本発明は、携帯電話機等の移動体通信端末および移動体通信方法に係わり、たとえばローミング時や交通機関の利用時に隣接チャネル監視周期、着信監視周期等の通信パラメータを変更することのできる移動体通信端末および移動体通信方法に関する。
移動体通信端末の通信方式は従来から幾つかの方式が存在する。たとえば、日本で採用されているPDC(Personal Digital Cellular)や、特に欧州や北米で用いられるGSM(Global Systems for Mobile communications)といった通信方式である。これらの通信方式の間に通信の互換性は存在していない。したがってユーザは、自己の所持する移動体通信端末を使用するためには、その移動体通信端末の通信方式で通信を行うネットワーク内にいることが必要となる。
近年、既存のCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)に比べて比較的広い周波数帯域を使用するW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)が標準規格となった。このようにして、W−CDMA規格に沿った移動体通信端末であれば、日本国内だけでなく外国でも使用することのできる通信環境が整いつつある。国内の携帯電話事業者の通信サービスを海外で該当するエリアの事業者設備を用いて受けることができるようにするサービスは、国際ローミングと呼ばれている。
ところで、移動体通信端末は自動車等の移動手段を用いて移動を行いながら基地局と通信を行う場合が多い。このとき、移動体通信端末の移動速度に応じてセルの検出やセルの監視の周期を変更することが提案されている(たとえば特許文献1参照)。これは、たとえば移動速度が速い場合ほど、早期にハンドオーバとなる可能性が高いので、セル検出やセル監視を行う周期を短くする要請があるからである。
特開2001−169339号公報(第0063段落、図9)
移動体通信端末を外国に持っていって国際ローミングを行う際にも、同様に移動速度とセル検出やセル監視の周期が問題となる可能性がある。ところが、外国では国内と通信に関する各種の状況が異なっている場合が多く、国内で適用していた移動速度に対する周期の増減の内容をそのまま適用しても、必ずしも良好な通信結果が得られるものではない。すなわち、接続先のネットワークによっては、前記した監視周期を移動体通信端末の移動速度の変化に係らず一定にして、他の通信パラメータを移動速度に応じて変更した方がよい結果を招くような場合がある。また、移動体通信端末の移動速度の変化に係らず通信パラメータをそのネットワークに依存させた一定のものに切り替えるだけでよい場合もある。更に、移動体通信端末の移動速度に応じて通信パラメータを変更した方がよい場合であっても国内の場合と異なった変更内容になる場合もある。国際ローミングで通信パラメータが接続先のネットワークに対して適切でないと、通信性能を十分発揮することができないといった不都合が発生する。
また、移動速度検出性能が低い端末では移動速度の検出に誤差や誤りが発生し、誤った通信パラメータを設定してしまうことがある。すなわち移動速度に対する周辺セルの探索周期などの通信パラメータをそのまま適用しても必ずしも端末の通信性能向上とならない場合がある。
通信パラメータの設定が適切でないと、通信性能を十分発揮することができないといった不都合が発生する。また、移動速度検出手段を有しない移動体通信端末でも通信パラメータごとに設定を切り替える要請がある。
そこで本発明の目的は、ローミング先等のネットワークの通信環境が異なっても通信を良好に行うことのできる移動体通信端末および移動体通信方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、移動速度に係らずローミング先のネットワークと通信を良好に行うことのできる移動体通信端末および移動体通信方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、各種交通機関を利用する場合に、交通機関の違いによっても、通信を良好に行うことのできる移動体通信端末および移動体通信方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、各種交通機関を利用する場合に、移動速度検出機能がない、または移動速度検出の性能が低い場合であっても通信を良好に行うことのできる移動体通信端末および移動体通信方法を提供することにある。
本発明では、(イ)乗車券の確認を行う改札時にその乗車の対象となる路線についての路線情報を取得する路線情報取得手段と、(ロ)この路線情報取得手段によって取得される路線情報から得られる路線のそれぞれについて、予め各種の通信パラメータごとにネットワーク接続時にそのネットワークとの接続に適した情報としての接続情報を対応付けた通信パラメータ対応データベースと、(ハ)路線情報取得手段によって取得される路線情報から乗車の対象となる路線を判別する路線判別手段と、(ニ)この路線判別手段によって判別された路線について通信パラメータごとの接続情報を通信パラメータ対応データベースから検索する検索手段と、(ホ)この検索手段の検索結果として得られた接続情報を通信パラメータごとに設定する通信パラメータ設定手段とを移動体通信端末に具備させる。
また、本発明では、(イ)乗車券の確認を行う改札時にその乗車の対象となる路線についての路線情報を取得する路線情報取得手段と、(ロ)この路線情報取得手段によって取得される路線情報から得られる路線のそれぞれについて、移動速度と関係付けて、予め各種の通信パラメータごとにネットワーク接続時にそのネットワークとの接続に適した情報としての接続情報を対応付けた通信パラメータ対応データベースと、(ハ)路線情報取得手段によって取得される路線情報から乗車の対象となる路線を判別する路線判別手段と、(ニ)移動速度を判別する移動速度判別手段と、(ホ)路線判別手段によって判別された路線および移動速度判別手段によって判別された移動速度に対して、通信パラメータごとの接続情報を通信パラメータ対応データベースから検索する検索手段と、(へ)この検索手段の検索結果として得られた接続情報を通信パラメータごとに設定する通信パラメータ設定手段とを移動体通信端末に具備させる。
