JP4742340B2 - 硫酸基含有糖化合物、それを用いるサーズウイルスまたはインフルエンザウイルスの検出 - Google Patents

硫酸基含有糖化合物、それを用いるサーズウイルスまたはインフルエンザウイルスの検出 Download PDF

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Description

本発明は、硫酸基含有糖化合物、それを用いるサーズウイルスもしくはサーズスパイク蛋白質、またはそれを用いるインフルエンザウイルスもしくはヘマグルチニン検出用センサーチップ、検出用微粒子、吸着材、除染剤、およびサーズウイルスもしくはサーズスパイク蛋白質検出方法、またはインフルエンザウイルスもしくはヘマグルチニン検出方法に関する。
新型肺炎(SARS(サーズ);Severe Acute Respiratory Syndrome)は、2003年に中国、台湾、カナダで流行した。この感染症は、SARSコロナウイルス(SARS−CoV)によるもので、死亡率は10%以上に達する。SARS−CoVの表面には、スパイクタンパク質とよばれるタンパク質が多数存在しており、このスパイクタンパク質がホスト細胞上の特定のレセプターと結合して感染が始まると考えられている。このウイルスは、発見後歴史が新しく、ヒトSARSウイルスのレセプターに関しても現段階では不明な点が多い。
これまで、サーズウイルスの検出には、遺伝子診断法(RT−PCR法:非特許文献1)、抗体法(非特許文献2)などが知られている。しかしながら、遺伝子診断法はウイルス以外による汚染の危険性があり、ウイルスの存在を推測する程度に過ぎない。抗体法は、抗体の安定性の問題から2〜8℃といった低温下で抗体を保存する必要があり、温度管理の手間などがあり煩雑な方法であった。このため、精度の高い、簡便なサーズウイルスの検出方法が望まれていた。
近年、バイオテクノロジー、生化学研究、臨床検査、食品検査などの分野においては、ウイルスなどに存在する糖結合性蛋白質を高感度に検出・定量する方法が提案されている。(特許文献1)
しかし、これまで、サーズウイルスがレセプターとなる糖鎖構造は解明されておらず、糖鎖を利用するサーズウイルスの検出、吸着方法の報告もない。
一方、毎年、冬季に流行するインフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染に基づくものであり、近年、ザナミビル、タミフルなどの抗ウイルス薬が開発され、その治療法が大幅に進展した。それは、事前に「抗体法」によるインフルエンザウイルスの検出が可能となり、一般のいわゆる「風邪」と識別が可能となったためである。(非特許文献3)しかし、現在、市販されている「抗体法」は、ウイルスの核蛋白質やウイルス表面に存在するヘマグルチニン、シアリダーゼなどを主に検知したり、感染後に生体内に生産される抗体を検知するものであり、いずれも特異的な蛋白質を用いているため、使用直前まで2−8℃の低温下で保存しなければならないといった、安定性、取り扱い上の問題があった。また、その感度も十分高くなく、偽陽性、偽陰性といった信頼性にも問題がある。
また、インフルエンザウイルスに感染した初期のウィンドー期においては、生体内で抗体が生産されていないため、抗体法によって感染初期の状態を判定することは原理的に不可能である。
他のインフルエンザウイルス検出法として、遺伝子診断法(PCR)、ウイルスのノイラミニダーゼ(シアリダーゼともいう)活性を測定する方法などが知られている。(非特許文献4、5)しかし、遺伝子診断法では、目的とするウイルス以外によるコンタミネーション(汚染)のリスクがあり、また、遺伝子の断片よりウイルスの存在を推測する程度にすぎない。ノイラミニダーゼ活性測定法は、蛍光法とリンクさせたELISA法として使用するのが一般的でありしばしば感度が十分でなく、また、ノイラミニダーゼ阻害剤に対して耐性を示す変異種では、このノイラミニダーゼ活性を減少させるため感度の面で問題が残されている。
さらに、インフルエンザに罹患することを危惧する人たち(介護施設の老人など)も多く存在することも事実であり、感染防止に関わるマスク、フィルターなどのツールの開発も望まれていた。
米国特許第3231733号 Journal of Virological Methods, vol. 122, pp. 29-36 (2004). Clinical Immunology, vol. 113, pp. 145-150 (2004). Journal of Clinical Microbiology, vol. 40, pp. 4353-4356 (2002). Journal of Clinical Microbiology, vol. 39, pp. 196-200 (2001). Journal of Virological Methods, vol. 122, pp. 9-15 (2004).
本発明は、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質を検出することが可能な糖化合物を提供することを課題とする。また本発明は、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンを検出することが可能な糖化合物を提供することを課題とする。
さらに本発明は、高感度で簡便かつ迅速にサーズウイルスまたはインフルエンザウイルスを検出できるバイオセンサーチップ、検出用試薬、検出用微粒子、吸着材およびこれらウイルスの検出方法を提供することを課題とする。
本願発明者らは、上記課題に鑑み、本願発明者らが合成した新規な糖鎖について、まずサーズウイルスとの結合可能な糖鎖について研究した。具体的には、サーズウイルス表面に存在するスパイク蛋白質と呼ばれるタンパク質と結合しうる糖鎖について鋭意研究し、特定の糖鎖構造が、極めて効果的にサーズウイルスのスパイク蛋白質と結合することを初めて見出した。
また、本発明に係る糖鎖構造は、インフルエンザウイルス表面に存在するヘマグルチニンとよばれるタンパク質と極めて効果的に結合することを見出した。
この糖鎖構造を有する化合物を用いることにより、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質の迅速な検出、吸着材、検出方法を提供することができることを見出し、本願発明を完成した。
この糖鎖構造を有する化合物を用いることにより、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンの迅速な検出、吸着材、検出方法を提供することができることを見出し、本願発明を完成した。
サーズウイルスまたはインフルエンザウイルスに対し、本発明に係る糖鎖構造をそれぞれの存在可能性の高い環境中で用いることにより、選択的にサーズウイルスまたはインフルエンザウイルスを検出あるいは吸着することができる。
すなわち本件発明は以下を含む。
〔1〕下記一般式(1):
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
およびXは、それぞれ独立に、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−(nが2〜20)で表されるアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示し;
Yは、−SHまたはジスルフィド基を有する基を示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す。〕で表される、硫酸基含有糖化合物。
〔2〕下記一般式(2)
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
およびXは、それぞれ独立に、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−(nが2〜20)で表されるアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示し;
Yは、−SHまたはジスルフィド基を有する基を示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す。〕で表される、硫酸基含有糖化合物。
〔3〕 前記Rが−NHCOCHである、〔1〕または〔2〕に記載の硫酸基含有糖化合物。
〔4〕 前記Xが芳香族置換基であり、Xが直鎖もしくは分岐した炭素原子数2〜20のアルキル基である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硫酸基含有糖化合物。
〔5〕 前記Xが、下記式(3)
Figure 0004742340
で表される2価の基である、〔4〕に記載の硫酸基含有糖化合物。
〔6〕 前記Xが、-CnH2n- (n = 2-6)である、〔4〕または〔5〕に記載の硫酸基含有糖化合物。
〔7〕 Yが、ジスルフィド基である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の硫酸基含有糖化合物。
〔8〕 下記式(4)
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−NHAcまたは−OHであり、Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す〕で表される、〔1〕に記載の硫酸基含有糖化合物。
〔9〕 下記式(5)
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−NHAcまたは−OHであり、Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す〕で表される、〔1〕に記載の硫酸基含有糖化合物。
〔10〕 下記一般式(6)または(7)
Figure 0004742340
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示し;
は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜10アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基を意味し、前記置換基は下記A群から選ばれるいずれかの基である:
A群:
ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基;
−NH(C=O)X2Y(式中、X2は、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−で表されるアルキレン基、または下記B群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示す。);
−NH−CH2−Cn2n−Y;
−O−C(=O)−Cn2n−Y;
−O−CH2−Cn2n−Y;
(A群中、nは2〜20の整数を示し、Yはチオール基またはジスルフィド基を有する基を示す。)
B群:ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基、ニトロ基〕で表される硫酸基含有糖化合物が、金属基板表面に固定されている、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用センサーチップ。
〔11〕 下記一般式(6)または(7)
Figure 0004742340
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示し;
は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜10アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基を意味し、前記置換基は下記A群から選ばれるいずれかの基である:
A群:
ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基;
−NH(C=O)X2Y(式中、X2は、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−で表されるアルキレン基、または下記B群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示す。);
−NH−CH2−Cn2n−Y;
−O−C(=O)−Cn2n−Y;
−O−CH2−Cn2n−Y;
(A群中、nは2〜20の整数を示し、Yはチオール基またはジスルフィド基を有する基を示す。)
B群:ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基、ニトロ基〕で表される硫酸基含有糖化合物が、金属微粒子表面に固定されている、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用微粒子。
〔12〕 〔11〕に記載の前記微粒子が、溶液中にコロイドで存在している、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用試薬。
〔13〕 下記の工程からなる、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出方法:
(1) 試験体を、〔10〕に記載のセンサーチップの基板表面に接触させる工程、
(2) 基板に結合したサーズウイルスのスパイク蛋白質またはサーズウイルスを検出する工程。
