本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、無線LAN(Local Area Network)のような通信システムにおいて使用される基地局装置の様に、端末装置を接続可能な基地局装置に関する。なお、通信システムには、OFDM変調方式が使用されている。本発明の実施例における基地局装置は、複数のアンテナを備え、さらに複数のアンテナのそれぞれに対応した局部発振器を備える。基地局装置は、複数のアンテナによって、受信した通信対象の端末装置からのマルチキャリア信号を受信し、受信したマルチキャリア信号を局部発振器にて直交検波する。さらに、基地局装置は、直交検波した複数のマルチキャリア信号から、重み係数をアンテナ単位およびキャリア単位に計算する(以下、計算した重み係数の総称、あるいはキャリア単位の重み係数のまとまりを「受信ウエイトベクトル」というが、両者の区別を明記しないものとする)。
計算した受信ウエイトベクトルによって、基地局装置は、受信したマルチキャリア信号をアダプティブアレイ信号処理する。端末装置からのマルチキャリア信号は、パケット信号を構成しており、パケット信号の先頭部分に既知の信号(以下、「トレーニング信号」という)が配置され、当該トレーニング信号につづいてデータ信号が配置されている。基地局装置は、受信したパケット信号のうちのトレーニング信号が含まれた期間において、受信ウエイトベクトルを計算する。なお、複数の局部発振器は、周波数の安定性が高くないので、それぞれの周波数がずれているものとし、その結果、データ信号期間において複数の受信信号間に位相誤差が生じる。
本発明の実施例における基地局装置は、複数のアンテナにおいて受信した複数のマルチキャリア信号のうち最も受信電力の大きい信号を選択し(以下、「基準信号」という)、それ以外の信号を処理対象信号とする。また、既知の信号期間において、基準信号に対応した受信ウエイトベクトル(以下、「基準受信ウエイトベクトル」という)と処理対象信号に対応した受信ウエイトベクトル(以下、「処理対象受信ウエイトベクトル」という)とが導出される。ここで、マルチキャリア信号に含まれた複数のサブキャリアのうち、いくつかのサブキャリアには、データ信号期間においても既知の信号(以下、「パイロット信号」という)が含まれている。
また、ひとつのサブキャリアにおけるパイロット信号は、所定のパターンの繰り返しにて構成されており、同一の値が周期的に出現する。基地局装置は、パイロット信号の周期性を利用しながら、受信した複数のマルチキャリア信号に対して、周波数オフセットによる位相回転量をアンテナ単位に導出する。また、基準信号に対応した位相回転量と、処理対象信号に対応した位相回転量との誤差をもとに、補正値である位相回転量が処理対象信号単位に導出される。さらに、基地局装置は、補正値によって、処理対象受信ウエイトベクトルを位相回転させる。
図1は、本発明の実施例に係るマルチキャリア信号のスペクトルを示す。特に、図1は、OFDM変調方式での信号のスペクトルを示す。OFDM変調方式における複数のキャリアのひとつをサブキャリアと一般的に呼ぶが、ここではひとつのサブキャリアを「サブキャリア番号」によって指定するものとする。例えば、IEEE802.11n規格に準拠した通信システム(以下、「MIMOシステム」という)には、サブキャリア番号「−28」から「28」までの56サブキャリアが規定されている。なお、サブキャリア番号「0」は、ベースバンド信号における直流成分の影響を低減するため、ヌルに設定されている。一方、MIMOシステムに対応していないシステム(以下、「従来システム」という)には、サブキャリア番号「−26」から「26」までの52サブキャリアが規定されている。従来システムの一例は、IEEE802.11a規格に準拠した無線LANである。
また、複数のサブキャリアにて構成されたひとつの信号の単位であって、かつ時間領域のひとつの信号の単位は、「OFDMシンボル」と呼ばれるものとする。なお、ここでは、周波数領域のひとつの信号の単位も、「OFDMシンボル」と呼ぶものとする。それぞれのサブキャリアは、可変に設定された変調方式によって変調されている。変調方式には、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QSPK、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAMのいずれかが使用される。ここで、複数のサブキャリアのうち、サブキャリア番号「−21」、「−7」、「7」、「21」の4つのサブキャリアにパイロット信号が配置されている。また、ひとつのサブキャリアに配置されたパイロット信号は、4OFDMシンボルごとに同一の値となるようなパターンを有する。
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、端末装置10、基地局装置34、ネットワーク32を含む。端末装置10は、ベースバンド部26、モデム部28、無線部30、端末用アンテナ16を含み、基地局装置34は、基地局用アンテナ14と総称される第1基地局用アンテナ14a、第2基地局用アンテナ14b、第N基地局用アンテナ14n、無線部12と総称される第1無線部12a、第2無線部12b、第N無線部12n、信号処理部18、モデム部20、ベースバンド部22、制御部24を含む。また、信号として、デジタル受信信号300と総称される第1デジタル受信信号300a、第2デジタル受信信号300b、第Nデジタル受信信号300n、デジタル送信信号302と総称される第1デジタル送信信号302a、第2デジタル送信信号302b、第Nデジタル送信信号302n、合成信号304、分離前信号308、信号処理部制御信号310、無線部制御信号318を含む。
端末装置10は、基地局装置34に接続し、基地局装置34との間において通信を実行する。ベースバンド部26は、端末装置10に接続したPCや、端末装置10内部のアプリケーションとのインタフェースであり、通信システム100において伝送の対象となる情報信号の送受信処理を行う。また、誤り訂正や自動再送処理がなされてもよいが、ここではこれらの説明を省略する。モデム部28は、送信処理として、前述のBPSK等へのマッピング、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)、直交変調を実行することによって、送信信号を生成する。
一方、モデム部28は、受信処理として、直交検波、FFT、復調を実行することによって、基地局装置34から送信された情報信号を再生する。ここで、送信処理においてモデム部28から出力される信号、および受信処理においてモデム部28に入力される信号は、OFDM信号のごとく、マルチキャリア信号を形成している。また、マルチキャリア信号は、パケット信号を構成している。無線部30は、周波数変換処理を実行する。また、無線部30は、増幅処理、ADまたはDA変換処理等を行う。無線部30は、端末用アンテナ16を介して、基地局装置34との間において無線周波数の信号を送受信する。
