JP4676789B2 - 乳酸菌の酸耐性に関わる遺伝子 - Google Patents

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本発明は、発酵製造やプロバイオティックスに関わる乳酸菌など食品微生物、及び、乳酸・アミノ酸・核酸など有用物質を生産する微生物、環境浄化に関わる微生物に応用可能な新たに酸耐性機能が見出された遺伝子とその応用に関する。
近年、プロバイオティクス菌を用いたヨーグルトやドリンク、粉末、タブレット、家畜用飼料等が注目されている。プロバイオティクス菌とは、宿主の腸内菌叢のバランスを改善することにより宿主に有益な作用をもたらす生きたまま腸に到達しうる微生物のことである。主にヒトに用いられる微生物としては、Lactobacillus
gasseri、L. johnsonii、L.
acidophilus、L.casei、L.plantarum、L.rhamnosus等のラクトバチルス属、Bifidobacterium
longum、B.breve、B.bifidum等のビフィドバクテリウム属の細菌などが利用されている。
これらのプロバイオティクス菌がその機能性を発揮するためにはより多くの菌数が腸管内等へ生きて到達することが重要である。生きていれば腸内で乳酸等の有機酸を産生し、その働きで悪玉菌の増殖を抑制する等の有益な作用を発揮するからである。しかし、摂取された菌が生きて腸内に到達するまでには、胃液、胆汁酸、その他の腸液や酸素など菌の生残性に影響を与える各種のバリアを越えなければならず、従ってプロバイオティクス菌はそれらのバリアに抗する性質を有していなければならない。
例えばヒトの空腹時における胃は、胃酸によってpH2.0前後に保たれており殺菌作用がある。このような状態で胃酸耐性が不十分なプロバイオティクス菌を摂取した場合は、短時間のうちに菌が死滅してしまう可能性があり、このような菌を用いて十分なプロバイオティクス効果を得るためには非常に多量な菌を摂取しなければならない。
また、乳酸菌や酢酸菌、プロピオン酸菌などの有用微生物は、生育の際に代謝産物として酸を生成するため、自分自身の生成した酸によって環境の酸性化が進み生残性が低下してしまうこととなる。そのため、プロバイオティクス菌としての利用にとどまらず、例えば酢酸菌を酢酸製造に用いる場合等の工業的な場面に有用微生物を用いる場合でも酸性環境に対する強固な防御機構を持たせることが有用微生物の有用性を高める上で重要なポイントとなっている。
以上のような観点から各種の酸を生成する菌では、その酸耐性に関わる遺伝子やタンパク質について検討が加えられてきた。例えば酢酸菌については酢酸の存在下で特異的に発現している蛋白質を検索し、その蛋白質をコードする遺伝子を取得するという方法で酢酸耐性に関与する遺伝子を見出しその遺伝子を用いて微生物の酢酸耐性を向上させて高濃度の酢酸を得る方法が開示されている(特許文献1)。また、乳酸菌においても酸耐性に関わる遺伝子がいくつか報告され、それに伴い乳酸菌の酸耐性機構もいくつか報告されている。ストレスタンパク質の発現を制御している遺伝子を破壊することによりストレス耐性が向上する報告(特許文献2)や酸ストレス処理によるheat
shock proteinの増加(非特許文献1)、GABA antiporterとglutamate decarboxylase activity(GAD)関連遺伝子の破壊株による酸耐性の低下(非特許文献2)、あるいは脱炭酸反応に関与する遺伝子破壊株による酸耐性の低下(非特許文献3)などが報告されている。
それらの方法とは、ランダムな変異やストレスタンパク質の制御に関する遺伝子を失活させ、得られた変異株の中から酸耐性が弱くなったもの、あるいは強くなったものを見つけてその遺伝子を解明するか、酸適応現象、すなわち、対数増殖期の細胞を致死的でない比較的穏やかな酸性条件におく事によって酸耐性メカニズムが誘導され菌の酸耐性が増加する現象を利用して、酸耐性に関わるタンパク質を検討するものである。しかし、特にこれまで乳酸菌において酸耐性に関与すると報告されてきた遺伝子の効果は産業上の利用性という観点からは十分なものとは言えず、特にプロバイオティクス分野において十分な酸耐性能を有する乳酸菌を新たに育種すること、あるいは十分な酸耐性能を有する乳酸菌を効率よくスクリーニングする方法が望まれていた。
