JP4714768B2 - 二次電子増倍素子を使用した測定方法及び二次電子増倍素子を使用した装置 - Google Patents

二次電子増倍素子を使用した測定方法及び二次電子増倍素子を使用した装置 Download PDF

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Description

本発明は、真空圧の測定、質量分析や試料の表面状態の分析に使用される二次電子増倍素子の感度を補正する方法及び二次電子増倍素子を使用した真空成膜装置やアッシング装置等の真空処理装置に関する。
従来、各種の真空処理装置、例えば、スパッタリング装置、真空蒸着装置、CVD装置、MBE装置などの真空成膜装置、或いは、アッシング装置、イオン注入装置、酸化拡散装置には、電離真空圧力計、4極子形質量分析計などの真空圧力計や、オージェ電子分光(AES)、X線光電子分光(XPS)、紫外光電子分光(UPS)、電子損失分光(EELS)などの表面分析装置が取り付けられており、半導体、液晶などの生産品の品質の維持と向上に重要な役割を担っている。
このような真空圧力計や表面分析装置には、イオン、電子の荷電粒子を中性粒子や励起中性粒子、軟X線等の光と共に発生させる生成部と、これら粒子が測定管や試料と衝突して発生するイオン、電子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線等の光を捕捉して増幅する二次電子増倍素子とが設けられ、該二次電子増倍素子には入射したイオン、電子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線等の光により生じる二次電子の個数等を検出して真空圧力や表面状態を測定する測定器が接続される。該二次電子増倍素子には、連続増倍式のセラトロン、チャンネルトロン、多段式増倍管などが使用されており、微量なイオン、電子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線等の光の計測に利用されている。これらの素子は、その表面が二次電子を放出しやすいベリリウム酸化物、マグネシウム酸化物、セラミック半導体などの材料で作られており、これに入射するイオンや電子の荷電粒子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線等の光などを電子に変換し、さらに増幅するもので、非常に少ない電流値の測定に好都合である。表面分析装置や、真空圧力計などでは、測定対象となる表面や空間に、イオンや電子の荷電粒子、中性粒子、光などを入射させ、放出された荷電粒子、中性粒子、光などを測定している。通常は荷電粒子、中性粒子、光などのうちの必要なものを測定し、その他のものはノイズの原因となるために、何らかの方法で取り除いている。
特開昭63−167254号公報 特開平5−325879号公報
近年、半導体や液晶などの品質を更に向上させる要望を満足したり、新しい製品の開発のために、表面分析装置や真空圧力計の定量的な測定が求められているが、従来の真空圧力計では、環境や使用時間により、その状態が変化しやすく、正確な定量測定をするためには、測定系を1〜3ヶ月間隔で校正する必要がある。その原因は、二次電子増倍素子が、その表面に水、酸素、水素などが吸着したり、温度、湿度などの環境の変化、動作電圧の変化などによって、その検出効率や増幅率が大きく変化するためであり、そのままでは正確な測定を行えない。頻繁に該素子を校正すればその正確さを維持できるが、そのためには使用中の真空処理装置等を停止して該素子を取り出し、新たに校正装置に取り付ける作業を行うので、時間と費用がかかる欠点があった。
本発明は、二次電子増倍素子の測定系を使用中に再校正することなく正確な測定を維持できる方法を提供すること及び二次電子増倍素子の感度の校正のために運転が停止されることがない真空処理装置を提供することを目的とするものである。
本発明では、真空中に設けた二次電子増倍素子の設置初期に軟X線による強度を測定した初期強度値Aと、該素子の測定使用中に測定した該軟X線の強度値Bとの比A/Bを、該素子で測定される荷電粒子等の粒子の測定値に補正係数として乗ずることにより、測定を停止して測定系を校正することなく正確な測定を行え、上記した目的が達成される。本発明の手段は、真空圧の測定及び表面分析に有効に適用でき、真空処理装置に設けた電子、イオン、中性粒子及び励起中性粒子などの強度を計測する計測装置にこの補正を実行する演算装置を設けることにより、該処理装置を効率良く運転できる。
