JP4741141B2 - ヒトの脊椎を骨プレートで安定させるためのシステムおよび方法 - Google Patents

Description

【０００１】
（発明の背景）
１．発明の分野
本発明は、一般に、脊椎固定システムなどに関する。また本発明は、一般に、ファスナ・ヘッドを脊椎プレートに固定可能に取り付けるための機構を含む脊椎プレート・システムにも関する。
【０００２】
２．関連技術の説明
脊椎変形の矯正および椎骨の融合のため、脊椎固定プレートを使用することがよく知られている。一般に、互いに対して固定する必要がある骨または骨部分に跨るように剛性プレートを位置決めする。このプレートを骨に固定するため、骨ねじを使用する。脊椎プレーティング・システムは、通常、脊椎の腰部および頚部の問題を解消するために使用され、脊椎の後部または前部に取り付けられることが多い。
【０００３】
手術中の合併症により、脳幹や脊髄など生命の維持に必要な器官に損傷が与えられる可能性があるので、脊椎頚部に対する脊椎プレートの固定には危険が伴うことがある。固定プレートを骨に取り付けるとき、骨ねじは、バイコルチカルに（すなわち、ファスナの一部が脊髄領域にまで及ぶように、椎骨を完全に貫通するように）、またはユニコルチカルに（すなわち、ファスナが椎骨まで及ぶがその椎骨を貫通しないように）配置される。一般に、より安全に使用できるので、骨ねじをユニコルチカルに位置決めすることが人気を集めている。バイコルチカルなファスナは、骨に対して最大限に固定されるように遠位皮質を破ることを目的とするが、このようなファスナの配置によって、遠位軟質組織構造が危険な状態に置かれる可能性がある。遠位皮質の反対側には脊髄が存在するので、ファスナの配置は前頚プレート処置において特に重要である。残念ながら、骨髄は軟質組織であるので、ユニコルチカルなファスナがその所望の位置から動く可能性がある。実際に、そのようなファスナを取り囲む骨の部分は、ファスナをその適正な位置に維持することができないこともある。その結果、ファスナが後退する。
【０００４】
２つのファスナがプレートに直角に埋め込まれている場合、ファスナの後退は特に厄介な問題である。ファスナがそのような手法で配置される場合、ファスナのねじ山の外径のサイズである領域全体にわたって骨の欠損が生じる結果、後退が生じる可能性がある。この問題を克服するため、２つのファスナを、骨内で互いに対して集束方向または発散方向に傾けることができる。この構成により、後退が生じる前に破損させる必要がある骨の量は、平行に埋め込まれたファスナに比べて増大する。骨内に、ファスナを集束させまたは発散するよう位置決めすることにより、後退の危険性が低くなるが、それでも後退は生じる可能性がある。
【０００５】
後退によって内部組織構造が損傷を受け、外れたファスナがその組織構造を貫通する場合には、合併症が生じる可能性がある。例えば後退が生じると、ファスナは患者の食道の壁面を破る可能性がある。そのような壁面の破れによって、脊髄内および脊髄の周りの重要な神経を含む、周囲を取り囲む組織が、細菌で汚染されることがある。そのような破れは致命的であることがある。
【０００６】
内部組織構造に損傷を与える危険性を低くする目的で、いくつかの頚部ファスナ・プレート・システムは、骨およびプレートの両方に取り付けられるユニコルチカルなファスナを有する。ファスナが後退しない場合、そのファスナは、内部組織構造に接触しないようにプレートに接続されたままである。Ｌｏｗｅｒｙ他の米国特許第５，３６４，３９９号は、そのような１つのシステムについて記述しており、本明細書で十分に述べるごとく参照により組み込む。Ｌｏｗｅｒｙ他のプレーティング・システムは、プレートの各端部にロッキング・ファスナを含む。ロッキング・ファスナは骨ねじの頭部に係合して、そのファスナをプレートのリセス部内に捕えるようにする。ロッキング・ファスナは、骨ねじの数箇所にわたって位置決めされるので、そのロッキング・ファスナはプレート上面の上方に延びる可能性がある。したがってロッキング・ファスナは、食道などの内部組織構造に接触する可能性がある。
【０００７】
ファスナからプレートへのロッキング機構を含む別のプレーティング・システムは、テネシー州メンフィスのＳｍｉｔｈ＆Ｎｅｐｈｅｗ Ｒｉｃｈａｒｄｓ Ｉｎｃ．から販売されているＡｌｉｎｅ（商標）Ａｎｔｅｒｉｏｒ Ｃｅｒｖｉｃａｌ Ｐｌａｔｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍ（前頚プレーティング・システム）である。このシステムに関する記述は、Ｓｍｉｔｈ＆Ｎｅｐｈｅｗ Ｒｉｃｈａｒｄｓ Ｉｎｃ．から入手可能な、Ｆｏｌｅｙ，Ｋ．Ｔ．他によるＡｌｉｎｅ（商標）Ａｎｔｅｒｉｏｒ Ｃｅｒｖｉｃａｌ Ｐｌａｔｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍ Ｓｕｒｇｉｃａｌ Ｔｅｃｈｎｉｑｕｅ Ｍａｎｕａｌ（前頚プレーティング・システム外科手術手技マニュアル）第１〜１６ページに見出すことができ、本明細書で十分に述べるごとく参照により組み込む。このシステムの骨ねじは、同軸上でロック・ファスナを内部に受容するための開口を各骨ねじ頭部内に有する。各骨ねじは、骨に隣接して配置されたプレートのホールの内部にファスナが位置決めされるよう、骨に挿入することができる。各骨ねじの頭部には、骨ねじの開口内にロック・ファスナを挿入する間に頭部の一部がプレートの方に逸れるよう、スロットが設けられている。ロック・ファスナのサイズは小さいので、開口内にロック・ファスナを位置決めしかつ挿入することは難しいと考えられる。外科医は、ロック・ファスナを落とすことなくしっかりと持つことができないこともある。ロック・ファスナが手術創傷内に落下した場合、それを取り出すことは難しいと考えられる。場合によってはロック・ファスナを取り出すことができなくなる可能性がある。
【０００８】
（発明の概要）
ヒトの脊椎の一部を固定化するために、埋込システム（インプラント・システム）を使用することができる。埋込システムは、エンド・ホール、正中線ホール、ファスナ、および拡張／収縮リングを含んだプレートを含むことができる。ファスナおよびリングは、ファスナの後退を防ぐため、ファスナ・ヘッドをリング内に固定しまたはロックする機構を含む。
【０００９】
エンド・ホールは、プレートの上面から下面まで延びている。エンド・ホールは、プレートの両端に２つ一組で配置することができる。各エンド・ホールは、ファスナ・ヘッドの少なくとも一部分を受容する。本明細書で「ファスナ」とは、骨内に固定することができる、ねじ山がつけられたまたはねじ山のない任意の細長い部材を意味する。ファスナには、ねじ、釘、リベット、トロカール、ピン、およびバーブを含むが、これらに限定されない。ファスナは骨ねじでもある。ファスナは、ファスナ・ヘッドを含んでよい。ファスナ・ヘッドは、一般に、工具に一致するよう適合された開口を含む。この工具で、ファスナを骨に挿入することができる。各エンド・ホールは、ファスナをプレートに対して「斜めに傾ける」ことができるように、球状の輪郭を描いてもよい。本明細書で「斜めに傾ける」とは、プレートに直角な軸に対して広範囲に及ぶ角度でファスナを位置決めできることを意味する。ファスナを斜めに傾けて骨に挿入することにより、ファスナが後退する危険性を低下させることができる。
