以下、本発明の一実施形態による液体検出装置及びこの液体検出装置を備えたインクカートリッジ(液体容器)ついて図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるインクカートリッジが使用されるインクジェット式記録装置(液体噴射装置)の概略構成を示し、図1中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
キャリッジ1の記録用紙6に対向する側にはインクジェット式記録ヘッド12が搭載され、またその上部には記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ7が着脱可能に装着されている。
この記録装置の非印字領域であるホームポジション(図中、右側)にはキャップ部材31が配置されており、このキャップ部材31はキャリッジ1に搭載された記録ヘッドがホームポジションに移動した時に、記録ヘッドのノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材31の下方には、キャップ部材31により形成された密閉空間に負圧を与えてクリーニング等を実施するためのポンプユニット10が配置されている。
そして、キャップ部材31における印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えたワイピング手段11が記録ヘッドの移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されていて、キャリッジ1がキャップ部材31側に往復移動するに際して、必要に応じて記録ヘッドのノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
図2、図3A及び図3Bは、本実施形態による液体検出装置60を示した図であり、この液体検出装置60は、基板41に振動板42を積層して構成された基部40を有し、この基部40は、互いに対向する第1面40a及び第2面40bを有する。基部40には、検出対象の媒体を受け入れるための円形のキャビティ(凹部)43が、第1面40a側に開口するようにして形成されており、キャビティ43の底面部43aが振動板42にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板42全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ43によってその輪郭が規定されている。基部40の第2面40b側の両端には下部電極端子44及び上部電極端子45が形成されている。
基部40の第2面40bには下部電極(第1電極)46が形成されており、この下部電極46は、略円形の本体部46aと、この本体部46aから下部電極端子44の方向に延出して下部電極端子44に接続された延出部46bとを有する。下部電極46の略円形の本体部46aの中心はキャビティ43の中心と一致している。
下部電極46の略円形の本体部46aは、円形のキャビティ43よりも大径に形成され、キャビティ43に対応する領域の略全体を覆っている。また、この下部電極46の略円形の本体部46aには、キャビティ43の周縁43aに対応する位置よりも内側に入り込むようにして形成された切欠き部46cを含んでいる。
下部電極46の上には圧電層47が積層されており、この圧電層47は、キャビティ43よりも小径に形成された円形の本体部47aと、キャビティ43に対応する領域の範囲内において本体部47aから突出した突出部47bとを有する。図2から分かるように、圧電層47はその全体がキャビティ43に対応する領域の範囲内に収まっている。換言すれば、圧電層47は、キャビティ43の周縁43aに対応する位置を横切って延在する部分をまったく有していない。
圧電層47の本体部47aの中心はキャビティ43の中心と一致しており、圧電層47の本体部47aは、下部電極46の切欠き部46cに対応する部分を除いてその略全体が下部電極46に積層されている。
基部40の第2面40b側には補助電極48が形成されている。この補助電極48は、キャビティ43に対応する領域の外側から、キャビティ43の周縁43aに対応する位置を越えてキャビティ43に対応する領域の内部まで延在する。補助電極48の一部は、第1電極46の切欠き部46cの内部に位置して圧電層47の延出部47b及びその近傍を基板40の第2面40b側から支持している。この補助電極48は、好ましくは、下部電極46と同じ材質で且つ同じ厚さを有している。このように補助電極48によって圧電層47の延出部47b及びその近傍を基板40の第2面40b側から支持することによって、圧電層47に段差が生じないようにして機械的強度の低下を防止することができる。
圧電層47には、上部電極(第2電極)49の円形の本体部49aが積層されており、この上部電極49は、圧電層47の本体部47aよりも小径に形成されている。また、上部電極49は、本体部49aから延出して補助電極48に接続された延出部49bを有している。図3Bから分かるように、上部電極49の延出部49bと補助電極48との接続が始まる位置Pは、キャビティ43に対応する領域の範囲内に位置している。
図2から分かるように、上部電極49は補助電極48を介して上部電極端子45に電気的に接続されている。このように補助電極48を介して上部電極49を上部電極端子45に接続することによって、圧電層47及び下部電極46の合計の厚さから生じる段差を、上部電極49と補助電極48との両方によって吸収することができる。このため、上部電極49に大きな段差が生じて機械的強度が低下することを防止することができる。
上部電極49の本体部49aは円形を成しており、その中心はキャビティ43の中心と一致している。上部電極49の本体部49aは、圧電層47の本体部47a及びキャビティ43のいずれよりも小径に形成されている。
このように、圧電層47の本体部47aは、上部電極49の本体部49aと下部電極46の本体部46aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層47は効果的に変形駆動され得る。
なお、圧電層47と電気的に接続された下部電極46の本体部46aおよび上部電極49の本体部49aのうち、上部電極49の本体部49aの方が小径に形成されている。従って、上部電極49の本体部49aが、圧電層47のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
なお、液体検出装置60に含まれる部材は、互いに焼成されることによって一体的に形成されていることが好ましい。このように液体検出装置60を一体的に形成することによって、液体検出装置60の取り扱いが容易になる。
圧電層47の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。基板41の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板42には、基板41と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
圧電層47の本体部47a、上部電極49の本体部49a、及び下部電極46の本体部46aは、それらの中心がキャビティ43の中心と一致している。また、振動板42の振動可能な部分を決定する円形状のキャビティ43の中心は、液体検出装置60の全体の中心に位置している。
キャビティ43によって規定される振動板42の振動可能な部分、下部電極46の本体部46aのうちのキャビティ43に対応する部分、圧電層47の本体部47a及び突出部47b、並びに上部電極49の本体部49a及び延出部49bのキャビティ43に対応する部分は、液体検出装置60の振動部61を構成する。そして、この液体検出装置60の振動部61の中心は、液体検出装置60の中心と一致する。
更に、圧電層47の本体部47a、上部電極49の本体部49a、下部電極46の本体部46a、及び振動板42の振動可能な部分(即ちキャビティ43の底面部43aに対応する部分)が円形形状を有しており、しかも、圧電層47の全体、即ち圧電層47の本体部47a及び延出部47bがキャビティ43に対応する領域の内部に配置されているので、液体検出装置60の振動部61は液体検出装置60の中心に対して略対称な形状である。
このように本実施形態においては、キャビティ43に対応する領域の略全体を下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が従来に比べて小さくなる。また、液体検出装置60の振動部61が液体検出装置60の中心に対して対称な形状であるので、この振動部61の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。
このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制される共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置60の振動部61における残留振動の共振周波数の検出精度が向上すると共に、振動部61の残留振動の検出が容易になる。
また、キャビティ43に対応する領域の略全体をキャビティ43よりも大径の下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、製造時における下部電極46の位置ズレに起因する不要振動の発生が防止され、検出精度の低下を防止することができる。
また、硬いが脆弱な圧電層47の全体がキャビティ43に対応する領域の内部に配置されており、キャビティ43の周縁43aに対応する位置には圧電層47が存在しない。このため、従来の液体検出装置においてキャビティの周縁に対応する位置で発生していた圧電膜のクラックの問題がない。
また、振動部61と液体とが接触する範囲が、キャビティ43が存在する範囲に限られているので、液体の検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクカートリッジ7内のインクレベルを高精度にて検出することができる。
