JP4669503B2 - スピーカー装置 - Google Patents

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本発明は、駅及び公共施設等のように不特定多数の人が利用する場所に設置されるスピーカー装置に関する。より詳しくは、聴覚障害者用として好適なスピーカー装置に関する。
駅及び公共施設等の不特定多数の人が利用する場所において、スピーカー装置から流れるアナウンスは、補聴器を装着していても聴覚障害者には聞き取りにくいと言われている。特に、駅構内や電車内のアナウンスは、音自体は聞こえるものの、その意味まで正確に聞き取ることが困難なことが多い。
その理由としては、スピーカー装置から出た音が天井や壁に反響して、音を曖昧にしてしまうことが考えられる。一方、スピーカー装置の近くに耳を近づければ、このような反響音の影響は少なくなるが、一般に、アナウンス用のスピーカー装置は、高い位置に取り付けられているため、反響音の影響がなくなるまで近づくことはできない。
そこで、従来、聴覚障害者が、スピーカー装置から流れる音声を明瞭に聞き取れるようにしたシステムが提案されている(特許文献1及び2参照)。例えば、特許文献1には、放送ラインにマッチングトランスを介してスピーカーを接続すると共に、補聴装置のプリアンプ部にピックアップコイルを接続し、このピックアップコイルをマッチングトランスの近傍に配置し、放送ラインに補聴装置を磁気結合した補聴システムが開示されている。この補聴システムでは、スピーカーから流される音声データが、補聴装置を介して聴覚障害者が装着している誘導コイル付き補聴器に送信されるため、健常者がスピーカーから聴取している音声を、同時に、聴覚障害者が補聴器のイヤホンを介して聴取することができる。
図5は特許文献2に記載の技術を適用したエレベータを模式的に示す図である。図5に示すように、特許文献2に記載のエレベータの音声放送システムでは、エレベータの乗りかご101にループアンテナ102を設置し、スピーカー等の音声出力部103から出力される音声データを、ループアンテナ102により磁界信号として出力し、聴覚障害者100が磁気ループシステム対応型の補聴器104を使用して聴取できるようにしている。
特開2003−274489号公報 特開2006−256843号公報
しかしながら、前述した特許文献1及び2に記載の技術は、ループアンテナを天井、床面又はエレベータの乗りかご等に設置する必要があるため、既存の施設に設ける場合、設備の大幅改修が必要となるという問題点がある。
また、特許文献1及び2に記載された技術のように、音声を磁界信号として出力する従来の方法は、磁気ループシステム対応型の補聴器を装着している聴覚障害者に対しては効果があるが、補聴器を装着していない軽度の聴覚障害者、及び補聴器を装着していても磁気ループ受信用コイルを内蔵しておらず磁気ループシステムに対応していないものである場合には、効果が得られないという問題点がある。
そこで、本発明は、設置が容易で、かつ聴覚障害者が障害の程度及び補聴器の有無・種類にかかわらず、音声を明瞭に聞き取ることができるスピーカー装置を提供することを主目的とする。
本発明に係るスピーカー装置は、磁気信号を出力するループコイルを備えた磁気ループコイル部と、複数のスピーカーが縦方向に1列に配置されたトーンゾイレスピーカー部と、を有し、入力された音声信号に基づいて、前記磁気ループコイル部から磁気信号を出力すると共に、前記スピーカー部から音声を出力するものである。
このスピーカー装置では、トーンゾイレスピーカー部から反響しにくい音声を、磁気ループコイル部から音声信号に対応する磁気信号を、それぞれ出力するため、補聴器を装着していない又は磁気ループシステムに対応していない補聴器を装着している聴覚障害者はスピーカー装置に近づくことで、また、磁気ループシステムに対応している補聴器を装着している聴覚障害者は磁気信号を受信することで、より明瞭な音声を聴取することができる。
前記磁気信号は、磁気ループシステム対応型の補聴器で聴取可能な信号であることが望ましい。
また、このスピーカー装置は、前記磁気ループコイル部から出力される磁気信号の出力値と音声信号の出力値とのバランスを調節するための出力調節部を有していてもよい。
更に、前記ピーカー部の前面に、少なくとも各スピーカーに対応する位置に開口部又は孔が形成されたカバーを設けることもできる。
更にまた、本発明のスピーカー装置は、壁又は柱の床面から120〜180cmの位置に取り付けることができる。
本発明によれば、スピーカー部を薄型・小型化が可能なトーンゾイレスピーカーで構成しているため容易に設置することができ、更に、音声と磁気信号の両方を出力することができるため、聴覚障害者が障害の程度及び補聴器の有無・種類にかかわらず、音声を明瞭に聞き取ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。図1は本実施形態のスピーカー装置を示す平面図である。図1に示すように、本実施形態のスピーカー装置1は、前面が開口した筐体2の内部に、コイル3aを備える磁気ループコイル部、及び複数のスピーカー4aを備えたスピーカー部がこの順に積層配置されている。そして、筐体2の開口部を覆うように前面カバー5が取付けられている。
