JP4686578B2 - 画像処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、たとえば、可視状態の主画像情報(人物の顔画像など)に対して別の付加的な副情報(セキュリティ情報など)を不可視状態で埋め込み合成して合成画像情報を作成し、この作成した合成画像情報を記録媒体上に記録したり、その記録した合成画像情報からその中に埋込まれた副情報を復元したりする画像処理方法に関する。
近年、情報の電子化やインターネットの普及に伴って、画像の偽造や変造防止のために電子透かし、電子署名などの技術が重要視されるようになってきた。特に、主画像情報に付加的な副情報(副画像情報)を不可視状態で埋め込む電子透かし技術は、IDカードなどの個人認証媒体や著作権情報を埋め込んだ写真に対する不正コピー、偽造、改ざん対策として提案されている。
たとえば、印刷物へ出力される画像データに対して、人間が感知しにくい高い空間周波数成分および色差成分の特性を利用してデータを埋め込む電子透かし挿入方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
また、光学フィルタで確認できる電子透かしの印刷装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
記録方式の観点からは、従来、免許証などの各種身分証明書、会員証などに代表される個人認証媒体における個人認証用の顔画像を記録する際には、昇華型熱転写記録方式を用いるのが一般的である。
一般的に、昇華型熱転写記録方式は、昇華性材料で染色できる材料が限られていて、限られた記録媒体にしか適応できないといった欠点がある。このため、個人認証媒体における個人認証用の顔画像を記録する記録媒体の選択の自由度が低く、結果的に入手し易いものを選択せねばならないため、セキュリティ性が低下することが多い。また、一般的に昇華性染料は、耐光性、耐溶剤性などの画像耐久性が劣っている。
一方、溶融型熱転写記録方式は、着色材料を一般的に耐光性の良いといわれるものを選択することが可能になる。また、記録媒体の選択の自由度が高く、特殊性の高い記録媒体を用いてセキュリティ性を高めることができる。しかし、溶融型熱転写記録方式では、転写したドットのサイズを変化させて階調記録を行なうドット面積階調法を用いるため、昇華型熱転写記録並みの階調性能をだすのが困難である。
その対策として、たとえば、転写ドットの配列をいわゆる千鳥状に並べて記録する方法(以後、これを交互駆動記録方式と称す)が知られている(たとえば、特許文献3参照)。
特開平9−248935号公報 特開2001−268346号公報 特公平6−59739号公報
上記したように、個人認証媒体における個人認証用の顔画像の記録などに電子透かし技術を適用して、顔画像自体のセキュリティ性を高めることが最近要求されてきているが、電子透かし技術は基本的にデジタルデータを扱うことを前提にしているため、画像記録装置(カラープリンタなど)での記録時において、階調性能が高く、記録時の影響で透かし情報を壊してしまったり改変してしまうことが無いことが要求される。
前記特許文献3では、溶融型熱転写記録方式において階調記録性能を向上させるための記録方法を開示しているが、電子透かし技術を用いて透かし情報を埋め込んだ顔画像情報を記録すると、千鳥状にデータが間引かれて、その部分の情報が消失してしまうため、電子透かし情報が破壊されてしまう欠点がある。
また、特許文献1では、印刷物へ出力される画像データに対して、人間が感知しにくい高い空間周波数成分および色差成分の特性を利用して、データを埋め込む電子透かし挿入方法が開示されているが、この方法では位相変調処理により副情報の輪郭情報のみを主画像情報に埋め込んでいるために、輪郭情報のみで濃度情報が保存されていないので、開示されている復元用マスクシートを用いた肉眼での副情報の確認ならば問題ないが、別途、機械読み取りによる自動処理を考慮した場合、周波数フィルタ等の画像処理による復元では、文字や数字等のキャラクタは比較的問題ないが、2次元バーコードに代表されるような面の情報の埋め込み・復元にはあまり適していない。
さらに、特許文献2では、光学フィルタで目視確認できる電子透かしの印刷装置が開示されているが、機械読み取りによる自動処理に関しては詳細な記載がない。
そこで、本発明は、記録媒体に出力するようなアナログデータを対象として、主画像情報に対し別の付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を作成でき、記録後も記録した合成画像情報内の電子透かし情報が維持できる画像処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、主画像情報に対し埋め込む副情報には数字や文字のキャラクタはもちろん、2次元バーコードのようなコード情報の埋め込み・復元に適している処理を可能にする画像処理方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、溶融型熱転写記録方式において、高階調性能を維持したまま記録画像への電子透かし技術が適用可能で、その透かし情報(副情報)は記録後も壊れないで保存され、復元可能である画像処理方法を提供することを目的とする。
本発明の画像処理方法は、主画像情報に不可視状態の副情報を埋め込んだ合成画像情報を作成する画像処理方法であって、それぞれにあらかじめ設定されている色差量を用いて、色差量補正処理手段により前記主画像情報に対して画素単位の色差補正量を計算し、あらかじめ設定されたブロック領域における色差補正量を計算する複数の色差量補正処理ステップと、これらの複数の色差量補正処理ステップにより補正された複数の色差量と複数の鍵情報とに基づいて色差変調処理手段により色差変調処理を行なう前記色差量補正処理ステップの数に対応する数の色差変調処理ステップと、これらの複数の色差変調処理ステップにより色差変調された複数の画像情報を選択合成処理手段により副情報の値に基づいて選択し、それらの選択した画像情報を合成する選択合成処理ステップと、この選択合成処理ステップにより合成された副情報としての画像情報を重畳処理手段により前記主画像情報に重畳することにより当該主画像情報に対し前記副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を作成する重畳処理ステップとを具備している。
