JP4708486B2 - 電線と圧縮スリーブの圧縮接続方法 - Google Patents

電線と圧縮スリーブの圧縮接続方法 Download PDF

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Description

本発明は、架空送配電線の直線接続に使用される圧縮スリーブの構造、およびこの圧縮スリーブを用いた圧縮接続方法に関するものである。
従来の架空アルミ配電線相互を直線接続する場合の接続用圧縮スリーブは、例えば[特許文献1]に記載されており、これを図11〜図13に示す。ここでは、金属パイプ1内を隔壁2によりその軸線方向に区画して同隔壁2の両側に区画室3、4を形成し、各区画室3、4内に接続コンパウンド5を充填し、夫々の区画室3、4に電線を挿入して両電線を隔壁2を挟んで突合わせ、その状態で金属パイプ1を圧縮して両電線を接続する電線接続用圧縮スリーブにおいて、前記区画室3、4内の隔壁2側に前記圧縮時に隔壁2側に加圧される接続コンパウンド5を吸収する収容部7を有する吸収アダプタ8を配置したり、区画室3、4の周壁に通孔9を開口したり、あるいは各区画室3、4の外周に前記圧縮時に加圧されて前記通孔9から流出する接続コンパウンド5を吸収する収容部7を有する吸収アダプタ8を取付けたりする直線スリーブが提案されている。
また、[特許文献2]に記載された圧縮スリーブを図14〜図15に示しているが、ここでは、金属製スリーブ本体と、その金属製スリーブ本体の外周を覆うように設けられた電気絶縁材料からなる被覆部及びその被覆部から一体的に延長して設けられた突出部からなる絶縁カバーとにより構成される絶縁カバー被覆型圧縮スリーブであって、前記突出部の内壁の内周にそって溝条を設けた絶縁カバー被覆型圧縮スリーブが提案されている。
特開平06-150986号公報 特開2000-323199号公報
しかしながら従来の圧縮スリーブには次のような問題があった。
1.特許文献1の電線接続用圧縮スリーブでは、アルミ心線Jを差し込んだ圧縮スリーブの外周をその両端部から中心に向かって順次圧縮工具で圧縮していくと、余分な接続コンパウンドFが隔壁B側に押されてコンパウンド5を吸収する収容部7を有する吸収アダプタ8に収容されて、コンパウンドの外部流出や、その拭き取り作業が省略でき、作業環境の向上が図られるとしているが、コンパウンドを封入する主目的は、出来る限り短い圧縮長さで、引張り力に対する圧縮部の把持力を強化し、電線の隙間に雨水が流入したときの凍結膨張および腐食などによる電気抵抗の増加を抑えることである。
しかしながら、本提案のような圧縮工法では、電線接続用圧縮スリーブの両端部から中心に向かって順次圧縮工具で圧縮する逆圧縮工法が採用されているため、スリーブ芯線挿入口側にはコンパウンドが電線の撚り線層の隙間に十分に浸透せず、耐引抜け荷重も十分でなく、圧縮部の圧縮長さが長くなり、施工性を悪化させていた。
また、スリーブ内で圧縮される電線範囲の隙間にコンパウンドが水密構造に浸透して封止できず、長期的な信頼性に欠けるという大きな欠点があった。
また、電線とスリーブとの圧縮伸びの不同などにより、スリーブ内部に空洞が出来、前記空洞に雨水が滞留して冬季に凍結を繰り返して、過熱事故などを引き起こすおそれがあった。
2.特許文献2の絶縁カバー被覆型圧縮スリーブでは、同文献の断面図(図14)に示されるように、スリーブ本体内に設けられた突起2cは貫通しており、且つシリコングリースが密に充填されているため、スリーブの開口部の一方側から電線を挿入すると電線によって、グリースがスリーブ内から外部に押出されてしまい、周囲を汚損させる欠点があった。
また、この欠点を除去するためスリーブ開口部の両側から電線を挿入しようとすると、絶縁カバーの内壁の内周にそって溝条を設けた場合でも、電線の体積に相当する量のグリースはスリーブの外部に押出されることになるので、挿入抵抗は非常に大きくなり、グリースが無駄になると共に、電線先端部がスリーブ中央の内部に設けられた突起に突き当らないまま圧縮してしまい、施工不良を生じ易いという欠点があった。
また、この欠点を除去するためスリーブ開口部の両側から電線を挿入しようとすると、絶縁カバーの内周の内壁に沿って溝条を設けた場合でも、電線の体積に相当する量のグリースはスリーブの外部に押出されることになるので、この場合の挿入抵抗は一層大きくなり、電線先端部がスリーブの中央に設けられた突起に突き当らないまま圧縮してしまい、施工不良を生じやすいという欠点があった。
本発明の圧縮スリーブは、圧縮接続時に、コンパウンド内蔵カートリッジ内のコンパウンドが、圧縮スリーブの圧縮変形により強力な圧力で絞り出されて、圧縮スリーブと電線との隙間および電線の鋼芯とアルミ撚り線との撚り合せ間隙部に確実に浸透して摩擦力を増大させ、短い圧縮長さで引張り力に対する抗張力を高めると共に、圧縮スリーブ内への電線挿入が容易で、且つ、電線の撚り合わせ間隙部に確実にコンパウンドが浸透して、水密構造を形成せしめて、接続部の電気抵抗の増加を抑制することができる、コンパクトなコンパウンド内蔵カートリッジジ型の圧縮スリーブと、その防水圧縮接続工法と、を提供することを目的とするものである。
また、本発明の圧縮スリーブは、圧縮接続時に圧縮スリーブに充填されている接続コンパウンドが、圧縮スリーブと電線の隙間および電線の鋼芯およびアルミ素線の撚り合わせ間隙部に確実に浸透して摩擦力を増大させ、短い圧縮長さで引張り力に対する抗張力を高めるとともに、圧縮スリーブ内への電線挿入が容易であり、且つ、電線の撚り合わせ間隙部に確実にコンパウンドが浸透して水密構造を形成せしめ、接続部の電気抵抗の増加を抑制することが出来る、コンパクトな圧縮スリーブ、とその防水圧縮接続工法と、を提供することを目的とするものである。
