JP4676706B2 - 慣性装置及びそのレベリング方法 - Google Patents

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この発明は、慣性装置とそのレべリング方法に関するものである。
シリコンマイクロマシニング技術(MEMS: Micro Electro Mechanical System)の発展により、シリコンベースで小型の慣性装置(以下、MEMS−INSと呼ぶ。INSはInertial Navigation Systemの略称)が量産可能となった。これらのセンサは精度が悪いため、単独では慣性航法に使用するのは難しい。しかしながら、低価格で周辺回路と一体形成できる可能性があるなどの利点があり、今後はMEMS−INSを慣性航法に利用して様々な分野への適用が期待されている。
慣性装置を慣性航法に利用する際は、まず初期値を設定する必要がある。例えば、ノーススレーブ局地水平座標系(X:北、Y:東、Z:鉛直下側方向)を、基準の航法座標系として、同基準航法座標に対する、当該移動体側の座標軸である直交3軸XYZ系の初期の角度関係を検知することで、移動体は基準航法座標内での航行が可能となる。上記角度関係を決めるには、水平面と方位角(北方向)を知る必要がある。ここで、水平面、すなわち重力加速度方向ベクトルに垂直な平面を求めることをレベリングと呼び、通常加速度計の出力を利用して行われる。方位角は、ジャイロによりアースレートを検出して算出する。MEMS−INSのように、慣性センサ自体の精度があまり良くない場合は、いかにそのセンサの出力を補正して利用できるかが課題となる。
従来、慣性装置のレベリングは、特許文献1にも記載されているように、静止状態で受感する重力加速度から地表座標系と慣性装置の3軸直交座標系との角度関係を検出することによって行われていた(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−271088号公報(第1−第5頁)
また、慣性装置の初期値を補正する方法として、特許文献2に示されているように、慣性航法に必要な物理量や慣性力を検出する慣性検出手段を有した移動体を、移動母体に取付けて行う方法があった。この方法では、移動体を基準航法座標系内で航行させるときに、移動体に移動母体側から動揺又は回転等の動作を意図的に付与し、同動作を移動体と移動母体の夫々の慣性検出手段で検出する。ここで、検出された移動母体側の慣性検出手段の検出値を基準にして、移動体側の慣性検出手段の検出値を補正し、慣性検出手段の航法座標における初期座標値を設定することによって、慣性装置の初期値を補正していた(例えば、特許文献2参照)。
特開平6−11354号公報(第1−第7頁)
従来の慣性航法装置では、レベリングにより求められるロール角θとピッチ角θは、静止した状態での加速度計の出力値から、それぞれ数1、数2によって計算されていた。ただし、ここでのロール角θとピッチ角θはノーススレーブ局地水平座標系に対する角度、ax、a、aは3軸加速度計の出力である。
Figure 0004676706
Figure 0004676706
通常、一つの固定した姿勢で、数1、数2によりレベリング処理が行われるが、加速度計に初期バイアスがあると、正確なロール角とピッチ角を求めることができない。特に、MEMS−INSのように精度の良くない慣性装置では、初期バイアスも大きいため、正確にレベリングが行えないという問題点があった。
この発明は、係る課題を解決するために為されたものであり、慣性装置の初期バイアスの影響を除去して、正確にレべリングを行うことを目的とする。
この発明による慣性装置は、直交3軸方向の加速度を計測する加速度計と、上記加速度計をロール方向とピッチ方向にそれそれ所定角度回転させる駆動装置と、上記駆動装置の動作によって加速度計がロール方向とピッチ方向にそれぞれ所定角度回転した状態で、上記加速度計で計測された加速度に基いて、加速度計の初期バイアスを演算し出力する演算器とを備えたものである。
この発明によれば、慣性装置の姿勢状態に関わらず、慣性装置の初期バイアスを正確に求めることができ、正確なレべリングを行うことが可能となる。
実施の形態1.
