JP4733809B2 - 放射線治療計画装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線治療計画装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射線を癌や腫瘍等の病変部に照射することにより、当該病変部の組織細胞を破壊したり、分裂阻止等することで、その治癒を目指す放射線治療が広く行われるようになっている。ここで、放射線としては、例えば直線加速器(リニアアクセラレータ=LINAC)によって加速された電子を、所定の対電子線ターゲット(タングステン、金、白金等)に照射することで発生するX線、等が利用される。
【0003】
ところで、このような放射線治療を実施するにあたっては、上記病変部に対する十分な治療効果を得るために相応の放射線照射(ないし線量)が必要であるとともに、病変部以外の他の正常組織に関しては、障害が発生しないように、その許容放射線量を超えてはならない、という条件を満足しなければならない。このとき特に、病変部の近傍に、放射線に対して高感受性を有する組織(例えば、甲状腺や眼球(水晶体))が存在する場合においては、より高度の注意が必要となる。
【0004】
したがって、放射線治療を実際に開始する前には、上記条件を満足するため、病変部の位置、大きさ、形状、数等を正確に把握し(病変部の特定)、それに基づき放射線を照射する領域(照射野)、照射角度、照射門数等を決定して、当該病変部に放射線が集中するよう、かつ、当該病変部周囲の線量分布が適当なものとなるような放射線治療計画を策定する必要がある。
【0005】
従来において、上記放射線治療計画の策定は、例えば放射線治療装置における線源と架台回転中心との距離、絞り開度等の幾何学的条件を設定可能なX線シミュレータを用いて実施されていた。しかしながら、この場合においては、データを二次元的にしか扱うことができず、深さ方向に関する放射線照射についての確認を行うことができない。したがって、策定された計画の信頼性について、また、病変部「のみ」を照射対象とするような、より緻密な照射計画を策定しようとする場合について、やや問題がった。
【0006】
また、上記X線シミュレータに関する欠点を回避し得るものとして、X線CT装置により取得された、被検体及び病変部に関する複数の断層像の各々につき上記病変部に関する「二次元的」な設定(病変部外縁形状の入力)をまず行って、次に、当該複数の断層像と当該設定に基づいて、病変部の三次元モデル(以下、「VOI(Volume of Interest)」という)を構築し、この三次元モデルに基づき、放射線治療計画を策定する方法も提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来における放射線治療計画の策定、その中でも殊に重要な工程である「病変部の設定」においては、いわゆる「体動」に関する考慮が払われていない点が問題であった。
【0008】
すなわち、複数枚の断層像を利用して病変部の設定を実施する場合においては、従来、ある「特定の位相」の再構成画像(=断層像)に基づいて、上記病変部形状の設定が行われていた。ここに「位相」とは、一般的には、「時間とともに変化する体の動きないし状態(=上記「体動」)」を示唆し、より具体的に言えば、被検体の呼吸(呼気又は吸気フェーズ(位相)の違い)、それら各フェーズに対応する心拍(一拍分が位相の一周期を構成)、等が該当する。そして、このような体動によって、病変部の位置や形状は一般に変化する。
【0009】
ところが、従来における「病変部の設定」は、上記したように、「ある特定の」位相における断層像が利用されるのみであったから、その正確な形状を「特定」し得たと言える状況になかった。例えば図12(a)においては、「呼気フェーズ」における6枚の断層像(スライス位置▲1▼〜▲6▼)が取得され、かつ、これに基づいて病変部Tの位置及び形状についての「二次元的」なターゲット形状STの設定がなされているが、図12(b)における「吸気フェーズ」においては、スライス位置▲4▼に関する病変部Tの形状が、上記設定された形状STよりも小さくなっていることがわかる。また、このような「二次元的」な設定に基づいて、上記した「VOI」を構築することは、一定の不正確さを伴うものとならざるを得ない。したがって、このような場合においては、放射線治療の際、病変部に対し有効な放射線照射が行われない領域を残置させることとなり、治療効果が低下する結果となる。
【0010】
また、上記したような事情は、断層像を用いた病変部設定のみにかかわらず、これら複数の断層像に基づいて作成した「透過像(DRR(Digitally Reconstructed Radiograph)像)」を用いた病変部設定に関しても当てはまる(ちなみに、上記X線シミュレータを用いる場合、このDRR像を利用した病変部設定が行われ得る)。
【0011】
すなわち、DRR像の作成ないし当該像上における病変部設定に関しても、従来、上記体動に関する配慮がなされているわけではなく、該DRR像は一般に位相が混在したもの、例えば吸気の位相と呼気の位相とが渾然一体となった画像として作成されていたし、また、病変部の設定をこのようなDRR像上で行えば、上記と同様な問題が生ずることとなっていた。
【0012】
例えば図13に概念的に示すように、同図第I相及び第VIII相においては、病変部Tの形状と設定したターゲット形状(照射野形状)STとがほぼ一致しているが、他の各相では、病変部形状が変化しており、当該病変部T形状と設定した形状STとは、もはや一致したものとなっていないことがわかる。
【0013】
以上のことを要すれば、病変部の位置ないし形状は、体動により変化しているにもかかわらず、従来においては、ある特定の位相に関する断層像あるいはDRR像を用いるのみで以って当該病変部の設定を行うようにしていたから、より正確かつより緻密な放射線治療を実施することが困難であった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被検体の呼吸、心拍等に応じて変化する病変部の位置・形状等を正確に反映した設定を行うことができ、もってより緻密かつ正確な放射線治療を実施することが可能な放射線治療計画装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために以下の手段をとった。すなわち、請求項1記載の放射線治療計画装置は、被検体にX線を曝射することにより取得される画像に基づいて放射線治療の計画を策定する放射線治療計画装置において、前記被検体の呼吸状態に関するデータ、及び、前記被検体に関する心電データを含む位相データの相違に応じた複数の画像を生成する画像生成手段と、前記画像に対し、当該画像上に存在する目標部位に対するターゲット形状を設定・入力する入力手段と、前記位相データの相違に応じた複数の画像及び前記ターゲット形状を重畳表示する画像表示手段とを有し、前記画像生成手段は、前記被検体の呼吸状態に関する呼気の期間又は吸気の期間における前記心電データの1周期内の位相の相違に応じた複数の画像を、前記位相データの相違に応じた複数の画像として、生成することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の第一の実施の形態について図を参照しつつ説明する。図1は、本第一実施形態に係る放射線治療計画装置の構成例を示す概要図である。図1において、この放射線治療計画装置は、X線CT装置1及び放射線治療装置2の二つの構成要素からなっている。
