JP4684128B2 - 光伝送システムおよびその分散補償量設定方法ならびにシミュレーション装置 - Google Patents
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Description
従来の変調方式であるNRZ(Non Return to Zero)変調方式に対しては、例えば以下の非特許文献1、特許文献1に示すように、前置分散補償量(送信側の分散補償量)とインライン分散補償率(各中継器での伝送路に対する分散補償の割合)の関係が単位伝送区間数(スパン数)に関わらず一定の値となるように設計することが検討されてきた。
Yann Frignac,Jean-christophe,"Numerical optimization of pre- and In-line dispersion compensation in dispersion-managed systems at 40Gbit/s",国際会議OFC 2002, 論文番号ThFF5,開催2002年3月,p.612-613
また、本発明の光伝送システムは、光信号を送信する送信装置と、該光信号を受信する受信装置と、該送信装置および受信装置間について中継装置を介して接続する伝送路と、をそなえるとともに、該伝送路での分散特性を補償する分散補償部が、該送信装置,該中継装置または該受信装置にそなえてなる光伝送システムにおいて、各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和が、該光伝送システムの隣接する装置間を接続する単位中継区間の数及び該伝送路における分散係数がそれぞれ任意に設定された複数の条件で、該受信装置における受信信号品質が最適となる、各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和がそれぞれ算出され、当該算出された複数の残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和と、前記設定された単位中継区間の数及び分散係数との積との関係が定式化された一次関数式において、前記単位中継区間の数及び前記分散係数の積を変数とすることにより算出された、当該変数に対応する該残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和と等しくなるように、各装置における該分散補償部による分散補償量が定められていることを特徴としている。
なお、本発明が適用される実施態様は以下に示される実施の形態に限定されるものではない。又、上述の本願発明の目的のほか、他の技術的課題,その技術的課題を解決する手段及び作用効果についても、以下の実施の形態による開示によって明らかとなる。
〔a〕第1実施形態の説明
〔a−1〕光伝送システム1について
図1は本発明の第1実施形態にかかる光伝送システム1を示す図である。この図1に示す光伝送システム1は、光信号を送信する送信装置2と、光信号を受信する受信装置3と、送信装置2および受信装置3間について中継装置11〜15を介して接続する伝送路10と、をそなえるとともに、伝送路10での分散特性を補償する分散補償部2b,16,3aが、それぞれ、送信装置2,中継装置11〜15または受信装置3にそなえられている。
さらに、受信装置3は、送信装置2からの光信号を伝送路10を介して入力されて、受信信号処理を行なうものであって、伝送路ファイバ26からの光信号について分散補償を行なう受信側分散補償部(DCR)3a,分散補償量を可変調整可能な可変分散補償器3bおよび分散補償がなされた光信号について差動位相偏移復調処理等を行なって受信信号を再生する受信部3cをそなえている。
ここで、上述の送信装置2,中継装置11〜15または受信装置3にそれぞれそなえられている分散補償部2b,16,3aにおけるそれぞれの分散補償量は、以下のように求められる乖離量に基づいて定められることができるようになっている。
第1実施形態においては、送信装置2,中継装置11〜15および受信装置3における各分散補償部2b,16,3aでの分散補償後に残留する残留分散量の絶対値の総和を、乖離量(第1の乖離量)とし、この乖離量に基づいて、光伝送システム1における受信品質を良好とする分散補償量を設定することができるようになっている。
そして、第1実施形態においては、上述の送信装置2,中継装置11〜15および受信装置3における分散補償量を設定するにあたり、伝送路10のスパン数×伝送路分散係数の値を変数とした後述の式(1)に示す一次関数式に基づいて、受信信号品質を良好とする乖離量を算出することができるようになっている。即ち、算出される乖離量に基づいて、送信装置2,中継装置11〜15および受信装置3における各分散補償部2b,16,3aでの分散補償量の割り当て設定することができる。
本願発明者は、後述するような、光送信パワー、中継区間数(スパン数)、光波長、各分散補償部2b,16,3aでの分散補償量を任意に設定した条件で、乖離量に応じた受信信号品質の測定評価を行なった結果、最適乖離量が、スパン数に実質的に線形な関係を有する(比例する)ことを導出した。具体的には、受信信号品質を最適とすることが可能となる乖離量y2の算出のために、伝送路10のスパン数×伝送路分散係数の値を変数xとした式(1)に示すような一次関数式を導出した。