特開2003-289867 特開2005-160 Electrophoresis 2000, 21, 2557-2561 Applied and Environmental Microbiology, May 2000, p2335-2337 Applied and Environmental Microbiology, Sept. 2004, p5315-5322
そこで本発明の課題は、これまで十分な酸耐性遺伝子が報告されていない乳酸菌からより効果の高い酸耐性遺伝子を見出し、該遺伝子を応用して有用微生物の酸耐性を増強する方法、特に乳酸菌の酸耐性能を増強する方法を提供すること、及び該遺伝子を検出することによって有用微生物の中から酸耐性能の高い微生物を効率よく検出する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、先の課題を解決するにあたり、乳酸菌の中でも酸耐性が強いことが知られているLactobacillus gasseri
OLL2716株(以下LG21株;寄託番号 FERM BP-6999)に注目して検討を開始した。LG21株は、他の乳酸菌と比べても人工胃液耐性が高いことやpH4.0に調整したMRS培地での増殖効率が高いことが示されている。
すなわち本発明は、LG21株に強い酸耐性機構が存在すると予想し、これまで知られていない酸耐性機構に関わる有用遺伝子を見出し、その応用を図ることを狙ったものである。
生物がもつ機能性の多くはタンパク質によるものであり、酸性条件下で作られるタンパク質を解析することで、酸耐性機構に直接関与している遺伝子を検索することができる。そこで酸に対する感受性が高い対数増殖期のLG21株細胞を材料とし、タンパク質を分離・検出することのできる二次元電気泳動による解析技術を用いて、LG21株の酸耐性遺伝子を解析することを企画した。
つまり、新規で有用な酸耐性遺伝子を有する可能性が高い菌株としてLG21株を用い、かつ、二次元電気泳動法を用いたプロテオーム解析によって実際に働くタンパク質を直接捉えることで、確実に酸耐性に関わる遺伝子を見出すことを狙ったものである。そして、乳酸菌の酸耐性機能に関わると考えられる新規遺伝子を見出す為に、異なる初発pHにてLG21株を培養し、その際に、LG21株で増加あるいは抑制されるタンパク質について解析を行った。
さらに、先に見出された酸耐性機能に関わる遺伝子の一部を欠失させた破壊株を作製することにより、酸耐性機能が低下することの証明を行うことを企画した。また、当該遺伝子を有する微生物(または、該遺伝子が導入された形質転換体)は酸耐性に関与する本願遺伝子を大量に発現することで酸耐性が向上すると考えられる。したがって、本願遺伝子の存否、あるいはその転写量、または最終産物であるタンパク質の量を測定することによって、微生物の酸耐性度を推定することが可能と考えられる。酸耐性遺伝子の存否、転写量、および該タンパク質の量は公知の方法で容易に測定可能である。例えば酸耐性遺伝子の存否はPCR(polymerase
chain reaction)法などで、転写量は酸耐性遺伝子の塩基配列をもとにしたノーザンブロッティング法や定量的なPCR法など、またタンパク質量は、二次元電気泳動やウエスタンブロッティング法など、それぞれ公知の方法で定量できる。これらのいずれかの方法を用いて測定対象微生物における本願遺伝子の存否、転写量、および発現量の少なくとも一つを測定することで、発酵製造やプロバイオティックスなどの分野で有用な形質である酸耐性度の高い微生物株をスクリーニングすることが可能となる。
本発明は以上の知見を元に完成するに至ったものである。すなわち本発明は以下の(1)〜(3)からなるものである。
(1)配列番号1に記載の塩基配列を有する酸耐性遺伝子(#905)。
(2) (1)に記載の遺伝子を導入して作成され、酸耐性能が向上した微生物の形質転換体。