【0019】
X線CT装置1は、架台11、寝台12及びコンソール13から構成されている。架台11には、寝台12上に被検体Pの体軸方向(図中矢印A1の方向)に移動可能に設置された天板121が挿脱される空洞部11aが設けられており、該空洞部11aの周囲かつ架台11内部には、X線管球111及びX線検出器112が設けられている(図2参照)。
【0020】
これらX線管球111及びX線検出器112は、図2に示すように対向配置され、かつ両者が図中矢印Bに示すように被検体を中心に回転可能となっている。X線管球111は高電圧電源等を含むX線発生装置111aと接続されている。また、X線検出器112は、例えば二次元状に配列された光電変換素子を含む画素電極(不図示)を主として構成される。上記X線管球111より発せられるX線は、図2上点線にて示されているように、被検体Pに対し、扇形状で曝射される。この場合、その扇形状と被検体Pとが交差する部位(ないしは、扇形状が被検体Pを、いわば「切断」する位置)として、当該被検体Pについての「スライス位置」が規定される。
【0021】
また、架台11には、図1に示すように、空洞部11aの近傍かつその周囲に、投光器113が備えられている(図1では、三台)。これら投光器113は、上記スライス位置がどこに規定されているかを、被検体P上に指示するものである。
【0022】
寝台12には、上記した天板121が設けられる他、図1に示す矢印C1のような上下動を可能とする機構(不図示)が設けられている。寝台12にはさらに、天板121の面が設置面と平行な関係を保ったまま回転することが可能な回転動機構等を設けてもよい。
【0023】
被検体Pは、この寝台12における天板121が前記空洞部11aから引き出された状態において、該天板121上にセッティングされ、このセッティングの後に天板121の動作に伴って空洞部11a内に導入される。
【0024】
コンソール13は、前記架台11及び寝台12の動作等を制御する中央制御部131(図2参照)、装置使用者がこの中央制御部131にアクセスするための入力部(入力手段)137及び再構成された断層像(アキシャル像)等を表示する画像表示部(画像表示手段)138を備えている。このうち入力部137は、図1に示すように、マウス137aやトラックボール等のポインティングデバイスを備え、画像表示部138に表示された画像上の位置を入力することにより、ターゲット形状の設定・入力やアイソセンタ(後述)の位置入力等を実施することが可能である。
【0025】
装置使用者は、入力部137を介して中央制御部131に指令を発し、該中央制御部131はこれを受けて、前記X線検出器112が検知したX線情報に基づき、断層像を再構成し、これを画像表示部138に表示する。
【0026】
上記断層像を再構成するには、図2に示すデータ収集部132、前処理部133、メモリ134及び再構成部(画像生成手段)135が利用される。より詳しく、まず、データ収集部132はX線検出器112に接続されており、該X線検出器112より上記電気情報を受け取る。このデータ収集部132では、その電気情報たる出力信号が増幅器により増幅され、その増幅された信号がマルチプレクサにより前記X線検出器112における画素電極につき定められるチャンネルを単位としてシリアルに送出され、その送出された信号がA/D変換器によりデジタル信号に変換される。
【0027】
また、データ収集部132は、上記電気情報を受け取ると同時に、図2に示すように、被検体Pに関する「位相データ」を受け取る。ここで「位相データ」とは、被検体Pの呼吸状態に関するデータ、被検体Pに関する心電データ、また、被検体Pの蠕動運動に関するデータ、さらには被検体Pを載置する天板121の移動ないし位置に関するデータ等が含まれる(後に詳述)。
【0028】
前処理部133は、上記データ収集部132から送出されたデジタル信号に対し、適当なキャリブレーション処理を実施してこれを「生の投影データ」(以下、単に「投影データ」という)とする。
【0029】
メモリ134は、上記投影データを記憶するが、その際、記憶される投影データに対しては、当該投影データの元となるX線情報がX線検出器112で収集された時点における、上記位相データが付随している。したがって、前記メモリ134においては、投影データとともに、それに対応する位相データが記憶される。
【0030】
再構成部135は上記メモリ134より投影データを受け取り、この投影データに基づき、被検体Pに関する断層像を再構成する。そして、この再構成部135に接続された画像表示部138において、上記再構成された断層像が表示される。なお、投影データから断層像を再構成する際には、例えば、複数の上記スライス位置の各別に該当する断層像を、当該スライス位置の各別に関する投影データに基づき再構成することができるし、また、複数の(あるいは、隣接する)スライス位置を「1つ」の投影データとして扱い、当該投影データに基づいた断層像再構成を行うこともできる。なお、図2に示す二次記憶装置136は、このように再構成された断層像に関するデータ(画像データ)や、上記投影データ等を、場合に応じて記憶する。その具体的構成としては、例えば周知のハードディスク等を採用すればよい。
【0031】
ここで、本第一実施形態におけるX線CT装置1においては、上記断層像再構成及びその表示に関し、次のような構成ないし機能を備えている。
【0032】
(透視モード機能)
上記したX線管球111及びX線検出器112は、図示しないスリップリングを介して電気的に接続されており、これにより、X線管球111とX線検出器112とは、被検体Pの周囲を連続回転しながら、1枚の断層像の再構成に要す被検体Pに関する多方向のX線情報を、連続的に収集することができる(以下、このようなX線CT装置1の運転ないし運用に係る態様を、「透視モード」という)。
【0033】
このような「透視モード」によるX線CT装置1の運用によれば、例えば同一スライス位置ないしスライス幅における上記投影データを連続的に取得し、その断層像を画像表示部138において連続的に表示することが可能となる。そして、この断層像の連続的表示によれば、例えば被検体Pに投与した造影剤の流入あるいは流出による断層像の変化を時々刻々追跡すること等が可能となる。なお、このような手法は、いわゆる「ダイナミックスキャン」と呼称されることで知られる。
【0034】
また、別の例としては、X線管球111及びX線検出器112の上記連続回転に同期させて、上記天板121を移動することで、被検体Pに関するスライス位置を螺旋状に変更しつつ上記投影データを取得して、被検体Pの(体軸方向に関する)広範囲に亘った断層像を得ることも可能である。なお、このような手法は、いわゆる「ヘリカルスキャン」と呼称されることで知られる。
【0035】
(マルチ・スライス機能)