〔14〕 下記の工程からなる、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出方法:
(1) 試験体を、〔12〕に記載の試薬に添加して、前記微粒子と接触させる工程、
(2) 前記微粒子に結合したサーズウイルスのスパイク蛋白質またはサーズウイルスを検出する工程。
〔15〕 下記一般式(6)または(7)
Figure 0004742340
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示し;
は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜10アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基を意味し、前記置換基は下記A群から選ばれるいずれかの基である:
A群:
ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基;
−NH(C=O)X2Y(式中、X2は、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−で表されるアルキレン基、または下記B群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示す。);
−NH−CH2−Cn2n−Y;
−O−C(=O)−Cn2n−Y;
−O−CH2−Cn2n−Y;
(A群中、nは2〜20の整数を示し、Yはチオール基またはジスルフィド基を有する基を示す。)
B群:ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基、ニトロ基〕で表される硫酸基含有糖化合物を含有する、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質吸着材。
〔16〕 下記一般式(6)または(7)
Figure 0004742340
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示し;
は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜10アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基を意味し、前記置換基は下記A群から選ばれるいずれかの基である:
A群:
ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基;
−NH(C=O)X2Y(式中、X2は、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−で表されるアルキレン基、または下記B群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示す。);
−NH−CH2−Cn2n−Y;
−O−C(=O)−Cn2n−Y;
−O−CH2−Cn2n−Y;
(A群中、nは2〜20の整数を示し、Yはチオール基またはジスルフィド基を有する基を示す。)
B群:ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基、ニトロ基〕で表される硫酸基含有糖化合物が、金属基板表面に固定されている、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用センサーチップ。
〔17〕 下記一般式(6)または(7)
Figure 0004742340
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示し;
は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜10アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基を意味し、前記置換基は下記A群から選ばれるいずれかの基である:
A群:
ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基;
−NH(C=O)X2Y(式中、X2は、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−で表されるアルキレン基、または下記B群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示す。);
−NH−CH2−Cn2n−Y;
−O−C(=O)−Cn2n−Y;
−O−CH2−Cn2n−Y;
(A群中、nは2〜20の整数を示し、Yはチオール基またはジスルフィド基を有する基を示す。)
B群:ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基、ニトロ基〕で表される硫酸基含有糖化合物が、金属微粒子表面に固定されている、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用微粒子。
〔18〕 〔17〕に記載の前記微粒子が、溶液中にコロイドで存在している、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用試薬。
〔19〕 下記の工程からなる、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出方法:
(1) 試験体を、〔16〕に記載のセンサーチップの基板表面に接触させる工程、
(2)基板に結合したインフルエンザウイルスのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスを検出する工程。
〔20〕 下記の工程からなる、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出方法:
(1)試験体を、〔18〕に記載の試薬に添加して、前記微粒子と接触させる工程、
(2) 前記微粒子に結合したインフルエンザウイルスのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスを検出する工程。
〔21〕 下記一般式(6)または(7)
Figure 0004742340
Figure 0004742340
〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示し;
は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜10アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基を意味し、前記置換基は下記A群から選ばれるいずれかの基である:
A群:
ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基;
−NH(C=O)X2Y(式中、X2は、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−で表されるアルキレン基、または下記B群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示す。);
−NH−CH2−Cn2n−Y;
−O−C(=O)−Cn2n−Y;
−O−CH2−Cn2n−Y;
(A群中、nは2〜20の整数を示し、Yはチオール基またはジスルフィド基を有する基を示す。)
B群:ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基、ニトロ基〕で表される硫酸基含有糖化合物を含有する、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン吸着材。
以下に、硫酸基含有糖化合物、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質およびインフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンのセンサーチップ、検出試薬、検出方法、吸着材について具体的に説明する。
<硫酸基含有糖化合物>
本発明のサーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンの検出、吸着に好ましく用いることのできる硫酸基含有糖化合物は、下記一般式(6)または(7)で表される。
Figure 0004742340
Figure 0004742340
式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示す。これらのうちでは、−NHCOCHが好ましい。−NHCOCHの場合、−OHよりも、サーズウイルスとの結合、より具体的にはサーズウイルス表面に存在するスパイクタンパク質との結合が強い。
また、−NHCOCHの場合、−OHよりも、インフルエンザウイルスとの結合、より具体的にはインフルエンザウイルス表面に存在するヘマグルチニンとの結合が強い。
ここで、スパイク蛋白質とは、コロナウイルスに特徴的で、このスパイク蛋白質はサーズウイルス(サーズウイルスは、コロナウイルスに属する)の膜表面に存在する突起状の蛋白質である。これは、S1サブユニットとS2サブユニットから構成される(Clinical Immunology, 113, 145-150 (2004))。また、ホスト細胞に感染する(結合する)ために必要な蛋白質である。感染機構の詳細は、Trends in Microbiology, 12, 466-472 (2004)に掲載されている。なお、これまでホスト細胞上の糖鎖に結合するという事実はない。
また、ヘマグルチニンは、インフルエンザウィルス表面に存在する蛋白質で3量体を形成している。このヘマグルチニンも、ウィルス表面に突起状に存在しており、ホスト細胞に存在する糖鎖に結合して感染がはじまる(たとえば、文献(Taubenberger JK, Reid AH, Fanning TG. "Capturing a killer flu virus", Scientific American.,292(1):48-57 (2005).))。
前記式(6)、(7)中、硫酸基が導入された単糖部分(式(6))、二糖部分(式(7))が、サーズウイルスのスパイクタンパク質と特異的に結合する。
また、前記式(6)、(7)中、硫酸基が導入された単糖部分(式(6))、二糖部分(式(7))が、インフルエンザウィルスのヘマグルチニンと特異的に結合する。
前記−SO3Mは、−SO3H、または生理的に許容される塩である。生理的に許容される塩の場合、その塩の形態は特に限定されず、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性または塩基性アミノ酸塩などがあげられる。
無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などがあげられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などがあげられる。
無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられ、有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、トリメチルアミン塩、ピリジニウム塩などがあげられ、これらのうち、さらに好ましくはトリメチルアミン塩、ピリジニウム塩である。
酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられ、塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などがあげられる。
式中、Xは、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜10アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基を意味する。
前記置換基は下記A群から選択することができる。
A群:
ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基;
−NH(C=O)X2Y(式中、X2は、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−で表されるアルキレン基、または下記B群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の2価の芳香族基を示す。);
−NH−CH2−Cn2n−Y;
−O−C(=O)−Cn2n−Y;
−O−CH2−Cn2n−Y;
(A群中、nは2〜20の整数を示し、Yはチオール基またはジスルフィド基を有する基を示す。)
B群:ハロゲン原子、水酸基、C1〜6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1〜6アルキルアミノ基、ニトロ基。
「C2〜20アルキル基」とは、炭素原子数2〜20のアルキル基であり、直鎖状、分岐状アルキル基のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状アルキル基である。炭素原子数は、好ましくは4〜20、より好ましくは10〜20、特に好ましくは13〜18である。