基地局用アンテナ14は、複数備えられている。ここでは、基地局用アンテナ14の数をNとする。無線部12は、受信動作として、基地局用アンテナ14によって受信した無線周波数のマルチキャリア信号を周波数変換し、ベースバンドの信号を導出する。前述のごとく、マルチキャリア信号は、パケット信号を構成しており、パケット信号の先頭部分には、トレーニング信号が連続的に含まれている。また、マルチキャリア信号では、所定のサブキャリアにパイロット信号が含まれており、パイロット信号は、所定のパターンの繰り返しによって形成されている。ここで、複数のマルチキャリア信号のそれぞれは、複数の基地局用アンテナ14のいずれかに対応する。複数の無線部12には、複数の基地局用アンテナ14にそれぞれ対応した局部発振器が含まれており、無線部12は、局部発振器から出力されるローカル信号によって、複数のマルチキャリア信号をそれぞれ周波数変換する。
無線部12は、ベースバンドの信号をデジタル受信信号300として信号処理部18に出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、無線部12には、AGC(Automatic Gain Control)やA/D変換部も含まれる。
無線部12は、送信動作として、信号処理部18からのベースバンドの信号を周波数変換し、無線周波数の信号を導出する。ここで、信号処理部18からのベースバンドの信号は、デジタル送信信号302として示す。無線部12は、無線周波数の信号を基地局用アンテナ14に出力する。つまり、無線部12は、無線周波数のパケット信号を基地局用アンテナ14から送信する。また、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。デジタル送信信号302は、時間領域に変換されたマルチキャリア信号であり、デジタル信号であるものとする。
信号処理部18は、受信動作として、複数のデジタル受信信号300をそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。信号処理部18は、アダプティブアレイ信号処理の結果を合成信号304として出力する。また、信号処理部18は、送信動作として、モデム部20から、周波数領域の信号としての分離前信号308を入力し、周波数領域の信号を時間領域に変換し、複数の基地局用アンテナ14のそれぞれに対応づけながらデジタル送信信号302として出力する。ここで、周波数領域の信号である合成信号304および分離前信号308は、図1のごとく、複数のサブキャリアの成分を含むものとする。図を明瞭にするために、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順番に並べられて、シリアル信号を形成しているものとする。
図3は、周波数領域の信号の構成を示す。ここで、図1に示したサブキャリア番号「−28」から「28」のひとつの組合せを「OFDMシンボル」というものとする。「i」番目のOFDMシンボルは、サブキャリア番号「1」から「28」、サブキャリア番号「−28」から「−1」の順番にサブキャリア成分を並べているものとする。また、「i」番目のOFDMシンボルの前に、「i−1」番目のOFDMシンボルが配置され、「i」番目のOFDMシンボルの後ろに、「i+1」番目のOFDMシンボルが配置されているものとする。なお、従来システムにおいては、ひとつの「OFDMシンボル」に対して、サブキャリア番号「−26」から「26」の組合せが使用される。図2に戻る。
信号処理部18における受信処理をさらに詳しく説明する。信号処理部18は、パケット信号のトレーニング信号期間にわたって、複数のデジタル受信信号300に対して、受信ウエイトベクトルを導出する。受信ウエイトベクトルは、基地局用アンテナ14およびサブキャリアのそれぞれに対応した成分を有する。以下では、これを基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位の成分という。なお、基地局用アンテナ14単位の基地局用アンテナ14とは、デジタル受信信号300を受信した基地局用アンテナ14に相当し、ここでは、基地局用アンテナ14単位の信号も単に「基地局用アンテナ14単位」というものとする。また、信号処理部18は、ひとつのサブキャリアに対応した複数のデジタル受信信号300のうち、ひとつが基準信号になり、残りが処理対象信号になるように分類を実行する。その結果、受信ウエイトベクトルも、前述のごとく、基準受信ウエイトベクトルおよび処理対象受信ウエイトベクトルに分類される。
信号処理部18は、デジタル受信信号300のうち、パイロット信号が配置されたサブキャリアを特定する。つまり、ひとつの基地局用アンテナ14に対するデジタル受信信号300について、4つのサブキャリアが特定される。また、信号処理部18は、特定したサブキャリアでの値を使用しながら、デジタル受信信号300に対する単位時間あたりの位相回転量を基地局用アンテナ14単位に導出する。ここで、特定したサブキャリアでの値は、同相成分と直交成分によって形成されている。なお、単位時間あたりの位相回転量は、パイロット信号が4OFDMシンボル単位に繰り返されることを利用して導出される。つまり、4OFDMシンボル期間での位相回転量が導出され、導出した位相回転量が単位時間あたりの量となるように調節される。例えば、単位時間が「1OFDMシンボル」である場合、導出した位相回転量が4で除算される。
なお、前述の分類の結果、基地局用アンテナ14単位の位相回転量のうちのひとつが基準信号に対応し(以下、当該位相回転量を「基準量」という)、基地局用アンテナ14単位の位相回転量のうちの残りが、処理対象信号に対応する(以下、当該位相回転量を「処理対象量」という)ように、位相回転量も分類される。また、信号処理部18は、処理対象量と基準量との誤差を基地局用アンテナ14単位の位相回転量として導出する。
信号処理部18は、基地局用アンテナ14単位の位相回転量と、受信ウエイトベクトルとを基地局用アンテナ14単位に対応づけながら、位相回転量にしたがって、受信ウエイトベクトルを位相回転する。ここで、受信ウエイトベクトルは、サブキャリア単位に形成されており、またサブキャリア単位の受信ウエイトベクトルは、複数の基地局用アンテナ14のそれぞれに対応した成分によって形成される。また、位相回転は、対象受信ウエイトベクトルに対して実行される。信号処理部18は、位相回転したサブキャリア単位の受信ウエイトベクトルによって、デジタル受信信号300を基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位に重みづけし、重みづけの結果をサブキャリア単位に合成する。ここで、サブキャリア単位に合成した結果には、パイロット信号も含まれる。最終的に、信号処理部18は、合成した結果を合成信号304として出力する。