本第一実施形態におけるX線CT装置1においては、上記X線管球111及びX線検出器112が被検体P周囲を一回転するのみで、上記スライス位置を複数規定し得る機能を備えている(マルチ・スライス機能)。これは、X線管球111から発するX線の、被検体Pに対する「スライス幅」を所定の間隔を有するように規定し、これを二次元的に配列された前記画素電極を有するX線検出器112により検出することによって実現される。ちなみに、上記スライス幅を所定の間隔とするためには、例えばX線管球111に対し、図示しないコリメータを設けることにより実現することができる。
【0036】
これによれば、ある特定の時間における、被検体Pの複数箇所に関する断層像を、一挙に取得することが可能となる。そしてまた、本第一実施形態においては、このように得られた複数の断層像を、画像表示部138において並列的に表示(マルチ・フレーム表示)することが可能である。つまり、画像表示部138を、上記取得される断層像の数に対応するよう所定のフレームに分割し、これら各フレームについて、上記複数の断層像の一々を表示し得る。このようにすることで、画像表示部138上において、ある特定の時間における複数の断層像を一時に確認することができる。
【0037】
さらに、本第一実施形態においては、上記したX線管球111及びX線検出器112の連続回転を行いつつ(「透視モード」運転を行いつつ)、いま述べたマルチ・スライス処理による断層像再構成及びその表示を実施することも可能である。この場合においては例えば、ある所定のスライス幅に関し、上記「ダイナミックスキャン」による断層像再構成を行えば、画像表示部138上における複数の断層像の各々が、「シネ映像」的に変化しながら表示されることになる。
【0038】
さて次に、放射線治療装置2について説明する。放射線治療装置2は、回転架台21、これを支持する回転支持台22及び被検体Pが載置される治療台23から構成されている。回転架台21は、図1に示すように、その断面が略L字状の立体であり、該L字の一端にはX線を被検体Pに対して照射する照射ヘッド211を備えている。照射ヘッド211には、図示しない電子加速器や対電子線ターゲット等が内設されている。被検体Pに照射されるX線は、前記電子加速器により加速された電子が、前記対電子線ターゲットに照射されることで発生する(以下、X線発生に関与する上記電子加速器及び対電子線ターゲット等からなる構成を、単に「線源」という)。
【0039】
照射ヘッド211にはまた、上記発生したX線を被検体Pに対してどのような領域で照射するかを規定する、多分割原体絞りの構造を有したマルチ・リーフ・コリメータが備えられている。これは、二組のリーフ群を構成する複数の板状リーフが、各別に、かつ、その長さ方向であって対向する方向又は離反する方向に移動することにより、X線の照射領域を任意に規定することが可能である。また、照射ヘッド211は、図1に示す矢印E2に示すように回動可能部位を有し、前記マルチ・リーフ・コリメータの角度(ないし回転)位置の調整を通して、X線照射領域の調整を行うことも可能となっている。
【0040】
回転支持台22は、上述したように略L字状となる立体である前記回転架台21における、前記照射ヘッド211を備えない方の腕21aを、図1に示すように、回動軸221によって回転可能に支持する。なお、この回動軸221の軸線と前記照射ヘッド211の回転軸の軸線とが交差する点が、この放射線治療装置2上における「アイソセンタ」に該当する。
【0041】
治療台23は、X線CT装置1に備えられていた寝台12と略同様、体軸方向(図1中矢印A2の方向)に移動可能とされた天板231が備えられているとともに、図1中矢印C2に示すように、上下動が可能である。また、この治療台23は、図1中矢印D2に示すように、天板231の中心を軸とした回転動等が可能となっている。
【0042】
以上説明したX線CT装置1及び放射線治療装置2は、図1に示すように、信号線3によって互いに接続されている。X線CT装置1において取得された断層像等に基づき策定される放射線治療計画ないしそのシミュレート結果等は、前記信号線3を介して、放射線治療装置2に設けられる又は同装置2とは別途に設けられる照射条件記憶装置(不図示)に転送され、該放射線治療装置2はこれに基づき、被検体Pに対する放射線照射を実施する。
【0043】
以下では、上記構成例となる本第一実施形態の放射線治療計画装置についての作用効果に関する説明を、図3及び図4に示すフローチャートに沿って行う。なお、以下では、上記X線CT装置1を「透視モード」により運転するとともに、マルチ・スライス処理を実施し、かつ、マルチ・フレーム表示を実施する場合についての作用態様を、具体的な一例として説明することとする。
【0044】
まず、X線CT装置1により、放射線治療計画を策定するに必要な断層像を取得する。これは、上記X線管球111及びX線検出器112を、被検体P周囲に関して回転させるとともに、図3ステップS1にあるように、上記X線管球111から発せられたX線を被検体Pに曝射し透過させる。この透過したX線は、当該被検体P内における臓器等の存在・不存在により、その透過する部位に応じて吸収の多寡が生じる。上記X線検出器112では、このような強度分布の存在するX線情報、つまり被検体P内部の情報を含むX線情報が検出・取得される。なお、本第一実施形態におけるX線の被検体Pに対する曝射は、図5に概念的に示すように、複数のスライス位置▲1▼〜▲6▼により規定される、所定のスライス幅SWをもって行われるものとする(マルチ・スライス機能)。
【0045】
そして、X線管球111及びX線検出器112による被検体P周囲の回転により、上記スライス幅に関し、上記X線情報が多方向で取得され、これらがX線検出器112における上記画素電極において電気情報に変換された後、図3ステップS2にあるように、該電気情報がコンソール13内におけるデータ収集部132に送信される。
【0046】
このとき、データ収集部132においては、図3ステップS2に併せて示すように、被検体Pに関する「位相データ」が、前記電気情報とともに受信される(図2参照)。この位相データは、当該電気情報の元となるX線情報がX線検出器2で検知された時点における被検体Pに関する呼吸データ及び心電データ、並びに当該被検体Pを載置する寝台12ないし天板121の移動ないし位置に関するデータ(以下、単に「天板データ」という)等である。
【0047】
ここで、本第一実施形態においてはより具体的に、呼吸データ及び心電データとが、図6に概念的に示される関係を有する場合につき、これを「位相データ」として扱う。図6において、曲線Bは被検体Pに関する呼吸曲線を示し、その極大点BPは当該被検体Pが空気を一杯に吸い込んだ状態、その極小点BQは当該被検体Pが空気を一杯に吐き出した状態であることを意味している。そして、これら極大点BP及び極小点BQを挟む、(あるいはこれら極大点BP及び極小点BQから始まる)一定の期間は、当該被検体Pが呼吸を止めている期間であり、それぞれが呼気フェーズPP及び吸気フェーズPQに該当する。また、これら呼気フェーズPP及び吸気フェーズPQの期間中においては、図6に併せて示すように、各々に対応する心電図が取得される。
【0048】
