JP4708002B2 - 電磁波発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、周波数が高い電磁波、例えば、テラヘルツ波を発生する電磁波発生装置に関する。
周波数がテラヘルツ領域(一般に0.1THz〜10THz)である電磁波は、光と電波との境界領域に属し、電波のもつ透過性と光のもつ直進性とを有する。また、この領域の電磁波(以下、「テラヘルツ波」という。)は、物質に固有の吸収スペクトルを多数有する。それゆえ、テラヘルツ波は、例えば、封筒中の郵便物検査、食品検査、所持物検査、薬物分析、皮膚がん検査、半導体の不純物量検査、複素誘電率評価等の、医学応用、環境計測、工学応用等多数の産業分野での使用が期待されており、近年、その研究開発が活発に行なわれている。
テラヘルツ波の発生方法として、広く用いられている方法は、光伝導素子(フォトコンダクタ)を用いる方法である。その従来例を図15(非特許文献1参照)を用いて説明する。半絶縁性のGaAs基板91上に分子線エピタキシャル成長法により、低温成長GaAs層92が形成されている。GaAs層92は、低温(約200℃)で形成されると、移動度が比較的大きいまま、ピコ秒(10-12sec)以下のキャリア寿命を持つことが知られており、極短パルス(ピコ秒以下)に応答する高速光導電膜として有用である。GaAs層92の表面には、電極2と電極3とが形成されている。電極2及び電極3は、テラヘルツ波が放射しやすいダイポールアンテナを形成している。電極2と電極3との間隙(ギャップ)は5μmである。電極2と電極3との間には電源5により約30Vの電圧が印加される。この電極間隙のGaAs層部分4に、照射時間がフェムト秒の短いパルス光(たとえば、約80fsec,波長約780nm,Arレーザ励起モードロックTi:サファイアレーザ使用)を照射すると、このパルス光は、電極間隙のGaAs層部分4の内部(光吸収部)で電子と正孔とを発生させる。光吸収部には電界があるため、電子及び正孔は、電極間隙をキャリア寿命の間だけ移動する。この結果、ピコ秒オーダの単パルス電流が発生する。よく知られているように、電流の時間変化は、電磁波となって放射される。この電磁波のスペクトルは直流〜数THzまであり、テラヘルツ帯までの広い帯域の電磁波が得られる。
上記ではテラヘルツ波発生部として低温成長GaAs層92を用いたが、非特許文献1に示されているように、テラヘルツ波発生部として半絶縁性のGaAs基板を用いることも可能である。半絶縁性のGaAsのキャリア寿命は、数100psecもあるが、移動度は低温成長GaAsに比べて10倍以上(7000cm2/Vs以上)もある。移動度が大きいということは、電流の立ち上がりの時間変化が大きいということである。その時間微分である電磁波をフーリエ展開した成分には、テラヘルツ成分が含まれる。この結果、テラヘルツ波発生部として半絶縁性のGaAs基板を用いても、テラヘルツ波が放射される。
M. Tani et.al., "Emission characteristics of photoconductive antennas based on low-temperature-grown GaAs and semi-insulating GaAs", Applied Optics, vol.36, No.30, 7853 (1997)
これまでのテラヘルツ波を発生する電磁波発生装置は、フェムト秒レーザからの多量の光が照射されるので、比較的高出力のテラヘルツ波を出力することができる。しかし、今後、電磁波発生装置を普及させるためには、省電力化が必要であり、そのためには、少量の光が照射されても、高出力のテラヘルツ波を放出する電磁波発生装置が提供されることが求められている。少量の光であるほど、フェムト秒レーザを駆動する際に必要な電力が下がるためである。
