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本発明は、RNA安定化剤ならびにこのRNA安定化剤を用いたRNA安定化方法および複合体安定化方法に関するものである。
RNAとは、リボース、プリン塩基またはピリミジン塩基、リン酸基からなる核酸から構成された物質であり、DNAが保存している遺伝情報に基づいて、タンパク質を生合成する役割を担っている。近年、このRNAを利用して、有用タンパク質や、酵素活性を有するRNA(リボザイム)からなる医薬品など、様々な工業製品を製造することが期待されている。
しかしながら、RNAは一般に不安定な物質であるため、室温よりも10℃高い環境に置かれただけでも、その立体構造が容易に破壊され、かつ生理活性が失われてしまうという欠点があった。そこで、従来、RNAの安定性を高めるために、RNAにマグネシウムイオンなどの金属イオンを結合させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
R.Hach, 「European Jounal of Biochemistry」,1975,55,p.271−284
しかしながら、特許文献1にかかるRNA安定化方法にあっては、一般に、生体内において、金属イオンの量が常に一定に保たれているため、生体内におけるRNAの安定化が困難であるという問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、
生体内外に関わらず、RNAの立体構造を安定化させるRNA安定化剤およびRNA安定化方法を提供することを目的とする。
また、生体内外に関わらず、RNAとRNAとの結合能を有する分子とからなる複合体を安定化させる複合体安定化方法を提供することを目的とする。
さらに、RNAを生体内において追跡可能なRNAトレーサーおよびRNA追跡方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、4級ポリアミンを構成する元素の一部が安定同位体元素により置換されているRNAトレーサーをRNAに結合させて、このRNAトレーサーが結合したRNAを生体細胞に導入し、この生体細胞を生体組織又は個体(但し、人間を除く)の中に導入し、このRNAトレーサーを検出することにより、当該RNAが生体のどの部位に移動したかを追跡するRNA追跡方法である。
本発明のRNA安定化剤およびRNA安定化方法によれば、4級ポリアミンが生体に対して無害であるとともに、生体内において多量に保持されることが可能であるため、生体内外に関わらず、RNAの立体構造を安定化させることができる。
また、本発明の複合体安定化方法によれば、4級ポリアミンが生体に対して無害であるとともに、生体内において多量に保持されることが可能であるため、生体内外に関わらず、RNAを含む複合体の立体構造を安定化させることができる。
また、本発明のRNAトレーサーおよびRNA追跡方法によれば、RNAトレーサーがRNAと安定に結合し、かつ安定同位体が容易に検出可能であるため、生体内におけるRNAの位置を正確に追跡することができる。
本発明にかかるRNA安定化剤の一実施形態を、以下に説明する。
本発明のRNA安定化剤は4級ポリアミンから構成されている。
この4級ポリアミンは、下記式(1)に示すように、一端にアミノ基を有する4つのアミノアルキル基が窒素原子に結合した化合物である。この4級ポリアミンにおいて、R〜Rはアルキル鎖を示している。このアルキル鎖の炭素原子数は特に限定されない。また、R〜Rの炭素原子数は同一であっても、異なっていてもよい。その中でも、アルキル鎖の炭素原子数が3〜5であるアミノアルキル基を4つ有する4級ポリアミンが、RNA安定化剤として好ましい。
Figure 0004733936
4級ポリアミンは、その4つのアミノ基が水溶液中においてカチオンとなるため、プラスに帯電している。一方、RNAは、そのリン酸基が水溶液中においてアニオンとなるため、マイナスに帯電している。従って、4級ポリアミンとRNAとは、水溶液中において、イオン結合によって良好に結合することができる。