図2は図1に示す磁気ループコイル部を示す平面図であり、図3は図1に示すスピーカー部を示す平面図である。図2に示すように、本実施形態のスピーカー装置1における磁気ループコイル部3は、磁気誘導アンプ(図示せず)から出力される音声信号を磁気信号として出力するものであり、絶縁基材3a上にループ状のコイル3bが設けられている。
この磁気ループコイル部3は、例えば、外面が絶縁体で被覆されたケーブルをループ状に所定回数巻回してコイルとし、それを樹脂シート又は樹脂板等の絶縁基材に固定することにより形成することができる。又は、めっき法等により、樹脂シート又は樹脂板等の絶縁基材上に、直接ループ状のコイルを形成してもよい。この磁気ループコイル部3におけるコイル3bの巻き数は、特に限定されるものではない。
例えば、駅等に設置する場合は、既存の放送機器及び配線を活用することができるため、専用アンプは不要となる。ただし、この場合、スピーカー装置1と既存のスピーカーとが並列に接続されるため、これらの合成インピーダンスを既存のスピーカーの固有のインピーダンスに極力近づける必要がある。このため、本実施形態のスピーカー装置1を既存設備に接続して使用する場合は、既存のスピーカーの音声出力を大きく乱さない範囲になるように、スピーカー部4及び磁気ループコイル部3のインピーダンスを設定することが望ましい。
また、図3に示すように、本実施形態のスピーカー装置1のスピーカー部4は、複数のスピーカー4aが縦方向yに一列に配置された構成となっている。このように、スピーカーを縦方向に配列することにより、ゾイレ効果により、縦方向yの指向性を狭くすると共に、横方向xの指向性を広くすることができる。これにより、天井や床での反響を抑制することができるため、音声を聞き取りやすくすることができる。
また、本実施形態のスピーカー装置1は、聴覚障害者がその近傍、具体的には、スピーカー装置1から1m以内の位置で音声を聴取することを想定しており、更に、前述したように、トーンゾイレスピーカーにすることにより、音声を聞き取りやすくしているため、個々のスピーカー4aの出力を低減することができる。これにより、スピーカー4aとして、小型スピーカーを使用することが可能となるため、スピーカー部4を薄型化することができる。
例えば、スピーカー装置1が、縦が40〜60cm程度、横が10〜20cm程度の大きさであった場合、スピーカー4aとしては、直径が2〜4cm程度、厚さが数mm程度の小型スピーカーを、ほぼ等間隔に5〜10個程度配置すればよい。この場合、筐体2の厚さにもよるが、スピーカー装置1の厚さを1cm以下にすることができる。
本実施形態のスピーカー装置1における筐体2及び前面カバー5は、樹脂製、金属製及び木製等、その材質は特に限定されるものではなく、設置場所の状況に応じて適宜選択することができる。また、前面カバー5には、少なくとも各スピーカー4aに対応する位置に開口部5a若しくは孔が設けられているか、又は、少なくとも各スピーカー4aに対応する位置が網目状になっていることが望ましい。これにより、各スピーカー4aからの出力された音声が、前面カバー5で反射して聞き取りにくくなることを防止できる。
更に、本実施形態のスピーカー装置1は、必要に応じて、磁気ループコイル部3から出力される磁気信号の出力値と、スピーカー部4から出力される音声の大きさとのバランスを調節するための出力調節部(図示せず)を設けることもできる。
磁気ループシステム対応型の補聴器は、内蔵マイクを介して音を聞く場合と、内蔵コイルを介して磁気信号を受信する場合とで、スイッチを切り替える必要がある。音声及び磁気信号の出力値の差が大きいと、音を聞くモードから磁気信号を受信するモードに切り替えたときに、補聴器の受信レベル調整が必要となる。また、音声と磁気信号の両方を同時に聴取できる補聴器もあり、このような補聴器を装着している場合、音声と磁気のそれぞれの信号の強さがほぼ同等でないと聞き取り難くなり、補聴器自体の音量調節も煩雑となる。
更に、本実施形態のスピーカー装置1は、装置近傍での受信を想定し、磁気信号の出力値を比較的小さく設定しているため、スピーカー部4から出力される音声を広範囲で聞き取れる程の音量に設定してしまうと、補聴器で磁気信号を受信したときの受信レベルが小さくなり、イヤホンを介して聴取する音が聞き取りにくくなることがある。
このような場合は、スピーカー装置1に前述した出力調節部を設け、管理者が予め又は聴覚障害者の求めに応じて、スピーカー部4から出力される音量を、磁気ループコイル部3から出力される磁気信号の出力値と同等になるように調整することで、補聴器で聴取する音量差をなくし、聴覚障害者が音声をより聞き取りやすくすることができる。
次に、上述の如く構成された本実施形態のスピーカー装置1の動作について説明する。図4は本実施形態のスピーカー装置1の設置例を模式的に示す図である。図4に示すように、本実施形態のスピーカー装置1は、聴覚障害者用として、駅及び公共施設等のように不特定多数の人が利用する場所の柱11や壁12等に取り付けられ、既に設置されているスピーカー13用の配線14に接続される。
