JP4741765B2 - 抗菌剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応して得られる可溶性リグノセルロース物質を抗菌成分として含有する新規な抗菌剤、その製造方法、および繊維類、紙類、ゴム類、合成樹脂類、モルタル、コンクリート、塗料などの被抗菌材料に抗菌性機能を付与するための該可溶性リグノセルロース物質の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有機系の抗菌性化合物としては、塩化ベンザルコニウムや塩化セチルピリジウム等の第4級アンモニウム塩系化合物;エタノールやイソプロパノール等のアルコール系化合物;ホルマリンやグリオキザール等のアルデヒド系化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系化合物;ソルビン酸や安息香酸等のカルボン酸系化合物;クロルヘキシジン等のグアニジン系化合物;アミン系化合物等その他多くが知られている。
これらの有機系の抗菌性化合物の問題点として、繊維へ利用する場合、繊維への固着力は弱く、一般的な合成洗剤で洗濯を数回行うとほとんど除去されてしまい、洗濯耐久性(洗濯後の抗菌性)が低く、抗菌効果が消失してしまうという問題点があった。
植物由来の抗菌剤としては、タンニン類(特開平7−82663号公報)、木酢液(特開2000−97874号公報)、虫歯菌を抑制する抗菌剤としてリグニンスルホン酸(特開2000−247900号公報)等が提案されている。しかしながら、タンニン類や木酢液では大量に生産することが困難であり、また、リグニンスルホン酸はサルファイトパルプ、溶解パルプ作製時の廃液より得られる組成物であり、両パルプとも日本での生産が激減しており入手困難になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら従来技術が有していた問題点を解消し、安価でかつ大量に得ることが可能であり、しかも耐久性などの性能において優れた植物由来の抗菌成分を用いた抗菌剤、その製造方法および該抗菌成分の使用方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、木粉などの各種リグノセルロース材料にフェノール等のフェノール類を加えて加熱することにより得られる、溶液状ないしペースト状のリグノセルロース物質が抗菌に適しているという新しい知見に基づいている。
しかして、本発明は、リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応して得られる可溶性リグノセルロース物質を、抗菌成分として含有する抗菌剤である。
更に本発明は、リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応して可溶性リグノセルロース物質を得、更に必要に応じて遊離のフェノール類を除去して、抗菌成分を調製し、次いで必要に応じて溶液状、エマルジョン状または固体状の形態にすることを特徴とする抗菌剤の製造法である。
更に本発明は、リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応して得られる可溶性リグノセルロース物質を、必要に応じて遊離のフェノール類を除去した後に、必要に応じて溶液状、エマルジョン状または固体状の形態にして、被抗菌材料に適用して抗菌性機能を付与することを特徴とする、被抗菌材料に抗菌性機能を付与するための該可溶性リグノセルロース物質の使用方法である。
本明細書では、リグノセルロース材料とは、セルロース類、リグニン類等を主成分とする植物由来の各種原材料を意味し、可溶性リグノセルロース物質とは、リグノセルロース材料とフェノール類との加熱反応により得られる溶液状ないしペースト状の物質を意味する。抗菌剤とは、繊維、紙・パルプ、塗料・接着剤、プラスチックなどに用いる抗菌剤を意味する。また、抗菌性機能とは、公衆衛生的観点から行われる弱レベルの長期間の殺菌機能を意味する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌剤における抗菌成分である可溶性リグノセルロース物質を得るための出発原料物質であるリグノセルロース材料としては、オガ屑、木粉、木材チップ、単板クズ、合板切りクズ、樹皮などの植物繊維素材;ワラ、モミガラ、コーヒー豆カス、バガス絞りカス、ビートパルプなどのセルロース類;リグニン類等を主成分とする植物由来の各種材料が挙げられる。