【００１０】
拡張／収縮リングは、リングがプレートとファスナの間のエンド・ホール内に取り付けられるように寸法決めすることができる。各リングの内面は、ファスナ・ヘッドに一致するように成形することができ、一方その外面は、エンド・ホールの内面に一致するように成形することができる。各ファスナ・ヘッドの外面は、そのヘッドの上部がヘッドの下部よりも大きくなるように、テーパ状にすることができる。リングの内面は、ファスナ・ヘッドのテーパに概ね対応するテーパを有することができる。
【００１１】
各リングは、そのリングをより容易に拡張可能にしかつ収縮可能にするために、リング内を垂直に延びるギャップを有することもできる。ファスナ・ヘッドをリングに挿入する間、ファスナ・ヘッドはリングに力を及ぼして、ホールの内面に対してリングを拡張させる。ホールの内面に対してリングを拡張させることにより、ファスナをプレートにしっかりと固定することができる。
【００１２】
ファスナ・ヘッドおよびリングは、ファスナ・ヘッドをプレートに取着させるロッキング機構を含むことができる。ロッキング機構は、ファスナが骨内で緩められている場合、リングからのファスナ・ヘッドの後退を防ぐことができる。ロッキング機構によりファスナ・ヘッドがプレートに取り付けられるので、ロッキング機構は、ファスナ・ヘッドが隣接する組織構造に接触するのを防ぐこともできる。いくつかの実施態様では、ロッキング機構とファスナ・ヘッドの間で軸方向にいくらか自由に動くことができるような許容差がある。軸方向にいくらか動くことができることにより、脊椎固定システムの埋込み後の通常の調整期間中、骨からファスナを後退させまたはわずかに緩めることができる。
【００１３】
正中線ホールは、プレートの端から端まで延びる正中線軸に沿った様々な位置で、プレート内に形成することができる。各正中線ホールを取り囲むプレートの表面は、テーパ状にすることができる。さらに、プレート内に位置決めすることができるファスナ・ヘッドは、プレートのテーパ状の面に概ね対応するテーパ状外面を有することができる。したがってそのようなファスナ・ヘッドを正中線ホールに挿入する場合、そのプレートの形状によって、プレートにほぼ直角な位置でファスナをプレートに固定可能に取り付けることができる。正中線ホールは、骨移植片を骨プレートに取り付けるのに使用することができる。正中線ホール内に位置決めされたファスナを斜めに傾ける必要はないと考えられる。
【００１４】
骨プレートは、脊柱に面するプレートの面に位置付けられた１つまたは複数のスパイクを有することができる。スパイクは、エンド・ホール近傍のプレートの両端に２つ一組で配置することができる。手術移植中に、骨プレートが滑るのを防止するのを助けるため、スパイクを骨にタップ形成することができる。
【００１５】
脊椎プレート・システムの外科的移植の前に、拡張／収縮リングをプレートのエンド・ホール内に配置することができる。次いでプレートを、脊椎固定を必要とする脊椎の部分に隣接して位置決めすることができる。ホールは、プレートのエンド・ホールの下に在る骨の部分に、所望の角度で穴を開けかつ／またはタップ形成することができる。ファスナは、エンド・ホールを通して骨のホールに挿入することができる。ファスナ・ヘッドは、リングが少なくともヘッドの一部分を取り囲むように、エンド・ホール内に位置決めすることができる。リングは、エンド・ホールの外側の領域を占有することなく、ファスナを所定位置にロックすることができる。さらに、リングをエンド・ホール内に事前に配置することができるので、外科医は、リングをプレートのエンド・ホールに挿入する間にそのリングを落とすのではないかと心配する必要がない。
【００１６】
一実施態様では、ロッキング機構によりファスナ・ヘッドをリングに固定する。ロッキング機構は、先端部と、その先端部から下向きにかつ外側に向かって角度が付けられた１つまたは複数のフレキシブルなアームを有することができる。アームの端部は、ロッキング機構の先端部とほぼ平行なプロングを有する。圧縮された構成のロッキング機構をファスナ・ヘッドに形成された開口に嵌め込む。ロッキング機構のプロングは、その開口の底部近くに位置付けられたホール内に嵌め込まれる。ホールは、ヘッドの外面から開口まで延びている。プロングがホールに位置決めされると、プロングは、ロッキング機構が拡張された構成になるようにホール内に延在する。ファスナ・ヘッドから延びるプロングは、リング内面の溝に嵌め込まれて、ファスナとリングの間の接続を強化する。
【００１７】
ロッキング機構は、外科的処置の間にそのロッキング機構を落とすという危険を回避するため、外科的処置の前にファスナ・ヘッドに挿入することができる。挿入および抜き取り工具によって、ファスナの挿入中または抜き取り中に、ロッキング機構上のプロングをヘッド内に引き込む。この工具は、ハンドル、シャフト、およびファスナ・ヘッドの開口の打込みセクションに一致するよう成形された中空ドライバ・ヘッドを含むことができる。ドライバ・ヘッドを開口に挿入することによって、ロッキング機構の上にそのヘッドを滑らせ、ロッキング機構のシャフトを圧縮する。ロッキング機構のシャフトを圧縮することにより、プロングをファスナ・ヘッドに引き込む。ファスナを骨に挿入するため、ヘッドがリング内に完全に挿入されるまで、使用者はそのファスナを骨に挿入する。ドライバ・ヘッドを開口から取り出すことによって、プロングがホールからファスナ・ヘッドへと拡張するように、ロッキング機構のシャフトが外側に向かって拡がる。
【００１８】
ロッキング機構を有するファスナを取り外すため、使用者は、挿入および抜き取り工具のドライバ・ヘッドをファスナ・ヘッドの開口に挿入する。ドライバ・ヘッドはロッキング機構のシャフトを圧縮し、プロングをファスナ・ヘッド内に引き込む。次いで使用者は、ファスナを骨から取り外すことができる。
【００１９】
別の実施態様では、ファスナ・ヘッドの溝にスナップ留めされるリングの１つまたは複数のフィンガによって、テーパ状のファスナ・ヘッドがリングにロックされる。リングの先端部に切り込まれたＬ字形のスロットにより、フィンガを形成することができる。ファスナ・ヘッドがリングに挿入されるとき、ファスナ・ヘッドの溝にフィンガがスナップ留めされるように、フィンガはばねのような動作をする。ファスナ・ヘッドがリングに入るとき、テーパ状のヘッド外面がプレートの内面に対してリングを拡げる。ファスナ・ヘッドの溝がフィンガに達すると、フィンガは溝にスナップ留めされ、ファスナをリング内に固定して、後退を防止するのを助ける。
【００２０】