一方、4級ポリアミンを含むポリアミンは、元来、生体細胞内に多く存在しており、生体に対して無害な物質として知られている。特に、4級ポリアミンは好熱菌内に多く存在している物質である。従って、4級ポリアミンは、生体に対して無害であるとともに、生体内において多量に保持されることが可能である。
上記4級ポリアミンの製法の一例を、図1を用いて説明する。
図1において、4級ポリアミンの製法の合成経路が示されている。なお、4級ポリアミンの製法の合成経路は、図1の合成経路に限られることなく、他の合成経路であってもよい。
先ず、合成経路を概説する。
化合物(1)、(4)は、4級ポリアミン(7)の出発物質である。これら化合物(1)、(4)は市販されており、当業者が容易に入手することができるものである。なお、化合物(1)、(4)におけるR、Rはアルキル鎖を示している。
化合物(1)からは、(a)工程を行うことにより、化合物(2)が得られる。得られた化合物(2)からは、(b)工程を行うことにより、化合物(3)が得られる。
一方、化合物(4)からは、(c)工程を行うことにより、化合物(5)が得られる。この化合物(5)と上記化合物(3)を用いて、(d)工程を行うことにより、化合物(6)が得られる。最後に、得られた化合物(6)からは、(e)工程を行うことにより、4級ポリアミンである化合物(7)が得られる。
次に、(a)〜(e)工程を順に説明する。
(a)工程は、化合物(1)のアミド基をアミノ基に還元する工程である。具体的には、化合物(1)をリチウムアルミニウムヒドリドと反応させることにより、還元する。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル,アセトニトリルなどが用いられるが、その中でもテトラヒドロフランが好ましい。また、反応温度は用いた溶媒が還流する温度であり,反応時間は20〜24時間である。なお、この反応は無水条件で行われる。
(b)工程は、化合物(2)のアミノ基をイミド基にして保護する工程である。具体的には、化合物(2)を酢酸ナトリウムの存在下において無水フタル酸と反応させることにより、脱水縮合させる。反応温度は150〜250℃であり、反応時間は1.5〜2.5時間である。なお、この反応は無水条件で行われる。
反応後、粗生成物は、塩基性水溶液によりpH8〜10に調製されるとともに抽出された後、カラムクロマトグラフィーにより精製される。なお、展開溶媒としては、酢酸エチル、ヘキサン、石油エーテルなどの溶媒を単独または混合したものが用いられる。
(c)工程は、化合物(4)の臭素をヨウ素に置換する工程である。具体的には、化合物(4)をヨウ化ナトリウムと反応させることにより、臭素をヨウ素に置換する。溶媒としては、アセトン、ジオキサン、エタノールなどが用いられるが、その中でもアセトンが好ましい。また、反応温度は用いた溶媒が還流する温度であり、反応時間は2〜3時間である。
(d)工程は、化合物(3)を4級アミンにする工程である。具体的には、化合物(3)を化合物(5)と反応させることにより、4級アミンを合成する。溶媒としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒドなどが用いられるが、その中でもジオキサンが好ましい。また,反応温度は180〜230℃であり、反応時間は2〜4時間である。なお、この反応は窒素またはアルゴン雰囲気下、無水条件で行われる。
(e)工程は、化合物(6)のアミノ基を保護している無水フタル酸由来の保護基を脱離させる工程である。具体的には、化合物(6)をヒドラジンと反応させることにより、保護基を脱離させる。溶媒としては、エタノール、メタノール、ジオキサンなどが用いられるが、その中でもエタノールが好ましい。また、反応温度は用いた溶媒が還流する温度であり、反応時間は1.5〜2.5時間である。
反応後、粗生成物は、エタノール、メタノール、ジオキサンなどにより濾過、洗浄された後、カラムクロマトグラフィーにより精製される。なお、展開溶媒としては、4〜6Nの塩酸が用いられる。
以上の製法により、4級ポリアミンが製造される。
本発明のRNA安定化方法は、上記RNA安定化剤を用いたものである。以下、RNA安定化方法について説明する。
本発明のRNA安定化方法においては、対象となるRNAは特に限定されず、例えば、ウイルス、ファージ、細菌などの原核細胞または真核細胞などから、公知の方法により採取されたものであってもよい。また、化学合成されたRNAであってもよい。
