JP4698626B2 - 弾性計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は弾性計測装置に関し、特に、超音波を利用して生体内組織の弾性を計測する装置に関する。
超音波を利用して弾性に関する情報をイメージングする弾性イメージング装置が研究されている。この装置は、生体組織の硬さに関する情報を表示することによって、必ずしも断層画像上では識別できないような腫瘍等の組織を特定するためのものである。
生体内の組織が病的な状態になると、しばしば当該組織の硬さ(力学的特性)に変化が生じることが分かっており、上記装置はそれを視覚的に表示する装置である。例えば、腫瘍組織は周囲の正常組織と比べて力学的特性が異なる。それを体表を介して触診で確かめることは従来から行われてきているが、触診による判断は、ある程度の大きさで、ある程度の硬さの違いが前提となる。一方、断層画像上でそのような腫瘍を特定することも行われているが、腫瘍組織と周辺組織との間に輝度差がほとんどなければ視覚的な特定は難しい。そもそも、超音波画像は組織の硬さそれ自体を表示するものでもない。そこで、弾性イメージング(Elasticity Imaging:EI)技術が研究されている。
弾性イメージング技術では、例えば、加圧前後に相当する時間的に異なる2つのフレーム間で(2つの断層画像間で)注目点あるいは注目部位ごとに相関演算が適用され、これによって組織の変位が求められる。弾性イメージングはこの加圧前後にわたる変位(変位量)を利用して歪みを演算し、それを画像化するものである(特許文献1,2参照)。しかし、変位は加圧の程度に依存するため、歪みだけを画像化してもそれは相対的なものに過ぎない。それ故、同じ個体でも計測条件が異なればそれに影響を受けてしまう。個体間での結果値の比較を行うことも難しい。つまり、従来においては硬さそれ自体あるいは硬さを直接的に指標する情報を計測するものではなかったといえる。組織の絶対的な硬さ、つまり弾性率を求めるためには生体内の各深さでの実際の圧力値を計測することが必要となるが、実際には非侵襲的にそのような計測を行うのは非常に難しい。
特開2005−066041号公報 特開2003−225239号公報
本発明の目的は、生体内組織の弾性率あるいはそれに相当する情報を計測できる装置を実現することにある。本発明の他の目的は生体内の各深さ位置において生じている圧力を考慮して精度良く弾性率あるいはそれに相当する情報を計測できるようにすることにある。
本発明は、生体の第1面に当接され、超音波を送受波する超音波探触子と、前記超音波の送受波によって得られた受信信号に基づいて、前記第1面からの深さ位置に応じた歪みを演算する歪み演算手段と、前記超音波探触子の当接によって前記第1面へ加わる第1圧力を検出する第1圧力検出手段と、前記生体における前記第1面とは反対側の第2面にまで及んだ第2圧力を検出する第2圧力検出手段と、前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて前記第1面からの深さ位置に応じた推定圧力を求める推定圧力演算手段と、前記深さ位置に応じた歪み及び前記深さ位置に応じた推定圧力とに基づいて、深さ位置に応じた弾性率を演算する弾性率演算手段と、を含むことを特徴とする弾性計測装置に関する。
上記構成によれば、第1圧力検出手段及び第2圧力検出手段による検出結果に基づいて各深さ位置における推定圧力を求めることができ、それを利用して各深さ位置における歪み(歪み量)から弾性率を演算することが可能となる。よって、従来方法では得られない新しい組織情報を得られる。推定圧力を演算する場合には、望ましくは、第1圧力として第1面への加圧前後の圧力差が演算され、同様に第2圧力として第2面への加圧前後の圧力差が演算される。それらから近似的に各深さ位置における推定圧力が求められる。その場合には線形関数、指数関数、対数関数など状況に応じた補間関数を利用すればよい。加圧前後の圧力差を考慮すれば超音波探触子の重さや生体それ自体の重さによる圧力を除外することが可能である。対象となる生体は、例えば腹部といった生体の特定部位であってもよいし、肝臓等の摘出臓器あるいは切開状態における露出臓器であってもよい。
