JP4671230B2 - トナー粉塵抑制ゲル化処理剤 - Google Patents
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Description
このトナーは、主成分となるバインダ樹脂及び着色剤の粒子径が数〜十数μmの超微粒子であることから、一転不用品となった場合、その微粉塵であるが故に取り扱いが容易ではなく、作業者は粉塵吸引等の危険にさらされている。産業廃棄物として排出されるトナーを飛散、流出等の事故が起きない様に保管・運搬するためには広いスペースが必要となり、更に人の手で容易に扱えるような固形状にする場合は、熱処理装置等の特殊な設備を使用するため従来の技術では処理コストが大きい。
従来のトナーの処理技術としては、例えば以下の特許文献に記載のものがあり、これらの文献にトナーの処理方法、トナーの処理装置が開示されている。
一般的に溶媒にトナーを浸漬すると、トナーのバインダ成分である熱可塑性樹脂が可溶性溶剤により膨潤する。すなわち、トナーとトナー溶媒とからなる熱可塑性樹脂の状態は、熱平衡状態に向かって変化し、重合体である熱可塑性樹脂の分子鎖の間隙に、溶媒である熱可塑性樹脂可溶性溶剤が侵入して、網目状に結合した熱可塑性樹脂の分子が膨潤する。膨潤した樹脂は、可溶性溶剤を多量に含みコロイドが流動性を失い、高分子の鎖が3次元に絡み合いゲル状物質に変化する。
しかし、熱可塑性樹脂不溶性溶剤が存在することにより、熱平衡状態において熱可塑性樹脂内に侵入する可溶性溶剤の量が適度に抑制されるため、ゲル状物質が流動性のない餅状物質となる。この状態の物質は、消防法上、流動性の無い固体の扱いとなるため危険物という範疇からは除外され、取り扱いや管理が容易となる。
また、灯油は、各石油元売りメーカーにより成分が一定せず、その原産国や季節による増減産も大きいという社会的な問題もある。
そして、上記のトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤を用いたトナーのリサイクル処理方法は、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を、それぞれ所定の割合で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤を用意し、
次いで、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して最大量320g(256wt%)のトナーを常圧下で投入混合して粉塵を抑制しつつ、ゲル化物質に変化させ、
次いで、前記ゲル化物質を加熱昇温して吸熱反応を促し、
307.3°C近傍で前記ゲル化物質に含まれるトナー粉塵抑制ゲル化処理剤は概ね気化を完了して固液分離を終了させ、
固液分離後のスチレンアクリル固形化樹脂は、再利用可能な状態となり、
上記工程を経ることで、前記ゲル化物質を固形物としてのスチレンアクリル固形化樹脂にしてリサイクル可能なようにすることを特徴とする。
また、天然ガスから化学合成したパラフィン系油留分は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の人体に有害な芳香族炭化水素油を含有しない。すなわち、スチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤として、沸点・引火点が低く毒劇物であるベンゼン、トルエン、キシレン等を使用せず、沸点・引火点が高く毒劇物に該当しない炭素数が9以上のより高級な芳香族系炭化水素油類を用いることで、人体に有害な物質を極力使用しないことができる。
更に、スチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤として、芳香臭が弱く引火点の高い芳香族炭化水素油を使用しても十分な溶解性を得ることが可能となる。そのため、トナーのゲル化処理時の作業環境は、改善される。
ここで、「天然ガスより化学合成されたパラフィン系油留分」とは、天然ガスを、GTG(Gas to Gasoline)プロセス、SMDS(Shell Middle Distillate Synthesis)プロセス、SASOLプロセス、AGC−21(Advanced Gas Conversion Technology for 21th century)プロセス、Syntroleumプロセス等のGTL(ガス・トゥー・リキド:Gas to liquids)技術により化学合成した油留分のことをいう。
すなわち、炭素数が9又は10の芳香族系炭化水素油は、ベンゼン(C6H6)、トルエン(C7H8)、キシレン(C8H10)等の炭素数の小さい芳香族系炭化水素油に比べて、引火点が高い。また、毒劇物に属する溶剤でもない。そのため、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤として取り扱いが容易となり、安全性も高めることが出来る。
常圧における沸点が150°C以上であれば、気温の高い時期でも気化しにくいために、引火点が高く安全性に優れている。
イプゾール100又はイプゾール150は、それぞれ、沸点が162〜179°C、186〜205℃の石油系の芳香族炭化水素であるが、引火点が、それぞれ、46°C、65°Cと高い。また、急性毒性も弱い。そのため、キシレン等の低級芳香族系炭化水素に比べて安全性に優れており、毒物及び劇物取締法における毒劇物にも該当しない。従って、取り扱いや管理が容易である。なお、ここで、上記イプゾール100は、炭素数9の芳香族系炭化水素の混合物を主成分とした有機溶剤であり、上記イプゾール150は、炭素数10の芳香族系炭化水素の混合物を主成分とした有機溶剤である。これらの物理・化学的性質は下の表1に示す通りである。