モデム部20は、受信処理として、信号処理部18からの合成信号304に含まれたパイロット信号を使用しながら、合成信号304の位相誤差を補正する。パイロット信号を使用した位相誤差の補正には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。信号処理部18において、対象受信ウエイトベクトルには、位相回転による位相補正がなされているが、基準受信ウエイトベクトルには、位相補正がなされていない。これは、基準受信ウエイトベクトルと対象受信ウエイトベクトルとの間の相対的な位相誤差の補正に相当する。このような補正によって、重みづけされた結果における基地局用アンテナ14間の位相誤差は、パケット信号の途中においても、当初の値を保持できる。その結果、アダプティブアレイ信号処理による受信特性の悪化が抑制される。しかしながら、基準受信ウエイトベクトルに対する位相補正がなされていないので、合成信号304には、絶対的な位相誤差が含まれている。このような絶対的な位相誤差を補正するために、モデム部20は、パイロット信号をもとにした位相誤差の補正を実行する。
また、モデム部20は、復調とデインタリーブを実行する。なお、復調は、サブキャリア単位でなされる。モデム部20は、復調した信号をベースバンド部22に出力する。また、モデム部20は、送信処理として、インタリーブと変調を実行する。モデム部20は、変調した信号を分離前信号308として信号処理部18に出力する。送信処理の際に、変調方式は、制御部24によって指定されるものとする。ベースバンド部22は、基地局装置34において処理すべき信号と、ネットワーク32とのインタフェースである。制御部24は、基地局装置34のタイミング等を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図4は、第1無線部12aの構造を示す。第1無線部12aは、スイッチ部140、受信部142、送信部144、局部発振部166を含む。さらに、受信部142は、周波数変換部146、AGC148、直交検波部150、AD変換部152を含み、送信部144は、増幅部164、周波数変換部156、直交変調部158、DA変換部160を含む。
スイッチ部140は、図示しない制御部24からの無線部制御信号318にもとづいて、受信部142と送信部144に対する信号の入出力を切りかえる。すなわち、送信時には送信部144からの信号を選択し、受信時には受信部142への信号を選択する。受信部142の周波数変換部146と送信部144の周波数変換部156は、対象とする信号に対して無線周波数と中間周波数間の周波数変換を行う。
AGC148は、受信した信号の振幅をAD変換部152のダイナミックレンジ内の振幅にするために、利得を自動的に制御する。直交検波部150は、中間周波数の信号を直交検波して、ベースバンドのアナログ信号を生成する。一方、直交変調部158は、ベースバンドのアナログ信号を直交変調して、中間周波数の信号を生成する。
局部発振部166は、直交検波部150と直交変調部158に対して、所定の周波数を有したローカル信号を供給する。図示のごとくひとつの無線部12にひとつの局部発振部166が設けられるため、複数の無線部12に対して複数の局部発振部166が設けられる。AD変換部152は、ベースバンドのアナログ信号をデジタル信号に変換し、DA変換部160は、ベースバンドのデジタル信号をアナログ信号に変換する。増幅部164は、送信すべき無線周波数の信号を増幅する。
図5は、信号処理部18の構成を示す。信号処理部18は、FFT部40と総称される第1FFT部40a、第2FFT部40b、第NFFT部40n、分類部50、合成部60、受信ウエイトベクトル計算部68、参照信号記憶部70、測定部200、分離部72、送信ウエイトベクトル計算部76、IFFT部42と総称される第1IFFT部42a、第2IFFT部42b、第NIFFT部42nを含む。また、合成部60は、乗算部62と総称される第1乗算部62a、第2乗算部62b、第N乗算部62n、加算部64を含み、分離部72は、乗算部74と総称される第1乗算部74a、第2乗算部74b、第N乗算部74nを含む。
また信号として、参照信号306、出力受信ウエイトベクトル信号402、受信ウエイトベクトル信号312と総称される第1受信ウエイトベクトル信号312a、第2受信ウエイトベクトル信号312b、第N受信ウエイトベクトル信号312n、送信ウエイトベクトル信号314と総称される第1送信ウエイトベクトル信号314a、第2送信ウエイトベクトル信号314b、第N送信ウエイトベクトル信号314n、基準通知信号352を含む。
FFT部40は、入力したデジタル受信信号300に対して、FFTを実行する。つまり、FFT部40は、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。ここでは、周波数領域に変換された信号もデジタル受信信号300と示す。また、周波数領域に変換されたデジタル受信信号300は、図3のごとく構成される。
測定部200は、トレーニング信号期間中において、複数のデジタル受信信号300の受信電力をそれぞれ測定し、最も受信電力の高いデジタル受信信号300を基準信号に選択する。また前述のごとく、基準信号以外のデジタル受信信号300を処理対象信号とする。つまり、測定部200は、測定した信号強度に応じて、基準信号を決定する。ここで、デジタル受信信号300は、図1のごとく複数のサブキャリアによって形成されているが、測定部200は、ひとつのデジタル受信信号300に対する受信電力として、複数のサブキャリアでの受信電力の合計値を測定する。また、選択した基準信号に関する情報は、基準通知信号352として出力される。ここで、トレーニング信号期間中の認識は、信号処理部制御信号310によってなされる。
分類部50は、トレーニング信号期間の終了後において、基準通知信号352にもとづいてデジタル受信信号300の順番を入れかえることによって、デジタル受信信号300に対する分類を実行する。具体的には後述の乗算部62のうち、第1乗算部62aに基準信号となるべきデジタル受信信号300が入力されるようにする。つまり、前述の基準信号が予め定められた乗算部62へ出力されるように、デジタル受信信号300に対する並べ替えが実行される。一方、トレーニング信号期間中において、分類部50は、入力したデジタル受信信号300を入れかえなくてもよく、あるいは前のバースト信号での基準通知信号352にもとづいてデジタル受信信号300の順番を入れかえてもよい。ここで、分類は、基地局用アンテナ14単位のデジタル受信信号300に対してなされる。
合成部60は、乗算部62において、デジタル受信信号300を受信ウエイトベクトル信号312で基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位に重みづけし、乗算結果を加算部64で加算して、合成信号304を出力する。なお、第1乗算部62aに入力される第1受信ウエイトベクトル信号312aは、前述の基準受信ウエイトベクトルに相当し、それ以外の受信ウエイトベクトル信号312は、前述の対象処理受信ウエイトベクトルに相当する。ひとつの乗算部62における乗算は、サブキャリアごとになされる。参照信号記憶部70は、トレーニング信号期間中に予め記憶した既知のトレーニング信号を参照信号306として出力する。