図4は、本実施形態において用いられる液体検出装置60およびその等価回路を示す。この液体検出装置60は、残留振動による共振周波数を検出することで音響インピーダンスの変化を検知して、インクカートリッジ内の液体の消費状態を検出するものである。
図4(A)および図4(B)は、液体検出装置60の等価回路を示す。また、図4(C)および図4(D)は、それぞれインクカートリッジ7内にインクが満たされているときの液体検出装置60を含む周辺およびその等価回路を示し、図4(E)および図4(F)は、それぞれインクカートリッジ7内にインクが無いときの液体検出装置60を含む周辺およびその等価回路を示す。
図2乃至図4に示される液体検出装置60は、インクカートリッジ7の容器本体の所定の場所に、キャビティ43が容器本体内に収容される液体(インク)と接触するように装着される。つまり、液体検出装置60の振動部61の少なくとも一部が容器本体の収容空間に露出している。容器本体に液体が十分に収容されている場合には、キャビティ43内およびその外側は液体によって満たされている。
一方、インクカートリッジ7の容器本体内の液体(インク)が消費され、液体検出装置60の装着位置(厳密にはキャビティ43の位置)よりも下方まで液面が降下すると、キャビティ43内に液体が存在しない状態となるか、あるいは、キャビティ43内にのみ液体が残存されその外側には気体が存在する状態となる。
液体検出装置60は、この状態の変化に起因する音響インピーダンスの相違を検出する。それによって、液体検出装置60は、容器本体に液体が十分に収容されている状態であるか、あるいは、ある一定以上の液体が消費された状態であるか、を検知することができる。
次に、本実施形態による液体検出装置60における液面検出の原理について説明する。
液体検出装置60は、液体の音響インピーダンスの変化を共振周波数の変化を用いて検出することができる。共振周波数は、液体検出装置60の振動部61が振動した後に振動部61に残留する残留振動によって生ずる逆起電力を測定することによって検出することができる。すなわち、液体検出装置60の圧電層47に駆動パルスを印加して振動部61を強制的に振動させた後に振動部61を自由振動させると、液体検出装置60の振動部61における残留振動(自由振動)により圧電層47が逆起電力を発生する。この逆起電力の大きさは、液体検出装置60の振動部61の振幅によって変化する。従って、液体検出装置60の振動部61の残留振動(自由振動)の振幅が大きいほど、逆起電力の出力の検出が容易である。
また、液体検出装置60の振動部61における残留振動の周波数によって、逆起電力の大きさが変化する周期が変わる。すなわち、液体検出装置60の振動部61の周波数は、逆起電力の周波数に対応する。ここで、共振周波数は、液体検出装置60の振動部61と、この振動部61に接する媒体との共振状態における周波数をいう。
インクカートリッジ7の容器本体内に液体(インク)が充分に収容されている場合には、液体検出装置60のキャビティ43内には液体が満たされ、振動部61はキャビティ43の底面部43aにて容器本体内の液体と接触している。一方で、容器本体内に液体が充分にない場合には、液体検出装置60の振動部61は、キャビティ43内に残った液体と接するか、あるいは、液体と接触せず、気体または真空と接触する。
ここで、図2乃至図4を参照しながら、逆起電力の測定により得られる媒体と液体検出装置60の振動部61との共振周波数から、インクカートリッジ7の容器本体内の液体の状態を検出する動作および原理について説明する。
液体検出装置60において、上部電極端子45および下部電極端子44を介して、それぞれ上部電極49および下部電極46に電圧を印加する。すると、圧電層47のうち、上部電極49および下部電極46に挟まれた部分に電界が生じる。この電界によって、圧電層47は変形する。圧電層47が変形することによって、振動板42のうちの振動領域(キャビティ43の底面部43aに対応する領域)が、たわみ振動する。圧電層47を強制的に変形させた後、しばらくは、たわみ振動が液体検出装置60の振動部61に残留する。
この残留振動は、液体検出装置60の振動部61と媒体との自由振動である。従って、圧電層47に印加する電圧をパルス波形あるいは矩形波とすることで、電圧を印加した後の振動部61と媒体との共振状態を容易に得ることができる。残留振動は、液体検出装置60の振動部61の振動であり、圧電層47の変形を伴う。このため、残留振動に伴って圧電層47は逆起電力を発生する。この逆起電力は、上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44を介して検出される。この検出された逆起電力によって共振周波数が特定できるので、この共振周波数に基づいてインクカートリッジ7の容器本体内の液体(インク)の有無を検出することができる。
一般に、共振周波数fsは、
fs=1/(2*π*(M*Cact)1/2) (式1)
で表される。ここで、Mは振動部61のイナータンスMactと付加イナータンスM’との和である。Cactは振動部61のコンプライアンスである。
図4(A)および図4(B)は、キャビティ43にインクが残存していないときの液体検出装置60の振動部61およびキャビティ43の等価回路である。
Mactは、振動部61の厚さと振動部61の密度との積を振動部61の面積で除したものであり、詳細には、図4(A)に示すように、
Mact=Mpzt+Melectrode1+Melectrode2+Mvib (式2)
と表される。
ここで、Mpztは、振動部61における圧電層47の厚さと圧電層47の密度との積を圧電層47の面積で除したものである。Melectrode1は、振動部61における上部電極49の厚さと上部電極49の密度との積を上部電極49の面積で除したものである。Melectrode2は、振動部61における下部電極46の厚さと下部電極46の密度との積を下部電極46の面積で除したものである。Mvibは、振動部61における振動板42の厚さと振動板42の密度との積を振動板42の振動領域の面積で除したものである。
ただし、Mactを振動部61の全体としての厚さ、密度および面積から算出することができるように、圧電層47、上部電極49、下部電極46および振動板42の振動領域のそれぞれの面積は、上述のような大小関係を有するものの、相互の面積の差は微小であることが好ましい。
また、本実施形態において、圧電層47、上部電極49および下部電極46においては、それらの主要部である円形の本体部47a、49a、46a以外の部分は、本体部に対して無視できるほど微小であることが好ましい。従って、液体検出装置60において、Mactは、上部電極49、下部電極46、圧電層47および振動板42のうちの振動領域のそれぞれのイナータンスの和である。また、コンプライアンスCactは、上部電極49、下部電極46、圧電層47および振動板42のうちの振動領域によって形成される部分のコンプライアンスである。
尚、図4(A)、(B)、(D)、(F)は、液体検出装置60の振動部61およびキャビティ43の等価回路を示すが、これらの等価回路において、Cactは液体検出装置60の振動部61のコンプライアンスを示す。Cpzt、Celectrode1、Celectrode2およびCvibは、それぞれ、振動部61における圧電層47、上部電極49、下部電極46および振動板42のコンプライアンスを示す。Cactは、以下の式3で表される。
1/Cact=(1/Cpzt)+(1/Celectrode1)+(1/Celectrode2)
+(1/Cvib) (式3)
式2および式3より、図4(A)は、図4(B)のように表すこともできる。
コンプライアンスCactは、単位面積に圧力をかけたときの変形によって受容できる媒体の体積を表す。すなわち、コンプライアンスCactは、変形のし易さを表す。
図4(C)は、インクカートリッジ7の容器本体に液体が十分に収容され、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が満たされている場合の液体検出装置60の断面図を示す。図4(C)のM’maxは、インクカートリッジ7の容器本体に液体が十分に収容され、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が満たされている場合の付加イナータンス(付加質量(振動領域の振動に影響を及ぼす質量)を面積の2乗で除したもの)の最大値を表す。M’maxは、
M’max=(π*ρ/(2*k3))*(2*(2*k*a)3/(3*π))/(π*a2)2 (式4)
(aは振動部の半径、ρは媒体の密度、kは波数である。)
で表される。
尚、式4は、液体検出装置60の振動部61が半径aの円形である場合に成立する。付加イナータンスM’は、振動部61の付近にある媒体によって、振動部61の質量が見かけ上増加していることを示す量である。式4からわかるように、M’maxは、振動部61の半径aと媒体の密度ρとによって、大きく変化する。
波数k は、
k=2*π*fact/c (式5)
(factは、振動部61の共振周波数である。cは、媒体中を伝播する音響の速度である。)
で表される。
図4(D)は、インクカートリッジ7の容器本体に液体が十分に収容され、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が満たされている図4(C)の場合の液体検出装置60の振動部61およびキャビティ43の等価回路を示す。
図4(E)は、インクカートリッジ7の容器本体の液体が消費され、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が無いものの、液体検出装置60のキャビティ43内には液体が残存している場合の液体検出装置60の断面図を示す。
式4は、インクカートリッジ7の容器本体に液体が満たされている場合に、インクの密度ρなどから決定される最大のイナータンスM’maxを表す式である。一方、容器本体内の液体が消費され、キャビティ43内に液体が残留しつつ液体検出装置60の振動部61の周辺にある液体が気体または真空に置換された場合等の付加イナータンスM’は、一般的に、
M’=ρ*t/S (式6)