このように、炭素数が9、10、11、又は12のパラフィン系炭化水素は、沸点が略150°C以上であり、常温での揮発性が弱い。そのため、安全性に優れ、取り扱いが容易である。また、常圧下での沸点が略200°C以下であるため、トナーのゲル化後に、スチレンアクリル系樹脂と、その粉塵抑制ゲル化処理剤とを分離するために使用する熱エネルギー量は、少なくてすむ。
そのため、トナーのゲル化加工、ゲル化加工物の熱による固液分離を、省エネルギー・低コストで行うことができる。
トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が55°Cよりも低いと、後述で示されるように、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤として最適なスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との混合比において、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が高くなる。その結果、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤中におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の濃度が低いため、熱平衡状態において、スチレンアクリル系樹脂中に侵入するスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の量が減少する。従って、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルが硬質化し(変形性が非常に小さくなり、硬質なゴムに近い状態となる。)取り扱いが困難となる。
また、スチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤の中にトナーを投入した際に、表面のスチレンアクリル系樹脂が素早くゲル化されて、まだゲル化されていないトナーの周囲に、ゲル化されたスチレンアクリル系樹脂のゲル膜を形成する。そのため、一定の侵入距離以上はスチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤がトナー内に侵入しにくくなるため、かえって浸透速度の低下を招くこととなる。
また、本発明においては、前記スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤には、シェルゾールS(登録商標 第2411825号)(シェル化学株式会社製,CAS No.93924−07−03,EINECS登録番号300−199−7)を使用することができる。
シェルゾールSは、天然ガスより化学合成されたパラフィン系溶剤として安価で市販されており、トナーの粉塵抑制ゲル化処理を低廉なコストで行うことが可能となる。また、炭素数が9〜12のイソパラフィン系炭化水素油及びノルマルパラフィン系炭化水素油の混合物を主成分としており、上記のように取り扱いが容易で、スチレンアクリル系樹脂ゲルとの蒸留分離も低エネルギー・低コストで行うことができる。
尚、シェルゾールSの物理・化学的性質を表2に示す。
これにより、トナーのゲル化時に硫黄の臭気の発生が少なく、溶解時間が短いトナーの粉塵抑制ゲル化処理が可能となる。また、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤が実用的な低廉価格で入手が可能なため、低コストでのトナーの粉塵抑制ゲル化処理が可能となる。
さらに、本発明においては、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素油を含有するスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を使用することで、トナーの混合ゲル化速度を向上させることができる。また、ゲル化されたスチレンアクリル系樹脂の取り扱いも容易となる。
前述のように、従来のトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤として、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、石油精製過程で精製されるイソパラフィン(IP)、ノルマルパラフィン(NP)、又はナフテンを用いた場合、いずれも原油価格の変動に左右される物品のため、現在の所1kgあたり240円程度の市場価格である。
トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤自体の原価を下げることが困難となる。これは、原油からの化学処理工程が複雑化するほど高価となるためであり、化学処理を繰り返して製造されるこれらの原料を使用する限りは、高価となることは避けられない。
一方、トナーの粉塵抑制ゲル化処理剤を安価に製造するために、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、精製度の低い石油留分である溶剤油、灯油、ディーゼル油、ガソリン、溶剤ナフサ等を用いた場合、スチレンアクリル系樹脂のゲル化時に硫黄の臭気が拡散し、その特有の臭気により周辺環境が汚染されるために使用することができない。これは、これら石油留分には硫黄分が含まれるため、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤として用いられる芳香族炭化水素油と当該硫黄分の臭気が混じり合って臭気が生じるものと考えられる。
一般に灯油を水素化精製するとユニファイネート、ラフィネート、エキストラクト、ナフテン等が精製される。その精製は、次に示す通りとなる。