また、本発明の画像処理方法は、主画像情報に不可視状態の副情報を埋め込んだ合成画像情報を作成し、この作成された合成画像情報を記録手段により記録媒体上に可視状態で記録する画像処理方法であって、前記主画像情報に対して前記記録手段が前記合成画像情報を記録媒体に記録するための画素を形成する画素形成処理に対応した第1の前処理を第1の前処理手段により行なう第1の前処理ステップと、この第1の前処理ステップにより第1の前処理を施した主画像情報に対して第2の前処理を第2の前処理手段により行なう第2の前処理ステップと、それぞれにあらかじめ設定されている色差量を用いて、色差量補正処理手段により前記第2の前処理ステップで第2の前処理が施された主画像情報に対して色差量を補正する処理を行なう複数の色差量補正処理ステップと、これらの複数の色差量補正処理ステップにより補正された複数の色差量と複数の鍵情報とに基づいて色差変調処理手段により色差変調処理を行なう前記色差量補正処理ステップの数に対応する数の色差変調処理ステップと、これらの複数の色差変調処理ステップにより色差変調された複数の画像情報を選択合成処理手段により副情報の値に基づいて選択し、それらの選択した画像情報を合成する選択合成処理ステップと、この選択合成処理ステップにより合成された副情報としての画像情報を重畳処理手段により前記第2の前処理ステップで第2の前処理が施された主画像情報に重畳することにより当該主画像情報に対し前記副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を作成する重畳処理ステップとを具備している。
本発明によれば、記録媒体に出力するようなアナログデータを対象として、主画像情報に対し別の付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を作成でき、記録後も記録した合成画像情報内の電子透かし情報が維持できる画像処理方法を提供できる。
また、本発明によれば、主画像情報に対し埋め込む副情報には数字や文字のキャラクタはもちろん、2次元バーコードのようなコード情報の埋め込み・復元に適している処理を可能にする画像処理方法を提供できる。
さらに、本発明によれば、溶融型熱転写記録方式において、高階調性能を維持したまま記録画像への電子透かし技術が適用可能で、その透かし情報(副情報)は記録後も壊れないで保存され、復元可能である画像処理方法を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1および図2は、第1の実施の形態に係る画像処理方法の全体の流れを示す流れ図である。この例は、たとえば、IDカードなどの個人認証媒体における個人認証用の顔画像の処理に適用した場合を示しており、以下、詳細に説明する。
まず、主画像情報に副情報を埋め込んで合成画像情報を作成し記録する処理の流れについて、図1に示す流れ図を参照して説明する。
入力情報として、主画像情報101、副(画像)情報102、N個(複数個)の鍵画像情報(鍵情報)103,104,105がある。鍵画像情報103,104,105は、それぞれ種類の異なるN個(N:整数)の鍵情報を2値画像で表現したものである。
まず、N個(複数個)の色差量補正処理ステップ107a〜107cでは、主画像情報101およびあらかじめ設定された色差量ΔCdをそれぞれ入力として色差量補正処理が行なわれる。なお、図1では省略のため3個しか記載していないが、実際は1〜NまでのN個の鍵画像情報および色差量補正処理ステップが存在する。
次に、N個(複数個)の色差変調処理ステップ108a〜108cでは、色差量補正処理ステップ107a〜107cの各結果および鍵画像情報103〜105をそれぞれ入力として、色差変調処理が行なわれ、N個の色差変調処理結果がそれぞれ得られる。
次に、選択・合成処理ステップ109では、色差変調処理ステップ108a〜108cの各結果および副情報102をそれぞれ入力として、選択・合成処理109が行なわれ、1つの選択・合成結果が得られる。
次に、重畳処理ステップ110では、主画像情報101および選択・合成処理ステップ109の結果をそれぞれ入力として、主画像情報101に対する選択・合成処理結果の重畳処理が行なわれ、合成画像情報111が作成される。
次に、記録(印刷)処理ステップ112では、重畳処理ステップ110で作成された合成画像情報111を記録媒体上に記録することにより、可視状態の主画像情報101に副情報102を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報111を記録した記録物(たとえば、IDカードなどの個人認証媒体)113が作成される。
以降、上述した図1の副情報の埋め込み処理を電子透かし埋め込み処理と呼ぶ。また、以降、副情報と透かし情報は同じ内容を示す。
次に、上記したように記録物113上に記録された合成画像情報から副情報を復元または再生する、いわゆる電子透かし復元処理の流れについて図2に示す流れ図を参照して説明する。
まず、画像入力ステップ114では、記録物113上に記録されている合成画像情報を光学的に読取り、デジタルの画像情報として入力する。次に、復元処理ステップ115では、画像入力ステップ114により入力された画像情報から、電子透かし情報を復元する処理を行なう。
復元処理ステップ115は、周波数検出処理ステップ116と再構成処理ステップ117とから構成されている。周波数検出処理ステップ116は、画像入力ステップ114により入力された画像情報から、複数の鍵情報の中の1つ、たとえば、鍵情報103の空間周波数成分を検出する。再構成処理ステップ117は、周波数検出処理ステップ116により検出された空間周波数成分から副情報を再構成する。
次に、結果表示処理ステップ118は、復元処理ステップ115の復元結果、すなわち復元された副情報を表示する。
以降、上述した図2の副情報の復元処理を電子透かし復元処理と呼ぶ。
図3は、上述した電子透かし埋め込み処理の流れを模式的に示したものである。
主画像情報201は個人認証用の顔画像、副(画像)情報202は主画像情報の201セキュリティ性を高めるための情報または真偽判定に用いる情報、著作権管理に用いる情報など(今回は数字の「174」)で、鍵情報(1)203、鍵情報(2)204、…、鍵情報(N)205は電子透かしの埋め込みおよび復元に用いる鍵となる情報である。
最初に、主画像情報201、副情報202、鍵情報(1)203〜鍵情報(N)205を用いて電子透かし埋め込み処理206を行ない、合成画像情報(電子透かし入り画像情報)207を作成する。そして、作成した合成画像情報207を記録(印刷)処理208することにより、個人認証媒体209が完成する。