別の実施態様では、ファスナ・ヘッドの溝にスナップ留めされるリングの１つまたは複数のリッジによって、ファスナ・ヘッドがそのリングにロックされる。リングの先端部に切り込まれた切欠きは、パドルを形成することができる。リッジは、リングの先端部近傍に各パドルの内面に沿って延在してよい。ファスナ・ヘッドをリングに挿入する間、リッジがファスナ・ヘッドの溝にスナップ留めされるように、パドルはばねのような動作をする。ファスナ・ヘッドの溝の内部に存在するリングのリッジによって、ファスナをリング内に固定することができ、ファスナの後退の防止を助けることができる。
【００２１】
抜き取り工具モジュールは挿入工具を覆うように嵌め込まれ、リングのリッジをファスナ・ヘッドから引き込めることが可能になる。挿入工具は、ハンドル、シャフト、およびファスナ・ヘッドの開口に一致するよう成形されたドライバ・ヘッドを含む。抜き取りモジュールは、挿入工具のシャフト上を滑る。抜き取りモジュールは、ハンドルおよび抜き取りヘッドを含むことができる。抜き取りヘッドは、ファスナ・ヘッド上を滑りかつパドルの端部に接触するチップを含むことができる。チップの外面はテーパ状になっている。抜き取りモジュールが押し下げられると、チップのテーパ状の表面によってパドルが外側に押しやられ、パドルのリッジとファスナ・ヘッドの溝との係合が解除される。パドルのリッジとファスナ・ヘッドの溝との係合を解除することによって、ファスナを骨から後退させることができる。
【００２２】
ファスナ・ヘッドとリングとのロッキング機構を使用すると、ファスナとプレートの間に強力な接続をもたらすことができる。たとえファスナのシャンクが骨内で緩むとしても、ファスナ・ヘッドは、プレートから周囲の体組織に突出しないようにプレートのホール内に残存するようになる。リング内でファスナ・ヘッドが軸方向にいくらか自由に動くことができるようにすると、脊椎固定システムの設置後の調整期間中、ファスナをわずかに後退させることができる。
【００２３】
本発明の別の利点は、実施形態についての以下の詳細な説明を読むことにより、かつ添付図面を参照することによって、当業者に明らかにされよう。
【００２４】
本発明は、様々な変更を加えかつ代替の形態にすることができるが、その特定の実施形態を例として図面に示し、かつ本明細書で詳細に記述する。しかし、図面およびその詳細な説明は、開示された特定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、それとは反対に、上述の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲内に含まれる全ての変更例、均等物、および代替例を包含しようとするものであることを理解されたい。
【００２５】
（好ましい実施形態の詳細な説明）
図面について、特に図１について詳しく説明すると、脊椎プレーティング・システム全体が符号２０で示してある。脊椎プレーティング・システム２０は、脊椎の腰部および頚部における問題点を矯正するために使用することができる。例えば、プレーティング・システム２０は頭骨底部に位置する後頭骨に埋め込むことができる。またプレーティング・システム２０は脊椎前部に取り付けることもできる。脊椎プレーティング・システム２０は、脊椎の一部分に隣接して取り付けられ少なくとも２個の椎骨にまたがるプレート２２を含む。プレート２２は、その４隅に位置する４個の端穴２４を含むことができる。図２に示すように、端穴２４は、プレートの上面２６から下面２８にまで達しており、プレート２２を垂直に貫通する。端穴２４はリング３０を受けるように設計される。締結装置３２はリング３０内にぴったり適合する。本明細書において「締結装置」とは、骨内でかたく締めることができる長く伸びた部材をいい、ねじ山が切られていても切られていなくてもよい。締結装置としては、ねじ、釘、リベット、トロカール、ピン、鉤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。締結装置は、骨ねじであってもよい。リング３０によって、締結装置３２のヘッド３４はプレート２２に固定して取り付けられる。リング３０の各々にはすきま３６が存在する。すきま３６はリング３０の膨張および収縮を考慮したものである。リングの収縮によって、リング３０はプレート２２の端穴２４に容易に挿入可能となる。
【００２６】
脊椎プレーティング・システム２０はまた、プレート２２を垂直に貫通する１つまたは複数の中心穴３８を含む。中心穴３８の１つは、プレート２２の中間点付近に配置することができる。締結装置４２のヘッド４０は、中心穴３８のいずれか１つの内部に位置決めされる。複数の中心穴３８の存在によって、外科医には締結装置４２を所望の位置に配置する選択肢が与えられることになる。締結装置４２は、プレート２２を移植骨片（図示せず）に連結するために使用することもできる。
【００２７】
図２は、プレート２２の中心穴３８の１つの内部にある締結装置４２を示す図である。締結装置４２は、ヘッド４０とシャンク４４を含むことができる。シャンク４４はヘッドの底部から延びている。一実施形態においては、中心穴３８の内表面は、プレート下面２８よりプレート上面２６において穴が大きくなるようにテーパーがつけられている。締結装置のヘッド４０の外表面には、全体が中心穴３８のテーパーに一致するテーパーがつけられている。締結装置４２の移植骨片への埋め込時には、締結装置４２のシャンク４４は、穴３８の下にある移植骨片に予め形成された穴に挿入される。穴３８の下部は締結装置ヘッド４０の上部より小さいため、一旦締結装置が移植骨片内の所望の深さまで挿入されると、締結装置４２を中心穴３８内の所定位置に固定することができる。骨用プレート２２は、プレート下面２８から延びるスパイク４５を有することができる。
【００２８】
図２に示すように、プレート２２は曲面を有することもできる。曲面によって、プレート２２の骨への固定が強化される。骨用プレート２２には、骨に面する面上に１つまたは複数のスパイク４５を配置することができる。スパイク４５は、端穴２４に近接した互いに対向するプレート先端部に、対で配置してもよい。スパイク４５を骨内に軽く打ちつけると、手術による埋め込みの間に骨用プレート２２が滑るのをより容易に妨げることができる。
【００２９】
図３は、一対の締結装置３２が収束する構成になっている脊椎プレーティング・システム２０の１つの実施形態の断面図である。図４は、一対の締結装置３２が発散する構成になっている脊椎プレーティング・システムの１つの実施形態の横断面図である。リング３０は、プレート２２と締結装置のヘッド３４との間の穴２４にぴったり適合している。穴２４の内表面４６は、弓上または球状の輪郭を有することができる。リング３０の外表面４８は、穴２４の内表面４６の輪郭に実質的に一致する弓状または球状の輪郭を有することができる。穴内表面４６の輪郭に実質的に一致するリング外表面４８の輪郭を有することによって、穴２４内に位置するリング３０は、端穴２４内での多軸回転が可能となる。
【００３０】
リングが端穴内で旋回または多軸方向に回転するため、端穴２４内へのリング３０の組み合わせは、ボールとソケットのように機能する。リング３０が端穴２４内で多軸方向に回転できることによって、締結装置３２を、プレートに垂直な軸に対して様々な角度でプレート２２を貫通して位置決めすることができる。図３および４は、締結装置の各構成に関して角度Ａを示す図である。角度Ａは、締結装置３２の縦方向軸５０とプレート２２に垂直な架空の軸５２とのなす角と定義される。角度Ａは０度〜約４５度の範囲内にあり、好ましくは約０度〜約３０度、さらに好ましくは０度〜１５度の範囲内にある。
