JP4660805B2 - 光ファイバセンサを用いた変位測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光ファイバセンサを用いた変位測定方法に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来からトンネル掘削工事や盛土工事などにおいて地盤変位を測定するには、水管式沈下計や傾斜計を用いて変位を得るようにしている。しかしながら、前者は管内の水位を利用するもので鉛直方向での変位しか測定できないものである。また、後者の傾斜計を用いて変位測定をする場合についても、一般的には水平、鉛直のどちらかの方向での変位しか測定できず、また、人為的に選択された複数の不連続位置で測定された傾斜角、即ち、離散的に測定された傾斜角を積分して変位に換算することとなり、測定誤差を大きくするという問題があった。
【0003】
このような問題から光ファイバをセンサとして変位を測定する試みが行われている。
これは、光ファイバにおいて、光を入射し、その光の一部が散乱されると、散乱光として入射端に戻ってくる特質を利用したものであって、この散乱光の強度の変化を調べることで光ファイバの曲がりを求めることができ、周波数分布を解析することによって歪みなどを求めることができる。また入射から散乱光が戻ってくるまでの時間から光ファイバの計測位置を決定できる。このような特質を有する光ファイバを光ファイバセンサとし、光ファイバセンサの片側から光ファイバセンサ全体に亘っての歪みや損失およびその位置を測定することで、光ファイバセンサが位置している外的状況(例えば、光ファイバセンサが埋設されている場合の地盤変位)を測定できるようにすることが試みられていた。
しかしながら、この測定方法で用いるパイプが長くなると歪み量の計測誤差が生じる可能性があり、その計測誤差を含んだ歪み量から算出した値を補正しないまま変位を算出してしまうと、得られた変位が実際の変位と大きくかけ離れるという問題がある。
そこで本発明は上記事情に鑑み、光ファイバの長さ方向に沿って連続的に計測され、かつ計測誤差を含んでいる可能性のある歪み量から上記変位を算出するに際して、その計測誤差による影響を少なくすることを課題とし、適正な変位が得られるようにすることを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、それぞれが光ファイバからなる複数本の光ファイバセンサを、該光ファイバセンサ相互の並設間隔が光ファイバセンサの長さ方向に沿って一定になるようにしてパイプに設けて、該パイプを地中に設置し、前記パイプの長さ方向に沿った測定起点から終点における任意位置での前記起点に対する変位を、前記光ファイバセンサそれぞれから長さ方向に沿って前記起点から前記任意位置まで連続して得られる歪み量を積分して算出する変位測定方法であって、前記パイプの一箇所またはパイプの長さ方向に亘る複数箇所に傾斜計を設け、前記歪み量を積分して得られる回転角を、前記傾斜計が測定した回転角に基づいて補正し、補正された回転角を積分して変位を算出することを特徴とする光ファイバセンサを用いた変位測定方法を提供して、上記課題を解消するものである。
そして、本発明において、上記光ファイバセンサの上記起点と終点との変位を測量により測定し、上記補正された回転角を積分して得られる変位を、前記測量により得られた起点と終点との変位に基づいて補正することが良好である。
【0005】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明に係る実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図中1は長尺なセンサ装置で、図1にはその一部分において構成部材がその断面位置を異ならせて斜視状態にして示されている。前記センサ装置1の構成部材は光ファイバからなる四本の光ファイバセンサ2とプラスチック製または繊維強化プラスチック製のパイプ3であり、前記光ファイバセンサ2それぞれはパイプ3の板厚4内に埋め込まれた状態にしてそのパイプ3の長さ方向に亘って設けられている。
【0006】