ここで、主画像情報201は、個人認証用の顔画像や有価証券の図柄、その他の画像であり、白黒濃淡画像でもフルカラー画像でも構わない。
副情報202は、2値のビット列から濃淡画像に変換したもの、氏名や誕生日などをコード化して画像に変換したもの、会社や組織のロゴマークなどの図形を用いることができる。
鍵情報(1)203〜鍵情報(N)205は、2値のビット列を2値(白黒)画像に変換したもの、あるいは、幾何学模様などで構成された2値画像、あるいは、あらかじめ定めておいたシードを基に作成した乱数(擬似)パターンを2値画像に変換したものである。
図4は、作成されたIDカードなどの個人認証媒体301の具体例を示している。個人認証媒体301には、持ち主の個人認証用顔画像302が印刷記録されているが、この顔画像302は図1、図3で説明した処理によって作成され記録(印刷)されたものである。また、識別番号(いわゆるID番号)、氏名、生年月日、有効期限などの個人管理情報303が記録されている。これらの個人管理情報303を、図1の電子透かし埋め込み処理における副情報として用いることにより、個人認証媒体301の認証用顔画像302と個人管理情報303とが関連付けられるため、個人認証媒体301の一部を改ざんしたり、偽造したりすることが困難になり、セキュリティ性を高めることが可能になる。
次に、図1における色差変調処理ステップ108a〜108cの色差変調処理について図5を参照して説明する。
図1に示したように、色差変調処理ステップ108a〜108cでは、色差量補正処理ステップ107a〜107cから得られた補正済み色差量および鍵情報103〜105を入力として、色差変調処理済み画像情報を結果として出力する。
ここでは説明を簡単にするために、色差量補正処理を考えないで、一定色差量が入力された場合について説明する。
図5(a)は鍵情報の一部分(横8画素×縦1画素)を示し、白い部分が白画素(W)、斜線部分が黒画素(K)を示している。入力される色差量ΔCDはR,G,Bの3成分に分けることができ、それぞれΔCD-R、ΔCD-G、ΔCD-Bとなる(8ビット演算の場合、255≧ΔCD-R、ΔCD-G、ΔCD-B≧0)となる。
そして、次式(A−1)〜(A−6)にしたがい、R,G,Bの3成分を別々に計算して色差変調処理を行なう。△CDの値が大きいほど電子透かし復元時の復元難易度が低くなるが、あまり大きくしすぎると副情報が露見しやすくなる。
KEY(i,j)=Wの場合 → RSLT(i,j)-R
+△CD-R……(A−1)
RSLT(i,j)-G
−△CD-G……(A−2)
RSLT(i,j)-B
−△CD-B……(A−3)
KEY(i,j)=Kの場合 → RSLT(i,j)-R
−△CD-R……(A−4)
RSLT(i,j)-G
+△CD-G……(A−5)
RSLT(i,j)-B
+△CD-B……(A−6)
KEY(i,j) : 鍵情報
RSLT(i,j): 色差変調処理結果
色差変調の結果、R,G,B成分に分けたRSLT-R〜RSLT-Bを図5(b)(c)(d)に示す。また、R,G,B成分を合成したものを図5(e)に示す。
色差変調処理の結果、鍵情報が白画素(W)に対応している部分はレッド成分リッチ(R−rich)になり、黒画素(K)に対応している部分はシアン成分リッチ(C−rich)になる。レッドとシアンは物理補色の関係にあるために、両者を足し合わせると無彩色になる。
したがって、この画素ピッチを人間の肉眼の感知範囲を超えた高解像度(約300dpi以上)に設定することにより、図5(e)の色差変調処理結果は肉眼ではレッドとシアンが識別できず無彩色(灰色)となる。この性質を利用することにより、鍵情報のパターンを色差情報パターンに変換して見かけ上無彩色情報に置き換えることができる。
なお、ここでは補色の例として、レッドとシアンを用いたが、グリーンとマゼンタ、ブルーとイエローなど、他の組み合わせでももちろん構わない。
また、鍵情報の白画素にレッド、黒画素にシアンを割り当ててあるが、補色の割り当ては相対的なものなので、逆になっても原理的に全く問題ない。
さらに、図5(a)の鍵情報に2画素単位で白と黒を一定周期で変化する画像を用いているが、原理的にマクロ的に見て白と黒がほぼ同じ割合で存在していれば、前述のように肉眼では識別できないので必ずしも一定周期である必要はなく、あるシードを基に発生させた乱数(擬似)パターンなどを使用することができる。
次に、一定色差量ではなく、色差量補正処理を行なった場合について説明する。
図6に色差量補正処理の全体の流れを示す。ステップ501が色差量補正処理(図1の色差量補正処理ステップ107a〜107c)を示し、ステップ502が前述の色差変調処理(図1の色差変調処理ステップ108a〜108c)を示す。
最初に、ステップ503により注目画素を設定する。次に、ステップ504により基本色差量を設定する。これは、あらかじめ設定されている色差量ΔCdのことである。次に、ステップ505により、主画像情報の画素情報に基づいて画素単位色差補正量計算処理を行なう。これは、後述の重畳処理の際に画像情報のアンダーフローもしくはオーバーフローが生じないようにするためである。
次に、ステップ506により最小色差量を導入する。これは、あらかじめ設定してあるパラメータで、最小色差量を導入することにより、色差が”0”になり、全く電子透かしが埋め込まれなくなるのを防ぐ。次に、ステップ507によりブロック単位色差補正計算処理を行なう。ステップ505で画素単位の補正を行なっているが、これだけだと各画素間の連携が取れていないため、全くばらばらの補正となってしまうため、あらかじめ設定された範囲のブロック領域において再度補正処理を行なう。
最後に、ステップ502により、補正された色差量で色差変調処理を行なう。このブロック領域は、対応する色差変調処理で用いる鍵情報の固有周期に対応した範囲に設定することにより、色差のバランスが取り易い。
実際には、図1に示したように、N個の鍵情報を用いる場合は、N個の補正された色差変調処理を行ない、N個の色差変調処理結果が得られることになる。
次に、図1における選択・合成処理ステップ109の選択・合成処理について図7〜図12を参照して説明する。
まず、最初に2値画像における連結画素数を考える。ここでは、指定した色と同じ系統の色の連結成分を構成する画素数を、連結画素数と定義している。
図7に一例を示す。図7では、横8画素×縦6画素の白い領域に、黒い画素(斜線で示す)で中抜きの四角パターンP1が形成されている。4連結で連結画素数を定義すると、K−A部分は黒画素の連結画素は2画素、K−B部分は黒画素の連結画素は4画素、K−C部分は黒画素の連結画素は2画素、K−D部分は黒画素の連結画素は4画素、W−A部分は白画素の連結画素は28画素となる。
