JP4729183B2 - 塗装ガン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速回転させた回転霧化頭から遠心力によって塗料を霧化しつつ吐出するようにした塗装ガンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速回転させた回転霧化頭から遠心力によって塗料を霧化しつつ吐出するようにした塗装ガンは、回転霧化頭の先端面にベル状凹部を形成するとともに、回転霧化頭の内部に塗料溜まりを形成し、さらに塗料溜まりからベル状凹部に連通する複数の吐出孔を同心状に配し、塗料溜まり内の塗料が、遠心力により吐出孔を通ってベル状凹部のテーパ状をなす内周を伝いつつそのベル状凹部の開口縁から前方へ放射状に噴出するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような回転霧化頭を有する塗装ガンにおいて小型化を図る場合、回転霧化頭が小径化されて、吐出孔の配置円の径も小さくなるため、その小径化に対応するためには、各吐出孔は、その口径を小さくせずに数を少なくするか、若しくは数を減らさずに口径を小さくする必要がある。
しかしながら、吐出孔の数を減らした場合と口径を小さくした場合のいずれにおいても、複数の吐出孔の全体としての開口面積が小さくなるため、塗料は吐出孔を通過し難くなる。そのため、塗料溜まり内の塗料が、吐出孔とは反対側にあって通常は塗料が侵入しない隙間(回転霧化頭を回転させるための軸と軸受との隙間や、回転霧化頭を回転させるためのエアタービン部の隙間)へ侵入してしまう虞がある。
【0004】
本願発明は上記事情に鑑みて創案され、回転霧化頭を小型化した場合に、塗料溜まり内の塗料が、吐出孔とは反対側にあって通常は塗料が侵入しない隙間へ侵入するのを防止することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、先端部がテーパ状内周面を有する凹部とされているとともに、内部に塗料溜まりが形成され、さらに前記塗料溜まりから前記凹部に連通する複数の吐出孔が同心状に配された回転霧化頭を備え、この回転霧化頭を回転させることによって発生する遠心力により、前記塗料溜まり内の塗料を、前記吐出孔を通して前記テーパ状内周面を伝わせつつその凹部の先端縁から前方へ放射状に噴出させるようにした塗装ガンにおいて、前記吐出孔を、互いに径が異なる複数の同心状の配置円に沿って形成し、内周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔の前記塗料溜まり側の開口を、外周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔の前記塗料溜まり側の開口よりも前記回転霧化頭の径方向内側に設け、外周側の前記吐出孔の穿孔方向、及び、内周側の前記吐出孔の穿孔方向は、前記塗料溜まり側から前記凹部側に向かって外広がりとなったテーパ状の向きとなっており、前記回転霧化頭の回転中心線に対する内周側の前記吐出孔のテーパ方向の角度は、外周側の前記吐出孔のテーパ方向の角度と同じ角度とされている構成とした。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、外周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔と、内周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔とは、互いに周方向にずれた千鳥配置とされている構成とした。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記凹部の内面における前記吐出孔の開口縁部に、外方へ向けてテーパ状に拡径する拡径部が形成されている構成とした。
【0007】
【発明の作用及び効果】
[請求項1の発明]
吐出孔を一重の配置円に沿って配置する形態を変えずに回転霧化頭を小型化しようとすると、吐出孔の開口径を小さくするか、吐出孔の数を減らさざるを得ないのである。これに対し、本発明では、吐出孔を複数の配置円に沿って配置したので、回転霧化頭を小径化するに際しては、吐出孔の開口径を小さくする必要も、また吐出孔の数を少なくする必要もない。したがって、吐出孔全体としての開口面積が小さくならずに済み、塗料が吐出孔を通過するときの流動抵抗が増大せずに済む。これにより、塗料溜まり内の塗料が、吐出孔とは反対側にあって通常は塗料が侵入しない隙間へ侵入してしまうことが防止される。