【００３１】
一対の締結装置３２は、プレート２２を貫通して広がる横方向の平面に対しては平面をなさないような位置に固定することもできる。例えば、図３および４に示すように、一方の締結装置３２をページ外(out of page)に位置決めし、もう一方の締結装置３２をページ内に位置決めすることができる。端穴２４内において発散方向または収束方向に固定された一対の締結装置３２によって、後退が起こる可能性を低くすることができる。さらに、リング３０を用いて一対の締結装置３２をプレート２２に固定して取り付けると、そのように取り付けられた締結装置ではプレート２２に取り付けられた状態が変わらず、骨内でいずれの締結装置がゆるんでも起こり得る組織構造の損傷を妨げることができる。締結装置の後退という問題は、斜めの角度をつけた締結装置を収束または発散する構成にすることによって低減されるため、締結装置３２は骨内のユニコルチカル位置に配置することができる。
【００３２】
リング３０は、端穴２４内に位置決めされた締結装置３２のヘッド３４を、少なくとも部分的に取り囲むことができる。締結装置３２のシャンク５４がねじ５６を含み、締結装置３２を回転させてその骨内へ挿入させるようにすることもできる。図１に示すように、締結装置ヘッド３４はヘッドの最上端からその内部に延びるキャビティ５８を含むこともできる。キャビティ５８は、締結装置３２を骨に挿入したりまたは骨から取り去る工具の端部を受け入れるように形成することができる。工具端部は、六角スパナ、星型スパナまたはスクリュードライバ羽根の形状を取ることができる。
【００３３】
リング３０の内表面６０とヘッド３４の外表面６２は、図３および４に示すように、互いに組み合わさるテーパーがつけられた表面とすることができる。一実施形態においては、ヘッド３４の底部を応力を受けていないリング３０の上部より小さくし、同時にヘッドの上部をリングの上部より大きくすることができる。締結装置３２を骨内に挿入するときに、ヘッド３４はリング３０に半径方向の力を加えることになり、それによってリングは端穴２４内で膨張する。リング３０を膨張させると、すきま３６の大きさが増し、リングの外表面４８が端穴２４の内部表面４６を押し付けるように接触する。締結装置ヘッド３４、リング３０およびプレート２２の間に締まりばめが生じ、そこではこれら要素が互いの動きを妨害するようにぴったり適合している。ヘッド３４に接触しているリング３０の周方向応力によって、締結装置３２はプレート２２に固定して取り付けられる。
【００３４】
リング３０は穴２４内で回ることができ、その結果リング３０の一部分は骨用プレート２２の上面に隣接し、同時にリング３０の別の部分が骨用プレートの下面２８に隣接する状態になる。一実施形態においては、リング３０は、骨用プレート２２の上面２６または下面２８を超えて延びることなく、端穴２４内に常駐するに十分な薄さにすることができる。リング３０と締結装置ヘッド３４は端穴２４内に留まり、その結果脊椎プレーティング・システム２０はごく小さい断面幅を有することができる。プレート２２の上面２６または下面２８を超えて延びることのないリング３０と締結装置ヘッド３４を有することによって、リングおよびヘッドが隣接する組織構造に接触するのを防ぐことができる。しかし別の実施形態においては、締結装置３２に骨用プレート２２に対して角度をつけ、その結果リング３０が端穴２４から骨用プレート２２の上面および／または下面を超えて延びるようにすることができる。
【００３５】
一実施形態においては、リング３０を端穴２４内に位置決めすることによって、脊椎プレーティング・システム２０を外科手術による埋め込み用に作成する。外科手術による処置時には、プレート２２を取り付けるべき骨に穴をあけ、タップ形成する。次いで、プレート２２を骨に隣接した、骨内の穴を覆う位置に据える。締結装置３２はリング３０を貫通しかつ骨の穴内に据えることができる。プレート２２内において、各締結装置３２に斜めに角度をつけることができる。締結装置３２は、締結装置ヘッド３４が穴２４の内表面４６を押し付けるように膨張するまで骨内に挿入することができ、結果として締結装置はリングに固定され、リングはプレート２２に固定される。必要に応じて、締結装置４２を中心穴３８の１つに据えてもよい。
【００３６】
一実施形態においては、リング３０の外面の幅は、骨用プレートの上面２６と下面２８の間の位置において、骨用プレート２２の端穴２４の幅より小さいかまたはほぼ等しい。骨用プレート２２の上面および下面２６、２８に近接する各端穴の幅は、リング３０の外面の幅より小さいかまたはほぼ等しい。このリングの幅によって、穴内に位置するリングが穴から脱落するのを妨げることができる。リング３０は、外科手術に先立って骨用プレート２２の端穴２４に据えることができる。穴２４内に設置すると、リング３０は穴内で回ることができるが、骨用プレート２２の上面および下面２６、２８に近接する穴の幅が小さくなっているため、穴からの脱落は防がれる。外科医は、外科手術に先立って穴２４内に据えられたリング３０を備えた骨用プレート２２を使用することができる。別法として、外科手術の際に、リング３０を手で穴２４内に据えることもできる。
【００３７】
リング３０の外表面４８または穴２４の内表面にテクスチャ（粗面化）を付与すると、骨用プレート２２に対する締結装置３２の動きをさらに妨げることができる。両表面にテクスチャを付与して、骨用プレート２２に対する締結装置３２の動きをさらに効果的に妨げることができる。製造工程では、リング３０の外表面４８および穴２４の内表面は比較的平滑な表面として形成される。これら平滑な表面間の摩擦は、プレート２２に対して締結装置３２を固定した位置に保つには十分であるが、応力を多く受ける条件下ではリング３０が穴２４内で回転する可能性がある。少なくとも一方の表面にテクスチャを付与することによって、穴２４とリング３０との間の摩擦係数は大きくなる。穴２４とリング３０との間の摩擦の増大によって、プレート２２に対する締結装置の動きを妨げることが容易になる。
【００３８】
リング３０と穴２４との間の摩擦係数を大きくするために、数種類のテクスチャを付与した表面を使用することができる。一般に、比較的平滑な表面をテクスチャを付与し摩擦係数が増大した表面に変える方法であれば、いかなる方法でも使用できる。テクスチャを付与した表面の形成方法としては、研磨、表面への溝形成、ショット・ピーニング法、放電法、表面への硬質粒子埋め込みなどが挙げられる。
【００３９】
テクスチャを付与した表面を形成するショット・ピーニング法については、Ｖｅｔｔｅｒの米国特許第５，５２６，６６４号に記載があるが、参照によって本明細書に組み込むものとする。一般にショット・ピーニング法は、硬質球、典型的な例では鋼鉄製の硬質球を比較的高速で連続して表面に噴射するものである。一般に、は表面の一領域にパターンを作成するために、表面上を噴射流を移動させる。表面上の噴射流の移動速度によって、テクスチャを付与した表面の種類が決まる。