図8(a)に鍵情報(1)701の例を、図8(b)に鍵情報(2)702の例を示す。それぞれ2値画像であり、白い部分が白画素(W)、斜線部分が黒画素(K)を示している。
図9(a)(b)に、図8(a)(b)の鍵情報701,702を色差変調した後、副情報に基づき選択・合成処理した結果の例を示す。この例では、横4画素×縦4画素の4枚の画像が合成して作成した横8×縦8画素の画像の中央部分(横4×縦4画素)を切り取っている。図9の白い部分はレッド成分リッチ(R−rich)な画素、斜線部分はシアン成分リッチ(C−rich)な画素を示している。
図9(a)の画像801では、4連結で連結画素数を計算すると、最大8画素(C−rich)、最小2画素(R−rich)となり、領域中央にシアン成分リッチ(C−rich)な画素が集中していて、レッド(R)−シアン(C)の色のバランスが悪い。これでは電子透かし埋め込み処理後の画質劣化や副情報の露見につながる可能性が高い。
図9(b)の画像802では、4連結で連結画素数を計算すると、最大4画素(C−rich)、最小4画素(R−rich)となり、領域中央にシアン成分リッチ(C−rich)またはレッド成分リッチ(R−rich)な画素が集中していなくて、レッド(R)−シアン(C)の色のバランスがよい。これなら電子透かし埋め込み処理後の画質が劣化しにくく、副情報が露見しにくい。
したがって、選択・合成処理では、図10に示すように、あらかじめ定めた領域内の連結画素数を計算して、連結画素数が小さくなるように、入力された色差変調処理結果の画像に対し回転処理などを施す。図10(a)に示すように、副情報に基づいて選択・合成された場合、これらは、図8の鍵情報(1)701および鍵情報(2)702を用いているので、図10(b)に示すように、4つの画像902a〜902dに分解できる。そこで、画像902bおよび902cを左右反転処理することにより、図10(c)に示すような状態になり、図9で説明したように、図10(a)の状態と比較してレッド(R)−シアン(C)のバランスが改善されることがわかる。
本実施の形態の電子透かし埋め込み処理に用いる副情報は、前述のように、2値のビット列から濃淡画像に変換したもの、氏名や誕生日などをコード化して画像に変換したもの、会社や組織のロゴマークなどの図形を用いることができる。
図11は、上記副情報を濃淡画像に変換した例を示す。図中、符号1001は”1”と”0”とで表現されている2値のビット列である。これを、たとえば、”0”を黒画素(K)に、”1”を白画素(W)に対応させて2次元の濃淡画像に変換したものが符号1002である。
本実施の形態では、主画像情報に副情報を埋め込む際に重畳処理(図1のステップ110)を行なうので、副情報を濃淡画像に変換した副情報の画像サイズは主画像情報のサイズと同じかそれ以下でなければならない。したがって、副情報のサイズが非常に大きく濃淡画像に変換した際に主画像情報のサイズを超える場合は画素のビットの深さ方向で調整する(画素当りのビット数を増やす)。ただし、主画像情報と副情報を変換した濃淡画像の解像度と画素数は一致している必要はない。
図11において、符号1003は副情報が2ビットの濃淡画像に変換された場合、符号1004は副情報が3ビットの濃淡画像に変換された場合、符号1005は副情報が8ビットの濃淡画像に変換された場合を示す。
図11の符号1005のように、副情報が8ビットの濃淡画像に変換された場合の本実施の形態における選択・合成処理の第1例を説明する。
第1例の選択・合成処理では、副情報の1画素に対応する領域を分割して、その各分割領域に複数の鍵情報を割り当てる方法である。さらに、下記表1に示すように、濃淡画像に変換された後の副情報の各画素のMSB(Most Significant Bit):第7ビットプレーンに鍵情報(1)、鍵情報(2)、第1ビットプレーンに鍵情報(3)、鍵情報(4)、…、LSB(Least Significant Bit):第0ビットプレーンに鍵情報(15)、鍵情報(16)と割り当てて選択・合成処理していく。
Figure 0004686578
このようにして、副情報と複数の鍵情報とを関連付けると、副情報の1画素に対応する結果が、たとえば、図12(a)に示すように得られる。図12(a)の符号1006(太枠の外側の四角領域)が副情報の1画素に対応する。左上の符号1007が表1の第7プレーンで選択された鍵情報(1)または鍵情報(2)を示す。図面に対し時計回りで、符号1008が表1の第6プレーンで選択された鍵情報(3)または鍵情報(4)となり、同様に符号1014が表1の第0プレーンで選択された鍵情報(15)または鍵情報(16)となる。中央部分はダミーの鍵情報を用いてもよいが、図12(a)の場合は第7ビットプレーンで選択された鍵情報を再び使用している。
このように、表1にしたがって、副情報の1画素に対応する領域の各要素(1007〜1014)が選択され、合成されて図12(a)の画像1006ができる。
この第1例の場合、濃淡画像に変換された副情報の画素当りのビット数をBとすると、必要な鍵情報の個数Nは
N=2……(B)
となる。もちろん、色差量補正処理ステップおよび色差変調処理ステップの数もN個となる。
次に、本実施の形態における選択・合成処理の第2例を説明する。
第2例の選択・合成処理では、下記表2に示すように、副情報の1画素に対応する領域のビットで表現できる総数と同じ数の鍵情報を用意して、その鍵情報を割り当てる方法である。
Figure 0004686578
このようにして、副情報と複数の鍵情報とを関連付けると、副情報の1画素に対応する結果が、たとえば、図12(b)に示すように得られる。図12(b)の符号1015(太枠の外側の四角領域)が副情報の1画素に対応する。第1例(図12(a))では副情報の1画素に対応する領域を複数に分割していたが、この第2例では分割せずに、表2で選択された1つの鍵情報が割り当てられる。
この第2例の場合、濃淡画像に変換された副情報の画素当りのビット数をBとすると、必要な鍵情報の個数Nは
N=2……(C)
となる。もちろん、色差量補正処理ステップおよび色差変調処理ステップの数もN個となる。
次に、本実施の形態における選択・合成処理の第3例を説明する。
第3例の選択・合成処理では、副情報をビットプレーンごとに分解して濃淡画像に変換し、鍵情報を割り当てる。
