JP4699008B2 - 酵素反応試薬 - Google Patents
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Description
(1)少なくとも緩衝液またはその成分、酵素、硫酸アンモニウムを含む試薬からなり、緩衝液またはその成分と硫酸アンモニウムとの接触が減じられていることを特徴とする酵素反応試薬。
(2)硫酸アンモニウムと接触する緩衝液またはその成分のモル数を、硫酸アンモニウムのモル数の1/12以下とする上記(1)に記載の酵素反応試薬。
(3)緩衝液またはその成分を含む乾燥試薬球(以下、第1乾燥試薬球)と、硫酸アンモニウムを含む乾燥試薬球(以下、第2乾燥試薬球)とからなり、第2乾燥試薬球中には、緩衝液またはその成分が含まれないか、あるいは、硫酸アンモニウムのモル数の1/12以下の緩衝液またはその成分が含まれることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の酵素反応試薬。
(4)隔膜によって緩衝液またはその成分と硫酸アンモニウムとの接触が減じられていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酵素反応試薬。
(5)酵素、緩衝液またはその成分、硫酸アンモニウムを含有する試薬キットであって、該試薬キットは、緩衝液またはその成分が収容される試薬収容容器(以下、第1容器)と、硫酸アンモニウムが収容される試薬収容容器(以下、第2容器)を含み、第2容器には、緩衝液またはその成分が含まれないか、あるいは、硫酸アンモニウムのモル数の1/12以下のモル数の緩衝液またはその成分が含まれ、酵素が少なくとも第1容器あるいは第2容器のいずれかに含まれることを特徴とする試薬キット。
(6)酵素が収容される試薬収容容器内の試薬群は乾燥し、酵素が収容されない試薬収容容器内の試薬群は液状であることを特徴とする上記(5)に記載の試薬キット。
(7)酵素が収容される試薬収容容器内の試薬群は、凍結乾燥により乾燥され、球状多孔体を形成していることを特徴とする上記(6)に記載の試薬キット。
(8)酵素が収容される試薬収容容器内に、安定化剤が含まれることを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれかに記載の試薬キット。
(9)安定化剤が糖であることを特徴とする上記(8)記載の試薬キット。
(10)酵素がDNAポリメラーゼであることを特徴とする上記(5)〜(9)のいずれかに記載の試薬キット。
(11)酵素、緩衝液またはその成分、硫酸アンモニウムを含有する試薬キットであって、該試薬キットは緩衝液またはその成分を含有する乾燥試薬球(以下、第1乾燥試薬球)と、硫酸アンモニウムを含有する乾燥試薬球(以下、第2乾燥試薬球)を含み、第2乾燥試薬球中には、緩衝液またはその成分が含まれない、あるいは硫酸アンモニウムのモル数の1/12以下の緩衝液またはその成分が含まれ、酵素が少なくとも第1乾燥試薬球あるいは第2乾燥試薬球のいずれかに含まれることを特徴とする試薬キット。
(12)酵素、緩衝液またはその成分、硫酸アンモニウムを含有する試薬キットの酵素活性を維持する方法であって、緩衝液またはその成分と硫酸アンモニウムの接触を減ずることを特徴とする酵素の活性維持方法。
(13)硫酸アンモニウムに接触する緩衝液またはその成分のモル数が、硫酸アンモニウムのモル数の1/12以下であることを特徴とする上記(12)に記載の酵素の活性維持方法。
特に、凍結乾燥させた試薬は多孔質構造体となるので、短時間に少量の液体に溶解させることができ、酵素反応試薬として優れており、25μlの液体に30秒以内に溶解させることも可能である。
(1)硫酸アンモニウムを必要とする酵素の反応試薬であって、少なくとも緩衝液またはその成分、無機塩を含む第一試薬と、少なくとも酵素、基質、硫酸アンモニウム、安定化剤を含む第二試薬とからなり、第一試薬がpH7.5乃至9.0であることを特徴とする液状試薬であり、第二試薬が緩衝液またはその成分を含まないか、あるいは硫酸アンモニウムのモル数の12分の1以下に調整した乾燥試薬であって、使用直前に第一試薬にて溶解することを特徴とする酵素反応試薬である。
(2)望ましくは、第二試薬が凍結乾燥された球状多孔性構造体からなる上記(1)の酵素反応試薬。
(3)さらに望ましくは、第二試薬が30秒で25μlの第一試薬に完全に溶解することが出来る上記(1)または(2)の酵素反応試薬。