受信ウエイトベクトル計算部68は、トレーニング信号期間中にわたって、デジタル受信信号300、合成信号304、参照信号306から、RLSアルゴリズムやLMSアルゴリズムなどの適応アルゴリズムを使用しながら、受信ウエイトベクトル信号312を基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位に計算する。一方、トレーニング信号期間終了後は、デジタル受信信号300に含まれたパイロット信号を使用しながら、受信ウエイトベクトル信号312を更新する。更新方法の詳細は後述する。また、受信ウエイトベクトル計算部68は、受信ウエイトベクトル信号312を出力受信ウエイトベクトル信号402としても出力する。
送信ウエイトベクトル計算部76は、出力受信ウエイトベクトル信号402にもとづいて、分離前信号308の重みづけに必要な送信ウエイトベクトル信号314を基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位に導出する。処理を簡略化するために、受信ウエイトベクトル信号312と送信ウエイトベクトル信号314とが同一であってもよい。分離部72は、乗算部74において、送信ウエイトベクトル信号314によって分離前信号308を基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位に重みづけし、デジタル送信信号302として出力する。IFFT部42は、乗算部74からのデジタル送信信号302に対して、IFFTを実行する。つまり、IFFT部42は、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換する。ここでは、時間領域に変換された信号もデジタル送信信号302と示す。
図6は、受信ウエイトベクトル計算部68の構成を示す。受信ウエイトベクトル計算部68は、受信ウエイトベクトル更新部114、出力設定部116、初期ウエイトベクトル計算部120、ウエイト分類部180、信号分類部182、切替部184を含む。また信号として、初期ウエイトベクトル信号362と総称される第1初期ウエイトベクトル信号362a、第2初期ウエイトベクトル信号362b、第N初期ウエイトベクトル信号362n、更新ウエイトベクトル信号364と総称される第1更新ウエイトベクトル信号364a、第2更新ウエイトベクトル信号364b、第N更新ウエイトベクトル信号364n、出力受信ウエイトベクトル信号402と総称される第1出力受信ウエイトベクトル信号402a、第2出力受信ウエイトベクトル信号402b、第N出力受信ウエイトベクトル信号402nを含む。
初期ウエイトベクトル計算部120は、トレーニング信号期間において、デジタル受信信号300、合成信号304、参照信号306から、前述の適応アルゴリズムによって初期ウエイトベクトル信号362を基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位に計算する。なお、トレーニング信号期間においても、初期ウエイトベクトル計算部120は、適応アルゴリズムを実行するために、初期ウエイトベクトル信号362を出力する。
ウエイト分類部180は、トレーニング信号期間が終了する際に、基準通知信号352の内容にしたがって、初期ウエイトベクトル信号362の中から、基準信号に対応した初期ウエイトベクトル信号362(以下、「基準用初期ウエイトベクトル」とし、これに対して処理対象信号に対応した初期ウエイトベクトル信号362を「処理対象用初期ウエイトベクトル」という)を選択する。また、ウエイト分類部180は、基準用初期ウエイトベクトルを第1初期ウエイトベクトル信号362aとして受信ウエイトベクトル更新部114に出力する。さらに、ウエイト分類部180は、処理対象用初期ウエイトベクトルを第2初期ウエイトベクトル信号362bから第N初期ウエイトベクトル信号362nとして受信ウエイトベクトル更新部114に出力する。
信号分類部182は、トレーニング信号期間が終了する際に、基準通知信号352の内容にしたがって、デジタル受信信号300の中から、基準信号を選択する。また、信号分類部182は、基準信号を第1デジタル受信信号300aとして受信ウエイトベクトル更新部114に出力する。さらに、信号分類部182は、処理対象信号を第2デジタル受信信号300bから第Nデジタル受信信号300nとして受信ウエイトベクトル更新部114に出力する。
受信ウエイトベクトル更新部114は、トレーニング信号期間の終了後において、初期ウエイトベクトル信号362を初期値として、受信ウエイトベクトル信号312を基地局用アンテナ14単位に更新する。つまり、同一の基地局用アンテナ14に対応した複数の受信ウエイトベクトル信号312に対しては、同一の補正値による更新がなされる。受信ウエイトベクトル更新部114の処理の詳細は、後述する。
出力設定部116は、受信ウエイトベクトル信号312を出力受信ウエイトベクトル信号402として出力する。出力設定部116は、出力受信ウエイトベクトル信号402を連続的に出力してもよいし、パケット信号が終了したときの受信ウエイトベクトル信号312のように、特定の1時点の出力受信ウエイトベクトル信号402を出力してもよい。
切替部184は、トレーニング信号の期間において、初期ウエイトベクトル信号362を入力し、入力した初期ウエイトベクトル信号362を受信ウエイトベクトル信号312として出力する。また、切替部184は、トレーニング信号の期間の終了後、更新ウエイトベクトル信号364を入力し、入力した更新ウエイトベクトル信号364を受信ウエイトベクトル信号312として出力する。
図7は、初期ウエイトベクトル計算部120の構成を示す。初期ウエイトベクトル計算部120は、第1初期ウエイトベクトル計算部120a、第2初期ウエイトベクトル計算部120b、第N初期ウエイトベクトル計算部120nを含み、第1初期ウエイトベクトル計算部120aは、加算部80、複素共役部82、乗算部84、ステップサイズパラメータ記憶部86、乗算部88、加算部90、遅延部92を含む。第2初期ウエイトベクトル計算部120bから第N初期ウエイトベクトル計算部120nも第1初期ウエイトベクトル計算部120aと同様に構成される。
加算部80は、合成信号304と参照信号306との間での差分を計算し、これを誤差信号として出力する。この誤差信号は、複素共役部82で複素共役変換される。乗算部84は、複素共役変換された誤差信号と、第1デジタル受信信号300aを乗算し、第1の乗算結果を生成する。
乗算部88は、ステップサイズパラメータ記憶部86において記憶されているステップサイズパラメータを第1の乗算結果に乗算し、第2の乗算結果を生成する。第2の乗算結果は、遅延部92と加算部90によって、フィードバックされた後に、新たな第2の乗算結果と加算される。このような、LMSアルゴリズムによって、逐次更新された加算結果が、第1受信ウエイトベクトル信号312aとして出力される。なお、以上の処理は、サブキャリアごとになされる。