(1)本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、図1に示すように、金属パイプ7からなる圧縮スリーブ1の内径dに略合致するカートリッジ2に所定量のコンパウンド6を充填膨出させて内蔵させたストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ2を、圧縮スリーブ1の隔壁8の底部に押込み、コンパウンド6により圧縮スリーブ1の隔壁8の底部に配設したストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ2の周りの空隙を密に充填するように構成したことを特徴とするストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブである。
(2)本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブ1は、図2に示すように、(1)のコンパウンドカートリッジにおいて、圧縮スリーブ1の内径dに略合致する円筒状のチューブを所定の長さで切断したストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ2にコンパウンド4を充填内蔵させ、且つ、その挿入方向の底部にカートリッジ外径と圧縮スリーブ内径との間隙体積と同等以上に相当するコンパウンド6を盛り付けたものを、予め挿入配設したことを特徴とするストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブである。
(3)本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、前記カートリッジの構成材料をゴム.樹脂などの有機高分子材料からなり、前記材料を押出成形、射出成形、圧縮成形などの成型方法で製作され、所定の長さを有するコンパウンドが充填されたカートリッジであることを特徴とするストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブである。
(4)本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、(1)のコンパウンド内蔵型の圧縮スリーブにおいて、圧縮スリーブの芯線挿入口両端部に設けたテーパー孔基部近傍に、コンパウンド浸透確認孔を設けたことを特徴とするストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブである。
(5)ストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の(1)〜(4)の圧縮スリーブにおいて、前記圧縮スリーブがアルミ系材質であり、前記圧縮スリーブに接続する電線の材質が銅系金属である場合には、前記圧縮スリーブの芯線挿入口には有機絶縁性ゴムまたは樹脂からなる防水ブッシュが装着されており、前記防水ブッシュの芯線挿入口は絶縁被覆電線の外径に嵌合して、その絶縁被覆電線の一部分を覆うような円筒部分が形成されていることを特徴とする電蝕防止型の圧縮スリーブである。
(6)ストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブを用いる防水圧縮接続工法であり、予め所要量のコンパウンドを充填したコンパウンド内蔵カートリッジを、中央に隔壁部を有する金属パイプからなる圧縮スリーブの隔壁に挿入当接させた状態で、前記圧縮スリーブの開口側から電線を挿入しコンパウンドカートリッジの開口側端部に当接させた後、前記圧縮スリーブの開口側端部を圧縮して電線を仮止めした状態で、前記圧縮スリーブの中央より芯線挿入口側に向けて圧縮接続を行うことを特徴とする圧縮スリーブの防水圧縮接続工法である。
(7)本発明の圧縮スリーブ1は、図1に示すように、中央に隔壁部8を有する金属パイプ7からなる圧縮スリーブの前記隔壁部8の底部に所定量のコンパウンド6を注入し、圧縮スリーブ1の内径dより小さな外径と所定の長さL’とを有するストッパー兼用のチューブ体(図8の2’、図9の3’)を、前記コンパウンド6に押し込んで埋設または埋没させたことを特徴とする圧縮スリーブである。
(8)本発明の圧縮スリーブ1におけるチューブ体は、図8に示すような形状を有し、その材料は、ゴム、樹脂などの有機高分子材料あるいはアルミ、銅などの金属材料からなり、前記材料を押出成形、射出成形、圧縮成形、プレス成形などの成型方法で製作されることを特徴とするストッパー兼用のチューブ体である。
(9)本発明の圧縮スリーブ1におけるチューブ体は、(7)または(8)のストッパー兼用のチューブ体において、前記チューブ体は一端が縦割りされて、その断面が蚊取り線香状に渦巻き成型されてなることを特徴とする所定の長さを有するストッパー兼用のチューブ体である。
(10)本発明の圧縮スリーブ1におけるチューブ体は、(7)〜(9)のストッパー兼用のチューブ体において、前記チューブ体の外周に多数条の長手方向に伸びるヒレ5’(図9)を設けたことを特徴とする所定の長さを有するストッパー兼用のチューブ体である。
(11)本発明の圧縮スリーブ1におけるチューブ体は、(10)のストッパー兼用のチューブ体3’(図9)において、前記チューブ体の外周に設けた多数の長手方向に伸びるヒレ5’は、ヒレ全体が螺旋状に形成されていることを特徴とするストッパー兼用のチューブ体である。