(5)あるいは、上記(2)の球状多孔構造体が構造的に2つに分離されている酵素反応試薬。
(6)上記(2)の球状多孔性構造体である第二試薬は、10%未満の含水量を有することが望ましい。
(7)室温保存で安定である上記(1)または(2)の第一試薬及び第二試薬。
(8)上記(1)または(2)の第二試薬に含まれる安定化剤は糖であることが望ましい。
(9)さらに、上記糖が、トレハロース、ラフィノース、マルトース、マルトトリオース、ラクトース、デキストラン、およびスクロースからなる群から選択されることが望ましい。
(10)またさらに、上記(1)、(2)、(7)、(8)のいずれかの第二試薬に含まれる酵素としてDNAポリメラーゼが例示される。
(11)望ましくは、上記DNAポリメラーゼとしてBst DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Tfl DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼからなる群から選択される少なくとも1つのDNAポリメラーゼが例示される。
(12)上記(1)、(2)、(7)、(8)、(10)のいずれかの酵素反応試薬を用い、第二試薬を予め反応容器に所定の容量を入れた状態で室温もしくは冷蔵にて保管し、室温もしくは冷蔵にて保管した第一試薬を所定量注入して酵素反応を測定する酵素反応試薬キット。
(13)上記(1)、(2)、(7)、(8)、(10)のいずれかに記載の酵素反応試薬を用いる酵素反応測定方法。
(14)(a)酵素、基質、硫酸アンモニウム、安定化剤を含む第二試薬の水溶液を用意し、(b)比重1.0未満の不活性な溶媒を準備し、(c)均一にした第二試薬を上記溶媒中に分注して液滴を球状に形成させ、(d)上記溶媒及び液滴を冷却して液滴を凍結させ、そして(e)球体形状を保つのに適当な条件下で上記液滴を乾燥して酵素反応試薬球体を形成させる各工程を含んでなる酵素反応試薬球体を製造し、これを使用直前に緩衝液またはその成分、無機塩を含む第一試薬にて溶解することを特徴とする酵素反応試薬球体を製造する方法。
(15)望ましくは、第一試薬がpH7.5乃至9.0である液状試薬であり、第二試薬が緩衝液またはその成分を含まないか、もしくは第一試薬に含まれる緩衝液またはその成分の12分の1以下の濃度で調製した乾燥試薬球体となるように製造する上記(14)の方法。
(16)あるいは、酵素反応試薬球体が約10%未満の水分を含むように減圧乾燥を続ける、上記(14)の方法。
(17)もしくは、酵素反応試薬球体が、約1mm〜約5mmの直径を有する、上記(14)の方法。
(18)さらに、第二試薬に含まれる酵素がDNAポリメラーゼであり、安定化剤が糖である上記(14)の方法。
(19)そして、上記(14)の方法に従って製造される酵素反応試薬球体。
(20)また、(a)酵素、基質、安定化剤を含む水溶液、及び硫酸アンモニウムを単独で含む水溶液を用意し、(b)比重1.0未満の不活性な溶媒を準備し、(c)均一にした2種の水溶液をそれぞれ、上記溶媒中に分注して液滴を球状に形成させ、(d)上記溶媒及び液滴を冷却して液滴を凍結させ、そして(e)球体形状を保つのに適当な条件下で上記液滴を乾燥して酵素反応試薬球体を形成させる各工程を含んでなり、この2種類の酵素反応試薬球体をあわせて第二試薬とし、使用直前に緩衝液またはその成分、無機塩を含む第一試薬にて溶解することを特徴とする酵素反応試薬球体を製造する方法。
(21)望ましくは、第一試薬がpH7.5乃至9.0であり、硫酸アンモニウムを含まないことを特徴とする液状試薬である、上記(20)の方法。
(22)あるいは、酵素反応試薬球体が約10%未満の水分を含むように減圧乾燥を続ける、上記(20)の方法。
(23)もしくは、酵素反応試薬球体が、それぞれ約1mm〜約5mmの直径を有する、上記(20)の方法。
(24)さらに、第二試薬に含まれる酵素がDNAポリメラーゼであり、安定化剤が糖であることを特徴とする、上記(20)の方法。
(25)そして、(20)の方法に従って製造される酵素反応試薬球体。
(27)望ましくは、第一試薬がpH7.5乃至9.0であることを特徴とする液状試薬であり、第二試薬が緩衝液またはその成分を含まないか、もしくは第一試薬に含まれる緩衝液またはその成分の12分の1以下の濃度で調製した乾燥試薬球体となるように製造する上記(26)に記載の方法。
(28)あるいは、酵素反応試薬球体が約10%未満の水分を含むように減圧乾燥を続ける、上記(26)の方法。