図8は、受信ウエイトベクトル更新部114の構成を示す。受信ウエイトベクトル更新部114は、パイロット信号抽出部186、信号内誤差検出部188、乗算部122と総称される第1乗算部122a、第N−1乗算部122(n−1)、信号間誤差検出部124、生成部126、保持部128と総称される第1保持部128a、第2保持部128b、第N保持部128nを含む。
パイロット信号抽出部186は、デジタル受信信号300に含まれたパイロット信号を抽出する。例えば、第1デジタル受信信号300aは、図3のごとく構成されているので、パイロット信号抽出部186は、所定のOFDMシンボルに対して、サブキャリア番号「7」、「21」、「−21」、「−7」に含まれた値を抽出する。また、これにつづくOFDMシンボルに対しても同様の処理がなされる。さらに、パイロット信号抽出部186は、第2デジタル受信信号300bから第Nデジタル受信信号300nに対しても以上の処理を実行する。つまり、パイロット信号抽出部186は、基地局用アンテナ14単位にパイロット信号を抽出する。パイロット信号抽出部186は、抽出したパイロット信号を信号内誤差検出部188に出力する。
信号内誤差検出部188は、パイロット信号抽出部186において抽出したパイロット信号から、デジタル受信信号300内の位相誤差をサブキャリア単位に検出する。前述のごとく、ひとつのサブキャリアに配置されたパイロット信号は、4OFDMシンボル周期に同一の値となるパターンを有している。そこで、信号内誤差検出部188は、例えば、第1デジタル受信信号300aのサブキャリア番号「7」に配置されたパイロット信号に対して、4OFDMシンボル間隔での位相誤差を検出する。また、位相誤差には、単位時間あたりの値となるような除算が施される。
位相誤差の検出は、4OFDMシンボル前のパイロット信号の値の複素共役値と、現在のパイロット信号の値との複素乗算によってなされる。また、信号内誤差検出部188は、他のサブキャリアに配置されたパイロット信号に対しても、同様の処理を実行するので、ひとつのデジタル受信信号300に対して、4つの位相誤差が逐次検出される。また、信号内誤差検出部188は、他のデジタル受信信号300に対しても同様の処理を実行する。
信号間誤差検出部124は、基準信号での位相誤差に対する処理対象信号の位相誤差の差異を計算する。つまり、第1デジタル受信信号300aの位相誤差に対して、第2デジタル受信信号300bから第Nデジタル受信信号300nの位相誤差の差異が、基地局用アンテナ14単位に計算される。ここで、基地局用アンテナ14単位の位相誤差の差異の計算は、例えば、第2基地局用アンテナ14bに対応した4つのサブキャリアのそれぞれに対して、位相誤差の差異が導出された後に、それらが積算されることによって導出される。ここで、4つのサブキャリアとは、パイロット信号が配置されたサブキャリアを意味する。なお、差異の計算は、位相の値の演算によって実行してもよいし、ベクトル演算によって実行してもよい。
生成部126は、信号間誤差検出部124において計算した基地局用アンテナ14単位の差異の値から補正値を生成する。補正値は、第2基地局用アンテナ14bから第N基地局用アンテナ14nに対応するように生成される。具体的には、差異の値に対応した位相が逆方向に回転するように、補正値が生成される。例えば、差異の値が「x°」であれば、補正値は、「−x°」になる。
乗算部122は、生成部126から出力された補正値によって、保持部128に記憶された初期ウエイトベクトル信号362を更新することによって、更新ウエイトベクトル信号364を出力する。乗算部122の処理対象とされる初期ウエイトベクトル信号362は、処理対象用初期ウエイトベクトルである。ここで、乗算部122での計算は、信号間誤差検出部124と同様に、位相の値の演算によって実行されてもよいし、ベクトル演算によって実行されてもよい。なお、位相の値の演算で実行する場合は、振幅の値を別途記憶する必要がある。
保持部128は、トレーニング信号期間が終了する際に初期ウエイトベクトル信号362を保持し、トレーニング信号期間が終了した後に初期ウエイトベクトル信号362を出力する。ここで、前述のごとく基準用初期ウエイトベクトルは、第1初期ウエイトベクトル信号362aとされる。
図9は、信号間誤差検出部124の構成を示す。信号間誤差検出部124は、複素共役部250、乗算部252と総称される第1乗算部252a、第N−1乗算部252n−1、積算部254と総称される第1積算部254a、第N−1積算部254n−1を含む。
複素共役部250は、位相誤差の値を入力し、複素共役を導出する。これは、基準信号の複素共役を導出することに相当する。なお、位相誤差の値が、ベクトル値ではなく、位相値として示されている場合、複素共役部250は、位相誤差の値の符号を反転させる。乗算部252は、複素共役が導出された位相誤差の値と、処理対象信号に対応した位相誤差の値とを乗算する。この乗算は、基準信号に対応した位相誤差と処理対象信号に対応した位相誤差との差異を導出することに相当する。乗算部252での乗算は、図3に示されたサブキャリア番号順に実行されるが、ここでは、パイロット信号を処理の対象とするので、サブキャリア番号「7」、「21」、「−7」、「−21」の順に実行される。
積算部254は、乗算部252の乗算結果を1OFDMシンボル期間にわたって積算する。つまり、積算部254は、基準信号での位相誤差と処理対象信号での位相誤差との差異を1OFDMシンボル期間にわたって積算する。積算部254における積算は、位相誤差の値がベクトル値によって示されている場合になされ、位相誤差の値が位相値によって示されている場合、積算部254は、平均処理を実行する。このような処理によって、1OFDMシンボルのごとく、複数のサブキャリアにおける位相誤差の平均化に相当するので、雑音の影響を低減できる。積算部254での処理は、次のように示される。
ここで、Eijは、第I基地局用アンテナ14iおよびサブキャリア番号jに対応した位相誤差であり、ベクトル値として示されている。また、Δθiは、第I基地局用アンテナ14iに対応した差異の積算値である。Δθiは、位相値として示されているが、ベクトル値であってもよい。図示しない生成部126は、Δθiを受けつけ、−Δθiを補正値として導出する。Δθiがベクトル値である場合、生成部126は、複素共役を導出すればよい。
以上の構成による基地局装置34の動作を説明する。基地局用アンテナ14で受信されたマルチキャリア信号は、それぞれ異なった周波数オフセットの局部発振部166によって直交検波される。直交検波されたマルチキャリア信号は、デジタル変換されてデジタル受信信号300になる。受信したパケット信号のトレーニング信号期間において、初期ウエイトベクトル計算部120は、適応アルゴリズムにもとづいて基地局用アンテナ14単位およびサブキャリア単位の成分が含まれた初期ウエイトベクトル信号362を計算する。また、測定部200は、デジタル受信信号300の電力を基地局用アンテナ14単位に測定し、最も電力の大きいデジタル受信信号300が基準信号になるように制御する。