「C2〜20アルケニル基」とは、炭素原子数2〜20のアルケニル基であり、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状アルケニル基である。炭素原子数は、好ましくは4〜20、より好ましくは10〜20、特に好ましくは13〜18である。不飽和結合は1つまたは2以上含んでいてもよい。複数の不飽和結合を含む場合には、−CH=CH−CH−CH=CH−のような配置を含んでいてもよい。
「C2〜20アルキニル基」とは、炭素原子数2〜20のアルキニル基であり、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状アルキニル基である。炭素原子数は、好ましくは4〜20、より好ましくは10〜20、特に好ましくは13〜18である。不飽和結合は1つまたは2以上含んでいてもよい。
「C6〜10アリール基」とは、炭素数6〜10の芳香族性の炭化水素環式基をいい、具体的には例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
「C1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基」とは、C1〜20アルキル基−CO−O−C36−で表される基であり、C1〜20アルキル基は直鎖状、分岐状アルキル基のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状アルキル基である。
「C2〜21アルキルオキシプロピル基」とは、C2〜21アルキル基−O−C36−で表される基であり、C2〜21アルキル基は直鎖状、分岐状アルキル基のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状アルキル基である。
「C2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基」とは、C2〜20アルケニル基−CO−O−C36−で表される基であり、C2〜20アルケニル基は直鎖状、分岐状のいずれでもよい。不飽和結合は1つまたは2以上含んでいてもよい。複数の不飽和結合を含む場合には、−CH=CH−CH−CH=CH−のような配置を含んでいてもよい。
「C2〜21アルケニルオキシプロピル基」とは、C2〜21アルケニル基−O−C36−で表される基であり、C2〜21アルケニル基は直鎖状、分岐状のいずれでもよい。不飽和結合は1つまたは2以上含んでいてもよい。複数の不飽和結合を含む場合には、−CH=CH−CH−CH=CH−のような配置を含んでいてもよい。
「置換基を有していてもよい」とは、置換可能な部位に、任意に組み合わせて1または複数個の置換基を有してもよいことを意味する。
これらX3のうち、好ましくは、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基、置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基である。
これらにおいて、置換基としては、好ましくは、−NH(C=O)X2Y、−O−C(=O)−Cn2n−Y、または−O−CH2−Cn2n−Yである。
このうち、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基が置換基を有する場合その置換基としては、前記−NH(C=O)X2Yで表される基が好ましい。
置換基を有していてもよいC1〜20アルキルカルボニルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルキルオキシプロピル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニルカルボニルオキシプロピル基、または置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルオキシプロピル基が置換基を有する場合その置換基としては、−NH(C=O)X2Y、−O−C(=O)−Cn2n−Yまたは−O−CH2−Cn2n−Yが好ましい。
式(6)、(7)においてX3としては、より具体的には、たとえば下記式(8)〜(12)で表される基がより好ましい。
Figure 0004742340
式(8)〜(12)中、nは好ましくは2〜20の整数を示し、より好ましくは2〜10、さらに好ましくは3〜8、特に好ましくは3〜5である。前記pは、好ましくは1〜17の整数を示し、より好ましくは7〜17、さらに好ましくは10〜15である。qは、好ましくは1〜20の整数を示し、より好ましくは10〜20、さらに好ましくは13〜18である。
このような式(8)〜(12)で表されるような、リンカー部位(−COCn2nYまたは−CH2n2nY)と側鎖部位(−CH(OH)C=CCp2pCH3、−CH2O(CO)Cq2qCH3または−CH2OCH2q2qCH3)とを有すると、硫酸基含有化合物をセンサーに適した配向性で高密度に基板や微粒子に固定することができるとともに、硫酸基含有糖化合物を含有するバイオセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬を用いると、極微量のサーズウイルスあるいはインフルエンザウイルスでも高感度に検出・定量できる。
特に、式(8)〜(12)において、nが上記範囲にあると、硫酸基含有糖化合物を、基板表面あるいは微粒子表面に結合したときのセンサーの感度が向上するとともに、サーズウイルスあるいはインフルエンザウイルスとの結合に適した密度・配向性をもって基板表面または微粒子表面に効果的に結合させることができる。
前記式中、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。本明細書において「チオール基」とは−SHで表される基であり、「ジスルフィド基」とは、−S−S−で表される構造を有する基である。
ジスルフィド基としては、好ましくは環状ジスルフィド基が挙げられ、このうち5員環のジチオラニル基、たとえば1,2−ジチオラン−3−イル基、1,2−ジチオラン−4−イル基など、6員環のジチアニル基、たとえば1,2−ジチアン−3−イル基、1,2−ジチアン−4−イル基などが挙げられる。これらのうちでは、5員環のジチオラニル基が好ましく、1,2−ジチオラン−3−イル基がより好ましい。また、チオオクト酸(リポ酸)から誘導される基を用いることもできる。
これらのうちでは、ジスルフィド基が好ましい。ジスルフィド基の場合、硫酸基含有糖化合物を基板表面又は微粒子表面に強固に安定に固定化することができる。特に、前記式(8)〜(12)で表される基では、硫酸基含有糖部位、リンカー部位、および側鎖部位の立体障害が予測され、結合密度の低下、感度低下などが考えられるが、本発明のように特定のリンカーと側鎖とジスルフィド基の組み合わせにより、強固で安定な固定化が可能となり、立体障害の影響がなく高感度のセンサーとすることができる。
さらに、式(8)において、前記−COCn2nYの主鎖に含まれる原子の合計数(N1)と、前記−CH(OH)C=CCp2pCH3の主鎖に含まれる原子の合計数(N2)とは、好ましくはN1:N2=1:1.5〜1:5、さらに好ましくは1:2〜1:3の範囲にある。
また、式(9)〜(12)において、前記−COCn2nYまたは−CH2n2nYの主鎖に含まれる原子の合計数(N1)と、前記−CH2O(CO)Cq2qCH3または−CH2OCH2q2qCH3の主鎖に含まれる原子の合計数(N2)とは、好ましくはN1:N2=1:1.5〜1:5、さらに好ましくは1:2〜1:3の範囲にある。
なお、N1においては、前記−COCn2nYにおいてY中の硫黄原子と−COとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とし、Yがジスルフィド基の場合はそのうちの−COに近い硫黄原子側を主鎖上の原子とし、合計数N1には硫黄原子を含まない。また、N2においては、前記−CH(OH)C=CCp2pCH3、−CH2O(CO)Cq2qCH3または−CH2OCH2q2qCH3において末端の−CH3と−CH(OH)または−CH2Oとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とする。
このような式(8)〜(12)の側鎖部位が含まれていると、側鎖部位が存在しない場合と比較して、検出感度を格段に向上させることができる。さらに、このような炭素数あるいは原子数で側鎖部位が構成され、側鎖部位が前記リンカー部位の長さよりも大きい長さとなる場合、硫酸基含有糖化合物をより高度な配向性で基板や微粒子に固定することができるとともに、該硫酸基含有糖化合物を含有するバイオセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬を用いると、より微量のサーズウイルスあるいはインフルエンザウイルスでも高感度に検出・定量できる。
このような式(8)〜(12)で表される化合物は、細胞二重層膜の表側に多く存在するグリセロ糖脂質(親水性基として糖、脂溶性基としてグリセリド部位又はジアシルグリセロール部位を有する糖脂質)などから誘導することができ、原料入手の容易性からも好適である。
また、X3は、任意のポリマーに結合していてもよい。
前記式(6)、(7)において、X3が−X1NH−(CO)−X2Yで表される基(13)の場合、具体的にはそれぞれ下記式(1)、(2)で表される硫酸基含有糖化合物が好ましい。
Figure 0004742340
Figure 0004742340
式中、Rは前述と同じである。糖鎖末端の、−X−NH−(C=O)−X−Yは、センサーチップを基板表面あるいは金属微粒子表面に固定化する部分である。
およびXは、それぞれ独立に、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−(nが2〜20、好ましくは2〜6)で表されるアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10、好ましくは6〜8の2価の芳香族基を示す。
これらのうち、Xとしては芳香族基が好ましく、芳香族基としては下記式(3)
Figure 0004742340
で表される基がさらに好ましい。
としては、直鎖もしくは分岐した−Cn2n−(nが2〜20、好ましくは2〜6)で表されるアルキル基が好ましく、これらのうちではさらに好ましくは直鎖であり、n=4である場合が特に好ましい。
Yは、−SHまたはジスルフィド基を有する基を示し;
Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す。
このような化合物として、より具体的にはたとえば下記式(4)、(5)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004742340
Figure 0004742340
式中、Rは、−NHAcまたは−OHであり、Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す。
このような本発明に係る化合物は、極めて効果的にサーズウイルス、特に、サーズウイルスのスパイク蛋白質と結合する。
また、このような本発明に係る化合物は、極めて効果的にインフルエンザウイルス、特に、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンと結合する。
硫酸基含有糖化合物の製造方法
本発明に係る硫酸基含有糖化合物の製造方法に限定はないが、たとえば、下記スキーム1および2に示すような方法により、本発明で用いる化合物の硫酸基含有糖部分を有する化合物を製造することができる。なお、還元末側の配糖体部位は、一例として、p−ニトロフェニル(pNP)基を有する糖を出発物質として示すが、配糖体部位は、これに限定されない。
<硫酸基含有糖化合物の合成方法(1)>
スキーム1
Figure 0004742340
市販の化合物1a(p−ニトロフェニル N−アセチルグルコサミニド(シグマ社等))の6位を選択的に硫酸化し(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 13, 2821-2823 (2003).)化合物2aを得ることができる。
この反応は、乾燥DMF中、過剰量(3−6モル当量)の三酸化硫黄錯体と室温〜60℃で反応させることができる。反応時間は、30分〜10日で、好ましくは、1時間〜24時間である。
次に、配糖体部位がp−ニトロフェニル基である化合物2aをp−アミノフェニル基へと還元して、化合物3aを得ることができる。
この反応は、水素気流下、パラジウム、パラジウム−活性炭、水酸化パラジウムなどの触媒の存在下で行う。パラジウムの代わりに、ギ酸アンモニウムなどを使用してもよい。
溶媒は、水、メタノール、エタノール、これらの混液を使用することができる。反応温度は、好ましくは10−80℃で、さらに好ましくは20−40℃である。圧力は、好ましくは1気圧〜100気圧、さらに好ましくは1気圧である。反応時間は、好ましくは30分〜3日、さらに好ましくは1時間―24時間である。
次に、化合物3aを、4-(4,6-dimethoxy-1,3,5- triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride (DMT-MM)の存在下、リポ酸と反応させ、化合物4aへと変換することができる。