【0008】
[請求項2の発明]
外周側の吐出孔と内周側の吐出孔とを周方向にずらして配置したので、凹部のテーパ状内周面上においては、内周側の吐出孔から吐出した塗料流と、外周側の吐出孔から吐出した塗料流とが、互いに重ならずに相手側の塗料流の隙間を埋めるようになり、霧化状態を不安定にする原因となる周方向における塗料の切れ目が減少又は消失する。
[請求項3の発明]
吐出孔の開口縁部にテーパ状の拡径部を形成したので、吐出孔から吐出した塗料流は凹部のテーパ状内周面上で拡散され、霧化状態を不安定にする原因となる周方向における塗料の切れ目が減少又は消失する。
【0009】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図3を参照して説明する。
本実施形態の塗装ガンは静電塗装用のものであって、合成樹脂製のガン本体10の内部には、高電圧発生装置11と、回転霧化頭25に塗料を供給するための塗料供給管12が固定して設けられている。塗料供給管12の先端部は、ガン本体10の前端部に設けた回転霧化頭25用の収容凹部13内に臨んでおり、また、塗料供給管12の後端部には開閉弁14が設けられている。
【0010】
また、回転霧化頭25を回転させるための中空の回転軸15が、塗料供給管12を貫通させた形態でエア軸受16によって回転自由に支持されている。即ち、回転軸15は、ベアリングエア流路17に連通するエア軸受16のラジアルノズル18から回転軸15の外周に対して径方向内向きに吐出される加圧エアによって径方向に支持されているとともに、ベアリングエア流路17に連通するエア軸受16のスラストノズル19から回転軸15の後端のフランジ20に対して軸方向に挟むように吐出される加圧エアによって軸方向に支持されている。この回転軸15に向けて吐出された軸受用の加圧エアは、エア軸受16の内周と回転軸15の外周との間の僅かな隙間を通り、回転霧化頭25の収容凹部13内に噴出される。
【0011】
また、回転軸15はエアタービン21によって高速で回転駆動されるようになっている。即ち、回転軸15の後端部にはタービン翼車22が一体回転可能に固着され、タービンエア流路23に連通するタービンノズル24からタービン翼車22の外周のルーバーに向けて吐出される加圧エアにより、タービン翼車22が回転軸15と一体となって高速で回転駆動される。このタービン翼車22に向けて吐出されるエアタービン用の加圧エアは、タービン翼車22の内周と塗料供給管12の外周との間、及び回転軸15の内周と塗料供給管12の外周との間を通って回転霧化頭25の収容凹部13へ噴出される。
【0012】
回転軸15の前端部には、回転霧化頭25が収容凹部13内に収容された状態で回転軸15と一体に回転するように且つ回転軸15と同軸状に固着されている。回転霧化頭25について説明すると、その先端部にはテーパ状内周面27を有する凹部26が形成され、内部には、隔壁28によって凹部27と区画された塗料溜まり29が形成されており、この塗料溜まり29には塗料供給管12の前端部が臨んでいる。隔壁28には、塗料溜まり29から凹部26に連通する複数の吐出孔30A,30Bが、回転霧化頭25と同心の配置円に沿って形成されている。
【0013】
回転霧化頭25をエアタービン21によって高速回転させると、その回転によって発生する遠心力により、塗料溜まり29内の塗料が、そのテーパ状の誘導面31を伝い、吐出孔30A,30Bを通り、凹部26のテーパ状内周面27上を塗料流32A,32Bとなって伝い、凹部26の先端縁から前方へ放射状に噴出するようになっている。
吐出孔30A,30Bは、上記のように回転霧化頭25と同心の配置円に沿って一定ピッチで複数形成したものであるが、本実施形態では、互いに同心であり且つ互いに径の異なる2つの仮想的な配置円(図示せず)に沿った配置となっている。換言すると、各吐出孔30A,30Bは、その円の中心を夫々の配置円上に位置させるように配置されているのである。
外周側の配置円に沿って形成した吐出孔30A(以下、外周側の吐出孔30Aという)は、その塗料溜まり29から凹部26に至る全領域に亘って径を一定とした円形をなす。また、これらの外周側の吐出孔30Aは全て同じ径寸法となっている。これらの吐出孔30Aの穿孔方向(即ち、吐出孔30Aから吐出される塗料流32Aの飛行方向)は、その後端側(塗料溜まり29側)から前端側(凹部側)に向かって外広がりとなったテーパ状の向きとなっている。また、回転霧化頭25の軸線(回転中心線)に対する外周側の吐出孔30Aのテーパ方向の角度は、塗料溜まり29のテーパ状の誘導面31及び凹部26のテーパ状内周面27の傾斜角度とほぼ同じ角度となっている。