トレーニング信号期間の終了後において、受信ウエイトベクトル更新部114は、デジタル受信信号300に含まれたパイロット信号の周期性を利用しながら、補正値を基地局用アンテナ14単位に導出し、補正値によって、更新ウエイトベクトル信号364を更新する。また、合成部60は、受信ウエイトベクトル信号312によってデジタル受信信号300を重みづけながら合成し、合成信号304を出力する。
以下、本発明に係る変形例を説明する。本発明の実施例では、通信システム100が従来システムであるとしたが、本発明の変形例では、通信システム100は、従来システムでなく、MIMOシステムであるとする。MIMOシステムでのパケット信号は、複数の系列によって構成されているので、それに対応するために、端末装置10は、複数の端末用アンテナ16、複数の無線部30、複数のモデム部28を備える。また、基地局装置34は、複数の信号処理部18、複数のモデム部20を備える。そのような構成において、端末装置10および基地局装置34は、複数の系列を並列に処理する。まず、MIMOシステムが適用される際のパケット信号について説明する。
図10(a)−(c)は、本発明の変形例に係るパケット信号のフォーマットを示す。図10(a)は、系列の数が「4」である場合に対応し、図10(b)は、系列の数が「3」である場合に対応し、図10(c)は、系列の数が「2」である場合に対応する。図10(a)では、4つの系列に含まれたデータが、送信の対象とされるものとし、第1から第4の系列に対応したパケットフォーマットが上段から下段に順に示される。
第1の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF」、「HT−LTF」等が配置される。「L−STF」、「L−LTF」、「L−SIG」、「HT−SIG」は、従来システムに対応したAGC設定用の既知信号、伝送路推定用の既知信号、制御信号、MIMOシステムに対応した制御信号にそれぞれ相当する。MIMOシステムに対応した制御信号には、例えば、系列の数に関する情報やデータ信号の宛先が含まれている。「HT−STF」、「HT−LTF」は、MIMOシステムに対応したAGC設定用の既知信号、伝送路推定用の既知信号に相当する。前述のトレーニング信号は、「L−STF」、「HT−LTF」、「HT−STF」、「HT−LTF」のいずれか、あるいは任意の組合せに対応する。一方、「データ1」は、データ信号である。なお、L−LTF、HT−LTFは、AGCの設定だけでなく、タイミングの推定にも使用される。
また、第2の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−50ns)」と「HT−LTF(−400ns)」等が配置される。また、第3の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−100ns)」と「HT−LTF(−200ns)」等が配置される。また、第4の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−150ns)」と「HT−LTF(−600ns)」等が配置される。
ここで、「−400ns」等は、CDD(Cyclic Delay Diversity)におけるタイミングシフト量を示す。CDDとは、所定の期間において、時間領域の波形をシフト量だけ後方にシフトさせ、所定の期間の最後部から押し出された波形を所定の期間の先頭部分に循環的に配置させる処理である。すなわち、「L−STF(−50ns)」には、「L−STF」に対して、−50nsの遅延量にて循環的なタイミングシフトがなされている。なお、L−STFとHT−STFは、800nsの期間の繰り返しによって構成され、その他のHT−LTF等は、3.2μsの期間の繰り返しによって構成されているものとする。ここで「データ1」から「データ4」にもCDDがなされており、タイミングシフト量は、前段に配置されたHT−LTFでのタイミングシフト量と同一の値である。
また、第1の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「−HT−LTF」、「HT−LFT」、「−HT−LTF」の順に配置されている。ここで、これらを順に、すべての系列において「第1成分」、「第2成分」、「第3成分」、「第4成分」と呼ぶ。すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分+第3成分−第4成分の演算を行えば、受信装置において、第1の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分+第3成分+第4成分の演算を行えば、受信装置において、第2の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分−第3成分+第4成分の演算を行えば、受信装置において、第3の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分−第3成分−第4成分の演算を行えば、受信装置において、第4の系列に対する所望信号が抽出される。これらは、所定の成分の符号の組合せが系列間において直交関係を有していることに相当する。なお、加減処理は、ベクトル演算にて実行される。
「L−LTF」から「HT−SIG」等までの部分には、従来システムと同様に、「52」サブキャリアが使用される。なお、「52」サブキャリアのうちの「4」サブキャリアがパイロット信号に相当する。一方、「HT−LTF」等以降の部分は、「56」サブキャリアを使用する。
図10(a)において、「HT−LTF」の符号は、以下のように規定されている。第1の系列の先頭から順に、符号は「+」、「−」、「+」、「−」の順に並べられ、第2の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「+」、「+」の順に並べられ、第3の系列の先頭から順に、符号は「+」、「−」、「−」、「+」の順に並べられ、第4の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「−」、「−」の順に並べられている。しかしながら、符号は、以下のように規定されていてもよい。第1の系列の先頭から順に、符号は「+」、「−」、「+」、「+」の順に並べられ、第2の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「−」、「+」の順に並べられ、第3の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「+」、「−」の順に並べられ、第4の系列の先頭から順に、符号は「−」、「+」、「+」、「+」の順に並べられる。このような符号であっても、所定の成分の符号の組合せが系列間において直交関係を有していることに相当する。
