JP4696256B2 - バンコマイシン耐性グラム陽性細菌用抗菌剤 - Google Patents

バンコマイシン耐性グラム陽性細菌用抗菌剤 Download PDF

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Description

本発明は、バンコマイシン耐性グラム陽性細菌用抗菌剤及びその有効成分の製造方法に関する。
近年、抗生物質の新薬開発はめざましく、感染症の治療成績は確実に上昇してきた。反面、抗生物質の使用が普遍化すると共に、耐性菌の出現も増えて、感染症治療が難しくなっている。
ポリペプチド系抗生物質であるバンコマイシンは、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)構成成分であるムレインモノマー末端のD−アラニル−D−アラニンに結合することにより細胞壁の合成を阻害する物質であり、グラム陽性細菌に対して高い抗菌活性を示す。院内感染の主要な原因菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等のような、多剤耐性を示す細菌にも抗菌作用を発揮するため、MRSA感染症等の治療の最後の切り札として用いられている。しかしながら、バンコマイシンに耐性を示す腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌:VRE)も出現するに至っている。このような耐性菌出現の問題に対処するため、新しい抗生物質が望まれているが、その探索には時間がかかるため、現在これといった決め手がなく、抗生剤の適正使用を進めるにとどまっている。
一方、薬物のデリバリーシステム(DDS)や徐放化による薬物の効果向上を目的に、薬剤の微粒子化の研究が進んでおり、例えばシアノアクリレートポリマー粒子に薬剤を抱合させたDDSが公知である(特許文献1、2及び非特許文献1)。しかしながら、バンコマイシンを含む種々の抗生物質に耐性を獲得したバンコマイシン耐性菌感染症を治療できる手段については、全く知られていない。本願発明者は先に、シアノアクリレートポリマー粒子にアンピシリン、バンコマイシン又はレボフラキサシンを抱合させたものを作製し、これらをメチシリン耐性黄色ブドウ球菌や緑膿菌等に作用させたところ、各抗生物質単独で作用させる場合に比べて抗菌活性が高くなることを見出した(非特許文献2)。しかしながら、これらのシアノアクリレートポリマー粒子がバンコマイシン耐性菌に対して抗菌性を発揮することは開示も示唆もない。
特表平11−503148号公報 特表2002−504526号公報 Christine Vauthier et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 55, 519-548 (2003) 日本薬学会年会要旨集127巻3号、132頁の29P1-am327及び29P1-am329
従って、本発明の目的は、バンコマイシン耐性菌感染症の治療等に有用な、バンコマイシン耐性菌を効果的に抗菌できる手段を提供することにある。
本願発明者は、鋭意研究の結果、シアノアクリレートポリマー粒子にバンコマイシン等の抗生物質を抱合させると、その抗生物質に対し耐性を有するバンコマイシン耐性菌に対して抗菌活性が向上し、バンコマイシン耐性菌の増殖を抑制できるようになることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、抗生物質を抱合するシアノアクリレートポリマー粒子を有効成分として含有する、該抗生物質の単独処理に対し耐性を有するバンコマイシン耐性腸球菌用の抗菌剤を提供する。さらに、本発明は、シアノアクリレートモノマー、ポリソルベート及び/又は糖類、並びに抗生物質の共存下において、低級アルコール水溶液中で前記シアノアクリレートモノマーをアニオン重合させることを含む、抗生物質を抱合するシアノアクリレートポリマー粒子の製造方法であって、前記糖類が、水酸基を有する単糖類、水酸基を有する二糖類及び水酸基を有する多糖類から成る群より選ばれる少なくとも1種である、方法を提供する。
本願発明により、バンコマイシン耐性菌感染症の治療等に有用な、バンコマイシン耐性のグラム陽性細菌を抗菌できる手段が初めて提供された。本発明の抗菌剤によれば、種々の抗生物質に耐性を獲得し、該抗生物質の投与では抗菌不可能となったVREに対しても、該抗生物質の抗菌作用が発揮され、VREの増殖を抑制できるようになる。従って、本発明は、VRE等のバンコマイシン耐性菌感染症の治療に極めて有用である。
