実施の形態1
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は分光エリプソメータのハードウェア構成を示すブロック図である。分光エリプソメータ1はキセノンランプ2、光照射器3、ステージ4、光取得器5、分光器7、データ取込機8、モータ制御機9、スイッチング制御回路17、及び、コンピュータ10等を含んで構成される。分光エリプソメータ1は、透光性基板に膜を積層(形成)した有機EL素子を封止部材(以下、カバー部材)で封止した試料50を透光性基板側から計測する。以下では、有機EL素子を、透光性基板に複数の膜を積層する多層型有機EL素子を例に挙げて説明するが、これに限るものではなく単層型有機EL素子であっても良い。
分光エリプソメータ1は、膜を複数積層した試料50に偏光した光を照射すると共に、試料50で反射した光を取得して反射光の偏光状態を測定し、この測定結果と試料50に応じたモデルに基づき試料50の各膜層の特性を解析するものである。図2は有機EL素子の積層状態を示す模式的断面図である。試料(以下、有機EL素子パネル50という)は、ガラス基板等の透光性基板51、有機膜56、陽極58及び陰極59を含む有機EL素子510、並びに、ガラス等のカバー部材57を含んで構成される。図2(a)は、透光性基板51、有機膜56及びカバー部材57の積層状態を示す模式的断面図である。この有機EL素子パネル50は、2枚のガラス板状部材、すなわち有機膜56を挟んで透光性基板51とカバー部材57とを貼り合わせた形態となっている。有機EL素子パネル50の構造は、一方のガラス板状部材である透光性基板51の一面51aに有機膜56を形成する。その一方、他方のガラス板状部材であるカバー部材57に、有機膜56を収める凹部57dを設けており、凹部57dを設けた面57bを透光性基板51の一面51aに接着剤61で貼り合わせ両者を一体化している。
透光性基板51とカバー部材57との貼り合わせにより封止された凹部57dの内部は、有機膜56の保護のため真空にされるか、希ガス(例えば窒素ガス)が封入される。なお、本実施の形態においては、カバー部材57及び透光性基板51にガラスを用いたが、これに限るものではない。例えば、透光性基板51として、フレキシブルな透光性プラスチック基板を用いてもよい。透光性プラスチック基板を用いる場合は、透明導電性の薄膜(ITO等)を透光性プラスチック基板上にコーティングした後、その上に有機膜56を形成するようにすればよい。また、カバー部材57は、例えば、可視光域で透明なBarix(登録商標)を封止膜として用いることができ、透光性プラスチック基板上にこれを貼り合わせるようにしても良い。
図2(b)は、凹部57d内に収められた有機膜56の詳細な構造を示している。有機膜56は、透光性を有する透光性基板51の一面51aに配置された透明電極である陽極(ITO)58の上に、正孔輸送層(Hole transport layer)52、発光層(Emitting layer)53、正孔ブロッキング層(Hole blocking layer)54、及び電子輸送層(Electron transport layer)55の計4層の膜層を順次積み重ねている。また、有機膜56は、カバー部材57と対向する表面56aに陰極59を配置している。
有機膜56は間隔(ギャップ)を隔てて凹部57dの内部に収められており、有機膜56の表面56aを覆うカバー部材57のカバー部57aとの間には空間60が生じている。空間60の厚み寸法D(有機膜56の表面56aからカバー部57aの内面57cまでの垂直寸法。間隔距離に相当)は、有機EL素子パネル50の仕様に応じて様々である。一般には10μm以上400μm以下の範囲で厚み寸法Dが設定されていることが多い。なお、透光性基板51及びカバー部材57は、厚みTが0.5mm、0.7mm、1.1mmのものが用いられることが多く(0.7mmが最も一般的)、そのため有機EL素子パネル50の全体の厚み(2T)は1.0mm〜2.2mmの範囲の寸法になっていることが一般的である。