(3) (1)に記載の塩基配列又は当該遺伝子によってコードされる蛋白質を検出すること、を特徴とする酸耐性微生物のスクリーニング方法。
また、本発明は(1)の配列番号1に記載の塩基配列の1個もしくは数個の塩基が欠失、置換及び/または付加された塩基配列を有している遺伝子であっても、その機能が酸耐性に関与する遺伝子であればそれを含むことは言うまでもない。
今回発見された遺伝子#905はこれまで酸耐性との関連が知られていない遺伝子であり、対数増殖期に誘導される酸耐性遺伝子であるため、新たな酸耐性機構として有用微生物、特に乳酸菌などの食品製造やプロバイオティックスに用いられる微生物の酸耐性能を増強することが期待できる。
また、遺伝子#905の存否および発現量を測定することで、発酵製造やプロバイオティックスなどの分野で有用な酸耐性度の高い微生物をスクリーニングすることも可能であると考えられる。
次に、酸耐性は細胞の生存に極めて重要であるため、複数の酸耐性機構が存在すると考えられるが、それらは種によって異なると推定される。酸耐性機構全体を解明して産業的応用を行うには、既知の機構以外の酸耐性機構解明が不可欠である。その際、既知の酸耐性機構に関わる遺伝子の他に本発明遺伝子の破壊株を作成することによって、新規の酸耐性機構および関連遺伝子を新たに発見することが期待できる。
本発明の配列番号1に記載の遺伝子#905は、LG21株から単離されたものであり、648の塩基対からなる。また、本発明は配列番号1に記載の塩基配列の1個もしくは数個の塩基が欠失、置換及び/または付加された塩基配列を有している遺伝子であっても、その機能が酸耐性に関与する遺伝子であればそれを含むことは言うまでもない。
遺伝子を発現させるためには、配列番号1記載の遺伝子をベクターに導入すればよい。組換えベクターには、公知の発現系を有するプラスミドやファージ、コスミド等に本発明の遺伝子を用いることもできる。
形質転換体の作製は常法によって行えばよい。このとき宿主細胞として、宿主内に挿入された遺伝子を維持、増殖、発現させ得るものであればいずれも使用可能である。宿主には、例えば、ラクトコッカス属細菌、ラクトバチルス属細菌、ビフィドバクテリウム属細菌、酢酸菌、枯草菌、大腸菌、その他の細菌などが挙げられる。遺伝子#905を失活した微生物を作製するには、突然変異、相同組換え等の手法を用いて行えばよい。
配列番号1記載の塩基配列を用いた酸耐性度の高い微生物をスクリーニングするには、配列番号1記載の遺伝子にハイブリダイズする遺伝子をスクリーニングし、配列番号1記載の配列の一部分から調製したプライマーを用いて転写量を測定するか、そのタンパク質を定法にしたがって測定すればよい。
以下、実施例を元に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 酸性条件でつくられるLG21株のタンパク質解析
LG21株の細胞内で作られるタンパク質を調べるため、LG21株を初発pH6.5またはpH4.5に調整した10%ホエイ粉末を含む培地(以下ホエイ培地)50mlに接種し、37℃にて対数増殖期(OD660=1.0)になるまで培養した。培養菌体を遠心処理(8,000rpm/5min/室温)にて回収し、50mM
Tris buffer(pH8.0)にて洗浄してから、タンパク質調製液(7M urea, 2M thiourea, 0.5% TritonX-100, 1mM MgCl2, 0.5% IPG
buffer, 1mM DTT, 1mM PMSF, 4μg/ml RnaseA, 1U/ml endonuclease)1mlに懸濁し、超音波による菌体破砕により細胞内タンパク質溶液を調製した。二次元電気泳動装置(Multiphor 2 system/Amersham
Biosciences)を用いて、等電点(pI値:4-7)と分子量により二次元的にタンパク質を分離した。Silver
Stain MS kit(和光純薬工業社製)による染色によりタンパク質スポットを検出し、画像解析ソフト(ImageMaster