以上のように本発明によるときは、二次電子増倍素子の設置初期に軟X線による強度を測定した初期強度値Aと、該素子の測定使用中に測定した軟X線による強度値Bとの比A/Bを、該素子の測定強度値に補正係数として乗ずるようにしたので、該二次電子増倍素子を使用状態のまま簡単にその感度の変化を補正することができ、実際にその補正のために要する時間はごく短いので本来の測定を殆ど妨げない等の効果があり、二次電子増倍素子を使用する各種の計測装置に適用でき、真空処理装置の運転効率を向上させることができる効果がある。
本発明の実施の形態を図面に基づき説明すると、図1は極高真空中に設けられてその真空圧を測定する極高真空用電離真空計に本発明を適用した実施例を示すもので、これに於いて符号1は円筒電極2を介して対向するイオン生成部3とイオン検出部4とで構成された真空測定部、5、5は該円筒電極2の両端に設けた円盤電極である。
該イオン生成部3は、例えばPtクラッドMo線で作成され、両端部が開放された直径約12mm、長さ約15mmの筒形グリッドの集電子電極6と、加熱用電源7からの直流電流で加熱される該集電子電極6の外部側方に設けたWフィラメントからなる熱陰極型の電子ビーム源8とで構成した。該円筒電極2はベッセルボックス(Bessel-Box)型のエネルギーフィルターと称されるもので、該集電子電極6の中心軸線に合致して設けられ、該円筒電極2の内部には、該イオン生成部3からイオンや電子の荷電粒子と共に放出される光や中性粒子、高速のイオン、軟X線を除去するために、円盤電極5に形成したイオン導入用の穴5aよりも直径がやや大きい円盤形の邪魔板9を設け、これに該円筒電極2と同電位を与えるようにした。
該イオン検出部4は、図示のようなチャンネルトロン、或いはセラトロン、マルチチャンネルプレート(MCP)などの二次電子増倍素子で構成され、図示の例ではラッパ状に拡がる二次電子増倍素子4の入口部分4bに直流高圧電源10により負の高電圧を印加し、二次電子増倍素子4の出口部4aからの出力をプリアンプ11を介してパルスカウンターの計測装置12に接続した。該二次電子増倍素子4は、内面が二次電子を放出しやすいベリリウム酸化物、マグネシウム酸化物、セラミック半導体などの物質で形成され、その内部に入射した電子、イオン、励起中性粒子、光は表面に衝突して2個以上の電子に変換され、更にその電子が表面と衝突を重ねる度に2個以上の電子に増倍される。各円盤電極5の前方又は後方に、アース電位のイオン引出電極13、13を設けるようにした。
該集電子電極6は、例えば10Vの第1直流電源14と例えば100Vの第2直流電源15を介してアースに接続し、該集電子電極6と電子ビーム源8との間に該第2直流電源15の電位差を与え、該電子ビーム源8が発生する熱電子を該集電子電極6内へ吸引するようにした。また、該円筒電源16を介してアースに接続し、該円筒電極2及び邪魔板9と円盤電極5との間にバイアス電源17により例えば225Vの電位差を与えるようにした。
以上の構成は、従来の二次電子増倍素子を備えた真空圧力計の構成と同様であり、該真空測定部1を真空中に設け、電子ビーム源8を加熱すると、これにより発生する熱電子が集電子電極6の円筒内に集まり、そこに存在する気体分子に衝突して気体イオンが生成され、そのイオンはイオン引出電極13により円筒電極2を介してイオン検出部4の二次電子増倍素子4の入口部分4bへと導かれる。該二次電子増倍素子4内でイオンの入射による電子が増幅され、パルスカウント法或いは直流法により計測装置12によりそのイオン強度(イオン電流)が計測され、これを圧力に換算することにより真空圧が測定される。
該二次電子増倍素子4は、前記したようにその表面が二次電子を放出しやすいベリリウム酸化物等の材料で作られており、そこに水、酸素、水素などが吸着したり、温度、湿度などの環境の変化や動作電圧が変化することなどが原因で、その検出効率や増幅率が大きく変化してしまい、正確な測定を行うにはその測定を停止して測定系の校正が必要になるが、本発明によれば、該二次電子増倍素子4を設置して使用開始する初期、即ちその表面が新鮮であるうちに、該イオン生成部3から放射される軟X線の光だけが該二次電子増倍素子4へ入射する条件のときの初期強度値Aを測定し、この値を真空圧の測定中に該光だけが該二次電子増倍素子4に入射する条件での強度値Bを該増倍素子4で測定してその比A/Bを求め、この値を補正係数として該素子4で測定した荷電粒子等の粒子の測定強度値に乗じることで、該素子4の検出効率や増幅率が変化しても正確な測定が行える。