パイプ3の断面方向において光ファイバセンサ2それぞれの位置は、該光ファイバセンサ2の長さ方向Aと直交する平面上で描くことのできる正四角形Bの頂点B1,B2,B3,B4となるようにしており、図上、上下位置で対向位置する二本の光ファイバセンサ2が頂点B1,B3を通り、図上、左右位置で対向する二本の光ファイバセンサ2が頂点B2,B4を通っている。そして、光ファイバセンサ2相互の並設間隔D1、D2、D3、D4それぞれが光ファイバセンサ2の長さ方向Aに沿って一定になり、パイプ3の長さ方向に沿って光ファイバセンサ2の位置が周方向にずれることなく、即ち、パイプ3の長さ方向と光ファイバセンサ2の長さ方向とを平行にしている。
また、センサ装置1における上記パイプ3にはその長さ方向に亘ってセンサ装置自体の断面方向での向きを表現する指示手段5が設けられていて、この指示手段5はマーキングや凹凸によって形成されている。さらに、この指示手段5は一つの光ファイバセンサ2に近接するように設けられている。
なお、光ファイバセンサ2をパイプ3の板厚4内に埋め込んだものを示したが、これは光ファイバセンサ2相互の間隔を保つ方法の一つであり、相互の間隔を保つという条件のもとでパイプ3の外表面に配置してもよく、さらに後述する傾斜計との干渉を避けることが可能であれば、パイプ3の内周面に光ファイバセンサ2を配置するようにしてもよい。
【0007】
上記構造のセンサ装置1は地中に設置することができるものであり、掘り下げた地盤にこのセンサ装置1を敷設してから埋め戻しを行なったり、ボーリング孔内に固定させるなどして地中に設置する。
そして、このようにして地中に位置することになるセンサ装置1に図示しない散乱光検出手段を接続し、上記各光ファイバセンサ2に所要の光を入射させ散乱光を受け取り、光ファイバの特性によってこの散乱光から得られる光ファイバセンサ2の歪み量からパイプ3の測定の起点から終点までの長さ方向に沿った任意位置での前記起点に対する三次元的な変位を算出し、これによってセンサ装置1を位置させた地中の変位を測定する。
例えば、図2は上記センサ装置1を横方向にして敷設した例であって、トンネル掘削6に際してのトンネル周辺地盤変位の測定の例を示しており、センサ装置1が通る地中の一部に力Fが加わってその地中の一部分が変位すれば、後述する変位測定方法によりその三次元的な変位量を測定できる。また、図3はセンサ装置1を上下方向に敷設した例であって、斜面の変位及び滑り位置の測定の例を示していて、力Fが加わって地中の一部が変位したことを、後述の変位測定方法により三次元的に測定できる。
【0008】
上記実施の例におけるセンサ装置1において、各光ファイバセンサ2それぞれから、光ファイバの特質を利用して測定の起点から終点での長さ方向Aに沿っての歪み量が連続して得られる(長さ方向に沿った歪み分布として得られる)。さらにセンサ装置1にあっては、図4に示されているようにパイプ3の内部に傾斜計7が位置していて、この傾斜計7はパイプ3の長さ方向に亘る複数箇所に設置固定されており、傾斜計7において測定された回転角の情報が信号線8により上述した散乱光検出手段などを備える計測機器へと出力されるようにしている。
つぎに、便宜上、図1と図4で示したセンサ装置1を地中に横にして敷設したものと想定し、この状態に基づいて、上下に相対する二本の光ファイバセンサ2のそれぞれの歪み量から上下方向での回転角と変位をつぎのようにして求める。
まず、上下の光ファイバセンサ2から歪み量εx1、εx2として得られるから、回転角θxを図4に示す積分式により積分し、その値における積分定数を、傾斜計7にて測定された回転角の値を用いて定めることにより除去する。なお、上下の光ファイバセンサ2の間隔はdである。
【0009】
つぎに、変位(上下方向)の算出に際しては、このセンサ装置1における測定の起点aと終点bとの位置を既存の測量方法によって測定しておく。そして、上記補正された回転角θxを図4に示す積分式で積分して変位δxを算出し、積分により得られた値の積分定数を、前記起点aと終点bとの変位の測量値を用いて定めることにより除去する。なお、lは光ファイバセンサ2の全長(起点aと終点bの距離)である。
同様に横方向においての変位を求める場合には、図1に示す断面での左右に相対する二本の光ファイバセンサ2を用いて測定される歪み量を積分するとともに、上述した傾斜計7での横方向での傾斜角の値を用いて積分定数を定めることにより除去して、回転角を得るようにする。そして、回転角を積分して、その積分定数を起点aと終点bとの変位の測量値に用いて定めて除去することで、変位(横方向)を得ることができる。