望ましくは、前記第1圧力検出手段は前記超音波探触子に設けられ、前記第2圧力検出手段は生体を載置した載置面と前記生体の第2面との間に設けられる。第1圧力検出手段は超音波伝搬に悪影響を生じないような態様で配置されるのが望ましく、第2圧力検出手段は超音波探触子の直下に設けられるのが望ましい。但し、深さ方向は、垂直方向には限定されず、それが水平方向であってもよい。望ましくは、前記生体内の深さ位置に応じた弾性率の空間的分布を表す弾性率分布画像を形成する画像形成手段を含む。弾性率を画像として表示すればその変化を直感的に把握できる。その画像はカラー画像であってもよい。その画像と共に、圧力や変位等のグラフを併せて表示するようにしても好適である。
以上説明したように、本発明によれば、生体内組織の弾性率あるいはそれに相当する情報を計測できる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態における弾性率の演算原理を単純なモデルを用いて説明する。本実施形態では、以下の(1)に従って弾性率Eが演算される。
E=応力/歪み=(F/S)/(ΔL/L) …(1)
上記Eは弾性率としてのヤング率を示し、それは個々の深さ位置で演算される。ある深さ位置について、Fはそこに加わっている力を示し、Sは当該力Fが加わっている面積を示し、Lは加圧前の長さを示し、ΔLは加圧前後での長さ変化(変位)を示す。ある深さ位置における応力はその位置での圧力に対応する。その圧力が本実施形態では後述するように演算により推定される。変位はRF受信信号に対する相互相関演算処理により計測可能である。単純な一次元モデルを前提とすると、加圧前のある点の深さをLとして定義した場合、その点を含んだ前後数点の領域を対象に、加圧後の同じ領域の信号と相互相関演算処理を行うことで、加圧による変位ΔLが求まる。この計算手法それ自体は公知である。計測点を深さ方向に細かく多数設定すれば変位分布を得られる。もちろん、2次元モデルにおいて変位を演算することもできる。
問題となるのは、各深さ位置における応力すなわち圧力をどのように求めるのかという点である。本実施形態では生体の両側において圧力が計測され、それに基づいて各深さ位置における内部圧力が推定される。具体的には、生体の第1面とそれとは反対側の生体の第2面とにおいて圧力が独立して計測され、加圧前後での各面における圧力差(つまり加圧により生じた圧力分)が演算され、それらの圧力差から所定の近似関数に従って各深さ位置での圧力が推定される。この場合に、加圧前後の時相の特定は公知手法を用いることができ、例えば、周期的に加圧を行うような場合、第1判定条件が満たされた場合を加圧前とし、同様に第2判定条件が満たされた場合を加圧後としてもよい。弾性率の演算手法を図1に基づいて以下に具体的に説明する。
図1には、本実施形態にかかる超音波計測装置の全体構成がブロック図として示されている。この超音波計測装置は上記の弾性率を計測する装置である。通常の医療用の超音波診断装置を用いて弾性率の計測を行ってもよい。
生体12は人体の一部分あるいは摘出組織であって、生体12は載置台10上に載置されている。生体12の上面(第1面)には、超音波探触子14の送受波面が当接される。図示の例では、垂直方向に超音波探触子14が当接されており、また加圧時においては超音波探触子14が垂直方向に押下される。
超音波探触子14は人為的に把持されるが、それを保持するメカニカルロボットを用意してもよい。超音波探触子14は超音波の送受波を行う超音波振動子18を有しており、その超音波振動子18は一次元アレイ振動子あるいは二次元アレイ振動子である。もちろん単振動子を用いることもできる。アレイ振動子を用いる場合、電子走査方式が適用され、その電子走査方式としては電子リニア走査、電子セクタ走査といったものが公知である。
超音波探触子14内には圧力センサ20が設けられている。図示の例では、 超音波振動子18の前方に圧力センサ20が設けられているが、そのような配置以外の配置方法を採用することもできる。例えば、超音波探触子14の圧力を検出できる限りにおいて、送受波面上に圧力センサ20を設けるようにしてもよいし、超音波振動子18の後方に圧力センサ20を設けるようにしてもよい。いずれにしても超音波の伝播を妨げないように圧力センサ20を設けるのが望ましい。