【００４０】
放電法は、火花放電によって金属表面を部分的に取り除く原理に基づくものである。一般に、工具と電極の間に電位差が生じることによって、処理すべき表面と電極との間に火花を生じさせる。生じた火花は、電極と処理すべき表面の間に置かれた表面の一部を取り除く。一般に、電極は比較的小さく、表面のほんの小さな部分が取り除かれる程度である。表面上を電極を移動させることによって、表面に多数のキャビティを形成することができる。一般に、これらのキャビティはピラミッド様の形状となる。放電時の電極の位置によって、種々のパターンが表面に形成される。放電器については当技術分野では良く知られている。放電法を用いて金属表面に摩擦性の表面を形成する方法については、Ｍｉｅｓｃｈ他の米国特許第４，９６４，６４１号に記載があるが、参照によって本明細書に組み込むものとする。
【００４１】
表面に硬質粒子を埋め込むと、テクスチャを付与された表面ができる。金属表面に硬質粒子を埋め込む方法についてはＳｈｉｒａの米国特許第４，７６８，７８７号に記載があるが、参照によって本明細書に組み込むものとする。Ｓｈｉｒａの方法は、レーザまたは他の高エネルギー源を用いて、選択された領域において表面が融けるように表面を加熱するものである。溶融領域が再固化する前に、連続した研磨粒子流をその領域に誘導する。この方法では、粒子の一部が溶融表面に埋め込まれることになる。一般に、このような粒子は多数の鋭いへりを有していて、埋め込まれた後も表面から突き出ている。
【００４２】
前記テクスチャ付与方法のいずれも、他の方法と併用することができる。例えば、溝のパターンを用いて、穴２４の内表面４６にテクスチャを付与することができる。一方、リング３０の外表面４８には放電法を用いてテクスチャを付与することができる。２つの方法を併用すると、穴２４およびリング３０それぞれのテクスチャを付与した表面が相互に作用し、穴内のリングの動きにさらに抵抗を受けることになる。
【００４３】
図５は、締結装置１００の１つの実施形態を説明する図である。締結装置１００は、締結装置ヘッド１０２、開口１０４、随意選択の溝１０６、穴１０８、シャンク１１０およびねじ山１１２を含む。開口１０４は、後述する駆動工具１１４などの駆動工具を受け入れる。開口１０４、溝１０６および穴１０８は後述するゆるみ止め機構１１６を受け入れる。穴１０８は、ヘッド１０２の外表面１１８から開口１０４まで達している。一実施形態においては、外表面１１８は実質的に円筒形である。別の実施形態においては、ヘッド１０２には、ヘッドの上面付近の最も幅広い部分からシャンク１１０付近の最も狭い部分までテーパーが付けられている。
【００４４】
図６は、締結装置１００の１つの実施形態におけるヘッド１０２の側面図であって、穴１０８および随意選択のリム１２０を示す図である。リム１２０は、使用時に、締結装置１００のリング３０内への挿入を制限するのに利用できる。
【００４５】
図７は、随意選択の溝１０６を有する締結装置１００のヘッド１０２の平面図である。図８は、六角形の開口１０４を有し溝を有していない、締結装置１００の別の実施形態を示す。
【００４６】
図９は、締結装置１００と共に使用されるゆるみ止め機構１１６を説明する図である。ゆるみ止め機構１１６はトップ１２２を含み、トップには下方および外方向に延びるシャフト１２４が付いている。シャフト１２４の先端にはプロング１２６が位置している。プロング１２６は実質的に互いに平行で、またゆるみ止め機構のトップ１２２とも実質的に平行である。シャフト１２４はバネ様の作用をし、それによってシャフト１２４の圧縮が可能となっている。このバネ様の作用によって、圧縮下にないシャフトが元の形状に戻ることも可能になっている。
【００４７】
図１０は、締結装置１００およびゆるみ止め機構１１６と組み合わせて使用できるリング１３０の１つの実施の形態を説明する図である。リング１３０は溝１３２を含む。溝１３２はゆるみ止め機構１１６のプロング１２６とかみ合い、挿入後の締結装置１００をリング１３０内に固定する。リング１３０のすきま３６によって、リング１３０は、骨用プレート２２の端穴２４内に挿入されている間は収縮可能となっている。すきま３６はまた、リング１３０内にある締結装置１００のヘッド１０２によってリング１３０が膨張することもでき、リングを端穴２４の内表面４６に押し付ける。リング１３０を端穴２４の内表面４６に押し付けることによって、締結装置３２の位置を骨用プレート２２に固定することができる。
【００４８】
図１１は工具１１４を説明する図である。工具１１４は、締結装置１００およびゆるみ止め機構１１６の挿入および抜き取り時に使用される。挿入／抜き取り工具１１４はシャフト１７２を含む。シャフト１７２の一方の端は、締結装置１００の挿入および抜き取り時に工具を回転させるためのハンドル１７４を含む。図１１にはシャフト１７２に連結した改造Ｔハンドル１７４を示すが、挿入および抜き取り時の締結装置にトルクを加えることができるものであれば、いずれのタイプのハンドルも使用できる。シャフト１７２のハンドル１７４と対向する端には、駆動ヘッド１７６がある。駆動ヘッド１７６の外表面は、締結装置１００のヘッドにおける開口１０４の形状を補足するように形作られている。駆動ヘッド１７６は、締結装置１００の開口１０４に挿入することができる。挿入／抜き取り工具１１４を回転させることによって、締結装置を骨用プレート２２の端穴２４および骨に挿入することができる。駆動ヘッド１７６はキャビティ１７８を含む。キャビティの内表面はシャフト１２４上およびゆるみ止め機構１１６のプロング１２６上を摺動可能で、かつそれらを圧縮可能となっている。
【００４９】
図１２ａは、挿入／抜き取り工具１１４における駆動ヘッド１７６の１つの実施形態の底面図である。図１２ａの駆動ヘッドは、図７に示すタイプの締結装置ヘッド１０２と併用することができる。駆動ヘッド１７６はキャビティ１７８を有し、それによってゆるみ止め機構１１６上を摺動可能かつそれを圧縮可能となっている。駆動ヘッド１７６は、締結装置ヘッド１０２の開口１０４にある相補的な溝１０６とかみ合わせるためのねじ山１８０を含む。図１２ｂは、挿入／抜き取り工具１１４における駆動ヘッド１７６の代替実施形態を示す図である。図１２ｂの駆動ヘッドは、図８に示すタイプの締結装置ヘッド１０２と併用することができる。駆動ヘッド１７６はキャビティ１７８を有し、それによってゆるみ止め機構１１６上を摺動可能かつそれを圧縮可能となっている。駆動ヘッド１７６は、締結装置ヘッド１０２の開口１０４と組み合わさるように六角形に形作られている。
【００５０】
図１３は、挿入工程時の締結装置１００、ゆるみ止め機構１１６および挿入／抜き取り工具１１４の１つの実施形態を示す横断面図である。駆動ヘッド１７６は、締結装置ヘッド１０２の開口１０４に挿入されている。ゆるみ止め機構１１６のシャフト１２４は、駆動ヘッド１７６のキャビティ１７８内で圧縮されている。シャフト１２４の圧縮によってプロング１２６は穴１０８内に引っ込み、それによって締結装置ヘッド１０２は、延び出たプロング１２６に邪魔されることなくリング１３０内に挿入可能となる。挿入／抜き取り工具１１４を取り外すと、シャフト１２４が圧縮解除され、プロング１２６が穴１０８の外に延びる。