と表せる(より詳しくは、後述の式8参照)。ここで、tは振動にかかわる媒体の厚さである。Sは、液体検出装置60の振動部61の面積である。振動部61が半径aの円形の場合は、S=π*a2である。
従って、付加イナータンスM’は、容器本体に液体が十分に収容され、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が満たされている場合には、式4に従う。一方で、液体が消費され、キャビティ43内に液体が残留しつつ液体検出装置60の振動部61の周辺にある液体が気体または真空に置換された場合には、式6に従う。
ここで、図4(E)のように、インクカートリッジ7の容器本体の液体が消費され、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が無いものの、液体検出装置60のキャビティ43内には液体が残存している場合の付加イナータンスM’を、便宜的にM’cavとし、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が満たされている場合の付加イナータンスM’maxと区別する。
図4(F)は、インクカートリッジ7の容器本体の液体が消費され、液体検出装置60の振動部61の周辺に液体が無いものの、液体検出装置60のキャビティ43内には液体が残存している図4(E)の場合の液体検出装置60の振動部61およびキャビティ43の等価回路を示す。
ここで、媒体の状態に関係するパラメータは、式6において、媒体の密度ρおよび媒体の厚さtである。容器本体内に液体が充分に収容されている場合は、液体検出装置60の振動部61に液体が接触する。一方、容器本体内に液体が充分に収容されていない場合は、キャビティ43内部に液体が残存するか、もしくは、液体検出装置60の振動部61に気体または真空が接触する。液体検出装置60の周辺の液体が消費され、図4(C)のM’maxから図4(E)のM’cavへ移行する過程における付加イナータンスM’varは、容器本体内の液体の収容状態によって媒体の密度ρや媒体の厚さtが変化することに伴って変化する。これにより、共振周波数fsも変化する。従って、共振周波数fsを特定することによって、容器本体内の液体の量を検出することができる。
ここで、図4(E)に示すようにt=dとした場合、式6を用いてM’cavを表すと、式6のtにキャビティの深さdを代入し、
M’cav=ρ*d/S (式7)
となる。
また、媒体が互いに種類の異なる液体であれば、組成の違いによって密度ρが異なるため、付加イナータンスM´及び共振周波数fsが異なる。従って、共振周波数fsを特定することで、液体の種類を検出できる。
図5Aは、インクカートリッジ7の容器本体内のインクの量とインクおよび振動部の共振周波数fsとの関係を示すグラフである。縦軸は共振周波数fsを示し、横軸はインク量を示す。
インクカートリッジ7の容器本体にインクが十分に収容され、液体検出装置60の振動部61の周辺にインクが満たされている場合には、その最大付加イナータンスM’maxは、式4に表わされる値となる。一方で、インクが消費され、キャビティ43内にインクが残留しつつ液体検出装置60の振動部61の周辺にインクが満たされていないときには、付加イナータンスM’var は、媒体の厚さtに基づいて式6によって算出される。式6中のtは、振動にかかわる媒体の厚さであるから、インクが残留する液体検出装置60のキャビティ43の深さdを小さく、即ち、基板41の厚さを十分に薄くすることによって、インクが徐々に消費されていく過程を検出することもできる(図4(C)参照)。ここで、tinkは振動にかかわるインクの厚さとし、tink−maxはM’maxにおけるtinkとする。
例えば、液体検出装置60は、インクカートリッジの底面にインクの液面に対してほぼ水平に配置される。この場合、インクが消費され、インクの液面が液体検出装置60からtink-maxの高さ以下になると、式6によりM’varが徐々に変化し、式1により共振周波数fsが徐々に変化する。従って、インクの液面がtの範囲内にある限り、液体検出装置60はインクの消費状態を徐々に検出することができる。
あるいは、液体検出装置60は、インクカートリッジの側壁にインクの液面に対してほぼ垂直に配備され得る。この場合、インクが消費され、インクの液面が液体検出装置60の振動部61に達すると、液位の低下に伴い付加イナータンスM’が減少する。これにより、式1により共振周波数fsが徐々に増加する。従って、インクの液面がキャビティ43の直径2a(図4(C)参照)の範囲内にある限り、液体検出装置60はインクの消費状態を徐々に検出することができる。
図5Aの曲線Xは、底面に配置された液体検出装置60のキャビティ43を十分に浅くした場合や、側壁に配置された液体検出装置60の振動部61を十分に大きくまたは長くした場合の、容器本体内に収容されたインクの量とインクおよび振動部61の共振周波数fsとの関係を表わしている。容器本体内のインクの量が減少するとともに、インクおよび振動部61の共振周波数fsが徐々に変化していく様子が理解できる。
より詳細には、インクが徐々に消費されていく過程を検出することができる場合とは、液体検出装置60の振動部61の周辺において、互いに密度が異なる液体と気体とがともに存在しかつ振動にかかわる場合である。インクが徐々に消費されていくに従って、液体検出装置60の振動部61の周辺において振動にかかわる媒体は、液体が減少する一方で気体が増加する。
例えば、液体検出装置60をインクの液面に対して水平に配備した場合であって、tink がtink−maxより小さいときには、液体検出装置60の振動にかかわる媒体はインクと気体との両方を含む。したがって、液体検出装置60の振動部61の面積Sを用いて、式4のM’max以下になった状態をインクと気体の付加質量で表すと、
M’=M’air+M’ink= ρair*tair/S+ρink*tink/S (式8)
となる。ここで、M’airは空気のイナータンスであり、M’inkはインクのイナータンスである。ρairは空気の密度であり、ρinkはインクの密度である。tairは振動にかかわる空気の厚さであり、tinkは振動にかかわるインクの厚さである。
液体検出装置60の振動部61の周辺における振動にかかわる媒体のうち、液体が減少して気体が増加するに従い、液体検出装置60がインクの液面に対しほぼ水平に配備されている場合には、tairが増加し、tinkが減少する。それによって、M’varが徐々に減少し、共振周波数が徐々に増加する。よって、容器本体内に残存しているインクの量またはインクの消費量を検出することができる。尚、式7において液体の密度のみの式となっているのは、液体の密度に対して、空気の密度が無視できるほど小さい場合を想定しているからである。
液体検出装置60がインクの液面に対しほぼ垂直に配備されている場合には、液体検出装置60の振動部61のうち、液体検出装置60の振動にかかわる媒体がインクのみの領域と、液体検出装置60の振動にかかわる媒体が気体のみの領域との並列の等価回路(図示せず)と考えられる。液体検出装置60の振動にかかわる媒体がインクのみの領域の面積をSinkとし、液体検出装置60の振動にかかわる媒体が気体のみの領域の面積をSairとすると、
1/M’=1/M’air+1/M’ink=Sair/(ρair*tair)+Sink/(ρink*tink)
(式9)
となる。
尚、式9は、液体検出装置60のキャビティ43にインクが保持されない場合に適用される。液体検出装置60のキャビティ43にインクが保持される場合の付加イナータンスについては、式9によるM’と式7のM’cav との和によって計算することができる。
液体検出装置60の振動部61の振動は、tink−maxの深さからインクの残留する深さdまで変化するので、インクの残留する深さがtink−maxよりわずかに小さい程度で液体検出装置60が底面に配置されている場合には、インクが徐々に減少する過程を検出することは出来ない。この場合、tink−maxから残留する深さdまでのわずかなインク量変化における液体検出装置の振動変化から、インク量が変化したことを検出する。また、側面に配置され、キャビティ43の径が小さい場合は、キャビティ43を通過する間の液体検出装置60の振動変化は微量なので、通過過程のインク量を検出することは難しく、インク液面がキャビティ43より上か下かを検出する。
例えば、図5Aの曲線Yは、振動部61が小さい円形の振動領域を形成している場合における容器本体内のインクの量とインクおよび振動部61の共振周波数fsとの関係を示す。容器本体内のインクの液面が液体検出装置60の装着位置を通過する前後におけるインク量の差Qの間で、インクおよび振動部61の共振周波数fsが激しく変化している様子が示される。このことから、容器本体内にインクが所定量残存しているか否かを2値的に検出することができるので、高精度の検出が可能となる。
このように液体検出装置60を用いて液体の有無を検出する方法は、振動部61がインクと直接接触することでインクの有無を検出するので、インクの消費量をソフトウェアによって計算する方法に比べ、検出精度が高い。更に、電極を用いて導電性によりインクの有無を検出する方法は、容器本体への電極の取付位置及びインクの種類によって影響され得るが、液体検出装置60を用いて液体の有無を検出する方法は、容器本体への液体検出装置60の取付位置及びインクの種類によって影響され難い。
更に、単一の液体検出装置60を用いて発振と液体検出との双方を実施することができるので、発振と液体検出とを異なったセンサを用いて実施する方法と比較して、容器本体に取付けるセンサの数を減少することができる。したがって、液量検出機能を持つインクカートリッジ7を安価に製造できる。なお、圧電層47の振動周波数を非可聴領域に設定することで、液体検出装置60の動作中に発生する音を静かにすることが好ましい。
図5Bは、インクの密度とインクおよび振動部61の共振周波数fsとの関係の一例を示す。ここで、「インク満」と「インク空」(或いは「インク無し」)とは相対的な2つの状態を意味し、いわゆるインクフル状態とインクエンド状態とを意味するものではない。図5Bに示すように、インク密度が高い場合、付加イナータンスが大きくなるので共振周波数fsが低下する。すなわち、インクの種類によって共振周波数fsが異なる。したがって、共振周波数fsを測定することによって、インクを再充填する際に、密度の異なったインクが混入されていないか確認することができる。つまり、互いに種類の異なるインクを収容するインクカートリッジ7を識別できる。