溶媒は、エタノール、メタノール、水、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、DMF、DMSO、またはこれらの混液を用いることができ、これらのうち好ましくは、エタノール、水、またはメタノールである。反応温度は、好ましくは10℃−80℃、さらに好ましくは20−40℃である。化合物3aに対して、リポ酸は、好ましくは0.9−10当量、さらに好ましくは0.9−2当量である。また、DMT-MMは、好ましくは0.9−10当量、さらに好ましくは0.9−2当量である。
<硫酸基含有糖化合物の合成方法(2)>
スキーム2
Figure 0004742340
5aの合成
スキーム2に示すように、市販のpNP N−アセチルグルコサミン1aをアクセプターに用い、ラクトース、pNP ラクトースなどをドナーとして共存させ、ガラクトシダーゼのような加水分解酵素を用いて、N−アセチルグルコサミンの4位にガラクトースを選択的に転位させ、化合物5aを得ることができる。
該酵素反応においては、ガラクトシルトランスフェラーゼのような転位酵素を用いてもよい。この場合のドナーには、たとえば、UDP−ガラクトースを使用することができる。この2糖の結合様式は、β1−4結合である。加水分解酵素の起源によっては、β1−3結合の2糖も合成することが可能であるが、これらも、非還元末端側にさらに硫酸基を導入すれば、サーズウイルスと結合可能であり、検出用センサーや吸着剤の開発に有効である。
前記酵素反応は、たとえば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、または酢酸緩衝液中、好ましくは20−80℃、さらに好ましくは30−45℃で実施できる。緩衝液のpHは、好ましくはpH1−10、さらに好ましくはpH3−8である。反応時間は、好ましくは30分−30日、さらに好ましくは3時間−7日である。緩衝液に、アセトニトリル、メタノールなどの有機溶媒を加えてもよい。有機溶媒を加える割合は、好ましくは1−80%、さらに好ましくは10−50%である。アクセプター(pNP N−アセチルグルコサミン)とドナー(ラクトース、pNP ラクトースなど)の割合は、好ましくは1:99〜99:1、さらに好ましくは1:10程度である。なお、市販の加水分解酵素には、夾雑するN−アセチルヘキソサミニダーゼが混入しており、これがアクセプターを加水分解することがあるので、予め必要に応じ、フェニルセファロースなどのカラムで酵素を粗精製することが好ましい。用いる酵素のユニット数は、好ましくは0.1〜100ユニット、さらに好ましくは0.2〜10ユニットである。
6a、7aおよび8aの合成
公知の方法(Chem.Commun.1998,2311-2312)にしたがって、ラクトサミン2糖構造の3’位に選択的に硫酸基を導入して化合物6aを得ることができる。具体的には、乾燥トルエンまたは、ベンゼン中で、5aおよび酸化ジブチルスズあるいはビストリブチルスズオキシドで、還流しながら脱水し(30分〜24時間、好ましくは、3時間〜8時間)、スタニレンアセタール中間体を形成後、DMF中で三酸化硫黄錯体で処理して3'位に選択的に硫酸基が1つ導入された6aへと誘導する。三酸化硫黄錯体の処理は、室温〜80℃で、反応時間は、5分〜5日で好ましくは、10分〜24時間である。
次に、スキーム1と同様の方法により、配糖体部位がp−ニトロフェニル基である化合物6aをp−アミノフェニル基へと還元して、化合物7aを得ることができる。
さらに、化合物7aを、4-(4,6-dimethoxy-1,3,5- triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride (DMT-MM)の存在下、リポ酸と反応させ、化合物8aへと変換することができる。
<配糖体部位の変換方法:式(8)の配糖体部位を有する化合物の合成>
式(8)の配糖体部位を有する硫酸基含有糖化合物は、下記スキーム3に示すように、出発原料として天然に由来するスフィンゴ糖脂質を用いる方法が挙げられる。
スキーム3
Figure 0004742340
スフィンゴ糖脂質(1b)(式中、GNは糖鎖部位を示し、たとえば、グルコース単位であり、R3’は−C10〜1820〜30−CH3であり、Rは−C10〜2020〜40−CH3である。)は、1個以上の糖が直鎖あるいは分岐鎖で共有結合している糖鎖部位と、スフィンゴシン塩基に脂肪酸がN-アシル結合したセラミドと呼ばれる脂質を骨格としている。該スフィンゴ糖脂質は、脊椎動物、無脊椎動物、植物などに広く存在する化合物である。これらは、タカラバイオ、Sigma社などの市販品を用いることができる。
たとえば、該スフィンゴ糖脂質(1b)を公知の方法を用いて酵素処理することにより(J. Biol. Chem.、Vol.250、P.24370、1995年)、セラミド部位にあるアミド結合を選択的に加水分解し、アミノ基をもつスフィンゴシン塩基が疎水性部となる一本鎖糖脂質である化合物(2b)(リゾ体)を得ることができる。該酵素反応は、スフィンゴ糖脂質やスフィンゴミエリンに特異的作用することのできる酵素、スフィンゴ脂質セラミドN-デアシラーゼ(Sphingolipid ceramide N-deacylase: SCDase, E.C. 3.5.1.69)を用いる。当該酵素はすべてのスフィンゴ糖脂質とスフィンゴミエリンに作用する。
前記SCDaseは、反応液のpHや界面活性剤濃度により、加水分解以外に、縮合反応と脂肪酸交換反応も効率よく触媒することができる(J. Lipid Res.、Vol.38、P.1923、1997年)。
前記酵素による加水分解反応は、スフィンゴ糖脂質10μmolに対してSCDaseを好ましくは1〜5U添加し、好ましくはpH5.5〜6.5の酢酸緩衝液中で、界面活性剤としてたとえばタウロデオキシコール酸ナトリウム0.5%〜2.0%の存在下に、30〜40℃で実施することが好ましい。さらに反応液の上層部に、好ましくは反応液の10倍量に相当する炭素数10〜18の炭化水素溶媒を加えることにより高い収率で化合物(2b)を得ることができる。
次に、得られた化合物(2b)のアミノ基に、金属基板または金属微粒子表面と化学的固定及び/又は物理的な吸着による固定が可能なリンカー部位となる化合物(3b)を化学結合により結合させて化合物(4b)を得ることができる。このような化合物としてはたとえば、HOOC−Cn2nY(3b)(式中、n、Yは前記式(8)〜(12)中のn、Yと同意義である。)で表される、チオオクト酸、チオール基を末端に有する脂肪酸、ジスルフィド基を有する脂肪酸が挙げられる。
また、リンカー部位を誘導する化合物(3b)は、あらかじめカルボキシル基をN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)などで活性化したものを用いてもよい。
リゾ体(2b)のアミノ基と化合物(3b)のカルボキシル基との反応は、溶媒中、必要に応じ脱水縮合剤の存在下に実施する。化合物(3b)の使用量は、リゾ体(2b)に対して、1〜3当量の範囲にあることが好ましい。
前記溶媒としては、たとえば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、エタノールなどの有機溶媒、水などが挙げられる。溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
脱水縮合剤を用いる場合、たとえば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩(DMT-MM)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCまたはWSC)などが挙げられる。また、N-メチルモルホリン(NMP)、NHS等の活性化剤を上記脱水縮合剤を併用して用いることもできる。
反応は、好ましくは0℃から40℃の範囲の温度で、好ましくは1〜48時間程度行う。
スキーム4
スキーム4に示すように、さらに側鎖部分の2重結合に、エポキシ基、水酸基を導入したり、アルデヒドに変換することにより、側鎖部分の炭素数を変換することができる。
Figure 0004742340
上記スキーム4において、R5は−Cn2n−Yである。R4は、−Cp2p−CH3で表される基である。R4’は、R4と異なる−Cp2p−CH3で表される基である。
N、n、pは、前記と同義である。
オレフィン部分にエポキシ基を導入するには、アルカリ性過酸化水素(Prilezhaevエポキシ化反応)、m-クロロ過安息香酸(m-chloro perbenzoic acid;MCPBA酸化)、Ti(O-i-Pr)4と酒石酸ジエチルメタノールの存在下tert-ブチルヒドロペルオキシド(香月−Sharpless不斉酸化)などを用いて行うことができる。
オレフィンに水酸基を導入するには、カンファースルホン酸(CSA)やp−トルエンスルホン酸(pTsOH)のような酸、もしくは、水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)のような塩基の存在下、先のエポキシ基を開裂させ水酸基(ジオール)を導入できる。
また、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)により、還元的に開裂させてもよい。あるいは、オレフィンにBH3を作用させ、その後、過酸化水素水で処理して、モノオール(モノアルコール)に変換できる(ヒドロボレーション)。
さらに、オレフィンをオゾン気流下でオゾン酸化すると、アルデヒドが得られる。エポキシ基を開裂させて得られる水酸基(ジオール)を、過ヨウ素酸酸化して同様の誘導体を得ることもできる(但し、糖水酸基は、例えば、アセチル基などのアシル系保護基で保護しておく必要がある)。
得られるアルデヒドは、その後、Wittig反応により、任意の長さの炭化水素を有するリンイリドと反応させて、式(8)中の側鎖の長さを任意に変換することができる。
このようにして得られる式(8)の側鎖を有する化合物4b等は、たとえばグルコース単位を有しているが、たとえば、スキーム1で示したのと同様の方法により、グルコース単位を硫酸基含有糖単位に変換することができる。
<配糖体部位の変換方法:式(9)〜(12)の配糖体部位を有する化合物の合成>
スキーム5
さらにスキーム5に示すような、出発原料として天然に由来するグリセロ糖脂質を用いる方法により、式(9)〜(12)の配糖体部位を有する硫酸基含有糖化合物を合成することができる。
Figure 0004742340
式中、GNは糖鎖部位であり、たとえば、グルコース単位である。R6、R7は、互いに独立に−Cr2r−CH3(式中、rは、1〜20の整数を示す。)である。これらは、Sigma社などの市販品を用いることができる。
化合物6bは、化合物5bのアシル基部分を通常の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、水酸化リチウムなどで処理して、脱アシル化を行うことにより得ることができる。
また、アシル部分の2位に選択的に作用するリパーゼを使用すると、化合物6cへと変換できる。同様に、1,3−特異的リパーゼを作用させると、化合物6dに変換できる。これらの反応は、緩衝液中で行うことが好ましい。
次に、HOOC−Cn2nY(7b)、またはこのビニールエステル、トリクロロアセチルのエステル(活性エステル)体を用い、有機溶媒(エーテル、クロロホルム、トルエン、塩化メチレン、アセトニトリル、THF、DMFなど)中で、リパーゼを作用させると、エステル交換反応が生じ、対応する化合物8b〜8dを得ることができる。
なお、以上の反応は、特に糖中の水酸基を保護しなくてもよい。また、必要に応じ、糖の6位を、シリル系保護基(t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基)、トリチル基のようなエーテル系保護基、4位と6位をイソプロピリデン基やベンジリデン基のようなアセタール系保護基、あるいは、レブリロイル基などで選択的に保護してもよい。
シリル系保護基は、酢酸の共存下、テトラブチルアンモニウムフルオリドで、トリチル基は、CSAやp-TsOHあるいは、接触水添により除去できる。アセタール系保護基も、酸処理で除去できる。側鎖に飽和炭化水素基を含む場合には、ベンジリデン基は、接触水添によっても脱保護が可能である。レブリロイル基は、ヒドラジン−酢酸で選択的に除去できる。これらの脱保護の条件はいずれも、グリセロール部位のアシル基に何ら影響を及ぼすことなく、除去できる。
さらに側鎖部分のR6が、二重結合などを有するときには、前記と同様にして別の置換基を導入できる。
このようにして得られる化合物は、たとえばスキーム1、2で示したのと同様の方法により、グルコース単位を硫酸基含有糖単位に変換する。
<サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用センサーチップ、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用センサーチップ>
本発明に係るサーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用センサーチップ、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用センサーチップは、前記硫酸基含有糖化合物が金属基板表面に固定されている。
金属基板の素材としては、たとえば、好ましくは金、銀、白金、銅、パラジウムなどが挙げられ、これらのうちさらに好ましくは金または白金、特に好ましくは金が挙げられる。基板の形状は限定されず、板状、管状、球状などの形状が挙げられる。このうち板状の形状を有する基板を好ましく用いることができる。