この発明では、複数の姿勢での直交3軸の加速度計出力を利用してレベリングを行い、同時に、加速度計の初期バイアス成分δa、δa、δaを計算することを特徴とする。図1は、この発明を実施するための慣性装置の構成を示す、3面図((a)上面図、(b)正面図、(c)右側面図)である。なお、この実施の形態の説明においては、Z軸(ヨー軸)の正方向を下方向と呼び、Z軸の負方向を上方向と呼ぶ。
図において、慣性装置2は、図示しない直交3軸の加速度計およびジャイロが内部に搭載されており、プラットフォーム1に固定される。慣性装置2は、内部の加速度計およびジャイロで計測した加速度と角速度を出力する。プラットフォーム1は複数のアクチュエータ4に支持されて、機体フレーム5上に設置される。プラットフォーム1には、上面の四隅の端部と、下面の四隅の端部に、電気的接点7(図3で後述する、7-a1、7-a2、7-a3、7-a4と、7-b1、7-b2、7-b3、7-b4)が設けられている。
機体フレーム5には、4つのストッパー3が設けられている。各ストッパー3は、夫々上下2枚の電極(上側電極3-a1、 3-a2、 3-a3、 3-a4、下側電極3-b1、 3-b2、 3-b3、 3-b4)で構成されている。各ストッパー3の上下2つの電極間で、プラットフォーム1の上下面の電気的接点7が挟まれるように、プラットフォーム1の四隅の端部の位置に対応して、それぞれストッパー3が配置されている。
これによって、プラットフォーム1の上面の電気的接点(図2で後述する7-a1、7-a2、7-a3、7-a4)をストッパー3の上側電極(3-a1、 3-a2、 3-a3、 3-a4)のいずれかに接触させるか、プラットフォーム1の下面の電気的接点7(図2で後述する7-b1、7-b2、7-b3、7-b4)をストッパー3の下側電極(3-b1、 3-b2、 3-b3、 3-b4)のいずれかに接触させることができる。
アクチュエータ4は制御装置6で制御されて、プラットフォーム1を上下動させる。ストッパー3の各電極(3-a1、 3-a2、 3-a3、 3-a4、及び3-b1、 3-b2、 3-b3、 3-b4)は、制御装置6にケーブルで接続されている。また、慣性装置2の計測信号の出力端子(図示せず)およびプラットフォーム1の電気的接点7は、制御装置6にケーブルで接続されている。制御装置6では、電気的接点7のいずれの接点が、ストッパー3の電極(3-b1、 3-b2、 3-b3、 3-b4、及び3-b1、 3-b2、 3-b3、 3-b4)と接触しているのかを検出する。アクチュエータ4と、プラットフォーム1及びストッパー3と、制御装置6とは駆動装置を構成する。
次に動作について説明する。
制御装置6の制御によって、プラットフォーム1の端部がアクチュエータ4のZ軸方向への上下動(伸縮)によって移動させられ、プラットフォーム1が回転移動する。プラットフォーム1の端部4箇所のいずれか2つの電気的接点7がストッパー3に触れると、プラットフォーム1の回転が停止する。これによって、プラットフォーム1の電気的接点7がストッパー3に触れた状態が検知される。
制御装置6は、ストッパー3の電極とプラットフォーム2の電気的接点7とが接しているかどうかを検知する。これによって、ストッパー3の所望の電極がプラットフォーム2の所望の電気的接点7と接触するように、アクチュエータ4の動作を制御する。アクチュエータ4としては様々な方法が考えられるが、小型なアクチュエータ4を得るには制御電圧を印加することによってZ軸方向に伸縮する圧電素子を用いるのが良い。
次に、ストッパー3とプラットフォーム1が接していることを検知するための検知手段の構成と、制御装置6の構成について説明する。
図2は、プラットフォーム1の電気的接点7の一例を示す斜視図である。図において、プラットフォーム1の上面(表面)の四隅には、電極7-a1、7-a2、7-a3、7-a4がそれぞれ設けられている。また、プラットフォーム1の下面(裏面)の四隅には、電極7-b1、7-b2、7-b3、7-b4がそれぞれ設けられている。図中で、電極7-a1、7-a2及び7-b1、7- b2は、プラットフォーム1のX軸方向に配置されている。また、電極7-a1、7-a4及び7-b1、7- b4は、プラットフォーム1のY軸方向に配置されている。
図3は、電気的接点7の通電状態によってストッパー3とプラットフォーム1の接触状態を判定するための回路構成図の一例と、制御装置6の構成例を示す。