本発明で用いるフェノール類としては、フェノール、o-、m-、p-クレゾール、3,5-、2,3-、2,6-キシレノール、o-、m-、p-プロピルフェノール、o-、m-、p-ブチルフェノール、o-、m-、p-セカンダリーブチルフェノール、o-、m-、p-ターシャリーブチルフェノール、ヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、ナフトール等の一価のフェノール類;カテコール、レゾルシノール、キノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB,ビスフェノールF等の二価のフェノール類;ピロガロール、フロログルシル、トリヒドロベンゼン、没食子酸等の三価のフェノール類;これらの塩化物等がある。これらのフェノール類は単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。本発明では価格や性能の点で、特にフェノールを用いるのが望ましい。さらに、溶液粘度を低めたり、反応初期の発熱による暴走反応を緩和したり、リグノセルロース物質中の水分を系外に取り除くために、水と共沸性の有機溶媒を、フェノール類と共に用いてもよい。また、本発明の目的が達成される範囲内で他の有機溶媒を添加、共存させて用いることも可能である。
【0006】
本発明の抗菌成分である可溶性リグノセルロース物質の製造方法としては、無触媒法、酸触媒法、アルカリ触媒法などの公知の方法を採用できる。
無触媒法としては、特開昭61-261358号公報等に紹介されている方法、即ち、木材などのリグノセルロース材料をフェノール類に加え、200〜300℃に加熱して、リグノセルロース物質の溶液を製造する方法が挙げられる。具体的には、例えば、乾燥木粉4.5gとフェノール4.5gをビーカーに秤り取り、両者をよく混ぜ、20ml容耐圧容器に入れて詰め込み、密栓の後250℃、2〜3時間加熱処理する方法である。
酸触媒法としては、特開昭57-36113号公報等に紹介されている方法、即ち、フェノール類を少量の鉱酸の存在下で、細かくした木などのグリセロール材料と反応させる方法が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール940gと濃硫酸9.4gをビーカーに秤り取り150℃に加熱し、木粉400gを1時間を要して送入し、更に同温度で1時間加熱処理する方法である。
アルカリ触媒法としては、特開平7-188568号公報等に紹介されている方法、即ち、リグノセルロース材料にフェノール類を添加し、アルカリ系添加物の存在下に加熱反応することにより可溶性リグノセルロース物質を製造する方法が挙げられる。具体的には、例えば、木粉120g(含水率71%)とフェノール47gと水酸化ナトリウム2.35gを攪拌装置の付いた2L耐圧反応容器に秤り取り、油浴中で系内温度を250℃で1時間加熱処理する方法である。
上記した方法により、木粉などのリグノセルロース材料は溶液化され、溶液状ないしペースト状の通常黒褐色の可溶性リグノセルロース物質を得ることができる。本発明では上記したいずれの方法を用いても構わない。
【0007】
上記した方法において、リグノセルロース材料とフェノール類との配合割合は、可能な限りリグノセルロース材料の配合比が大きく、かつ未溶解残渣が少ない配合割合が望まれる。
無触媒法の場合、リグノセルロース材料の10重量部に対してフェノール類を5〜20重量部、好ましくは10重量部程度を加える。反応温度は200〜300℃の範囲、好ましくは250℃程度、反応時間は15分〜1時間の範囲で実施される。
酸触媒添加の場合、リグノセルロース材料の10重量部に対してフェノール類を10〜100重量部、好ましくは20〜40重量部を加える。酸触媒の使用量は、リグノセルロース材料10重量部に対して0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜2.5重量部である。反応温度は100〜200℃の範囲、好ましくは150℃程度、反応時間は数分〜1時間の範囲で実施される。
アルカリ触媒添加の場合、リグノセルロース材料の10重量部に対してフェノール類を3〜20重量部、好ましくは10重量部程度を加える。アルカリ触媒の使用量は、リグノセルロース材料10重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜2.0重量部である。反応温度は200〜300℃の範囲、好ましくは250℃程度、反応時間は15分〜1時間の範囲で実施される。
【0008】
上記した方法で得られる溶液状ないしペースト状の可溶性リグノセルロース物質は、好ましくは、更に濾過または遠心分離により未溶解残渣を除去した後、フェノール等の水溶性の未反応溶媒、および加水分解、酸化分解により副生される水溶性反応物を除去するため水洗いを行うことにより、水とは分離する粘稠な可溶性リグノセルロース物質が得られる。好ましくは、更にこの物質中の水分を乾燥や減圧蒸留等で除去することにより、本発明の抗菌成分として用いるのに望ましい可溶性リグノセルロース物質が得られる。