しかるに、図15から明らかなように、これまでの電磁波発生装置における光入射表面は平面である。光は平面である光入射表面に入射すると、多くがその表面で反射し、光吸収部に到達する光の量は入射した光の量から大きく減少する。そのため、少量の光を入射して高出力のテラヘルツ波を発生させることは難しい。
本発明は、上記課題を考慮し、入射光の量が少なくても高出力のテラヘルツ波を発生する電磁波発生装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明の電磁波発生装置は、光が入射された場合に電磁波を発生する電磁波発生装置であって、半導体の層と、前記層の上に設けられた第1の電極及び第2の電極とを備え、前記層の上面の前記第1の電極と前記第2の電極とで挟まれている領域に、屈折率が周期的に変化している屈折率変化部が設けられている。
屈折率変化部が設けられているので、第1の電極と第2の電極との間の半導体の層での光の吸収が従来よりも多くなる。これにより、本発明の電磁波発生装置は、入射光の量が少なくても高出力のテラヘルツ波を発生することができる。
屈折率変化部は、いわゆるフォトニック結晶といわれるものである。(フォトニック結晶に関しては、例えば、迫田和彰著「フォトニック結晶入門」に詳しく述べられている)。光が入射される部分にいわゆるフォトニック結晶が形成されていることにより、入射光の動き(進行方向や進行速度)を制御することができる。この結果、光吸収部に多くの光を取り入れることが可能で、僅かな入射光でも半導体の層の内部の光吸収部で多くの電子・正孔対が生成され、より高出力な電磁波を得ることができる(高効率化できる)。
なお、半導体の層の上面に屈折率変化部を形成することは、半導体リソグラフィー技術を用いれば容易であり、本構造は生産性が高い。
また、第1の電極及び第2の電極はいわゆるアンテナである。従って、屈折率変化部で生成された電荷の移動による電磁波の放射をより効率的に行なうことができる。電荷の移動のメカニズムとしては、外部印加電界によるクーロン力の他、電荷密度勾配による拡散等がある。
また、第1の電極と第2の電極との間には電圧が印加される。電極間に電圧が印加されると、光吸収部に電界が発生する。この電界により、光吸収部で生成された電荷はクーロン力により移動する。すなわち、外部電圧により、電荷の動き、すなわち電流Iを制御することができる。放射される電磁波の電界Eは、電流Iの時間微分に比例する。すなわち、E ∝ ∂I/∂tが成立する(tは時間である。)。電流Iの制御により放射電磁界の特性(周波数や強度等)を変えることができる。
ここで、本発明の電磁波発生装置における前記屈折率変化部の、前記第1の電極及び前記第2の電極の対向する各部位相互を結ぶ複数の直線の少なくとも一個については、屈折率は変化していなくてもよい。
この構成により、屈折率が変化していない直線部分においては電気力線は阻害されないので、電荷は高速で移動することができ、電磁波発生装置は広帯域なテラヘルツ波を放射することができる。
また、前記屈折率変化部の、前記第1の電極及び前記第2の電極の対向する各部位相互を結ぶ全部の直線について、屈折率は周期的に変化していてもよい。
この構成により、電気力線が阻害され、電荷の走行はその付近で減速される。その結果、流れはじめた電流が減少する。この電流変調により、電磁波発生装置は、より効率的に高周波の電磁波を放射することができる。
前記屈折率変化部の光バンド構造において、前記光バンド構造の角周波数をω、波数をk、光速をc、前記層の電子が生成される部位の屈折率をnとした場合、“|∂ω/∂k|<0.6(c/n)”が成立することが好ましい。
光速c,周波数f,波長λには、c=fλという関係がある。光が、屈折率nが一様な媒質に入射したとき、周波数は変化しないので、次式が成立する。
ω=2πf=(c/n)・2π/(λ/n)=(c/n)・k(kは波数である。)
従って、上記一様な媒質中の光の群速度v1は、次式で表される。