たとえば、図11の濃淡画像1005のように8ビットに変換された濃淡画像を、さらに第0ビットプレーンから第7ビットプレーンに分解して、それを第7ビットプレーンから第0ビットプレーンまで順番に繰り返し並べていく。このとき、第7ビットプレーンから第0ビットプレーンを順番に繰り返し並べていく配列を、後の復元処理に用いるために記憶しておく。最終的な濃淡画像は1ビット(0または1)の濃淡画像に変換されることになる。そして、表1で示した鍵情報1および鍵情報2のみを用いて選択・合成処理を行なう。
副情報を復元する際には、前述のように記憶しておいた第7ビットプレーンから第0ビットプレーンを繰り返し並べていった順番を用いて上記の逆の手順を行なうことにより元に戻す。
この第3の例の場合、濃淡画像に変換された副情報の画素当たりのビット数Bに関係なく、必要な鍵情報の個数Nは
N=2……(D)
となる。もちろん、色差量補正処理ステップおよび色差変調処理ステップの数もN個となる。
次に、図1における重畳処理ステップ110の重畳処理について説明する。
重畳処理ステップ110では、主画像情報101および選択・合成処理ステップ109の結果を入力パラメータとして重畳処理を行ない、合成画像情報111を作成する。この合成画像情報111は、主画像情報101に副情報102が不可視状態で埋め込まれている。
この重畳処理は、次式(C−1)〜(C−3)にしたがい、R,G,Bの3成分を別々に計算して行なう。
DES(i,j)-R=SRC(i,j)-R
+RSLT2(i,j)-R……(C−1)
DES(i,j)-G=SRC(i,j)-G
+RSLT2(i,j)-G……(C−2)
DES(i,j)-B=SRC(i,j)-B
+RSLT2(i,j)-B……(C−3)
DES(i,j) : 合成画像情報
SRC(i,j) : 主画像情報
RSLT2(i,j): 選択・合成処理結果
前述のように、色差変調処理によって、鍵情報のパターン情報を補色の関係を用いて色差情報パターンに変換して見かけ上無彩色情報に置き換えた。そして、選択・合成処理によって、副情報と複数の鍵情報とを関連づけることにより、副情報は見かけ上無彩色の情報として関連づけられたことになる。上記式(C−1)〜(C−3)のRSLT2(i,j)がそれに相当する。
上記式(C−1)〜(C−3)では、マクロ的にはRSLT2(i,j)が人間の肉眼では色差を識別できず無彩色に見えるため、次式(D−1)〜(D−2)のように、
RSLT2≒0……(D−1)
DES≒SRC……(D−2)
※R,G,B成分を合成した場合を示している
と誤認識して、合成画像情報と主画像情報とは同じに見える。
以上、本実施の形態における電子透かし埋め込み処理についてまとめると、
(1) 人間の視覚特性を利用
・画像の周波数が高くなるほど階調識別能力が低下
・輝度情報よりも色差情報の方が判別困難
(2) 補色の関係を利用 例…レッド+シアン=無彩色(白)(加法混色の場合)
(3) 高周波キャリアパターン画像に補色の関係および色差情報を適用(色差変調処
理)
を用いることにより、画質劣化を招くことなく、主画像情報に副情報を不可視状態で埋め込むことを可能にしている。
上記(2)の例でいえば、レッドとシアン(=緑色+青色)は、加法混色の場合、補色の関係にあり、レッドとシアンとが隣り合っていても人間の目には判別しにくく無彩色に見える。
上記(3)の例のように、高周波キャリアパターン画像を用いる、あるいは、作成した合成画像情報を高解像度で記録することで、レッド・リッチな画素とシアン・リッチな画素とが繰り返し配置されているため、人間の目ではこれらの細かな色差の違いを識別できず、色差量はプラスマイナス「0」と判断してしまう人間の視覚特性を利用している。
この方式で作成した合成画像情報(電子透かし入り画像情報)は、格納する画像フォーマットに依存しないので、現在流通しているBMPやTIFF、JPEGなどの画像フォーマットだけでなく、将来新しい画像フォーマットに変更されても全く問題ない。
次に、図2における復元処理ステップ115の復元処理について説明する。
副情報の復元は、埋め込み処理の際に用いた鍵情報に基いて特定の空間周波数成分を合成画像情報から抽出し、その周波数成分から副情報を再構成することにより行なう。
本実施の形態では、鍵情報は複数用いられているが、前記表1のように割り当てられている場合、副情報の第7ビットプレーンを復元するには鍵情報(1)を用いることで復元できる。同様に、第0ビットプレーンを復元するには、鍵情報(15)を用いることで復元できる。
以下、各ビットプレーンに対する処理は共通なので、選択した鍵情報を単に鍵情報と記す。
鍵情報に基いて特定の空間周波数成分を抽出する方法としては、空間周波数フィルタを用いることができる。鍵情報に対応する空間周波数フィルタの係数は、以下の(1)〜(4)の手順にて計算する。なお、係数の計算はあらかじめ行なって結果を格納しておいてもよいし、抽出処理を行なう前、あるいは、その都度、計算して用いてもかまわない。
(1) 鍵情報のサイズを、記録媒体上に記録されている合成画像情報の解像度と、記
録画像入力手段の読取り解像度とを基にして伸縮する。
(2) フーリエ変換を行ない、周波数領域に展開する。なお、変換は整数で行なって
もよいし、実数や複素数に拡張してもよい。
(3) 展開された値を参照し、フィルタの通過域を調整する。
(4) 調整後の値に対してフーリエ逆変換を行ない、得られた値を周波数フィルタ係
数とする。
上記(1)については、たとえば、図13に示す鍵情報を用いて埋め込みを行なった場合に、記録されている合成画像情報の印刷解像度が300dpi、記録画像入力手段の読取り解像度が600dpiであったとすると、記録画像入力手段により取込まれる合成画像情報は図14に示すようになる。
図13において、白部分603は白画素(W)、斜線部分604は黒画素(K)を表している。図14において、レッド−シアンによる色差変調処理の場合、白丸605はレッド成分リッチ、黒丸606はシアン成分リッチなドットを表わしている。また、607は主走査方向の基本周波数波形、608は副走査方向の基本周波数波形を表わしている。
埋め込まれた鍵情報は、図14に示す形状609へ変換されており、その基本周波数は鍵情報のサイズを読取り解像度と印刷解像度との比の分だけ伸長した場合の周波数と同等になっている。したがって、フィルタ係数を計算する際には、あらかじめ記録、読取りにおける解像度の変化を繰り入れておく。
上記(2)〜(4)にて、合成画像情報から鍵情報の空間周波数成分を抽出する周波数フィルタを設計するが、鍵情報はもともと2値画像情報であるため、エッジ(=白画素と黒画素とが接する境界)の傾きが急峻であるという特徴を持っている。空間領域においてエッジが急峻であればあるほど、周波数領域においては高調波を多く含むことになるため、急峻なエッジが多い画像情報をそのまま用いて計算された周波数フィルタ係数を使うと、高調波側に載ったノイズが素通しになり、S/N比が悪化して副情報の復元に支障をきたす。