【0009】
取り扱いや作業上の安全性を図るために、可溶性リグノセルロース物質中の遊離フェノールを除去する目的で、沈殿分離法を適用することができる。沈殿分離法とは、構成しているポリマーを良溶媒へいったん溶解し、次いで攪拌下に大量の貧溶媒中に添加して沈殿を生成させ、濾過や遠心分離で沈殿を分離する方法である。可溶性リグノセルロース物質から遊離フェノールを除去するために用いる、良溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ等のエステル系溶剤などが挙げられる。貧溶媒として、水;トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が挙げられる。安価で取り扱いが簡便な溶剤として、良溶媒にアセトン、貧溶媒に水を用いるのが好ましい。可溶性リグノセルロース物質を、良溶媒を用いて10〜90重量%溶液、好ましくは50〜80重量%溶液を作製し、20倍量以上の貧溶媒中へ添加することにより沈殿物が生じる。当然ながら貧溶媒量が多いほど、また両溶液を加温して処理すると、分離精製度が上がる。
分離精製度を高めるために、上記の沈殿分離法の手順を繰り返し行うことが望ましい。可溶性リグノセルロース物質から遊離フェノールを除去するためには、上記分離法を1回〜6回、望ましくは3〜4回行う。
【0010】
本発明で抗菌成分として用いる可溶性リグノセルロース物質は、数平均分子量が300〜2000でありかつ重量平均分子量が500〜5000であるものが好ましく、特に数平均分子量が400〜1000でありかつ重量平均分子量が600〜2000であるものが好ましい。また、本発明の溶液状またはペースト状の可溶性リグノセルロース物質は、通常1.0〜1.2程度の比重を有している。
【0011】
かくして得られる本発明の抗菌成分である可溶性リグノセルロース物質はそのまま抗菌剤として使用することもできる。あるいは、溶液状、エマルジョン状または固体状の形態にして抗菌剤として使用することもできる。溶液状の形態にするには、可溶性リグノセルロース物質を適当な溶剤に溶解すればよい。エマルジョン状の形態にするには、乳化剤の存在下に水と有機溶剤の混合液に可溶性リグノセルロース物質を加えて通常の方法で調製すればよい。個体状の形態にするには、例えば、上記した方法により得られた可溶性リグノセルロース物質を乾燥して例えば粉末状でそのまま用いてもよく、適当な固体担体に固定化してもよく、また、通常の方法によりフィルム状に加工してもよい。
【0012】
可溶性リグノセルロース物質を溶剤に溶解して溶液状の形態にするために用いる溶剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ等のエステル系溶剤などが挙げられる。
エマルジョン状の形態にするには、可溶性リグノセルロース物質を溶解した溶液と水などの可溶性リグノセルロース物質が溶解しない溶液との混合液を用いることができる。これらの混合溶媒と通常用いられる乳化剤を用いて、通常の方法によりエマルジョン状の形態にすることができる。
固体状の形態にするために用いる固体担体としては、無機固体担体及び有機固体担体が挙げられる。この無機固体担体としては、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、酸化チタン、カオリン、珪藻土、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。有機固体担体としては、ワックス類、樹脂類、ゴム類が挙げられる。
【0013】
上記した溶液状、エマルジョン状または固体状の形態にして抗菌剤として使用するに際しては、有機バインダーを添加してもよい。有機バインダーを添加することにより、被抗菌材料に耐久性の高い抗菌性機能を付与することができる。有機バインダーとしては、通常繊維処理加工用、塗料用として使用されているものであれば特に支障なく使用できる。具体的には、水性エマルジョン型樹脂、アクリル系ラッカー型樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート硬化型樹脂、非水分散型樹脂、アクリルーメラミン樹脂、ポリエステルーメラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系の粉末樹脂等が例示される。
【0014】