上述した構造の有機EL素子パネル50の有機膜56を解析する分光エリプソメータ1は、図1に示す構成であり、一対の光照射器3及び光取得器5からなる測定器を含む測定解析系の部分及び駆動系部分に大別される。分光エリプソメータ1は測定解析系の部分として、キセノンランプ2及び光照射器3を第1光ファイバケーブル15aで接続し、ステージ4上に載置した有機EL素子パネル50へ偏光した状態の光を照射して光を入射させると共に、有機EL素子パネル50で反射した光を光取得器5で取り込む構成にしている。光取得器5は第2光ファイバケーブル15bを介して分光器7に接続されており、分光器7は波長毎に測定を行って測定結果をアナログ信号としてデータ取込機8へ伝送する。データ取込機8は、アナログ信号を所要値に変換してコンピュータ10へ伝送し、コンピュータ10で解析を行う。
また、図1に示すように、分光エリプソメータ1は駆動系部分として、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7に第1モータM1〜第6モータM6を夫々設けている。各モータM1〜M6の駆動をコンピュータ10に接続したモータ制御機9で制御することで、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7を測定に応じた適切な位置、姿勢に変更する。モータ制御機9は、コンピュータ10から出力される指示に基づき各モータM1〜M6の駆動制御を行う。
次に、分光エリプソメータ1の上述した各部分を順番に詳述する。まず、キセノンランプ2は光源であり、複数の波長成分を含む白色光を発生し、発生した白色光を光照射器3へ第1光ファイバケーブル15aを介して送る。光照射器3は半円弧状のレール6上に配置され、内部には偏光子3aを有しており、白色光を偏光子3aで偏光し、偏光状態の光を有機EL素子パネル50へ照射する。また、光照射器3は、第4モータM4が駆動されることでレール6に沿って移動し、照射する光のステージ4のステージ面4aの垂線Hに対する角度(入射角度φ)を調整可能にしている。
ステージ4は移動レール部(図示せず)に摺動可能に配置されており、第1モータM1〜第3モータM3の駆動によりステージ4を図1中のX方向、Y方向(図1の紙面に直交する方向)及び高さ方向となるZ方向へ夫々移動可能にしている。ステージ4の移動により、有機EL素子パネル50へ光を入射させる箇所も適宜変更でき、有機EL素子パネル50の面分析なども行えるようにしている。なお、ステージ4の有機EL素子パネル50を載置するステージ面4aは、光の反射を防止するため黒色にされている。
図3はステージ4に有機EL素子パネル50を載置した状態を示す模式的斜視図である。本実施の形態においては透光性基板51側から光を照射して解析を実行すべく、カバー部材57をステージ4に当接させた状態で載置する。平面視矩形状の透光性基板51側一側辺裏面には陽極58と導通する裏面陽極580が形成されている。また透光性基板51側他側裏面には陰極59と導通する裏面陰極590が形成されている。平面視矩形状のステージ4の一側には導通スタンド175が突設されており、導通スタンド175の先端付近からはプローブ176がY正方向へ向けて延設されている。
同様に、ステージ4の他側には導通スタンド173が突設されており、導通スタンド173の先端付近からはプローブ174がX負方向へ向けて延設されている。電圧印加手段は導通スタンド173、175、プローブ174、176、直流電源171、スイッチ172及びスイッチング制御回路17等を含んで構成される。プローブ176は導通スタンド175を介して直流電源171の陽極に接続される。またプローブ174は導通スタンド173を介して直流電源171の陰極に接続される。
スイッチング制御回路17は図1に示すコンピュータ10のCPU11aの指示に従いスイッチ172をオンまたはオフする。有機EL素子パネル50を発光させる場合、プローブ176の先端を裏面陽極580に接触させ、またプローブ174の先端を裏面陰極590に当接させる。この状態で、スイッチング制御回路17はスイッチ172をオンとする。これにより直流電源171により有機EL素子パネル50に電圧が印加され発光することとなる。CPU11aの指示に従い、スイッチング制御回路17がスイッチ172をオフとした場合、電圧が非印加の状態となり、有機EL素子パネル50は非発光状態となる。なお、本実施の形態で示す電圧印加手段はあくまで一例でありこれに限るものではない。例えば、コンピュータ10のUSBポート(図示せず)にプローブ174、176に導通するUSBケーブル(図示せず)を接続するようにしても良い。この場合CPU11aの指示に従い、コンピュータ10から直流電圧がUSBケーブルを介してプローブ174、176に供給され、有機EL素子パネル50が発光する。