更に、本発明では、(イ)乗車券の確認を行う改札時にその乗車の対象となる路線についての路線情報を取得する路線情報取得ステップと、(ロ)この路線情報取得ステップによって取得される路線情報から乗車の対象となる路線を判別する路線判別ステップと、(ハ)路線のそれぞれについて、予め各種の通信パラメータごとにネットワーク接続時にそのネットワークとの接続に適した情報としての接続情報を対応付けた通信パラメータ対応データベースを用い、路線判別ステップによって判別された路線に対応する接続情報を検索する検索ステップと、(ニ)この検索ステップによる検索結果として得られた接続情報を通信パラメータごとに設定する通信パラメータ設定ステップとを移動体通信方法に具備させる。
更にまた、本発明では、(イ)乗車券の確認を行う改札時にその乗車の対象となる路線についての路線情報を取得する路線情報取得ステップと、(ロ)この路線情報取得ステップによって取得される路線情報から乗車の対象となる路線を判別する路線判別ステップと、(ハ)移動速度を判別する移動速度判別ステップと、(ニ)路線のそれぞれについて、移動速度と関係付けて、予め各種の通信パラメータごとにネットワーク接続時にそのネットワークとの接続に適した情報としての接続情報を対応付けた通信パラメータ対応データベースを用い、路線判別ステップによって判別された路線および移動速度判別ステップによって判別された移動速度に対応する接続情報を検索する検索ステップと、(ホ)この検索ステップによる検索結果として得られた接続情報を通信パラメータごとに設定する通信パラメータ設定ステップとを移動体通信方法に具備させる。
以上説明したように本発明によれば、ユーザが特別の知識や経験を持たなくても、それぞれのネットワークに適した接続情報を通信パラメータごとに用意したデータベースが存在しているので、新たなネットワークの接続時やそのネットワークで移動体通信端末の移動速度が変更されたような場合に、このデータベースを検索することで各通信パラメータが適切な接続情報に迅速に設定されるという利点がある。
また、本発明によれば、ユーザの所持する移動体通信端末がその移動速度を検出する機能を持たない場合、あるいはその機能の精度が高くない場合であっても、電車等の交通機関を利用する際に路線情報を主に利用して接続情報を設定するので、通信を良好に行う設定が可能になる。したがって、各種の移動体通信端末に対する通信の信頼性が向上し、特に低価格製品における通信品質の向上を図ることができる。
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施例におけるW−CDMAで通信する移動体通信端末の構成を表わしたものである。この移動体通信端末100は、電波の送受信を行うアンテナ101を接続した送受信部102を備えている。送受信部102は、W−CDMAによる通信を行うため、図示しないが分離結合器、発信器、PLL(Phase Locked Loop)回路、変復調部、ベースバンド信号処理を行う拡散・逆拡散器および直接波、反射波等の電波を受信し合成するレイク(Rake)受信器、フェージング周波数を測定するフェージング周波数測定回路、電界強度を測定する受信レベル測定回路等の周知の回路構成を有している。
送受信部102は、送信する信号を符号化したり、受信した信号を復号化する符号化・復号化部103を接続している。符号化・復号化部103は、たとえば音声通話用の送受信データであればPCM(Pulse Code Modulation)通信方式あるいはAMR(Adaptive Multi-Rate)通信方式で通信を行うようになっている。
符号化・復号化部103は、符号化する信号を入出力する外部インターフェースとしての入出力部104およびこれら送受信信号を記憶する記憶部105と接続されている。ここで記憶部105としては各種のものが採用可能である。たとえば、図示しないROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、IC(Integrated Circuit)カード、著作権機能の付いたあるいは付いていないメモリカード、ハードディスク等のディスク装置を挙げることができる。入出力部104としては、通話装置を構成する図示しないマイクロフォンおよびスピーカ、液晶ディスプレイに代表される表示装置、CCD(Charge Coupled Device)カメラをはじめとする画像入力装置を挙げることができる。
なお、入出力部には、入出力用のこれらの装置と接続するための通信手段が含まれてもよい。たとえばデータ通信用のインターフェースとしてのUSB(Universal Serial Bus)や、高速シリアルバスであるIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)1394、携帯情報機器向けの無線通信技術としてのブルーツース(Bluetooth)を挙げることができる。
以上説明した送受信部102、符号化・復号化部103および記憶部105は、この移動体通信端末100の各部を制御する制御部106と接続されている。制御部106は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を備えており、記憶部105あるいはこれとは別に配置されたROM等の記憶媒体に格納された制御プログラムを実行することで、その機能の多くを実現するようになっている。この制御部106は、通信に関する制御を行う通信制御部111と、移動体通信端末100自体の移動速度を検出する速度検出部112と、この移動体通信端末100の接続先のネットワークに応じた通信パラメータを選択するローミング先パラメータ選択部113と、この移動体通信端末100の接続するネットワークを特定するための情報としてのネットワーク接続先情報を取得するネットワーク接続先情報取得部114を有している。