そして、本第一実施形態における「位相データ」とは、上記した呼気又は吸気フェーズPP又はPQのいずれかを表象するデータΦBと、これら各フェーズPP又はPQの各期間につき計測される心電図において、当該心電図上の任意の時点における一点として規定される心電データΦHとから構成されるものである(図2参照)。
【0049】
例えばいま、呼気フェーズPPに関して説明すると、被検体Pが空気を一杯に吸い込んだ状態を保持している(呼吸を止めている)期間内に、心電図は各波(P波,…,U波)を記録するが、その一周期中(又は複数周期中)、被検体Pに関するX線情報は逐次収集されることになる。すなわち、図6に示すように、心電図上における最初のR波から次のR波までの間(図ではR1波からR2波間)における、各点Z1、Z2、…、Znの各時点において、図5に示したスライス位置▲1▼〜▲6▼に関するX線情報が逐次収集される。そして、これら各点Z1、Z2、…、Znの各々に対応する「位相」は、「呼気又は吸気フェーズPP又はPQの別」(=ΦB)及び「心電図上の位置」(=ΦH)を規定することにより一義的に定まり、これが「位相データ」となる。
【0050】
より具体的に例えば、点Z1において、スライス位置▲1▼〜▲6▼に関するX線情報が取得されるときには、当該X線情報に対応する位相データZ1は、「『呼気フェーズ』(=ΦB(Z1))における、『心電データR1波の頂点(を記録する時点)』(=ΦH(Z1))」なる形式として与えられることになる。
【0051】
なお、この説明から明らかなように、本第一実施形態における「位相」を規定する一周期は、心電図の一周期がそれに該当することになる。また、上記において、位相データは、呼気又は吸気フェーズPP又はPQの別(=ΦB)、及び心電図上の位置(=ΦH)、に関する両データにより構成されるとしたが、当該位相データにはこれらに加え、潜在的には、上記「天板データΦT」をも含むものと考えることができる。というのも、例えば被検体Pの頭部に関しスライス位置を定める場合と、胸部に関し定める場合とでは、その「位相が異なる」と考えることができるからである。
【0052】
本第一実施形態では、上記した図5に示すようなスライス位置▲1▼〜▲6▼に関するX線情報を取得するから、当該X線情報には概ね「腹部」なる「位相」が対応することになり、またより正確には、上記「天板データΦT」を用いることにより、当該「腹部」に関する「位相データ」を一義的に規定することができる。なお、このようなことは、天板121がX線管球111によるX線曝射に同期して移動ないし停止、あるいは連続移動するヘリカル・スキャンを実施する場合において、より明らかに該当する。このような場合における被検体Pのスライス位置の変化は、まさしく「位相データ」として捕らえ得るからである。
【0053】
なおまた、図6に示したような各点Z1、Z2、…、Znの間隔をどのようにとるかは本発明において基本的に任意であるが、一般的に言えば、上記X線管球111及びX線検出器112におけるデータ収集性能、より具体的には、その回転速度や回転数等により制約され得る。
【0054】
さて、上記データ収集部132において受信された電気情報は次に、図3ステップS3にあるように前処理部133に送信され、ここで適当なキャリブレーション処理を受けて「投影データ」となる。そして、この投影データは、図3ステップS4にあるように、それに付随する前記位相データとともに、メモリ134に逐次記憶されていく。後は、当初に予定した取得予定の投影データすべてを収集すればデータ収集処理を終了し、収集されていなければX線管球111及びX線検出器112等によるデータ収集をさらに続行する(図3ステップS6)。
【0055】
以上のように「投影データ」が取得・記憶されつつある状況において、上述した「透視モード」における刻々変化する断層像の再構成及びその表示は、例えば次のように行われる。すなわち、図3ステップS5及び図4ステップT1にあるように、上記X線管球111及びX線検出器112の連続回転中、メモリ134において逐次記憶されていく投影データに関し、少なくとも1枚の断層像を再構成するに必要な投影データが当該メモリ134に順次蓄積される毎に、これを再構成部135へと送出する(あるいは、メモリ134から読み出す)。これにより、X線検出器2によりX線情報が取得されてから一定時間の経過の後に、被検体Pに関するリアルタイムな断層像の再構成及びその表示(確認)を行うことができる。
【0056】
また、本第一実施形態における断層像の表示は、図4ステップT2にあるように、同一位相データに関する断層像の再構成(つまり、同一位相データが付随する投影データに基づく断層像の再構成)が完了し次第行うようになっている。いまの場合においては、図5に概念的に示したように、複数のスライス位置▲1▼〜▲6▼に関するX線情報が一挙に取得されるから、同一位相と判断される断層像は6枚存在することになる。さらに、これら6枚の断層像がX線管球111及びX線検出器112の一回転により取得されるとするならば、当該一回転の度毎に、異なる位相データを有する6枚の断層像が取得されることになる。したがって、上記した「同一位相データに関する断層像の再構成が完了し次第」とは、これら6枚の断層像の再構成が完了し次第ということであり、その表示は、当該再構成が完了した後に行われることになる。また、この表示は、画像表示部138上を6つのフレームに分割し、これら各フレームについて上記6枚の断層像の一々が対応するように行われる(マルチ・フレーム表示、図4ステップT3)。
【0057】
以上のことから結局、本第一実施形態における断層像の再構成及びその表示は、図7に示すように、画像表示部138上の6つのフレームが、同一位相における被検体Pの6箇所に対応する断層像D1、…、D6(上記スライス位置▲1▼〜▲6▼に対応)を表示するとともに、当該6つの断層像D1、…、D6は、いわゆる「シネ映像」的な画像(断層像)を連続的に表示するものとなる。このシネ映像的に表示される画像は、すなわち位相データの相違に応じた断層像ということになる。
【0058】
図7においては、このような事情が概念的に示されており、現時点で表示されているある位相データZθに関する6枚の断層像D1、…、D6の「裏」には、次なる位相データZθ +1に対応する6枚の断層像が控えており、これらの再構成が終了し次第、当該次なる位相データZθ +1に対応する断層像が、位相データZθの6枚の断層像D1、…、D6に代わり、表示されることになる。
【0059】
なお、上記したデータ収集処理(図3)及び断層像最構成及びその表示処理(図4)は、上記説明から明らかなとおり、並行して実施されることになる。また、上記したような「透視モード」において、X線管球111及びX線検出器112の連続回転数を何回とするか、あるいは上記「少なくとも1枚の断層像を再構成するに必要な」投影データをどのように定義するか、等は本発明において基本的に自由である。例えば、連続回転数は「50回」とし、1枚の断層像を再構成する投影データは、「被検体Pに関する全角度(0〜360°)」又は「その半分の角度(0〜180°)」に関し取得された投影データとする、等とすればよい。ただ、上記「連続回転数」については、上記X線管球111の耐熱性能、また、被検体Pに対する被曝量を可能な限り少なくしなければならないという要請から、一般的に好適な上限が存在する。
【0060】