図4は有機EL素子パネル50を透光性基板51側から計測する際の光の入射及び反射状態を示す模式的断面図である。有機EL素子パネル50は、カバー部材57のカバー部57aの外面57fがステージ4のステージ面4aに接するように天地を逆にしてステージ4に載置される。裏面陽極580及び裏面陰極590に電圧を適宜印加することにより、有機EL素子パネル50を発光、または非発光状態とする。この状態で、光照射器3から光を照射することで、有機EL素子パネル50の透光性基板51の裏面51bから光が入射すると共に透光性の透光性基板51を通過して有機膜56へ達する。なお、以下では、有機EL素子パネル50の陽極58及び陰極59等の図示を適宜省略する。
また、図1に示すように、光取得器5は有機EL素子パネル50で反射した光を取得し、取得した光の偏光状態を測定するものである。光取得器5は、光照射器3と同様にレール6上に配置されており、PEM(Photo Elastic Modulator:光弾性変調器)5a及び検光子(Analyzer)5bを内蔵し、試料で反射された光を、PEM5aを介して検光子5bへ導いている。また、光取得器5は、第5モータM5の駆動によりレール6に沿って図4中の矢印A1、A2方向に移動可能であり、基本的に光照射器3の移動に連動して反射角度φと入射角度φとが同角度になるようにモータ制御機9で制御されている。なお、光取得器5に内蔵されたPEM5aは、取り込んだ光を所要周波数(例えば50kHz)で位相変調することにより直線偏光から楕円偏光を得ている。また、検光子5bは、PEM5aで位相変調された各種偏光の中から選択的に偏光を取得して測定する。
図1に示す分光器7は、反射ミラー、回折格子、フォトマルチプライヤー(PMT:光電子倍増管)及び制御ユニット等を内蔵し、光取得器5から第2光ファイバケーブル15bを通じて送られた光を反射ミラーで反射して回折格子へ導いている。回折格子は第6モータM6により角度を変更し出射する光の波長を可変する。分光器7の内部へ進んだ光はPMTで増幅され、光の量が少ない場合でも、測定された信号(光)を安定化させる。また、制御ユニットは測定された波長に応じたアナログ信号を生成してデータ取込機8へ送出する処理を行う。なお、ポラリメータを用いる場合は、フォトダイオードアレイ(PDA)を組み合わせた構成にすることも可能である。
データ取込機8は、分光器7からの信号に基づき反射光の偏光状態(p偏光、s偏光)の振幅比Ψ及び位相差Δを波長毎に算出し、算出した結果をコンピュータ10へ送出する。なお、振幅比Ψ及び位相差Δは、p偏光の振幅反射係数Rp及びs偏光の振幅反射係数Rsに対し以下の数式(1)の関係が成立する。
Rp/Rs=tanΨ・exp(i・Δ)・・・(1)
但し、iは虚数単位である(以下同様)。また、Rp/Rsは偏光変化量ρと云う。
また、コンピュータ10は、データ取込機8で得られた偏光状態の振幅比Ψ及び位相差Δと、試料に応じたモデルとに基づき試料の解析を行うと共に、ステージ4の移動等に対する制御を行う。
コンピュータ10は、コンピュータ本体11、ディスプレイ12、キーボード13及びマウス14等から構成されており、コンピュータ本体11はCPU11a、記憶部11b、RAM11c、及びROM11dを内部バスで接続している。CPU11aは記憶部11bに記憶された各種コンピュータプログラムに従って後述するコンピュータ10に関する種々の処理を行うものであり、RAM11cは処理に係る各種データ等を一時的に記憶し、ROM11dにはコンピュータ10の機能に係る内容等を記憶する。
なお、コンピュータ10の記憶部11bは、解析用のコンピュータプログラム、及びステージ4の移動制御用のコンピュータプログラム等の各種プログラムを予め記憶すると共に、ディスプレイ12へ表示するための各種メニュー画像のデータ、試料に係る既知のデータ、相異する構造のモデルパターン、モデルの作成に利用される複数の分散式、作成されたモデル、各種試料に応じたリファレンスデータ、及び干渉縞に関連した比較処理に用いる基準値等を記憶する。