(12)本発明は、(7)〜(11)のいずれかの圧縮スリーブを用いる防水圧縮接続工法であって、圧縮スリーブの開口端側から絶縁被覆電線の芯線を挿入してチューブ体の開口側端部に芯線端面を当接させた後、圧縮スリーブの開口端部を仮圧縮して芯線を圧縮スリーブに仮止めした状態で、前記圧縮スリーブの中央より開口端部側に向けて圧縮接続を行うと同時に、コンパウンドを圧縮スリーブと電線の隙間および電線の撚り合せ隙間に圧縮行程においてコンパウンドを強制的に注入することを特徴とする圧縮スリーブの防水圧縮接続工法である。
1.本発明のうち(1)のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、コンパウンド内蔵カートリッジを電線圧縮接続時に圧縮スリーブ内に挿入配設するので、コンパウンドの経時的な汚損劣化あるいはコンパウンドの油成分分離などによる洩出などもなく、さらにコンパウンドの所要量を定量化できるので、無駄を省き高品質な圧縮接続作業を行うことが出来る。
2.本発明のうち(2)のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、カートリッジ外径と圧縮スリーブの内径との間隙体積と同等以上に相当するコンパウンドを盛り付けたものを予め配設したから、圧縮スリーブの中央隔壁底部においてはコンパウンドが間隙部を押込み時に充填するので、圧縮接続時に効率的に圧縮スリーブ内の間隙部にコンパウンドが浸透するので最短の圧縮長さで十分な耐荷重特性が得られる。
3.本発明のうち(3)のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、カートリッジの構成材料を軽量な樹脂などを用いて成形したので、カートリッジを安価に製作でき、また運搬なども至便である。
4.本発明のうち(4)のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、コンパウンドが芯線の撚り線隙間に均一に浸透したことを確認する確認孔を設けたので、引張り把持力の安定した圧縮スリーブとすることが出来る。
5. 本発明のうち(5)のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブは、コンパウンド内に電線を直接押し込まないので圧縮スリーブへの電線挿入が極めてスムースで容易である。また、カートリッジを適正挿入長さを示すストッパー兼ゲージとして利用できるから確実な接続作業を行うことが出来る。また、スリーブの中央から開口端に向けて圧縮するようにしたから、コンパウンドは強力な圧力でカートリッジから絞り出されて電線の撚り線隙間に浸透するから、引張り特性の向上と共に確実な防水接続を行うことが出来、異種金属接続における電蝕防止構造の接続工法とすることが出来る。
6.本発明のうち(6)のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブの防水圧縮接続工法によれば、異種金同士を圧縮接続する場合に、その接続部に雨水などが侵入すると局部電池を形成して銅に対してイオン化傾向の大きいアルミが激しく腐食されるが、本発明ではコンパウンドによる撚り線隙間の水密化と相俟って、圧縮スリーブ芯線挿入口からの雨水の浸入を防止するため、電線の被覆外径に嵌合する防水ブッシュを設けて水密化したので確実に電蝕を防止出来る。
7.本発明の圧縮スリーブは、圧縮スリーブ隔壁基部に充填されている接続コンパウンドが、油圧器による強力な圧縮力により、電線の鋼芯およびアルミ素線の撚り合わせ間隙部に確実に浸透して摩擦力を増大させて、短い圧縮長さで引張り力に対する抗張力を高めるとともに、スリーブ内への電線挿入が容易で、且つ電線の撚り合わせ間隙部に確実にコンパウンドが浸透して水密構造を形成せしめて、接続部の電気抵抗の増加を抑制する事が出来る。
8.本発明のうち(7)の圧縮スリーブは、圧縮スリーブの隔壁底部に所定量注入したコンパウンドにストッパー兼用のチューブ体を完全に埋没させたので、前記チューブ体の開口端面まで芯線を簡単に挿入できるので、挿入不足などによる施工ミスをなくすことができるから、ホットスティックを用いる作業の操作にも適した圧縮スリーブとすることが出来る。
9.本発明のうち(8)の圧縮スリーブにおけるストッパー兼用のチューブ体は汎用の材料を用い、しかも、公知の成形技術を用いて大量安価に製造できる。また、前記チューブ体を用いることによりコンパウンドの無駄を省き、コンパウンドの漏出なども防止できる。
10.本発明のうち(9)の圧縮スリーブにおけるストッパー兼用のチューブ体では、チューブ体の一端を縦割りされてその断面が蚊取り線香状に渦巻き成型されたものを用いるから、チューブ体の縮径が自由に行え、1種類のストッパー兼用チューブ体で数種類の圧縮スリーブ用に兼用できる。
11.本発明のうち(10)の圧縮スリーブにおけるストッパー兼用のチューブ体では、その外周にスリーブの内径よりも若干大径となるヒレを設けたので、圧縮スリーブが傾いてもずれたり脱落したりすることがなく、確実な施工を行うことが出来る。
12.本発明のうち(11)の圧縮スリーブにおけるストッパー兼用のチューブ体では、その外周にスリーブの内径よりも若干大径となるヒレを螺旋状に設けたので、一層圧縮スリーブへの挿入が容易であると共に、コンパウンド内に埋没させた後において、前記螺旋状のヒレのためにコンパウンドの流動抵抗が増加するので、その漏出を一層効果的に抑制することが出来る。
13.本発明のうち(12)の圧縮スリーブを用いる防水圧縮接続工法によれば、圧縮スリーブの開口側端部を圧縮して電線を仮止めした状態で、前記圧縮スリーブの中央より開口端部側に向けて圧縮接続を行うようにしたので、電線が圧縮スリーブから押出されることを防止できる。