図10(b)は、図10(a)の第1の系列から第3の系列に相当する。図10(c)は、図10(a)に示したパケットフォーマットのうちの第1系列と第2系列に類似している。ここで、図10(b)の「HT−LTF」の配置が、図10(a)の「HT−LTF」の配置と異なっている。すなわち、HT−LTFには、第1成分と第2成分だけが含まれている。第1の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「HT−LTF」の順に配置され、第2の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「−HT−LTF」の順に配置されている。すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分の演算を行えば、受信装置において、第1の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分の演算を行えば、受信装置において、第2の系列に対する所望信号が抽出される。これらも、前述のごとく、直交関係といえる。
変形例に係る基地局装置34の構成は、図2と同様のタイプであるので、ここでは、説明を省略する。図11は、本発明の変形例に係る信号処理部18の構成を示す。信号処理部18は、FFT部40と総称される第1FFT部40a、第2FFT部40b、第NFFT部40n、分類部190、位相誤差検出部202、回転部204、アレイ処理部208と総称される第1アレイ処理部208a、第2アレイ処理部208b、第Mアレイ処理部208mを含む。また、回転部204は、乗算部206と総称される第1乗算部206a、第N−1乗算部206(n−1)を含む。また信号として、合成信号304と総称される第1合成信号304a、第2合成信号304b、第M合成信号304mを含む。なお、図11は、信号処理部18のうちの受信処理に関する部分を示す。
信号処理部18は、複数の基地局用アンテナ14のそれぞれに対応したデジタル受信信号300であって、かつ図10(a)−(c)のごとく、複数の系列によって形成されたデジタル受信信号300を入力する。なお、デジタル受信信号300のうち、所定のサブキャリアにはパイロット信号が含まれており、パイロット信号は、4OFDMシンボルを周期としたパターンの繰り返しによって形成されている。FFT部40、分類部190は、図5のFFT部40、分類部50に対応する。また、分類部190は、基準信号を第1デジタル受信信号300aとして出力する。
位相誤差検出部202は、デジタル受信信号300に含まれたパイロット信号を使用しながら、デジタル受信信号300に対する位相回転量を基地局用アンテナ14単位に導出する。つまり、ひとつのデジタル受信信号300に対して、ひとつの位相回転量が導出される。位相誤差検出部202の構成は、図8のパイロット信号抽出部186、信号内誤差検出部188、信号間誤差検出部124、生成部126と同様である。なお、デジタル受信信号300は、複数の系列によって構成されているので、復調のために、デジタル受信信号300を系列ごとに分離する必要がある。
しかしながら、位相誤差検出部202は、系列の数にかかわらず、パターンが周期的に繰り返されることを利用し、4OFDMシンボル間隔での位相回転量を基地局用アンテナ14単位に導出するので、複数の系列への分離がなされる前に、位相回転量が導出される。また、位相回転量は、実施例と同様に、基準信号での位相誤差に対する処理対象信号での位相誤差の差異に対応する。
乗算部206は、位相誤差検出部202において導出した基地局用アンテナ14単位の位相回転量と、デジタル受信信号300とを基地局用アンテナ14単位に対応づけながら、位相回転量にしたがって、デジタル受信信号300を位相回転する。前述の実施例においては、導出した位相回転量によって、更新ウエイトベクトル信号364を更新していたが、ここでは、導出した位相回転量によって、デジタル受信信号300を位相回転させている。このような処理によって、アンテナ間周波数オフセット誤差による位相回転の補正と、アダプティブアレイ信号処理とが別の処理として実行される。
アレイ処理部208は、乗算部206において位相回転したデジタル受信信号300に対して、複数の基地局用アンテナ14および複数の系列のそれぞれに対応した成分によって形成されるサブキャリア単位の図示しない受信ウエイトベクトルによって、基地局用アンテナ14単位、サブキャリア単位、系列単位の重みづけを実行し、重みづけの結果をサブキャリア単位、系列単位に合成する。第1アレイ処理部208aの構成は、図5の受信ウエイトベクトル計算部68、合成部60と同様である。その際、受信ウエイトベクトル計算部68には、初期ウエイトベクトル計算部120が含まれ、初期ウエイトベクトル計算部120から受信ウエイトベクトル信号312が出力される。また、第1アレイ処理部208aから出力される第1合成信号304aが、ひとつの系列に対応する。他のアレイ処理部208でも同様の処理が実行される。
本発明の実施例によれば、周期的なパターンの繰り返しによって形成されるパイロット信号を使用して位相回転量を導出するので、受信ウエイトベクトルの導出に依存せずに、アンテナ間周波数オフセット誤差を補正できる。また、複数のパイロット信号において導出した位相回転量からひとつの位相回転量を導出するので、雑音の影響を低減できる。また、受信ウエイトベクトルの導出に依存せずに位相回転量を導出するので、受信ウエイトベクトルの精度に関係なく、受信ウエイトベクトルを導出できる。また、導出した位相回転量によって受信ウエイトベクトルを回転するだけなので、簡易な処理を実現できる。また、複数の基地局用アンテナのそれぞれに対応した信号間の位相関係を保持するように、アンテナ間周波数オフセット誤差を補正できる。また、位相関係を保持するようにアンテナ間周波数オフセット誤差を補正するので、アダプティブアレイ信号処理での特性の悪化要因を抑制できる。
また、所定のパターンの繰り返しによって形成されるパイロット信号を使用して位相回転量を導出するので、ウエイトベクトルによって複数の系列を分離する前にアンテナ間周波数オフセット誤差を補正できる。また、位相回転量を導出すると直ちにこれを補正するので、処理遅延を抑制できる。また、アダプティブアレイ信号処理を実行する前にアンテナ間周波数オフセット誤差を補正するので、アダプティブアレイ信号処理でのアンテナ間周波数オフセット誤差の影響を低減できる。また、位相誤差の差異は、基地局用アンテナ単位に複数の成分を合成あるいは平均することによって導出されるので、雑音の影響を低減できる。また、位相成分のずれを補正できるので、アンテナ間周波数オフセット誤差の影響を低減できる。