以上のようにして、再構成された断層像D1、…、D6が画像表示部138において表示される状態に至ると、装置使用者は、入力部137を用いて病変部(目標部位)に対する二次元的なターゲット形状の設定及びその修正を行うことが可能となる。なお、いまの場合においては、「透視モード」によるシネ映像的な断層像表示がなされているから、装置使用者は、変化しつつある断層像(図7参照)に対するターゲット設定等を行うことが可能である。先に参照した図4において、ターゲット設定に係るルーチンが併せて示されているのは、このような事情を示唆している。
【0061】
まず、図4ステップU1に示すように、画像表示部138上の前記6つのフレーム、つまり、同一位相における被検体Pの複数箇所に関する断層像D1、…、D6のうちから、ターゲットを設定しようとする任意のフレームないし断層像を選択する。図7では、そのような例として、下段かつ最左端に示されるフレームないし断層像D4が選択された場合が示されている(図において、「縁取り」表示した)。
【0062】
次に、図4ステップU2に示すように、上記選択された断層像D4に基づき、病変部Tに対するターゲット形状STを設定・入力する。この設定・入力は、入力部137を構成する上記ポインティングデバイス等を用いることにより実施され、当該断層像D4上における病変部Tの外縁を囲むような形状(=ターゲット形状)を作成することにより行われる。
【0063】
このような設定・入力の最中、あるいは当該設定・入力を終えると、図4ステップU2及びステップT3が連係されていることからわかるように、そのターゲット形状STは、上記選択された断層像D4上に重畳表示される。
【0064】
一方、断層像D1、…、D6は、上述したように、図3ステップS5及び図4ステップT1乃至T3に則って、位相データZθ、Zθ +1、…に関し更新されている状況にある。そして、上記設定・入力したターゲット形状は、このような更新される断層像上においても重畳表示される。
【0065】
このようなことから、装置使用者は、自身が設定・入力したターゲット形状STが、異なる位相における断層像上においても「正当性」を有するか否かを容易に確認することができる。つまり、病変部Tは、その位置ないし形状が位相の変化に応じて一般に変化するが、そのような変化は断層像が逐次更新されることにより確認することができ、かつ、当該更新されていく各々の断層像上には自身が設定・入力したターゲット形状STが重畳表示されるから、当該変化する病変部Tと固定されたターゲット形状STとを比較することにより、後の放射線治療が効果的に実施し得るか否かを判断することができるのである。
【0066】
具体的には、例えば図8に示すようなものとなる。この図において、図8(a)に示す当初に設定した断層像D4(位相データZθ)上のターゲット形状STは、その他の如何なる位相データZα、Zβ及びZγにおける断層像上においても、そのまま重畳表示される。
【0067】
図8(b)に示す位相データZαに関する断層像において、その病変部T1は、位相データZθにおける断層像の病変部Tよりも小さくなっていることがわかる。したがって、当初に設定したターゲット形状STは未だ正当性を有しており、このままであっても放射線治療は効果的に実施し得ることが推測される。
【0068】
一方、図8(c)に示す位相データZβに関する断層像の病変部T2は、その大きさは図8(a)における病変部Tのそれと変化はないが、その位置を変じたものとなっている。したがって、病変部T1は、ターゲット形状STの囲む領域からはみ出しており、このままでは放射線治療を効果的なものとすることが期待できない。よって、このような場合においては、ターゲット形状STそのものの修正か、あるいはターゲット形状STの表示位置に関する修正が必要となる。なお、この修正は、既に説明した図4ステップU1乃至U2に則って行うようにすればよい。
【0069】
また、図8(d)に示す位相データZγに関する断層像の病変部T3は、その大きさが、図8(a)における病変部Tのそれに比べて大きくなっていることがわかる。したがって、この場合においても、図8(b)と同様、病変部T3がターゲット形状STの囲む領域からはみ出しており、かつ、修正が必要な場合であるといえる。この修正は、ターゲット形状STそのものの修正によるのが好ましいだろう。
【0070】
なお、図8(b)のような場合には修正は必要ないとしたが、病変部T1近傍に、放射線照射を行いたくない、あるいは放射線に対して高感受性を有する正常な臓器・組織(例えば甲状腺や眼球)等が存在する場合等には、当該修正を行うようにしてよいし、むしろ積極的に修正するのが好ましいと考えられる。
【0071】
以下、図7における断層像D4の他、残る5つのフレーム上で表示されている断層像D1乃至D3、D5及びD6上においても、上記と全く同様な操作を実施すればよい。なお、上記のような修正操作を実施する際には、装置使用者が、図7に示す各位相データZθ、Zθ +1、Zθ +2、…に関する断層像の切り換えを、入力部137を用いて任意に行うことができれば、操作上の利便性はより高まる。このようにすれば、例えば位相データZθ +4に関する断層像について設定・入力したターゲット形状STが、位相データZθに関する断層像においても正当であるかを即座に確認することができるからである。
【0072】
このようにして、ターゲット形状STについての設定・入力及びその修正が、すべての位相データZに関する断層像に関し、好ましいものとなるよう最終的に完了したら、図4ステップU3に示すように、これを確定する。そして、この確定されたターゲット形状STに係る情報は、放射線治療装置2に設けられる、又は同装置2とは別途に設けられる照射条件記憶装置(不図示)に対し、上記各断層像D1乃至D6の情報及び/又は位相データZの情報とともに送信され記憶される。
【0073】
以上説明したように、本第一実施形態における放射線治療計画装置によれば、異なる位相、すなわち被検体Pの呼吸、心拍等に応じて変化する病変部Tの位置・形状等に対し、その二次元的なターゲット形状の設定・入力を正確に行うことができる。また、これに伴い、当該二次元的なターゲット形状の設定に基づく、病変部Tに関するVOI設定も、上記位相変化に応じた、極めて正確なものとして規定し得る。結局、以降に予定される放射線治療装置2を用いた実際の治療は、緻密かつ正確に行われ得ることとなる。
【0074】
なお、上記第一実施形態では、X線CT装置1を「透視モード」により運転する場合について説明したが、本発明は、このような形態に限定されるものではない。例えば、次のような処理を実施するようにしてよい。
【0075】
まず、図3に示すデータ収集処理を予定データ数の全てについて完了するとともに、当該収集された投影データの全てに関して図4に示す再構成処理を一旦完了し、これを図2に示す二次記憶装置136に記憶する。次に、この記憶された断層像データに基づき、画像表示部138において、X線CT装置1が現に「透視モード」により運転されているかのようなリプレイ(再生)表示を実施する。そして、ターゲット形状STの設定・入力を、このリプレイ画像に対して行う。
【0076】