このようにすることで変位は補正された状態で得ることができ、適正にセンサ装置1を配設した外的状況、即ち、地盤変位を測定できるものとなる。
なお、本発明において、上記傾斜計での計測手法などは特に限定されるものではなく、光ファイバセンサによるものであっても電気式のものであってもよい。
【0010】
つぎに全長lを10mとしたセンサ装置1を地盤中に設置して一方向(例えば上下方向)の変位を測定する事例を検証した。センサ装置1における起点と終点とは既存の測量方法によって変位0であり、かつ、全長に亘っての変位も0であることが得られているとする。なお、パイプ径dは50mmである。
そして、図5に示すように、一方の片側1mのパイプ上側の光ファイバセンサに歪み(歪み量)0.01%として計測され、これが計測誤差で生じたとする。
【0011】
これを基に変位を測定しようとすると、回転角の分布は、図6に示す回転角補正無Gで示される状態に算出されてしまう。ここで、5mの位置で傾斜計が設置されていたとし、その傾斜計からは回転角の値が0として計測されるから、上述した方法で補正することで、回転角補正有Hの状態として回転角の分布が得られることになる。
【0012】
そして、上述した回転角補正無Gの回転角分布と回転角補正有Hの回転角分布それぞれの状態から変位を算出すれば、図7に示すように回転角補正無Gの状態からの変位では最大で0.8mmの変位が発生し、全体的に変位している状態を示す結果となるが、回転角補正有Hの状態からの変位は、片側1mの範囲のみで最大0.3mmの変位が発生しているものとなり、計測誤差による影響が軽減された適正な変位が測定されたことが判断できる。
【0013】
【発明の効果】
以上説明した本発明の光センサファイバを用いた変位測定方法によれば、光ファイバセンサの歪み量を積分して得られる回転角の値に対して、傾斜計によって直接計測された回転角の値を利用して補正を行なうため、計測誤差からの影響を極力抑えた状態にして回転角から変位を算出できるようになり、光ファイバセンサが設置されている部分での変位を適正に測定できるなど、実用性に優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバセンサを用いた変位測定方法における光ファイバセンサの一例を示す説明図である。
【図2】光ファイバセンサを横にして敷設した地中が変位した状態を示す説明図である。
【図3】光ファイバセンサを縦にして敷設した地中が変位した状態を示す説明図である。
【図4】二本の光ファイバセンサによる歪み量から変位を算出する例を示す説明図である。
【図5】センサ装置における歪みの誤差分布をグラフで示す説明図である。
【図6】回転角補正無と回転角補正有の場合の回転角の分布をグラフで示す説明図である。
【図7】回転角補正無と回転角補正有の場合の変位の分布をグラフで示す説明図である。
【符号の説明】
1…センサ装置
2…光ファイバセンサ
3…パイプ
7…傾斜計
Claims (2)
- それぞれが光ファイバからなる複数本の光ファイバセンサを、該光ファイバセンサ相互の並設間隔が光ファイバセンサの長さ方向に沿って一定になるようにしてパイプに設けて、該パイプを地中に設置し、前記パイプの長さ方向に沿った測定起点から終点における任意位置での前記起点に対する変位を、前記光ファイバセンサそれぞれから長さ方向に沿って前記起点から前記任意位置まで連続して得られる歪み量を積分して算出する変位測定方法であって、
前記パイプの一箇所またはパイプの長さ方向に亘る複数箇所に傾斜計を設け、前記歪み量を積分して得られる回転角を、前記傾斜計が測定した回転角に基づいて補正し、補正された回転角を積分して変位を算出することを特徴とする光ファイバセンサを用いた変位測定方法。 - 光ファイバセンサの上記起点と終点との変位を測量により測定し、上記補正された回転角を積分して得られる変位を、前記測量により得られた起点と終点との変位に基づいて補正する請求項1に記載の光ファイバセンサを用いた変位測定方法。
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