図において、制御装置6は論理回路(IC)61と、シーケンサ62と、演算回路63で構成される。演算回路63は慣性装置2に接続される。ストッパー3の電極(3-b1、 3-b2、 3-b3、 3-b4)の各接点と、電気的接点7(7-a1、7-a2、7-a3、7-a4と、7-b1、7-b2、7-b3、7-b4)の各接点とが、所謂リミットスイッチ(LS)10を構成している。このリミットスイッチ10の特定の接点(例えば、電極3−b1と電気的接点7−b1)が導通(ON)状態となったとき、この特定の接点からの出力信号は論理回路61に出力される。
また、リミットスイッチ10における他の特定の接点(例えば、電極3−a1と電気的接点7−a1)が非導通(OFF)の状態であるとき、その接点からは出力信号が出ない。これによって、論理回路(IC)61は、リミットスイッチ10の各接点における導通のオン・オフ状態(ステータス)を検出する。また、論理回路61で計測された各接点のステータスはステータスデータとしてシーケンサ62に出力される。また、このステータスデータは、論理回路61から演算回路63に出力される。
シーケンサ62は入力されたステータスデータに基いて、アクチュエータ4の制御のための動作指令を出力する。また、シーケンサ62は論理回路61からのステータスデータに基いて、外部制御機器に状態出力信号を出力する。外部制御機器はこの状態出力信号に基いてレベリング用データ取得開始のタイミングの目安を図る。また、演算回路63は、論理回路61からのステータスデータと、慣性装置2からの加速度計の出力と、ジャイロの出力が入力される。
次に、レベリング時における処理のフローチャートを図4に示す。ここでは、加速度計のレべリング処理を例として説明する。また、図5(b)にロール方向に既知の角度だけ回転させた姿勢を示し、図5(c)にピッチ方向に既知の規定角度だけ回転させた姿勢を示す。同図中で、図5(a)は慣性装置2を上面から見た図を示す。このレべリング処理を行う際、機体フレーム5の姿勢を調整することによって、慣性装置のZ軸を概ね重力加速度方向に向け、このときの機体フレーム5の姿勢を一定に保持しておく。
まず、ステップS1において、レべリング開始とともに始めにプラットフォーム1は通常姿勢を取る。通常姿勢とは、レベリング後の慣性装置が取る姿勢で、図1に示すように、プラットフォーム1の同じ面の電気的接点(図1の例では下面の電気的接点7-b1、7-b2、7-b3、7-b4)が、4つともストッパーに接している状態である。
この状態は、リミットスイッチ10からのステータスデータに基いて、制御装置6によって検知される。この状態で、ステップS2において加速度計の出力を一定時間測定する。計測された加速度計の出力(a、a、a)は、制御装置6の演算回路63に出力される。演算回路63では、ステップS3において、加速度計の出力(a、a、a)を、数3及び数4に示される演算式に代入する。なお、数3、4において、θ、θ、δa、δa、δaは未知数である。
Figure 0004676706
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次に、ステップS4で、図5(b)に示すように、ロール方向(慣性装置2のX軸まわり)に既知の規定角度δRだけ回転させる。このとき、ロール角方向への回転は、2つの電気的接点7-a2、7-a3をストッパー3の電極3-a2、3-a3と接触させて、他の2つの電気的接点7-b1、7-b4をストッパー3の電極3-b1、3-b4と接触させた状態とすることで、回転角度を規定の角度δRに設定することができる。
このロール方向に既知の角度δRだけ回転させた姿勢で、ステップS5において加速度計の出力を一定時間計測する。計測された加速度計の出力(ax、R、ay、R、az、R)は、制御装置6の演算回路63に出力される。演算回路63では、ステップS6において、加速度計の出力(ax、R、ay、R、az、R)を、数5及び数6に示される演算式に代入する。なお、数5、6において、θ、θ、δa、δa、δaは未知数である。
Figure 0004676706
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次に、ステップS7で、慣性装置2のX軸まわりに既知の角度−δRだけ回転させて、姿勢を通常姿勢に戻す(この状態は、接点の接触状態をステップS1と同様の状態とすることによって検出できる)。
さらに、ステップS8で、図5(c)に示すように、ピッチ方向(慣性装置2のY軸まわり)に既知の規定角度δPだけ回転させる。このとき、ピッチ角方向への回転は、2つの電気的接点7a−1、7a−2をストッパー3の電極3−b1、3−b 2と接触させ、2つの電気的接点7−b3、7−b4をストッパー3の電極3−b3、3−b4と接触させることによって得られる。これにより、ピッチ角方向への回転角度を規定の角度δPに設定することができる。