2D Elite/ Amersham Biosciences)による処理を行ったところ、約300のタンパク質スポットが再現性よく検出された(図1)。初発pH6.5とpH4.5で培養した菌体から得られたタンパク質マップの画像解析結果を比較したなかで、初発pH4.5の培養条件で著しく発現量が増加したタンパク質スポットは多数検出されたが、その中で特に顕著な違いのあるスポット1個を含む部分的な泳動図を図2に示した。図2の初発pH4.5で高発現したタンパク質スポットはpH6.5で発現した当該スポットに比べ4倍程度の増加であり、酸性の培養条件によって強く発現されることが判明した。
[実施例2] 質量解析による酸耐性遺伝子の同定
実施例1で選択した図2のタンパク質をコードする遺伝子を特定するため、該スポットを切り出し、Silver Stain MS kit(和光純薬工業社製)の脱色液を添加して15分間浸せきした。その後3回以上蒸留水にて洗浄を行い、脱色液を完全に除去してからTrypsin digestion処理 (35℃、overnight) を行い、LC-MS/MS解析(Q-Tof2/Micromass)を行った。得られたプロダクトイオンの数値をMascotにより、すべての生物種を対象にデータベース(NCBInr)検索した。その結果、本タンパク質スポットは、Lactobacillus gasseri のhypothetical protein(Accession No. ZP_00046762)と同定された。質量解析により得られた解析データをもとにLG21株のゲノムデータベース(明治乳業株式会社食機能科学研究所解析データ)と照合した結果、機能未知の遺伝子#905と同定された(配列番号1)。
[実施例3]遺伝子#905の相同性検索
実施例2に示す結果から、酸耐性に関連すると推定された遺伝子#905の機能を推定しようとした。得られたアミノ酸配列(配列番号2)をデータベースで比較した結果、該タンパク質と相同性のあるタンパク質がいくつか見出された。Lactobacillus
gasseri ATCC33323株のputative NADH-flavin
reductase と97%(215aa)、L.johnsonii
NCC533株のhypothetical protein LJ0019と92% (215aa)、Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides ATCC8293株のputative NADH-flavin
reductaseと47%(215aa)、Oenococcus
oeni PSU-1株の putative NADH-flavin
reductase と42%(217aa)、L.plantarum
WCFS1株のhypothetical protein lp_2212と44%(217aa)、Bacillus subtilis
subsp. subtilis 168株のhypothetical
protein ywnBと33%(217 aa)などである。しかし、これらタンパク質の機能はいずれも明確になっておらず、酸耐性との関連性を示す証拠は全く認められない。したがって、本発明で見出されたLG21株由来の遺伝子#905は機能が未知であり、酸耐性など産業的有用性との関連が示唆されたことがないものであることが判明した。
以上のように、塩基配列およびアミノ酸配列による相同性検索結果から、ガセリ菌LG21株の遺伝子#905はこれまでのところ機能の推定ができず、酸耐性など産業的有用性との関連が示唆されたことがないことが明確となった。
[実施例4]LG21 #905遺伝子破壊株の取得
次に、遺伝子#905の機能を検討するために、本遺伝子を欠失した株(遺伝子#905破壊株)を相同組換えによる二重交叉によって作製した。LG21株の染色体から遺伝子#905の両端の配列を含む前後1kb断片をPCR法により増幅した。プライマー設計に用いたシーケンス情報は、LG21株のゲノム解析データをもとに設計したものであり、以下に示すプライマーを合成して用いた(配列表参照)。