また、本項7の作用により圧縮長さを短小なものとすることが出来るから、圧縮スリーブ自体をコンパクトなものとすることが出来るとともに、現場における施工時間が短縮できるという優れた利点を有する。
本発明のコンパウンド内蔵カートリッジストッパー型の圧縮スリーブ1の一部欠載断面図。 本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジの正面図(a)と側面図(b)。 本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジの第2実施形態を示す正面図(a)と側面図(b)。 本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジの第3実施形態を示す正面図(a)と側面図(b)。 本発明のコンパウンド内蔵カートリッジの挿入方法を説明する略図。 本発明のコンパウンド内蔵カートリッジストッパー型の圧縮スリーブ1の圧縮手順を示す略図。 本発明のコンパウンド内蔵カートリッジストッパー型の圧縮スリーブを水密構造の電蝕防止型圧縮スリーブとした場合の一部欠載正面断面図。 本発明のストッパー兼用チューブ体の正面図(a)と側面図(b)。 本発明のストッパー兼用チューブ体の他の実施形態を示すヒレ付チューブ体の正面図(a)と側面図(b)。 本発明のストッパー兼用チューブ体の埋設方法施工説明略図。 特許文献1に示された電線接続用圧縮スリーブの図。 同じく特許文献1に示された電線接続用圧縮スリーブの別の図。 同じく特許文献1に示された電線接続用圧縮スリーブのまた別の図。 特許文献2に示された絶縁カバー被覆型スリーブの図。 同じく特許文献2に示された絶縁カバー被覆型スリーブの別の図。
本発明の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1〜7を参照して、コンパウンド内蔵カートリッジストッパー型の圧縮スリーブについて説明する。
図1は、本発明のコンパウンド内蔵カートリッジストッパー型の圧縮スリーブ1の一部欠載断面図である。同図において、7はアルミパイプでできた金属パイプであり、同金属パイプの長さ、外径、内径等の寸法は、使用箇所や接続する電線の直径等に応じて決められる。この金属パイプの両端芯線挿入口10(圧縮スリーブ1の左右の端部)の内側部分はテーパー加工11が施されており、両端芯線挿入口10から電線12の絶縁被覆部13を剥離した芯線14が容易に挿入できるようにしてある。9は、コンパウンド6が芯線14の撚り線の隙間に密に浸透したことを確認するための直径数mm程度の確認孔であり、その確認方法は、コンパウンド6が確認孔9から漏れ出すことを視認することにより行われる。前記の確認孔9は、テーパー加工11の基部近傍に設けられている。また、同金属パイプ1の外周には、中央部の隔壁8の左右に向かって、その圧縮方向を示す矢印Aと圧縮位置を示すマークMが適宜表示されている。
2はストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジで、その外径dは圧縮スリーブ1の内径dに対しd<dとされ、所定の長さL(4cm程度)を有している。その具体的な形状は、図2の正面図(a)と側面図(b)に示すように、一般には硬質のゴムや樹脂製の材料で押出成形、射出成形、圧縮成形などの成形方法で製作される短尺なチューブまたはパイプ材である。
即ち、図2の実施形態では、圧縮スリーブ1の隔壁8の底部にストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2を後記する押込み治具23(図5参照)にて押し込んだときに、圧縮スリーブ1の内径dとストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2の外径dとの間に出来るリング状の間隙Gをコンパウンド6で密に充填するために、前記間隙Gの容積と同等以上のコンパウンド6を、ストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2の挿入方向に余分に盛り付けて充填し、前記ストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2を圧縮スリーブ1に押し込んだとき、ストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2の底部のコンパウンド6は、圧縮スリーブ内壁部に回り込んで前記間隙Gをコンパウンド6で密に充填するように図ったものである。
また、前記ストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ2は、図3に示すように円筒体のカートリッジ4の外周長手方向に多数のヒレ5を一体的に設けたヒレ付カートリッジ3とすることも出来る。同図の(a)は正面図であり(b)はその側面図で、dはカートリッジの外径、dはヒレ部の外径である。圧縮スリーブ1は種々の電線サイズによりその内径dが異なるので、本発明で用いるストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2には種々の外径dのものがあるが、多種径のカートリッジサイズを揃えることはコストや製品管理面で不利となるので、ヒレ付カートリッジ3の場合では円筒体のカートリッジ4の外径dを圧縮スリーブ1の内径dよりも十分細くし、ヒレ部の外径dを適用電線サイズに用いる圧縮スリーブの内径dよりも若干大径となるように形成しておくと、ヒレ付カートリッジ3のヒレ部は変形自在であるから、数種類の圧縮スリーブに共用化できて都合がよい。