このため、上記(3)に示す調整作業が必要となるが、この内容は個々の鍵情報およびシステムの運用環境に依存する。一般的には、ノイズを抑制するために高調波を阻止し、基本周波数に近い周波数のみを通過させるが、ノイズが少ない環境では、高調波も通過させることで鍵情報の複雑性を積極的に利用し、セキュリティ性を高めるというアプローチもある。
記録画像入力手段にて取込まれた合成画像情報から、上記方法にてあらかじめ計算された周波数フィルタ係数を用い鍵情報の空間周波数成分を抽出するには、以下に示す数1による畳み込み積分を行なう。
Figure 0004686578
ここで、Iは記録画像入力手段で取込まれた合成画像情報、gは周波数フィルタ係数、Kは抽出された鍵情報の空間周波数成分である。
なお、特定の空間周波数成分を抽出する方法は、上記した空間周波数フィルタを用いる方法に限定されるものではなく、周知のフーリエ変換やウェーブレット変換などを利用し、一旦別空間へ写像して処理を施した後、逆に写像することで抽出する方法を用いても構わない。
抽出された空間周波数成分から副情報を再構成する処理は、得られた抽出結果に対し所定の閾値Thにて2値化処理を行なうことで、副情報を白黒2値の画像情報として復元することができる。
同様に、他のビットプレーンに関しても、前記表1に対応する、それぞれの鍵情報を用いて、それぞれに対応する副情報を復元し、得られた結果を合成すればよい。
他の復元方法として、復元したい副情報のビットプレーンで用いている鍵情報の黒画素を記録情報、白画素を非記録情報として、合成画像情報の記録解像度と合わせた上で、透明状の記録媒体に記録することにより作成した復元用マスクシートを物理的に印刷された合成画像情報上に重ね合わせることにより、副情報を復元することが可能である。この場合は、副情報が肉眼で目視可能である。
これは、色差変調処理により鍵情報を例えばレッドとシアンの補色との組合わせの色差量に変換して見かけ上無彩色情報にしていることがポイントになる。上記復元マスクシートは、透明状の記録媒体に補色の第1色が黒画素で記録されていて、第2色が非記録状態なので、第1色に対応する黒画素は下の画像を透過しないで遮蔽し、第2色に対応する非記録画素は透明で下の画像を透過して見えるようになる。すなわち、補色の関係にある第1色と第2色の片側一方だけが見えて、残りの一方が遮蔽されて見えないため、色差の色バランスが崩れて、無彩色状態ではなくなるからである。
以上説明した第1の実施の形態に係る画像処理方法を用いることにより、主画像情報に副情報を不可視状態で埋め込んだ記録物を作成し、また埋め込んだ副情報を復元・確認することができる。この技術を用いることにより、従来よりもセキュリティ性の高い記録物を作成することができる。
次に、第2の実施の形態について説明する。
図15は、第2の実施の形態に係る画像処理方法の全体の流れを示す流れ図である。この例は、たとえば、IDカードなどの個人認証媒体における個人認証用の顔画像の処理に適用した場合を示しており、以下、詳細に説明する。
まず、主画像情報に副情報を埋め込んで合成画像情報を作成し記録する処理の流れについて、図15(a)に示す流れ図を参照して説明する。
最初に、画像入力ステップ1301で画像入力処理が行なわれる。ここでは、個人認証媒体の所持者本人の顔画像をカメラにより入力したり、顔写真をスキャナなどの画像入力装置で取込むことにより、個人の顔画像情報をデジタル化する。通常、この時点では、デジタル化された顔画像情報はR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)成分で格納される。
次に、第1の前処理ステップ1302では、画像入力ステップ1301により得られた顔画像情報である主画像情報に対して、後述する記録処理ステップ1306の画素形成処理に対応した第1の前処理を行ない、第1の前処理済み主画像情報を作成する。ここでは、第1の前処理として、たとえば、主画像情報に対して間引き(無効化)処理を行なう。
次に、第2の前処理ステップ1303では、第1の前処理ステップ1302により作成された第1の前処理済み主画像情報に対して幾何学変処理を行ない、被埋め込み画像情報を作成する。ここでは、第2の前処理として、たとえば、第1の前処理済み主画像情報に対して回転処理を行ない、さらに第1の前処理で間引きした画素部分を取り除いて有効画像サイズを圧縮することを行なう。
次に、電子透かし埋め込み処理ステップ1304では、第2の前処理ステップ1303により作成された被埋め込み画像情報(第2の前処理済み主画像情報)に対して、電子透かし埋め込み処理を行なう。ここでは、前記第1の実施の形態で説明した電子透かし埋め込み処理が行なわれ、被埋め込み画像情報に対し副情報を人間の視覚に感知できないように不可視状態で埋め込んだ合成画像情報が作成される。
次に、後処理ステップ1305では、電子透かし埋め込み処理ステップ1304により作成された合成画像情報に対して後処理を行なうことにより、記録画像情報を作成する。ここでは、たとえば、合成画像情報に対して逆回転処理を行ない、さらに第2の前処理ステップ1303で取り除いた画素部分を付加して有効画像サイズの伸長を行なう。
次に、記録処理ステップ1306では、後処理ステップ1305により作成された記録画像情報を個人認証媒体となる記録媒体上に印刷記録することにより、個人認証媒体が作成される。
具体的には、まず記録画像情報の各画素のR(赤),G(緑),B(青)を記録用のC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)へ色変換する。色変換の方法としては、記録デバイスの特性に合わせて、3×3や3×9の色変換マトリクスないしはLUT(ルック・アップ・テーブル)を使用する。次に、C,M,Yの画像情報から、記録デバイスを制御する駆動信号を生成する。たとえば、溶融型熱転写記録方式の場合は、サーマルヘッドの駆動電圧制御信号や駆動パルス信号などを生成する。また、サーマルヘッドの熱制御などもここで行なわれる。最後に、記録媒体へ、サーマルヘッドに代表される記録デバイスの主走査方向の偶数番目の画素と奇数番目の画素を記録ラインごとに交互に形成することにより、合成画像情報を記録する。
記録媒体上に形成されるドットの配列は図16に示すようになる。図16中のA−A’ラインを見ると、ドットは1ドット置きではなく、ピッチd(サーマルヘッドの発熱体のピッチの1/√2)で隣接した状態で、45°方向へ一列に並んでいることがわかる。
