JP4696218B2 - 青果物の内部品質評価方法、およびその装置 - Google Patents
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Description
例えば、青果物としてのスイカの場合、内部に鬆や割れが発生していないか否か等の内部品質を評価するとき、前記スイカを手で叩き、ボコボコというような音の場合には、内部に鬆や割れが発生していると評価することが行なわれていた。
しかし、このような評価方法は、評価を行なう人の経験に負うところが多く、その評価基準は言葉で表現するものであり、主観的で曖昧であるので客観的なものではない。従って、そのような特定の人の経験に基づく評価基準を、一般的な評価基準として普及させることが困難であり、適正な評価技術を持った後継者を育成することが困難であった。
例えば、特許文献1(特開2004-69506)には、スイカを叩き、その震動の減衰時間から内部品質を評価しようとするものであるが、これは、単にスイカ内部の粘性を評価しているものであり、スイカ内部の鬆や割れの有無や程度を直接評価するものではない。
また、特許文献2(特開平10-19813)には、スイカ内部の品質を核磁気共鳴法によって評価しようとしたものであるが、そのための装置が大型になり、装置の価格が高価であるので、広く普及させることは困難である。
また、本発明者は、特許文献3(特許第3062071号)において、レーザードップラー装置を用いることにより、果実などの内部の弾性率を、第2共鳴周波数の値により評価する技術を提案した。
評価対象の青果物の一部に振動を与えて、当該青果物の他の一部に伝わる振動を検出して、検出した振動に基づいて前記青果物の第2共鳴周波数、第3共鳴周波数、および第4共鳴周波数の信号強度を得て、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第3共鳴周波数の信号強度との比率と、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第4共鳴周波数の信号強度との比率とを求め、
前記2つの比率に基づいて、予め設定された評価基準を参照することによって、前記青果物の内部品質を評価することを特徴としている。
請求項2では、
前記2つの比率の差に基づいて、予め設定された評価基準を参照する。
請求項3では、
評価対象の青果物の一部に与える振動は、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでスイープする低周波信号、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでの低周波信号を含んだピンクノイズ信号、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでの低周波信号を含んだホワイトノイズ信号、あるいは、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでの低周波信号を含んだ矩形波信号
のうちの少なくとも何れかひとつの信号に基づいた振動である。
請求項4では、
評価対象の青果物の一部に与える振動は、
前記青果物に物理的な衝撃を与えて発生させる。
請求項5では、
第2共鳴周波数、第3共鳴周波数、および、第4共鳴周波数は、高速フーリエ変換によって決定する。
請求項6では、
第3共鳴周波数は、第2共鳴周波数の1.3倍〜1.5倍の何れかの周波数に決定する。
請求項7では、
第4共鳴周波数は、第2共鳴周波数の1.8倍〜2.0倍の何れかの周波数に決定する。
請求項8の評価装置は、
評価対象の青果物の一部に振動を与える振動手段と、
前記青果物の他の一部に伝わる振動を検出する検出手段と、
検出した振動に基づいて前記青果物の第2共鳴周波数、第3共鳴周波数、および第4共鳴周波数の信号強度を得て、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第3共鳴周波数の信号強度との比率と、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第4共鳴周波数の信号強度との比率とを求め、前記2つの比率に基づいて、予め設定された評価基準を参照することによって、前記青果物の内部品質を評価する評価手段と、
を備えている。
図1において、
10は本発明にかかる青果物の内部品質評価装置であり、
評価対象の青果物(例えばスイカ)Tを載せて、その一部(下部)に所定範囲の周波数成分を含んだ振動を与える振動手段1と、