【００５１】
図１４は、締結装置がリング内に完全に挿入され挿入／抜き取り工具１１４が取り除かれた後の、締結装置１００、ゆるみ止め機構１１６およびリング１３０の１つの実施形態を示す横断面図である。ゆるみ止め機構１１６のシャフト１２４は圧縮されていず、プロング１２６が締結装置ヘッド１０２の穴１０８から延び出ることが可能になっている。プロング１２６はリング１３０上の溝１３２に延びる。
【００５２】
ねじ切りされた締結装置１００をリング１３０から取り去るために、挿入／抜き取り工具１１４は締結装置ヘッド１０２の開口１０４に挿入されてゆるみ止め機構１１６のシャフト１２４を圧縮する。シャフト１２４の圧縮によって、プロング１２６は穴１０８を通って引っ込み、プロングとリング１３０の連結が取り除かれる。次いで、工具１１４を回転させて骨から締結装置１００を取り去ることができる。
【００５３】
骨内に締結装置１００およびゆるみ止め機構１１６を挿入した後に、仮に骨内で締結装置１００がゆるむようなことがあっても、締結装置の骨用プレートからの後退は、ゆるみ止め機構１１６とリング１３０との間のゆるみ止め機構−溝連結によって阻むことができる。したがって、仮に締結装置シャンク１１０が骨内でゆるんでも、締結装置ヘッド１０２はプレート２２の穴２４のリング１３０内に留まることになる。プロング１２６と溝１３２の間の連結には幾分移動の自由があり、骨内への挿入後には締結装置１００がわずかに後退可能になっている。
【００５４】
図５〜１４に示すデバイスを用いて骨用プレートを骨に取り付ける外科手術の工程においては、骨用プレート２２を取り付けるべき骨に穴があけられ、タップ形成される。骨用プレート２２は骨に隣接して位置決めされる。リング１３０は、外科手術の工程の前または間に各端穴２４内に位置決めされる。予めゆるみ止め機構が挿入された状態の締結装置１００は、リング１３０を貫通して位置決めすることができる。挿入／抜き取り工具１１４をねじ山を切られた締結装置１００の開口１０４に挿入し、工具の駆動ヘッドのキャビティ内でゆるみ止め機構１１６を圧縮することができる。ゆるみ止め機構１１６を圧縮することによって、ゆるみ止め機構のプロング１２６は締結装置の開口１０４内に引っ込む。次いで、締結装置１００を回転させて、骨内に挿入することができる。締結装置１００が回転しているとき、締結装置ヘッド１０２はリング１３０内へ移動する。締結装置ヘッド１０２がリング１３０内へ移動することによって、リングは端穴２４を押し付けるように膨張し、プレート２２に対して締結装置１００を固定する。一旦締結装置１００が完全に挿入されると、挿入／抜き取り工具１１４は取り除かれる。工具１１４が取り除かれると、ゆるみ止め機構１１６は圧縮されず、プロング１２６は締結装置ヘッド１０２の穴１０８を貫通して延び出て、リング１３０の溝１３２とかみ合う。ファスナ１００は残りの端穴２４を介して骨中に挿入して、プレート２２を骨に安全に取り付けることができる。
【００５５】
図１５は、溝２０４が切られた締結装置ヘッド２０２を有する締結装置２００の１つの実施形態を説明する図である。締結装置２００をプレート２２に位置するリング２３０を貫通するように挿入すると、溝２０４はリング２３０（図１９および図２０に示す）上の固定用つめ２３２とかみ合い、締結装置２００をリング２３０内に固定することができる。締結装置２００は、ヘッド２０２とねじ切り２０８を有するシャンク２０６を含むことができる。ヘッド２０２は、駆動工具を受け入れるように設計された開口２１０を含むことができる。
【００５６】
リング２３０の固定用つめ２３２が溝２０４とかみ合うことで、締結装置２００をプレート２２に挿入後に同装置がリングから後退するのを妨げることができる。１つの実施形態において、ヘッド２０２の外表面は実質的に円筒形である。別の実施形態においては、図１６に示すように、ヘッド２０２にはテーパーが付けられている。ヘッド２０２の最も広い部分は上面付近であり、最も狭い部分はシャンク２０６付近である。
【００５７】
図１７は、ヘッドの外表面から開口２１０へと延びる放射線状の溝穴２１２を有する締結装置２００の１つの実施形態を説明する図である。放射線状の溝穴２１２によって、挿入の間にヘッド２０２の一部が収縮することが可能となる。放射線状の溝穴２１２を用いて、挿入／抜き取り工具の駆動ヘッド（図示せず）の一部とかみ合わせることも可能である。
【００５８】
図１５、１６および１７は、溝２０４がヘッドの最上端に沿ったリムである締結装置ヘッド２０２を説明する図である。図１８は、溝２０４が締結装置ヘッド２０２の側面に沿った位置にある締結装置２００の１つの実施形態を説明する図である。溝２０４は、締結装置ヘッド２０２の側面に沿った位置であればいかなる位置にあってもよい。締結装置ヘッド２０２がリング２３０を貫通して駆動されると、締結装置ヘッド、リングおよび端穴２４の相互作用によって、リングの固定用つめ２３２がカチッと溝２０４内に納まる。固定用つめ２３２は締結装置ヘッド２０２をリング２３０に固定することができる。
【００５９】
図１９および図２０は、溝を切られた締結装置と併用することができるリング２３０の実施形態の斜視図である。リング２３０は、低部２３４、最上部２３８、外表面４８、内表面６０、すきま３６、ならびに溝穴２４０および切り欠き２４２を含むことができる。溝穴２４０および切り欠き２４２は固定用つめ２３２を形成することができる。すきま３６によってリング２３０は収縮することが可能となる。リング２３０の収縮によって、骨用プレート２２の端穴２４内へのリングの挿入が容易になる。すきま３６によって、締結装置ヘッド２０２がリング内を通過する際に、リング２３０が端穴２４を押し付けるように膨張することも可能となる。リングが端穴２４を押し付けるように膨張することによって、締結装置２００は骨用プレート２２に対して固定される。
【００６０】
幾つかの実施形態においては、リング２３０の外表面４８にテクスチャを付与してリング２３０と穴２４との間の摩擦係数を大きくすることができる。幾つかの実施形態においては、リング２３０の内表面６０にテーパーを付けて、締結装置２００のテーパーが付けられたヘッドと一致させることもできる。テーパーを付けた表面を有することによって、骨プレーティング・システム２０に締結装置を挿入する間に、端穴２４内でのリングの膨張が容易になる。
【００６１】
リング２３０内に溝が挿入されて溝がリングの溝穴２４０の上端を通過する際、端穴２４の形状によって、固定用つめ２３２を締結装置２００の溝２０４のへりを通過させて内側に押すことができる。内側に位置決めされた固定用つめ２３２によって、締結装置２００がリング２３０および穴２４から後退するのを妨げることができる。締結装置２００がリング２３０内に挿入されると、締結装置ヘッド２０２によってリングの外表面４８が端穴２４の内表面４６を押し付けるように膨張し、その結果、締結装置２００をリング２３０に、またリングをプレート２２に固定することができる。