このようなRNAを用いてRNA水溶液を調製する。溶媒としては、純水、またはトリス塩酸緩衝溶液やトリス酢酸緩衝溶液などの緩衝溶液が挙げられる。このRNA水溶液におけるRNAの濃度は任意であり、RNAが溶解する限りにおいて自由に設定できる。なお、RNA水溶液のpHは6〜8であり、好ましくは6.8〜7.5である。
このRNA水溶液に、RNA安定化剤を添加する。添加方法としては、RNA安定化剤を直接添加する方法、または、RNA水溶液と同様の溶媒を用いてRNA安定化剤の水溶液を調整した上で、このRNA安定化剤水溶液を滴下する方法などが用いられる。RNA安定化剤を構成する4級ポリアミンは水に対して易溶であるため、どの方法であっても、RNA水溶液に良好に溶解することができる。なお、RNA安定化剤を溶解する際には、シェーカーなどを用いてもよい。
添加するRNA安定化剤の量は、RNAに対して0.1〜20当量である。RNA安定化剤の量がこの範囲内であるとき、RNA安定化剤は全てのRNAと十分に結合することができる。RNA安定化剤と結合したRNAにあっては、変性温度が上昇する。すなわち、RNAの安定性が向上する。
以下、RNA安定化の作用機構について説明する。
一般に、RNAおよびそのリン酸基は、水溶液中において複雑な立体構造を形成している。一方、本発明のRNA安定化剤を構成する4級ポリアミンにあっては、柔軟なアルキル鎖により、4つのアミノ基が空間的に異なる位置にあり、また、異なる方向を向くことが可能である。従って、このような4級ポリアミンは、複雑な立体構造を形成しているRNAのリン酸基に巧みに結合して、リン酸基の電荷を中和することができる。電荷が中和されたRNAはリン酸基同士のクーロン反発がなくなるため、その立体構造の安定性が向上する。
このように、4級ポリアミンから構成されるRNA安定化剤を用いることにより、RNAの立体構造を安定化させることができる。また、4級ポリアミンが生体に対して無害であるとともに、生体内において多量に保持されることが可能であるため、生体内外に関わらず、RNAの立体構造を安定化させることができる。
一般に、RNAは複数のRNA同士で結合して複合体(多量体)を形成することができる。また、RNAは特定のタンパク質と結合して、リボソームなどの複合体を形成することができる。このようなRNAを含む複合体に関しても、本発明のRNA安定化剤を用いることにより、安定化を行うことができる。
以下、RNA安定化剤を用いた複合体安定化方法について説明する。
複合体は、RNAとRNAとの結合能を有する分子とから構成されている。
RNAとしては、特に限定されず、あらゆる種類のRNAであってもよい。RNAとの結合能を有する分子としては、DNA、RNA、タンパク質などが挙げられる。複合体のの結合様式は、水素結合が一般的であるが、これに限らず、疎水結合、ジスルフィド結合などであってもよい。
上記複合体を用いて複合体水溶液を調製する。溶媒としては、純水、またはトリス塩酸緩衝溶液やトリス酢酸緩衝溶液などの緩衝溶液が挙げられる。この複合体水溶液における複合体の濃度は任意であり、複合体が溶解する限りにおいて自由に設定できる。なお、複合体水溶液のpHは6〜8であり,好ましくは6.8〜7.5である。
この複合体水溶液に、RNA安定化剤を添加する。添加方法は上述したRNA安定化方法のものと同様であるので、その説明を省略する。
添加するRNA安定化剤の量は、複合体に対して0.1〜20当量である。RNA安定化剤の量がこの範囲内であるとき、RNA安定化剤は全ての複合体と十分に結合することができる。RNA安定化剤と結合した複合体にあっては、変性温度が上昇する。すなわち、RNAの安定性が向上する。
以下、複合体安定化の作用機構について説明する。
複合体安定化の作用機構としては、上述したRNA安定化と同様のものが挙げられる。すなわち、4級ポリアミンがRNAのリン酸基の電荷を中和することにより、クーロン反発を低減させる作用機構である。これにより、複合体は、RNA単量体の変性による立体構造の崩壊を防止することができる。
また、他の作用機構として、4級ポリアミンによる複合体の結合の補強が挙げられる。すなわち、4級ポリアミンのそれぞれのアミノ基が、複合体の結合部位において、複数の分子にまたがって結合することにより、“つなぎ”分子としての作用を及ぼす作用機構である。これにより、複合体は、それぞれのユニット同士の結合を強化することができるため、その立体構造の安定性が向上する。