<#905上流配列を含む断片>5'-GCAGAAGACGGCAGAATTTA-3'(配列番号3):5'-ATTGGAGCTTCAGGCCCAGCCTTAACCTTT-3'(配列番号4)<#905下流配列を含む断片>5'-AAAGGTTAAGGCTGGGCCTGAAGCTCCAAT-3'(配列番号5):5'-CTGACTTAAAATAACAGA-3'(配列番号6)これらのプライマーを用いたPCR断片を1:1の分量で混合したものをテンプレートDNAとし、配列番号3と6のプライマーにより再度PCRを行うことで内部配列(438bp)が欠失した#905遺伝子(#905Del
遺伝子)断片を得た。この断片を温度感受性複製ベクターpTERM09に挿入してプラスミドpTERM905(図3)を構築し、そのDNAを調製した。
(プラスミドの導入と染色体への挿入)
上記のようにして作製したプラスミドDNAは、エレクトロポレーション法を用いてLG21株に導入した。温度感受性ベクターは、低温では複製できるが高温では複製できない。32℃の低温条件下にて形質転換体を取得し、この菌株を高温(37℃)及びエリスロマイシン(Em)添加(25μg/ml)による選択圧をかけて培養すると、プラスミドは複製されずに、染色体上の#905遺伝子内部に相同組換えにより取り込まれた。これにより、染色体上の#905遺伝子にプラスミドpTERM905全体が組込まれたシングルクロスオーバー株を取得した。その後、32℃の低温条件とEm選択圧をかけない条件下で培養し、2回目の相同組換えを行うことで、プラスミド由来の#905Del遺伝子(内部配列欠損)と機能を有する#905遺伝子が入れ替わり、外来遺伝子を含まない#905遺伝子破壊株(ダブルクロスオーバー)を取得した。#905遺伝子破壊株の#905Del遺伝子領域については、PCR及びシークエンサーによる塩基配列の解析を行い、#905遺伝子の一部(438bp)が欠失していること(配列番号7)、また二次元電気泳動による図2に示したタンパク質スポット(○印内)が発現していないことを確認した。
[実施例5]#905遺伝子破壊株の酸耐性の検討
実施例4で得られた#905遺伝子破壊株(以下、Δ905株と呼ぶ)の表現型をLG21株(野生株)と比較した。Δ905株とLG21株をMRS培地(pH6.5あるいはpH4.5)で培養し、菌の生育速度(図4)及びpH変動(図5)を比較した。その結果、Δ905株は野生株とほぼ同じ生育速度・pH変動を示し、増殖速度とpH低下速度に差は見られなかった。これは、#905遺伝子以外の本株の酸耐性に関わる複数の遺伝子が働いて、培養中のpH低下などに対応したためと考えられる。
(人工胃液耐性試験)
Δ905株について人工胃液による酸耐性試験を行った。対照として、LG21株(野生株)についても同様の試験を行った。0.35%ペプシンと0.2%NaClを含む水溶液を塩酸でpH2.0に調整し、0.45μmのフィルターでろ過滅菌したものを人工胃液とした。MRS培地(pH6.5)で培養した菌体(対数増殖期:培養6時間、定常期:培養18時間)を遠心処理(8,000rpm/3min/室温)により回収し、PBS(pH7.2)で菌体を2回洗浄し培地を完全に除去してから、PBSを用いて菌体濃度をOD(660nm)=1.5に調整した。培養した当該菌の懸濁液1mlと人工胃液9mlを混合し、37℃・好気条件にて120分間静置した。混合直後の懸濁液と90分・120分静置後の懸濁液をMRS寒天培地に播種し、37℃で48時間、ガスパックを用いて嫌気培養を行った。培養後、コロニー数を測定し、生残率(%)を算出した。
(試験結果)
対数増殖期の結果を表1及び図6のAに示した。90分間人工胃液中で静置した場合の野生株の生残率を100%とした時のΔ905株の生残率は0.2%と野性株に比べて明確に低下していた。
定常期の結果を表2及び図6のBに示した。90分間および120分間人工胃液中で静置した後の野生株の生残率を100%とした時のΔ905株の生残率は、90分後が49.1%、120分後が14.5%とこの場合も野生株に比べて明確に低下していた。
Figure 0004676789
Figure 0004676789
[実施例6]#905遺伝子破壊株(Δ905株)の胆汁酸耐性の検討