続いて、インクカートリッジ7の容器本体内の液体が空の状態であっても液体検出装置60のキャビティ43内に液体が残存するようにキャビティ43のサイズと形状を設定した時において、液体の状態を正確に検出できる条件を詳述する。液体検出装置60は、キャビティ43内に液体が満たされている場合に液体の状態を検出できれば、キャビティ43内に液体が満たされていない場合であっても液体の状態を検出できる。
共振周波数fsは、イナータンスMの関数である。イナータンスMは、振動部61のイナータンスMactと付加イナータンスM’との和である。ここで、付加イナータンスM’が液体の状態と関係する。付加イナータンスM’は、振動部61の付近にある媒体によって振動部61の質量が見かけ上増加していることを示す量である。即ち、振動部61の振動によって見かけ上媒体を吸収する(振動に関わるイナータンスが増加する)ことによる振動部61の質量の増加分をいう。
従って、M’cav が式4におけるM’max よりも大きい場合には、見かけ上吸収する媒体は全てキャビティ43内に残存する液体である。よって、容器本体内に液体が満たされている状態と同じである。この場合、振動に関わる媒体はM’max よりも小さくならないので、インクが消費されても変化を検出することが出来ない。
一方、M’cavが式4におけるM’ maxよりも小さい場合には、見かけ上吸収する媒体はキャビティ43内に残存する液体および容器本体内の気体または真空である。このときには容器本体内に液体が満たされている状態とは異なりM’が変化するので、共振周波数fsが変化する。従って、液体検出装置60は、容器本体内の液体の状態を検出できる。
即ち、インクカートリッジ7の容器本体内の液体が空の状態で、液体検出装置60のキャビティ43内に液体が残存する場合に、液体検出装置60が液体の状態を正確に検出できる条件は、M’cavがM’maxよりも小さいことである。尚、液体検出装置60が液体の状態を正確に検出できる条件M’max>M’cavは、キャビティ43の形状にかかわらない。
ここで、M’cav は、キャビティ43の容量とほぼ等しい容量の液体の質量イナータンスである。従って、M’max >M’cav の不等式から、液体検出装置60が液体の状態を正確に検出できる条件は、キャビティ43の容量の条件として表すことができる。例えば、円形状のキャビティ43の半径をaとし、およびキャビティ43の深さをdとすると、
M’max>ρ*d/πa2 (式10)
である。式10を展開すると
a/d>3*π/8 (式11)
という条件が求められる。従って、式11を満たす開口161の半径aおよびキャビティ43の深さdであるキャビティ43を有する液体検出装置60であれば、容器本体内の液体が空の状態であって、かつ、キャビティ43内に液体が残存する場合であっても、誤作動することなく液体の状態を検出できる。
尚、式10、式11は、キャビティ43の形状が円形の場合に限り成立する。キャビティ43の形状が円形でない場合、対応するM’maxの式を用い、式10中のπa2 をその面積と置き換えて計算すれば、キャビティ43の幅および長さ等のディメンジョンと深さの関係が導き出せる。
なお、付加イナータンスM’は音響インピーダンス特性にも影響するので、残留振動により液体検出装置60に発生する逆起電力を測定する方法は、少なくとも音響インピーダンスの変化を検出しているともいえる。
図6A および図6Bは、液体検出装置60に駆動信号を供給して振動部61を強制的に振動させた後の、液体検出装置60の残留振動(自由振動)の波形と残留振動の測定方法とを示す。インクカートリッジ7内の液体検出装置60の装着位置レベルにおける液面の上下は、液体検出装置60の圧電素子が発振した後の残留振動の周波数変化や、振幅の変化によって検出することができる。図6A および図6Bにおいて、縦軸は液体検出装置60の残留振動によって発生した逆起電力の電圧を示し、横軸は時間を示す。液体検出装置60の残留振動によって、図6A および図6Bに示すように電圧のアナログ信号の波形が発生する。次に、アナログ信号を、信号の周波数に対応するデジタル数値に変換(二値化)する。図6Aおよび図6Bに示した例においては、アナログ信号の4パルス目から8パルス目までの4個のパルスが生じる時間を計測している。
より詳細には、液体検出装置60が発振した後、予め設定された所定の基準電圧を低電圧側から高電圧側へ横切る回数をカウントする。そして、4カウントから8カウントまでの間をHighとしたデジタル信号を生成し、所定のクロックパルスによって4カウントから8カウントまでの時間を計測する。
図6Aは、液体検出装置60の装着位置レベルよりも上位に液面があるときの波形である。一方、図6Bは液体検出装置60の装着位置レベルよりも下位に液面があるときの波形である。図6Aと図6Bとを比較すると、図6Aの方が図6Bよりも4カウントから8カウントまでの時間が長いことがわかる。換言すると、液体検出装置60の装着位置レベルにおけるインクの有無によって4カウントから8カウントまでの所要時間が異なる。この所要時間の相違を利用して、インクの消費状態を検出することができる。
アナログ波形の4カウント目から数えるのは、液体検出装置60の残留振動(自由振動)が安定してから計測をはじめるためである。4カウント目からとしたのは単なる一例であって、任意のカウントから数えてもよい。ここでは、4カウント目から8カウント目までの信号を検出し、所定のクロックパルスによって4カウント目から8カウント目までの時間を測定している。この時間に基いて、共振周波数を求めることができる。クロックパルスは、8カウント目までの時間を測定する必要は無く、任意のカウントまで数えてもよい。図6A及び図6Bにおいては、4カウント目から8カウント目までの時間を測定しているが、周波数を検出する回路構成にしたがって、異なったカウント間隔内の時間を検出してもよい。
例えば、インクの品質が安定していてピークの振幅の変動が小さい場合には、検出の速度を上げるために4カウント目から6カウント目までの時間を検出することにより共振周波数を求めてもよい。また、インクの品質が不安定でパルスの振幅の変動が大きい場合には、残留振動を正確に検出するために4カウント目から12カウント目までの時間を検出してもよい。
図7は、液体検出装置60を取付モジュール体100として一体形成した構成を示す斜視図である。モジュール体100は、インクカートリッジ7の容器本体の所定個所に装着される。モジュール体100は、容器本体内の媒体の少なくとも音響インピーダンスの変化を検出することにより、容器本体内の液体の消費状態を検知するように構成されている。
本実施形態のモジュール体100は、容器本体に液体検出装置60を取り付けるための容器取付部101を有する。容器取付部101は、平面がほぼ矩形の基台102と、駆動信号により発振する液体検出装置60を収容する基台102上の円柱部116と、を有している。また、モジュール体100は、インクカートリッジ7に装着されたときに、モジュール体100の液体検出装置60が外部から接触できないように構成されている。これにより、液体検出装置60を外部の接触から保護することができる。なお、円柱部116の先端側エッジは丸みが付けられていて、インクカートリッジ7に形成された孔へ装着する際に嵌めやすくなっている。
図8は、図7に示したモジュール体100の分解図である。モジュール体100は、樹脂からなる容器取付部101と、プレート110および凹部113を有する装置装着部105(図7参照)とを含む。さらに、モジュール体100は、リードワイヤ104a及び104b、液体検出装置60及びフィルム108を有する。好ましくは、プレート110は、ステンレス又はステンレス合金等の錆びにくい材料から形成される。
容器取付部101に含まれる円柱部116および基台102は、リードワイヤ104a及び104bを収容できるように中心部に開口部114が形成されると共に、液体検出装置60、フィルム108、及びプレート110を収容できるように開口部114の周囲に凹部113が形成されている。
液体検出装置60は、プレート110にフィルム108を介して接合され、プレート110および液体検出装置60は凹部113(容器取付部101)に固定される。従って、リードワイヤ104a及び104b、液体検出装置60、フィルム108及びプレート110は、容器取付部101に一体として取り付けられる。
リードワイヤ104a及び104bは、それぞれ液体検出装置60の上部電極端子45及び下部電極端子44と結合して、圧電層47に駆動信号(駆動パルス)を伝達する一方、液体検出装置60が検出した共振周波数の信号を記録装置等へ伝達する。
液体検出装置60は、リードワイヤ104a及び104bから伝達された駆動信号に基づいて、一時的に発振する。また、液体検出装置60は、発振後に残留振動し、その振動によって逆起電力を発生させる。このとき、逆起電力波形の振動周期を検出することによって、容器本体内の液体の消費状態に対応した共振周波数を検出することができる。
フィルム108は、液体検出装置60とプレート110とを接着して、液体検出装置60を液密にする。フィルム108は、ポリオレフィン等によって形成し、熱融着で接着することが好ましい。液体検出装置60とプレート110とをフィルム108によって面状に接着して固定することにより、接着の場所によるばらつきが無くなり、振動部以外の部分が振動しない。したがって、液体検出装置60をプレート110に接着しても、液体検出装置60の振動特性は変化しない。
なお、プレート110は円形状であり、基台102の開口部114は円筒状に形成されている。液体検出装置60及びフィルム108は矩形状に形成されている。リードワイヤ104a及び104b、液体検出装置60、フィルム108及びプレート110は、基台102に対して着脱可能としてもよい。基台102、リードワイヤ104a及び104b、液体検出装置60、フィルム108及びプレート110は、モジュール体100の中心軸に対して対称に配置されている。また、基台102、液体検出装置60、フィルム108及びプレート110の中心は、モジュール体100のほぼ中心軸上に配置されている。