また、このヒレ付カートリッジ3は、図2に示すようなストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2に比べて、圧縮スリーブ1が傾斜していても挿入時に落下しにくくなり装着が容易となると共に、余分なコンパウンド6等を盛り付ける必要がなく作業手順の標準化が容易となる。
また、図示してはいないが、前記ヒレ5を螺旋状に設ければ、コンパウンドとヒレとの接触長さが長くなるのでコンパウンドの漏出防止に一層効果的となり、凋度の低いコンパウンドでも問題なく使用することが出来る。
前記コンパウンド6はグリースが主材として用いられ、それに金属粒が混入されており、これにより接続部の電気抵抗を改善し、摩擦力を高めて圧縮把持力を向上させ、金属接触面の酸化を防止できるようにしてある。前記コンパウンド6はストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2などに予め充填されており、その充填量は圧縮スリーブのサイズにより異なるが、後記するように電線サイズが32mm〜95mmでの試験結果では5〜15gで十分満足する結果が得られている。
図4はストッパー兼用のコンパウンド内蔵カ−トリッジの、さらに他の実施形態例を示すもので、このストッパー兼用のコンパウンド内蔵カ−トリッジ16は、例えばポリプロピレンなどの材料で一体に製作することが出来る。即ち、17は有底の円筒袋体で、その形状を保持するために、中心にある芯材18と、前記芯材18から放射状に伸びる支骨材19とで構成されている。この実施形態での芯材18は、絶縁被覆電線12の芯線14を適正にスリーブ内に挿入したことを示すストッパーとしての役目を課すことが出来る。なお、円筒袋体17の外径を圧縮スリーブ1の内径dに合わせたものを使用するときには、コンパウンド6を省略できることは言うまでもない。
図5は、以上説明したストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ16の挿入方法を説明する略図である。ここでのコンパウンドカートリッジは、図4に示したものを用いて説明する。アルミパイプで製作された金属パイプ7の芯線挿入口10より、ストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ16の6側を隔壁8側に向けて入れ、押込み治具23により隔壁8に突き当るまで押し込む(図5(a))。図5(b)は押込みの最終状態を示す略図で、カートリッジ底部のコンパウンド6は圧縮スリーブ内壁部に回り込んで、間隙Gをコンパウンド6で密に充填した状態を示している。図5(c)は押込み治具23の正面図であり、押込み盤20は円盤状で、圧縮スリーブの内径dとほぼ同じ径を有し、押込み盤20の周側にはエアー抜きのためのスリット22が設けられている。また、押込み盤20のカートリッジ側は凹面状になっていて、コンパウンド6が付着しにくい形状とされている。
次に、本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブ1を用いた電線圧縮接続手順について説明する。
図1において、金属パイプ7の中央部の隔壁8に、ストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2を以上説明した手順で配設しておき、次に、絶縁被覆電線14の絶縁被覆13を剥離した電線の芯線14が、ストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ2の口元に突き当たるまで押し込んだ後、圧縮スリーブ1の端末部15を圧縮して電線を仮固定する。この後、隔壁8の中央部から圧縮スリーブの端末に向けて圧縮表示マークMに合わせて圧縮する。
以上の作業工程を図6によりさらに具体的に説明する。図6は適用電線が32mmの圧縮スリーブの寸法であり、同図(a),(b)は、使用した圧縮器が8tと12tとに対応するダイスの圧縮間隔を示すマークMの違いを示したものである。なお、圧縮間隔マークMの幅はダイスの幅よりも若干狭く表示されている。例えば8tの圧縮器では、ダイスの幅14mmに対してマークMは13mmとしてある。また、12tの場合は20mmに対して18.6mmとしてある。当然の事ながら、圧縮器容量が大きい場合では圧縮回数は少なくなる。
図6の(a)も(b)も隔壁の左右は対称形なので、説明を簡単にするため、以下左側部分について説明する。なお、圧縮試験に使用した電線サイズとダイスの寸法は表1のとおりである。
Figure 0004708486
また、圧縮スリーブとカートリッジの寸法は表2のとおりであり、特にカートリッジの長さは各サイズとも同一寸法とした。
Figure 0004708486
コンパウンド内蔵カートリッジストッパー型の圧縮スリーブの圧縮手順を再度まとめると、重複説明部分もあるが、以下のとおりである。
1)コンパウンド内蔵カートリッジを圧縮スリーブの隔壁際まで挿入する。
2)絶縁被覆を剥離した電線の芯線を芯線挿入口側から挿入する。
3)圧縮スリーブの端末部を1回圧縮して圧縮スリーブに電線を固定する。
4)圧縮スリーブの中央部から芯線挿入口側に向けて圧縮マークMに従い圧縮する。
5)確認孔からコンパウンドが漏れ出ていることを視認する。
6)以上の作業工程を圧縮スリーブの右側について繰り返す。
7)圧縮された圧縮スリーブ全体を覆う絶縁カバー(図示せず)を取り付ける。
8)絶縁カバーに絶縁粘着テープを巻きつけて防水処理を施す。
なお、5)の手順では確認孔よりコンパウンド漏出を確認後、適当な止め栓を装着して最後に止め栓装着部分を一括して圧縮するようにすれば、雨水等の侵入を確実に防止出来て都合が良い。なお、圧縮スリーブ箇所は、金属部分が露出しないように全体に絶縁防護カバーが取り付けられる。