次に、#905遺伝子が他のストレスにも関与するかどうかを検討した。まず、胆汁酸の主成分であるコール酸Naに対する耐性試験を行った。Δ905株とともに、対照としてLG21株も同じ試験を行った。20mMコール酸Na溶液は、NaOHを用いてpH6.5に調整し、0.45μmのフィルターでろ過滅菌した。MRS培地(pH6.5)で培養した菌体(対数増殖期:培養6時間、定常期:培養18時間)を遠心処理(8,000rpm/3min/室温)により回収し、PBS(pH7.2)で菌体を2回洗浄し培地を完全に除去してから、PBSを用いて菌体濃度をOD(660nm)=1.5に調整した。菌懸濁液1mlと20mMコール酸Na溶液9mlを混合し、37℃・好気条件にて90分間静置した。混合直後の懸濁液と90分静置後の懸濁液を各々MRS寒天培地に播種し、37℃で48時間、ガスパックを用いて嫌気培養を行った。培養後、コロニー数を測定し、生残率(%)を算出した。
(試験結果)
対数増殖期の結果を表3に示した。野生株の生残率を100%とした時のΔ905株の生残率は8.5%を示した。また、定常期の結果を表4に示した。野生株の生残率を100%とした時のΔ905株の生残率は7.1%を示した。
したがって、該遺伝子は酸耐性とともに胆汁酸耐性にも関与する可能性があることが判明した。
Figure 0004676789
Figure 0004676789
[実施例7]#905遺伝子破壊株の過酸化水素耐性の検討
次に、Δ905株について、過酸化水素による酸耐性試験を行った。対照として、LG21株についても同様の試験を行った。10mMの過酸化水素溶液を調整し、0.45μmのフィルターでろ過滅菌したものを用いた。MRS培地(pH6.5)で培養した菌体(対数増殖期:培養6時間、定常期:培養18時間)を遠心処理(8,000rpm/3min/室温)により回収し、PBS(pH7.2)で菌体を2回洗浄し培地を完全に除去してから、PBSを用いて各々の菌体濃度をOD(660nm)=1.5に調整した。それらの菌液各々1mlを遠心(10,000rpm/3min/室温)し、上清を除去した後、上記過酸化水素溶液1mlを加えて懸濁し、37℃・好気条件にて60分間静置した。混合直後の懸濁液と60分静置後の懸濁液をBCP加プレートカウント寒天培地に播種し、37℃で72時間、ガスパックを用いて嫌気培養を行った。培養後、コロニー数を測定し、生残率(%)を算出した。
(試験結果)
対数増殖期の結果を表5に示した。野生株の生残率を100%とした時のΔ905株の生残率は8.2%を示した。また、定常期の結果を表6に示した。野生株の生残率を100%とした時のΔ905株の生残率は5.9%を示した。
したがって、該遺伝子は過酸化水素の耐性にも関わっている可能性があることが判明した。
Figure 0004676789
Figure 0004676789
本発明の新規酸耐性遺伝子は、微生物の酸耐性に深く寄与しており、微生物を用いた発酵製造、プロバイオティクス等において重要な性質である酸耐性に優れた微生物の創出、スクリーニングを可能にすることができる。また、当該遺伝子は他のストレス、例えば、プロバイオティクス特性を発揮するのに重要な胆汁酸や過酸化水素などに対する防御機能を付与できる可能性があり、産業的応用性は高いと考えられる。
初発pH6.5で対数増殖期まで培養した時のLG21株の二次元電気泳動画像。 初発pH4.5で対数増殖期まで培養した時に特異的に増加したタンパク質スポット画像。 温度感受性組込みプラスミド pTERM905の図面。 野生株(LG21株)とΔ905株の生育曲線比較図。(AはpH6.5の場合、BはpH4.5の場合) 野生株(LG21株)とΔ905株の培養液pH変動比較図。(AはpH6.5の場合、BはpH4.5の場合) 野生株(LG21株)とΔ905株の人工胃液処理による生残率比較図。(Aは対数増殖期の場合、Bは定常期の場合)

Claims (1)

  1. 配列番号1に記載の塩基配列を有する酸耐性遺伝子(#905)。
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