【００６２】
図２１は、例えば図１５〜１７に示す締結装置のような、リム２０４を有する締結装置２００と併用できるリングの１つの実施形態の斜視図である。リング４３０は、低部４３２、最上部４３４、外表面４８、内表面６０、すきま３６、切り欠き４３６およびねじ山４３８を含むことができる。切り欠き４３６はリング４３０を扇形または櫂形４４０に分割する。切り欠き４３６とすきま３６によってリング４３０は収縮することができ、骨用プレート２２の穴２４へのリングの挿入が容易になる。切り欠き４３６とすきま３６によって、締結装置ヘッド２０２がリング内を通過する際にリング４３０は膨張するこができ、その結果、骨用プレート２２に対して締結装置の位置を固定することができる。切り欠き４３６によって、締結装置２００の挿入の間、櫂形４４０が外側に曲がることも可能となる。外表面４８および／または内表面６０にテクスチャを付与することもできる。リング４３０の内表面に、締結装置ヘッド２０２のテーパーと一致するようにテーパーを付けることもできる。
【００６３】
図２２は、締結装置２００およびリング４３０と併用される挿入／抜き取り工具４５０の１つの実施形態を説明する図である。挿入／抜き取り工具４５０は、シャフト４５２、ハンドル４５４、駆動ヘッド４５６および抜き取り部材４５８を含むことができる。シャフト４５２の一方の端は、締結装置２００の挿入および抜き取り時に工具を回転させるためのハンドル４５４である。図にはＴハンドルを示すが、挿入および抜き取り時の締結装置２００にトルクを加えることができるものであれば、いずれのタイプのハンドルも使用できる。シャフト４５２のハンドル４５４と対向する端は、駆動ヘッド４５６である。駆動ヘッド４５６の外表面は、締結装置２００のヘッド２０２における開口２１０の形状を補足するように形作ることができる。
【００６４】
図２２に示す抜き取り部材４５８は、グリップ４５９、通路４６０（図２３ｃに示す）、チップ４６２および抜き取りヘッド４６４を含むことができる。通路４６０はグリップ４５９および抜き取りヘッド４６４を貫通して延びている。挿入工程時には、抜き取り部材４５８をシャフト４５２から取り去ることができる。リング４３０から締結装置を抜き取るために、抜き取り部材４５８をシャフト４５２上で摺動させ戻すことができる。駆動ヘッド４５６は締結装置２００の開口２１０に挿入される。抜き取り部材４５８は、抜き取りヘッド４６４のチップ４６２がリング４３０の最上面に接触するまで、シャフト４５２を摺動させる。抜き取り部材４５８に下向きの圧力を加えると、リング４３０の櫂形４４０に外方向の力が加わり、櫂形４４０上のねじ山４３８は締結装置ヘッド２０２上のリム２０４からはずれる。次いで、ハンドル４５４を用いてシャフト４５２を回転させることによって、締結装置２００はプレート２２から後退する。回転シャフト４５２は抜き取り部材４５８を回転させないことが好ましい。
【００６５】
図２３ａ、図２３ｂおよび図２３ｃは、挿入および抜き取り工程時の、ねじ切りされた締結装置２００、リング４３０および挿入／抜き取り工具４５０を示す部分断面図である。図２３ａについて説明すると、挿入／抜き取り工具４５０の駆動ヘッド４５６は締結装置ヘッド２０２の開口２１０に挿入されている。リング４３０は、骨用プレートの穴２４の内側に位置決めされており、骨用プレートは骨上に位置決めされている（骨および骨用プレートは図示せず）。締結装置２００は、締結装置ヘッド２０２の外表面が櫂形４４０の表面に接するまで、骨内にねじ込まれる。締結装置ヘッド２０２の外表面にテーパーをつけることによって櫂形４４０の表面に斜めの力が付与され、その結果、締結装置２００が骨内にねじ込まれるにつれて櫂形は外方向に曲げられる。
【００６６】
図２３ｂについて説明すると、締結装置２００は所望の深さにねじ込まれている。締結装置ヘッド２０２はリング４３０を十分に貫通しており、ねじ山４３８が締結装置ヘッド２０２のリム２０４上でカチッと閉まることが可能になっている。挿入／抜き取り工具４５０の駆動ヘッド４５６は、開口から抜き取られる前には、開口２１０に挿入されたままであることがわかる。挿入後に、仮に締結装置２００が骨内でゆるんでも、締結装置ヘッド２０２とリング４３０との間のねじ山−リム連結によって、締結装置が骨用プレートから後退することは妨げられる。したがって、仮に締結装置シャンクが骨内でゆるんだとしても、締結装置ヘッド２０２はプレート２２の穴２４にあるリング４３０内に留まろうとし、プレートから周囲の体組織内に突き出るようなことはない。幾つかの実施形態においては、櫂形４４０上のねじ山４３８とリム２０４との間の連結には幾分移動の自由があり、挿入後には締結装置２００が骨からわずかに後退可能になっている。一般に、移動の自由は制限されており、締結装置ヘッド２０２がプレート２２から突き出ることがないようになっている。
【００６７】
図２３ｃは、締結装置２００を取り去るために使用されている状態の挿入／抜き取り工具４５０を示す。駆動ヘッド４５６は、締結装置２００の開口２１０に挿入されている。抜き取りヘッド４６４を、チップ４６２の傾斜をつけられた表面が、櫂形４４０の傾斜をつけられた上面に対してくさびを打ち込むような力を加えるまで、挿入／抜き取り工具４５０のシャフト４５２を下方に摺動させる。くさびを打ち込むような力によって、櫂形４４０は外方向に曲げられ、ねじ山４３８がリム２０４からはずれる。次いで、締結装置２００が骨、リング４３０およびプレート２２から後退する。
【００６８】
プレート、締結装置およびゆるみ止め機構は鋼鉄（例えば、ステンレス・スチール）、チタン、鋼合金またはチタン合金などから作ることができる。一般に、これらの材料は非毒性、生体親和性、強靭かつ非腐食性である。これらの特性を有する他の材料も使用することができる。プレートおよびリングは、金属、プラスチック、複合材料などを含めた数多くの生体親和性材料で作ることができる。
【００６９】
前述したいずれの実施形態も、単独でまたは他の実施形態と組み合わせて使用することができる。本発明の種々の形態に関してさらに修正を加えることができること、また別の実施形態が考えられることは、本明細書を読めば、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書の記述は例示のために、また当業者に本発明を実施する一般的方法を教示するために示したものにすぎない。本明細書に示し、記述した発明の形態は実施形態の例として挙げたものであることを理解されたい。本明細書で例示および説明した部材および材料は他のもので代用できること、部品および工程を入れ替えができること、また本発明の特徴点のいくつかは単独で使用できることなどは、本発明の説明を読めば、当業者には明らかであろう。請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、本発明には様々な変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 ヒトの脊椎の固定に使用することができる脊椎プレーティング・システムの実施形態の平面図である。