まず、硫黄分が約500ppm程度含有されている灯油を水素化精製して硫黄分を除去したものがユニファイネートである。ユニファイネートからナフサ材を取り出し、ノルマルパラフィンを分離精製したものがエキストラクトであり、その残留分がラフィネートである。更に、ラフィネートを水素化精製して得られたものがナフテンである。ナフテン及びラフィネートはイソパラフィンが大半を占め、エキストラクトはノルマルパラフィン系炭化水素が大半を占め、また、ユニファイネートはイソパラフィン、ノルマルパラフィン系炭化水素、及びアロマ分を含み、灯油はそれらのすべてを含んでいる。
その結果、(1)〜(6)のいずれもトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤のスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として使用可能であり、特に、灯油から硫黄分を除去した(4)ラフィネート及び(5)ユニファイネートが使用可能であることを見い出した。
そこで、ユニファイネートに代わるものとして、含有硫黄分のきわめて少ない、天然ガスより化学合成された灯油(以下、「GTL灯油」という。)に着目し、これをトナーの粉塵抑制ゲル化処理剤のスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として実験を行った(尚、現在入手可能なものとしては、GTL灯油としては市販されておらず、パラフィン系溶剤として市販されているが、ここでは便宜上、用途に関係なくGTL灯油と呼ぶ)。
表3は、GTL灯油をスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として使用した場合のトナーのゲル化処理実験結果を示し、表4は、比較例として、ノルマルパラフィン(NP)をスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として使用した場合のトナーのゲル化処理実験結果を示す。
表3及び表4において、左欄はトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に投入したトナーの量(重量)の累計を表す。トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤としてはキシレン及びイプゾール#100(登録商標 第1674214号)(出光石油化学株式会社製の芳香族系高沸点溶剤。表1参照。)を用いた。
また、従来の石油系トナー粉塵抑制ゲル化処理剤の中で、スチレンアクリル系樹脂のゲル化処理能力(浸透速度、混合量)が高いとされてきた溶剤は、パラフィン系炭化水素(ノルマルパラフィン)と芳香族系炭化水素(キシレン類)との混合比率が45:55の溶剤であるため、この実験でも、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤との混合比率は45:55とした。
表4では、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤として、ノルマルパラフィンM(登録商標)(新日本石油化学株式会社製 炭素数12〜14のノルマルパラフィンが98容量%以上含有される有機溶剤。以下、「NP−M」という。)を使用した実験結果であり、(C)はNP−M・混合キシレン混合液100g中でスチレンアクリル系樹脂が溶解する時間、(D)はNP−M・イプゾール混合液100g中でスチレンアクリル系樹脂が溶解する時間を表す。
更に、(B)シェルゾールS・イプゾール#100混合液でも、1378秒で200gのトナーをゲル化処理することが可能であり、(C)NP−M・混合キシレン混合液と同等の時間で、ゲル化処理を行うことが可能であることが確認された。
また、シェルゾールSは硫黄成分の含有率が極めて低いことから、石油から精製された灯油を使用した場合と異なり、硫黄臭の発生がないことが確認された。
従って、加圧下では、シェルゾールS・芳香族系炭化水素油混合液の方が、NP−M・芳香族系炭化水素油混合液に比べ、トナーをゲル化処理する時間及びゲル化する量ともに優れていることが確認された。
更に、シェルゾールS・イプゾール#100混合液でも、NP−M・混合キシレン混合液と同様の時間でトナーのゲル化処理を行うことが可能であり、NP−M・混合キシレン混合液よりも多くのトナーのゲル化処理を行うことが可能である。従って、芳香臭が強く引火点の低い混合キシレンをスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤として用いる必要はなく、芳香臭が弱く引火点の高いイプゾールをスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤として用いることが可能であることが確認された。
すなわち、本発明は、前述の通り、トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤と、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の混合溶液からなるトナー粉塵抑制ゲル化処理剤であって、前記スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤は、天然ガスより化学合成された常圧における沸点が150〜200°Cであるパラフィン系油留分であることを特徴とする。
また、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤としては、各種芳香族系炭化水素を用いることが可能であるが、特に、沸点が150〜200°Cの範囲で、炭素数が9又は10の芳香族系炭化水素油を主成分とするものを用いるのが望ましい。沸点が150°C以上であれば気化しにくいために、引火点が高く安全性に優れており、沸点が200°C以下であれば、トナーのゲル化後に、スチレンアクリル系樹脂とその粉塵抑制ゲル化処理剤とを分離するために必要な加熱量が少なくてすむ。そのため、トナーの再資源化を、省エネルギー・低コストで行うことができる。