また、上記の更なる変形例として、次のような処理を実施することもできる。まず、上と同様にして、図3に示すデータ収集処理を予定データ数の全てについて完了し、この収集処理完了に係る投影データを二次記憶装置136に対して記憶させる。つまり、上記では再構成処理まで実施していたものを、投影データ収集時点で一旦作業を完了する。次に、装置使用者が入力部137を用いて、被検体Pに関する如何なる断層像を確認したいか、換言すれば、二次記憶装置136における前記投影データのいずれに関する再構成を行うかを指定する。指定する内容としては、具体的には、スライス位置や位相データとすればよい。そして、この指定に基づいて再構成された断層像を画像表示部138において表示し、後は上記と同様にターゲット形状STの設定・入力を行う。なお、位相データを指定する場合には、当該指定に係る位相データに関する断層像から、上述と同様なリプレイ表示(すなわち、シネ映像的な表示)を行うようにしてもよい。
【0077】
いずれにしても、これら記載したような手段によれば、上記と全く同様な効果が享受しうることが明らかである。また、このような形態では特に、被検体Pに対するX線CT装置1(X線管球111)によるX線曝射を所定量の1回限りで完了し、かつ、それに基づき再構成された断層像を何回でもリプレイすることができるから、被検体Pに対する被曝量増加を気にせずに、綿密な検討に基づくターゲット形状STの設定・入力が可能であるという利点を有する。これは、病変部Tの形状が複雑でターゲット設定に困難が伴う場合等には特に効果的である。
【0078】
さらに、上記ではターゲット形状STの設定・入力についてのみ言及したが、本第一実施形態においては、放射線治療計画を策定する際に通常必要となるアイソセンタ位置の指定・入力も、入力部137を介して行い得る。「アイソセンタ」は、上記したように放射線治療装置2上における回転架台21の回動軸221軸線と照射ヘッド211の回転軸軸線とが交差する点として定義されるが、放射線治療計画を立てる際には、断層像上等において、上記アイソセンタに一致すべき位置を予め規定することが通常行われる。この「一致すべき位置」の指定が、すなわち「アイソセンタ位置」の指定にあたる。実際の放射線治療は、基本的に、この指定されたアイソセンタ位置を放射線治療装置2上のアイソセンタに合致させて行われることになる。
【0079】
図7のスライス位置▲3▼においては、断層像D3上において指定されたアイソセンタ位置を符号ICにより表している。ちなみに、このアイソセンタ位置ICは、例えば病変部Tの中心部や当該病変部Tに最も近い体軸上に設定される。
【0080】
また、この図においては、当該アイソセンタ位置ICと、断層像D3上で仮想的に想定される放射線治療装置2における線源の位置とを結ぶ線分Lが描画され、また、当該線源から発生するX線の前記マルチ・リーフ・コリメータによる照射領域の規定状態を表す治療線錐La及びLbが描画されている。なお、線源の仮想位置は、例えば「照射角度」の指定によって定められる。
【0081】
そして、本第一実施形態においては、このようなアイソセンタ位置IC及び線分L並びに治療線錐La及びLbについても、異なる位相に対応して時々刻々変化する断層像を確認しながら、その修正ないし調整を実施することが可能である。これによっても、より緻密な放射線計画の策定に資することとなるのは言うまでもない。
【0082】
なお、上記第一実施形態では、マルチ・スライス処理を実施し、かつ、マルチ・フレーム表示を実施する形態となっていたが、本発明はこのような形態に特にこだわるものではない。すなわち、本発明の趣旨は、要すれば、異なる位相間で変化する病変部Tに対し、適格に対応した放射線治療計画を策定することにあるから、マルチ・スライス処理又はマルチ・フレーム表示の実施が必須であるわけではなく、これらを実施しない形態であっても、上記したと同様な効果を享受し得る。
【0083】
また、上記第一実施形態では、マルチ・フレーム表示における各フレームは、スライス位置▲1▼〜▲6▼に応じた断層像D1乃至D6を表示するような形態となっていたが、これに代えて、当該各フレームに対し、同一スライス位置の、異なる位相に関する断層像を表示するような形態も容易に実現できる。すなわち、この場合においては、一時に、異なる位相データZθ、Zθ +1、Zθ +2、…の断層像を確認することが可能となる。また、このような場合、異なるスライス位置に関する断層像は、図7に示したのと同様な思想により、「表示切り換え」で対応すればよい。
【0084】
さらに念のため、上記では断層像の表示に際し、同一位相に関する断層像の再構成が終了し次第、当該表示を行う形態となっていたが(図4ステップT2参照)、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、1フレーム分の断層像再構成が完了したら、即座にその表示を行うような形態としてよい。
【0085】
以下では、本発明の第二の実施形態について説明する。本第二実施形態では、上記第一実施形態において、ターゲット形状の設定・入力及びその修正を、断層像(いわゆるアキシャル像)上で行っていたところ、透過像(DRR(Digitally Reconstructed Radiograph)像)を用いて実施する点で異なる。したがって、以下ではこの点について詳しく説明する。なお、残余の放射線治療計画装置に関する構成、また、X線CT装置1については「透視モード」による運転がなされ、かつ、マルチ・スライス処理が実施される場合を想定すること等については、上記第一実施形態と同様とし、その説明を省略することとする。
【0086】
まず、透過像につき簡単に説明する。透過像とは、その字義通り被検体Pをある点から臨んだ際に観察される、当該被検体Pを透過視した像のことである。これをより概念的に、図5に示したスライス位置▲1▼〜▲6▼ないしスライス幅SWに則して示すと、図9のようなものとなる。この図において、まず、複数の断層像D1乃至D6を並べるとともに、それらの各間隙Gについては図中前後の断層像におけるCT値に基づき、適当な補間処理をなす。すると、これら断層像D1乃至D6群は、被検体Pの上記スライス幅SWに該当する箇所を反映した、立体的に構成される画像データ群(CT値群)とみなすことができる。これがボクセルデータBDである。
【0087】
次に、放射線治療装置2における線源Iの位置すべき点を、上記ボクセルデータBD周囲において仮想的に定め、当該線源Iから伸び、かつ、ボクセルデータBD内を貫く複数の線分LLを想定する。このような線分LL上には、それら各々がボクセルデータBD内を貫く部位及び範囲に対応して、複数のCT値が存在することを観念できる。そして、これら線分LLの各々には、上記対応するCT値の加算値が固有に帰属される。なお、上記線源Iに関する仮想的な定位は、第一実施形態中、アイソセンタICに関する説明時に述べたように、照射角度の設定等を通じて実施される。
【0088】
そして、上記ボクセルデータBD周囲において、ある面Fを想定し、ここに到達する上記線分LLの各々に帰属されたCT加算値を面F上に展開すれば、これを新たな画像データとして作成することができる。これが、透過像DFである。ちなみに、このような透過像DFの作成は、図2に示す中央制御部131によって実施される。
【0089】