図2は、送受信部および速度検出部による速度検出の原理的な構成を表わしたものである。送受信部102は既に説明したようにフェージング周波数を測定するフェージング周波数測定回路121と電界強度を測定する受信レベル測定回路122を備えている。速度検出部112は、これらフェージング周波数測定回路121および受信レベル測定回路122の出力を利用するようになっている。ここでフェージング周波数測定回路121は、受信信号における中間周波数信号を入力するようになっている。これは、W−CDMAにおける5MHz帯域の信号であってもよい。フェージング周波数測定回路121は、この入力された中間周波数信号から、受信レベル測定回路の測定した電界強度の包絡線に相当する信号成分を検出する。電界強度は受信レベル測定回路122から得られる。
フェージング周波数測定回路121の出力信号123は、速度検出部112のフィルタ回路124に供給される。フィルタ回路124はこの出力信号123から直流分を除去する。このようにして得られた信号125は比較回路126に入力されて、そのレベルが予め設定したしきい値信号127の信号レベルと比較される。この比較結果128はカウンタ回路129に入力される。
カウンタ回路129は、比較結果128を入力して、しきい値を超えた信号の幅あるいは周期を計数することで、フェージング周波数131を測定する。測定されたフェージング周波数131は移動速度推定回路132に入力される。移動速度推定回路132は、フェージング周波数から求められるフェージングのピッチと搬送波の波長との積を演算することで、移動体通信端末の移動速度を算出する。算出結果は、速度情報133として出力される。
もちろん、フェージング周波数が小さければ電界強度の変動が少ないことが想定され、これとは逆にフェージング周波数が大きければ電界強度の変動が大きいことが想定されるので、この関係を使用して速度情報133を演算してもよい。また、フェージング周波数と移動体通信端末100の移動速度の相関データを実験で求めて、図示しないROMに格納しておき、フェージング周波数131をキーとして対応する移動速度をこのROMから読み出して、速度情報133として出力してもよい。
これらの手法以外にも移動体通信端末100の移動速度を検出する手法が各種提案されている。たとえばGPS(Global Positioning System)システムを利用して、送受信部102から得られたGPS信号を用いて移動体通信端末100の位置情報(緯度および経度)を検出して、検出した位置情報の時間的な変化を基にして移動体通信端末100の移動速度を求めるようにしてもよい。もちろん、GPSの代わりに、更に高精度なDGPS(Difference Global Positioning System)を用いて移動体通信端末100の移動していく各位置を求めると共に、図示しないジャイロで変化する方向を検出し、更に加速度センサで速度変化の様子をチェックすることで、移動体通信端末100のそれぞれの時点における速度を検出することも可能である。移動体通信端末100の移動速度を検出する既に公表されたこれ以外の各種の手法も本発明に適用可能である。
図1に戻って説明を続ける。速度検出部112が検出した移動体通信端末100の移動速度を表わした速度情報は、速度情報格納部115に格納されるようになっている。また、ローミング先パラメータ選択部113は、接続先のネットワークに応じた各種パラメータからなる接続情報を接続情報データベース116に格納している。更に、ネットワーク接続先情報取得部114は、送受信部102が受信し符号化・復号化部103が復号した情報の中に含まれている接続対象となるネットワーク接続先情報を取得するようになっている。ネットワーク接続先情報はネットワーク接続先情報格納部117に格納される。なお、速度情報格納部115、接続情報データベース116およびネットワーク接続先情報格納部117は、制御部106内の前記したRAMの中の一部として配置されてもよいし、記憶部105がこれを兼用してもよい。
図3は、以上のような構成の移動体通信端末の動作を表わしたものである。図1と共に説明を行う。ユーザがこの移動体通信端末100の図示しない電源ボタンを押すと(ステップS201:Y)、前記したCPUがこれをソフトウェア的な押下情報として検出する。これと共に制御部106が送受信部102を動作させ、現在位置のネットワークとの間で接続動作が開始される。この結果、そのネットワークからネットワーク接続先情報を取得して前記したRAMの作業用メモリ領域に一時的に格納する(ステップS202)。CPUはこのRAMに格納したネットワーク接続先情報を、前回の電源投入時にネットワーク接続先情報格納部115に格納しておいたネットワーク接続先情報と比較して、内容が変更されたか否かを判別する(ステップS203)。この結果、ネットワーク接続先情報が変更されていれば(Y)、これを新たなネットワークについてのネットワーク接続先情報であるとしてネットワーク接続先情報格納部117に上書き保存する(ステップS204)。
ネットワーク接続先情報に変更がなければ(ステップS203:N)、ネットワーク接続先情報格納部117に対して何も行わず、CPUは移動体通信端末100の移動速度を表わした速度情報を取得するための速度情報取得タイミングが到来するのを待機することになる(ステップS205)。たとえばW−CDMA方式ではフレーム(10ms)という区間がある。そこで、その区間ごとに前記したレイク受信器が移動速度の出力を行い、このとき制御部106に対して割り込みを掛けることで移動速度を取得させるようにしてもよい。また、リアルタイムクロックを用いて計時を行う図示しないタイマを用いて一定時間が経てばレイク受信器の出力データを制御部106が取得する制御も可能である。なお、速度情報取得タイミングは、必ずしも一定時間間隔で到来する必要はない。たとえば図1に示した制御部106の処理負荷の変動に応じて速度情報取得タイミングを変化させるようなアルゴリズムを採用して、速度情報取得タイミングを制御してもよい。