このように、4級ポリアミンからなるRNA安定化剤を用いることにより、複合体の立体構造を安定化することができる。また、4級ポリアミンが生体に対して無害であるとともに、生体内において多量に保持されることが可能であるため、生体内外に関わらず、複合体の立体構造を安定化させることができる。
本発明のRNAトレーサーは上記RNA安定化剤を用いたものである。以下、RNAトレーサーについて説明する。
RNAトレーサーは、RNA安定化剤を構成する4級ポリアミンを、安定同位体元素により標識することにより得られる。安定同位体元素としては、13C,15Nなどが用いられる。これら安定同位体元素を、4級ポリアミンを構成する12C,14Nなどと置換することにより、標識が行われる。
RNAトレーサーの検出方法としては、質量分析法、赤外分析法、核磁気共鳴法などが挙げられる。その中でも、生体内において検出が可能である核磁気共鳴法が好適である。安定同位体元素は、上記検出方法によって特異なスペクトルデータを示すことが知られており、これにより、容易に検出される。
以下、RNAトレーサーを用いたRNA追跡方法について説明する。
本発明のRNA追跡方法において、対象となるRNAは特に限定されず、生体内における機能や役割を調査したいRNAが用いられる。このようなRNAを用いてRNA水溶液を調製する。溶媒としては、純水、またはトリス塩酸緩衝溶液やトリス酢酸緩衝溶液などの緩衝溶液が挙げられる。このRNA水溶液に置けるRNAの濃度は任意であり、RNAが溶解する限りにおいて自由に設定できる。なお、RNA水溶液のpHは6〜8であり,好ましくは6.8〜7.5である。
この複合体水溶液に、RNAトレーサーを添加する。添加方法は上述したRNA安定化方法のものと同様であるので、ここでは省略する。ついで、このRNAトレーサーが結合したRNAを、生体細胞中に導入する。導入方法としては、電気パルスを用いたエレクトロポレーション法、ガラス針で直接注入するマイクロインジェクション法、リポソームに包含させて導入する方法などが挙げられる。これらの方法を用いて、RNAトレーサーが結合したRNAを生体細胞内に導入する。
また、上記生体細胞を生体組織、個体の中に導入してもよい。ただし、個体には人間は含まれない。導入方法としては、皮下注射、腹腔内投与などが挙げられる。
次に、生体細胞内に導入されたRNAトレーサーを、上記検出方法により検出する。これにより、RNAトレーサーが結合したRNAが細胞内に存在しているかどうかを追跡することができる。また、RNAトレーサーを生体組織や個体内に導入した場合には、RNAが生体のどの部位に移動したかを追跡することが可能となる。
これらの知見は、RNAの機能や役割を明らかにする上で、重要な基礎データとなる。
このように、本発明のRNAトレーサーおよびRNA追跡方法を用いると、RNAトレーサーがRNAと安定に結合し、かつ安定同位体が容易に検出可能であるため、生体内におけるRNAの位置を正確に追跡することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、本発明のRNA安定化剤を用いてRNAの安定化を試みた。以下に、実施手順を説明する。
先ず、RNA安定化剤を構成する4級ポリアミンを製造した。合成経路としては化2に示したものを用いた。出発物質である化合物(1)としては、Rの炭素数が2である3,3,3−ニトリロトリスイソプロピオンアミド(東京化成工業株式会社)を用いた。また、出発物質である化合物(4)としては、Rの炭素数が3であるN−(3−ブロモプロピル)フタルイミド(シグマアルドリッチジャパン株式会社)を用いた。
以下、(a)〜(e)工程における操作を説明する。
(a)工程においては、化合物(1)をリチウムアルミニウムヒドリドと反応させることにより、アミド基をアミノ基に還元した。溶媒としては、テトラヒドロフランを用いた。また、反応温度は100℃、反応時間は24時間であった。なお、この反応は無水条件で行われた。
(b)工程においては、化合物(2)を酢酸ナトリウムの存在下において、無水フタル酸と反応させることにより、脱水縮合させた。また、反応温度は200℃、反応時間は2時間であった。なお、この反応は無水条件で行われた。