一方、生体12の下面側すなわち第2面側には圧力センサ16が設けられている。この圧力センサ16は2番目の圧力センサであって、生体12の第2面と上記の載置台10との上面との間に設けられている。圧力センサ20と圧力センサ16の有感面積は同一であるのが望ましいが、必ずしもそれには限られない。圧力センサ16はシート状の薄いセンサであるのが望ましい。各圧力センサ20,16の有感面積が異なる場合であっても、上述した圧力推定関数を適切なものに設定することにより、体内における各深さ位置での圧力を近似的に求めることが可能である。
図1に示される送信部22は送信ビームフォーマーとして機能し、アレイ振動子を構成する複数の振動素子に対して複数の送信信号を並列的に供給する。これにより超音波が体内に送波される。体内からの反射波はアレイ振動子にて受波され、それを構成する複数の振動素子から並列的に出力される複数の受信信号が受信部24へ出力される。受信部24は受信ビームフォーマーとして機能し、複数の受信信号に対して整相加算処理を実行して受信ビームに相当する受信信号を生成する。その受信信号は断層画像形成部26及び変位演算部28に出力されている。
ちなみに、二次元断面内の全体に渡って弾性率を計測する場合にはその断面における圧力の全体をモニタリングできるように圧力センサ16等の形状や配置を考える必要がある。ただし、電子リニア走査が適用され、一定の横幅内において圧力一定とみなせるような場合には、特別な圧力センサを用いる必要はない。
制御部42は図1に示される各構成の動作の制御を行っている。制御部42には図示されていない入力部が接続されており、ユーザーはその入力部を介して制御部42に対して動作制御の設定や、動作モードの選択を行うことができる。制御部42はCPU及び動作プログラムで構成されている。
断層画像形成部26は、超音波ビームの電子走査によって得られた複数の受信信号すなわち複数のビームデータに基づいてBモード画像としての断層画像を形成するモジュールである。断層画像形成部26には検波回路、対数回路、座標変換回路、等の各種の回路が含まれる。断層画像の画像データは表示処理部36を経由して表示部38に送られ、表示部38には断層画像が表示される。後に説明するように、その断層画像上に弾性率を表す二次元画像を合成表示するようにしてもよい。その場合には断層画像が白黒画像として表示され、それに対して弾性率画像がカラー画像としてオーバーレイされることになる。
変位演算部28は、RF受信信号に対して相互相関演算処理を適用することにより各深さ位置における変位を演算するモジュールである。また、歪み演算部30は各深さ位置における変位から歪みを演算するモジュールであり、その演算方法については上記において(1)式に示した。弾性率演算部32は各深さ位置における歪みと各深さ位置における推定圧力とから各深さ位置における弾性率を演算するモジュールである。これについても上記の(1)式を用いて説明した。
各深さ位置における推定圧力は圧力分布推定部40によって求められる。圧力分布推定部40には、圧力センサ20からの出力信号及び圧力センサ16からの出力信号が入力されている。圧力分布推定部40は、生体12における第1面及び第2面について、加圧前及び加圧後における圧力値を求め、それらに基づいて生体内部における圧力を推定するための関数を生成している。その関数が圧力分布である。
図2には、圧力分布推定部40によって生成される圧力推定関数50が示されている。横軸は深さを表しており、縦軸は加圧により生じた圧力(圧力差)を示している。例えば、生体の第1面において、当初1N/cm2が印加され、加圧後において6N(N/cm2)となった場合には、それらの差分として第1面の圧力として符号50Aに示すような点を特定することができる。同様に、生体の第2面において、加圧前が3N(N/cm2)であり、加圧後において5N(N/cm2)であった場合には、その差分として符号50Bで示す点を特定することができる。2つの点50A及び50Bを結んだ線として関数50を定義可能である。図示の例においては線形関数が示されているが、そのようなものには限られない。指数関数あるいは対数関数といったものを利用することもできる。このような関数50によれば、例えばある深さ位置を特定するとそれに対応した圧力を求めることが可能である。ここでは深さ5cmについて4N(N/cm2)が特定されている。