v1=∂ω/∂k=c/n
他方、光が、屈折率nが周期的に変化している媒質に入射したとき、光の群速度v2(=∂ω/∂k)は、一定ではなく、k方向によって変化する。
ところで、群速度が小さいと、媒質中における光の滞在時間が長くなり、その媒質中における光の吸収率は大きくなる。入射光を有効に使おうとすると、少なくとも入射光の50%以上は吸収される必要がある。後に図6を用いて説明するが、群速度の低下率をv2/v1と定義すると、半導体がGaAsであれば、入射光の50%以上を半導体GaAsに吸収させようとすると、群速度の低下率を60%以下にする必要がある。従って、上記の式“|∂ω/∂k|<0.6(c/n)”が成立することが好ましい。他の半導体についても、入射光の50%以上をその半導体に吸収させようとすると、上記の式が成立することが好ましい。
本発明の電磁波発生装置の前記領域の前記上面から所定の深さまでの部位は、厚み方向に屈折率が周期的に変化していてもよい。
この構成により、三次元のフォトニック結晶が形成され、光の閉じ込め効果が高くなる。それゆえに極僅かな光で効率よく電荷を生成することができる。
前記領域の前記上面から所定の深さまでの部位は、異なる半導体材料が積層され、ヘテロ接合が形成されていてもよい。
この構成により、ヘテロ界面には二次元電子ガスが生成されるので、より高速な電荷移動が可能となり、電磁波発生装置は広帯域なテラヘルツ波を発生することができる。
ここで、前記領域の厚み方向に屈折率が周期的に変化している部位において、前記厚み方向の変化している屈折率の周期をa、前記光の波長をλ、自然数をmとした場合、“a=λ/(2m)”が成立することが好ましい。
上記の式が成立する場合、入射光とフォトニック結晶との干渉が強まり、より強くフォトニック結晶の効果を発揮させることができる。
また、前記屈折率変化部の変化している屈折率の周期をa、電荷の平均移動速度をv、電荷の寿命をτとした場合、“vτ≦aが成立する”ことが好ましい。
入射光は前記屈折率変化部で多重反射するので、生成された電子の密度には、疎な部分と密な部分とが発生する。 “vτ≦a”が成立すれば、隣接する電子の密な部分相互が干渉することは少なく、電子の散乱により移動度が低下することを少なくすることができ、良好な電気特性を得ることができる。
本発明の電磁波発生装置の製造方法は、光が入射された場合に電磁波を発生する電磁波発生装置を製造する方法であって、半導体の層の上面の所定の領域に屈折率が周期的に変化している屈折率変化部を形成し、前記上面の、形成した前記屈折率変化部を挟む部位に、第1の電極及び第2の電極を形成する。
屈折率変化部は、電子ビームを用いて露光することによって形成する場合が多く、電子が半導体の層の表面にたまり、静電気を帯びやすい。このため、屈折率変化部を形成する前に第1の電極及び第2の電極を形成すると、電極間で静電破壊を起こし、半導体の層の表面に損傷を与える。従って、電極を形成する工程を、屈折率変化部を形成する工程より後にすることにより、電極間での静電破壊をなくし、生産性よく、電磁波発生装置を製造することができる。
本発明は、入射光の量が少なくても高出力のテラヘルツ波を発生する電磁波発生装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態における電磁波発生装置の斜視図である。
クロムがドープされた半絶縁性のGaAs基板1の上に、Auによる電極2及び電極3が形成されている。電極2及び電極3ともに幅10μm、長さ(奥行き)25μmであり、電極2と電極3との間隔は5μmである。GaAs基板1の表面部の電極2と電極3との間の領域4には、円形の微小な穴10が碁盤目状に周期的に形成されている。この穴10には空気が存在し、穴部の屈折率は1である。他方、穴10以外の場所はGaAsで形成された平面であって、屈折率は3.5である。この結果、電極2と電極3との間の領域4は、二次元において屈折率が周期的に変化したフォトニック結晶が形成されていることになる。電極2と電極3との間には電源5により電圧が印加される。入射光は波長780nm、80fsecのフェムト秒ファイバーレーザからのパルス光である。