反応後、粗生成物を、塩基性水溶液によりpH8に調製するとともに抽出した後、カラムクロマトグラフィーにより精製した。なお、展開溶媒としては、酢酸エチルとヘキサンを等量ずつ混合した混合溶媒を用いた。
(c)工程においては、化合物(4)をヨウ化ナトリウムと反応させることにより、臭素をヨウ素に置換した。溶媒としては、アセトンを用いた。また、反応温度は用いた溶媒が還流する温度であり、反応時間は2時間であった。
(d)工程においては、化合物(3)を化合物(5)と反応させることにより、4級アミンを合成した。溶媒としては、ジオキサンを用いた。また、反応温度は200℃であり、反応時間は3時間であった。なお、この反応は窒素またはアルゴン雰囲気下、無水条件で行われた。
(e)工程においては、化合物(6)をヒドラジンと反応させることにより、無水フタル酸由来の保護基を脱離させた。溶媒としては、エタノールを用いた。また、反応温度は用いた溶媒が還流する温度であり、反応時間は2時間であった。
反応後、粗生成物は、エタノールと水の混合溶媒により濾過、洗浄された後、カラムクロマトグラフィーにより精製された。なお、展開溶媒は6Nの塩酸であった。
以上
の製法により、4級ポリアミンを得た。なお、4級ポリアミンの同定は、核磁気共鳴法、質量分析法により行われた。
次に、4級ポリアミンからなるRNA安定化剤を用いて、RNAの安定化を行った。
RNAとしては、酵母フェニルアラニン転移RNA(シグマアルドリッチジャパン株式会社、配列番号1参照)を用いた。また、このRNAの変性温度は47.8℃である。
上記RNAを50mM塩化ナトリウム、10mMカコジル酸緩衝液(pH7.0)に溶解させて、RNA水溶液を調製した。このRNA水溶液の濃度は60μMであった。
一方、本実施で合成した4級ポリアミンからなるRNA安定化剤を上記緩衝溶液に溶解させて、RNA安定化剤水溶液を調製した。このRNA安定化剤水溶液の濃度は1mMであった。
ついで、上記RNA水溶液に、上記RNA安定化剤水溶液を滴定して、混合水溶液を調製した。この混合水溶液における最終的なRNA安定化剤の濃度は0.3mMであった。
得られた混合水溶液の吸光度を、温度変化に対して測定した。その結果、温度が76.7℃になった時、吸光度が急激に増加することが明らかとなった。この吸光度の増加は、RNAが変性したことを示している。従って、RNA安定化剤を添加することによって、RNAの変性温度が上昇することが明らかとなった。
[実施例2]
実施例2では、本発明のRNA安定化剤を用いて複合体の安定化を試みた。以下に、実施手順を説明する。
RNA安定化剤としては、実施例1で作製した4級ポリアミンを用いた。複合体としては、2量体を形成するRNA35(配列番号2参照)を用いた。このRNA35は35塩基の核酸塩基からなっており、その塩基配列は後述する通りである。このRNA35により形成される2量体の解離温度は,0.8μMの濃度において37℃である。RNA安定化剤と複合体の混合水溶液の調製方法は、実施例1と同様であったので、その説明を省略する。
得られた混合水溶液の吸光度を、温度変化に対して測定した。その結果、温度が65℃を超えた時、吸光度が増加を始めることが明らかとなった。この吸光度の増加は、2量体が解離したことを示している。従って、RNA安定化剤を添加することによって、複合体の解離温度が上昇することが明らかとなった。
本発明のRNA安定化剤は、RNAおよび複合体を安定化する有効成分として有用であるほか、これ以外のRNAウィルス阻害剤やRNA医薬品の効果増強剤として使用できる。
本発明の実施形態にかかる4級ポリアミンの製法における合成経路の一例を示す流れ図である。

Claims (1)

  1. 4級ポリアミンを構成する元素の一部が安定同位体元素により置換されているRNAトレーサーをRNAに結合させて、このRNAトレーサーが結合したRNAを生体細胞に導入し、この生体細胞を生体組織又は個体(但し、人間を除く)の中に導入し、このRNAトレーサーを検出することにより、当該RNAが生体のどの部位に移動したかを追跡するRNA追跡方法。
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