JP4671230B2 - トナー粉塵抑制ゲル化処理剤 - Google Patents

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Description

本発明は、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤を用いたトナーのリサイクル処理方法に関する。
近年は、循環環境型社会形成の機運の高まりに伴い、トナーやカートリッジ等については、その適正処理や再利用が行われている。
このトナーは、主成分となるバインダ樹脂及び着色剤の粒子径が数〜十数μmの超微粒子であることから、一転不用品となった場合、その微粉塵であるが故に取り扱いが容易ではなく、作業者は粉塵吸引等の危険にさらされている。産業廃棄物として排出されるトナーを飛散、流出等の事故が起きない様に保管・運搬するためには広いスペースが必要となり、更に人の手で容易に扱えるような固形状にする場合は、熱処理装置等の特殊な設備を使用するため従来の技術では処理コストが大きい。
そこで、トナーを溶媒に混合することにより、その微粉体の飛散を抑制し半固形化させ、ゲル状態として保管・運搬するためにトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤が用いられる。
従来のトナーの処理技術としては、例えば以下の特許文献に記載のものがあり、これらの文献にトナーの処理方法、トナーの処理装置が開示されている。
特開2002−695380号公報 特開2001−134010号公報 実開平7−10746公報 特開2001−226639号公報 特公表2004−511597号公報
上記にある従来のトナーの処理では、その主成分樹脂の熱可塑性から熱水による固形化法や加熱固形化法が用いられている。例えば、前記特許文献5には、臭化n−プロピル及びイソロピルアルコール等の溶媒を利用する方法が公開されている。
一般的に溶媒にトナーを浸漬すると、トナーのバインダ成分である熱可塑性樹脂が可溶性溶剤により膨潤する。すなわち、トナーとトナー溶媒とからなる熱可塑性樹脂の状態は、熱平衡状態に向かって変化し、重合体である熱可塑性樹脂の分子鎖の間隙に、溶媒である熱可塑性樹脂可溶性溶剤が侵入して、網目状に結合した熱可塑性樹脂の分子が膨潤する。膨潤した樹脂は、可溶性溶剤を多量に含みコロイドが流動性を失い、高分子の鎖が3次元に絡み合いゲル状物質に変化する。
この際、熱可塑性樹脂可溶性溶剤のみであれば、熱平衡状態においては、熱可塑性樹脂内に可溶性溶剤が多量に侵入するため、熱可塑性樹脂が粘着性のある流動状物質となり、日本国における消防法上での扱いは、危険物となり保管数量の制限等で取り扱いや管理が困難となる。
しかし、熱可塑性樹脂不溶性溶剤が存在することにより、熱平衡状態において熱可塑性樹脂内に侵入する可溶性溶剤の量が適度に抑制されるため、ゲル状物質が流動性のない餅状物質となる。この状態の物質は、消防法上、流動性の無い固体の扱いとなるため危険物という範疇からは除外され、取り扱いや管理が容易となる。
しかしながら、前記の特許文献5に記載の技術は、臭化n−プロピル及びイソロピルアルコール等を溶媒として使用するため、引火点が低く常温でも引火し易く危険性は高い。製造工程では、化学処理を繰り返して製造される製品であるため、安価とはなり得ない。そのため、高コストで高い危険性のあるトナー処理システムとなり、現実的ではなく実用化が困難であった。
一方、熱可塑性樹脂不溶性溶剤として、灯油等の石油留分を用いた場合、トナー溶解時に硫黄の臭気が発生する。これは、灯油等の石油留分には、硫黄成分が多く含まれており、これが熱可塑性樹脂可溶性溶剤である芳香族系炭化水素油の芳香臭と混じり合うためと考えられる。この硫黄臭気が、環境汚染の原因となる。
また、灯油は、各石油元売りメーカーにより成分が一定せず、その原産国や季節による増減産も大きいという社会的な問題もある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、硫黄の臭気の発生が少なく、溶解時間が短く、溶解力が高く、かつ、実用的な低廉価格で入手が可能なトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤を用いたトナーのリサイクル処理方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明であるトナーのリサイクル処理方法で用いるトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤は、トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤と、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の混合溶液を有し、芳香族と脂肪族の炭化水素油を含み、前記脂肪族炭化水素油は、常圧時において沸点が150〜200°Cであるパラフィン系油留分であり、前記芳香族炭化水素油中の炭素数は、9又は10であり、前記芳香族炭化水素油の常圧時における沸点が150°C以上であり、前記脂肪族炭化水素油は、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素を含有している。
そして、上記のトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤を用いたトナーのリサイクル処理方法は、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を、それぞれ所定の割合で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤を用意し、
次いで、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して最大量320g(256wt%)のトナーを常圧下で投入混合して粉塵を抑制しつつ、ゲル化物質に変化させ、
次いで、前記ゲル化物質を加熱昇温して吸熱反応を促し、
307.3°C近傍で前記ゲル化物質に含まれるトナー粉塵抑制ゲル化処理剤は概ね気化を完了して固液分離を終了させ、