有機EL素子パネル50の解析に関し、コンピュータ10は有機EL素子パネル50の有機膜56を構成する各膜層52乃至55の光学特性として屈折率及び消衰係数(以下、場合により光学定数で代表する)を解析すると共に、各膜層52乃至55の膜厚等も解析する。まず、コンピュータ10のCPU11aはスイッチング制御回路17に対し、電圧を印加させるべくオン信号を出力する。スイッチング制御回路17はこれを受けて、スイッチ172をオン状態とする。これにより、裏面陽極580及び裏面陰極590を通じて電圧が印加され、有機EL素子パネル50が発光する。
コンピュータ10は、測定された振幅比Ψ及び位相差Δから、透光性基板51、カバー部材57、及び有機EL素子パネル50の周囲雰囲気等の複素屈折率を既知とした場合に、記憶部11bに予め記憶されているモデリングプログラムを用いる。そして、ユーザに設定される試料の項目及び有機EL素子パネル50の材料構造に応じたモデルを作成して記憶部11bに記憶しておく。解析段階で記憶しているモデルを用いて有機膜56の各膜層52〜55の膜厚及び複素屈折率を求める。複素屈折率Nは、解析する膜層の屈折率n及び消衰係数kとした場合、以下の光学式で表した数式(2)の関係が成立する。
N=n−ik・・・(2)
また、入射角度をφ、光照射器3が照射する光の波長をλとすると、データ取込機8から出力されるエリプソメータで測定された振幅比Ψ及び位相差Δは、解析する膜層52〜55の膜厚d、屈折率n及び消衰係数kに対して以下の数式(3)の関係が成立する。
(d,n,k)=F(ρ)=F(Ψ(λ,φ),Δ(λ,φ))・・・(3)
コンピュータ10は、解析する膜層52〜55の膜厚、及び複数のパラメータを有する複素誘電率の波長依存性を示す分散式を用いて、記憶したモデルから理論的な演算で得られるモデルスペクトル(ΨM (λi )、ΔM (λi))(偏光状態)と、データ取込機8から出力される測定結果に係る測定スペクトル(ΨE (λi )、ΔE(λi ))(偏光状態)との差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う。なお、適用される分散式の一例を下記の数式(4)に示す。
数式(4)において左辺のεは複素誘電率を示し、ε∞、εs は誘電率を示し、Γ0 、ΓD 、γj は粘性力に対する比例係数(damping factor)を示し、ωoj、ωt 、ωp は固有角振動数(oscillator frequency, transverse frequency, plasma frequency)を示す。なお、ε∞は高周波における誘電率(high frequency dielectric constant)であり、εs は低周波における誘電率(static dielectric constant)であり、fj =(εSj−ε∞)である。また、複素誘電率ε(ε(λ)に相当)、及び複素屈折率N(N(λ)に相当)は、下記の数式(5)の関係が成立する。
ε(λ)=N2 (λ)・・・(5)
なお、フィッティングを簡単に説明すると、有機EL素子パネル50を測定した場合でT個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T)、T個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T)としたときに測定誤差は正規分布すると考えて標準偏差をσi とした際の最小二乗法に係る平均二乗誤差χ2 は下記の数式(6)で求められる。なお、Pはパラメータの数である。平均二乗誤差χ2の値が小さいときは、測定結果と作成したモデルの一致度が大きいことを意味するため、複数のモデルを比較する場合、平均二乗誤差χ2 の値が最も小さいものがベストモデルに相当する。
上述したコンピュータ10が行う試料解析に係る一連の処理は、記憶部11bに記憶された解析用のコンピュータプログラムに規定されている。本実施の形態に係る分光エリプソメータ1は、有機EL素子パネル50における複数の反射形態に対応できるように予め作成されているモデルタイプ(モデルの構造)を記憶部11bに記憶している。これらのモデルタイプの構造が、記憶部11bに記憶されるコンピュータプログラム(モデリングプログラム)が規定する処理に基づき読み出されて解析に用いられる。