本発明の抗菌剤は、抗生物質を抱合したシアノアクリレートポリマー粒子を有効成分として含有する。上記ポリマー粒子に抱合させる抗生物質は、抗菌すべきバンコマイシン耐性グラム陽性細菌が耐性を示すものである。下記実施例に具体的に示されるとおり、上記ポリマー粒子に抗生物質を抱合させると、感受性菌株に対しては該抗生物質の抗菌活性は低下するが、耐性を獲得した菌株に対しては抗菌活性が増大し、抗菌できるようになる。この作用機序は明らかではなく、従って、理論に拘束されるものではないが、以下のことが考えられる。すなわち、シアノアクリレートポリマー粒子に抱合させた状態の抗生物質は、耐性菌が抗生物質の細胞壁通過を防ぐ機構、具体的には、例えば抗生物質水解酵素の分泌、抗生物質レセプターアンタゴニストの産生、抗生物質排出機構等のような防御機構に認識されにくくなるため、耐性菌に対し再び抗菌活性を示すようになるものと考えられる。上記抗生物質としては、細胞壁近くで抗菌活性を現す抗生物質が好ましく、具体的には、例えばペプチド系抗生物質(バンコマイシン等)、ペニシリン系抗生物質(アンピシリン等)、セフェム系抗生物質(セフジニル、セフチテン等)、カルバペネム系抗生物質(メロペネム、ビアペネム等)、キノロン系抗生物質(レボフロキサシン等)及びテトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン、ミノサイクリン等)が挙げられる。これらのうち、バンコマイシン、アンピシリン及びレボフロキサシンが特に好ましい。抱合させる抗生物質は、1種類のみであってもよく、また2種類以上を混合して同一の粒子に抱合させてもよい。VRE等のバンコマイシン耐性菌は、通常、バンコマイシン以外の複数種類の薬剤に対する耐性をも獲得しており、薬剤による抗菌が極めて困難であるため、バンコマイシン耐性菌感染症に対する効果的な治療方法は知られていなかった。本発明は、バンコマイシン耐性菌感染症の治療に革新的な発展をもたらすものである。

細菌類の抗生物質の耐性については、米国のCLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute, 旧NCCLS)よって、各菌種毎に種々の抗生物質について、MICに基づく基準値が定められており、この分野においては一般にこれを基準として耐性菌であるか否かの分類が行われる。この基準値は当業者であれば容易に入手可能である。例えば、上記基準では、VREの抗生物質耐性に関し、バンコマイシンについてはMICが32μg/mL以上をバンコマイシン耐性、アンピシリンについてはMICが16μg/mL以上をアンピシリン耐性、レボフロキサシンについてはMICが8μg/mL以上をレボフロキサシン耐性と定められている。従って、本発明でいう「バンコマイシン耐性」とは、バンコマイシンのMICがCLSIの基準値よりも高いことを意味し、例えば、VREとは、バンコマイシンのMICが32μg/mL以上の腸球菌株を意味する。また、「単独では抗菌活性を示さない抗生物質」とは、対象となる菌株に対するMICが、上記CLSIの基準値以上である抗生物質を意味する。例えば、下記実施例に示すVRE臨床分離株NCTC12201は、レボフロキサシン単独でのMICが1μg/mLであり(表10−2、比較例3)、CLSI基準値の8μg/mLよりも低いため、該菌株はレボフロキサシン感受性であり、レボフロキサシンは該菌株に対し単独で抗菌活性を示す抗生物質である。また、VRE臨床分離株TP417は、レボフロキサシン単独でのMICが64μg/mLであり(表10−3、比較例3)、CLSI基準値の8μg/mLよりも高いため、該菌株はレボフロキサシン耐性であり、レボフロキサシンは該菌株に対し単独では抗菌活性を示さない抗生物質である。
上記抱合粒子のシアノアクリレートポリマー部分は、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合して得られる。用いられるシアノアクリレートモノマーは、アルキルシアノアクリレートモノマー(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8)が好ましく、特に、外科領域において傷口の縫合のための接着剤として用いられている、下記式で表されるn-ブチル-2-シアノアクリレート(nBCA)が好ましい。
Figure 0004696256
前記アニオン重合では、特に限定されないが、重合開始及び重合安定化のために糖類及び/又はポリソルベートを用いることができる。従って、本発明でいう「シアノアクリレートポリマー粒子」には、糖類やポリソルベートのような重合開始及び安定剤を含むものも包含される。糖類は特に限定されず、水酸基を有する単糖類、水酸基を有する二糖類及び水酸基を有する多糖類のいずれであってもよい。単糖類としては、例えばグルコース、マンノース、リボース及びフルクトース等が挙げられ、グルコースが好ましい。二糖類としては、例えばマルトース、トレハロース、ラクトース及びスクロース等が挙げられる。多糖類としては、従来公知のシアノアクリレートポリマー粒子の重合に用いられているデキストランや、マンナン等を用いることができる。これらの糖は、環状、鎖状のいずれの形態であってもよく、また、環状の場合、ピラノース型やフラノース型等のいずれであってもよい。また、糖には種々の異性体が存在するがそれらのいずれでもよい。通常、単糖は、ピラノース型又はフラノース型の形態で存在し、二糖は、それらがα結合又はβ結合したものであり、このような通常の形態にある糖をそのまま用いることができる。また、ポリソルベートとしては、特に限定されず、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(商品名 Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(商品名 Tween 80)等の公知のTween系界面活性剤のいずれであってもよい。単糖類、二糖類及び多糖類並びにポリソルベートは、単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。上記した糖類及びポリソルベートのうち、グルコース、デキストラン、Tween 20(商品名)が好ましく、デキストランとしては、平均分子量7万以上の重合度であるデキストランが好ましい。デキストランの分子量の上限は特にないが、通常、分子量50万程度以下である。