このピッチ方向に既知の角度δPだけ回転させた姿勢で、ステップS9において加速度計の出力を測定する。計測された加速度計の出力(ax、P、ay、P、az、P)は、制御装置6の演算回路63に出力される。
演算回路63では、ステップS10において、加速度計の出力(a x、P 、a y、P 、a z、P を、数7及び数8に示される演算式に代入する。なお、数7、8において、θ、θ、a、δa、δaは未知数である。
Figure 0004676706
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最後に、ステップS12おいて通常姿勢に戻す(既知の角度−δPだけ回転させる)とともに、ステップS3、S6、S10で得られた数3〜数8の演算式を連立して解く。これによって、通常姿勢における水平面基準の初期角度(ピッチ角θPとロール角θR)、および3軸加速度センサの初期バイアス(δax、δay、δaz)が求められ、ステップ13において求められた初期角度と初期バイアスが外部機器に出力されて、レべリング処理が終了する。
以上により、この実施の形態によれば、慣性装置の姿勢状態に関わらず、慣性装置の初期バイアスを正確に求めることができ、レべリングを精度良く行うことができる。このため、MEMS−INSのように精度の良くない慣性装置であっても、慣性装置の初期バイアスの影響を除去して、加速度の正確な計測を行うことが可能となる。
この発明の実施の形態1による慣性装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態1におけるプラットフォームに設けた電気的接点を示す図である。 この発明の実施の形態1による制御装置6の構成図である。 この発明の実施の形態1におけるレベリング処理のフローチャートである この発明の実施の形態1によるレベリング時の角度オフセットの方法を示す図である。
符号の説明
1 プラットフォーム、2 慣性装置、3 ストッパー、4 アクチュエータ、5 機体フレーム、6 制御装置、7 電気的接点。

Claims (5)

  1. 直交3軸方向の加速度を計測する加速度計と、
    上記加速度計をロール方向とピッチ方向にそれぞれ、可動角度の制限により既知の所定角度回転させる駆動装置と、
    上記駆動装置の動作によって、上記加速度計を通常姿勢状態からロール方向とピッチ方向にそれぞれ既知の所定角度回転させることにより、
    通常姿勢状態、ロール方向へ既知の所定のロール角度回転した状態、およびピッチ方向へ既知の所定のピッチ角度回転した状態のそれぞれの状態で、上記加速度計により計測された重力加速度と、上記既知の所定のロール角度と上記既知の所定のピッチ角度に基いて、当該加速度計の初期バイアスを演算する演算器と
    を備えた慣性装置。
  2. 直交3軸方向の加速度を計測する加速度計と、
    上記加速度計をロール方向とピッチ方向にそれぞれ所定角度回転させる駆動装置と、
    上記駆動装置の動作によって加速度計がロール方向とピッチ方向にそれぞれ所定角度回転した状態で、上記加速度計で計測された重力加速度に基いて、当該加速度計の初期バイアスを出力する演算器とを備え、
    上記駆動装置は、
    上記加速度計を搭載するプラットフォームと、
    上記プラットフォームの端部4箇所を、上記加速度計のヨー軸方向に移動可能に支持するアクチュエータと、
    上記プラットフォームの各端部の移動区間を制限するストッパと、
    を具備した慣性装置。
  3. 上記プラットフォームは端部4箇所の表裏面にそれぞれ端子を有し、
    上記ストッパは上記プラットフォームの各端部の表裏面を、それぞれ間に挟む一対の電極を4対有して、
    各一対の電極と各端子との接触状態に応じて、上記プラットフォームの回転状態を検出する制御装置を備えたことを特徴とした請求項2記載の慣性装置。
  4. 上記演算器は、上記加速度計の重力方向に対する初期角度を演算することを特徴とした請求項2記載の慣性装置。
  5. 加速度計の直交3軸方向の重力加速度を計測し、当該加速度計の重力に垂直な平面を求める慣性装置のレべリング方法であって、
    通常姿勢状態、およびロール方向とピッチ方向のそれぞれの可動角度の制限によって、上記加速度計を通常姿勢状態から既知の所定角度回転させたそれぞれの状態で、
    それぞれの重力加速度を計測する第1のステップ、
    上記第1のステップで計測されたそれぞれの重力加速度と、上記加速度計をロール方向とピッチ方向にそれぞれ回転させる、それぞれの既知の所定角度とに基いて、上記加速度計の重力に垂直な平面を求める第2のステップ、
    によって処理する慣性装置のレべリング方法。
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