次に、上記したように記録媒体上に記録された合成画像情報から副情報を復元する処理の流れについて、図15(b)に示す流れ図を参照して説明する。
最初に、画像入力ステップ1307により、スキャナやカメラなどの入力デバイスを用いて、個人認証媒体上に記録された合成画像情報をデジタル情報として読取る。
次に、鍵情報設定ステップ1308により鍵情報の設定を行なう。これは、複数の鍵情報を使い分けているならば、どの鍵情報を用いているのか、個人認証媒体に関連づけられた情報から判断して鍵情報を特定し、また、単一の鍵情報ならば直接鍵情報の特定周波数の情報をあらかじめテーブルとして保持しておく。
次に、電子透かし復元処理ステップ1309により電子透かし復元処理を行う。これは、画像入力ステップ1307により得られた合成画像情報に対し、鍵情報設定ステップ1308により設定された特定周波数による周波数フィルタリングを行なう。周波数フィルタリングは、たとえば、FFT演算やデジタル周波数フィルタなどが使用できる。
最後に、結果表示処理ステップ1310により、電子透かし復元処理ステップ1309により得られた復元結果をディスプレイなどに表示して使用者に知らせる。
次に、本発明に係る交互駆動記録方式、詳しくはドットを千鳥状に配列させて記録する溶融型熱転写記録方式について説明する。ドットの有無で画像を形成するような溶融型熱転写記録方式では、多階調画像を表現する場合、ドットの面積を変化させる面積変調処理を行なうことにより、見かけの濃度を制御している。このため、ドットのサイズを正確に変調することが求められ、そのためには交互駆動記録方式が望ましい。
交互駆動記録方式は、記録ヘッド(ライン型サーマルヘッド)の奇数ラインの奇数番目の発熱体と偶数ラインの偶数番目の発熱体を記録ラインごとに交互に駆動する方式である。このように駆動した場合、記録するべき画像情報が図17(a)に示すように格子状に配列されて格納されているのが、実際の記録時には図17(b)に示すように千鳥状に配列されて画像が形成される。したがって、記録するべき画像情報の奇数ラインの偶数番目の情報および偶数ラインの奇数番目の情報が欠落することになる。
このことは、単純に記録したい画像情報に電子透かし処理を用いて副情報を不可視状態で埋め込んでも、元の画像情報の1/2の面積しか有効にならず、その他の情報が欠落してしまうために、電子透かしが破壊されるか改変されてしまうことを意味する。一般的に、これだけ電子透かしが破壊された場合、副情報を復元することは非常に困難であり、セキュリティ性を保つことができなくなる。
そこで、本実施の形態では、電子透かし埋め込み処理ステップ1304の電子透かし埋め込み処理を行なう際に、第1の前処理ステップ1302の第1の前処理および第2の前処理ステップ1303の第2の前処理を行ない、さらに、電子透かし埋め込み処理ステップ1304の電子透かし埋め込み処理後に後処理ステップ1305の後処理を行なうことにより、交互駆動記録時の電子透かしの破壊を防ぐものである。
第1の前処理ステップ1302では、交互駆動記録方式のときにエネルギを印加されない画素に対応する画像情報を間引く。図18(a)は、記録するべき画像情報全体の配列を示していて、黒い部分1501は記録される画素(間引かれない情報)に対応し、白い部分1502は記録されない画素(間引かれる情報)に対応している。
第2の前処理ステップ1303では、第1の前処理を行なった画像情報の配列に対して、たとえば、45°の回転処理および間引いた情報を取り除く処理を行ない、有効な画像情報サイズの圧縮処理を行なう。図18(b)に示すように、図18(a)の画像情報配列を45°回転させると黒い部分1501(間引かれない情報)が整列に並ぶ。そこで、白い部分1502(間引かれる部分)を取り除き、再配列させることにより、交互駆動記録方式の影響がない画像情報だけの配列が作成される。
さらに、図19に示す具体例をあげて第1の前処理および第2の前処理の説明を行なうと、図19(a)は記録したい画像情報の配列を示していて、最初の段階では、aij(i=1〜4、j=1〜4)の情報が格納されている。第1の前処理により間引き処理を行ない、画像情報の配列の奇数ラインの偶数番目の情報および偶数ラインの奇数番目の情報が間引かれて、図19(b)に示す×印の付いた配列要素が削除される。
次に、第2の前処理で45°回転処理が行なわれ、図19(c)に示す状態になる。さらに、×印の部分を除去した後に、有効な画像情報の要素を再配列すると、図19(d)に示す状態になる。空いた隙間の配列要素には記録しない意味の情報(この場合は「0」)を格納しておく。
図19(a)と図19(d)とでは、実際に記録される、あるいは、交互駆動記録の影響を受けない画像情報の配列サイズは減少している(図19(d)の太枠部分)。この図19(d)の太枠部分に副情報が収まるように、電子透かし埋め込み処理を行なうことによって、副情報は完全に保持される。
後処理ステップ1305に関しては、上記の全く逆の処理を行なうことになるので、説明は省略する。
なお、本実施の形態では、溶融型熱転写記録方式を一例として示したが、記録画素のドット面積変調により階調表現を行なう記録方式に対しては、どの方式においても本実施の形態の画像処理は適応可能である。
図20は、今まで説明した手順を模式的に示したものである。
図20において、主画像情報1701は、たとえば、個人認証用の顔画像情報、副情報1702は、たとえば、主画像情報1701のセキュリティ性を高める情報(今回は数字の「174」)で、氏名や誕生日などをコード化して画像としたものや会社のロゴマークなどの図形を用いる。複数の鍵情報(1)1703、鍵情報(2)1704、鍵情報(N)1705は、電子透かし埋め込み処理1707によって不可視状態で埋め込まれた副情報を後で復元するための鍵となる情報である。
最初に、主画像情報1701に対し第1の前処理および第2の前処理を行なうことにより、被埋め込み画像情報1706を作成する。次に、被埋め込み画像情報1706と副情報1702と複数の鍵情報(1)1703、鍵情報(2)1704、鍵情報(N)1705とを用いて電子透かし埋め込み処理1707を行ない、電子透かし入り画像情報1708を作成する。そして、第1の前処理と第2の前処理の逆変換処理を行なう後処理を行なうことにより、合成画像情報1709を作成する。最後に、作成した合成画像情報1709を記録媒体上に記録する記録処理1710を行なうことにより、個人認証媒体1711が完成する。