具体的には、上述の条件設定のもとで、DQPSKによる変調が施された光信号を送信端から送信するとともに、伝送路を介して受信端で受信する際の受信信号品質のシミュレーションを行なった結果、図4に示すように、最適な受信信号品質を得る乖離量y2(単位はps/nm)が、伝送路分散係数および伝送スパン数の積についての一次関数の関係を持つこととなる。
また、上述の一次関数y2=f1およびy2=f2の範囲で囲まれる領域Rの範囲内での乖離量を指標範囲としてとらえることとすれば、この指標範囲内にある乖離量において、分散補償部2b,16,3aでの分散補償量を探索することともできる。このようにしても、少なくとも分散補償量の探索にあたっての有力な方向付けとなる。
〔a−4〕乖離量に応じた受信信号品質の測定評価について
本願発明者は、E−LEAFおよびTWRSの2種の光ファイバを用いて、図6に示すような条件(a)〜(h)において、各スパンでの分散補償量を、分散補償率で80パーセント,100パーセントおよび120パーセントの組み合わせで可変させることで、乖離量0ps/nm〜3000ps/nmにわたる分散補償量設定での受信信号品質を測定評価した。
また、図7,図10および図13は、C(Conventional)バンドにおける短波長光を送信した場合についての測定結果であり、図8,図11および図14は、C(Conventional)バンドにおける中間波長光を送信した場合についての測定結果であり、図9,図12および図15においては、C(Conventional)バンドにおける長波長光を送信した場合についての測定結果である。
これらの受信信号品質についての測定結果から、(1)受信信号品質が最適となる乖離量は波長帯によらずほぼ同じであり、(2)受信信号品質が最適となる乖離量は、SPMの関数であるファイバ入力パワーによらずほぼ同じであり、(3)受信信号品質が最適となる乖離量は単位伝送区間数に依存して変化するということを見出すことができる。
図1に示す、6つの伝送区間数(6スパン)を有する光伝送システム1においても、上述の式(1)の演算により、最適乖離量y2を一意に特定することができる。即ち、送信装置1,中継装置11〜15および受信装置3における各分散補償部2b,16,3aでの分散補償後に残留する残留分散量の絶対値の総和(乖離量)を、伝送路10における隣接する装置間を接続する単位中継区間の数(6)に実質的に比例するように、送信装置2,中継装置11〜15および受信装置3における分散補償部2b,16,3aによる分散補償量を定めることができる。
すなわち、従来技術においては例えば前述の図7において表示されている全ての測定点にかかる(送信装置2,中継装置11〜15および受信装置3における分散補償部2b,16,3aでの)分散補償量設定のバリエーションに対する受信信号品質について評価する必要があったのに対して、このように算出された最適乖離量1400ps/nmを用いることによって、該当する最適乖離量での分散補償量設定のバリエーションのみ評価すれば、最適な分散補償量設定について容易に探索することができるようになる。
これらの図17(a)〜図17(c)および図18(a)〜図18(c)におけるプロットのパターン“○”,「“□”中に“*”が挿入されたもの」 ,“▽”の位置からもわかるように、特許文献1に記載されているようなNRZ変調方式の光信号を伝送する際に検討されてきた伝送区間における分散補償量の設計手法を、そのままDQPSK変調方式の光信号を伝送する際に転用するのみでは、十分な信号品質を得ることが困難である。しかし、本実施形態のごとく最適乖離量を算出することで、算出された最適乖離量を、最適分散補償量設定を探索する際の有用な条件とすることができるので、最適な分散補償量設定についての探索を容易に行なうことができるようになる。
このように、本発明の第1実施形態によれば、定められた単位中継区間の数及び分散係数との積に応じて、送信装置2,中継装置11〜15および受信装置3における分散補償部2b,16,3aでの分散補償後に残留する残留分散量の総和または残留分散量の絶対値の総和として設定すべき値を、一次関数式を演算することにより算出し、導出された残留分散量の総和または残留分散量の絶対値の総和として設定すべき値をもとに、各装置における分散補償部2b,16,3aによる分散補償量を定めることができるので、受信信号品質を良好とすることができるような残留分散量の総和または絶対値和を、簡易な演算によって算出することができ、分散補償量設定の探索にあたってこの総和または絶対値の総和を用いることで、受信信号品質を良好にする設定を得るための有力な方向付けとなるので、無作為な分散補償量の設定に対する受信信号品質の測定評価を行なう場合に比べて、光伝送システムの開発にかかる負荷を大幅に削減させることができるようになる。