前記パラフィン系油留分とこれらのものとの混合液を用いることで、作業環境を損なうことなく安全にゲル化処理を行うことができるため、非常に有益である。また、キシレンは毒劇物扱いであるのに対し、イプゾール#100、#150は毒劇物扱いではなく、取り扱いも容易となる。また、これらの芳香族系溶剤は、沸点・引火点が高く、芳香臭が弱いため、作業環境を改善することができる。
シェル化学株式会社の資料によるとシェルゾールS(登録商標 第2411825号)は、その成分として炭素数9〜12のノルマルパラフィン・イソパラフィン混合物を95容量%以上含有しており、炭素数9、10、11のノルマルパラフィンを、それぞれ21.0mol%、7.0mol%、1.2mol%含有していることが示された。
また、炭素数12のノルマルパラフィンは、検出はされたものの、含有量は0.1mol%以下であった。このことから、残り75.8mol%以上の成分は、主として、炭素数9〜12のイソパラフィンと考えられる。
なお、各溶剤の物理・化学的性質を表5に示す。NP−M、CA25(出光興産株式会社製のパラフィン系・芳香族系混合溶剤。)、及び、LAWS(シェル化学株式会社製のパラフィン系溶剤。化審法番号(9)−1691。)については、後述の実験で用いたため、参考のために掲載した。
以下、その決定方法について補足説明する。
まず、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を、それぞれ所定の割合で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤を用意する。
(1)トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して40g(32wt%)のトナーを投入して混合させる。
(2)次に、(1)で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して40gのトナーを投入、金属ヘラで撹拌して溶液中に浸漬する。完全にゲル化するまでの時間を測定する。このとき、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して64wt%のトナーが混合されたことになる。
(3)更に(2)のトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して40gのトナーを投入して、金属ヘラで撹拌して溶液中に浸漬し、完全にゲル化するまでの時間を測定する。このとき、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して96wt%のトナーが混合されたことになる。
(4)更に(3)のトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して40gのトナーを投入して、手で押さえて溶液中に浸漬し、完全にゲル化するまでの時間を測定する。このとき、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して128wt%のトナーが混合されたことになる。
スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の混合比を変化させて、それぞれのトナー粉塵抑制ゲル化処理剤に対して実験を行い、(1)〜(8)の測定における混合ゲル化に要する時間が最短となる最適の混合比を求めた。尚、減容化時間が短い場合であっても、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルの状態が固い場合や、流動性のある水飴状になった場合には、実際上ゲルの取り扱いが困難であるため、最適の混合比とはしないこととした。尚、同様の実験を、NP−M及びNP−Lについても行った。
尚、経験上、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤1kgあたり、3.0kg以上のトナーを減容化できるため、減容化率を表す場合、トナーの溶解量をxgとしたとき、x/300×100の値を「wt%」で表した。以下も同様である。
実験の結果、イプゾール:NP−M、イプゾール:NP−L、イプゾール:シェルゾールS、イプゾール:CA25、イプゾール:LAWSの最適混合比は、それぞれ、60:40、60:40、55:45、30:70、15:85であった。
以下の表6は、その実験結果である。
表6から判るように、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤としてシェルゾールSを使用した場合と、NP−Lを使用した場合とで、浸透、混合時間の差は、32〜64wt%減容の場合で12秒、64〜96wt%減容の場合で324秒、96〜128wt%減容の場合で82秒であり、あまり大差はない。このことから、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤中に含まれるイソパラフィンの量はトナー減容時間に大きな影響を及ぼすものではないことが推測される。
スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤が同一の場合には、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が高くなるに従って、最適混合比におけるスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が低下し、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の比率が増加する。