固液分離後のスチレンアクリル固形化樹脂は、再利用可能な状態となり、
上記工程を経ることで、前記ゲル化物質を固形物としてのスチレンアクリル固形化樹脂にしてリサイクル可能なようにすることを特徴とする。
このような構成のトナー粉塵抑制ゲル化処理剤にトナーを浸漬することにより、当該トナーはゲル化し、高密度のゲル状物が生成される。この際、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤は、石油留分として得られたガソリン、灯油等に比べ、硫黄成分の含有量はきわめて少なく(10ppm以下)、トナー溶解時に硫黄の臭気の発生がほとんどない。
また、天然ガスから化学合成したパラフィン系油留分は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の人体に有害な芳香族炭化水素油を含有しない。すなわち、スチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤として、沸点・引火点が低く毒劇物であるベンゼン、トルエン、キシレン等を使用せず、沸点・引火点が高く毒劇物に該当しない炭素数が9以上のより高級な芳香族系炭化水素油類を用いることで、人体に有害な物質を極力使用しないことができる。
また、後述の実験結果からわかるように、前記の特許文献5と比較して、トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂の溶解時間が短く、溶解量も多くすることができる。
更に、スチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤として、芳香臭が弱く引火点の高い芳香族炭化水素油を使用しても十分な溶解性を得ることが可能となる。そのため、トナーのゲル化処理時の作業環境は、改善される。
ここで、「天然ガスより化学合成されたパラフィン系油留分」とは、天然ガスを、GTG(Gas to Gasoline)プロセス、SMDS(Shell Middle Distillate Synthesis)プロセス、SASOLプロセス、AGC−21(Advanced Gas Conversion Technology for 21th century)プロセス、Syntroleumプロセス等のGTL(ガス・トゥー・リキド:Gas to liquids)技術により化学合成した油留分のことをいう。
また、「常圧における沸点が150〜200°Cであるパラフィン系油留分」としたのは、取り扱いが容易であり、有害成分も少ないからである。この場合、沸点がこの範囲よりも低いガソリンでは引火点が低く、取り扱い時に火災の危険性が高くなるため好ましくない。また、沸点がこの範囲よりも高い軽油等では硫黄分が多くなるため、硫黄臭気の発生が多く、環境汚染の問題があるため好ましくない。
また、本発明において、前記トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤は、炭素数が9又は10の芳香族系炭化水素を含有するものを用いることができる。
すなわち、炭素数が9又は10の芳香族系炭化水素油は、ベンゼン(C6H6)、トルエン(C7H8)、キシレン(C8H10)等の炭素数の小さい芳香族系炭化水素油に比べて、引火点が高い。また、毒劇物に属する溶剤でもない。そのため、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤として取り扱いが容易となり、安全性も高めることが出来る。
炭素数が9又は10の芳香族系炭化水素とは、トリメチルベンゼン、トリメチルフェノール、トリメトキシルベンゼン、エチルトルエン、プレニテン、イソジュレン、ジュレン、テトラリン、テトラロン、プロピルベンゼン、プロピオフェノン等である。
また、本発明において、前記スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤には、常圧における沸点が150°C以上の芳香族系炭化水素を使用することができる。
常圧における沸点が150°C以上であれば、気温の高い時期でも気化しにくいために、引火点が高く安全性に優れている。
また、本発明において、前記トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤には、イプゾール100(登録商標 第1674214号)(商品名 出光石油化学株式会社製,CAS No.64742−95−6,国連番号1268(石油蒸留物))又はイプゾール150(登録商標 第1674214号)(商品名 出光石油化学株式会社製,CAS No.64742−94−5)を使用することができる。
イプゾール100又はイプゾール150は、それぞれ、沸点が162〜179°C、186〜205℃の石油系の芳香族炭化水素であるが、引火点が、それぞれ、46°C、65°Cと高い。また、急性毒性も弱い。そのため、キシレン等の低級芳香族系炭化水素に比べて安全性に優れており、毒物及び劇物取締法における毒劇物にも該当しない。従って、取り扱いや管理が容易である。なお、ここで、上記イプゾール100は、炭素数9の芳香族系炭化水素の混合物を主成分とした有機溶剤であり、上記イプゾール150は、炭素数10の芳香族系炭化水素の混合物を主成分とした有機溶剤である。これらの物理・化学的性質は下の表1に示す通りである。
Figure 0004671230
また、本発明において、前記トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤には、炭素数が9、10、11、又は12のパラフィン系炭化水素を含有するものを使用することができる。
このように、炭素数が9、10、11、又は12のパラフィン系炭化水素は、沸点が略150°C以上であり、常温での揮発性が弱い。そのため、安全性に優れ、取り扱いが容易である。また、常圧下での沸点が略200°C以下であるため、トナーのゲル化後に、スチレンアクリル系樹脂と、その粉塵抑制ゲル化処理剤とを分離するために使用する熱エネルギー量は、少なくてすむ。
そのため、トナーのゲル化加工、ゲル化加工物の熱による固液分離を、省エネルギー・低コストで行うことができる。