上述の第1実施形態においては、乖離量(第1の乖離量)として、送信装置1,中継装置11〜15および受信装置3における分散補償部2b,16,3aでの分散補償後に残留する残留分散量の絶対値の和を用いているが、本発明によればこれに限定されず、乖離量(第2の乖離量)として、例えば残留分散量の総和を用いることとしてもよく、このような残留分散量の和を乖離量とした場合においても、光伝送システム1における受信品質を良好とする分散補償量を設定することができ、前述の第1実施形態の場合と同様の利点を得ることができる。
y1=(−A)x+(−B) …(2)
これは、後述するように、絶対値演算において正値で現れていた(第1の)乖離量に対する受信信号品質の標本パターンが、第2の乖離量における負値の領域においても同様に現れることを示している。
このようにしても、適切な受信信号品質を得ることが可能な(分散補償量の設定の指標値となる)乖離量y1を、伝送路分散係数と伝送路スパン数のみに応じて求めることができるようになる。尚、図21中、一次関数f1′は、上述の傾き(−A)を−80とし切片(−B)を70とした場合であり、一次関数f2′は、傾き(−A)を−56とし切片(−B)を170とした場合である。
このうち、図22〜図24はそれぞれ、前述の図7〜図9の場合の条件設定に相当するもので、図25〜図27はそれぞれ前述の図10〜図12の場合の条件設定に相当するもので、図28〜図30はそれぞれ、前述の図13〜図15の場合の条件設定に相当するものである。この場合においても、同一乖離量においても分散補償量設定に応じて複数種類のバリエーション(組み合わせ)があるので、同一の横軸上の位置に複数の受信信号品質を示す標本値が存在している。
単純加算値が正の値となる領域においても、前置分散量として+200ps/nmとした場合での測定結果を含めることとすれば、受信信号品質を最適とする正の値の乖離量を前述の第1実施形態の場合と同様に得られるようになっていることはいうまでもない。
図31(a)〜図31(c)はそれぞれ、前述の図22〜図24に示す測定点分布において、特許文献1に示すような波長分散補償量の設定手法を採用した場合の測定点についての相対的位置関係を示す図である。又、図32(a)〜図32(c)はそれぞれ、前述の図25〜図27に示す測定点分布において、特許文献1に示すような波長分散補償量の設定手法を採用した場合の測定点についての相対的位置関係を示す図である。
これらの図31(a)〜図31(c)および図32(a)〜図32(c)におけるプロットのパターン“○”,「“□”中に“*”が挿入されたもの」,“▽”の位置からもわかるように、特許文献1に記載されているようなNRZ変調方式の光信号を伝送する際に検討されてきた伝送区間における分散補償量の設計手法を、そのままDQPSK変調方式の光信号を伝送する際に転用するのみでは、十分な信号品質を得ることが困難である。しかし、本実施形態のごとく最適乖離量を算出することにより、算出された最適乖離量を、最適分散補償量設定を探索する際の有用な条件とすることができるので、最適な分散補償量設定についての探索を容易に行なうことができるようになる。
図33は本発明の第2実施形態にかかるシミュレーション装置を示すブロック図である。この図33に示すシミュレーション装置30は、伝送路分散係数および伝送スパン数に応じて、前述の第1実施形態における一次関数式に従って最適乖離量を出力しうるものである。
また、一次関数演算部34は、伝送スパン数取得部32にて取得した単位中継区間数および伝送路分散係数取得部31にて取得した分散係数の積を変数xとした、前述の第1実施形態におけるものと同様の一次関数による演算によって、各装置(図1の符号2,11〜15,3参照)での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和を乖離量として出力するようになっている。
上述した実施形態にかかわらず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
たとえば、上述の実施形態においては、差動位相偏移変調を行なった光信号を対象としているが、本発明によればこれに限定されず、他の光変調方式、例えばNRZ変調方式を適用した光信号に適用することも考えられる。
また、上述の実施形態の開示により、当業者は本発明の装置を製造することは可能である。
2 送信装置
2a 送信部
2b 前置分散補償部
3 受信装置
3a 受信側分散補償部
3b 可変分散補償器
3c 受信部
10 伝送路
11〜15 中継装置
16 分散補償部
21〜26 伝送路ファイバ
30 シミュレーション装置
31 伝送路分散係数取得部
32 伝送スパン数取得部(単位中継区間数取得部)
33 パラメータ保持部
34 一次関数演算部
Claims (7)
- 光信号を送信する送信装置と、光信号を受信する受信装置と、該送信装置および受信装置間について中継装置を介して接続する伝送路と、をそなえるとともに、該伝送路での分散特性を補償する分散補償部が、該送信装置,該中継装置または該受信装置にそなえてなる光伝送システムにおける分散補償量設定方法において、