前記青果物の表面の他の一部(上部)に伝わる振動を検出して、振動信号として出力する検出手段2と、
前記検出された振動信号を高速フーリエ変換して、第2、第3、第4共鳴周波数の信号強度を得て、所定の評価基準に照らして、前記青果物Tの内部品質を評価して、その評価結果を画面表示等の情報として出力する解析装置3と
を基本的構成として備えている。
信号強度がほぼ一定で所定範囲の周波数成分を含んだ低周波信号を出力する発振部11と、前記低周波信号を増幅するアンプ12と、増幅された低周波信号が供給されて、その低周波信号に応じた振動を発生して、載せられた評価対象の青果物Tに、前記低周波信号に基づいた振動を与える振動子13とを備えている。即ち、前記振動子13は載せられた青果物の一部(下部)に接触して振動を与えるように載置台に内蔵されている。
前記青果物Tの表面(上部)に伝達された振動をレーザードップラー法で検出するためのレーザー送受信部21と、前記レーザー送受信部21を駆動するとともに、青果物Tの表面からの反射波を受信して受信信号を出力する駆動部22と、前記受信信号をA/D変換してデジタル信号として出力するA/D変換部23とを備えている。
前記レーザー送受信部21は、例えば評価対象の青果物Tの上部の振動を検出しうる位置に配置されている。
前記検出手段2から入力された受信信号を高速フーリエ変換して周波数スペクトル分布データを演算出力するFFT演算部31と、前記周波数スペクトル分布データを解析して、第2共鳴周波数の信号強度L2、第3共鳴周波数の信号強度L3、および第4共鳴周波数の信号強度L4を演算出力する解析部32と、前記第2共鳴周波数の信号強度L2、第3共鳴周波数の信号強度L3、および第4共鳴周波数の信号強度L4を、所定の評価基準データと対照して、前記青果物Tの評価データを出力する評価部33と、前記評価データを画面表示する表示部34と、上記各手段、各部を統合的に制御して評価処理を管理する制御部35とを備えている。
なお、前記評価部33には、評価対象の青果物ごとに予め設定した評価基準データがデータベースDBとして登録されている。これらの青果物ごとの評価基準データは、青果物の種類別、銘柄別、大きさの区分別、および評価する時期別などの実験データ(実際に割って検査する。)に基づいて求めておく。
まず、ステップS1において、評価対象としての青果物Tを載置台に載せて、青果物の下部が載置台に備えられた振動子13に接触するようにセットする。
前記振動によって前記青果物Tは振動するので、ステップS3において、前記青果物Tの上部に伝わった振動が、前記検出手段2によるレーザードップラー法によって検出され、レーザー送受信部21で検出した青果物Tの表面からの反射波に基づいた受信信号が駆動部22から出力されて、A/D変換部23でデジタル信号に変換されて出力される。
図3において、P1は第1共鳴周波数、P2は第2共鳴周波数、P3は第3共鳴周波数、P4は第4共鳴周波数、P5は第5共鳴周波数である。また、前記第2共鳴周波数P2の信号強度はL2、前記第3共鳴周波数P3の信号強度はL3、前記第4共鳴周波数P4の信号強度はL4である。
また、例えば、前記周波数スペクトル分布データを移動平均処理などによって平滑化処理した後に、微分処理などによってピークを検出し、検出されたピークの周波数データと信号強度データを演算出力することによって、前記第2共鳴周波数P2とその信号強度L2、前記第3共鳴周波数P3とその信号強度L3、前記第4共鳴周波数P4とその信号強度L4を、それぞれ演算して求める。
さらに、前記第2共鳴周波数P2の信号強度L2と前記第3共鳴周波数P3の信号強度L3との比率R23(=L2/L3)、および、前記第2共鳴周波数P2の信号強度L2と前記第4共鳴周波数P4の信号強度L4との比率R24(=L2/L4)を演算して求める。なお、これらの比率の演算は、それぞれのdB値の減算に置き換えることが可能であることは当然である。
そして、前記2つの比R23とR24との差D(=R23−R24)を演算して求める。
図3に示したような共鳴周波数は、振動による力が青果物の内部に伝播され、内部の物理的性質により発生するものである。
青果物を球体と仮定すると、球体の内部の力は以下のような式で表現できる。
球体内の力=ズレ弾性定数×ズレ変位+圧縮弾性定数×圧縮変位
この式をもとに、球体内部の弾性エネルギーを導くと、次の式が得られる。
球体内の弾性エネルギー=
1/2(ズレ弾性定数×ズレ変位2+圧縮弾性定数×圧縮変位2)