また、本発明において、前記トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤には、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素を含有するものを使用することができる。
トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が55°Cよりも低いと、後述で示されるように、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤として最適なスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との混合比において、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が高くなる。その結果、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤中におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の濃度が低いため、熱平衡状態において、スチレンアクリル系樹脂中に侵入するスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の量が減少する。従って、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルが硬質化し(変形性が非常に小さくなり、硬質なゴムに近い状態となる。)取り扱いが困難となる。
一方、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が85°Cよりも高いと、後述の実験結果で示されるように、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤として最適なスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との混合比において、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が低くなる。その結果、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤中におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の濃度が高いため、熱平衡状態において、スチレンアクリル系樹脂中に侵入するスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の量が増大する。従って、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルは、流動性のある水飴状の粘着性の非常に大きなゲル状態となるため、混合用の容器から剥がれず、取り扱いが非常に煩雑となる。
また、スチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤の中にトナーを投入した際に、表面のスチレンアクリル系樹脂が素早くゲル化されて、まだゲル化されていないトナーの周囲に、ゲル化されたスチレンアクリル系樹脂のゲル膜を形成する。そのため、一定の侵入距離以上はスチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤がトナー内に侵入しにくくなるため、かえって浸透速度の低下を招くこととなる。
そこで、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素油を使用することで、適度な変形性・粘着性を有する(すなわち、粘土や餅のように容易に変形し、かつ粘着性も弱い)スチレンアクリル系樹脂ゲルが生成される。また、適度な変形性を有する状態にゲル化されるために、投入される微粉体トナーの全体にスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤が容易に浸透し、トナーとの混合速度も速めることが可能となる。
また、本発明においては、前記スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤には、シェルゾールS(登録商標 第2411825号)(シェル化学株式会社製,CAS No.93924−07−03,EINECS登録番号300−199−7)を使用することができる。
シェルゾールSは、天然ガスより化学合成されたパラフィン系溶剤として安価で市販されており、トナーの粉塵抑制ゲル化処理を低廉なコストで行うことが可能となる。また、炭素数が9〜12のイソパラフィン系炭化水素油及びノルマルパラフィン系炭化水素油の混合物を主成分としており、上記のように取り扱いが容易で、スチレンアクリル系樹脂ゲルとの蒸留分離も低エネルギー・低コストで行うことができる。
尚、シェルゾールSの物理・化学的性質を表2に示す。
Figure 0004671230
本発明に係る上述のトナー粉塵抑制ゲル化処理剤にトナーを投入することにより、トナーの粉塵を抑制し、同時にゲル化処理することを特徴とする。
これにより、トナーのゲル化時に硫黄の臭気の発生が少なく、溶解時間が短いトナーの粉塵抑制ゲル化処理が可能となる。また、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤が実用的な低廉価格で入手が可能なため、低コストでのトナーの粉塵抑制ゲル化処理が可能となる。
以上のように本発明のトナーのリサイクル処理方法によれば、トナーの混合ゲル化時に硫黄の臭気の発生が少ない。溶解時間が短く、溶解力が高いため粉塵の抑制もできる。実用的な価格で入手が可能なトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤を用いることができる。更に、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤として、毒劇物のベンゼン、トルエン、キシレン等の分子数の小さい芳香族系炭化水素を使用する必要がなく、毒劇物に該当しないイプゾール等の炭素数が9以上の芳香族系炭化水素を使用することが可能となり、人体に有害な物質を極力使用しなくてもよくなる。また、これにより、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤による芳香臭を抑えることができ、引火点も高くなる。