該光伝送システムの隣接する装置間を接続する単位中継区間の数及び該伝送路における分散係数を定め、前記単位中継区間の数及び前記分散係数をそれぞれ任意に設定した複数の条件で、該受信装置における受信信号品質が最適となる、各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和をそれぞれ算出し、当該算出した複数の残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和と、前記設定した単位中継区間の数及び分散係数との積との関係を定式化した一次関数式において、前記定めた単位中継区間の数及び分散係数の積を変数とすることにより、当該変数に対応する該残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和を算出し、
各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和が、前記算出した該残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和と等しくなるように、各装置における該分散補償部による分散補償量を定めることを特徴とする、光伝送システムにおける分散補償量設定方法。 - 該残留分散量の総和を算出する第1の一次関数式における第1の傾き及び第1の切片が、該残留分散量の絶対値の総和を算出する第2の一次関数式における第2の傾き及び第2の切片とそれぞれ同一の値、または、前記第2の傾き及び前記第2の切片の各極性を反転した値であることを特徴とする、請求項1記載の光伝送システムにおける分散補償量設定方法。
- 該送信装置が、差動位相偏移変調が施された光信号を送信するとともに、
該残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和の単位をps/nmとし、該伝送路における波長分散係数の単位をps/nm/kmとした場合においては、該一次関数式における傾きの値を56〜80とするとともに、切片の値を、−170〜−70とすることを特徴とする、請求項1記載の光伝送システムにおける分散補償量設定方法。 - 該一次関数式の傾きおよび切片は、該送信装置から出力される光信号の変調方式および該伝送路をなす光ファイバの種類によって異なることを特徴とする、請求項1記載の光伝送システムにおける分散補償量設定方法。
- 該送信装置が、波長多重光信号を送信することを特徴とする、請求項1記載の光伝送システムにおける分散補償量設定方法。
- 光信号を送信する送信装置と、該光信号を受信する受信装置と、該送信装置および受信装置間について中継装置を介して接続する伝送路と、をそなえるとともに、該伝送路での分散特性を補償する分散補償部が、該送信装置,該中継装置または該受信装置にそなえてなる光伝送システムにおいて、
各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和が、該光伝送システムの隣接する装置間を接続する単位中継区間の数及び該伝送路における分散係数がそれぞれ任意に設定された複数の条件で、該受信装置における受信信号品質が最適となる、各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和がそれぞれ算出され、当該算出された複数の残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和と、前記設定された単位中継区間の数及び分散係数との積との関係が定式化された一次関数式において、前記単位中継区間の数及び前記分散係数の積を変数とすることにより算出された、当該変数に対応する該残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和と等しくなるように、各装置における該分散補償部による分散補償量が定められていることを特徴とする、光伝送システム。 - 光信号を送信する送信装置と、光信号を受信する受信装置と、該送信装置および受信装置間について中継装置を介して接続する伝送路と、をそなえた光伝送システムにおける、該送信装置,該中継装置または該受信装置での分散補償量を設定するための指標となる指標値を演算するシミュレーション装置において、
該光伝送システムの隣接する装置間を接続する単位中継区間の数を取得する単位中継区間数取得部と、
該伝送路における分散係数について取得する伝送路分散係数取得部と、
前記単位中継区間の数及び前記分散係数をそれぞれ任意に設定した複数の条件で、該受信装置における受信信号品質が最適となる、各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和をそれぞれ算出し、当該算出した複数の残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和と、前記設定した単位中継区間の数及び分散係数との積との関係を定式化した一次関数式による演算によって、各装置における該分散補償部での分散補償後に残留する残留分散量の総和または該残留分散量の絶対値の総和を、該指標値として算出する一次関数演算部と、をそなえたことを特徴とする、シミュレーション装置。
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