予め定めた速度情報取得タイミングが到来すると(Y)、CPUは速度検出部112を指示して移動体通信端末100のその時点における速度情報を取得して前記したRAMの作業用メモリ領域に一時的に格納する(ステップS206)。そして、速度情報格納部115に格納されている前回の速度情報と比較して、これが変更されているかどうかを判別する(ステップS207)。速度情報が変更されていなければ(N)、再びステップS202に戻って処理を繰り返す。これに対して速度情報が変更されている場合には(ステップS207:Y)、新たな速度情報を速度情報格納部115に上書きする(ステップS208)。
このようにしてステップS204でネットワーク接続先情報が新しくなったとき、あるいはステップS208で速度情報が新しくなったときには、ステップS209に進んで新たなネットワーク接続先情報あるいは速度情報を基にして通信パラメータの検索が行われる(ステップS209)。そして接続先のネットワークおよび速度情報に合致した通信パラメータの設定が行われる(ステップS210)。この後、移動体通信端末100の電源がソフトウェア的にオフにならない限り(ステップS211:N)、ステップS202に戻って以上の処理が繰り返される。
図4は、図3のステップS209の検索で使用される接続情報データベースの一部を表わしたものである。接続情報データベース116には、接続先のネットワークに応じた各種パラメータからなる接続情報が格納されている。接続情報は、ローミング先を特定するためのローミング先特定情報と、移動体通信端末100の移動する速度を表わした速度情報ごとに、通信パラメータについての選択情報が格納されている。ここでローミング先特定情報としては、移動機国番号(MCC:Mobile Country Code)および事業者を識別するコードである移動機ネットワークコード(MNC:Mobile Network Code)の組み合わせを使用することができる。
通信パラメータには、たとえば、無線チャネル監視周期、隣接チャネル監視周期、閉ループ電力制御、セル探索アルゴリズム、チャネル推定、パス再割り当て平均化数が存在する。ここで「無線チャネル監視周期」とは、現在通信しているネットワーク側基地局に対して電波状況を測定する周期である。測定結果が悪くなれば他のネットワーク側基地局に切り替えることになる。このため、一般には移動体通信端末100の移動速度が速まるほど無線チャネル監視周期は短くなることになる。たとえばローミング先特定情報を構成する移動機国番号(MCC)が「001」で移動機ネットワークコード(MNC)が「01」の場合(図4ではこれを「001,01」と表わしている。)、速度情報が「0〜10km/h」の場合には、接続情報が「5秒」になっている。これが「151km/h〜」の場合には「1秒」に減少している。
「隣接チャネル監視周期」とは、通信中の基地局より弱いが電波を受信している周辺の基地局の状況を測定する周期である。これも「無線チャネル監視周期」と同様に、一般には移動体通信端末100の移動速度が速まるほど測定の周期は短くなる。
「閉ループ電力制御」とは、端末側が基地局からの受信パワーに応じて基地局に対してパワーの増減要求を通知し基地局と端末の間で最適なパワーに制御する手法をいう。通常はこの制御を行う「実行」という設定となるが、移動体通信端末100が高速で移動しているときには効果がない場合がある。そこで、このような場合には「停止」が選択され、この制御が行われない。
「セル探索アルゴリズム」は基地局との通信を行うためのアルゴリズムである。これによって、基地局とのタイミング同期、スクランブリング同定など行う。本実施例では、移動体通信端末100の移動速度に応じて「方式A」と「方式B」のいずれかのアルゴリズムを選択できるようになっている。
「チャネル推定」とは、フェージングに起因する受信信号の位相および振幅変動を推定する方式である。本実施例では「方式X」と「方式Y」の2つの方式のいずれかを移動体通信端末100の移動速度に応じて選択することで、受信性能の向上を図ることができるようになっている。
「パス再割り当て平均化数」とは、基地局から到達する電波の経路を推定したプロファイルをいう。その計算にいくつのサンプル数を平均するかを、移動体通信端末100の移動速度に応じて選択することができる。
図3のステップS209で検索を実行する際にネットワーク接続情報の変更があった場合には、ローミング先特定情報について総当りでまず検索を行い、次に速度情報として得られた該当するパラメータ行の検索を行う。ネットワーク接続情報に変更がない場合には、同一のローミング先特定情報となるので、速度情報として得られた該当するパラメータ行のみを検索するような制御も可能である。
このようにして移動体通信端末100に通信パラメータが設定される(図3ステップS210)例を挙げる。たとえば移動体通信端末100がローミング先特定情報「001,01」のネットワーク内に存在するものとする。この場合に通信パラメータの「無線チャネル監視周期」について見てみると、速度情報が0〜50km/hの間は5秒間隔であり、50km/hよりも速くなるとこれに応じて3秒とか1秒といった短い監視周期の選択情報で設定が行われることになる。通信パラメータの「隣接チャネル監視周期」について見てみると、同様に移動体通信端末100の移動速度に応じて適正なパラメータ値となる。
通信パラメータの「閉ループ電力制御」については、一般に移動速度が上がるとその制御効果がないと言われている。本実施例の場合には、ローミング先特定情報「001,01」のネットワークのときに速度情報が0〜50km/hで制御を実行し、それ以上で制御を停止するが、たとえばローミング先特定情報「001,02」のネットワークのときにはすべての速度で制御を実行するようにしている。このように移動体通信端末100が存在するネットワークごとに、通信パラメータの選択情報の適用方法を変更して設定することが可能になる。