なお、図20における電子透かし埋め込み処理1707は、前述の第1の実施の形態で説明したものが適用可能なので詳細は省略する。
また、上記したように記録媒体上に記録された合成画像情報から副情報を復元する電子透かし復元処理においても、同様に前述の第1の実施の形態で説明したものが適用可能なので詳細は省略する。
以上説明した第2の実施の形態に係る画像処理方法を用いることにより、主画像情報に副情報を不可視状態で埋め込んだ記録物を作成し、また埋め込んだ副情報を復元・確認することができる。
さらに、溶融熱転写記録方式に代表される、記録画素のドット面積変調により階調表現を行なう記録方式に対しては、どの方式においても本実施の形態の画像処理は適応可能である。
以上説明したように、上記実施の形態によれば、個人認証媒体に出力するようなアナログデータを対象として、主画像情報に別の付加的な副情報(副画像情報)を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を作成でき、記録後も記録した合成画像情報内の電子透かし情報が維持できる。
また、埋め込む副情報には数字や文字のキャラクタはもちろん、2次元バーコードのようなコード情報の埋め込み・復元に適している処理が可能となる。
さらに、溶融型熱転写記録方式を用いた画像記録装置において、高階調性能を維持したまま、記録画像への電子透かし技術が適用可能で、その電子透かし情報(副情報)は記録後も壊れないで保存され、復元可能である。
本発明の第1の実施の形態に係る画像処理方法における電子透かし埋め込み処理の流れを説明する流れ図。 本発明の第1の実施の形態に係る画像処理方法における電子透かし復元処理の流れを説明する流れ図。 電子透かし埋め込み処理の流れを模式的に示す流れ図。 作成された個人認証媒体の一例を模式的に示す平面図。 色差変調処理の概念を説明する図。 補正処理を含めた色差変調処理の流れを説明する流れ図。 連結画素数を説明するための図。 鍵情報の一例を説明するための図。 連結画素数の影響を説明するための図。 連結画素数を減少させる組合わせを説明するための図。 副情報を濃淡画像に変換した例を示す図。 選択・合成処理を説明するための図。 電子透かし復元処理に用いる鍵情報の一例を示す図。 電子透かし復元処理における鍵情報の周波数成分を示す図。 本発明の第2の実施の形態に係る画像処理方法の全体の流れを説明する流れ図。 記録したドットの配列状態を示す図。 記録する画像情報と記録したドットを説明する図。 第1の前処理および第2の前処理の概念を説明する図。 第1の前処理および第2の前処理の具体例を説明する図。 電子透かし埋め込み処理全体の流れを説明する流れ図。
符号の説明
101…主画像情報、102…副(画像)情報、103…鍵情報(1)、104…鍵情報(2)、105…鍵情報(N)、107a,107b,107c…色差量補正処理ステップ、108a,108b,108c…色差変調処理ステップ、109…選択・合成処理ステップ、110…重畳処理ステップ、111…合成画像情報、112…記録処理ステップ、113…記録物、114…画像入力ステップ、115…復元処理ステップ、116…周波数検出処理ステップ、117…再構成処理ステップ、1301…画像入力ステップ、1302…第1の前処理ステップ、1303…第2の前処理ステップ、1304…電子透かし埋め込み処理ステップ、1305…後処理ステップ、1306…記録処理ステップ、1307…画像入力ステップ、1308…鍵情報設定ステップ、1309…電子透かし復元処理ステップ。

Claims (2)

  1. 主画像情報に不可視状態の副情報を埋め込んだ合成画像情報を作成する画像処理方法であって、
    それぞれにあらかじめ設定されている色差量を用いて、色差量補正処理手段により前記主画像情報に対して画素単位の色差補正量を計算し、あらかじめ設定されたブロック領域における色差補正量を計算する複数の色差量補正処理ステップと、
    これらの複数の色差量補正処理ステップにより補正された複数の色差量と複数の鍵情報とに基づいて色差変調処理手段により色差変調処理を行なう前記色差量補正処理ステップの数に対応する数の色差変調処理ステップと、
    これらの複数の色差変調処理ステップにより色差変調された複数の画像情報を選択合成処理手段により副情報の値に基づいて選択し、それらの選択した画像情報を合成する選択合成処理ステップと、
    この選択合成処理ステップにより合成された副情報としての画像情報を重畳処理手段により前記主画像情報に重畳することにより当該主画像情報に対し前記副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を作成する重畳処理ステップと、
    を具備したことを特徴とする画像処理方法。
  2. 主画像情報に不可視状態の副情報を埋め込んだ合成画像情報を作成し、この作成された合成画像情報を記録手段により記録媒体上に可視状態で記録する画像処理方法であって、
    前記主画像情報に対して前記記録手段が前記合成画像情報を記録媒体に記録するための画素を形成する画素形成処理に対応した第1の前処理を第1の前処理手段により行なう第1の前処理ステップと、
    この第1の前処理ステップにより第1の前処理を施した主画像情報に対して第2の前処理を第2の前処理手段により行なう第2の前処理ステップと、
    それぞれにあらかじめ設定されている色差量を用いて、色差量補正処理手段により前記第2の前処理ステップで第2の前処理が施された主画像情報に対して色差量を補正する処理を行なう複数の色差量補正処理ステップと、
    これらの複数の色差量補正処理ステップにより補正された複数の色差量と複数の鍵情報とに基づいて色差変調処理手段により色差変調処理を行なう前記色差量補正処理ステップの数に対応する数の色差変調処理ステップと、
    これらの複数の色差変調処理ステップにより色差変調された複数の画像情報を選択合成処理手段により副情報の値に基づいて選択し、それらの選択した画像情報を合成する選択合成処理ステップと、
    この選択合成処理ステップにより合成された副情報としての画像情報を重畳処理手段により前記第2の前処理ステップで第2の前処理が施された主画像情報に重畳することにより当該主画像情報に対し前記副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を作成する重畳処理ステップと、
    を具備したことを特徴とする画像処理方法。
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