本第二実施形態においては、このような透過像DFを、異なる位相に関し作成・取得する。すなわち、図7を参照しつつ言えば、位相Zθにおける断層像D1乃至D6(上記スライス位置▲1▼〜▲6▼に対応)を用いて、上記したような透過像DF(zθ)を作成するとともに、その他の位相Zθ +1、Zθ +2、…における断層像を用いた透過像DF(zθ +1)、DF(zθ +2)、…をも作成する。
【0090】
このような透過像作成処理は、例えば図10に示すフローチャートに則って行われる。まず、当該処理前におけるデータ収集処理及び断層像再構成処理までは、図3及び図4を参照して説明したのと全く同様に実施される。そして、図10ステップV1においては、図4ステップT1における断層像再構成が完了し次第、透過像DFの作成に着手する。この際、透過像DFの作成条件、すなわち線源Iの仮想位置(≒照射角度)や面Fの位置等については、予め入力部137により中央制御部131に指示しておく。また、再構成された断層像は図2に示す二次記憶装置136に順次蓄積していくようにし、透過像DFの作成開始は、中央制御部131が上記蓄積の様子をモニターすることにより決定する。以下は、このような処理を、同一位相データに関する複数の断層像についての透過像作成が完了するまで続行する(図10ステップV2参照)。
【0091】
上記のような処理ではつまり、データ収集処理(図3)、断層像再構成処理(図4)及び透過像作成処理(図10)は、各々並列的に(いわばパイプライン的に)実施されることになる。より詳しくは、これら各処理を、例えば図11に示すようなタイミングチャートに則って行うようにするとよい。
【0092】
この図11において、最上段のラインはデータ収集処理の流れを表しており、当該データ収集は、常時、行われていることがわかる。これは、上で述べたように、X線CT装置1が「透視モード」により運転されているからに他ならない。そして、このデータ収集において、「少なくとも1枚の断層像を再構成するに必要な投影データ」が、図2のメモリ134において蓄積されたら(図3ステップS5)、当該投影データを再構成部135に転送する。
【0093】
図11における中段のラインは断層像再構成処理の流れを表しており、上記したように、投影データが転送され次第(点G1、G2、…)、その再構成処理を開始する(図4ステップT1)。いまの場合、図5に従えば、スライス位置▲1▼〜▲6▼に関する投影データについては一挙に取得されるから、例えばまずスライス位置▲1▼における投影データに関する断層像再構成処理が開始されることになる。図11では、このような事情を、断層像D(zθ,▲1▼)なる記号で表している。
【0094】
そして、図11における最下段のラインは透過像作成処理の流れを表しており、上記断層像再構成処理が1枚でも完了し次第(点H1、H2、…)、透過像DFの作成処理を開始する(図10ステップV1参照)。例えば、上述した断層像再構成処理において断層像D(zθ,▲1▼)の再構成が完了すると、当該位相Zθにおける透過像DF(zθ)の作成を開始することになる。なお、透過像DFの作成は、上述したように複数枚の断層像に基づいて実施されるものであるから、いま説明した作成処理は、透過像DF(zθ)の「一部」についてのみに関するものとなる。
【0095】
次に、図11中段のラインで、次なる断層像D(zθ,▲2▼)(スライス位置▲2▼)の再構成が完了すると、上記と同様にして、さらに透過像DF(zθ)の一部に関する作成を開始する。後は、位相データZθに関するすべての断層像に関し、各々対応する透過像DF(zθ)の一部が作成されたら、これらを重畳し、最終的に当該位相データZθに関する完全な断層像DF(zθ)を取得する(図10ステップV2参照)。以下、続く位相データZθ +1、Zθ +2、…についても全く同様な処理がなされる。
【0096】
なお、図から明らかなとおり、断層像再構成に必要な時間は、透過像作成に必要な時間に比べて一般に長い。したがって、図11に示したタイミングチャートに代えて、例えば同一位相に関する断層像再構成を全て完了した後に、透過像DFの作成を一挙に実行するような形態としてもよい。その他、種々のタイミングチャートを想定することができるが、本発明はこの点に関し特にこだわるものではない。
【0097】
以上のようにして、位相データZθ、Zθ +1、Zθ +2、…に関する完全な透過像DF(zθ)、DF(zθ +1)、DF(zθ +2)、…が作成されると、当該作成の完了毎に、画像表示部138において、これら透過像DF(zθ)、DF(zθ +1)、DF(zθ +2)、…が順次表示される(図10ステップV3)。つまり、最初の透過像DF(zθ)の作成が完了したらその表示を行い、次の透過像DF(zθ +1)の作成が完了したら、従前の透過像DF(zθ)の表示に代えて、当該透過像DF(zθ +1)の表示を行うようにする。このように表示される透過像DFの群は、各位相における被検体Pないしその病変部の状態変化に応じたものとなる。
【0098】
そして後は、これら透過像DFの群に対して、ターゲット形状(照射野形状)の設定・入力及びその修正を行うようにすればよい。それに関する操作ないし作業は、図10からも明らかなとおり、上記第一実施形態と同様である(図10ステップU1´乃至U3´)。つまり、設定・入力されたターゲット形状は、透過像DF上に重畳表示され、かつ、異なる位相に関する透過像DFの表示に切り替わる際にも、上記設定・入力されたターゲット形状はそのまま重畳表示される。
【0099】
以上説明したように、本第二実施形態においても、上記第一実施形態において享受し得た効果と全く同様な効果を奏することができる。すなわち、位相に応じて変化する病変部の位置・形状等に対し、そのターゲット形状の設定・入力及び修正を正確に行うことができる。
【0100】
なお、上記第二実施形態についても、上記第一実施形態において補足的に説明した各事項が同様に当てはまる。つまり、X線CT装置1については、これを必ずしも「透視モード」で運転する必要がないこと、このような場合(つまり、いわばバッチ的な処理を実施するような場合)においては、上述したようなリプレイ表示を応用してターゲット形状の設定・入力及び修正を行うことが可能であること、また、ターゲット形状の設定等とともに、アイソセンタ位置の設定・入力及びその修正を実施することが可能であること、マルチ・スライス処理の実施は必ずしも必要がないこと等は、本第二実施形態においても全く同様である。
【0101】
また特に、上記第二実施形態においては、透過像DF(zθ)、DF(zθ +1)、DF(zθ +2)、…は、それらの作成が完了し次第、順次表示されるようになっていたが、これに代えて、これら透過像DF(zθ)、DF(zθ +1)、DF(zθ +2)、…を、上記第一実施形態において説明したようなマルチ・フレーム表示する形態としてもよい。この場合、従来の技術の項において、概念図として参照した図13のような表示形態となる。さらに、透過像DFの作成条件(線源Iの位置、面Fの位置等)は、様々に変更可能であるから、入力部137を用いて適宜異なる透過像DF´(zθ)、DF´(zθ +1)、DF´(zθ +2)、…群を作成し、それらに応じたターゲット形状の設定・入力を実施することも当然に本発明の範囲内である。