上記フォトニック結晶の微小穴10の配置例として、図2から図4に示す3種類が例示される。
図2の例では、穴10の周期aは0.35μmであり、隣接する2個の穴10相互のうちで最も距離の短いものを穴10の周期aであると定義すると、穴10の半径は周期aの0.2倍(0.07μm)である。図2のGaAs基板1の表面部の電極2と電極3との間の領域4(フォトニック結晶4)のバンド構造を図5に示す。図2に示すフォトニック結晶4では、入射光の波長が780nmであるので、穴10の周期a(格子間隔a)/波長は0.45である。図5から明らかなように、上記波長に対しては、波数空間でX→M方向の光に対して群速度はほぼ零である(図5より、∂(ωa/2πc)/∂k〜0であり、a、cは定数であるから、群速度∂ω/∂k〜0になる)。これは、図2に示すフォトニック結晶4に入射する光がフォトニック結晶4の内部で局在化することを示す。GaAs基板1は上記の波長の光を吸収する。このため、局在化する光は効率的にGaAs基板1に吸収され、電子・正孔対を生成し電気伝導に寄与する。
群速度の低下率と光の吸収量との関係を図6に示す。群速度の低下率は、屈折率が周期的に変化する媒質に入射した光の群速度を、屈折率が一様な媒質に入射した光の群速度で除した値である。GaAs層に入射する光の波長(780nm)において、GaAs層の吸収係数は約10000cm-1である。入射光を有効に使うためには、少なくとも入射光の50%以上はGaAs層に吸収される必要がある。そのため、図6に示すように、群速度の低下率は、60%以下にする必要がある。つまり、屈折率が周期的に変化したフォトニック結晶4の光バンド構造において、その光バンド構造の角周波数をω、波数をk、光速をc、光が照射され電子が生成する部分の屈折率をnとしたとき、次式(数1)が満たされる必要がある。
(数1)
|∂ω/∂k|<0.6(c/n)
なお、フォトニック結晶が電極間に形成されていない従来の場合(つまり群速度低下率=100%)、図6から明らかなように、入射光の40%程度しかGaAs層に吸収されない。
また、ここでは、GaAsの場合を示したが、他の半導体においても、安定な光吸収が行なわれる波長域では、吸収係数が、およそ10000cm-1となる。したがって、他の半導体に対しても、(数1)を適用することができる。
次に、図3の例では、穴10は三角格子状に配置されている。図7に、図3に示すフォトニック結晶4を拡大して示す。図3及び図7に示すように、隣接する3個の穴10が正三角形を形成するように、各穴10は周期的に形成されている。隣接する2個の穴10相互のうちで最も距離の短いものを穴10の周期aであると定義すると、穴10の周期aは0.33μmであり、穴10の半径は周期aの0.3倍(0.1μm)である。この構造におけるフォトニック結晶4のバンド構造を図8に示す。図3に示すフォトニック結晶4では、入射光の波長が780nmであるので、穴10の周期a/波長は0.42である。上記波長に対しては、図8から明らかなように、波数空間でK→Γ方向の光に対して群速度はほぼ零である(∂(ωa/2πc)/∂k〜0)。これは、図3に示すフォトニック結晶4に入射する光がフォトニック結晶4の内部で局在化することを示す。GaAs基板1は上記の波長の光を吸収する。このため、局在化する光は効率的にGaAs基板1に吸収され、電子・正孔対を生成し電気伝導に寄与する。
図4の例では、穴10の周期、半径、及び配置は図3の場合と同様であるので、図4に示すフォトニック結晶4のバンド構造は、図8に示すバンド構造である。従って、フォトニック結晶4に入射する光はフォトニック結晶4の内部で局在化し、効率的に吸収される。