金属基板への固定化は、好ましくは、金属表面と、チオール基(-SH)あるいはジスルフィド基(-S-S-)との直接的な共有結合や吸着により行うことができる。
したがって、この場合、硫酸基含有糖化合物のうち、配糖体の末端に、−SHまたはジスルフィド基を末端に有する化合物が好ましい。すなわち前記式(1)、(2)、あるいは式(6)、(7)においてX3が式(8)〜(12)で表される化合物を用いることが好ましい。
前記式(6)、(7)において、X3が式(8)〜(12)で表される基である場合、側鎖部位の自己組織化による相乗効果により、より高度な配向性と高密度な固定が可能となる。さらに、この自己組織化は、スフィンゴシン塩基のような天然由来の側鎖を有することが望ましい。これは、センサーチップなどの基板表面が、細胞膜の表面状態に近似した状態にあるためではないかと推測される。
基板との結合は、自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer)法などを用いて行うことができる。すなわち、チオール基あるいはジスルフィド基を有する化合物が、金などと特異的に吸着し、アルキル鎖間のvan der Waals 力によりSAMを形成させる方法である。
硫酸基含有糖化合物が−SHまたはジスルフィド基を末端に有する場合、硫酸基含有糖化合物による金属基板表面への単分子膜の構築は、特殊な装置を必要とせず、これら誘導体の溶液中に基板を浸漬するだけで容易に実施できる。浸漬条件(溶媒、濃度、温度、時間)によって構造、配向の制御も可能である。ここで用いられる溶媒は特に限定されるものではないが、固定化させる誘導体が溶解する有機溶媒であることが好ましい。
通常、金属基板表面における硫酸基含有糖化合物の結合割合は、好ましくは0.1〜10個/nm2、さらに好ましくは1〜10個/nm2の範囲である。このような結合割合であると、優れた検出感度を発揮することができる。
特に、式(8)〜(12)において、側鎖部位が前記リンカー部位よりも長くなると、側鎖部位がリンカー部位の長さに応じて折り畳み構造をとり、折りたたまれた側鎖部位によって、硫酸基含有糖化合物同士がサーズウイルスあるいはインフルエンザウイルスとの結合に適した配向性をもって基板表面や微粒子表面に効果的に結合するためではないかと推測される。それにより、上記のような好ましい結合割合が達成されたものと推測される。
<サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質の検出方法(1)、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンの検出方法(1)>
本発明に係るサーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質の検出方法は、下記の工程からなる。
(1)試験化合物を、前記センサーチップの基板表面に接触させる工程、
(2)基板に結合したサーズウイルスのスパイクタンパク質またはサーズウイルスを検出する工程。
本発明に係るインフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出方法は、下記の工程からなる。
(1)試験化合物を、前記センサーチップの基板表面に接触させる工程、
(2)基板に結合したインフルエンザのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスを検出する工程。
前記硫酸基含有糖化合物を金属基板に固定化したセンサーチップと、試験化合物との接触は通常、溶媒の存在下で行うことが好ましい。前記センサーチップを用いるウイルスの検出においては、これらが変性しない溶媒を選択することが必要であり、たとえば水または緩衝液などを用いる。
溶媒のpHは、好ましくは6〜8の範囲であり、温度は好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは25〜40℃の範囲である。
緩衝液は、たとえば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液、またはトリス緩衝液、より好ましくはHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15N)などが挙げられる。
以下に、本発明に係るセンサーチップのうち、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)による、ウイルスの検出方法の一例を示す。SPRによる検出方法では、標識物質を用いることなく試験化合物(アナライト、分析対象化合物ともいう)の変化を検出することができる。このSPRの現象は、表面プラズモンが金属/液体界面で励起した場合に起こる光学現象を利用するもので、センサーチップ表面で生じる微少なプラズモン共鳴角(SPRシグナル)を検出して、たとえば、金属表面に固定化した物質と検体との間の二分子間結合および解離の変化を定量的に得ることができる。
ウイルスの検出は、温度を好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは25〜40℃の範囲で一定に保持し、好ましくはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液、またはトリス緩衝液、より好ましくはHEPES緩衝液で行う。
これに試験化合物の溶液をゆっくりと注入する。アフィニティー定数を求める場合には、試験化合物の濃度を変化させ、2〜8回の測定をすることが望ましい。反応時間は結合・解離反応ともに3〜30分程度が好ましいが、目的の相互作用によっては測定時間を変更する場合がある。
また、緩衝液の流速は好ましくは3〜50μl/minで、検体量はnM〜mMを1回の測定につき5〜1000μl程度にするのが好ましい。アフィニティー定数は2〜8点の測定濃度をとり、各濃度のセンサーグラムにおいて、平衡状態よりスキャッチャードプロットを作成してアフィニティー定数(KdおよびKa)を算定する。
このような、本発明のセンサーチップを用いる、表面プラズモン共鳴バイオセンサーは極微量(<0.01nM)のサーズウイルスまたはそのスパイクタンパク質、あるいはインフルエンザのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスでも、前処理あるいは標識物質を用いないで、高感度に検出できることができる。
すなわちセンサーチップとサーズウイルスまたはそのスパイクタンパク質との結合速度定数(Ka)および解離定数(KD)は、前記式(1)で表される硫酸基含有糖化合物においてそれぞれ、高い値および小さい(低い)値を示す。また、センサーチップとインフルエンザのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスとの結合速度定数(Ka)および解離定数(KD)は、前記式(1)で表される硫酸基含有糖化合物においてそれぞれ、高い値および小さい(低い)値を示す。
前記式(6)、(7)において、X3が式(8)〜(12)で表される基である場合、さらに高い値を示す。このような効果はスフィンゴシン塩基などの側鎖部位の自己組織化機能により、高度な配向性と高密度な固定化が行われ、複数の近接する糖鎖部位が効率よくセンサーチップとサーズウイルスまたはそのスパイクタンパク質、あるいはヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスを強く結合させるためである。
<サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用微粒子、検出試薬>
<インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用微粒子、検出試薬>
本発明に係るサーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用微粒子、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用微粒子は、前記硫酸基含有糖化合物が、金属微粒子表面に固定されている微粒子である。
金属微粒子の素材としては、好ましくは金、銀、白金、銅、パラジウムなどが挙げられ、これらのうちより好ましくは金または白金、特に好ましくは金である。
このような金属微粒子は、平均粒子径が、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nmの範囲にある。また、金属微粒子は、単分散な粒子径であることが好ましい。この範囲の金属微粒子を用いることで、視覚的に検出可能なシグナル色(オレンジ〜赤)が得られ、かつ溶媒中における分散安定性が良好になり、高感度で検出時間の短縮が図ることができる。
本発明で用いる金属微粒子は、公知の方法により製造することができる。たとえば、金微粒子は、Frensの方法を用いることにより、種々の大きさの微粒子を容易に製造することができる(Nature Phys. Sci.、Vol.241、P.20、1973年)。
具体的には、たとえば金微粒子の製造方法としては、塩化金の溶液を加熱沸騰させ、ついで、クエン酸ナトリウムの溶液と混合して塩化金を還元する方法により行うことができる。上記二つの溶液を混合するとすぐに沸騰溶液は薄い青色に変色して核生成が開始される。ついで、すぐに青色から赤色に変わって単一分散微粒子の生成が起こり、塩化金の還元は沸騰をさらに続けることで完了する。
得られる微粒子の粒子径は、クエン酸ナトリウム溶液の濃度を変化させることにより調整することができる。このような金微粒子は溶液中に分散して存在できることが好ましく、その状態は特に限定されないが、金微粒子が安定な分散状態で存在していることが好ましい。例えば、コロイド状態(分散コロイド状態)となることがより好ましい。
金属微粒子に、硫酸基含有糖化合物を固定化する方法としては、抗原−抗体反応等に代表される免疫反応に係る物質の固定方法(例えばJ. Histochem. Cytochem.,Vol.30、P.691、1982年)、前記センサーチップに硫酸基含有糖化合物を固定化した方法を応用することが可能である。すなわち、金属微粒子を分散させた溶液と該硫酸基含有糖化合物の溶液を5分以上混合する。この時、金属微粒子に対して十分量の硫酸基含有糖化合物が固定されれば、金属コロイドは安定に分散され、ウイルス検出用微粒子を得ることができる。ここで、金属微粒子表面における硫酸基含有糖化合物の結合割合は、溶液中の硫酸基含有糖化合物の濃度やその他条件(例えば、溶媒、温度、時間など)でコントロールすることができる。
通常、金属微粒子表面における硫酸基含有糖化合物の結合割合は、好ましくは0.1〜10個/nm2、さらに好ましくは1〜10個/nm2の範囲である。このような結合割合であると、優れた検出感度を発揮することができる。
特に、式(8)〜(12)の前記硫酸基含有糖化合物においては、特定の原子数で側鎖部位、リンカー部位が構成される。この場合、特に、側鎖部位が前記リンカー部位よりも長い場合、側鎖部位がリンカー部位の長さに応じて折り畳み構造をとり、折りたたまれた側鎖部位によって、硫酸基含有糖化合物同士がサーズウイルスあるいはインフルエンザウイルスとの結合に適した配向性をもって基板表面や微粒子表面に効果的に結合するためではないかと推測される。それにより、上記のような好ましい結合割合が達成されたものと推測される。
このような本発明の微粒子は、溶液形態で保存することが、該微粒子の保存安定性の観点から好ましい。
この場合、前記式(8)〜(12)で表される硫酸基含有糖化合物が結合した微粒子は、−C(=O)−Cn2n−Yまたは−CH2−Cn2n−Yで表されるリンカー部位において、nが好ましくは2〜10の整数、さらに好ましくは3〜8、特に好ましくは3〜5であるとおり、リンカー部位の長さが特定範囲以内にあるため、溶液中での分散安定性に極めて優れている。したがって、本発明の硫酸基含有糖化合物が結合した微粒子を含む試薬は、特に溶液中での使用に優れる。
前記硫酸基含有糖化合物の金属微粒子への固定化においては、硫酸基含有糖化合物の高度な配向性と高密度な固定を目的にしていることから、必要十分量の硫酸基含有糖化合物を混合して固定化を図ることが好ましいが、過剰量の硫酸基含有糖化合物を混合すると、混合溶液中からの除去作業が必要となる。
たとえば、金微粒子の場合、硫酸基含有糖化合物を固定化した金微粒子の分散溶液の分散安定性、および試験化合物の添加量と色調変化の関係から、硫酸基含有糖化合物の最適な混合量を決定することができる。
すなわち、添加した化合物が最適量以下の場合、硫酸基含有糖化合物を自己組織化するための十分な量に達しないため、金微粒子表面の疎水性が増加して分散安定性の低下し、色調の変化および凝集−沈殿を生じる。
また、添加した化合物が最適量以上の場合、試験化合物を添加した後、凝集反応が過剰に添加した化合物によって阻害され、色調変化が小さくなる。したがって、色調変化や凝集が発生せず、かつ試験化合物を添加したときに色調変化が大きい範囲内に制御することにより、最適な固定化を行うことができる。
<サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用試薬、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用試薬>