通信パラメータの「セル探索アルゴリズム」について、本実施例で「方式A」とは探索の精度を重視したアルゴリズムであり、「方式B」とは探索に際しての消費する電流の大きさを重視したアルゴリズムである。したがって、該当する移動体通信端末100がどのような設計思想で設計されたかによっても異なるが、本実施例ではネットワークごとに、あるいは同一のネットワーク内でも速度情報によって適用するアルゴリズムを設定することができる。「チャネル推定」、「パス再割り当て平均化数」およびそれ以外の通信パラメータについても、ネットワークおよび移動体通信端末100の移動速度に応じて所望の選択情報で設定が可能になる。
図3に示した制御は、たとえば海外モードというようなモード設定を行ったときに行われるようにすることができる。これにより、移動体通信端末100が日本国内に存在する場合に、ステップS202によるネットワーク接続先情報を取得する処理を省略してその負荷の軽減を図ることができる。もちろん、移動体通信端末100が日本国内に存在する場合にはネットワークの特定の処理を省略し、移動体通信端末100の移動速度の変化に伴うパラメータ値(接続情報)の変更のみを行ってもよい。
<第1の実施例の変形例>
図5は、本発明の第1の実施例の変形例における通信パラメータ切替制御テーブルの内容を表わしたものである。この通信パラメータ切替制御テーブル141は、実施例の図4で示した接続情報データベース116に示した無線チャネル監視周期、隣接チャネル監視周期等の通信パラメータの切り替えを有効とするか無効とするかを制御するテーブルであり、たとえば図1に示すローミング先パラメータ選択部113に接続情報データベース116と共に接続される構成となっている。
この通信パラメータ切替制御テーブル141では、たとえばローミング先特定情報「001,01」のネットワークで通信パラメータの切り替えが「無効」となっている。したがって、移動機国番号(MCC)が「001」で移動機ネットワークコード(MNC)が「01」のネットワークでは、速度に応じた通信パラメータの切り替えが行われない。これに対して、たとえばローミング先特定情報「001,02」のネットワークでは、通信パラメータの切り替えが「有効」となっている。したがって、移動体通信端末100が移動する際の速度で通信パラメータは、図4の接続情報データベース116の該当する内容で切り替えが行われることになる。
このようにこの変形例では、ネットワークに応じて通信パラメータの切り替えの有効あるいは無効を設定できるようにした。したがって、たとえばある国の特定のネットワークに対して通信パラメータの各接続情報の有効あるいは無効を自在に設定することができる。通信パラメータは各オペレータ、ベンダにて、カスタマイズされているので、基地局と端末の間での接続互換性を評価する必要がある。ある国のネットワークでは各接続情報の切り替えの効果があったとしても、他の国で同様の効果があるとは保障できない。そこで未評価のネットワークに対しては、移動体通信端末100の移動速度による切替機能を停止する機能を持たせたいというニーズがある。この変形例では、このニーズを満足させることができる。
以上説明した第1の実施例では、接続情報を接続情報データベース116に格納したが、その格納される部分の名称はデータベースに限るものではない。すなわち、テーブルあるいは他の名称の記憶手段であっても構わないことは当然である。更に図4に示した各種の通信パラメータは限定的なものではなく、またこれらの一部のみがネットワークあるいは通信速度に応じて切り替えられるようなデータベースの構成であってもよい。
図6は本発明の第2の実施例における移動体通信端末の構成を表わしたものである。この移動体通信端末300は、電波の送受信を行うアンテナ301を接続した送受信部302を備えている。送受信部302は、移動体通信端末の各通信方式、例えばW−CDMAによる通信を行うため、図示しないが分離結合器、発信器、PLL回路、変復調部、ベースバンド信号処理を行う拡散・逆拡散器および直接波、反射波等の電波を受信し合成するレイク受信器を有している。
送受信部302は、送信する信号を符号化、受信した信号を復号化する、符号化・復号化部303を接続している。符号化・復号化部303には、移動体通信端末の各通信方式または送受信データのフォーマットに応じた符号化・復号化方式が用いられている。例えば音声通話用の送受信データであればPCM通信方式あるいはAMR通信方式で通信を行うようになっている。
符号化・復号化部303は、符号化する信号を入出力する外部インターフェースとしての入出力部304およびこれら送受信信号を記憶する記憶部305と接続されている。ここで記憶部305としては各種のものが採用可能である。たとえば、図示しないROM、RAM、ICカード、著作権機能の付いたあるいは付いていないメモリカード、ハードディスク等のディスク装置を挙げることができる。入出力部304としては、通話装置を構成する図示しないマイクロフォンおよびスピーカ、液晶ディスプレイに代表される表示装置、CCDカメラをはじめとする画像入力装置を挙げることができる。
なお、入出力部には、入出力用のこれらの装置と接続するための通信手段が含まれてもよい。たとえばデータ通信用のインターフェースとしてのUSBや、高速シリアルバスであるIEEE1394、携帯情報機器向けの無線通信技術としてのブルーツースを挙げることができる。
以上説明した送受信部302、符号化・復号化部303および記憶部305は、この移動体通信端末300の各部を制御する制御部306と接続されている。制御部306は、図示しないCPUを備えており、記憶部305あるいはこれとは別に配置されたROM等の記憶媒体に格納された制御プログラムを実行することで、その機能の多くを実現するようになっている。この制御部306は、通信に関する制御を行う通信制御部311と、この移動体通信端末300の位置する路線に応じた通信パラメータを選択するパラメータ選択部313と、この移動体通信端末300の位置する路線を特定するための情報としての路線情報を取得し、判別する路線判別部314と、接続情報データベース316を有している。