さらに、本発明においては、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素油を含有するスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を使用することで、トナーの混合ゲル化速度を向上させることができる。また、ゲル化されたスチレンアクリル系樹脂の取り扱いも容易となる。
以下に実験例を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
前述のように、従来のトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤として、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、石油精製過程で精製されるイソパラフィン(IP)、ノルマルパラフィン(NP)、又はナフテンを用いた場合、いずれも原油価格の変動に左右される物品のため、現在の所1kgあたり240円程度の市場価格である。
トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤自体の原価を下げることが困難となる。これは、原油からの化学処理工程が複雑化するほど高価となるためであり、化学処理を繰り返して製造されるこれらの原料を使用する限りは、高価となることは避けられない。
一方、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤を安価に製造するために、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、精製度の低い石油留分である溶剤油、灯油、ディーゼル油、ガソリン、溶剤ナフサ等を用いた場合、スチレンアクリル系樹脂のゲル化時に硫黄の臭気が拡散し、その特有の臭気により周辺環境が汚染されるために使用することができない。これは、これら石油留分には硫黄分が含まれるため、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤として用いられる芳香族炭化水素油と当該硫黄分の臭気が混じり合って臭気が生じるものと考えられる。
そこで、本発明者は、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として用いられる、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、又はナフテンは、いずれも灯油を水素化精製して硫黄分等の不純物を除去して製造されるものであることに着目した。
一般に灯油を水素化精製するとユニファイネート、ラフィネート、エキストラクト、ナフテン等が精製される。その精製は、次に示す通りとなる。
まず、硫黄分が約500ppm程度含有されている灯油を水素化精製して硫黄分を除去したものがユニファイネートである。ユニファイネートからナフサ材を取り出し、ノルマルパラフィンを分離精製したものがエキストラクトであり、その残留分がラフィネートである。更に、ラフィネートを水素化精製して得られたものがナフテンである。ナフテン及びラフィネートはイソパラフィンが大半を占め、エキストラクトはノルマルパラフィン系炭化水素が大半を占め、また、ユニファイネートはイソパラフィン、ノルマルパラフィン系炭化水素、及びアロマ分を含み、灯油はそれらのすべてを含んでいる。
そこで、(1)ナフテン、(2)ラフィネート中の大半を占めるイソパラフィン、(3)エキストラクト中大半を占めるノルマルパラフィン、(4)ラフィネート、(5)イソパラフィン、ノルマルパラフィン及びアロマ分を含むユニファイネート、(6)更に、それらすべてを含む灯油、のそれぞれについて、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤としての適正を測るべく実験を行った。
その結果、(1)〜(6)のいずれもトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤のスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として使用可能であり、特に、灯油から硫黄分を除去した(4)ラフィネート及び(5)ユニファイネートが使用可能であることを見い出した。
しかしながら、ラフィネート及びユニファイネートは、石油精製の工程中に精製される中間物であり、商品化されていないことから、一般市場での入手が困難であり、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤として実用化することが難しい。
そこで、ユニファイネートに代わるものとして、含有硫黄分のきわめて少ない、天然ガスより化学合成された灯油(以下、「GTL灯油」という。)に着目し、これをトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤のスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として実験を行った(尚、現在入手可能なものとしては、GTL灯油としては市販されておらず、パラフィン系溶剤として市販されているが、ここでは便宜上、用途に関係なくGTL灯油と呼ぶ)。
表3は、GTL灯油をスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として使用した場合のトナーのゲル化処理実験結果を示し、表4は、比較例として、ノルマルパラフィン(NP)をスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として使用した場合のトナーのゲル化処理実験結果を示す。
Figure 0004671230
Figure 0004671230