ポリマー粒子に抗生物質を抱合させる方法としては、シアノアクリレートモノマーのアニオン重合の際に抗生物質を共存させることが好ましい。これにより、抗生物質を効率良く抱合させることができる。アニオン重合の際に2種類以上の抗生物質を共存させれば、2種類以上の抗生物質を抱合した粒子を製造することができる。
重合反応の溶媒としては、水又は低級アルコール水溶液を溶媒として用いることができる。水溶媒中で重合反応を行なった方が抗生物質の粒子への抱合率は高まるが(下記実施例参照)、低級アルコール水溶液中で重合反応を行なうと、重合反応中の抗生物質の分解を防止することができ、構造をより望ましく維持した状態でポリマー粒子に抱合させることができる。そのため、バンコマイシン等のような高分子の構造を有する抗生物質を抱合させる場合には、低級アルコール水溶液を溶媒として用いることが好ましい。低級アルコールは、反応溶液の調製の当初から共存させてもよいし、重合反応の直前に反応溶液に添加してもよい。低級アルコール溶媒の種類は、常温で液体の低級アルコール(炭素数1〜5、好ましくは1〜3)であれば特に限定されないが、製造したポリマー粒子の人体への安全性の観点からは、エタノール水溶液が好ましい。アルコール濃度は、エタノール水溶液の場合には5〜25体積%程度が好ましい。
アニオン重合は、水酸イオンにより開始されるので、反応液のpHは、重合速度に影響する。反応液のpHが高い場合には、水酸イオンの濃度が高くなるので重合が速く、pHが低い場合には重合が遅くなる。通常、pHが2.5〜4.5程度の酸性下で適度な重合速度が得られる。反応液を酸性にするために添加する酸としては、特に限定されないが、反応に悪影響を与えず、反応後に揮散する塩酸を好ましく用いることができる。なお、重合反応の速度は、アルコールの存在により速くなるので、アルコール溶媒を用いることによっても重合速度を調整することができる。
重合反応は、例えば、溶媒中に抱合させるべき抗生物質並びに上記重合開始・安定剤(すなわち糖類及び/又はポリソルベート)を溶解させた後、撹拌下にてシアノアクリレートモノマーを加え、好ましくは撹拌を続けることにより行なうことができる。反応温度は、特に限定されないが、室温で行なうことが簡便で好ましい。反応時間は、反応液のpH、溶媒の種類及び重合開始・安定剤の濃度に応じて反応速度が異なるため、これらの要素に応じて適宜選択され、特に限定されないが、通常、10分〜4時間程度、好ましくは15分〜2時間程度である。得られた抗生物質抱合粒子は、通常、中性の粒子として用いられるので、反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を反応液に添加して中和することが好ましい。
反応開始時の重合反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度は、特に限定されないが、通常、0.5v/v%〜2v/v%程度、好ましくは0.8v/v%〜1.2v/v%程度である。反応開始時の重合反応液中の抗生物質の濃度は、特に限定されないが、通常0.02w/v%〜2w/v%程度である。重合反応に糖類及び/又はポリソルベートを用いる場合、反応開始時の重合反応液中の糖類及び/又はポリソルベートの濃度(複数種類用いる場合はその合計濃度)は、特に限定されないが、通常、0.5%〜10%程度、好ましくは0.75%〜7.5%程度である。なお、糖類の濃度はw/v%、ポリソルベートの濃度はv/v%を意味し、例えば糖類を単独で用いる場合には、上記した濃度範囲はそれぞれ「0.5w/v%〜10w/v%」、「0.75w/v%〜7.5w/v%」を意味する。また、糖類を5w/v%、ポリソルベートを1v/v%で併せて用いる場合には、これらの合計濃度を6%というものとする。ただし、単糖類(例えばグルコース)のみを用いる場合には、2.5w/v%〜10w/v%程度で用いることが好ましい。
上記の重合反応により、シアノアクリレートモノマーがアニオン重合し、抗生物質を抱合したシアノアクリレートポリマーから成る粒子が生成する。上記方法により得られる粒子のサイズ(直径)は、特に限定されないが、通常、ナノサイズ(1μm未満)、好ましくは40nm〜600nm程度である。なお、粒子のサイズは、反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度や反応時間を調節することにより調節することが可能である。また、重合開始・安定剤として糖類及び/又はポリソルベートを用いる場合には、該重合開始・安定剤の濃度や種類を変えることによっても、粒子サイズを調節することができる(下記実施例参照)。なお、上記方法により得られる粒子の抗生物質抱合率は、通常、20%〜65%程度である(下記実施例参照)。