これを更に説明すると、イオン生成部3では電子ビーム源8から加速放出される熱電子の衝撃により集電子電極6内の気体分子が電離し、測定目的物となる気体イオンが生成されるが、これと同時に該集電子電極6の表面が熱電子で衝撃されて軟X線の光が放出される。この光が直接或いは円筒電極2内で反射して二次電子増倍素子4に入射すると、光電効果により二次電子がその内部で放出され、これが測定目的のイオン以外の擬似的なイオン電流として計測される。この軟X線による擬似的なイオン電流強度は、真空容器内の真空圧力には依存せず、測定には雑音であって取り除かれるべきものであるが、図2に見られるように真空圧力計の感度すなわち二次電子増倍素子4の表面状態に直線的に比例するものであることが分かった。本発明は、この現象を利用して二次電子増倍素子4の表面状態等の変化で測定感度が変化する不都合を解消するもので、まず、真空圧力の測定可能な状態に或いは後記のような表面分析可能な状態に二次電子増倍素子4を設置した初期に、可変の直流電源16を調整して測定系の各電極3、9の電位を変え、該素子4にイオンが入射せず軟X線が入射するように制御すると、イオン生成部3で発生する光が該素子4に入射し、該光の強度が初期強度値Aとして測定できる。そして、イオン生成部3からイオンを該素子4へ導き、該素子4内で増幅される二次電子をパルスカウント法などにより計測し、圧力に換算して通常の真空圧力測定や表面分析などの測定を行う。測定環境や時間の経過で該素子4の検出効率や二次電子増幅率が変化するため、感度が変化して測定の正確さが失われてくるが、その測定中の適当な時期に該直流電源16を調整して該素子4にイオンが入射せず軟X線が入射するように制御すると、この時点に於ける軟X線の強度を測定することができる。その強度値Bと初期強度値Aの比A/Bは感度の比であり、これを補正係数としてそれ以後にイオンを入射させて真空圧力を測定したときの測定強度値に乗ずれば、感度の変化を補正した正確な真空圧力を求めることができる。この強度値Bは、電源16の電圧を一時的に変化させるだけで測定でき、補正係数を測定強度値に乗ずる演算は演算装置18を計測装置12に付設して行えるから、従来のように感度が変化した二次電子増倍素子を取り外して感度の再校正をする必要がなく、時間と費用が節約できる。尚、強度値Bは真空圧の測定に支障をもたらさない適当な時間をおいて頻繁に行うことが望ましい。
二次電子増倍素子はオージェ電子分光型、X線光電分光型、紫外光電子分光型、電子損失分光型、電子損失分光型などの表面分析法にも使用され、この場合も二次電子増倍素子の感度が変化すると正確な分析を行えなくなる不都合がある。表面分析の方法は、図3に示すように、真空中に置かれた試料19の表面にイオン生成部20から加速したイオン、電子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線を衝突させ、該表面からその衝撃で放出されるイオン、電子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線などの光を二次電子増倍素子21で捕捉して分析する方法で、この方法に於いて、該素子21の表面が新鮮な設置初期に、イオン生成部20から放射された或いは別個に設けた粒子源から軟X線を該表面に向けて放射し、初期強度値Aを計測しておく。このあと本来の表面分析、即ちイオン生成部20から該表面へイオン、電子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線などの光を衝突させ、該表面から放射されるイオン、電子、中性粒子、励起中性粒子、軟X線を該素子21に入射させて表面分析する。そして、この表面分析中に、イオン生成部20を軟X線を該表面に向けて照射するように一時的に調整するか、或いは別個に設けた光源から軟X線を該表面に向けて照射し、該素子21でその時点に於いて検出できる測定強度Bを計測し、前記と同様にA/Bの補正係数を求め、その後に行われる表面分析の測定強度値にその補正係数を乗じることにより正確な表面分析が行える。尚、異なる種類の試料19を表面分析する場合、試料19を設置後、改めて表面分析を行う直前に、上記と同様の方法で初期強度値Aを測定しておき、表面分析中に同様の方法で補正係数を求めればよい。
本発明の方法は、図4に示した4極子型質量分析計の真空圧力計に適用することも可能であり、この場合は、イオンと共に軟X線を発生するイオン生成部22からイオン引出電極23によりイオンを引き出し、ロッド状の4極子24間を通過させることにより所定のイオンのみを二次電子増倍素子25へ入射させ、真空圧を測定するが、引出電極23と4極子24の電位を調整することにより、該素子25にイオン生成部22からイオンを除いて軟X線のみを入射させることができるので、前記と同様に該素子25を設置した初期と測定使用中に夫々軟X線のみを入射させて初期強度値Aと強度値Bを測定し、その比をイオンの測定強度値に補正係数として乗じることにより該素子25の感度の変化を補正して正確な真空圧を測定できる。