本実施の形態では有機EL素子パネル50を図4に示すような形態で測定するため、有機EL素子パネル50へ照射した光Kが反射する形態として、一般に3通りの種類が想定される。1つ目の形態は有機EL素子パネル50へ入射した光Kが有機膜56と空間60の境界(有機膜56の表面56aに相当する箇所)で反射する場合(図4中、反射光K1の光路)。2つ目の形態は光Kが有機膜56及び空間60を通過してカバー部材57の内面57cで反射する場合(図4中、反射光K2の光路)。3つ目の形態はカバー部材57を通過してカバー部材57とステージ4の境界(カバー部材57の外面57fとステージ4のステージ面4aが接する箇所)とで反射する場合である(図4中、反射光K3の光路)。
なお、実際には、図4に示すように、透光性基板51表面の点P1での反射、及び透光性基板51と有機膜56の境界となる点P2での反射や多重反射も含むが、点P1、P2での反射は、解析に用いるモデルの選択に直接利用しないため、本実施の形態では扱いを省略している。また、光K、及び反射光K1〜K3等は、透光性基板51及び有機膜56等に対する入射時に屈折すると共に出射時にも屈折するが、この時入射時と出射時の角度は同じである。さらには多重反射を含めた反射光K1〜K3の全てが測定されるかは、試料の厚み寸法に依存するので、分光エリプソメータ1は、試料の厚み寸法によって、解析に用いるモデルの種類も選択している。
上述した3通りの反射形態では、光が通過する層がそれぞれ相異するため、解析に用いるモデルも実際の測定における反射形態に応じた構造のものを、透光性基板51側及びカバー部材57側のそれぞれにおいて選択する必要がある。図5は透光性基板51側から計測する際のモデルを示す説明図である。図5(a)は、図4の反射光K1に対応した構造のモデルm10を示している。モデルm10は、有機膜56での反射に対応することから、有機膜56の下方に位置する空間60をボイド層(空隙層)にして、そのボイド層S1(基板とみなす)に有機膜層L1(有機膜56に相当)、ガラス層L2(透光性基板51の表面粗さが無い部分に相当)、及びラフネス層L3(透光性基板51の表面粗さに応じた部分)が重なり合った構造にしている。
また、図5(b)は、図4の反射光K2に対応した構造のモデルm11を示している。モデルm11は、カバー部材57の内面57cでの反射に対応することから、カバー部材57を構成する材料(封止材料)を基板にみなし、その封止材料層S10(カバー部材57に係る層に相当)にボイド層L11(空間60の空隙層に相当)、有機膜層L12(有機膜56に相当)、ガラス層L13(透光性基板51の表面粗さが無い部分に相当)、及びラフネス層L14(透光性基板51の表面粗さに応じた部分)が重なり合った構造にしている。
さらに、図5(c)は、図4の反射光K3に対応した構造のモデルm12を示している。モデルm12は、カバー部材57とステージ4の境界面での反射に対応することから、カバー部材57の下方の周囲雰囲気を構成する媒体(図4では、カバー部材57とステージ4の間に存在する空間のボイド層が相当)を基板にみなし、そのボイド層(周囲雰囲気)S20(基板)に封止材料層L21(カバー部材57を構成する材料の層に相当)、ボイド層L22(空間60の空隙層に相当)、有機膜層L23(有機膜56に相当)、ガラス層L24(透光性基板51の表面粗さが無い部分に相当)、及びラフネス層L25(透光性基板51の表面粗さに応じた部分)が重なり合った構造にしている。
なお、上述した各モデルm10、m11、m12では、有機膜層L1、L12、L23を、図2(b)に示す各膜層52〜55をまとめた一つの膜層として簡易的に表している。しかし実際のモデリングにおける有機膜層L1、L12、L23は、有機EL素子パネル50の有機膜56と同様に、正孔輸送層52、発光層53、正孔ブロッキング層54、及び電子輸送層55が積層されたものになっており、各膜層52〜55に対応した膜厚が設定されるものとする。このように、各膜層52〜55に応じたモデリングを行うことで、有機膜56に含まれる各膜層52〜55の特性を解析できるようにしている。ユーザは有機EL素子パネル50の厚み等を考慮してキーボード13またはマウス14(以下、キーボード13で代表する)から、一のモデルを選択する。なお、解析対象の試料の厚み寸法が2.2mm以上である場合、反射光K3の反射方向が逸れて光取得器5の測定範囲から外れる。そのため、試料の厚み寸法が2.2mm以上である場合、反射光K3を光取得器5で測定できないので、解析に用いるモデルの構造としてモデルm10またはモデルm11を選択すればよい。