【図２】 図１の線２−２に実質上沿って得られた脊椎プレーティング・システムの部分断面図である。ファスナは、断面で示されていない。
【図３】 図１の線３−３に実質上沿って得られた脊椎プレーティング・システムの部分断面図であって、ファスナが、プレートのエンド・ホール内で集束する向きにある状態を示す図である。ファスナは、断面で示されていない。
【図４】 図１の線４−４に実質上沿って得られた脊椎プレーティング・システムの部分断面図であって、ファスナが、プレート５のエンド・ホール内で発散する向きにある状態を示す図であり、このファスナは、断面で示されていない。
【図５】 ロッキング機構に係合するための溝およびホールを有するファスナの実施形態を示す図である。
【図６】 ファスナ・ヘッドにホールを有するファスナの部分正面図である。
【図７】 ロッキング機構に係合するための溝を有するファスナ・ヘッドの平面図である。
【図８】 ロッキング機構に係合するための六角形の開口およびホールを有するファスナ・ヘッドの実施形態の平面図である。
【図９】 ロッキング機構の斜視図である。
【図１０】 ファスナおよびロッキング機構と共に使用することができるリングの斜視図である。
【図１１】 ロッキング機構を有するファスナ用の挿入／抜き取り工具の部分断面図である。
【図１２ａ】 図１１に示す挿入／抜き取り工具のドライバ・ヘッドの下面図である。この工具は、図７に示すファスナ・ヘッドと共に使用することができる。
【図１２ｂ】 図１１に示す挿入および取外し工具のドライバ・ヘッドであって、図８に示すファスナ・ヘッドと共に使用することができるドライバ・ヘッドの下面図である。
【図１３】 挿入プロセス中の挿入／抜き取り工具および圧縮されたロッキング機構と共にファスナ・ヘッドを示す断面図である。
【図１４】 ファスナ・ヘッド、およびリングに挿入されたロッキング機構の断面図である。
【図１５】 ファスナの実施形態の斜視図である。
【図１６】 ファスナ・ヘッドの実施形態の正面図である。
【図１７】 ファスナの実施形態の斜視図である。
【図１８】 溝を有するファスナ・ヘッドの実施形態の正面図である。
【図１９】 リングの実施形態の斜視図である。
【図２０】 リングの実施形態の斜視図である。
【図２１】 リングの実施形態の斜視図である。
【図２２】 図２１のリングと共に使用することができる挿入／抜き取り工具の正面図である。
【図２３ａ】 図２１のリングの挿入中のファスナの部分断面図である。挿入／抜き取り工具のシャフトは、断面で示されていない。
【図２３ｂ】 図２１のリングの挿入後のファスナの部分断面図である。挿入／抜き取り工具のシャフトは、断面で示されていない。
【図２３ｃ】 図２１のリングから取り外している間のファスナの部分断面図である。挿入／抜き取り工具のシャフトは、断面で示されていない。

Claims (15)

1. 骨構造を安定させるように構成されたプレートと、
   プレートを貫通するホールと、
   ホール内に位置決め可能な湾曲可能な部分を有するリングと、
   前記リングに締結装置のヘッドが係合するよう前記リングを通して位置決め可能であって、前記プレートを骨に連結するように構成された締結装置とを備え、
   前記リングの湾曲可能な部分は、前記締結装置のヘッドを最初に位置決めする際に外側に湾曲するよう構成され、前記リングに締結装置を結合させるため前記締結装置のヘッドが前記リングを通った後、前記プレートから前記締結装置が外れないよう前記リングの湾曲可能な部分が内側に湾曲するよう構成されていることを特徴とする骨プレート・システム。
2. 前記リングの湾曲可能な部分は、前記締結装置のヘッドの上面に係合するよう構成された係合構造を有することを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
3. 前記リングの湾曲可能な部分は、使用中に締結装置のヘッド内の溝に延びるリングの固定用つめであることを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
4. 前記リングは、前記ホール内で変位可能に構成されて、前記締結装置のシャンクが所定角度で骨内に挿入できるよう構成されていることを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
5. 前記ヘッドは、前記プレートに対応する位置に前記締結装置を使用中固定するよう前記ホールの壁に対して前記リングを広げるよう構成されていることを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
6. さらに、前記リングの壁に、前記リングを広げたり縮めたりすることを可能にするすきまを含むことを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
7. 前記ヘッドのある部分の直径を前記リングの内面の直径より大きくして、前記ヘッドが使用中前記リングを広げる力を生じるようにしたことを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
8. さらに、プレートに設けた追加のホールと、骨にプレートを結合するためのヘッドとシャンクを備える追加の締結装置と、該追加の締結装置を前記プレートに結合するための追加のリングとを含むことを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
9. 前記締結装置のシャンクが前記プレートに対して第１の傾斜角度で該プレートの底部から延び、前記追加の締結装置のシャンクが前記プレートに対して第２の傾斜角度で該プレートの底部から延びていることを特徴とする請求項８記載の骨プレート・システム。
10. 前記締結装置のシャンクは、使用中に、前記追加の締結装置のシャンクに対して離れる方向に、前記プレートの底部から延びていることを特徴とする請求項９記載の骨プレート・システム。
11. 前記締結装置のシャンクは、使用中に、前記追加の締結装置のシャンクに対して近づく方向に、前記プレートの底部から延びていることを特徴とする請求項９記載の骨プレート・システム。
12. 前記リングは、さらに複数の切り欠きを含むことを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
13. 前記湾曲可能な部分は、前記リングの複数の湾曲可能な部分の１つである請求項１記載の骨プレート・システム。
14. 前記リングは底部と上部とを有し、該上部は前記リングの湾曲可能な部分を作るよう底部から延びる複数のつめを有することを特徴とする請求項１記載の骨プレート・システム。
15. 前記つめは前記底部と平行であることを特徴とする請求項１４記載の骨プレート・システム。

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