スパッタリング装置、真空蒸着装置、エッチング装置、アッシング装置、CVD装置、イオン注入装置、酸化拡散装置、分子線エピタキシャル装置などの真空処理装置には、製品の品質維持や品質向上のために真空圧力計や表面分析装置が組み込まれており、図1に示した構成の真空圧力計、或いは図3とこれに関連した説明に基づく表面分析装置をこのような真空処理装置に組み込むことにより、二次電子増倍素子の感度が変化しても正確な測定を行え、該真空処理装置の運転を停止することなく真空処理を続けることが可能になり、品質及び生産性を向上させることができる。図5は、ターゲット26をRF電極27に取り付け、基板28と対向して設けたスパッタリング装置に図1の構成の真空圧力計29を組み込んだ実施例であり、図6は、ヒータ30で加熱された基板31に各種元素のセルを備えた蒸発源32からの蒸発物質を蒸着する分子線エピタキシャル装置に図4の構成の4極子型質量分析計の真空圧力計33と図3及びこれに関連した説明の構成を有するオージェ電子分光表面分析装置34を組み込んだ実施例である。
真新しい二次電子増倍素子4を備えた図1の構成の極高真空用電離真空計を一定真空圧の真空空間に取り付け、その円筒電極2、円盤電極5、及び邪魔板9に接続した可変の直流電源16の電圧を走査すると、計測装置12に図7に示したイオンの強度分布が測定された。この直流電源16の電圧が約70Vのときは、真空空間の気体イオンの強度が測定できるので、真空圧力計として機能させ得る。また、その電圧を140Vに設定すると、イオン生成部3で生成されたイオンは二次電子増倍素子4に入射することがなくなり、軟X線による強度のみが測定され、その測定された値30カウント/秒を初期強度値Aとした。この後その電圧を70Vに戻し、真空空間の真空圧の測定を続け、約500時間後に再び電圧を140Vとして軟X線のみを該素子4に入射させ、測定した値20カウント/秒を強度値Bとした。このあと電圧を70Vに戻し真空圧の測定強度値に演算装置18で演算した1.5の補正係数を乗じながら約2000時間真空圧の測定を続けた。この間の測定強度値は200カウント/秒でこれを換算した真空圧は1×10-9Paで、この真空空間の設定圧と殆ど変わりがなかった。
比較のため、この空間に図1の構成の極高真空用電離真空計を取り付け、これの直流電源16を70Vに固定したまま連続約3500時間の真空圧の測定を続けたところ、パルスカウント値は当初は上記の初期強度値と同じ200カウント/秒であったが、次第に低い測定強度値を示すようになり、最後には30カウント/秒になった。真空空間の圧力は一定に維持されているので、その低下分は二次電子増倍素子の感度の変化によるものである。
本発明は、真空圧の測定、質量分析や試料の表面状態の分析に使用される二次電子増倍素子の感度補正、及び二次電子増倍素子を使用した真空成膜装置やアッシング装置等の真空処理装置に産業上大いに利用できる。
本発明の実施の形態を示す線図 二次電子増倍素子の軟X線と感度の関係を示す分布図 本発明を表面分析装置に適用した場合の説明図 本発明を4極子型質量分析計に適用した場合の説明図 本発明を適用したスパッタリング装置の切断側面図 本発明を適用した分子線エピタキシャル装置の切断側面図 本発明の初期強度値を求めるための分布図
符号の説明
2 円筒電極、3・20 イオン生成部、4・21 イオン検出部(二次電子倍増素子)、5 円盤電極、6 集電子電極、8 電子ビーム源、9 邪魔板、12 計測装置、13 イオン引出電極、16 可変の直流電源、19 試料、29・33 真空圧力計、31 基板、32 蒸発源、34 オージェ電子分光表面分析装置、

Claims (1)

  1. 真空中に設けた試料の表面に、電子、イオン、中性粒子及び励起中性粒子のいずれかの粒子を照射し、この照射で該表面から放射される電子、イオン、中性粒子、励起中性粒子のいずれかの粒子を二次電子増倍素子で捕捉してその強度を測定することにより該表面を分析する方法に於いて、該二次電子増倍素子の設置初期に該表面または該試料と同種の標準試料の表面に軟X線を照射してその放射した軟X線を該素子へ入射させて測定した初期強度値Aとして測定し、その後、電子、イオン、中性粒子及び励起中性粒子のいずれかの粒子を使用して分析を行い、分析中に該素子にイオンが入射せず軟X線が入射するように制御することにより、該素子を使用しての該試料の分析中に軟X線を照射して該素子で測定された軟X線の強度値Bを測定し、比A/Bを求め、その後の分析において該素子で分析中に測定した電子、イオン、中性粒子及び励起中性粒子のいずれかの粒子の強度値に補正係数として該比A/Bを乗ずることを特徴とする二次電子増倍素子を使用した測定方法。
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