本発明の抗菌剤が抗菌作用を示す菌は、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)である。バンコマイシン耐性菌は、バンコマイシンのみならず、他の抗生物質に対しても耐性を獲得している場合が多い。従って、本発明の抗菌剤は、バンコマイシン耐性菌感染症の治療に極めて有用である。なお、バンコマイシンはグラム陰性菌にそもそも抗菌作用を示さないが、これは、この分野で周知の通り、グラム陰性菌は外膜に覆われた構造を有しており、分子量の大きいバンコマイシンはこの外膜を透過し難いことによる。
本発明の抗菌剤は、上記方法により調製された抗生物質抱合粒子のみから成るものであってもよく、また、バンコマイシン耐性菌感染症の治療に用いる場合には、公知の賦形剤、担体等と混合し、投与方法に適した形態に調製したものであってもよい。抗生物質抱合粒子は、1種類の抗生物質を抱合した粒子のみであってもよく、また、2種類以上の抗生物質を抱合した粒子のみであってもよい。あるいはまた、異なる抗生物質を抱合した粒子を混合して本発明の抗菌剤に含ませてもよい。本発明の抗菌剤の投与方法としては、皮下、筋肉内、腹腔内、動脈内、静脈内、直腸内等への非経口投与の他、経口投与が挙げられる。具体的には、例えば、生理緩衝食塩水に抗生物質抱合粒子を懸濁し、注射等により非経口投与することができ、また、カプセル剤やシロップ剤などとして経口投与することができるが、これらに限定されない。また、本発明の抗菌剤を医療器具等のバンコマイシン耐性菌の殺菌に用いる場合には、例えば、水やアルコール溶媒等に上記抗生物質抱合粒子を分散させ、これに医療器具等を浸漬すればよい。
下記実施例に示すとおり、上記方法により調製された抗生物質抱合粒子のVREに対する最小発育阻止濃度(MIC)は、4〜8μg/mL程度まで低くなり、抗菌活性が増大する。本発明の抗菌剤の使用量は、感受性の菌株を抗生物質単独使用で抗菌するために必要な使用量に準じて決定することができ、例えば、粒子に抱合される抗生物質相当量で、感受性菌株への使用量の1倍〜50倍程度となるように定めればよい。バンコマイシンを抱合した粒子を有効成分として含有する抗菌剤を例に挙げて説明すると、本発明の抗菌剤を医療器具類等のバンコマイシン耐性菌の殺菌に用いる場合には、バンコマイシン抱合粒子を、バンコマイシン相当量で通常10g/L〜500g/L程度、特に10g/L〜50g/L程度で用いればよい。また、本発明の抗菌剤をバンコマイシン耐性菌感染症の治療に用いる場合には、バンコマイシン抱合粒子を、成人に対し1回当りバンコマイシン相当量で通常0.1g〜2g程度、特に0.1g〜1g程度投与すればよい。バンコマイシン抱合粒子の使用量は、抗菌剤中の抱合粒子の含有量に応じて適宜変動し得る。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
製造例1 VCM抱合粒子の製造(デキストラン、水溶媒)
重合開始・安定剤として、デキストラン又はデキストランとグルコースを用いて、バンコマイシン(VCM)抱合粒子を製造した。デキストランとしては、平均分子量が10K(10,000)、70K及び150Kのものを用いた。
10mLの0.001N塩酸溶液に、VCM 20mg及びデキストラン100mgを加えて溶解した。又は、VCM 20mg、デキストラン100mg及びグルコース500mgを加えて溶解した。次いで、100μLのnBCA (Histoacryl(登録商標)、Braun社、独国Melsungen)(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで1時間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.6であった。その後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液110μLを滴下し、中和後30分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名、MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名、MILLIPORE社)を用いて2600rpmで15分間遠心濾過した。
Centriprep(商品名)フィルター通過液をa、通過しなかった液をbとする。VCM抱合率を求めるため、得られたa液の吸光度(280nm)を測定し、抱合されなかったVCM量を吸光度法により求めた。従って、
VCM抱合量=VCM添加量−抱合されなかったVCM量
VCM抱合率(%)=VCM抱合量÷VCM添加量×100
b液については、更に蒸留水を加えて2600rpmで15分間遠心することで、粒子の洗浄を行なった。この洗浄操作を合計4回行ない、VCM抱合粒子を得た。
得られた各VCM抱合粒子の粒子径データ及び抱合率を下記表1に示す。表中、Vはバンコマイシン、D10はデキストラン10K、D70はデキストラン70K、D150はデキストラン150K、Gはグルコースを表す。例えば、「VD10G」は、デキストラン10K及びグルコースを用いて製造したVCM抱合粒子を示す。なお、粒子分布(平均粒径、SD)は、試料を蒸留水に適宜希釈懸濁して、He・Neレーザー散乱光分析器(Malvern Zetasizer; Malvern Instruments,UK)を用いて温度20℃にて測定した。