この式に実際の青果物としてのスイカの標準的な定数を当てはめて、内部の弾性エネルギー密度を求めると図6が得られる。
この図に示されるように、スイカの内部の弾性エネルギー密度は共鳴周波数により分布が異なる。即ち、第2共鳴周波数の内部弾性エネルギー密度は中心部が最も高く、第3共鳴周波数の内部弾性エネルギー密度は中心部より若干表面に近い部分が最も高く、第4共鳴周波数の内部弾性エネルギー密度は更に表面に近い部分が最も高くなっている。
一般にスイカの棚落ちの原因は次の2点に集約される。
1)割れの発生
割れは、スイカを縦に4等分あるいは6等分に切った時に中心部から若干表面(皮)に近い部分で、且つ、タネのある位置より少し中心側に生じる。
2)鬆の発生
鬆はタネの周囲に生じる隙間であり、これが生じ始めるとスイカ特有のシャキシャキした食感が失われる。
さて、図6の弾性エネルギー密度の分布を観察すると、第2共振周波数のエネルギーは中心部近傍に集中しているため、この部分に変化が起こらなければ、そのエネルギーは加振された反対側に正常に伝播されるので、第2共振周波数の信号強度に変化は生じない。ところが、タネの周辺に亀裂や鬆が生じると、その空間でエネルギーは摩擦などのために熱として散逸され、エネルギーが減少する。従って、加振されたエネルギーは反対側に正常に伝播しない。このため、第3共鳴周波数および第4共鳴周波数の信号強度は低下する。
実際に鬆が発生しているスイカと、正常なスイカのスペクトル分布を図4に示した、図4における実線は正常なスイカのスペクトル分布であり、鎖線は鬆が発生しているスイカのスペクトル分布である。
正常なスイカの場合には、第3共鳴周波数と第4共鳴周波数の信号強度は、第2共鳴周波数の信号強度よりわずかに低いものとして現れている。しかし、鬆の入ったスイカの場合には、第3共鳴周波数と第4共鳴周波数の信号強度は、第2共鳴周波数の信号強度より著しく低いものとして現れている。また、各共鳴周波数が正常なスイカの場合に比べて低い周波数側にシフトしているのは、鬆の入ったスイカの方が日数が経過し内部の弾性率が低下しているからである。
この図に示されているように、内部品質は、第2共鳴周波数に対する第3、第4共鳴周波数の信号強度の相対的な低下の程度を算出することにより、数値的に表現することが可能であることが理解される。
ステップS5において、前記前記2つの比R23とR24との差D(=R23−R24)を、予めデータベースDBに登録しておいた評価基準Drefと比較して、所定の関係、例えばD<Drefが成立したときには、その青果物は、図4に鎖線で示したように、第3共鳴周波数の信号強度に比して第4共鳴周波数の信号強度が大きく小さくなっており、内部に割れもしくは鬆が発生していることが想定されるので、内部品質が「不合格」であると評価し、その旨を、例えば表示部34に表示する。
そして、D≧Drefが成立したときには、その青果物は、第3共鳴周波数の信号強度に比して第4共鳴周波数の信号強度がそれほど小さくはなく、内部に割れもしくは鬆が発生していないと想定されるので、内部品質が「合格」であると評価し、その旨を、例えば表示部34に表示する。
なお、評価対象の青果物のポアソン比は実験によって0〜0.5の範囲であることが確認されているので、その場合の第3共鳴周波数と第2共鳴周波数との比率は1.3〜1.5であり、第4共鳴周波数と第2共鳴周波数との比率は1.8〜2.0であることが、図5に示したように数値解析によって得られた。
従って、第4共鳴周波数が明瞭に検出できない場合には、第4共鳴周波数を第2共鳴周波数の1.8倍〜2.0倍の周波数に設定し、その周波数領域の中央の周波数の信号強度、もしくはその周波数領域の平均の信号強度を、第4共鳴周波数の信号強度L4として評価に用いるものとする。
例えば、前記発振部11で発振出力する低周波信号は、前述したようなスイープ信号に限らず、ピンクノイズやホワイトノイズのように広帯域の周波数成分の含んだ信号や、矩形波のように単発振動波形ではあるが、低周波から高周波までの広帯域の周波数成分の含んだ信号としてもよい。そして、振動を与えるために用いる低周波信号の周波数成分は、10Hzから2,000Hzまでの範囲に限定されるものではなく、評価対象の青果物の大きさなどによって適宜選定することが好ましい。一般的には、同じ種類の青果物の場合には、評価対象の径が小さな場合には、第3共鳴周波数や第4共鳴周波数がより高くなるので、振動を与えるために用いる低周波信号としても、より高い周波数の信号を与えるものとする。
また、青果物の他の一部に伝わる振動を検出する手段としては、レーザードップラー法による非接触式の検出手段に限らず、圧電素子等の接触式の検出手段を用いても良い。