ここで、アニリン点とは、JIS K 2256に規定された方法により測定されるアニリン点をいい、等容積のアニリン((C6H5)NH2)と試料とが均一な溶液として存在する最低温度をいう。一般に、アニリン点が低いほどゴムを膨潤する作用が大きくなる。すなわち、アニリン点が低い溶剤はスチレンアクリル系樹脂を溶解する作用が大きいと考えられる。従って、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が高いほど、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤はスチレンアクリル系樹脂に溶解しにくくなる。従って、最適混合比におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の混合比は、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点に比例して増加するものと考えられる。
まず、スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤としてキシレン又はイプゾールを用いた場合においては、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が70〜80°C付近においてトナーの混合ゲル化速度は最も速くなる。
一方、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤のアニリン点が55°Cよりも低いと、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤として最適なスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤との混合比において、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の比率が高くなる。その結果、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤中におけるスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の濃度が低いため、熱平衡状態において、スチレンアクリル系樹脂中に侵入するスチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤の量が減少する。その結果、トナーの混合ゲル化速度が低下するとともに、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルが固くなる(変形性が非常に小さくなり、ゴムに近い状態となる。)ものと考えられる。
従って、生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルは、流動性のある水飴状の粘着性の非常に大きなゲル状態となる。そのため、スチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤の中にトナーを投入した際に、主原料のスチレンアクリル系樹脂が素早くゲル化されて、まだゲル化されていないトナーの周囲に、ゲル化されたスチレンアクリル系樹脂のゲル膜を形成する。その結果、一定の侵入距離以上はスチレンアクリル系樹脂粉塵抑制ゲル化処理剤がトナー内に侵入しにくくなるため、かえって混合ゲル化速度が低下するものと考えられる。
かかる範囲のスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を使用することにより、トナーの混合ゲル化により生成されるスチレンアクリル系樹脂ゲルの性状が、固くなりすぎず、かつ流動性のある水飴状になることもなく、適度な変形性を有する餅状となるため、スチレンアクリル系樹脂ゲルの取り扱いが容易となる。また、トナーの混合速度も速く、トナーゲル化処理効率を向上させることが可能となる。
Claims (1)
- トナーとトナー粉塵抑制ゲル化処理剤の混合比率を所定の割合に設定し、
前記トナー粉塵抑制ゲル化処理剤は、
トナーに含まれるスチレンアクリル系樹脂の可溶性溶剤と、スチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤の混合溶液を有し、芳香族と脂肪族の炭化水素油を含み、前記脂肪族炭化水素油は、常圧時において沸点が150〜200°Cであるパラフィン系油留分であり、前記芳香族炭化水素油中の炭素数は、9又は10であり、前記芳香族炭化水素油の常圧時における沸点が150°C以上であり、前記脂肪族炭化水素油は、アニリン点が55°C以上85°C以下のパラフィン系炭化水素を含有しており、
スチレンアクリル系樹脂可溶性溶剤とスチレンアクリル系樹脂不溶性溶剤を、それぞれ所定の割合で混合したトナー粉塵抑制ゲル化処理剤を用意し、
次いで、トナー粉塵抑制ゲル化処理剤100gに対して最大量320g(256wt%)のトナーを常圧下で投入混合して粉塵を抑制しつつ、ゲル化物質に変化させ、
次いで、前記ゲル化物質を加熱昇温して吸熱反応を促し、
307.3°C近傍で前記ゲル化物質に含まれるトナー粉塵抑制ゲル化処理剤は概ね気化を完了して固液分離を終了させ、
固液分離後のスチレンアクリル固形化樹脂は、再利用可能な状態となり、
上記工程を経ることで、前記ゲル化物質を固形物としてのスチレンアクリル固形化樹脂にしてリサイクル可能なようにすることを特徴とするトナーのリサイクル処理方法。
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