また、基台102の開口部114の面積は、液体検出装置60の振動領域の面積よりも大きく形成されている。プレート110の中心で液体検出装置60の振動部に直面する位置には、貫通孔112が形成されている。図2乃至図4に示したように、液体検出装置60にはキャビティ43が形成されており、貫通孔112とキャビティ43とが、共にインク溜部を形成する。プレート110の厚さは、残留インクの影響を少なくするために、貫通孔112の径に比べて小さいことが好ましい。例えば、貫通孔112の深さはその径の3分の1以下の大きさであることが好ましい。貫通孔112は、モジュール体100の中心軸に対して対称なほぼ真円の形状である。また、貫通孔112の面積は、液体検出装置60のキャビティ43の開口面積よりも大きい。貫通孔112の断面の周縁は、テーパ形状であっても良いし、ステップ形状であってもよい。
モジュール体100は、貫通孔112が容器本体の内側へ向くように、容器本体の側部、上部又は底部に装着される。インクが消費され、液体検出装置60周辺のインクがなくなると、液体検出装置60の共振周波数が大きく変化することに基づいて、インクの液位変化を検出することができる。
図9は、図7に示したモジュール体100を、インクカートリッジ7の容器本体7aに装着したときの、容器本体7aの底部近傍の断面図である。モジュール体100は、容器本体7aの側壁に形成された貫通孔に装着されている。容器本体7aの側壁とモジュール体100との接合面には、Oリング90が設けられ、モジュール体100と容器本体7aとの液密を保っている。このようにOリング90でシールが出来るために、モジュール体100は、図7で説明したような円柱部を備えることが好ましい。
モジュール体100の先端が容器本体7aのインク収容空間7bに露出することで、プレート110の貫通孔112を介して、容器本体7a内のインクが液体検出装置60と接触する。液体検出装置60の振動部の周囲が液体か気体かによって、液体検出装置60の残留振動の共振周波数が異なるので、モジュール体100を用いてインクの消費状態を検出することができる。
次に、本発明の他の実施形態による液体検出装置及びこの液体検出装置を備えたインクカートリッジ(液体容器)ついて図面を参照して説明する。
図10、図11A及び図11Bは、本実施形態による液体検出装置260を示した図であり、この液体検出装置260は、基板241に振動板242を積層して構成された基部240を有し、この基部240は、互いに対向する第1面240a及び第2面240bを有する。基部240には、検出対象の媒体を受け入れるための円形のキャビティ(凹部)243が、第1面240a側に開口するようにして形成されており、キャビティ243の底面部243aが振動板242にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板242全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ243によってその輪郭が規定されている。基部240の第2面240b側の両端には下部電極端子244及び上部電極端子245が形成されている。
基部240の第2面240bには下部電極(第1電極)246が形成されており、この下部電極246は、円形の本体部246aと、この本体部246aから下部電極端子244の方向に延出して下部電極端子244に接続された延出部246bとを有する。下部電極246の円形の本体部246aの中心はキャビティ243の中心と一致している。
下部電極246の円形の本体部246aは、円形のキャビティ243よりも大径に形成され、キャビティ243に対応する領域の全体を覆っている。
下部電極246の上には圧電層247が積層されており、この圧電層247は、キャビティ243よりも小径に形成された円形の本体部247aと、この本体部247aから延出してキャビティ243の周縁に対応する位置を越えてキャビティ243の底面に対応する領域の外部まで延びる延出部247bとを有する。
圧電層247には、上部電極(第2電極)249の円形の本体部249aが積層されており、この上部電極249の本体部249aは、圧電層247の本体部247aよりも小径に形成されている。また、上部電極249は、本体部249aから延出して圧電層247の延出部247b上を延びてキャビティ243の底面に対応する領域の外部まで延びる延出部249bを有している。この延出部249bは、圧電層247の延出部247bを越えて延出し、上部電極端子245に接続されている。
このように、圧電層247の本体部247aは、上部電極249の本体部249aと下部電極246の本体部246aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層247は効果的に変形駆動され得る。
前記の如く上部電極249の本体部249aは、圧電層247の本体部247aよりも小径に形成されている。一方、下部電極246の本体部246aは、圧電層247の本体部247aの全面をカバーしている。従って、上部電極249の本体部249aが、圧電層247全体のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
なお、液体検出装置260に含まれる部材は、互いに焼成されることによって一体的に形成されていることが好ましい。このように液体検出装置260を一体的に形成することによって、液体検出装置260の取り扱いが容易になる。
圧電層247の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。基板241の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板242には、基板241と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極249、下部電極246、上部電極端子245および下部電極端子244は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
圧電層247の本体部247a、上部電極249の本体部249a、及び下部電極246の本体部246aは、それらの中心がキャビティ243の中心と一致している。また、振動板242の振動可能な部分を決定する円形状のキャビティ243の中心は、液体検出装置260の全体の中心に位置している。
キャビティ243によって規定される振動板242の振動可能な部分、下部電極246の本体部246aのうちのキャビティ243に対応する部分、圧電層247の本体部247a及び延出部247bのキャビティ243に対応する部分、並びに上部電極249の本体部249a及び延出部249bのキャビティ243に対応する部分は、液体検出装置260の振動部261を構成する。そして、この液体検出装置260の振動部261の中心は、液体検出装置260の中心と一致する。
更に、圧電層247の本体部247a、上部電極249の本体部249a、下部電極246の本体部246a及び振動板242の振動可能な部分(即ちキャビティ243の底面部243aに対応する部分)が円形形状を有しているので、液体検出装置260の振動部261は液体検出装置260の中心に対して略対称な形状である。
このように本実施形態においては、キャビティ243に対応する領域の全体を下部電極246の本体部246aで覆うようにしたので、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が従来に比べて小さくなる。また、液体検出装置260の振動部261が液体検出装置260の中心に対して略対称な形状であるので、この振動部261の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。
このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制される共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置260の振動部261における残留振動の共振周波数の検出精度が向上すると共に、振動部261の残留振動の検出が容易になる。
また、キャビティ243に対応する領域の全体をキャビティ243よりも大径の下部電極246の本体部246aで覆うようにしたので、製造時における下部電極246の位置ズレに起因する不要振動の発生が防止され、検出精度の低下を防止することができる。
また、液体検出装置260の振動部261と液体とが接触する範囲が、キャビティ243が存在する範囲に限定されるので、液体の検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクカートリッジ7内のインクレベルを高精度にて検出することができる。
本実施形態の一変形例としては、図12に示したように、上部電極249の延出部249bと圧電層247との間に絶縁層250を介在させても良い。この絶縁層250の存在により、圧電層247全体のうちの圧電効果を発生する部分の範囲が円形となってその対称性が高まり、不要振動の発生をさらに抑制することができる。
次に、本発明の他の実施形態による液体検出装置及びこの液体検出装置を備えたインクカートリッジ(液体容器)ついて図面を参照して説明する。
図13、図14A及び図14Bは、本実施形態による液体検出装置360を示した図であり、この液体検出装置360は、基板341に振動板342を積層して構成された基部340を有し、この基部340は、互いに対向する第1面340a及び第2面340bを有する。基部340には、検出対象の媒体を受け入れるための円形のキャビティ(凹部)343が、第1面340a側に開口するようにして形成されており、キャビティ343の底面部343aが振動板342にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板342全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ343によってその輪郭が規定されている。基部340の第2面340b側の両端には下部電極端子344及び上部電極端子345が形成されている。