また、第4共鳴周波数の情報は利用せずに、より簡便には、前記第2共鳴周波数P2の信号強度L2と前記第3共鳴周波数P3の信号強度L3との比率R23(=L2/L3)だけを利用してもある程度の評価が可能である。また、第3共鳴周波数の情報は利用せずに、より簡便には、前記第2共鳴周波数P2の信号強度L2と前記第4共鳴周波数P4の信号強度L4との比率R24(=L2/L4)だけを利用してもある程度の評価が可能である。
1 振動手段
11 発振部
12 アンプ
13 振動子
2 検出手段
21 レーザー送受信部
22 駆動部
23 A/D変換部
3 解析装置
31 FFT演算部
32 解析部
33 評価部
34 表示部
35 制御部
DB データベース
T 青果物、スイカ
Claims (8)
- 評価対象の青果物の一部に振動を与えて、当該青果物の他の一部に伝わる振動を検出して、検出した振動に基づいて前記青果物の第2共鳴周波数、第3共鳴周波数、および第4共鳴周波数の信号強度を得て、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第3共鳴周波数の信号強度との比率と、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第4共鳴周波数の信号強度との比率とを求め、
前記2つの比率に基づいて、予め設定された評価基準を参照することによって、前記青果物の内部品質を評価することを特徴とする青果物の内部品質の評価方法。 - 前記2つの比率の差に基づいて、予め設定された評価基準を参照することを特徴とする請求項1に記載の青果物の内部品質の評価方法。
- 評価対象の青果物の一部に与える振動は、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでスイープする低周波信号、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでの低周波信号を含んだピンクノイズ信号、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでの低周波信号を含んだホワイトノイズ信号、あるいは、
少なくとも10Hzから2,000Hzまでの低周波信号を含んだ矩形波信号
のうちの少なくとも何れかひとつの信号に基づいた振動であることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の青果物の内部品質の評価方法。 - 評価対象の青果物の一部に与える振動は、
前記青果物に物理的な衝撃を与えて発生させることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の青果物の内部品質の評価方法。 - 第2共鳴周波数、第3共鳴周波数、および、第4共鳴周波数は、高速フーリエ変換によって決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の青果物の内部品質の評価方法。
- 第3共鳴周波数は、第2共鳴周波数の1.3倍〜1.5倍の何れかの周波数に決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の青果物の内部品質の評価方法。
- 第4共鳴周波数は、第2共鳴周波数の1.8倍〜2.0倍の何れかの周波数に決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の青果物の内部品質の評価方法。
- 評価対象の青果物の一部に振動を与える振動手段と、
前記青果物の他の一部に伝わる振動を検出する検出手段と、
検出した振動に基づいて前記青果物の第2共鳴周波数、第3共鳴周波数、および第4共鳴周波数の信号強度を得て、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第3共鳴周波数の信号強度との比率と、前記第2共鳴周波数の信号強度と前記第4共鳴周波数の信号強度との比率とを求め、前記2つの比率に基づいて、予め設定された評価基準を参照することによって、前記青果物の内部品質を評価する評価手段と、
を備えていることを特徴とする青果物の内部品質の評価装置。
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2005
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