以上のようにして圧縮接続作業は完了するが、8tの圧縮器で行った圧縮試験と接続部の性能を示すと表3のようであり、充分に規格値(引張荷重比(%)については95%以上、同長電線抵抗比(%)については100%以下)を満足していることが確認されている。
Figure 0004708486
以上の説明では、カートリッジ寸法を40mmとして圧縮スリーブの全長を出来る限り短くしたために、圧縮スリーブの内径dとカートリッジの外径dとの差によるリング状の隙間Gをコンパウンドで充填する必要があったのであるが、このために、面倒な押込み治具などを用いる必要があった。しかし、実験によれば、カートリッジ寸法を60〜70mm以上の長さとすれば、多少の上記の隙間があっても圧縮スリーブの圧縮変形によりカートリッジ内のコンパウンド吐出量をより多くすることが出来るので、電線の隙間を確実に水密構造に充填できることが確認されている。この場合では、圧縮スリーブの全長が長くなるものの、カートリッジを圧縮スリーブに挿入するだけでよいので施工が極めて容易になる。
〔発明の効果〕
本発明の電線接続用コンパウンド内蔵カートリッジストッパー型の圧縮スリーブよれば、以下のような効果が確実に期待できるものである。
1.従来のように長時間コンパウンドをスリーブ内に封止しておくのではなく、コンパウンド内蔵カートリッジを電線圧縮接続時に圧縮スリーブ内に挿入配設するので、コンパウンドの経時的汚損劣化あるいはコンパウンドの油成分分離などによる洩出などもなく、さらにコンパウンドの所要量を定量化できるので、無駄を省き高品質な圧縮接続作業を行うことが出来る。
2.圧縮接続時に効率的に圧縮スリーブ内の間隙部にコンパウンドが浸透するので、最短の圧縮長さで十分な耐荷重特性が得られ、コンパクトな圧縮スリーブとすることが出来る。
3.カートリッジの構成材料を軽量な樹脂などを用いて成形したので、カートリッジを安価に製作でき、また運搬なども至便である。
4.コンパウンド内に電線を直接押し込まないので、圧縮スリーブへの電線挿入が極めてスムースで容易である。また、コンパウンド内蔵カートリッジを適正な芯線挿入長さを示すストッパー兼ゲージとして利用できるから、確実な接続作業を行うことが出来る。また、スリーブの中央から芯線挿入口側に向けて圧縮するようにしたから、コンパウンドは強力な圧力でカートリッジから絞り出されて電線の撚り線隙間に浸透し、引張り特性の向上と共に確実な防水接続を行うことが出来る。
5.異種金同士を圧縮接続する場合に、その接続部に雨水などが侵入すると局部電池を形成して銅に対してイオン化傾向の大きいアルミが激しく腐食されるが、本発明ではコンパウンドによる撚り線隙間の水密化と相俟って、圧縮スリーブの芯線挿入口側からの雨水の浸入を防止するため、電線の被覆外径に嵌合する防水ブッシュを設けて水密化したので、異種金属同士の接続を可能とし確実に電蝕を防止出来る。
以上の説明では、圧縮接続するスリーブと電線の材質が同系の金属同士の場合を説明したが、本発明のストッパー兼用のコンパウンド内蔵カートリッジ型の圧縮スリーブでは、異種金属同士の圧縮接続する場合でも、電蝕などの不具合を確実に防止できる軽量で安価な接続を行うことが出来る。
例えば、絶縁被覆銅撚り線25をアルミスリーブで圧縮接続する場合を、以下に説明する。
図7は、その実施形態の1例を示す水密構造の電蝕防止型の圧縮スリーブ28の一部欠載正面断面図である。図1と共通する部分は同一符号で示したが、図中1はアルミ系の金属パイプ7からなる圧縮スリーブ1である。25は絶縁被覆銅撚り線で、24は絶縁被覆13を剥離した銅芯線である。圧縮スリーブ1の両端部には絶縁性のゴムまたは樹脂をモールドして形成した絶縁ブッシュ26が設けられている。絶縁ブッシュ26には、絶縁被覆銅撚り線25の被覆外径Dと嵌合する、所定の長さ「l(エル)」の円筒部27が形成されている。
本実施形態の場合でも、作業手順は先の図4の場合とほとんど同様であるが、略説すれば、アルミ圧縮スリーブ13の隔壁8の際に、コンパウンド内蔵ストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ2を配設し、次に、絶縁被覆銅撚り線25の芯線部24を絶縁ブッシュ26の芯線挿入口より挿入する。前記絶縁ブッシュの「l」の部分に絶縁被覆部13を挿入する際、アルミ圧縮スリーブ1内の空気は確認孔9から容易に排出されるので電線が挿入困難となることはない。
以上の操作が済めば、アルミ圧縮スリーブ1の確認孔9を避けてその先端部分15を圧縮して電線をアルミ圧縮スリーブ1に仮固定後、中央部から絶縁ブッシュ26の方向に向けて圧縮すればよい。
なお、絶縁ブッシュ26の材料はエチテンプロピレンゴムやシリコーンゴムなどが好適であるが、加熱して収縮するような熱収縮性のゴム材料で構成すれば、水密性は一段と優れたものとすることが出来るから、ゴムブッシュの芯線挿入口の防水処理として通常行われる、テープ巻き作業などを省略することが出来る。
さてここからは、図8〜10を参照して、本願発明の別の実施形態について詳細に説明する。
先に説明したように、図1は、本発明の圧縮スリーブ1であるが、図8における2’はストッパー兼用のチューブ体であり、圧縮スリーブ1の内径dよりも小径で、所定の長さL’を有している。その詳細な形状は、図8の正面図(a)と側面図(b)に示すように、一般には、ゴムや樹脂製の材料で押出成形・射出成形・圧縮成形などの成形方法で製作されるチューブまたはパイプ材である。また必要により、アルミあるいは銅材などのパイプ材が用いられる場合もある。