(29)もしくは、酵素反応試薬球体が、約1mm〜約5mmの直径を有する、上記(26)の方法。
(30)さらに、第二試薬に含まれる酵素がDNAポリメラーゼであり、安定化剤が糖であることを特徴とする、上記(26)の方法。
(31)そして、上記(26)の方法に従って製造される酵素反応試薬球体。
(33)望ましくは、第一試薬がpH7.5乃至9.0であり、硫酸アンモニウムを含まないことを特徴とする液状試薬である、上記(32)の方法。
(34)あるいは、酵素反応試薬球体が約10%未満の水分を含むように減圧乾燥を続ける、上記(32)の方法。
(35)もしくは、酵素反応試薬球体が、それぞれ約1mm〜約5mmの直径を有する、(32)の方法。
(36)さらに、第二試薬に含まれる酵素がDNAポリメラーゼであり、安定化剤が糖であることを特徴とする、上記(32)の方法。
(37)そして、上記(32)の方法に従って製造される酵素反応試薬球体。
以下、参考例、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
鎖置換型DNAポリメラーゼであるBst DNAポリメラーゼを用いたLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法での例を示す。LAMP法の実際の手順については、例えば(非特許文献9)に詳しく、開示されている。結核菌M.tuberculosis(H37Ra)のゲノムDNA検出系をモデルケースとして説明する。
凍結乾燥は、溶液を独立バイアル脱着型96穴プレートのポリプロピレン製バイヤル(株式会社ハイペップ研究所製)に溶液を入れ、容器ごとヘキサン−ドライアイスにて冷却し溶液を凍結させた後、凍結乾燥機(FD-1000型、東京理化器械株式会社製)にて16時間乾燥させた。
図1にリアルタイム濁度測定の結果を示す。乾燥試薬1の測定値は陰性標準と重なっている。また、各サンプルのLAMP反応の濁度が0.1に達した時間を表2にまとめた。このように、Tris-HClと硫酸アンモニウムを同時に含む酵素反応溶液を通常の方法で凍結乾燥すると、たとえ乾燥直後であっても、再溶解した反応溶液の酵素活性は認められなかった。
最終25μl中に、20mM Tris-HCl(pH8.8)、10mM KCl、8mM MgSO4、8mM (NH4)2SO4、0.1% Tween20、0.8M Betaine、1.4mM dGTP、1.4mM dCTP、1.4mM dATP、1.4mM dTTPとなるように、22μlの第一試薬を準備した。これを溶液のまま45℃の条件で保管し、保管1日後の第一試薬と保管7日後及び28日後の第一試薬を作製した。これら保管後第一試薬に対し、参考例1と同様に準備したLAMP反応用プライマーを、40pmol(1.6μM) FIPプライマー(配列番号1)、40pmol(1.6μM) BIPプライマー(配列番号2)、5pmol(0.2μM) F3プライマー(配列番号3)、5pmol(0.2μM) B3プライマー(配列番号4)、40pmol(1.6μM) FLプライマー(配列番号5)、40pmol(1.6μM) BLプライマー(配列番号6)、8units Bst DNA Polymerase Large Fragment(NEW ENGLAND BioLabs製)、及び10pg 結核菌M.tuberculosisゲノムDNAとなるように添加し、25μlとした。
これらサンプルをLAMP反応用0.2mlマイクロチューブ(栄研化学株式会社製)に入れ、速やかにLAMP反応専用リアルタイム濁度測定装置LA―200(テラメックス株式会社製)にセットし、64℃にて60分間反応させ、増幅反応中の濁度を測定した。
各サンプルのLAMP反応の濁度が0.1に達した時間を表3にまとめた。保存安定性加速試験において、45℃の条件で7日保管は、おおよそ室温(25℃)保存の2週間、もしくは4℃保存の1ヶ月程度に相当することが知られている(Shelf Life of Medical Devices; FDA, 1991)。このように、緩衝液であるTris-HCと硫酸アンモニウムを同時に含む液状第一試薬は、酵素活性の点から保存安定性が著しく悪い。
乾燥後、第二試薬5は球状の乾燥試薬となった。これをそのままLAMP反応用0.2mlマイクロチューブ(栄研化学株式会社製)に入れた。
第二試薬6は、表7に示すように2種の独立した第二試薬6−1及び第二試薬6−2で構成され、それぞれが球状の乾燥試薬となった。これら2種の球状乾燥試薬を同一LAMP反応用0.2mlマイクロチューブ(栄研化学株式会社製)に入れた。