しかしながら、図4に示すフォトニック結晶4と、図3に示すフォトニック結晶4とでは、以下の点が異なる。
図3に示すフォトニック結晶4では、電極2の電極3と対向する辺(以下、「電極先端辺」という。)2aと、電極3の電極2と対向する辺(以下、「電極先端辺」という。)3aとの対向する部位相互を結ぶ複数の直線の一部について、その直線上に穴10が存在していない。それに対して、図4に示すフォトニック結晶4では、電極2の電極先端辺2aの各部と、電極3の電極先端辺3aとの対向する部位相互を結ぶ全部の直線上に穴10が存在している。
従って、図4に示すフォトニック結晶4では、図9(c)に示すように、電極2の電極先端辺2aから電極3へ向かう全ての電子303は、フォトニック結晶4を構成する穴10と衝突し、電子の流れの向きが変化する。電気力線304も蛇行する。そのため、入射光と電子流とが共鳴し、入射光による電子・正孔対の生成確率が大きくなる。その結果、わずかな入射光に対しても効率的に電荷を生成させることができる。これにより、図4に示すフォトニック結晶4を有する電磁波発生装置は、高出力のテラヘルツ波を出力することができる。
他方、図2及び図3に示すフォトニック結晶4では、図9(a),(b)に示すように、電極2の電極先端辺2aから電極3へ向かう電子301,302は、フォトニック結晶4を構成する穴10と衝突しない。従って、電子301,302は、電極2から電極3へ高速で移動する。これにより、図2及び図3に示すフォトニック結晶4を有する電磁波発生装置は、広帯域なテラヘルツ波を放射することができる。
図10は、第1の実施の形態の電磁波発生装置(図2〜4のフォトニック結晶構造を有する電磁波発生装置)の入射光量に対するテラヘルツ波の出力を示す。電極2と電極3との間には20Vが印加されている。入射光の局在化及び、入射光と電子とが共鳴することにより、第1の実施の形態の電磁波発生装置は、フォトニック結晶が電極間に形成されていない従来の場合に比べて、テラヘルツ波を高出力で出力することができていることがわかる。
ここで、フォトニック結晶4の穴10の周期をa、電荷の平均移動速度をv、電荷の寿命をτとした場合、“vτ≦aが成立する”ことが好ましい。
入射光はフォトニック結晶4で多重反射するので、図11に示すように、生成された電子の密度には、疎な部分と密な部分とが発生する。 “vτ≦a”が成立すれば、隣接する電子の密な部分相互が干渉することは少なく、電子の散乱により移動度が低下することを少なくすることができ、良好な電気特性を得ることができる。
次に、第1の実施の形態の電磁波発生装置の製造方法を説明する。
フォトニック結晶の構造は図2〜図4の三種類存在するが、その製造方法は同じである。
先ず、図12(a)に示す半絶縁性のGaAs基板1の上に、図12(b)に示すように、フォトレジスト21を塗布して硬化し、電子ビームを用いた露光によりフォトニック結晶4のパターン22を形成する。電子ビームの描画プログラムを変更するだけで、図2〜図4の各フォトニック結晶4に対応するパターンを得ることができる。
次に、図12(c)に示すように、リアクティブエッチング装置を用いて、GaAs基板1の表面に穴10を形成し、図12(d)に示すように、フォトレジスト21を取り除く。次に、図12(e)に示すように、再び、フォトレジストを塗布して硬化し、マスクアライナ装置とフォトマスクとを用いて、電極部分のパターン24を形成する。次に、図12(f)に示すように、抵抗加熱蒸着装置を用い、金25を全面に形成する。次に、リフトオフ法を用いてフォトレジストを剥離し、図12(g)に示すように、電極2及び電極3を形成する。以下、ダイシングを行なうことにより、第1の実施の形態の電磁波発生装置は完成する。
(第2の実施の形態)
図13は第2の実施の形態における電磁波発生装置の斜視図である。