ここでパラメータ選択部313は、位置する路線に応じた各種パラメータからなる接続情報を接続情報データベース316に格納している。路線判別部314は、RFID(Radio Frequency IDentification)部318と接続されており、ここから鉄道、バス、自動車、船、飛行機等の交通機関の入改札情報また路線情報を取得し、また、乗車対象の路線を判別するようになっている。ここで入改札情報とは、普通乗車券、定期乗車券、回数乗車券等の乗車券類を確認する改札時に取得するその交通機関に関係する情報をいう。
RFID部318は、カード状またはタグ状の媒体である。RFID部318は、電波を用いてデータを記録し、または読み出すデバイスで、通信用のアンテナ321、送受信部322、データ処理部323および特定のID(Identification)等のデータを格納する記憶部324から構成される。
本実施例の移動体通信端末300では、路線ごとの接続情報を接続情報データベース316に格納している。この接続情報データベース316は、制御部306内の前記したRAMの中の一部として配置するものであってもよいし、記憶部305がこれを兼用してもよい。
図7は、以上のような構成の第2の実施例における移動体通信端末の動作を表わしたものである。図6と共に説明を行う。また、ここではユーザが鉄道を利用するものとして説明を行う。ユーザがこの移動体通信端末300を持ってたとえば鉄道の図示しない改札口で入改札すると、RFID部318がこれを検知して入改札処理を開始する。(ステップS401)
RFID部318は入場か、乗り換えか、退場かを判定することが可能である(ステップS402〜ステップS404)。入改札が他の路線の利用と無関係に独立して行われた状態としての入場であった場合(ステップ402:Y)、あるいは他の路線の利用を引き継ぐ状態で入改札が行われた状態としての乗り換えであった場合(ステップS402:N、S403:Y)には、ステップS405に進んで路線情報の取得が行われる。
路線判別部314は、RFID部318の入手した情報から入改札の名称を取得し、前記したRAMの作業用メモリ領域に一時的に格納する。その情報を基に、あらかじめ登録されている路線、また区域を検索する。もちろん路線情報をRFID部318で決定して、路線判別部314がその情報を取得する方法も可能である(ステップS405)。
入改札が該当する交通機関からの退場の場合には(ステップS402:N、ステップS403:N、ステップS404:Y)、ステップS406に進む。なお、ステップS404で退場以外の判別が行われた場合には(N)、そのような判別結果があり得ないので、所定のエラー処理が行われる(ステップS407)。
ところで、ステップS405で路線情報が取得されたら、次に、RAMに格納した路線情報から、接続情報データベース316を検索し、これに格納されている通信パラメータを検索して抽出する(ステップS408)。次に、その抽出された通信パラメータを送受信部302に設定する。または通信制御手段内の通信アルゴリズムの変更等の各種設定処理を行う。(ステップS409)。すなわち、ステップS405で路線情報を判別し、それを基にしてステップS408で対応する通信パラメータを検索し、ステップS409で移動体通信端末300の通信パラメータの設定が行われることになる。
入改札情報が退場であった場合には(S404:Y)、路線情報をクリアして初期値を接続情報データベース316から検索し、これに格納されている初期の通信パラメータ情報の抽出が行われる(ステップS406)。そして、ステップS409で移動体通信端末300の通信パラメータをその交通機関と関係しない初期的な設定状態に戻すことになる。
図8は、図7のステップS406およびS408の検索で使用される接続情報データベースの一部を表わしたものである。接続情報データベース316には、路線に適した各種パラメータからなる接続情報が格納されている。接続情報は、路線、区域を特定するための路線情報と、通信パラメータについての選択情報から構成されている。
通信パラメータには、たとえば、無線チャネル監視周期、隣接チャネル監視周期、閉ループ電力制御、セル探索アルゴリズム、チャネル推定、パス再割り当て平均化数が存在する。ここで「無線チャネル監視周期」とは、現在通信しているネットワーク側基地局に対して電波状況を測定する周期である。測定結果が悪くなれば他のネットワーク側基地局に切り替えることになる。このため、一般には移動体通信端末100の移動速度が速まるほど無線チャネル監視周期は短くなることになる。たとえば路線情報が路線Aの場合、無線チャネル監視周期が「5秒」になっている。これが路線Dの場合には「1秒」に短縮している。
「隣接チャネル監視周期」とは、通信中の基地局より弱いが電波を受信している周辺の基地局の状況を測定する周期である。これも「無線チャネル監視周期」と同様に、一般には移動体通信端末300の移動速度が速まるほど測定の周期は短くなる。
「閉ループ電力制御」とは、端末側が基地局からの受信パワーに応じて基地局に対してパワーの増減要求を通知し基地局と端末の間で最適なパワーに制御する手法をいう。通常はこの制御を行う「実行」という設定となるが、移動体通信端末300が高速で移動しているときには効果がない場合がある。そこで、このような場合には「停止」が選択され、この制御が行われない。
「セル探索アルゴリズム」は基地局との通信を行うためのアルゴリズムである。これによって、基地局とのタイミング同期、スクランブリング同定等を行う。本実施例では、移動体通信端末300の移動速度に応じて「方式A」と「方式B」のいずれかのアルゴリズを選択できるようになっている。