前記金属微粒子への硫酸基含有糖化合物の固定化により、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用微粒子、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用微粒子を得ることができるが、該微粒子を含む溶液は、そのまま本発明のサーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用試薬、あるいは、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用試薬として使用することができる。
このため、前記固定化に使用する溶媒は、検出対象となる試験化合物が変性しないことが必要であり、たとえば水または緩衝液などを用いる。
溶媒のpHは、好ましくは6〜8の範囲であり、温度は好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは25〜40℃の範囲である。
緩衝液は、たとえば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液、またはトリス緩衝液、より好ましくはHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15N)などが挙げられる。
このようにして、検出用微粒子の合成に伴って、該検出用微粒子を溶媒中に含有するサーズウイルス検出用試薬あるいはインフルエンザウイルス検出用試薬が得られることとなる。このような検出用試薬においては、溶液中に微粒子がコロイドになって存在していることが好ましく、該コロイドは分散して存在していることがより好ましい。
微粒子の金属コロイドが安定化されたかの確認は、たとえば、金コロイドの場合、混合溶液に等量の10%塩化ナトリウム水溶液を加えて、金コロイドの色調に変化がなければ安定化されていると認定することができる。
検出用試薬中の検出用微粒子の濃度は、好ましくは1.0×105〜1.0×1015個/L、さらに好ましくは1.0×107〜1.0×1013個/Lの範囲である。
このような濃度範囲であると、検出用微粒子のコロイドが分散して安定に存在し、保存安定性を向上させることができるとともに、サーズウイルスまたはそのスパイクタンパク質、あるいはヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスの検出感度を向上させることができる。
<サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質の検出方法(2)、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンの検出方法(2)>
本発明に係るサーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質の検出方法は下記の工程からなる。
(1)試験化合物を、前記サーズウイルス検出用試薬に添加して、サーズウイルス検出用微粒子に接触させる工程、
(2)サーズウイルス検出用微粒子に結合したサーズウイルスのスパイクタンパク質またはサーズウイルスを検出する工程。
本発明に係るインフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンの検出方法は下記の工程からなる。
(1)試験化合物を、前記インフルエンザウイルス検出用試薬に添加して、インフルエンザウイルス検出用微粒子に接触させる工程、
(2)インフルエンザウイルス検出用微粒子に結合したヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスを検出する工程。
サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用微粒子に結合した、サーズウイルスのスパイクタンパク質またはサーズウイルスの検出手段としては、たとえば、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用微粒子のコロイド溶液において、該微粒子がサーズウイルスのスパイクタンパク質またはサーズウイルスと結合する際の色調変化から該サーズウイルスのスパイクタンパク質またはサーズウイルスの検出を行う方法が挙げられる。
具体的には、たとえば、金微粒子の場合、サーズウイルスのスパイクタンパク質またはサーズウイルスがサーズウイルス検出用微粒子と結合していない状態において、前記微粒子のコロイド粒子が分散した状態で溶液は赤色を示すが、サーズウイルスのスパイクタンパク質またはサーズウイルスが結合すると前記微粒子が凝集して赤色が薄れるあるいは無色透明に変化する、または、凝集体(沈殿物)が生じる。
同様に、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用微粒子に結合した、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスの検出手段としては、たとえば、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用微粒子のコロイド溶液において、該微粒子がインフルエンザウイルスのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスと結合する際の色調変化から該インフルエンザウイルスのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスの検出を行う方法が挙げられる。
具体的には、たとえば、金微粒子の場合インフルエンザウイルスのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン検出用微粒子と結合していない状態において、前記微粒子のコロイド粒子が分散した状態で溶液は赤色を示すが、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンまたはインフルエンザウイルスが結合すると前記微粒子が凝集して赤色が薄れるあるいは無色透明に変化する、または、凝集体(沈殿物)が生じる。
色調変化の計測手法としては、目視により観測し、その結果に基づいて測定対象物質の存在を簡便に半定量することができる。
また、色調変化を分光光度計により高感度検出することも可能である。その場合、色調変化を測定するための波長としては、色調変化を測定可能な波長であれば、特に限定されないが、たとえば、金微粒子の場合、金微粒子の極大吸収波長付近500〜550nm付近が測定感度を高くすることができるので望ましい。多波長による吸光度測定を行うことで、精度の高い検出が可能であることは言うまでもない。
色調変化の測定を行える装置としては、比色計、分光光度計、マイクロプレートリーダー、生化学自動分析機等が挙げられる。
このような色調変化を計測することにより、高感度に対象化合物を検出することができる。
<サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質吸着材、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニン吸着材>
前記硫酸基含有糖化合物は、硫酸化された単糖部分または二糖部分が、サーズウイルスのスパイクタンパク質と特異的に結合するので、サーズウイルスの吸着材として用いることができる。
また、前記硫酸基含有糖化合物は、硫酸化された単糖部分または二糖部分が、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンと特異的に結合するので、インフルエンザウイルスの吸着材として用いることができる。
吸着材としては、不織布、織布などのシート状のもの、溶液に含有させて噴霧した噴霧状のものが挙げられる。
たとえば、生理食塩水等の水溶液中に前記硫酸基含有糖化合物を含有する溶液を、うがい薬やエアロゾール状のスプレー液として使用すれば、感染予防効果も高く、院内感染予防試薬として用いることもできる。
また、硫酸基含有糖化合物を含む溶液を不織布、あるいは織布などに膨潤させ、水分を乾燥させることにより、ウイルスを除去する吸着シートを得ることもできる。
たとえば、サーズウイルスの感染を防止するには、不織布のマスク、例えば、米国国立労働安全衛生研究所で認可したN95マスク(住友3M、米国)が知られているが、息苦しいのが難点である。そこで、硫酸基含有糖化合物を通常のマスクなどに吸着させることにより、息苦しさを感じず、サーズウイルスをトラップすることもできる。また、エアコン用フィルター、空気清浄機のフィルターなどに、硫酸基含有糖化合物を吸着させることにより、サーズウイルスの除去も可能である。
なお、前述のとおり、サーズウイルスまたはインフルエンザウイルスに対し、本発明に係る糖鎖構造をそれぞれの存在可能性の高い環境中で用いることにより、選択的にサーズウイルスまたはインフルエンザウイルスを検出あるいは吸着することができる。
以下に、本発明の実施例を挙げ、具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
なお、下記の実施例においては、サーズスパイクタンパク質およびインフルエンザウイルスの表面タンパク質であるヘマグルチニンは、Protein Sciences Corporation社 (Connecticut, Meriden)より購入した。インフルエンザウイルスは、コスモバイオ社から購入した。表面プラズモン共鳴(SPR)装置、および、センサーチップは、BIAcore 3000 (Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden)を使用した。1H-NMRは、JEOL LA-600 spectrometerを用いて重水中で測定した。酵素は、Sigma社、または、Glycoscience社のものを使用した。
〔実施例1〕
Figure 0004742340
(1) 化合物4a(6SGN)の合成
400mg(1.7 mmol)の化合物1a(p−ニトロフェニル N−アセチルグルコサミニド(シグマ社等))を、40℃の条件下、三酸化硫黄トリメチルアミンコンプレックスを用いて、6位を選択的に硫酸化した(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 13, 2821-2823 (2003).)。その結果、化合物2aを280mg(収率54%)得た。
次に、水中、化合物2aを44mg(0.1mmol)、触媒としてPd/C(Sigma社製)を2mg用い、水素の存在下、室温で、3時間反応させた。触媒をセライトでろ過して、化合物3aを29mg(収率72%)得た。
次に、化合物3aを、4-(4,6-dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride (DMT-MM) の4.5mgの存在下、リポ酸2mg(96mmol)とを、DMF中、25℃で14時間反応させ、化合物4aを3.2mg(収率51%)得た。
化合物4a: 1H NMR (600 MHz, D2O) δ 7.317 (d, J = 9.6 Hz, 2H, o-Ph), 7.033 (d, J = 9.6 Hz, 2H, m-Ph), 5.086 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-1), and 1.996 (s, 3H, NHAc).
〔実施例2〕
Figure 0004742340
(3)化合物8a(3SLN)の合成:
加水分解酵素としてBacillus circulans由来のβ-galactosidase (Sigma社)を用いた。通常、加水分解酵素β-galactosidaseには、夾雑酵素としてβ-N-acetylhexosaminidase (以下、NAHaseという)が含まれており、この夾雑酵素が基質のアクセプターであるp−ニトロフェニル β−D−N−アセチルグルコサミン 1a(以下、GlcNAcβ-pNPという)を加水分解する可能性があるので、あらかじめ精製して夾雑酵素を除く必要がある。Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(Amersham Biosciences社)を用い、NAHase活性を除去した。
次に、GlcNAcβ-pNP (1.0 g、1a) および lactose (4.0 g)を、50%のアセトニトリルを含むsodium phosphate buffer (20 mM, pH6.8) 35 mLに溶解させ、上記の精製したβ-galactosidase (3.2 U)を加えた。30℃で反応させ、Amide-80 column(東ソー製)を用いて、HPLCによってモニタリングした。
化合物5aが最大となる24時間後に反応を止め、ODS−C18(メルク製)、 Toyopearl HW-40S(東ソー製)、およびBioGel P2(バイオラッド製)により精製し、化合物5aを265 mg得た。
このシンプルで簡便な方法により、β-galactosidaseを使用して、化合物5aを大量に合成することができた。
化合物5a: 1H NMR (600 MHz, D2O) δ 8.205 (d, J = 9.0 Hz, 2H, o-Ph), 7.149 (d, J = 9.0 Hz, 2H, m-Ph), 5.303 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-1), 4.476 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H’-1), and 1.987 (s, 3H, NHAc).