【0014】
一方、内周側の仮想的な配置円に沿って形成した吐出孔30B(以下、内周側の吐出孔30Bという)も、その塗料溜まり29から凹部26に至る全領域に亘って径を一定とした円形をなす。これらの内周側の吐出孔30Bは全て同じ径寸法であり、この径寸法は外周側の吐出孔30Aと同じ寸法となっている。これらの内周側の吐出孔30Bの穿孔方向は、その後端側(塗料溜まり29側)から前端側(凹部側)に向かって外広がりとなったテーパ状の向きとなっており、回転霧化頭25の軸線(回転中心線)に対する内周側の吐出孔30Bのテーパ方向の角度は、上記外周側の吐出孔30Aのテーパの角度と同じ角度とされている。
【0015】
また、外周側の吐出孔30Aの数と内周側の吐出孔30Bの数は、互いに同じ数とされているが、双方の吐出孔30A,30Bは、互いに周方向にずれていて、正面から見ると千鳥配置となっている。この外周側の吐出孔30Aと内周側の吐出孔30Bのずれ角度は、吐出孔30A,30Bの周方向のピッチ角度の半分の寸法とされている。したがって、隣接する外周側の吐出孔30A同士の中間位置に、内周側の吐出孔30Bが配置されていることになる。
【0016】
吐出孔を一重の配置円に沿って配置する形態を変えずに回転霧化頭を小型化しようとすると、吐出孔の開口径を小さくするか、吐出孔の数を減らさざるを得ないのであるが、本実施形態においては、吐出孔30A,30Bを外周側と内周側の2つの配置円に沿って振り分けて配置したので、回転霧化頭25を小径化するに際し、吐出孔30A,30Bの開口径を小さくする必要も、吐出孔30A,30Bの全体としての数を減す必要もない。したがって、吐出孔30A,30B全体としての開口総面積が小さくならずに済み、塗料が吐出孔30A,30Bを通過するときの流動抵抗が増大せずに済む。これにより、塗料溜まり29内の塗料が、エア軸受16の軸受用の加圧エアが流れる隙間やエアタービン用の加圧エアが流れる隙間(吐出孔30A,30Bとは反対の後側にあって通常は塗料が侵入しない隙間)へ侵入してしまうことが防止される。
【0017】
また、吐出孔を一重の配置円に沿って配置したものでは、塗料の全体の吐出量を少なく設定した場合に、各吐出孔を通過する塗料の量が少なくなり、その結果、飛行中に塗料が乾燥してしまうことが懸念されるのであるが、本実施形態では、吐出孔30A,30Bを外周側と内周側とに振り分けたので、全ての吐出孔30A,30Bを少量の塗料が通過するのではなく、塗料が外周側の吐出孔30Aのみを通過することになる。即ち、この外周側の吐出孔30Aの1つ1つにおいて通過する塗料の量は少なくならないので、塗料が飛行中に乾燥してしまうことが防止される。
【0018】
また、本実施形態では、外周側の吐出孔30Aと内周側の吐出孔30Bとを周方向にずらして配置したので、凹部26のテーパ状内周面27上においては、図3に示すように、内周側の吐出孔30Bから吐出した塗料流32Bと、外周側の吐出孔30Aから吐出した塗料流32Aとが、互いに重ならずに相手側の塗料流32A,32Bの隙間を埋めるようになり、周方向における塗料の切れ目が殆どない。尚、実際には塗料流32A,32Bは湾曲した軌跡を描くのであるが、図3においては、便宜上塗料流32A,32Bを直線的に描いてある。
【0019】
[実施形態2]
次に、本発明を具体化した実施形態2を図4及び図5を参照して説明する。
本実施形態2の回転霧化頭40は、上記実施形態1のものにおいて、外周側の各吐出孔41Aと内周側の吐出孔41Bの全てについて、その凹部26側の開口縁部に外方(前方)へ向けて、換言すると塗料の吐出方向に向かってテーパ状に拡径する拡径部42A,42Bを形成したものである。このようにテーパ状の拡径部42A,42Bを形成したので、塗料は吐出孔41A,41Bから吐出する際に周方向に広がり、凹部26のテーパ状内周面27上においては、塗料流43A,43Bが吐出孔41A,41Bの内径寸法よりも幅広に拡散した状態となる。したがって、外周側の吐出孔41Aから吐出した塗料流43Aと内周側の吐出孔41Bから吐出した塗料流43Bとが周方向において互いに部分的な重なり合い、塗料流43A,43Bの切れ目が確実に消失している。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。尚、図5においては、便宜上、拡径部42A,42Bを一部の吐出孔41A,41Bのみについて描いたが、これは一部の吐出孔41A,41Bについて拡径部42A,42Bを省略したものであり、本実施形態2では全ての外周側の吐出孔41Aと全ての内周側の吐出孔41Bに拡径部42A,42Bが形成されている。