Figure 0004696256
デキストラン10Kでは、重合中に凝集塊を形成した。VCM抱合粒子の製造に用いるデキストランは、平均分子量70K以上のものがより望ましいことが分かった。
製造例2 VCM抱合粒子の製造(グルコースのみ、水溶媒)
0.001N塩酸溶液20mLに、VCM 40mg及びグルコース1000mg(反応液中濃度5w/v%)を溶解した。次いで、200μLのnBCA(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで2時間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。その後、反応溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、中和後15分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名)を用いて2000rpmで10分間遠心濾過した。
VCM抱合率の算出及び抱合粒子の洗浄は、洗浄操作の遠心処理を2000rpm、10分間とした他は製造例1に準じて行なった。
得られた各VCM抱合粒子は、平均粒径204nm(標準偏差25.2nm)、Zeta電位-10.6mV、抱合率54.5%であった。なお、グルコース濃度1w/v%で製造すると、ナノサイズの粒子を得るのは困難であった。
製造例3 VCM抱合粒子の製造(糖類濃度の比較、水溶媒)
0.001N塩酸溶液10mlに、VCM 20mgと糖類を加えて溶解した。糖類としては、デキストラン70K 100mg(V-1%D)、グルコース500mg(V-5%G)、又はデキストラン70K 100mg及びグルコース500mg(V-1%D5%G)を用いた。また、コントロールとして、0.001N塩酸溶液10mlに糖類のみ(デキストラン70K 10mg及びグルコース100mg)を溶解したものを調製した(1%D5%G-Blank)。次いで、100μLのnBCAを撹拌下加えた。600rpmで1時間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.6であった。その後、反応溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、中和後15分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名)を用いて2600rpmで15分間遠心濾過した。
VCM抱合率の算出及び抱合粒子の洗浄は、製造例1と同様にして行なった。
得られた各VCM抱合粒子の粒子径データ及び抱合率を下記表2に示す。
Figure 0004696256
1%デキストラン−5%グルコース混合系では、反応液は安定なコロイド溶液を維持していた。なお、デキストラン濃度0.1%で製造した場合には、重合中に凝集塊を形成しやすく、ナノサイズの粒子を得るのは困難であった。
製造例4 VCM抱合粒子の製造(30%アルコール溶媒)
0.001N塩酸溶液7mLに、VCM 20mgと糖類を加えて溶解した。糖類としては、デキストラン70K 100mg(30%EtOH-V-1%D)、グルコース500mg(30%EtOH-V-5%G)、又はデキストラン70K 100mg及びグルコース500mg(30%EtOH-V-1%D5%G)を用いた。また、コントロールとして、0.001N塩酸溶液7mLに糖類のみ(デキストラン70K 100mg及びグルコース500mg)を溶解したものを調製した(30%EtOH-1%D5%G-Blank)。撹拌下、3mLのEtOHを加え、次いで100μLのnBCAを加えた。600rpmで15分間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。その後、反応溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液(110μL)を滴下し、中和後10分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名)を用いて2600rpmで15分間遠心濾過した。
VCM抱合率の算出及び抱合粒子の洗浄は、製造例1と同様にして行なった。
得られた各VCM抱合粒子の粒子径データ及び抱合率を下記表3に示す。
Figure 0004696256
製造例5 VCM抱合粒子の製造(10〜20%アルコール溶媒)
(方法1)
0.001N塩酸−10%エタノール水溶液40mLに、VCM 80mgを加えて溶解した。該VCM溶液10mLに糖類を加えて溶解した。糖類としては、デキストラン70K 100mg(10%EtOH-V-1%D)、又はデキストラン70K 100mg及びグルコース500mg(10%EtOH-V-1%D5%G)を用いた。また、コントロールとして、0.001N塩酸−10%エタノール水溶液10mLに糖類のみ(デキストラン70K 100mg及びグルコース500mg)を溶解したものを調製した(10%EtOH-DG-Blank)。次いで、100μLのnBCAを撹拌下加えた。600rpmで30分間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.6であった。