次に、5a(25 mg、0.05 mmol)、Bu2SnO (0.013 g, 0.05mmol)とを乾燥メタノール( 200 ml), toluene (200 ml) に加え、環流(reflux)しながら、3 時間 脱水・共沸した。さらに、トルエンのみで2時間 脱水・共沸し、その後、減圧濃縮した。残さに乾燥DMF(3ml)加え、SO3Me3N (8 mg, 0.05 mmol)を加え、40℃で、3時間反応させ、6aを(17 mg、60 %)得た。
化合物6a: 1H NMR (600 MHz, D2O) δ 8.233 (d, J = 9.0 Hz, 2H, o-Ph), 7.175 (d, J = 9.0 Hz, 2H, m-Ph), 5.326 (d, J = 8.4 Hz, 1H, H-1), 4.613 (d, J = 7.2 Hz, 1H, H’-1), 4.331 (dd, J=3.0 and 9.9, H-3’), and 2.003 (s, 3H, NHAc).
次に、前述の化合物2a→化合物3aと同様にして、水素の存在下、6a(17 mg、0.029mmol)、Pd/C (2 mg)を水中で還元して、化合物7aを得た(12 mg、75%)。
化合物7a: 1H NMR (600 MHz, D2O) δ 6.908 (d, J = 9.0 Hz, 2H, o-Ph), 6.768 (d, J = 9.0 Hz, 2H, m-Ph), 5.314 (d, J = 8.4 Hz, 1H, H-1), 4.621 (d, J = 7.2 Hz, 1H, H’-1), and 2.013 (s, 3H, NHAc).
次に、化合物7a(12 mg、0.022 mmol)と、DMT−MM(4.3 mg、0.016 mmol)、および、リポ酸(2 mg、0.09 mmol)とを乾燥DMF(1 ml)に溶解し、25℃で24時間反応させた。そして、化合物8aを(2.6mg、16.3%)で得た。
化合物8a: 1H NMR (600 MHz, D2O) δ 7.318 (d, J = 9.0 Hz, 2H, o-Ph), 7.040 (d, J = 9.0 Hz, 2H, m-Ph), 5.122 (d, J = 8.4 Hz, 1H, H-1), 4.586 (d, J = 7.2 Hz, 1H, H’-1), and 1.996 (s, 3H, NHAc).
〔実施例3〕
硫酸基含有糖化合物4aが結合したセンサーチップ1の調製
シアリルコンジュゲートの固定化のための金表面として、SIA kit Au (BIAcore製)を用いた。オゾンクリーナーで洗浄したSIA kit Auプレートを、化合物4aを含むメタノール溶液(2 mL, 60 μM)に浸した。室温下で、24時間放置後、その金プレートを反応溶液から取り出し、メタノールおよび水で洗浄し、窒素気流下で乾燥させ、センサーチップ1を得た。
〔実施例4〕
硫酸基含有糖化合物8aが結合したセンサーチップ2の調製
実施例3で示した、表面に化合物4aを結合したセンサーチップと同様の方法により、表面に化合物8aを結合したセンサーチップ2を得た。
〔実施例5〕
ヘマグルチニンと、化合物4aが表面に結合したセンサーチップ1との相互作用解析
1μg/mLの濃度に希釈した4種のインフルエンザウイルス(HA:インフルエンザA型ウイルス, Panama; インフルエンザA型ウイルス New Caledonia;インフルエンザA型ウイルス Vietnam;インフルエンザB型ウイルス, Hong Kong)のヘマグルチニンを、化合物4aを表面に結合したセンサーチップを装着したSPR装置にインジェクトした。その結果、化合物4aと結合している表面に対して、HAが結合することがわかった。
結果を図1に示す。
〔実施例6〕
ヘマグルチニンと、化合物8aが表面に結合したセンサーチップ2との相互作用解析
1μg/mLの濃度に希釈した2種のインフルエンザウイルス(HA:インフルエンザA型ウイルス, Panama;インフルエンザA型ウイルス Vietnam)のヘマグルチニンを、化合物8aを表面に結合したセンサーチップを装着したSPR装置にインジェクトした。その結果、化合物8aと結合している表面に対して、HAが結合することがわかった。
結果を図2に示す。
〔実施例7〕
インフルエンザウイルスとセンサーチップ1との相互作用解析
2種のインフルエンザウイルス(インフルエンザA型ウイルス, Panama/H3N2, 1.4μg/mL; インフルエンザB型ウイルス Victoria, 3.2μg/mL)を、化合物4aを表面に結合したセンサーチップ1を装着したSPR装置にインジェクトした。その結果、化合物4aと結合している表面に対して、これらのインフルエンザウイルスが結合することがわかった。
結果を図3に示す。
〔実施例8〕
インフルエンザウイルスとセンサーチップ2との相互作用解析
インフルエンザウイルス(インフルエンザA型ウイルス, Panama/H3N2, 1.4μg/mL; インフルエンザB型ウイルス, Victoria, 3.2μg/mL)を、化合物8aを表面に結合したセンサーチップ2を装着したSPR装置にインジェクトした。その結果、化合物8aと結合している表面に対して、これらのインフルエンザウイルスが結合することがわかった。
結果を図4に示す。
〔実施例9〕
サーズのスパイクタンパク質とセンサーチップ1との相互作用解析
1μg/mLのSARSスパイクタンパク質を、化合物4aを表面に結合したセンサーチップ1を装着したSPR装置にインジェクトした。その結果、化合物4aと結合している表面に対して、スパイクタンパク質が結合することがわかった。
結果を図5に示す。
〔実施例10〕
サーズのスパイクタンパク質とセンサーチップ2との相互作用解析
1μg/mLのSARSスパイクタンパク質を、化合物8aを表面に結合したセンサーチップ2を装着したSPR装置にインジェクトした。その結果、化合物8aと結合している表面に対して、スパイクタンパク質が結合することがわかった。
結果を図5に示す。
〔比較例1〕
Figure 0004742340
市販のp-nitrophenyl α-D-glucopyranoside(化合物9)(250mg)を水に溶解し、パラジウムブラック(10mg)を加え、1気圧、常温下で水素の存在下、還元を行った。セライトろ過して、触媒を除き、減圧濃縮して、化合物10を225mg(99%)得た。続いて、化合物10(225mg、0.83mmol)およびsuccinimidyl 1,2-dithiolane-3-pentanoate(300 mg、0.99mmol)を乾燥DMF5mlに溶解し、25℃で48時間反応させた。そして、化合物11を得た(200mg、59%)。
化合物11の1H NMR (400 MHz, CD3OD) :δ 7.45 (d, aromatics, J = 9.0 Hz), 7.119 (d, aromatics, J = 9.0 Hz), 5.416 (d, H-1, J = 3.6 Hz), 3.829 (t, H-3, J = 9.4 Hz), 3.542 (dd, H-2, J=3.6 and 9.6 Hz), 3.404 (t, H-4, J=9.2Hz), 3.21-3.05 (m, dithiolane of lipoic acid, 2H), 2.50-2.41 (m, dithiolane of lipoic acid, 1H), 2.353 (t, -CH2-CONH-, J=7.4Hz), 1.94-1.84 (m, dithiolane of lipoic acid, 1H), 1.80-1.62 (m, -CH2-, 4H) and 1.56-1.45 (m, -CH2-, 2H).