次に表8に従い、10pg 結核菌M. tuberculosisゲノムDNAを含む第一試薬溶液5〜6を作製し、それぞれ25μlを第二試薬5〜6に加えて乾燥第二試薬が溶解する時間を計測した。その結果、第二試薬5及び6は共に30秒以内に溶解した。
乾燥後、第二試薬7は球状の乾燥試薬となった。これをそのままLAMP反応用0.2mlマイクロチューブ(栄研化学株式会社製)に入れた。次に表10に従い、10pg 結核菌M. tuberculosisゲノムDNAを含む第一試薬溶液7を作製し、25μlを第二試薬7に加えて乾燥第二試薬が溶解する時間を計測した。その結果、第二試薬7は30秒以内に溶解した。
各サンプルのLAMP反応の濁度が0.1に達した時間を表11にまとめた。保存安定性加速試験において、45℃の条件で45日保管は、おおよそ室温(25℃)保存の6ヶ月、もしくは4℃保存の1年に相当することが知られている(Shelf Life of Medical Devices; FDA, 1991)。すなわち、第二試薬6〜7は、室温保存で安定であることを示している。
方法により2種の独立した球状の乾燥試薬を得、これを第二試薬8−1及び第二試薬8−2とした。
これら2種の球状乾燥試薬を同一LAMP反応用0.2mlマイクロチューブ(栄研化学株式会社製)に入れた。この状態でチューブをシールし、45℃の条件で100日保管した。
乾燥試薬8のLAMP反応の濁度が0.1に達した時間を表14に示した。保存安定性加速試験において、45℃の条件で100日保管は、おおよそ室温(25℃)保存の1年以上、もしくは4℃保存の4年以上に相当することが知られている(Shelf Life of Medical Devices; FDA, 1991)。すなわち、第一試薬8及び第二試薬8は、室温保存で安定であることを示している。
Claims (9)
- 少なくともTris−HClからなる緩衝液またはその成分、DNAポリメラーゼ、硫酸アンモニウムを含む試薬からなり、前記緩衝液またはその成分と硫酸アンモニウムとが接触しない状態であることを特徴とする酵素反応試薬。
- Tris−HClからなる緩衝液またはその成分を含む凍結乾燥試薬球(以下、第1乾燥試薬球)と、硫酸アンモニウムを含む凍結乾燥試薬球(以下、第2乾燥試薬球)とからなり、第2乾燥試薬球中には、前記緩衝液またはその成分が含まれないことを特徴とする請求項1に記載の酵素反応試薬。
- 隔膜によって緩衝液またはその成分と硫酸アンモニウムとが接触しない状態であることを特徴とする請求項1または2に記載の酵素反応試薬。
- DNAポリメラーゼ、Tris−HClからなる緩衝液またはその成分、硫酸アンモニウムを含有する試薬キットであって、該試薬キットは、前記緩衝液またはその成分が収容される試薬収容容器(以下、第1容器)と、硫酸アンモニウムが収容される試薬収容容器(以下、第2容器)を含み、第2容器には、緩衝液またはその成分が含まれず、DNAポリメラーゼが少なくとも第1容器あるいは第2容器のいずれかに含まれることを特徴とする試薬キット。
- DNAポリメラーゼが収容される試薬収容容器内の試薬群は凍結乾燥し、DNAポリメラーゼが収容されない試薬収容容器内の試薬群は液状であることを特徴とする請求項4に記載の試薬キット。
- DNAポリメラーゼが収容される試薬収容容器内に、安定化剤が含まれることを特徴とする請求項4または5に記載の試薬キット。
- 安定化剤が糖であることを特徴とする請求項6記載の試薬キット。
- DNAポリメラーゼ、Tris−HClからなる緩衝液またはその成分、硫酸アンモニウムを含有する試薬キットであって、該試薬キットは前記緩衝液またはその成分を含有する凍結乾燥試薬球(以下、第1乾燥試薬球)と、硫酸アンモニウムを含有する凍結乾燥試薬球(以下、第2乾燥試薬球)を含み、第2乾燥試薬球中には、前記緩衝液またはその成分が含まれず、DNAポリメラーゼが少なくとも第1乾燥試薬球あるいは第2乾燥試薬球のいずれかに含まれることを特徴とする試薬キット。
- DNAポリメラーゼ、Tris−HClからなる緩衝液またはその成分、硫酸アンモニウムを含有する試薬キットのDNAポリメラーゼの活性を維持する方法であって、前記緩衝液またはその成分と硫酸アンモニウムとが接触しない状態で保管することを特徴とするDNAポリメラーゼの活性維持方法。
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