む層787の耐熱性が強くないため、アンテナとして機能する導電層786を形成する工程の後に、有機化合物を含む層787を形成する工程を行うことを特徴とする。
次に、記憶素子789、790、アンテナとして機能する導電層786を覆うように、公知の手段(SOG法、液滴吐出法等)により、保護層として機能する絶縁層772を形成する。絶縁層772は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの炭素を含む層、窒化珪素を含む層、窒化酸化珪素を含む層、有機材料(好ましくはエポキシ樹脂)により形成する。
次に、剥離層702が露出するように、フォトリソグラフィ法により、絶縁層703、749、750、751、762、766をエッチングして、開口部773、774を形成する(図8(A)参照)。
次に、開口部773、774にエッチング剤を導入して、剥離層702を除去する(図8(B)参照)。エッチング剤は、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。例えば、三フッ化塩素(ClF3)、三フッ化窒素(NF3)、三フッ化臭素(BrF3)、フッ化水素(HF)がある。なお、エッチング剤として、フッ化水素を使用する場合は、剥離層702として、酸化珪素からなる層を用いる。
上記工程を経て、薄膜トランジスタ744〜748と、記憶素子789、790の素子群と、アンテナとして機能する導電層786とを含む薄膜集積回路791が、基板701から剥離される。
薄膜集積回路791が剥離された基板701は、コストの削減のために、再利用するとよい。また、絶縁層772は、剥離層702を除去した後に、薄膜集積回路791が飛散しないように、設けたものである。薄膜集積回路791は小さく薄く軽いために、剥離層702を除去した後は、基板701に密着していないために飛散しやすい。しかしながら、薄膜集積回路791上に絶縁層772を形成することで、薄膜集積回路791に重みが付き、基板701からの飛散を防止することができる。また、薄膜集積回路791単体では薄くて軽いが、絶縁層772を形成することで、巻かれた形状になることがなく、ある程度の強度を確保することができる。
次に、薄膜集積回路791の一方の面を、第1の基板776に接着させて、基板701から完全に剥離する(図9参照)。続いて、薄膜集積回路791の他方の面を、第2の基板775に接着させ、その後加熱処理と加圧処理の一方又は両方を行って、薄膜集積回路791を、第1の基板776と第2の基板775により封止する。
第1の基板776と第2の基板775は、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなるフィルム、繊維質な材料からなる紙、基材フィルム(ポリエステル、ポリアミド、無機蒸着フィルム、紙類等)と接着性合成樹脂フィルム(アクリル系合成樹脂、エポキシ系合成樹脂等)との積層フィルムなどに相当する。フィルムは、加熱処理と加圧処理により、被処理体と接着されるものである。加熱処理と加圧処理を行う際には、フィルムの最表面に設けられた接着層か、又は最外層に設けられた層(接着層ではない)を加熱処理によって溶かし、加圧により接着する。
また、第1の基板776と第2の基板775の表面には接着層が設けられていてもよいし、接着層が設けられていなくてもよい。接着層は、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ビニル共重合樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等の接着剤を含む層に相当する。
第1の基板776と第2の基板775がプラスチックからなる場合、薄型、軽量で、曲げることが可能であるためデザイン性に優れ、フレキシブルな形状への加工が容易である。また、耐衝撃性に優れ、様々な物品に貼り付けたり、埋め込んだりすることが容易であり、多種多様な分野で活用することができる。
上記の構成において、記憶素子789、790は、一対の導電層間に、有機化合物を含む層が設けられた素子であり、データの書き込みは、一対の導電層を短絡させることにより行う。データの読み出しは、記憶素子789、790の抵抗値の相違を読み取ることにより行う。記憶素子789、790は、不揮発性である点、データの書き換えが不可能である点、データの書き込みを行っていない記憶素子がある限り、データの追記が可能である点を特徴とする。また、3層の積層体からなるため、作製が簡単である点を特徴とする。また、積層部分の面積を縮小が容易であるため、高集積化を容易に実現することができる点を特徴とする。
本発明の半導体装置の作製方法について、図10、11を参照して説明する。
基板701上に、薄膜トランジスタ744〜748、記憶素子789、790及びアンテナとして機能する導電層786が設けられている。ここまでの工程は、導電層801、802、803、804を形成する点以外は、図5〜図7(B)に示す工程と同様であるため、説明を省略する(図10(A)参照)。
次に、複数の素子を覆うように、絶縁層805を形成する。続いて、導電層802、804の一部が露出するように、絶縁層805を選択的に除去する。