〔比較例2〕
化合物11が結合したセンサーチップ3の調製
実施例3で示した、表面に化合物4aを結合したセンサーチップと同様の方法により、表面に比較例1で製造した化合物11を結合したセンサーチップ3を得た。
〔比較例3〕
比較例2のセンサーチップ3に対して、インフルエンザウイルスA/H3N2/PanamaおよびB/Hong KongのヘマグルチニンをインジェクトしたときのSPRを図1に示す。図1には、硫酸基含有糖化合物4aが結合したセンサーチップ1に対する、4種類のヘマグルチニン(A/H3N2/Panama, A/H1N1/New Caledonia, A/H5N1/Vietnam, B/Hong Kong/)のSPR結果が同時に示されているが、化合物11が結合したセンサーチップ3では、これらのヘマグルチニンは全く結合しなかった。このことは、これらのヘマグルチニンが、化合物4aの結合したセンサーチップ1に、特異的に結合していることを示している。
〔比較例4〕
比較例3と同様にして、比較例2のセンサーチップ3に対して、SARSスパイクタンパク質をインジェクトしたときのSPRを図5に示す。図5には、硫酸基含有糖化合物4aまたは8aがそれぞれ結合したセンサーチップ1およびセンサーチップ2に対する、SARSスパイクタンパク質のSPR結果が同時に示されているが、化合物11が結合したセンサーチップ3では、SARSスパイクタンパク質は全く結合しなかった。このことは、SARSスパイクタンパク質が、化合物4aまたは8aがそれぞれ結合したセンサーチップ1またはセンサーチップ2に、特異的に結合していることを示している。
〔調製例1〕阻害剤、poly(p-aminophenyl α-N-acetyl neuraminic acid-(2-3)-β- D - galactopyranosyl - (1-4) - 2 - acetamido - 2 - deoxy - β- D - glucopyranosaminyl - L - glutamine-co-glutamic acidの合成およびpoly (p-aminophenylα- N-acetyl neuraminicacid- (2-6) -β- D - galactopyranosyl - (1-4) - 2 - acetamido-2-deoxy -β- D - glucopyranosaminyl - L - glutamine-co-glutamic acidの合成
上記2つの阻害剤(ポリマー)を、既知の方法(Carbohydrate Research, 312, 209-217 (1998),; Archives Biochem. Biophys., 383, 28-37 (2000).)に従って合成した。即ち、まず、Carbohydrate Research, 312, 209-217 (1998)に従い、poly(L-glutamic acid)s sodium salt (30mg, Sigma社、分子量15,000-50,000)からpoly(L-glutamic acid)sを調製した。
次に、このpoly(L-glutamic acid)s (30mg)をジメチルスルフォキシド(DMSO, 0.5ml)に溶解し、これにbenzotriazol-1-yloxy-tris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate (BOP、230mg)およびhydroxybenzotriazole (HOBt、25mg)のDMSO(0.4ml)溶液を加えた。この混合物を室温下で30分撹拌した。実施例2の化合物7aの合成と同様にして、化合物5aのp-nitrophenyl基をp-aminophenyl基に変換したp-aminophenyl β -D - galactopyranosyl - (1-4) - 2 - acetamido - 2 - deoxy - β- D - glucopyranosaminide (pAP) β-LacNAc)をあらかじめ用意した。
このpAP β-LacNAc(80mg)をDMSO(0.4ml)に溶解し、これを先の反応液に加え7時間反応させた。反応液をSephadex G-75で精製した(溶離液:0.02Mリン酸緩衝液(pH7.4)、流速:1ml/min)。ポリマー画分を減圧濃縮して、poly(p-aminophenyl β-D-galactopyranosyl-(1-4)-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosaminyl-L-glutamine-co-glutamic acid)を38mg得た。
次に、上記のpoly(p-aminophenyl β-D-galactopyranosyl-(1-4)-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosaminyl-L-glutamine-co-glutamic acid)の12mgとCMP-Neu5Ac(ヤマサ醤油製、17mg)を0.5mlのMES緩衝液(pH6.4, 50mM)に溶解した。アルカリフォスファターゼ(31U)とrecombinant α2,3-sialyltransferase(Calbiochem-Novabiochem Corp., La Jolla, CA) (30U)を加えた。反応液を30℃で48時間インキュベートした。反応液をSephadex G-75で精製し、poly(p-aminophenyl α-N-acetyl neuraminic acid-(2-3)-β-D-galactopyranosyl-(1-4)-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosaminyl-L-glutamine-co-glutamic acid)を16mg得た。以下、このポリマーをポリマー1a(α2,3-polymer)とする。
1H NMR (600 MHz, D2O) :δ 7.25 (d, 2H, o-Ph), 7.00 (d, 2H, m-Ph), 5.13 (d, 1H, H-1), 4.49 (d, 1H, H’-1), 4.32 (peptide α-methine), 2.76 (dd, 1H, H-3" eq), 2.32 (peptide γ-methine), 2.04 (peptide β-methine and NHCOCH3), and 1.79 (d, 1H, H-3" ax).
同様にして、poly(p-aminophenyl α-N-acetyl neuraminic acid-(2-6)-β-D-galactopyranosyl-(1-4)-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosaminyl-L-glutamine-co-glutamic acid)も合成した。以下、このポリマーをポリマー2a(α2,6-polymer)とする。
1H NMR (600 MHz, D2O) δ 7.27 (d, 2H, o-Ph), 7.05 (d, 2H, m-Ph), 5.15 (d, 1H, H-1), 4.48 (d, 1H, H’-1), 4.31 (peptide α-methine), 2.71 (dd, 1H, H-3" eq), 2.31 (peptide γ-methine), 2.05 (peptide β-methine and NHCOCH3), and 1.74 (d, 1H, H-3" ax).
〔比較例5〕
上記のポリマー1a(α2,3-polymer)(10mg)を(HEPES)緩衝液(pH 7.4, 10 mM, 1mL)に溶解し、実施例8に示すウイルス(A/H3N2/Panama)と混合し60分、20℃で静置させた。つぎに、この試料を、〔実施例4〕の硫酸基含有糖化合物8aが結合したセンサーチップ2に対してSPR装置にインジェクトし、図4に示す結果が得られた。この結果は、実施例8に示すデータが、センサーチップ2に固定化した硫酸化糖8aと、ウイルス(A/H3N2/Panama)とが、特異的に結合していることを示す。
〔比較例6〕
上記のポリマー1a(α2,3-polymer)(10mg)を(HEPES)緩衝液(pH 7.4, 10 mM, 1mL)に溶解し、SARSスパイクタンパク質と混合し60分、20℃で静置させた。つぎに、この試料を、〔実施例4〕の硫酸基含有糖化合物8aが結合したセンサーチップ2に対してSPR装置にインジェクトし、図5に示す結果が得られた。この結果は、実施例10に示すデータが、センサーチップ2に固定化した硫酸化糖8aと、SARSスパイクタンパク質とが、特異的に結合していることを示す。
本発明に係る硫酸基含有糖化合物を基板あるいは微粒子表面に固定化した、センサーチップまたは金属微粒子含有試薬は、極微量のサーズウイルスもしくはサーズスパイクタンパク質、または極微量のインフルエンザウイルスもしくはヘマグルチニンを高感度かつ迅速に検出できる。また、
前記センサーチップは、標識物質を用いることなくリガンドの変化を高感度に検出することのできる表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)あるいは水晶振動子(Quartz Crystal Microbalance: QCM)に適用することにより、サーズウイルスもしくはサーズスパイクタンパク質、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンの微量検出が可能である。
また、前記金属微粒子によるコロイド検出方法、たとえば金微粒子による金コロイド凝集法は、迅速で簡便に行えるサーズウイルスもしくはサーズスパイクタンパク質、インフルエンザウイルスまたはヘマグルチニンのセンシング方法である。
前記硫酸基含有糖化合物を含む吸着材は、マスク、フィルターなどの吸着シートとして用いることができるほか、吸着材を含む溶液をスプレーとして使用することでサーズウイルスあるいはインフルエンザウイルスの感染予防にも有効である。
図1は化合物4aを固定化したセンサーチップ1の表面または化合物11を固定化したセンサーチップ3の表面と、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンとの相互作用のSPRセンサーグラムである。 図2は化合物8aを固定化したセンサーチップ2の表面とインフルエンザウイルスのヘマグルチニンとの相互作用のSPRセンサーグラムである。 図3は化合物4aを固定化したセンサーチップ1の表面とインフルエンザウイルスとの相互作用のSPRセンサーグラムである。 図4は化合物8aを固定化したセンサーチップ2の表面とインフルエンザウイルスとの相互作用のSPRセンサーグラムである。また、インフルエンザウイルスとセンサーチップ2と、相互作用阻害剤ポリマー1aとを混合したときの相互作用のSPRセンサーグラムである。 図5は化合物4aを固定化したセンサーチップ1の表面、化合物8aを固定化したセンサーチップ2の表面、化合物11を固定化したセンサーチップ3の表面と、サーズウイルスのスパイクタンパク質との相互作用のSPRセンサーグラムである。また、サーズスパイク蛋白質とセンサーチップ2と、相互作用阻害剤ポリマー1aとを混合したときの相互作用のSPRセンサーグラムである。さらに、化合物11を固定化したセンサーチップ3の表面とサーズスパイクタンパク質との相互作用のSPRセンサーグラムである。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)または(2)
    Figure 0004742340
    Figure 0004742340
    〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
    は、下記式(3)
    Figure 0004742340
    で表される2価の基であり;
    は、-C n H 2n -(n=2-6)であり;
    Yは、1,2−ジチオラン−3−イル基、1,2−ジチオラン−4−イル基、1,2−ジチアン−3−イル基および1,2−ジチアン−4−イル基からなる群から選ばれるジスルフィド基を示し
    Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す。〕で表される硫酸基含有糖化合物が、金属基板表面に固定されている、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用センサーチップ。
  2. nが4であり、Yが1,2−ジチオラン−3−イル基である、請求項1に記載のセンサーチップ。
  3. 下記一般式(1)または(2)
    Figure 0004742340
    Figure 0004742340
    〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
    は、下記式(3)
    Figure 0004742340
    で表される2価の基であり;
    は、-C n H 2n -(n=2-6)であり;
    Yは、1,2−ジチオラン−3−イル基、1,2−ジチオラン−4−イル基、1,2−ジチアン−3−イル基および1,2−ジチアン−4−イル基からなる群から選ばれるジスルフィド基を示し
    Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す。〕で表される硫酸基含有糖化合物が、金属微粒子表面に固定されている、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用微粒子。
  4. nが4であり、Yが1,2−ジチオラン−3−イル基である、請求項3に記載の微粒子。
  5. 請求項3または4に記載の前記微粒子が、溶液中にコロイドで存在している、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出用試薬。
  6. 下記の工程からなる、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出方法:
    (1)試験体を、請求項1または2に記載のセンサーチップの基板表面に接触させる工程、
    (2)基板に結合したサーズウイルスのスパイク蛋白質またはサーズウイルスを検出する工程。
  7. 下記の工程からなる、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質検出方法:
    (1)試験体を、請求項に記載の試薬に添加して、請求項3または4に記載の前記微粒子と接触させる工程、
    (2)前記微粒子に結合したサーズウイルスのスパイク蛋白質またはサーズウイルスを検出する工程。
  8. 下記一般式(1)または(2)
    Figure 0004742340
    Figure 0004742340
    〔式中、Rは、−OH、または、−NHCOCHを示し;
    は、下記式(3)
    Figure 0004742340
    で表される2価の基であり;
    は、-C n H 2n -(n=2-6)であり;
    Yは、1,2−ジチオラン−3−イル基、1,2−ジチオラン−4−イル基、1,2−ジチアン−3−イル基および1,2−ジチアン−4−イル基からなる群から選ばれるジスルフィド基を示し
    Mは、水素原子またはその生理的に許容される塩を形成する基を示す。〕で表される硫酸基含有糖化合物を含有する、サーズウイルスまたはサーズスパイク蛋白質吸着材。
  9. nが4であり、Yが1,2−ジチオラン−3−イル基である、請求項8に記載の吸着材。
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