基部340の第2面340bには下部電極(第1電極)346が形成されており、この下部電極346は、円形の本体部346aと、この本体部346aから下部電極端子344の方向に延出して下部電極端子344に接続された延出部346bとを有する。下部電極346の円形の本体部346aの中心はキャビティ343の中心と一致している。
下部電極346の円形の本体部346aは、円形のキャビティ343よりも大径に形成され、キャビティ343に対応する領域の全体を覆っている。
下部電極346の上には圧電層347が積層されており、この圧電層347は、キャビティ343よりも大径に形成されてキャビティ343に対応する領域の全体を覆う円形の本体部347aと、この本体部347aから延出する延出部347bとを有する。
圧電層347には、上部電極(第2電極)349の円形の本体部349aが積層されており、この上部電極349の本体部349aは、キャビティ343よりも小径に形成されてキャビティ343に対応する領域の内部に配置されている。また、上部電極349は、本体部349aから延出して圧電層347の本体部347a及び延出部347b上を延びる延出部349bを有している。この延出部349bは、圧電層347の延出部347bを越えて延出し、上部電極端子345に接続されている。
このように、圧電層347の本体部347aは、上部電極349の本体部349aと下部電極346の本体部346aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層347は効果的に変形駆動され得る。
前記の如く上部電極349の本体部349aは、圧電層347の本体部347aよりも小径に形成されている。一方、下部電極346の本体部346aは、圧電層347の本体部347aの全面をカバーしている。従って、上部電極349の本体部349aが、圧電層347全体のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
なお、液体検出装置360に含まれる部材は、互いに焼成されることによって一体的に形成されていることが好ましい。このように液体検出装置360を一体的に形成することによって、液体検出装置360の取り扱いが容易になる。
圧電層347の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。基板341の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板342には、基板341と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極349、下部電極346、上部電極端子345および下部電極端子344は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
圧電層347の本体部347a、上部電極349の本体部349a、及び下部電極346の本体部346aは、それらの中心がキャビティ343の中心と一致している。また、振動板342の振動可能な部分を決定する円形状のキャビティ343の中心は、液体検出装置360の全体の中心に位置している。
キャビティ343によって規定される振動板342の振動可能な部分、下部電極346の本体部346aのうちのキャビティ343に対応する部分、圧電層347の本体部347aのキャビティ343に対応する部分、並びに上部電極349の本体部349a及び延出部349bのキャビティ343に対応する部分は、液体検出装置360の振動部361を構成する。そして、この液体検出装置360の振動部361の中心は、液体検出装置360の中心と一致する。
更に、圧電層347の本体部347a、上部電極349の本体部349a、下部電極346の本体部346a及び振動板342の振動可能な部分(即ちキャビティ343の底面部343aに対応する部分)が円形形状を有しているので、液体検出装置360の振動部361は液体検出装置360の中心に対して略対称な形状である。
このように本実施形態においては、キャビティ343に対応する領域の全体を下部電極346の本体部346a及び圧電層347の本体部347aで覆うようにしたので、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が従来に比べて小さくなる。また、液体検出装置360の振動部361が液体検出装置360の中心に対して略対称な形状であるので、この振動部361の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。
このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制される共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置360の振動部361における残留振動の共振周波数の検出精度が向上すると共に、振動部361の残留振動の検出が容易になる。
また、キャビティ343に対応する領域の全体をキャビティ343よりも大径の下部電極346の本体部346aで覆うようにしたので、製造時における下部電極346の位置ズレに起因する不要振動の発生が防止され、検出精度の低下を防止することができる。
また、液体検出装置360の振動部361と液体とが接触する範囲が、キャビティ343が存在する範囲に限定されるので、液体の検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクカートリッジ7内のインクレベルを高精度にて検出することができる。
本実施形態の一変形例としては、図15に示したように、上部電極349の延出部349bと圧電層347との間に絶縁層350を介在させても良い。この絶縁層350の存在により、圧電層347全体のうちの圧電効果を発生する部分の範囲が円形となってその対称性が高まり、不要振動の発生をさらに抑制することができる。
次に、本発明の他の実施形態による液体検出装置及びこの液体検出装置を備えたインクカートリッジ(液体容器)ついて図面を参照して説明する。
図16、図17A及び図17Bは、本実施形態による液体検出装置460を示した図であり、この液体検出装置460は、基板441に振動板442を積層して構成された基部440を有し、この基部440は、互いに対向する第1面440a及び第2面440bを有する。基部440には、検出対象の媒体を受け入れるための円形のキャビティ(凹部)443が、第1面440a側に開口するようにして形成されており、キャビティ443の底面部443aが振動板442にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板442全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ443によってその輪郭が規定されている。基部440の第2面440b側の両端には下部電極端子444及び上部電極端子445が形成されている。
基部440の第2面440bには下部電極(第1電極)446が形成されており、この下部電極446は、円形の本体部446aと、この本体部446aから下部電極端子444の方向に延出して下部電極端子444に接続された延出部446bとを有する。下部電極446の円形の本体部446aの中心はキャビティ443の中心と一致している。
下部電極446の円形の本体部446aは、円形のキャビティ443よりも小径に形成されており、キャビティ443に対応する領域の内部に配置されている。好ましくは、下部電極446の本体部446aの直径は、キャビティ443の直径の75%以上の大きさである。
下部電極446の本体部446aの上には圧電層447の円形の本体部447aが積層されており、圧電層447の本体部447aは下部電極446の本体部446aよりも小径である。圧電層447の本体部447aからは延出部447bが延出しており、この圧電層447の延出部447bは、キャビティ443に対応する領域の外部まで延在している。
圧電層447の本体部447aには、上部電極(第2電極)449の円形の本体部449aが積層されており、この上部電極449の本体部449aは圧電層447の本体部447aよりも小径に形成されている。また、上部電極449は、本体部449aから延出して圧電層447の本体部447a及び延出部447b上を延びる延出部449bを有している。この延出部449bは、圧電層447の延出部447bを越えて延出し、上部電極端子445に接続されている。
このように、圧電層447の本体部447aは、上部電極449の本体部449aと下部電極446の本体部446aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層447は効果的に変形駆動され得る。
前記の如く上部電極449の本体部449aは、圧電層447の本体部447aよりも小径に形成されている。一方、下部電極446の本体部446aは、圧電層447の本体部447aの全面をカバーしている。従って、上部電極449の本体部449aが、圧電層447全体のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
なお、液体検出装置460に含まれる部材は、互いに焼成されることによって一体的に形成されていることが好ましい。このように液体検出装置460を一体的に形成することによって、液体検出装置460の取り扱いが容易になる。
圧電層447の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。基板441の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板442には、基板441と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極449、下部電極446、上部電極端子445および下部電極端子444は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