本発明では、上記した各種形態で抗菌剤として用いる際に、可溶性リグノセルロース物質と共に、被抗菌材料の耐候性を高める目的で、金属塩類を用いるのが好ましい。金属塩類としては、炭酸カリウム、ミョウバン、硫酸銅、硫酸鉄、塩化第一鉄、塩化第一錫、塩化第二銅、無水塩化第二銅、塩化第二銅アンモニウム、酢酸銅、酢酸第二鉄、酢酸アルミ、木酢酸鉄、臭化第二銅、硝酸銅、ナフテン酸銅、錫酸ナトリウム、消石灰、重クロム酸カリウム、灰汁、チタン塩などを用いることができる。特にミョウバン、塩化第二銅、無水塩化第二銅、硫酸銅等が望ましい。これらの金属塩類を用いて錯塩を生成させることにより、例えば被抗菌材料との親和力が高まることにより被抗菌材料に対する抗菌剤の良好な固着性がもたらされる。
金属塩類の使用量は、通常抗菌成分100重量部に対して0.1から50重量部、好ましくは2から20重量部である。
【0015】
被抗菌材料の耐候性を高める目的で、使用目的に応じて、抗菌成分である可溶性リグノセルロースと共に酸またはアルカリを用いて抗菌剤のpHを調整するのが好ましい。pHの調整は、通常酸水溶液またはアルカリ水溶液を抗菌成分に添加することによって行われる。あるいは、抗菌成分を上記した溶剤に溶解して得た溶液に、酸水溶液またはアルカリ水溶液を添加してもよい。用いる酸としては、無機酸、有機酸、およびルイス酸から選ばれた少なくとも1種を含むものである。無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、および臭化水素酸などの通常の鉱酸が用いられ、有機酸としては、蟻酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、および安息香酸などのカルボン酸類;フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機スルホン酸類;フェノールスルフィン酸などのスルフィン酸類;尿酸類などが挙げられる。ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化チタニウム、三弗化ホウ素などの化合物、それらの錯体などを例示することができる。またアルカリ水溶液のアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびアミン類から選ばれた少なくとも1種を含むものが用いられる。アルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど、アルカリ土類金属水酸化物としては水酸化カルシウムなど、アルカリ土類金属炭酸塩としては炭酸カルシウムなど、アミン類としてはモノエタノールアミンなどを例示することができる。また、緩衝液を使用することも可能である。緩衝液としては、クラーク-ラブス緩衝液、セーレンセン緩衝液、マッキルベイン緩衝液、ウォルポール緩衝液を例示することができる。
【0016】
本発明の抗菌剤には、上記したもの以外にも、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、遅効性硫酸バリウム、マイカ、酸化チタンを初めとして、カオリン、超微粒子状シリカ、亜鉛華、カーボンブラック等の無機顔料もしくは充填剤;フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系統の有機顔料もしくはその分散顔料等の顔料類;ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ジブチルフタレート等の造膜助剤あるいは可塑剤類;アニオン系、ノニオン系の各種界面活性剤;ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリカルボン酸の塩類;ナフタレンスルホン酸の塩類等の分散剤;シリコン系、アクリル系オリゴマーなどの消泡剤;フッ素系、シリコーン系などの撥水剤;防腐・防かび剤等が挙げられる。これらの配合量は使用条件、使用目的に応じ、適宜決定される。これら以外にも繊維処理、塗料用途として常用される添加剤であれば特に支障なく使用される。
【0017】
溶液状、エマルジョン状または固体状の形態にある抗菌剤を、繊維類、紙類、ゴム類、合成樹脂類、モルタル、コンクリート、塗料などの被抗菌材料に適用するには、その形態に応じて通常の方法で適用される。例えば、抗菌剤が溶液状またはエマルジョン状の形態にある場合には、最も簡易な手法であるスプレー、塗布あるいは含浸による吸着、含浸しそれに次ぐ硬化(架橋)処理あるいは熱融着、コーティング処理などが挙げられる。固体状の形態にある場合には、フィルム状とした後ラミネート加工処理、熱融着などが挙げられる。被抗菌材料が塗料の場合には、溶液状、エマルジョン状あるいは固体状の形態にある抗菌剤を単に添加するだけでよい。以上の適用方法は通常の方法を採用することにより実施できる。
【0018】
以下、被抗菌材料として繊維類を用いた場合についての本発明の抗菌成分あるいは抗菌剤の適用方法について説明する。