この実験では、同加圧下において、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤にトナーを逐次投入しながらそのゲル化処理が完全に終わるまでの時間を測定した。
表3及び表4において、左欄はトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に投入したトナーの量(重量)の累計を表す。トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤としてはキシレン及びイプゾール#100(登録商標 第1674214号)(出光石油化学株式会社製の芳香族系高沸点溶剤。表1参照。)を用いた。
また、従来の石油系トナー粉塵抑制ゲル化処理剤の中で、スチレンアクリル系樹脂のゲル化処理能力(浸透速度、混合量)が高いとされてきた溶剤は、パラフィン系炭化水素(ノルマルパラフィン)と芳香族系炭化水素(キシレン類)との混合比率が45:55の溶剤であるため、この実験でも、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤との混合比率は45:55とした。
表3では、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、GTL灯油であるシェルゾールS(登録商標 第2411825号)(シェル化学株式会社製 CAS No.93924−07−03。表2参照。)を使用した実験結果であり、(A)はシェルゾールS・混合キシレン混合液100g中でスチレンアクリル系樹脂が溶解する時間、(B)はシェルゾールS・イプゾール#100混合液100g中でスチレンアクリル系樹脂が溶解する時間を表す。
表4では、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、ノルマルパラフィンM(登録商標)(新日本石油化学株式会社製 炭素数12〜14のノルマルパラフィンが98容量%以上含有される有機溶剤。以下、「NP−M」という。)を使用した実験結果であり、(C)はNP−M・混合キシレン混合液100g中でスチレンアクリル系樹脂が溶解する時間、(D)はNP−M・イプゾール混合液100g中でスチレンアクリル系樹脂が溶解する時間を表す。
この実験結果から、加圧下においては、200gのトナーをゲル化処理する為に要する時間は、(C)NP−M・混合キシレン混合液の場合1388秒であるのに対し、(A)シェルゾールS・混合キシレン混合液では1136秒であり、シェルゾールSの方がゲル化処理時間は早いことが確認された。
更に、(B)シェルゾールS・イプゾール#100混合液でも、1378秒で200gのトナーをゲル化処理することが可能であり、(C)NP−M・混合キシレン混合液と同等の時間で、ゲル化処理を行うことが可能であることが確認された。
また、シェルゾールSは硫黄成分の含有率が極めて低いことから、石油から精製された灯油を使用した場合と異なり、硫黄臭の発生がないことが確認された。
また、(C)NP−M・混合キシレン混合液100gでは、トナー280g、(D)NP−M・イプゾール#100混合液100gでは、トナー200gをゲル化処理するのが限界であったのに対し、シェルゾールS・キシレン混合液100g及びシェルゾールS・イプゾール#100混合液100gともに、320g以上のトナーをゲル化処理することが可能であり、加圧下におけるトナーのゲル化処理量は、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤としてシェルゾールSを用いた方が多い。
従って、加圧下では、シェルゾールS・芳香族系炭化水素油混合液の方が、NP−M・芳香族系炭化水素油混合液に比べ、トナーをゲル化処理する時間及びゲル化する量ともに優れていることが確認された。
更に、シェルゾールS・イプゾール#100混合液でも、NP−M・混合キシレン混合液と同様の時間でトナーのゲル化処理を行うことが可能であり、NP−M・混合キシレン混合液よりも多くのトナーのゲル化処理を行うことが可能である。従って、芳香臭が強く引火点の低い混合キシレンをスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤として用いる必要はなく、芳香臭が弱く引火点の高いイプゾールをスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤として用いることが可能であることが確認された。
図1はトナーとトナー粉塵抑制ゲル化処理剤の混合比率を80:20と設定し、検体としたゲル状樹脂のN2ガス雰囲気中における示差熱分析結果である。常温から307.3°Cまでの減量は19.2重量%でこの間の近傍値は吸熱反応であり、この減量分がトナー粉塵抑制ゲル化処理剤の含有量であることが観測された。さらに、340°C近傍でトナーに含まれるスチレンアクリル樹脂の分解が始まり、475°Cで分解は終わることも観測された。
すなわち、本発明は、前述の通り、トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤と、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の混合溶液からなるトナー粉塵抑制ゲル化処理剤であって、前記スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤は、天然ガスより化学合成された常圧における沸点が150〜200°Cであるパラフィン系油留分であることを特徴とする。
ここで、前記天然ガスより化学合成されたパラフィン系油留分としては、シェルゾールS(登録商標 第2411825号)(シェル化学株式会社製)のほか、各種GTL技術により化学合成したパラフィン系油留分を用いることができる。
また、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤としては、各種芳香族系炭化水素を用いることが可能であるが、特に、沸点が150〜200°Cの範囲で、炭素数が9又は10の芳香族系炭化水素油を主成分とするものを用いるのが望ましい。沸点が150°C以上であれば気化しにくいために、引火点が高く安全性に優れており、沸点が200°C以下であれば、トナーのゲル化後に、スチレンアクリル系樹脂とその粉塵抑制ゲル化処理剤とを分離するために必要な加熱量が少なくてすむ。そのため、トナーの再資源化を、省エネルギー・低コストで行うことができる。