その際、スピーカー装置1は、聴覚障害者10の耳の位置程度、具体的には、スピーカー装置1の上端部が床面から170〜180cm程度、かつ下端部が床面から120〜130cm程度に位置するように配置することが望ましい。これにより、子供から大人まで、幅広い身長差に対応することができる。
本実施形態のスピーカー装置1においては、既存のスピーカーと同様に音声信号が入力され、この音声信号は、スピーカー部4に入力されると共に、磁気誘導アンプ(図示せず)を介して磁気ループコイル部3に入力される。そして、各スピーカー4aからスピーカー装置1の近傍のみに聞こえる程度の音声が出力されると共に、コイル3bからは同じ内容の磁気信号が出力される。なお、スピーカー装置1を既存の放送設備の配線に接続して使用する場合は、既存の設備を利用することができるため、別途磁気誘導アンプを設置する必要はない。
このように、本実施形態のスピーカー装置1は、その近傍にのみ、音声又は磁気信号を出力しているため、補聴器を装着していない又は磁気ループシステムに対応していない補聴器を装着している聴覚障害者は、スピーカー装置1に近づくことで、その他のスピーカーから流れる音声と同じ内容を、反響の影響を受けずに、より明瞭な音で聞くことができる。また、磁気ループシステム対応の補聴器を装着している聴覚障害者は、補聴器のモードを磁気信号の受信に切り替えることで、周囲の音に左右されずにより明瞭なアナウンスを聞くことができる。
また、本実施形態のスピーカー装置1は、既存のスピーカー用の配線に接続することができ、更に、薄型・軽量であるため、両面テープ及び接着剤等により柱や壁に貼り付けることも可能である。このため、既存設備を改修又は交換しなくても、容易に設置することができる。
更に、本実施形態のスピーカー装置1は、スピーカー部4から発せられる音声はその近傍のみにしか聞こえず、また、磁気ループコイル部3から発せられる磁気信号は、磁気ループシステム対応の補聴器を装着している人にしか聞こえないため、既存のスピーカーから流れる音声にも影響しない。
上述の如く、本実施形態のスピーカー装置1は、容易に設置することができ、更に、障害の程度及び補聴器の有無・種類にかかわらず、聴覚障害者が音声を明瞭に聞き取ることができる。
なお、本実施形態のスピーカー装置1においては、スピーカー部3の後方に磁気ループコイル部4を配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの両方が設けられていれば、その配置は装置の大きさ及び必要とされる出力等に応じて適宜選択することができる。従って、例えば、各スピーカーの周囲にループコイルを形成し、スピーカー部と磁気ループコイル部とが一体となった構成とすることもできる。これにより、より薄型のスピーカー装置を実現することができる。
本発明の実施形態のスピーカー装置を示す分解斜視図である。 図1に示す磁気ループコイル部3を示す平面図である。 図1に示すスピーカー部4を示す平面図である。 本発明の実施形態のスピーカー装置の設置例を模式的に示す図である。 特許文献2に記載の技術を適用したエレベータを模式的に示す図である。
符号の説明
1 スピーカー装置
2 筐体
3 磁気ループコイル部
3a 絶縁基材
3b コイル
4 スピーカー部
4a スピーカー
5 前面カバー
5a 開口部
10、100 聴覚障害者
11 柱
12 壁
13 スピーカー
14 配線
101 乗りかご
102 ループアンテナ
103 音声出力部
104 補聴器

Claims (5)

  1. 磁気信号を出力するループコイルを備えた磁気ループコイル部と、
    複数のスピーカーが縦方向に1列に配置されたトーンゾイレスピーカー部と、
    を有し、
    入力された音声信号に基づいて、前記磁気ループコイル部から磁気信号を出力すると共に、前記スピーカー部から音声を出力するスピーカー装置。
  2. 前記磁気信号は、磁気ループシステム対応型の補聴器で聴取可能な信号であることを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置。
  3. 更に、前記磁気ループコイル部から出力される磁気信号の出力値と音声信号の出力値とのバランスを調節するための出力調節部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカー装置。
  4. 前記ピーカー部の前面には、少なくとも各スピーカーに対応する位置に開口部又は孔が形成されたカバーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスピーカー装置。
  5. 壁又は柱の床面から120〜180cmの位置に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスピーカー装置。
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