次に、剥離層702が露出するように、フォトリソグラフィ法により、絶縁層703、749、750、751、762、766、805をエッチングして、開口部773、774を形成する(図10(B)参照)。続いて、開口部773、774にエッチング剤を導入して、剥離層702を除去する。
次に、異方性導電ペースト806を用いて、薄膜集積回路791を基板809に接着させると共に、基板701から、薄膜集積回路791を剥離する(図11参照)。
なお、薄膜集積回路791を基板809に接着する際、導電層802と導電層807、導電層804と導電層808が電気的に接続されるようにする。基板809には、画像を表示する画素回路や他の演算回路が設けられており、これらの回路は、導電層807、808と電気的に接続されている。
本発明の半導体装置の作製方法について、図12、13を参照して説明する。
基板701上に、薄膜トランジスタ744〜748、記憶素子789、790、アンテナとして機能する導電層786が設けられている。ここまでの工程は、導電層821、822を形成する以外は、図5〜図7(B)に示す工程と同様であるため、説明を省略する(図12(A)参照)。導電層821は、薄膜トランジスタ744のソース電極又はドレイン電極に接続し、かつ基板701に接している。また、導電層822は、薄膜トランジスタ745のソース電極又はドレイン電極に接続し、なおかつ基板701に接している。
次に、剥離層702が露出するように、フォトリソグラフィ法により、絶縁層703、749、750、751、762、766、772をエッチングして、開口部773、774を形成する(図12(B)参照)。続いて、開口部773、774にエッチング剤を導入して、剥離層702を除去する。
次に、薄膜集積回路791の一方の面に、基板825を貼り付けて、基板701から薄膜集積回路791を剥離する(図13(A)参照)。次に薄膜集積回路791の他方の面を、異方性導電ペースト806を介して、導電層807、808が設けられた基板809に貼り付ける(図13(B)参照)。基板809には、例えば、画像を表示する画素部や、他の演算回路が設けられており、導電層807、808は、画素部や他の演算回路と電気的に接続されている。
本発明の半導体装置は、RFID、ICタグ、無線チップ、電子タグ等に相当するものであり、本発明の半導体装置を用いたものとして、ICカードがある。以下には、本発明の半導体装置を用いたICカードについて、図14を参照して説明する。
ICカードは、アンテナとして機能する導電層612が設けられた基板610上に、薄膜集積回路611が貼り付けられている。基板610上の導電層612と、薄膜集積回路611を構成する薄膜トランジスタ614に接続された導電層615とは、異方性導電ペースト616を介して、電気的に接続されている(図14(C)、(D)参照)。なお、基板610には、プラスチックからなる基板を用いることが好適である。そうすると、薄型、軽量で、曲げることが可能であるためデザイン性に優れ、フレキシブルな形状への加工が容易である(図14(B)参照)。また、耐衝撃性に優れたICカードを提供することができる。
薄膜集積回路611には、上記の実施の形態において説明した非同期カウンタの他、命令解析回路、記憶制御回路、記憶回路、電源回路、復調回路、変調回路から選択された1種又は複数種を設けるとよい。また、ICカードは、アンテナとして機能する導電層612を介して、リーダ/ライタと、電磁波の送信又は受信を行う。
本発明の半導体装置は、電磁波の送信と受信ができるという機能を活用することにより、その用途は広範にわたる。例えば、半導体装置51を、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図15(A)参照)、書籍類、包装用容器類(包装紙やボトル等、図15(B)参照)、記録媒体(DVDやビデオテープ等、図15(C)参照)、乗物類(自転車等、図15(D)参照)、装身具(鞄や眼鏡等、図15(E)参照)、食品類、衣類、生活用品類、電子機器(液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、携帯端末等)等に貼り付けたり、埋め込んだりして活用される。
例えば、紙幣、硬貨、証書類なら、その表面に貼り付けたり、埋め込んだりする。また、書籍類なら、表紙である紙に貼り付けたり、埋め込んだりする。包装容器類なら、包装容器類を構成する有機樹脂に、貼り付けたり、埋め込んだりする。また、半導体装置が含む記憶回路に識別番号を記憶させることにより、半導体装置に識別機能を持たせれば、半導体装置の用途をさらに広げることができる。例えば、本発明の半導体装置を、物品管理システム、認証機能システム、流通システム等に活用することにより、システムの高機能化、多機能化、付加価値化を図ることができる。本実施例は、他の実施の形態、他の実施例と自由に組み合わせることができる。
本発明の半導体装置の構成を説明するための図。
本発明の半導体装置の構成を説明するための図。
本発明の半導体装置の構成を説明するための図。
本発明の半導体装置の構成を説明するための図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
本発明の半導体装置の構成を説明するための図。
本発明の半導体装置の構成を説明するための図。