クロムがドープされたGaAs基板1の上に、クロムがドープされた半絶縁性のAl0.1Ga0.9As層33と、クロムがドープされた半絶縁性のGaAs層32とが交互に二層ずつ形成されている。層33及び層32の厚みはともに0.39μmである。最上層32の上には、Auによる電極2及び電極3が形成されている。電極2及び電極3ともに幅10μm、長さ(奥行き)25μmであり、電極2と電極3との間隔は5μmである。電極2と電極3との間の領域31には、円形の微小な穴10(深さ1.6μm)が碁盤目状に周期的に形成されている。その周期(隣接する穴10相互の距離)は0.39μmである。この穴10には空気が存在し、穴部の屈折率は1である。他方、穴10以外の場所はGaAsで形成された平面であって、屈折率は3.5である。Al0.1Ga0.9Asの屈折率が3.45であるので、電極2と電極3との間の領域31は、二次元において屈折率が周期的に変化した部位と、層の厚み方向の屈折率が周期的に変化した部位とを有する三次元のフォトニック結晶が形成されていることになる。このフォトニック結晶の周期(隣接する穴10相互の距離及び各層の厚み)は、入射光の波長(780nm)の半分の0.39μmであり、入射光と電子とが強く干渉し、光を閉じ込める。
入射光は波長780nm、80fsecのフェムト秒ファイバーレーザからのパルス光である。Al0.1Ga0.9Asのバンドギャップが約0.8eVであるので(例えば、応用物理学会編「半導体レーザ」オーム社、1994年を参照)、入射光はGaAs層32及びAl0.1Ga0.9As層33で電子・正孔対を生成させる。また、電子は、Al0.1Ga0.9As層33とGaAs層32とのヘテロ界面に溜まり、ヘテロ界面でいわゆる二次元電子ガス状態で存在する。そのため、電子は、散乱が小さく高速に動作することが可能である。この電子の高速動作により、第2の実施の形態における電磁波発生装置は、10THz以上のテラヘルツ波を含む電磁波を放射する。
次に、第2の実施の形態の電磁波発生装置の製造方法を説明する。
先ず、図14(a)に示すように、GaAs基板1の上に、分子線エピタキシャル成長法を用いて、クロムがドープされたAl0.1Ga0.9As層33とクロムがドープされたGaAs層32とを順次2層ずつ形成する。その上に、図14(b)に示すように、フォトレジスト21を塗布して硬化し、電子ビームを用いた露光によりフォトニック結晶4のパターン22を形成する。
次に、図14(c)に示すように、リアクティブエッチング装置を用いて、最上層のGaAs層32から穴10を形成する。穴10の深さは、Al0.1Ga0.9As層33の2層及びGaAs層32の2層の合計4層を貫く深さである。次に、図14(d)に示すように、フォトレジスト21を取り除く。次に、図14(e)に示すように、再び、フォトレジストを塗布して硬化し、マスクアライナ装置とフォトマスクとを用いて、電極部分のパターン24を形成する。次に、図14(f)に示すように、抵抗加熱蒸着装置を用い、金25を全面に形成する。次に、リフトオフ法を用いてフォトレジストを剥離し、図14(g)に示すように、電極2及び電極3を形成する。以下、ダイシングを行なうことにより、第2の実施の形態の電磁波発生装置は完成する。
なお、上述した実施の形態では、穴10を設けることにより、フォトニック結晶4の屈折率を周期的に変化させたが、屈折率を周期的に変化させる方法は上記の方法に限定されない。例えば、穴10にSiO2等の材料を充填することにより、フォトニック結晶4の屈折率を周期的に変化させてもよい。要するに、フォトニック結晶4の屈折率を周期的に変化させることにより、入射光を電極2と電極3との間の半絶縁性のGaAs基板(層)に局在化させ、光の吸収率を向上させさえすればよい。
また、半導体材料はGaAsに限定されない。
本発明の電磁波発生装置は、テラヘルツ波を発生する装置として有用であり、医用分野等で使用することができ、産業上の利用価値は高い。