従って、図1に示した弾性率演算部32は、このように特定される各深さ位置における推定圧力を用いて各深さ位置における歪みから弾性率を演算している。そして、弾性率画像形成部34は各深さ位置における弾性率に対してカラー変換を行うことにより各弾性率を色相をもって表す断層率画像を形成する。通常この段階で一次元画像が形成され、それを二次元展開することにより、二次元の弾性率画像が構築されることになる。その画像データは表示処理部36へ送られる。
表示処理部36は画像合成機能等を有しており、上述したように白黒断層画像用にカラーの弾性率画像を重ね合わせることにより、その合成画像を表示部38に表示している。このような画像に加えて、弾性率の深さ変化や圧力の深さ変化を表すグラフを表示部38に表示するようにしてもよい。
次に、図3及び図4を用いて図1に示した装置における処理の具体例を説明する。まず、図3には単純なモデルが示されており、(A)には加圧前の生体52が表されており、(B)には加圧後の生体54が示されている。生体52,54は組織IIIの中に組織I及び組織IIを有している。それぞれの組織の堅さの違いによってそれぞれの組織の変形度合いは異なっている。
このようなモデルを前提とした場合、図4(A)に示すように各深さ位置の変位が求められる。従来においてはこのような変位として深さ方向における圧力の減少を考慮していないものが想定されていたが、実際の生体内においては深さ方向において圧力の減衰が生じる結果このような変位グラフが描かれる。図4(B)には歪みグラフが示されており、深さ方向に沿った圧力の減少に伴って歪みグラフは全体として深さ方向に減少している。本実施形態においては、上述したように圧力の減少を考慮しつつ、弾性率を求めることが可能である。図4(C)にはそのように求められた弾性率を表すグラフが示されている。このように深さによる圧力の減少が補償されつつ弾性率が求められており、生体の組織性状の計測をより正確に行うことが可能である。図4(D)には各深さにおける弾性率をカラーで表現したライン画像が示されている。
以上のように、本実施形態に係る装置によれば、生体における各組織の弾性率を求めることができるので生体の組織診断にあたって有用な情報を提供できるという利点がある。また圧力の伝達に伴う圧力の減少が演算上考慮されているため、信頼性ある計測を実現できる。図1に示した各構成により実現される各機能はハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアによって実現されてもよい。
本発明にかかる装置の全体構成を示すブロック図である。 生体内の圧力を推定するための関数を示す図である。 加圧前後の組織変化を表すモデルを説明するための図である。 図1に示される装置の処理過程を説明するための図である。
符号の説明
10 載置台、12 生体、14 超音波探触子、16 圧力センサ(第2圧力センサ)、18 超音波振動子、20 圧力センサ(第1圧力センサ)、28 変位演算部、30 歪み演算部、32 弾性率演算部、34 弾性率画像形成部、40 圧力分布推定部。

Claims (3)

  1. 生体の第1面に当接され、超音波を送受波する超音波探触子と、
    前記超音波の送受波によって得られた受信信号に基づいて、前記第1面からの深さ位置に応じた歪みを演算する歪み演算手段と、
    前記超音波探触子の当接によって前記第1面へ加わる第1圧力を検出する第1圧力検出手段と、
    前記生体における前記第1面とは反対側の第2面にまで及んだ第2圧力を検出する第2圧力検出手段と、
    前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて前記第1面からの深さ位置に応じた推定圧力を求める推定圧力演算手段と、
    前記深さ位置に応じた歪み及び前記深さ位置に応じた推定圧力に基づいて、深さ位置に応じた弾性率を演算する弾性率演算手段と、
    を含むことを特徴とする弾性計測装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    前記第1圧力検出手段は前記超音波探触子に設けられ、
    前記第2圧力検出手段は生体を載置した載置面と前記生体の第2面との間に設けられた、ことを特徴とする弾性計測装置。
  3. 請求項1記載の装置において、
    前記生体内の深さ位置に応じた弾性率の空間的分布を表す弾性率分布画像を形成する画像形成手段を含むことを特徴とする弾性計測装置。
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