(方法2)
0.001N塩酸−20%エタノール水溶液40mLに、VCM 80mgを加えて溶解した。該VCM溶液10mLに糖類を加えて溶解した。糖類としては、デキストラン70K 100mg(20%EtOH-V-D)、グルコース500mg(20%EtOH-V-G)、又はデキストラン70K 100mg及びグルコース500mg(20%EtOH-V-DG)を用いた。また、コントロールとして、0.001N塩酸−20%エタノール水溶液10mLに糖類のみ(デキストラン70K 100mg及びグルコース500mg)を溶解したものを調製した(20%EtOH-DG-Blank)。次いで、100μLのnBCAを撹拌下加えた。600rpmで30分間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.6であった。
方法1及び2の重合反応溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液(110μL)を滴下し、中和後30分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名)を用いて2600rpmで15分間遠心濾過した。
VCM抱合率の算出は実施例1と同様にして行なった。抱合粒子の洗浄は、蒸留水の代わりに10%エタノール水溶液を用い、合計2回の洗浄操作とした他は、製造例1と同様にして行なった。
得られた各VCM抱合粒子の粒子径データ及び抱合率を下記表4に示す。
Figure 0004696256
製造例4及び5に示すエタノール溶媒系では、粒子形成は水溶媒系に比べて4倍程度早かった。また、水溶媒系と同様に、反応溶液は1%デキストラン−5%グルコース混合系で安定なコロイド溶液を維持していた。なお、40%エタノール溶媒を用いた場合には、重合中の反応溶液の凝集が激しく、ナノサイズの粒子を得るのは困難だった。
製造例6 VCM抱合粒子の製造(Tween系)
(方法1、水溶媒)
0.001N塩酸溶液10mLに、VCM 20mg及び重合開始・安定剤を加えて溶解した。重合開始・安定剤としては、Tween20(商品名) 100μL(VTw)、又はTween20(商品名) 100μL及びグルコース500mg(VGTw)を用いた。次いで、100μLのnBCAを撹拌下加えた。600rpmで1時間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.8であった。nBCA添加から1分間後、各反応溶液に薄白濁が見られた。
(方法2、アルコール溶媒)
0.001N塩酸−10%エタノール水溶液溶媒10mLに、VCM 20mg及び重合開始・安定剤を加えて溶解した。重合開始・安定剤としては、Tween20(商品名) 100μL(10%EtOH-V-1%T)、又はTween20(商品名) 100μL及びグルコース500mg(10%EtOH-V-1%T5%G)を用いた。コントロールとして、上記溶媒10mLに重合開始・安定剤のみ(Tween20(商品名) 100μL(10%EtOH-1%T-Blank)、又はTween20(商品名) 100μLとグルコース500mg(10%EtOH-1%T5%G-Blank))を溶解したものを調製した。次いで、100μLのnBCAを撹拌下加えた。600rpmで1時間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.8であった。nBCA添加から1分間後、各反応溶液に薄白濁が見られた。
方法1及び2の重合反応溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液(110μL)を滴下し、中和後15分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名)を用いて2600rpmで15分間遠心濾過した。
VCM抱合率の算出及び抱合粒子の洗浄は、製造例1と同様にして行なった。
得られた各VCM抱合粒子の粒子径データ及び抱合率を下記表5に示す。
Figure 0004696256
グルコースの添加によりVCMの抱合率は向上した。
実施例1、2及び比較例1 VCM抱合粒子の抗菌活性
製造例5で製造したVCM抱合粒子(10%EtOH-V-1%D5%G、実施例1)及び製造例6で製造したVCM抱合粒子(10%EtOH-V-1%T5%G、実施例2)を用いて、各種菌株に対する抗菌活性(最小発育阻止濃度;MIC)を調べた。比較として、粒子に抱合しないVCMの抗菌活性を調べた(比較例1)。
96ウェルプレートに、抗生物質又は抱合粒子を0.06, 0.12, 0.25, 0.5, 1, 2, 4, 8, 16, 32, 64及び128μg/mL濃度になるように分注した。各ウェルに菌株を10の5乗 CFU/mlとなるように分注した。35℃で18時間インキュベートし、目視にて濁りが観察された場合を菌株の発育ありとした。発育が認められなかった濃度をMICとした。その結果を下記表6に示す。