また、前記ストッパー兼用のチューブ体2’は、図9に示すように、チューブ体4’の外周長手方向に多数のヒレ5’を一体的に設けたヒレ付チューブ体3’も用いられる。同図の(a)は正面図で、(b)はその側面図であり、d’はチューブ体の外径、d’はヒレ部の外径である。
圧縮スリーブ1は種々の電線サイズによりその内径dが異なるので、本発明で用いるストッパー兼用のチューブ体2’は種々の外径dのものがあるが、多くのチューブサイズを揃えることはコストの面で不利となる。
そのため、ヒレ付チューブ体3の場合では、チューブ体4’の外径d’を圧縮スリーブ1の内径dよりも細くし、ヒレ部の外径d’を適用電線サイズに用いる圧縮スリーブの内径dよりも若干大径となるように形成しておくと、ヒレ付チューブ体3’の材質がゴムや樹脂の場合にはヒレ部が変形自在であるから、数種類の圧縮スリーブに共用化できて都合がよい。
また、図9のヒレ付チューブ体3’は、図8に示すようなチューブ体2’に比べて、圧縮スリーブが傾斜していても挿入時に落下しにくくなり装着が容易となると共に、ヒレ付チューブ体3’をコンパウンド6’内に埋設または埋没させたとき(図9(b)参照)には、前記ヒレ5’のためにコンパウンド6’の流動抵抗が増すので、コンパウンドの漏出防止にも有効である。
また、図示してはいないが、前記ヒレ5’を図9のように長手方向にストレートに設けるのではなく螺旋状に設ければ、コンパウンド内に埋没した時のヒレの接触長さが長くなるので、コンパウンドの漏出防止に一層効果的となる。
図1および図9に示すコンパウンド(6、6’)は、グリースが主材として用いられ、それに金属粒が混入されており、これにより、接続部の電気抵抗を改善し、摩擦力を高めて圧縮把持力を向上させ、金属接触面の酸化を防止できるようにしてある。前記コンパウンド6’は圧縮スリーブ1の隔壁底部の位置に予め注入されており、その注入量は、圧縮スリーブ1に装填されて圧縮された時、芯線10の撚り線の隙間を充填して確認孔9から若干漏れ出す程度の量とされる。
図10は施工方法の説明図であって、隔壁8の両脇の底部には、芯線14の挿入に先立ってコンパウンド6が注入してある。このコンパウンド6へのストッパー兼用のチューブ体2の埋設方法について、図10により以下説明する。
(1) 本発明による圧縮スリーブ1を用意する。
(2) コンパウンド6を中央の隔壁8の底部に注入充填する。
(3) ストッパー兼用のチューブ体2を、芯線挿入口10より、円盤17にエアー抜き孔を有する押込み治具16で押込む。
(4) ストッパー兼用のチューブ体2をコンパウンド6内に押し込んで完全に埋設する。
以上の様にして、ストッパー兼用のチューブ体2をコンパウンド内に埋設するが、図9のヒレ付チューブ体3’の場合もその施工方法は全く同一である。
次に、本発明の圧縮スリーブの圧縮接続工法について、図6の(a),(b)により具体的に説明する。同図(a),(b)は、適用電線が32mm に使用した圧縮器(8tと12t)に対応する、ダイスの圧縮間隔を示すマークMは、ダイスの幅よりも若干狭く表示されている。例えば、8tの圧縮器ではダイスの幅14mmに対して、マークMは13mmとしてある。また、12tの場合は20mmに対して18.6mmとしてある。即ち、図5の(a)に示すように、隔壁8の左右は対称形なので、説明を簡単にするため、以下左側部分について説明する。
なお、圧縮試験に使用した電線サイズとダイスの寸法は表4のとおりである。
Figure 0004708486
また、圧縮スリーブ1とチューブ体2の寸法は表5のとおりである。
Figure 0004708486
圧縮スリーブの圧縮手順は以下のとおりである。
1)チューブ体2を圧縮スリーブ1の隔壁8の底部まで押し込んでコンパウンド6に埋設する。
2)絶縁被覆13を剥離した電線12の芯線14を開口部10側から挿入する。
3)開口端部15を1回圧縮して圧縮スリーブ1に電線12を固定する。
4)圧縮スリーブ1の中央部から開口部10側に向けて圧縮マークMに従い圧縮する。
5)確認孔9からコンパウンド6が漏れ出ていることを視認する。
6)以上の作業工程を圧縮スリーブ1の右側について繰り返す。
7)圧縮された圧縮スリーブ1の開口部10近傍を絶縁性粘着テープで防水処理を施した後、全体を覆う絶縁カバー(図示せず)を取り付ける。
なお、上記の手順1)でのチューブ体2を圧縮スリーブ1の隔壁8際まで挿入する方法は、図10に関連して説明したように、蓮根を輪切りにしたような円盤17の中心に心棒を固着した治具16を用いて押し込むようにすれば、空気が抜けやすくなりチューブ体2を簡単にコンパウンド内に埋設することが出来る。
また、5)の手順では、確認孔よりコンパウンド漏出を確認後、適当な止め栓を装着して最後に止め栓装着部分を一括して圧縮するようにすれば、雨水等の侵入が防止出来て都合が良い。なお、圧縮スリーブは金属部分が露出しないように絶縁防護カバーが取り付けられる。
以上のようにして圧縮接続作業は完了するが、実施形態の1例として8tの圧縮器で行った圧縮試験と接続部の性能を示すと表6のようであり、充分に規格値(引張荷重比(%)については95%以上、同長電線抵抗比(%)については100%以下)を満足していることを確認した。
Figure 0004708486
[発明の効果]
以上の説明で分かるように、本発明の圧縮スリーブおよびその防水圧縮接続工法によれば、圧縮によりスリーブ内の体積が減少した量に相当するコンパウンドが、強制的に電線と圧縮スリーブの隙間およびの電線の鋼芯およびアルミ素線の撚り合わせ間隙部に確実に浸透し、コンパウンドに混合されている増摩剤により摩擦力を増大させて、短い圧縮長さで引張り力に対する抗張力を高め得るので、圧縮スリーブ全体がコンパクトなものにすることが出来るという従来の圧縮スリーブにはなかった効果を発揮させることが出来るのである。