圧電層447の本体部447a、上部電極449の本体部449a、及び下部電極446の本体部446aは、それらの中心がキャビティ443の中心と一致している。また、振動板442の振動可能な部分を決定する円形状のキャビティ443の中心は、液体検出装置460の全体の中心に位置している。
キャビティ443によって規定される振動板442の振動可能な部分、下部電極446の本体部446a及び延出部446bのうちのキャビティ443に対応する部分、圧電層447の本体部447a及び延出部447bのキャビティ443に対応する部分、並びに上部電極449の本体部449a及び延出部449bのキャビティ443に対応する部分は、液体検出装置460の振動部461を構成する。そして、この液体検出装置460の振動部461の中心は、液体検出装置460の中心と一致する。
更に、圧電層447の本体部447a、上部電極449の本体部449a、下部電極446の本体部446a及び振動板442の振動可能な部分(即ちキャビティ443の底面部443aに対応する部分)が円形形状を有しているので、液体検出装置460の振動部461は液体検出装置460の中心に対して略対称な形状である。
このように本実施形態においては、下部電極446の本体部446aを圧電層447の本体部447aよりも大きな径で形成し、キャビティ443に対応する領域を広い範囲にわたって下部電極446の本体部446aで覆うようにしたので、下部電極446の本体部446aで覆われていない薄肉の部分の面積が小さくなる。このため、強制変形後の振動部の自由振動中に、検出対象として必要な振動周波数以外の不要な高次の振動モードが励起されることを抑制することができる。また、自由振動時に薄肉の部分のみが大きく変形して圧電層447の変形量が小さくなって逆起電力の出力が小さくなる現象が防止され、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が従来に比べて小さくなる。
このように本実施形態によれば、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制される共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置460の振動部461における残留振動の共振周波数の検出精度が向上すると共に、振動部461の残留振動の検出が容易になる。
また、下部電極446の本体部446aの上に積層される圧電層447の本体部447aを下部電極446の本体部446aよりも小径に形成し、圧電層447の本体部447aの上に積層される上部電極449の本体部449aを圧電層447の本体部447aよりも小径に形成するようにしたので、製造過程において後から形成される部分(例えば圧電層447の本体部447a)の方が、先行して形成された部分(例えば下部電極446の本体部446a)よりも小径である。このため、先行して形成された部分の位置を最後まで確認しながら次の部分を形成することができるので、積層時の位置合わせを精度良く行うことができる。
また、下部電極446の本体部446aを圧電層447の本体部447aよりも大径に形成するようにしたので、下部電極446の本体部446aの周縁をキャビティ443の底面部443aの周縁に隣接させることができ、これにより、下部電極446の本体部446aで覆われていない薄肉の部分の面積を小さくすることができる。
また、液体検出装置460の振動部461と液体とが接触する範囲が、キャビティ443が存在する範囲に限定されるので、液体の検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクカートリッジ7内のインクレベルを高精度にて検出することができる。
次に、本発明の他の実施形態による液体検出装置及びこの液体検出装置を備えたインクカートリッジ(液体容器)ついて図面を参照して説明する。
図18、図19A及び図19Bは、本実施形態による液体検出装置560を示した図であり、この液体検出装置560は、基板541に振動板542を積層して構成された基部540を有し、この基部540は、互いに対向する第1面540a及び第2面540bを有する。基部540には、検出対象の媒体を受け入れるための円形のキャビティ(凹部)543が、第1面540a側に開口するようにして形成されており、キャビティ543の底面部543aが振動板542にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板542全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ543によってその輪郭が規定されている。基部540の第2面540b側の両端には下部電極端子544及び上部電極端子545が形成されている。
基部540の第2面540bには下部電極(第1電極)546が形成されており、この下部電極546は、円形の本体部546aと、この本体部546aから下部電極端子544の方向に延出して下部電極端子544に接続された延出部546bとを有する。下部電極546の円形の本体部546aの中心はキャビティ543の中心と一致している。
下部電極546の円形の本体部546aは、円形のキャビティ543よりも大径に形成され、キャビティ543に対応する領域の全体を覆っている。
下部電極546の上には圧電層547が積層されており、この圧電層547は、キャビティ543よりも大径に形成されてキャビティ543に対応する領域の全体を覆う円形の本体部547aと、この本体部547aから延出する延出部547bとを有する。
圧電層547には、上部電極(第2電極)549の円環状の本体部549aが積層されており、この上部電極549の本体部549aは、その外径がキャビティ543よりも小径に形成されてキャビティ543に対応する領域の内部に配置されている。また、上部電極549は、本体部549aから延出して圧電層547の本体部547a及び延出部547b上を延びる延出部549bを有している。この延出部549bは、圧電層547の延出部547bを越えて延出し、上部電極端子545に接続されている。
このように、圧電層547の本体部547aは、上部電極549の本体部549aと下部電極546の本体部546aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層547は効果的に変形駆動され得る。
前記の如く上部電極549の本体部549aは、圧電層547の本体部547aよりも小径に形成されている。一方、下部電極546の本体部546aは、圧電層547の本体部547aの全面をカバーしている。従って、上部電極549の本体部549aが、圧電層547全体のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
なお、液体検出装置560に含まれる部材は、互いに焼成されることによって一体的に形成されていることが好ましい。このように液体検出装置560を一体的に形成することによって、液体検出装置560の取り扱いが容易になる。
圧電層547の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。基板541の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板542には、基板541と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極549、下部電極546、上部電極端子545および下部電極端子544は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
圧電層547の本体部547a、上部電極549の本体部549a、及び下部電極546の本体部546aは、それらの中心がキャビティ543の中心と一致している。また、振動板542の振動可能な部分を決定する円形状のキャビティ543の中心は、液体検出装置560の全体の中心に位置している。
キャビティ543によって規定される振動板542の振動可能な部分、下部電極546の本体部546aのうちのキャビティ543に対応する部分、圧電層547の本体部547aのキャビティ543に対応する部分、並びに上部電極549の本体部549a及び延出部549bのキャビティ543に対応する部分は、液体検出装置560の振動部561を構成する。そして、この液体検出装置560の振動部561の中心は、液体検出装置560の中心と一致する。
更に、圧電層547の本体部547a、上部電極549の本体部549a、下部電極546の本体部546a及び振動板542の振動可能な部分(即ちキャビティ543の底面部543aに対応する部分)が円形形状を有しているので、液体検出装置560の振動部561は液体検出装置560の中心に対して略対称な形状である。
なお、液体検出装置560の振動部561は、上部電極549及び下部電極546を介して圧電層547に電圧を印加することにより、キャビティ543とは反対側の方向に突出変形する。
このように本実施形態においては、キャビティ543に対応する領域の全体を下部電極546の本体部546a及び圧電層547の本体部547aで覆うようにしたので、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が従来に比べて小さくなる。また、液体検出装置560の振動部561が液体検出装置560の中心に対して略対称な形状であるので、この振動部561の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。
また、キャビティ543に対応する領域の全体をキャビティ543よりも大径の下部電極546の本体部546aで覆うようにしたので、製造時における下部電極546の位置ズレに起因する不要振動の発生が防止され、検出精度の低下を防止することができる。
さらに、上部電極549の本体部549aを円環状に形成したので、図18に示したように上部電極549の本体部549aの外周縁を、キャビティ543の周縁に近い位置に配置することが可能であり、これにより、上部電極549の延出部549bのうちの、キャビティ543に対応する領域の内部に位置する部分が小さくなり、振動部561を構成する部分の上部電極549の対称性が向上する。
このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制される共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置560の振動部561における残留振動の共振周波数の検出精度が向上すると共に、振動部561の残留振動の検出が容易になる。
また、液体検出装置560の振動部561と液体とが接触する範囲が、キャビティ543が存在する範囲に限定されるので、液体の検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクカートリッジ7内のインクレベルを高精度にて検出することができる。
次に、本発明の他の実施形態による液体検出装置及びこの液体検出装置を備えたインクカートリッジ(液体容器)ついて図面を参照して説明する。
図20、図21A及び図21Bは、本実施形態による液体検出装置660を示した図であり、この液体検出装置660は、基板641に振動板642を積層して構成された基部640を有し、この基部640は、互いに対向する第1面640a及び第2面640bを有する。基部640には、検出対象の媒体を受け入れるための円形のキャビティ(凹部)643が、第1面640a側に開口するようにして形成されており、キャビティ643の底面部643aが振動板642にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板642全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ643によってその輪郭が規定されている。基部640の第2面640b側の両端には下部電極端子644及び上部電極端子645が形成されている。
基部640の第2面640bには下部電極(第1電極)646が形成されており、この下部電極646は、円形の本体部646aと、この本体部646aから下部電極端子644の方向に延出して下部電極端子644に接続された延出部646bとを有する。下部電極646の円形の本体部646aの中心はキャビティ643の中心と一致している。
下部電極646の円形の本体部646aは、円形のキャビティ643よりも小径に形成され、キャビティ643に対応する領域の内部に配置されている。
下部電極646の上には、下部電極646の本体部646aよりも大径に形成された円形の圧電層647が積層されており、図20から分かるように、圧電層647はその全体がキャビティ643に対応する領域の内部に配置されている。換言すれば、圧電層647は、キャビティ643の周縁643aに対応する位置を横切って延在する部分をまったく有していない。
基部640の第2面640b側には、一端が上部電極端子645に接続された補助電極648が形成されている。この補助電極648は、キャビティ643に対応する領域の外側から、キャビティ643の周縁643aに対応する位置を越えてキャビティ643に対応する領域の内部まで延在する。補助電極648の一部は、キャビティ643に対応する領域の内部において圧電層647の一部を基板640の第2面640b側から支持している。この補助電極648は、好ましくは、下部電極646と同じ材質で且つ同じ厚さを有している。このように補助電極648によって圧電層647の一部を基板640の第2面640b側から支持することによって、圧電層647に段差が生じないようにして機械的強度の低下を防止することができる。
圧電層647には、上部電極(第2電極)649の円形の本体部649aが積層されており、この上部電極649は、圧電層647よりも小径に且つ下部電極646の本体部646aよりも大径に形成されている。また、上部電極649は、本体部649aから延出して補助電極648に接続された延出部649bを有している。図21Bから分かるように、上部電極649の延出部649bと補助電極648との接続が始まる位置Pは、キャビティ643に対応する領域の内部に位置している。
図20から分かるように、上部電極649は補助電極648を介して上部電極端子645に電気的に接続されている。このように補助電極648を介して上部電極649を上部電極端子645に接続することによって、圧電層647及び下部電極646の合計の厚さから生じる段差を、上部電極649と補助電極648との両方によって吸収することができる。このため、上部電極649に大きな段差が生じて機械的強度が低下することを防止することができる。
図20から分かるように、上部電極649の本体部649aは円形を成しており、その中心はキャビティ643の中心と一致している。上部電極649の本体部649aは、圧電層647及びキャビティ643のいずれよりも小径に形成されている。
このように、圧電層647は、上部電極649の本体部649aと下部電極646の本体部646aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層647は効果的に変形駆動され得る。
なお、圧電層647と電気的に接続された下部電極646の本体部646aおよび上部電極649の本体部649aのうち、下部電極646の本体部646aの方が小径に形成されている。従って、下部電極646の本体部646aが、圧電層647のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
なお、液体検出装置660に含まれる部材は、互いに焼成されることによって一体的に形成されていることが好ましい。このように液体検出装置660を一体的に形成することによって、液体検出装置660の取り扱いが容易になる。
圧電層647の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。基板641の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板642には、基板641と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極649、下部電極646、上部電極端子645および下部電極端子644は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
キャビティ643によって規定される振動板642の振動可能な部分、下部電極646の本体部646a及び延出部646bのうちのキャビティ643に対応する部分、圧電層647、並びに上部電極649の本体部649a及び延出部649bのキャビティ643に対応する部分は、液体検出装置660の振動部661を構成する。そして、この液体検出装置660の振動部661の中心は、液体検出装置660の中心と一致する。
更に、圧電層647、上部電極649の本体部649a、下部電極646の本体部646a、及び振動板642の振動可能な部分(即ちキャビティ643の底面部643aに対応する部分)が円形形状を有しており、しかも、圧電層647の全体がキャビティ643に対応する領域の内部に配置されているので、液体検出装置660の振動部661は液体検出装置660の中心に対して略対称な形状である。
このように本実施形態においては、液体検出装置660の振動部661が液体検出装置660の中心に対して対称な形状であるので、この振動部661の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。とりわけ、振動部661の剛性に大きく影響する圧電層647が円形に形成されているので、振動部661の剛性の等方性が大幅に高められている。このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生を抑制することができ、液体検出装置660の振動部661の残留振動の共振周波数の検出精度が向上する。
また、硬いが脆弱な圧電層647の全体がキャビティ643に対応する領域の内部に配置されており、キャビティ643の周縁643aに対応する位置には圧電層647が存在しない。このため、従来の液体検出装置においてキャビティの周縁に対応する位置で発生していた圧電膜のクラックの問題がない。
また、振動部661と液体とが接触する範囲が、キャビティ643が存在する範囲に限られているので、液体の検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクートリッジ7内のインクレベルを高精度にて検出することができる。
また、上述した実施形態の変形例としては、図22、図23A及び図23Bに示したように、キャビティ643の中心を通る第1の直線上において互いに反対の方向に延出する下部電極646の延出部646b及び上部電極649の延出部649bに加えて、キャビティ643の中心を通り且つ前記第1の直線に直交する第2の直線上において、下部電極646の本体部646aから互いに反対の方向に延出する一対の延出部646cをさらに設けることができる。
また、一対の延出部646cは、下部電極646の本体部646aから連続的に形成する代わりに、下部電極646の本体部646aから分離して形成することもできる。
このように、下部電極646の延出部646b及び上部電極649の延出部649bの延在方向に直交するようにして、実際には電極として機能しない一対の延出部646cをキャビティ643の中心を通る直線に沿って配置することにより、図20、図21A及び図21Bに示した実施形態に比べて、振動部661の対称性が向上する。即ち、図20、図21A及び図21Bに示した実施形態においては振動部661の形状が2回対称であったところ、図22、図23A及び図23Bに示した変形例においては振動部661の形状が4回対称となっている。このように振動部661の形状の対称性が向上することにより、不要振動の発生をさらに低減することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態についてある程度詳細に記載したが、多くの変更や変形が可能であることは明らかである。従って、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、ここで特定的に記載されたもの以外の形態で本発明が実施され得ることが理解されよう。