「チャネル推定」とは、フェージングに起因する受信信号の位相および振幅変動を推定する方式である。本実施例では「方式X」と「方式Y」の2つの方式のいずれかを移動体通信端末300の移動速度に応じて選択することで、受信性能の向上を図ることができるようになっている。
「パス再割り当て平均化数」とは、基地局から到達する電波の経路を推定したプロファイルをいう。その計算にいくつのサンプル数を平均するかを、路線に応じて選択することができる。
このようにして、移動体通信端末300に適した通信パラメータが設定される(図7ステップS409)。例を挙げる。たとえば移動体通信端末300が路線情報「路線A」の区域に存在するものとする。この場合に通信パラメータの「無線チャネル監視周期」について見てみると、5秒間隔であり、「路線C」や「路線D」では3秒とか1秒といった短い監視周期の選択情報で設定が行われることになる。通信パラメータの「隣接チャネル監視周期」について見てみると、同様に移動体通信端末300の移動速度に応じて適正なパラメータ値となる。
通信パラメータの「閉ループ電力制御」については、一般に移動速度が上がるとその制御効果がないと言われている。本実施例の場合には、路線情報「路線A」で制御を実行し、たとえば路線情報「路線D」のときには制御を実行しないようにしている。このように移動体通信端末300が存在する路線ごとに、通信パラメータの選択情報の適用方法を変更して設定することが可能になる。
通信パラメータの「セル探索アルゴリズム」について、本実施例で「方式A」とは探索の精度を重視したアルゴリズムであり、「方式B」とは探索に際しての消費する電流の大きさを重視したアルゴリズムである。したがって、該当する移動体通信端末300がどのような設計思想で設計されたかによっても異なるが、本実施例では路線ごとに適用するアルゴリズムを設定することができる。「チャネル推定」、「パス再割り当て平均化数」およびそれ以外の通信パラメータについても、路線に応じて所望の選択情報で設定が可能になる。
図7に示した制御は、たとえば路線適応モードというようなモード設定を行ったときに行われるようにすることができる。これにより、移動体通信端末300が該当路線に存在する場合に、路線適応モードが指定されていないときには、図8に示した処理を省略してその負荷の軽減を図ることができる。
<第2の実施例の変形例>
図9は、本発明の第2の実施例の変形例における移動体通信端末の構成を表わしたものである。図9で先の実施例の図6と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。図9に示した変形例の移動体通信端末300Aは、その各部を制御する制御部306Aが図6に示した第2の実施例の移動体通信端末300に一部の回路を追加した構成となっている。すなわち、制御部306Aは、移動体通信端末300Aの移動速度を検出する速度検出部312と、この検出した速度情報を格納する速度検出格納部315を備えている。
なお、送受信部および速度検出部による速度検出の原理については、第1の実施例における図2ですでに説明を行っている。このため、これらの説明は省略する。ただし、第1の実施例における図2の送受信部102を、第2の実施例の変形例における送受信部302に、また速度検出部112を速度検出部312に読み替えるものとする。
図9において、速度検出部312が検出した、この変形例の移動体通信端末300Aの移動速度を表わした速度情報は、速度検出格納部315に格納されるようになっている。この変形例でも、速度検出格納部315、接続情報データベース316Aは、制御部106内の前記したRAMの中の一部として配置されてもよいし、記憶部305がこれを兼用してもよい。
また、速度検出部312の代わりに送受信部302で速度の検出を行い、その結果を通信制御部311に入力する回路構成を採ることも可能である。また、図示しないGPS、ジャイロ、加速度センサ等の検出手段によって速度を取得する構成も可能である。
図10は、以上のような構成の移動体通信端末の動作を表わしたものである。図9と共に説明を行う。ユーザがこの変形例の移動体通信端末300Aを持って入改札を行ったとする。RFID部318は、移動体通信端末300Aの移動速度を表わした速度情報を取得するための速度情報取得タイミングが到来するのを待機している(ステップS501)。たとえばW−CDMA方式ではフレーム(10ms)という区間がある。そこで、その区間ごとに前記したレイク受信器が移動速度の出力を行い、このときに制御部306Aに対して割り込みを掛けることで移動速度を取得させるようにしてもよい。また、リアルタイムクロックを使用して計時を行う図示しないタイマを用いて、一定時間が経てばレイク受信器の出力データを制御部306Aが取得するような制御も可能である。
なお、速度情報取得タイミングは、必ずしも一定時間間隔で到来する必要はない。たとえば図6に示した制御部306Aの処理負荷の変動に応じて速度情報取得タイミングを変化させるようなアルゴリズムを採用して、速度情報取得タイミングを制御してもよい。
予め定めた速度情報取得タイミングが到来すると(ステップS501:Y)、CPUは速度検出部312を指示して移動体通信端末300Aのその時点における速度情報を取得して(ステップS502)、これを前記したRAMの作業用メモリ領域に一時的に格納する。そして、速度検出格納部315に格納されている前回の速度情報と比較して、その値が変更されているかどうかを判別する(ステップS503)。速度情報が変更されていなければ(N)、再びステップS501に戻って処理を繰り返す。
これに対して速度情報が変更されている場合には(ステップS503:Y)、接続先情報あるいは速度情報を基にして通信パラメータの検索が行われる(ステップS504)。そして、その結果を用いて、路線ごとの区域および速度情報に合致した通信パラメータの設定が行われる(ステップS505)。