芳香族系炭化水素油の市販品としては、例えば、「イプゾール#100」(登録商標 第1674214号)(出光石油化学株式会社製)、「イプゾール#150」(登録商標 第1674214号)(出光石油化学株式会社製)、「スーパーゾル#1500」(登録商標)(新日本石油株式会社製)、「ハイゾール#100」(登録商標 第1424445号)(新日本石油株式会社製)、「ソルベック#100」(登録商標)(エッソ化学株式会社製)、「ベカゾール#100」(登録商標)(モービル石油株式会社製)、「スワゾール#1000」(登録商標 第745101号)(丸善石油化学株式会社製)などを用いることができる。
前記パラフィン系油留分とこれらのものとの混合液を用いることで、作業環境を損なうことなく安全にゲル化処理を行うことができるため、非常に有益である。また、キシレンは毒劇物扱いであるのに対し、イプゾール#100、#150は毒劇物扱いではなく、取り扱いも容易となる。また、これらの芳香族系溶剤は、沸点・引火点が高く、芳香臭が弱いため、作業環境を改善することができる。
次に、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤としてどのような組成の溶剤がより最適であるのかを解明するために、シェルゾールSの成分調査を行った。
シェル化学株式会社の資料によるとシェルゾールS(登録商標 第2411825号)は、その成分として炭素数9〜12のノルマルパラフィン・イソパラフィン混合物を95容量%以上含有しており、炭素数9、10、11のノルマルパラフィンを、それぞれ21.0mol%、7.0mol%、1.2mol%含有していることが示された。
また、炭素数12のノルマルパラフィンは、検出はされたものの、含有量は0.1mol%以下であった。このことから、残り75.8mol%以上の成分は、主として、炭素数9〜12のイソパラフィンと考えられる。
次に、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、ノルマルパラフィンとイソパラフィンとで、トナーへの浸透、混合速度が相違するか否かの確認を行った。シェルゾールSは、ノルマルパラフィンとイソパラフィンとの混合溶剤なので、これと比較するために、含有されるノルマルパラフィンの炭素数が近いノルマルパラフィン−L(登録商標)(新日本石油化学株式会社製。炭素数10〜13のノルマルパラフィンが98容量%以上含有される有機溶剤。以下、「NP−L」という。)を用いて、浸透、混合時間の比較実験を行った。
なお、各溶剤の物理・化学的性質を表5に示す。NP−M、CA25(出光興産株式会社製のパラフィン系・芳香族系混合溶剤。)、及び、LAWS(シェル化学株式会社製のパラフィン系溶剤。化審法番号(9)−1691。)については、後述の実験で用いたため、参考のために掲載した。
Figure 0004671230
トナーの浸透、混合時間の測定実験を行う前に、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤との最適混合比を決定する必要がある。
以下、その決定方法について補足説明する。
まず、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を、それぞれ所定の割合で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤を用意する。
(1)トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して40g(32wt%)のトナーを投入して混合させる。
(2)次に、(1)で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して40gのトナーを投入、金属ヘラで撹拌して溶液中に浸漬する。完全にゲル化するまでの時間を測定する。このとき、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して64wt%のトナーが混合されたことになる。
(3)更に(2)のトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して40gのトナーを投入して、金属ヘラで撹拌して溶液中に浸漬し、完全にゲル化するまでの時間を測定する。このとき、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して96wt%のトナーが混合されたことになる。
(4)更に(3)のトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して40gのトナーを投入して、手で押さえて溶液中に浸漬し、完全にゲル化するまでの時間を測定する。このとき、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して128wt%のトナーが混合されたことになる。
上記(1)〜(4)の測定を1クールとして、更に1クール(5)〜(8)の測定を行う。このとき、(8)の測定完了時には、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して256wt%のトナーが混合されたことになる。
スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の混合比を変化させて、それぞれのトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して実験を行い、(1)〜(8)の測定における混合ゲル化に要する時間が最短となる最適の混合比を求めた。尚、減容化時間が短い場合であっても、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルの状態が固い場合や、流動性のある水飴状になった場合には、実際上ゲルの取り扱いが困難であるため、最適の混合比とはしないこととした。尚、同様の実験を、NP−M及びNP−Lについても行った。