【0020】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では吐出孔を2重の配置円に沿って配置したが、本発明によれば、配置円は3重以上設けてもよい。
(2)上記実施形態では外周側の配置円に沿って配置された吐出孔と、内周側の配置円に沿って配置された吐出孔とを、互いに周方向にずれた千鳥配置としたが、本発明によれば、外周側の吐出孔と内周側の吐出孔とを周方向において同じ位置となるように(径方向において重なるように)配置してもよい。
【0021】
(3)上記実施形態ではベル状凹部の内面における吐出孔の開口縁部に、外方へ向けてテーパ状に拡径する拡径部を形成したが、本発明によれば、このような拡径部を形成しない構成としてもよい。
(4)上記実施形態1では外周側の吐出孔と内周側の吐出孔とを同じ半径としたが、本発明によれば、双方の半径を互いに異なる寸法としてもよい。
(5)上記実施形態2では外周側の吐出孔と内周側の吐出孔とがそのテーパ状の拡径部よりも後方部分の半径が同じ寸法であるようにしたが、本発明によれば、双方の半径を互いに異なる寸法としてもよい。
【0022】
(6)上記実施形態1では吐出孔がその全長に亘って一定の径寸法としたが、本発明によれば、吐出孔の径寸法がその全長に亘ってテーパ状に変化するような形態としてもよい。
(7)上記実施形態2では吐出孔におけるテーパ状の拡径部よりも後方部分が一定の径寸法であるようにしたが、本発明によれば、吐出孔の径寸法がその全長に亘ってテーパ状に変化するような形態としてもよい。
(8)上記実施形態では配置円を共通とする吐出孔同士の間では径が互いに同じ寸法としたが、本発明によれば、配置円を共通とする吐出孔同士の間で径寸法が互いに異なるようにしてもよい。
【0023】
(9)上記実施形態では吐出孔の断面形状を真円としたが、本発明によれば、吐出孔の断面形状は楕円形や長円形などの他の形状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の塗装ガンの断面図
【図2】回転霧化頭の拡大断面図
【図3】回転霧化頭の正面図
【図4】実施形態2の回転霧化頭の拡大断面図
【図5】回転霧化頭の正面図
【符号の説明】
25…回転霧化頭
26…凹部
27…テーパ状内周面
29…塗料溜まり
30A…吐出孔
30B…吐出孔
40…回転霧化頭
41A…吐出孔
41B…吐出孔
42A…拡径部
42B…拡径部
Claims (3)
- 先端部がテーパ状内周面を有する凹部とされているとともに、内部に塗料溜まりが形成され、さらに前記塗料溜まりから前記凹部に連通する複数の吐出孔が同心状に配された回転霧化頭を備え、この回転霧化頭を回転させることによって発生する遠心力により、前記塗料溜まり内の塗料を、前記吐出孔を通して前記テーパ状内周面を伝わせつつその凹部の先端縁から前方へ放射状に噴出させるようにした塗装ガンにおいて、
前記吐出孔を、互いに径が異なる複数の同心状の配置円に沿って形成し、
内周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔の前記塗料溜まり側の開口を、外周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔の前記塗料溜まり側の開口よりも前記回転霧化頭の径方向内側に設け、
外周側の前記吐出孔の穿孔方向、及び、内周側の前記吐出孔の穿孔方向は、前記塗料溜まり側から前記凹部側に向かって外広がりとなったテーパ状の向きとなっており、
前記回転霧化頭の回転中心線に対する内周側の前記吐出孔のテーパ方向の角度は、外周側の前記吐出孔のテーパ方向の角度と同じ角度とされていることを特徴とする塗装ガン。 - 外周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔と、内周側の前記配置円に沿って配置された前記吐出孔とは、互いに周方向にずれた千鳥配置とされていることを特徴とする請求項1記載の塗装ガン。
- 前記凹部の内面における前記吐出孔の開口縁部に、外方へ向けてテーパ状に拡径する拡径部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の塗装ガン。
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