本発明の抗菌成分である可溶性リグノセルロース物質を繊維表面に付着せしめて繊維を抗菌加工することによって行うことができる。この場合、可溶性リグノセルロース物質を繊維に付着させる方法は特に限定されないが、溶解された、あるいはエマルジョン化された、あるいは粉末状の本発明抗菌成分および有機バインダーを用いて、溶液状、エマルジョン状、粉末状などの組成物とし、これらを適当な付着加工方法によって繊維に付着もしくは固着させることが好ましい。付着方法としては、最も簡易な手法であるスプレー、塗布あるいは含浸による吸着、含浸しそれに次ぐ硬化(架橋)処理あるいは熱融着、コーティング処理などが挙げられる。固体状の形態にある場合には、フィルム状とした後ラミネート加工処理、熱融着などが挙げられ、これら以外にも繊維処理に常用される手法であれば特に支障なく適用される。例えば、最も簡単な繊維への付着方法は、可溶性リグノセルロース物質を、溶剤に溶解して得られる溶液に、繊維を浸積し、あるいは該溶液を繊維に塗布する方法である。
【0019】
本発明の抗菌成分である可溶性リグノセルロース物質の繊維への固着もしくは付着量は、使用用途や所望の抗菌力レベルに応じて適宜調整すればよいが、一般的には繊維に対し0.005〜10重量%の範囲であり、この範囲以下では抗菌性能が低下し、またこの範囲以上では製造コストが高くなり、繊維から脱落しやすくなる。
【0020】
より具体的には、例えば繊維の場合、上記した溶剤中の1種を選択し、浴比(濃度)は抗菌成分:溶媒の重量比を1:1〜1:100、望ましくは1:50程度で、繊維重量に対し約50倍程度の溶液を調製する。処理時間は5分〜数時間の範囲で調整される。
例えば絹布と羊毛の抗菌処理の場合には、酸の添加(系のpH3〜5の弱酸性)が好ましく、綿布の場合はアルカリの添加(系のpH9〜11の弱アルカリ性)が好ましい。前者の場合は弱酸性下で絹や羊毛の構成タンパク質のイオン化が促進されること、また後者の場合は弱アルカリ性下で抗菌成分の分子中の官能基のイオン化が促進されるとともに綿布の構成成分であるセルロースの界面活性化が起こり良好な固着性がもたらされる。抗菌溶液のpHは、絹布、羊毛等の場合3〜5が望ましく、綿布の場合9〜11が望ましい。
固着を効果的に行ったり耐候性能を上げるために、上記したような金属塩類が含まれている溶液による繊維の前処理もしくは後処理を行うことも可能である。
【0021】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの本実施例は単に例示の為に記すものであり、本発明がこれらによって制限されるものではない。
なお、実施例における抗菌試験、並びに抗菌成分の分子量および遊離フェノール率の測定は、以下に記載する方法に従って行った。
(1)抗菌試験
日本化学療法学会法として広く用いられている、寒天希釈法による種々の菌に対する最小発育阻止濃度(以下MICと略記する)を測定した。測定は以下の様な方法で行った。
即ち、滅菌シャーレに、供試品の含有濃度が異なる寒天培地を作製する。これらの培地各々に一定量の菌液をのせ、35℃、48時間培養する。そして、完全に発育が阻止された培地の中から供試品含有濃度の最小の濃度(MIC)を求める。試験菌種として、Staphylococcus aureus IFO 13276(黄色ブドウ球菌)、Pseudomonas aeruginosa IFO 13275(緑膿菌)を使用した。また抗菌剤処理繊維の抗菌試験は、繊維製品新機能評価協議会(SEK)で定めた菌数測定法により、黄色ブドウ球菌による菌数増減値差を求めた。菌数増減値差1.6以上をもって抗菌性有効とした。なお、洗濯方法は同協議会で定めた方法に従い、10回繰り返し行った。
【0022】
(2)抗菌成分の分子量および遊離フェノール率の測定
実施例において得られた抗菌成分の分子量および遊離フェノール率は、液体クロマトグラフィー(GPC)にて定法に従い、分子量のためには標準物質にポリエチレングリコール、遊離フェノール率のためにはフェノールを使用して検量線を作成して換算した。
【0023】
実施例1
スギおが屑55g(含水率10重量%)とフェノール200g(木粉/フェノール=3/7)と硫酸6gを、攪拌装置の付いた2L耐圧容器に秤り取り、油浴中で容器内温度が150℃まで約60分を要して昇温させ、150℃で30分保った後、冷却して黒色の可溶化物質を得た。この液体をG3のガラスフィルターで濾過し、収率約98%の黒色の生成物を得た。
次に、沈殿分離法による遊離フェノールの除去を行った。得られた液状物質にアセトンを添加し20容量%アセトン溶液とし、60℃の蒸留水1000mL中に25mLのアセトン溶液をかき混ぜながら少量ずつ滴下した。蒸留水中で沈殿した生成物を回収し、60℃、24時間乾燥させ抗菌成分1を得た。