図11は、図10のステップS504で検索に使用する接続情報データベースを表わしたものである。この接続情報データベース316Aは、図8に示した接続情報データベース316に速度ごとの区分が加えられた構成となっている。たとえば、路線Aでは、移動速度が0〜10Km/hの場合と、これ以上で、かつ50Km/hまでの場合等の4通りの速度に区分されており、それぞれ別の通信パラメータを設定することが可能になっている。このように移動速度に応じて複数に区分することで、それぞれに対応した詳細な通信パラメータの設定が可能となる。
ただし、このように移動速度を細分化して、それぞれについて通信パラメータを設定すると、移動速度が正しく判別されない場合には却って間違った通信パラメータを設定することになる。移動速度の検出が十分な精度で行えないような場合も同様である。
そこで、第2の実施例の変形例では、路線情報に移動速度を組み合わせたときで、路線によって通常の移動速度がある想定範囲内に入ることが予想される場合に、その想定範囲内の移動速度に限定する制御を行うようにしている。
たとえば、路線Dの例として示した交通機関が新幹線の場合を考える。新幹線は他の交通機関と同様に停車して移動速度が“0”になる場合がある。したがって、図11に示した接続情報データベース316Aにおける路線Aや路線Bと同様に低速から高速までの各種の速度を採り得ることは確かである。しかしながら、その移動速度が低速である時間的な割合は非常に小さい。
この路線Dの例として示した新幹線のように、その交通機関が所定の高速で移動することが分かっている場合には、速度情報を補完(あるいは制限)する制御を実現することが可能である。たとえば、入改札情報から新幹線についての路線Dと判別された場合には、予め151Km/h以上の移動速度についての通信パラメータの設定内容しか接続情報データベース316Aに登録せず、それ以外は設定対象外としておくことができる。これは、路線情報のみを使用し、移動速度を配慮しなかった第2の実施例と似てくる。
移動速度と路線情報を組み合わせた場合には、特定の路線であっても、検出されたそれぞれの移動速度に応じて通信パラメータが検索されて、設定されることになる。したがって、速度検出部312の性能が高い場合には、これによって、移動速度を考慮しない場合よりも通信パラメータをより具体的に設定可能である。しかしながら、速度検出部312の性能が劣っている場合、あるいは何らかの障害によって速度検出に誤りが発生したような場合には、該当する路線では想定されない移動速度が選択される場合がある。この場合には、誤った通信パラメータが選択されて移動体通信端末が動作することになる。このような場合には通信性能の向上は望めない。移動速度と路線情報を組み合わせて使用するとき、特定の路線については、移動速度の範囲について制限を設定することで、性能の低い速度検出部を備える移動体通信端末であっても通信性能の向上を図ることができる。
以上説明したように、第2の実施例あるいはその変形例によれば、次のような効果がある。
(1)ユーザが交通機関を利用するとき、その路線の種類あるいは移動速度に応じて移動体通信端末の通信パラメータを最適な値に切り替えることが可能になる。したがって、接続時間短縮、呼接続維持率向上、消費電流最適化等の通信性能の向上を実現することが可能になる。
(2)速度に応じて通信パラメータを切り替える機能を有する移動体通信端末では、速度の判別誤りを補完することで誤った値に切り替えることがなく、速度に応じた切り替え機能の効果を失うことがない。これにより、接続時間短縮、呼接続維持率向上、消費電流最適化等の通信性能の向上を安価に実現することが可能になる。
(3)移動体通信端末のユーザが特別の知識や経験を持たなくても、それぞれの路線に適した接続情報を通信パラメータごとに用意したデータベースが存在している。したがって、たとえば電車や新幹線に乗車した場合に、このデータベースを検索することで各通信パラメータを適切かつ迅速に設定することができる。
(4)また、移動速度と路線情報を組み合わせることで、該当する路線で想定されない移動速度に対応する通信パラメータの設定を排除することができる。これにより、速度検出性能が低い移動体通信端末でも速度の検出誤りにより誤った通信パラメータを設定することが防止されたり、最適な通信パラメータが設定される可能性が高まる。これは、移動体通信端末の通信性能向上に繋がる。
なお、第2の実施例あるいはその変形例ではRFIDを使用して路線に関する情報を取得したが、これ以外の通信情報やカメラによる視覚情報等の他の情報を用いて改札口等の場所で路線を判別するもの全般に対して、本発明を同様に適用することができることは当然である。
本発明の第1の実施例におけるW−CDMAによる通信を行う移動体通信端末の構成を表わしたブロック図である。
第1の実施例で送受信部および速度検出部による速度検出の原理的な構成を表わしたブロック図である。
第1の実施例の移動体通信端末の動作を表わした流れ図である。
図3のステップS209の検索で使用される接続情報データベースの一部を表わした説明図である。
本発明の第1の実施例の変形例における通信パラメータ切替制御テーブルの内容を表わした説明図である。
本発明の第2の実施例における移動体通信端末の構成を表わしたブロック図である。
第2の実施例における移動体通信端末の動作を表わした流れ図である。
第2の実施例における接続情報データベースの一部を表わした説明図である。
第2の実施例の変形例における移動体通信端末の構成を表わしたブロック図である。
第2の実施例における移動体通信端末の動作を表わした流れ図である。
第2の実施例で検索に使用する接続情報データベースの一部を表わした説明図である。
符号の説明
100、300、300A 移動体通信端末
102、302 送受信部
112、312 速度検出部
113 ローミング先パラメータ選択部
114 ネットワーク接続先情報取得部
115 速度情報格納部
116 接続情報データベース
117 ネットワーク接続先情報格納部
132 移動速度推定回路
141 通信パラメータ切替制御テーブル
313 パラメータ選択部
314 路線判別部
306、306A 制御部
316、316A 接続情報データベース
318 RFID部