尚、経験上、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤1kgあたり、3.0kg以上のトナーを減容化できるため、減容化率を表す場合、トナーの溶解量をxgとしたとき、x/300×100の値を「wt%」で表した。以下も同様である。
実験の結果、イプゾール:NP−M、イプゾール:NP−L、イプゾール:シェルゾールS、イプゾール:CA25、イプゾール:LAWSの最適混合比は、それぞれ、60:40、60:40、55:45、30:70、15:85であった。
以上の実験によりスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の最適混合比を決めた上で、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤としてシェルゾールSを使用した場合と、NP−Lを使用した場合とで、減容時間の比較を行った。
以下の表6は、その実験結果である。
Figure 0004671230
表6における測定は、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して、40gを1単位量としてトナーを投入し、金属ヘラで撹拌してトナーが完全にゲル化するまでの時間を測定する。これを(1)から(8)まで各検体8回(40gから320gまで)行った。
表6から判るように、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤としてシェルゾールSを使用した場合と、NP−Lを使用した場合とで、浸透、混合時間の差は、32〜64wt%減容の場合で12秒、64〜96wt%減容の場合で324秒、96〜128wt%減容の場合で82秒であり、あまり大差はない。このことから、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤中に含まれるイソパラフィンの量はトナー減容時間に大きな影響を及ぼすものではないことが推測される。
そこで、次に、トナー混合ゲル化時間に影響を及ぼす因子の調査を行った。以下、その結果について説明する。
スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤が同一の場合には、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が高くなるに従って、最適混合比におけるスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が低下し、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の比率が増加する。
ここで、アニリン点とは、JIS K 2256に規定された方法により測定されるアニリン点をいい、等容積のアニリン((C6H5)NH2)と試料とが均一な溶液として存在する最低温度をいう。一般に、アニリン点が低いほどゴムを膨潤する作用が大きくなる。すなわち、アニリン点が低い溶剤はスチレンアクリル系樹脂を溶解する作用が大きいと考えられる。従って、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が高いほど、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤はスチレンアクリル系樹脂に溶解しにくくなる。従って、最適混合比におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の混合比は、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点に比例して増加するものと考えられる。
以上のことから、トナー混合ゲル化時間には、スチレンアクリル系樹脂とスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤との溶解度のみならず、スチレンアクリル系樹脂とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との溶解度も影響することが予想される。具体的には、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が、トナー混合ゲル化時間に影響を及ぼすことが予想される。
そこで、次に、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点とトナー減容時間との関係について調査した。
まず、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤としてキシレン又はイプゾールを用いた場合においては、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が70〜80°C付近においてトナーの混合ゲル化速度は最も速くなる。
一方、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が55°Cよりも低いと、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤として最適なスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との混合比において、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が高くなる。その結果、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤中におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の濃度が低いため、熱平衡状態において、スチレンアクリル系樹脂中に侵入するスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の量が減少する。その結果、トナーの混合ゲル化速度が低下するとともに、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルが固くなる(変形性が非常に小さくなり、ゴムに近い状態となる。)ものと考えられる。