Figure 0004696256
Figure 0004696256
Figure 0004696256
VRE以外のバンコマイシン感受性菌株(MSSA;メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、MRSA;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、E. faecalis;バンコマイシン感受性の腸球菌)では、いずれもVCM抱合粒子ではVCM単独処理と比べて抗菌活性は低下していた。VCMがそもそも抗菌できないグラム陰性細菌である大腸菌(E. coli)及び緑膿菌(P. aeruginosa)、並びに真菌であるC. albicansでは、VCM単独でもVCM抱合粒子でも抗菌活性は認められなかった。一方、バンコマイシン耐性菌であるVREでは、VCM単独処理では128μg/mLでも増殖を抑制できないが、全ての菌株において、VCM抱合粒子処理で顕著な発育阻害活性の増強が認められた。VCMをシアノアクリレートポリマー粒子に抱合させることにより、バンコマイシン耐性菌であるVREに対し抗菌活性を発揮できるようになることが示された。
製造例7 ABPC抱合粒子の製造(糖類系、水溶媒)
10mLの0.001N塩酸溶液に、アンピシリン(ABPC)20mg、デキストラン70K 100mg及びグルコース500mgを加えて溶解した。次いで、100μLのnBCA (Histoacryl(登録商標)、Braun社、独国Melsungen)(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで2時間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.6であった。その後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液110μLを滴下し、中和後30分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名、MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名、MILLIPORE社)を用いて2600rpmで15分間遠心濾過した。
Centriprep(商品名)フィルター通過液をa、通過しなかった液をbとする。ABPC抱合率を求めるため、得られたa液の吸光度(254nm)を測定し、抱合されなかったABPC量を吸光度法により求めた。従って、
ABPC抱合量=ABPC添加量−抱合されなかったABPC量
ABPC抱合率(%)=ABPC抱合量÷ABPC添加量×100
b液については、更に蒸留水を加えて2600rpmで15分間遠心することで、粒子の洗浄を行なった。この洗浄操作を合計4回行ない、ABPC抱合粒子(ADG)を得た。該粒子の粒径データを下記表7に示す。「Blank」は、ABPCを用いずに製造したポリマー粒子を示す。
Figure 0004696256
実施例3及び比較例2 ABPC抱合粒子の抗菌活性
製造例7で製造したABPC抱合粒子(ADG、実施例3)を用いて、上記実施例1、2及び比較例1に記載した方法と同様の方法により、各種菌株に対する抗菌活性(最小発育阻止濃度;MIC)を調べた。比較として、粒子に抱合しないABPCの抗菌活性を調べた(比較例2)。その結果を下記表8に示す。
Figure 0004696256
Figure 0004696256
Figure 0004696256
アンピシリンに感受性であるVRE菌株NCTC12201及びその他のアンピシリン感受性菌株では、ABPC抱合粒子ではABPC単独処理と比べて抗菌活性は低下するか又は同程度であった。一方、VREのうちアンピシリン耐性を有する菌株TP417及びTP418では、ABPC単独処理では増殖を抑制できないが、いずれの菌株でも抱合粒子処理で顕著な発育阻害活性の増強が認められた。ABPCをシアノアクリレートポリマー粒子に抱合させることにより、アンピシリン耐性を有するバンコマイシン耐性腸球菌に対し抗菌活性を発揮できるようになることが示された。
製造例8 LVFX抱合粒子の製造(Tween系、水溶媒)
0.01N塩酸溶液10mLに、LVFX 20mg、Tween20(商品名) 100μL及びグルコース500mgを加えて溶解し、溶液のpH値を3.2付近に0.1N HClをもちいて調製した。次いで、100μLのnBCAを撹拌下加えた。600rpmで1時間室温にて撹拌し、重合反応を行なった。重合反応時の反応溶液のpHは3.8であった。nBCA添加から2分後、各反応溶液に薄白濁が見られた。その後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、中和後30分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(商品名、MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (商品名、MILLIPORE社)を用いて2600rpmで15分間遠心濾過した。