また、この副次的な効果としてスリーブ内への電線挿入が容易で、且つ電線の撚り合わせ間隙部に確実にコンパウンドが浸透して水密構造を形成せしめ、接続部の電気抵抗の増加を抑制する、と言う効果も期待できるものである。従来、電線の撚り線隙間に確実にコンパウンドを浸透させるためには、圧縮長さに相当する電線部分を撚り戻して解体してからコンパウンドを塗布するとか、あるいは圧縮スリーブの圧縮部基部にコンパウンドを注入するためのねじ孔を設け、前記ねじ穴にポンプ注入部を螺合させて注入し、注入後に止め栓をねじ込んでねじ穴を塞ぐなどの面倒な行程を要していた。
また、従来のように、コンパウンド内に芯線を直接押し込んで圧縮接続をしようとすると、コンパウンドと電線との間でエアーが抜けず、芯線の挿入に困難を来していたが、本発明ではこうした不都合を完全に除去でき、しかも、チューブ体が適切な芯線挿入長さを規定するストッパーとしての作用を兼ねるので、高品質で確実な施工が容易に行える効果がある。
また、チューブ体をヒレ付チューブ体とすれば、スリーブが傾斜している場合でも圧縮スリーブから脱落する懸念がなくなり、例えば、ホットスティックを用いる活線工事などに本発明の圧縮スリーブを適用すれば、圧縮作業が一段と容易になる利点がある。さらに、予めコンパウンド内にヒレ付チューブ体を埋設したホットスティック対応型の圧縮スリーブとすれば、接続作業は電線を圧縮スリーブに挿入して圧縮するだけに接続作業が簡略化されるから、停止工事や活線工事など接続作業時間が制約を受ける場合などでは、極めて有用な電線接続用のホットスティック対応型の圧縮スリーブおよび防水圧縮接続工法とすることができる。
以上の説明では、電線を直線圧縮接続するスリーブの場合を説明したが、本発明の圧縮スリーブおよび防水圧縮接続工法では、電線サイズには限定されず、鋼芯のない全アルミより線でもよく、また、電線の分岐接続などの場合にも適用可能である。
また、チューブ体については図2,3で説明した構造に限定されず、例えば、圧縮スリーブ1の内径dよりも大径なチューブに一端を縦割りした構造のチューブ体を、その縦割り面を蚊取り線香状に巻き取り成型したものとすれば、1種類の縦割チューブ体で数種類の圧縮スリーブのチューブ体として兼用できて都合がよい。
1 圧縮スリーブ
2,16 ストッパー兼用コンパウンド内蔵カートリッジ
2’ ストッパー兼用チューブ体
3 ヒレ付カートリッジ
3’ ヒレ付のストッパー兼用チューブ体
4,4’ 円筒体のカートリッジ
5,5’ ヒレ
6,6,6’ コンパウンド
7 金属パイプ
8 隔壁
9 確認孔
10 芯線挿入口
11 テーパー加工
12 絶縁被覆電線
13 絶縁被覆部
14 芯線
15 圧縮スリーブの端末部
17 円筒袋体
18 芯材
19 支骨材
20 円盤
21 押込みロッド
22 スリット
23 押込み治具
24 銅芯線
25 絶縁被覆銅撚り線
26 絶縁ブッシュ
27 絶縁ブッシュの円筒部
28 電蝕防止型圧縮スリーブ
A 圧縮方向表示マーク
Dc 絶縁電線の被覆外径
圧縮スリーブの内径
,d’ カートリッジ外径
,d’ ヒレ部の外径
カートリッジ外径
G リング状の隙間
l 絶縁ブッシュの覆い深さ
M 圧縮位置表示マーク
L,L’ カートリッジまたはチューブ体の長さ

Claims (6)

  1. 圧縮スリーブの中に電線を挿入して圧縮接続する工法であって、
    前記圧縮スリーブは、中央に隔壁部を有する金属パイプからなり、
    前記隔壁部の底部に所定量のコンパウンドを注入し、前記圧縮スリーブの内径より小さな外径と所定の長さとを有するストッパー兼用のチューブ体を、前記コンパウンドに押し込んで埋設させ、
    前記圧縮スリーブの開口端側から絶縁被覆電線の芯線を挿入して、前記チューブ体の開口側端部に前記芯線の端面を当接させた後、前記圧縮スリーブの開口端部を仮圧縮して前記芯線を前記圧縮スリーブに仮止めした状態で、前記圧縮スリーブの中央より開口端部側に向けて圧縮接続を行い、前記圧縮スリーブと電線の隙間および電線の撚り合せ隙間に前記コンパウンドを強制的に注入することを特徴とする圧縮接続工法。
  2. 請求項1に記載の圧縮接続工法において、
    前記コンパウンドには増摩剤を混合し、圧縮により前記圧縮スリーブ内の体積が減少した量に相当する前記コンパウンドを、強制的に電線と圧縮スリーブの隙間および電線の撚り合わせ間隙部に浸透させ、摩擦力を増大させるとともに、圧縮長さ当たりの引張り力に対する抗張力を高める、ことを特徴とする圧縮接続工法。
  3. 請求項1に記載の圧縮接続工法において、
    前記チューブ体は、ゴムまたは樹脂からなる有機高分子材料、あるいは、アルミまたは銅の金属材料からなり、前記材料を、押出成形、射出成形、圧縮成形、プレス成形のいずれかにより成型して製作されることを特徴とする圧縮接続工法。
  4. 請求項3に記載の圧縮接続工法において、
    前記チューブ体は、一端が縦割りされて蚊取り線香状に渦巻き成型されてなることを特徴とする圧縮接続工法。
  5. 請求項3に記載の圧縮接続工法において、
    前記チューブ体は、その外周に多数条の長手方向に伸びるヒレを設けたことを特徴とする圧縮接続工法。
  6. 請求項3に記載の圧縮接続工法において、
    前記チューブ体の外周に設けた多数の長手方向に伸びるヒレは、ヒレ全体が螺旋状に形成されていることを特徴とする圧縮接続工法。
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