一方、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が85°Cよりも高いと、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤として最適なスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との混合比において、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が低くなる。その結果、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤中におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の濃度が高いため、熱平衡状態において、スチレンアクリル系樹脂中に侵入するスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の量が増大する。
従って、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルは、流動性のある水飴状の粘着性の非常に大きなゲル状態となる。そのため、スチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤の中にトナーを投入した際に、主原料のスチレンアクリル系樹脂が素早くゲル化されて、まだゲル化されていないトナーの周囲に、ゲル化されたスチレンアクリル系樹脂のゲル膜を形成する。その結果、一定の侵入距離以上はスチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤がトナー内に侵入しにくくなるため、かえって混合ゲル化速度が低下するものと考えられる。
以上の事象から、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤によるスチレンアクリル系樹脂の減容化速度は、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤のスチレンアクリル系樹脂溶解性(アニリン点)のみならず、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のスチレンアクリル系樹脂溶解性(アニリン点)も影響することが判る。そして、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との最適な組み合わせは、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤がトナー中に適度な量侵入し、かつ、トナーの減容化中にトナーの表面に、ゲル化したスチレンアクリル系樹脂が膜を形成しない割合とすることがよいことが判る。以上のことより、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点として最適な範囲は、55〜85°Cであることが判る。
すなわち、本発明は、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤は、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素を含有していることを特徴とする。
かかる範囲のスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を使用することにより、トナーの混合ゲル化により生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルの性状が、固くなりすぎず、かつ流動性のある水飴状になることもなく、適度な変形性を有する餅状となるため、スチレンアクリル系樹脂ゲルの取り扱いが容易となる。また、トナーの混合速度も速く、トナーゲル化処理効率を向上させることが可能となる。
図1は、トナーとトナー粉塵抑制ゲル化処理剤の混合検体であるゲル状樹脂のN2ガス雰囲気中における示差熱分析結果を示す図である。

Claims (1)

  1. トナーとトナー粉塵抑制ゲル化処理剤の混合比率を所定の割合に設定し、
    前記トナー粉塵抑制ゲル化処理剤は、
    トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤と、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の混合溶液を有し、芳香族と脂肪族の炭化水素油を含み、前記脂肪族炭化水素油は、常圧時において沸点が150〜200°Cであるパラフィン系油留分であり、前記芳香族炭化水素油中の炭素数は、9又は10であり、前記芳香族炭化水素油の常圧時における沸点が150°C以上であり、前記脂肪族炭化水素油は、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素を含有しており、
    スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を、それぞれ所定の割合で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤を用意し、
    次いで、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して最大量320g(256wt%)のトナーを常圧下で投入混合して粉塵を抑制しつつ、ゲル化物質に変化させ、
    次いで、前記ゲル化物質を加熱昇温して吸熱反応を促し、
    307.3°C近傍で前記ゲル化物質に含まれるトナー粉塵抑制ゲル化処理剤は概ね気化を完了して固液分離を終了させ、
    固液分離後のスチレンアクリル固形化樹脂は、再利用可能な状態となり、
    上記工程を経ることで、前記ゲル化物質を固形物としてのスチレンアクリル固形化樹脂にしてリサイクル可能なようにすることを特徴とするトナーのリサイクル処理方法。
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