Centriprep(商品名)フィルター通過液をa、通過しなかった液をbとする。LVFX抱合率を求めるため、得られたa液の吸光度(330nm)を測定し、抱合されなかったLVFX量を吸光度法により求めた。従って、
LVFX抱合量=LVFX添加量−抱合されなかったLVFX量
LVFX抱合率(%)=LVFX抱合量÷LVFX添加量×100
b液については、更に蒸留水を加えて2600rpmで15分間遠心することで、粒子の洗浄を行なった。この洗浄操作を合計4回行ない、LVFX抱合粒子(LTwG)を得た。該粒子の粒径データを下記表9に示す。「Blank」は、LVFXを用いずに製造したポリマー粒子を示す。
Figure 0004696256
実施例4及び比較例3 LVFX抱合粒子の抗菌活性
製造例8で製造したLVFX抱合粒子(LTwG、実施例4)を用いて、上記実施例1、2及び比較例1に記載した方法と同様の方法により、各種菌株に対する抗菌活性(最小発育阻止濃度;MIC)を調べた。比較として、粒子に抱合しないLVFXの抗菌活性を調べた(比較例3)。その結果を下記表10に示す。
Figure 0004696256
Figure 0004696256
Figure 0004696256
レボフロキサシンに感受性のVRE菌株NCTC12201及びその他のレボフロキサシン感受性菌株では、LVFX抱合粒子ではLVFX単独処理と比べて抗菌活性は低下していた。一方、VREのうちレボフロキサシンに耐性を有する菌株TP417及びTP418では、抱合粒子処理により、いずれの菌株でも発育阻害の増強が認められた。LVFXをシアノアクリレートポリマー粒子に抱合させることにより、レボフロキサシンに耐性を示すバンコマイシン耐性腸球菌に対し抗菌活性を発揮できるようになることが示された。

Claims (14)

  1. 抗生物質を抱合するシアノアクリレートポリマー粒子を有効成分として含有する、該抗生物質の単独処理に対し耐性を有するバンコマイシン耐性腸球菌用の抗菌剤。
  2. 前記耐性の有無は、米国CLSIが定めるMICに基づく基準値と比較して、抗菌すべき前記細菌に対する前記抗生物質のMIC値が高いか否かにより決定される請求項1記載の抗菌剤。
  3. 前記抗生物質が、ペプチド系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、セフェム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、キノロン系抗生物質及びテトラサイクリン系抗生物質から成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の抗菌剤。
  4. 前記抗生物質が、バンコマイシン、アンピシリン、セフジニル、セフチブテン、メロペネム、ビアペネム、レボフロキサシン、テトラサイクリン及びミノサイクリンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の抗菌剤。
  5. 前記抗生物質が、バンコマイシン、アンピシリン及びレボフロキサシンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の抗菌剤。
  6. 前記抗生物質がバンコマイシンである請求項5記載の抗菌剤。
  7. 前記粒子が、シアノアクリレートモノマー、糖類及び/又はポリソルベート、並びに前記抗生物質の共存下において、前記モノマーをアニオン重合させることにより製造された粒子であり、前記糖類が、水酸基を有する単糖類、水酸基を有する二糖類及び水酸基を有する多糖類から成る群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の抗菌剤。
  8. 前記アニオン重合が低級アルコール水溶液を溶媒として行なわれる請求項7記載の抗菌剤。
  9. 前記溶媒が5〜25体積%エタノール水溶液である請求項8記載の抗菌剤。
  10. 前記糖類が、水酸基を有する単糖類及び水酸基を有する多糖類から成る群より選ばれる少なくとも1種の糖類である請求項7ないし9のいずれか1項に記載の抗菌剤。
  11. 前記ポリソルベートがポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートである請求項7ないし10のいずれか1項に記載の抗菌剤。
  12. 前記粒子の平均粒径が40nm〜600nmである請求項1ないし11のいずれか1項に記載の抗菌剤。
  13. シアノアクリレートモノマー、ポリソルベート及び/又は糖類、並びに抗生物質の共存下において、低級アルコール水溶液中で前記シアノアクリレートモノマーをアニオン重合させることを含む、抗生物質を抱合するシアノアクリレートポリマー粒子の製造方法であって、前記糖類が、水酸基を有する単糖類、水酸基を有する二糖類及び水酸基を有する多糖類から成る群より選ばれる少なくとも1種である、方法
  14. 前記アニオン重合がポリソルベート及び前記糖類の共存下で行なわれる請求項13記載の方法。
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