第1の実施の形態における電磁波発生装置の斜視図 第1の実施の形態における電磁波発生装置の微小穴の配置を示す第1の図 第1の実施の形態における電磁波発生装置の微小穴の配置を示す第2の図 第1の実施の形態における電磁波発生装置の微小穴の配置を示す第3の図 図2の電磁波発生装置のバンド構造を示す図 群速度の低下率と光の吸収量との関係を示す図 図3の電磁波発生装置の微小穴の配置の拡大図 図3の電磁波発生装置のバンド構造を示す図 図2から図4の各電磁波発生装置が発揮する効果を説明するための図 図2から図4の各電磁波発生装置及び従来の電磁波発生装置が出力するテラヘルツ波の出力を示す図 生成された電子の、密度が疎な部分と密な部分とを示す図 第1の実施の形態における電磁波発生装置の製造方法を示す図 第2の実施の形態における電磁波発生装置の斜視図 第2の実施の形態における電磁波発生装置の製造方法を示す図 従来の電磁波発生装置の斜視図
符号の説明
1 GaAs基板
2,3 電極
4 フォトニック結晶
5 電源
10 穴
32 GaAs層
33 Al0.1Ga0.9As層

Claims (10)

  1. 光が入射された場合に電磁波を発生する電磁波発生装置であって、
    半導体の層と、
    前記層の上に設けられた第1の電極及び第2の電極とを備え、
    前記層の上面の前記第1の電極と前記第2の電極とで挟まれている領域に、屈折率が周期的に変化している屈折率変化部が設けられ
    前記屈折率変化部の変化している屈折率の周期は、前記光が前記層に局在するように、前記屈折率変化部の構造と、前記光の波長とによって決定される
    電磁波発生装置。
  2. 前記屈折率変化部の、前記第1の電極及び前記第2の電極の対向する各部位相互を結ぶ複数の直線の少なくとも一個については、屈折率は変化していない
    請求項1記載の電磁波発生装置。
  3. 前記屈折率変化部の、前記第1の電極及び前記第2の電極の対向する各部位相互を結ぶ全部の直線について、屈折率は周期的に変化している
    請求項1記載の電磁波発生装置。
  4. 前記屈折率変化部の光バンド構造において、前記光バンド構造の角周波数をω、波数をk、光速をc、前記層の電子が生成される部位の屈折率をnとした場合、
    |∂ω/∂k|<0.6(c/n)が成立する
    請求項1記載の電磁波発生装置。
  5. 前記領域の前記上面から所定の深さまでの部位は、厚み方向に屈折率が周期的に変化している
    請求項1記載の電磁波発生装置。
  6. 前記領域の前記上面から所定の深さまでの部位は、異なる半導体材料が積層され、ヘテロ接合が形成されている
    請求項記載の電磁波発生装置。
  7. 前記厚み方向に変化している屈折率の周期をa、前記光の波長をλ、自然数をmとした場合、
    a=λ/(2m)が成立する
    請求項記載の電磁波発生装置。
  8. 前記屈折率変化部の変化している屈折率の周期をa、電荷の平均移動速度をv、電荷の寿命をτとした場合、
    vτ≦aが成立する
    請求項1記載の電磁波発生装置。
  9. 前記屈折率変化部の変化している屈折率の周期は、前記光の波長より短い
    請求項1記載の電磁波発生装置。
  10. 光が入射された場合に電磁波を発生する電磁波発生装置を製造する方法であって、
    半導体の層の上面の所定の領域に屈折率が周期的に変化している屈折率変化部を形成し、
    前記上面の、形成した前記屈折率変化部を挟む部位に、第1の電極及び第2の電極を形成し、
    前記屈折率変化部の変化している屈折率の周期を、前記光が前記層に局在するように、前記屈折率変化部の構造と、前記光の波長とによって決定する
    電磁波発生装置の製造方法。
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