【0102】
なお、上記第一及び第二実施形態を通じてターゲット形状が設定された後は、放射線治療装置2が上記照射条件記憶装置に記憶された当該情報を参照し、回転架台21の回転角度、あるいは治療台23の位置の決定、また、照射ヘッド211におけるマルチ・リーフ・コリメータの調整による照射領域に関する設定等を行い、放射線治療を実際に行うことになる。
【0103】
また、上記第一及び第二実施形態における放射線治療計画装置においては、放射線照射の対象となる病変部Tの形状等を特定することに主眼があったが、場合によっては、既述したような正常組織やX線に対する高感受性領域を、「非照射領域」として設定・入力するような機能を併せ持っていてもよい。その設定・入力は、上記したターゲット形状STの設定・入力と全く同様に実施し得る。
【0104】
さらに、上記第一及び第二実施形態においては、ターゲット形状STを一つのみ設定・入力する場合について説明したが、例えば病変部が複数存在する場合や、病変部の大きさが比較的大きい場合等、当該複数の病変部の各々に対応するターゲット形状を設定したり、当該大きい病変部に対しそれを分割するような複数のターゲット形状を設定するようにしてもよい。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の放射線治療計画装置によれば、被検体の呼吸、心拍、また天板ないし寝台の動作に応じて変化する病変部の位置・形状等を正確に反映した設定を行うことができ、もってより緻密かつ正確な放射線治療を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る放射線治療計画装置の構成例を示す概要図である。
【図2】図1に示す放射線治療計画装置を構成するX線CT装置において、断層像再構成に関与する要素を示すブロック図である。
【図3】データ収集処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】断層像再構成処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第一実施形態における被検体に対するX線曝射の様子(マルチ・スライス機能)を示す説明図である。
【図6】第一実施形態における「位相データ」の概要を示す説明図である。
【図7】断層像のマルチ・フレーム表示の様子を示す説明図である。
【図8】位相に応じて変化する断層像上に、設定・入力したターゲット形状が重畳表示されている様子を示す説明図であって、(a)は病変部形状とターゲット形状とがほぼ一致している場合、(b)は病変部の大きさがターゲット形状の大きさに比べて小さい場合、(c)は病変部の位置が変じた場合、(d)は病変部の大きさがターゲット形状の大きさに比べて大きい場合、を各々示している。
【図9】第二実施形態に関する透過像の作成原理を概念的に示す説明図である。
【図10】透過像作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】データ収集処理、断層像再構成処理及び透過像作成処理に関するタイミングチャートである。
【図12】従来例における断層像上のターゲット形状設定の様子を示す説明図であって、(a)は呼気フェーズにおける断層像について、(b)は吸気フェーズにおける断層像についてのものである。
【図13】従来において透過像上のターゲット形状設定の様子を示す概念図である。
【符号の説明】
P 被検体
1 X線CT装置
11 架台
111 X線管球
112 X線検出器
12 寝台
121 天板
13 コンソール
131 中央制御部
132 データ収集部
133 前処理部
134 メモリ
135 再構成部(画像生成部)
136 二次記憶装置
137 入力部(入力手段)
138 画像表示部(画像表示手段)
2 放射線治療装置
3 信号線
PP 呼気フェーズ
PQ 吸気フェーズ
Zθ、Zθ +1、Zθ +2、…、Zα、Zβ、Zγ 位相データ
T 病変部
ST ターゲット形状
D1〜D6、D(zθ,▲1▼)、D(zθ,▲2▼)、… 断層像
IC アイソセンタ位置
L 線源とアイソセンタ位置とを結ぶ線分
La、Lb 治療線錐
DF、DF(zθ)、DF(zθ +1)、… 透過像
Claims (7)
- 被検体にX線を曝射することにより取得される画像に基づいて放射線治療の計画を策定する放射線治療計画装置において、
前記被検体の呼吸状態に関するデータ、及び、前記被検体に関する心電データを含む位相データの相違に応じた複数の画像を生成する画像生成手段と、
前記画像に対し、当該画像上に存在する目標部位に対するターゲット形状を設定・入力する入力手段と、
前記位相データの相違に応じた複数の画像及び前記ターゲット形状を重畳表示する画像表示手段とを有し、
前記画像生成手段は、前記被検体の呼吸状態に関する呼気の期間又は吸気の期間における前記心電データの1周期内の位相の相違に応じた複数の画像を、前記位相データの相違に応じた複数の画像として、生成することを特徴とする放射線治療計画装置。 - 前記位相データは、前記画像の取得時において前記被検体が載置される寝台上の天板の位置に関するデータを含むことを特徴とする請求項1記載の放射線治療計画装置。
- 前記画像表示手段は、前記位相データの相違に応じた複数の画像の各々を、当該位相の順に応じ連続的に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線治療計画装置。
- 前記画像表示手段はマルチ・フレーム表示機能を有し、
前記被検体の複数箇所に関する画像の各々を、複数のフレームの各々に対応させて表示するとともに、
前記位相データの相違に応じた複数の画像の各々を、前記フレームの各々において当該位相の順に応じ連続的に表示することを特徴とする請求項1記載の放射線治療計画装置。 - 前記画像生成手段は、前記画像を生成するに必要な前記被検体に関するデータが収集され、一定期間経過後に、当該画像を生成することを特徴とする請求項3又は4記載の放射線治療計画装置。
- 前記画像は、前記被検体に関するアキシャル像又はDRR像であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の放射線治療計画装置。
- 前記画像生成手段は、前記計画の策定の前に行われる前記X線の曝射に対応して取得される画像データと前記被検体に関する位相データを基に、前記被検体の複数の位置について同一時点の位相データであって、各前記位置毎に異なる複数の時点における前記位相データに対応した前記画像を生成し、
前記画像表示手段は、各前記位置毎に前記複数時点における各位相データに対応した前記画像と、入力手段によって設定・入力される前記放射線治療の対象範囲を示すターゲット形状であって前記各位相データに対応した前記画像に共通のターゲット形状を重畳表示するとともに、前記入力手段により前記目標部位が含まれるように前記ターゲット形状が修正されて表示されることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療計画装置。
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