また、複数の系列によって形成されるデジタル受信信号を受信した場合、従来において位相回転量を導出するためには、アダプティブアレイ信号処理によって、複数の系列に分離した後、パイロット信号を抽出する必要があった。つまり、前段にアダプティブアレイ信号処理が必要であった。しかしながら、複数の基地局用アンテナに対応した信号間にアンテナ間周波数オフセット誤差が存在する場合、アダプティブアレイ信号処理のための受信ウエイトベクトルに含まれる誤差が増大し、アダプティブアレイ信号処理による受信特性が悪化する。その結果、抽出したパイロット信号に含まれる誤差も増大し、アンテナ間周波数オフセット誤差の補正精度が悪化する。しかしながら、実施例によれば、アダプティブアレイ信号処理を実行する前に、アンテナ間周波数オフセット誤差の導出を実行するので、アンテナ間周波数オフセット誤差の補正精度の悪化を抑制できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、受信ウエイトベクトル計算部68は、受信ウエイトベクトル信号312の推定のために適応アルゴリズムを使用している。しかしながらこれに限らず例えば、受信ウエイトベクトル計算部68において適応アルゴリズム以外の処理が実行されてもよく、受信ウエイトベクトル計算部68が、既知信号との相関処理によって受信ウエイトベクトル信号312を求めてもよい。また、受信ウエイトベクトル計算部68において、適応アルゴリズムや相関処理とは異なるMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)アルゴリズムなどの到来方向推定が実行されてもよい。この変形例によれば、より詳細に希望波と不要波とを識別できる。つまり、アダプティブアレイアンテナについての信号処理において、複数の受信信号が分離されればよい。
本発明の実施例において、通信システム100をCSMAをベースにした通信システム100に適用している。しかしながらこれに限らず例えば、基地局装置34はCSMA以外の通信システムに適用されてもよく、例えば、TDMA(Time Division Multiple Access)、CDMA(Code Division Multiple Access)、SDMA(Space Division Multiple Access)などが使用されてもよい。この変形例によれば、さまざまな通信システムに本発明を適用できる。つまり、端末装置10からの信号を受信する基地局装置34であればよい。
本発明の実施例において、説明の対象を基地局装置34としている。しかしながらこれに限らず例えば、説明の対象が端末装置10であってもよい。その際、端末装置10は、基地局装置34と同様に構成される。また、端末装置10、基地局装置34に限らず、一般的に無線装置であってもよい。本変形例によれば、さまざまに無線装置に本発明を適用できる。
本発明の実施例において、基地局用アンテナ14単位の位相誤差の差異を導出するために、信号間誤差検出部124は、複数のパイロット信号のそれぞれに対応した位相誤差の差異を1OFDMシンボルにわたって積算している。しかしながらこれに限らず例えば、信号間誤差検出部124は、重みづけを実行しながら積算を実行してもよい。重みづけには、位相誤差の差異に対応した基地局用アンテナ14およびサブキャリアでの受信ウエイトベクトル信号312の成分の大きさが使用される。受信ウエイトベクトル信号312の成分の大きさが大きくなれば、当該成分と乗算すべきデジタル受信信号300の大きさが小さくなることに相当し、それは、位相誤差の差異の信頼性が低いことにも相当する。そのため、受信ウエイトベクトル信号312の成分の大きさが大きい場合、重みづけが小さくなるようにしながら、位相誤差の差異が積算される。第I基地局用アンテナ14iおよびサブキャリア番号jに対して、重みづけのなされた位相誤差Eij’は、次のように示される。
ここで、wijは、受信ウエイトベクトルのうち、第I基地局用アンテナ14iおよびサブキャリア番号jに対応した成分である。なお、「j」は、前述のごとく、「7」、「21」、「−21」、「−7」となる。さらに、重みづけのなされた位相誤差Eij’をもとに、Δθiは、次のように導出される。
なお、信号間誤差検出部124は、重みづけの演算を行わない場合であっても、受信ウエイトベクトル信号312の成分の大きさを監視し、受信ウエイトベクトル信号312の成分の大きさがしきい値よりも大きくなった場合、当該受信ウエイトベクトル信号312の成分に対応した位相誤差の差異を積算から除外してもよい。本変形例によれば、信頼性の低い位相誤差の差異の影響が小さくなるので、積算の精度を向上できる。つまり、積算を導出する際に雑音の影響が低減されればよい。
本発明の実施例において、信号間誤差検出部124は、基準信号での位相誤差に対する処理対象信号での位相誤差の差異を導出し、無線部12は、位相回転量としての補正値を処理対象信号に対して導出している。つまり、基地局用アンテナ14間での位相誤差が導出されている。しかしながらこれに限らず例えば、信号間誤差検出部124が構成に含まれず、信号内誤差検出部188において導出された基地局用アンテナ14単位の位相誤差をもとに、生成部126は、位相回転量を基地局用アンテナ14単位に導出し、基地局用アンテナ14単位に位相回転が補正されてもよい。その際、信号内誤差検出部188では、複数のパイロット信号に対する位相誤差をもとに、平均等の処理によって、基地局用アンテナ14に対する位相誤差が導出される。また以上の処理は、前述した変形例にも適用可能である。本変形例によれば、基地局用アンテナ14単位に周波数オフセットを補正するので、絶対的な周波数オフセットを補正できる。
本発明の実施例において、信号処理部18は、ひとつの系列によって形成されたデジタル受信信号300に対して処理を実行し、受信ウエイトベクトルに対して位相回転を実行する。一方、変形例において、信号処理部18は、複数の系列によって形成されたデジタル受信信号300に対して処理を実行し、デジタル受信信号300に対して位相回転を実行している。つまり、受信ウエイトベクトルによる演算を実行する前に、位相回転がなされている。しかしながらこれに限らず例えば、これらが組み合わせられた形態であってもよい。つまり、信号処理部18は、複数の系列によって形成されたデジタル受信信号300に対して処理を実行し、受信ウエイトベクトルに対して位相回転を実行する。
ここで、乗算部122における位相回転の対象となる初期ウエイトベクトル信号362は、複数の系列のそれぞれに対応した成分によっても形成されている。つまり、図11のアレイ処理部208での処理のごとく、複数の系列のそれぞれに対して、受信ウエイトベクトル信号312が導出される。一方、パイロット信号抽出部186、信号内誤差検出部188、信号間誤差検出部124、生成部126における処理は、実施例と同様である。つまり、これらは、系列の数にかかわらず、デジタル受信信号300に対する単位時間あたりの位相回転量を基地局用アンテナ14単位に導出する。合成部60は、受信ウエイトベクトル信号312によるデジタル受信信号300の重みづけを基地局用アンテナ14単位、サブキャリア単位、系列単位に実行し、合成をサブキャリア単位、系列単位に実行する。本変形例によれば、マルチキャリア信号が複数の系列によって形成されていても、位相回転量は、受信ウエイトベクトルの導出に依存せずに導出されるので、複数の系列を分離する前に位相回転量を導出できる。
10 端末装置、 12 無線部、 14 基地局用アンテナ、 16 端末用アンテナ、 18 信号処理部、 20 モデム部、 22 ベースバンド部、 24 制御部、 26 ベースバンド部、 28 モデム部、 30 無線部、 32 ネットワーク、 34 基地局装置、 100 通信システム。