更に抗菌成分1に対して、同様に上記と同配合でアセトンを添加した後蒸留水中で沈殿、乾燥させ、抗菌成分2を得た。
更に再度、抗菌成分2に対して同様に上記と同配合でアセトンを添加した後蒸留水中で沈殿、乾燥させ、抗菌成分3を得た。
抗菌性能、および抗菌成分の遊離フェノール率、数平均分子量および重量平均分子量を表1に示す。表1に示されているように、遊離のフェノールがほとんど含まれていないリグノフェノール由来の抗菌成分についても、両菌に対して抗菌性能が優れていることが分かる。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例2
実施例1で得られた黒色の生成物に蒸留水を添加し攪拌しながらを水洗いを行った。水洗いを何度も繰り返し完全に水と分離するまで行った。完全に分離された液状物を取り出し乾燥機にて乾燥させ抗菌成分を得た。
この抗菌成分にアセトンを加え10容量%溶液とし、抗菌剤として綿布用抗菌溶液を得た。また綿布2gを予め1重量%ミョウバン溶液200gの沸騰水中に30分間浸漬した後、上記の綿布用抗菌溶液を更に塩酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した抗菌溶液100g中に約30分間浸漬後常温乾燥し、ブラウン色の綿布を得た。
この綿布に対し2000mLの40℃温水中に洗剤を1g/Lの割合で入れ10分間押し洗いを行い、その後泡がなくなるまで3度水洗いを行い、本発明の抗菌剤処理綿布を得た。
比較例として、未処理綿布および市販の抗菌剤処理綿布「バイオシル加工布」東洋紡(株)社製を用いた。
本発明の抗菌剤処理綿布、未処理綿布および市販抗菌剤処理綿布の抗菌性能を確認した。培養18時間後、及び洗濯10回後の各綿布の抗菌性能を図1に示す。図1から分かるように、本発明の抗菌剤処理綿布は、菌数増減値差は4.7、洗濯試験後の菌数増減値差は2.1と若干低下したが、充分な抗菌性能を有し、洗濯耐久性を示した。
【0026】
【発明の効果】
以上に述べた通り、本発明の植物由来の抗菌剤は、タンニンや木酢液と比べ、均質かつ大量に生産することが可能であり、かつ繊維に利用した場合、洗濯等に対する耐久性に優れており、絹、羊毛、綿などの天然繊維や木材などに親和性を有する抗菌剤であって、本発明の工業的利用価値は極めて高いものである。
また、本発明の抗菌剤の主原料には、林木の副産物である間伐材や枝材等の未利用材料や建設廃材、木造家屋の解体材、廃チップ等の廃棄物が使用でき、これらのリサイクル利用、新規用途の拡大、省エネルギー効果などの点で、本発明は地球環境に優しい技術の開発に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の抗菌剤処理綿布、未処理綿布および市販抗菌剤処理綿布の抗菌性能を試験した結果を示すグラフである。
Claims (9)
- リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応して得られる可溶性リグノセルロース物質を、抗菌成分として含有する抗菌剤。
- 可溶性リグノセルロース物質は遊離のフェノール類が除去されたものである請求項1の抗菌剤。
- 可溶性リグノセルロース物質の数平均分子量が400〜2000でありかつ重量平均分子量が500〜5000である請求項1または2の抗菌剤。
- 繊維類、紙類、ゴム類、合成樹脂類、モルタル、コンクリートおよび塗料から選ばれる被抗菌材料に抗菌性機能を付与するための請求項1から3のいずれかの抗菌剤。
- リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応して可溶性リグノセルロース物質を得、更に必要に応じて遊離のフェノール類を除去して、抗菌成分を調製し、次いで必要に応じて溶液状、エマルジョン状または固体状の形態にすることを特徴とする抗菌剤の製造法。
- リグノセルロース材料にフェノール類を加えて加熱反応して得られる可溶性リグノセルロース物質を、必要に応じて遊離のフェノール類を除去した後に、必要に応じて溶液状、エマルジョン状または固体状の形態にして、被抗菌材料に適用して抗菌性機能を付与することを特徴とする、被抗菌材料に抗菌性機能を付与するための該可溶性リグノセルロース物質の使用方法。
- 被抗菌材料が、繊維類、紙類、ゴム類、合成樹脂類、モルタル、コンクリートおよび塗料から選ばれるものである請求項6の使用方法。
- 可溶性リグノセルロース物質を溶剤に溶解して溶液を得、該溶液に被抗菌材料を浸漬し、あるいは該溶液を被抗菌材料に塗布もしくは添加する請求項6または7の使用方法。
- 被抗菌材料が繊維類である請求項8の使用方法。
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