また、試料の厚み寸法が1.0mmを越えて2.2mm未満である場合、反射光K1〜K3の全てが光取得器5の測定範囲に入る可能性がある。そのため、試料の厚み寸法が1.0mmを越えて2.2mm未満である場合、解析に用いるモデルの構造として反射光K1〜K3に対応したモデルm10、m11またはm12を選択すればよい。さらに、試料の厚み寸法が1.0mm以下である場合も、反射光K1〜K3の全てが光取得器5の測定範囲に入る可能性がある。そのため、分光エリプソメータ1は試料の厚み寸法が1.0mm以下である場合、解析に用いるモデルの構造として反射光K1〜K3に対応したモデルm10、m11またはm12を選択すれば良い。
以上述べたモデルに基づくフィッティングを行うことにより、CPU11aは、有機膜56の各膜層52乃至55の膜厚及び分散式のパラメータを算出する。最後に、CPU11aは、各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の各膜層52乃至55の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する。
CPU11aは、算出した光学定数を、透光性基板51側から測定、発光させた状態で測定、及び、カバー部材57存在等の測定条件に対応づけて記憶部11bに記憶する。その後CPU11aは、スイッチング制御回路17に対し、オフ信号を出力する。スイッチング制御回路17はオフ信号を受けて、スイッチ172をオフ状態とする。これにより、直流電源171からの電圧供給が途絶え、有機EL素子パネル50は非発光状態となる。分光エリプソメータ1は上述した処理を非発光状態においても実行する。同様のフィッティング処理によりCPU11aは、有機膜56の各膜層52乃至55の膜厚及び分散式のパラメータを算出する。最後に、CPU11aは、各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の各膜層52乃至55の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する。
CPU11aは、算出した光学定数を、透光性基板51側から測定、非発光状態で測定、及び、カバー部材57存在等の測定条件に対応づけて記憶部11bに記憶する。CPU11aは、記憶部11bに記憶した発光状態における光学定数と、非発光状態における光学定数との差または比を算出する。以下では、非発光状態における光学定数に対する発光状態の光学定数の比を算出する例を挙げて説明する。なお、以下では比を変化率と読み替えて説明する。CPU11aは算出した変化率を記憶部11bに記憶する。
図6は記憶部11bの記憶内容を示すブロック図である。ハードディスクまたは大容量メモリ等で構成される記憶部11bには、上述した解析用プログラム、及び移動制御用プログラム等の各種プログラムの他、履歴ファイル110、閾値ファイル111及び第2閾値ファイル112が記憶されている。履歴ファイル110は後述するように各種情報が随時記憶される。CPU11aは、履歴ファイル110のフィールドのキーを関連づけたスキーマにおいてSQL(Structured Query Language)等のデータベースの形式に応じたアクセスインターフェースを用いて対話することにより、必要な情報の記憶、検索等の処理を実行する。
図7は記憶部11bに記憶される履歴ファイル110のレコードレイアウトを示す説明図である。履歴ファイル110は層毎に測定日時における光学定数等を記憶している。履歴ファイル110は、各層別に、測定日時フィールド、照射方向フィールド、発光状態フィールド、カバー部材の有無フィールド、光学定数フィールド内の屈折率フィールド、屈折率変化率フィールド、消衰係数フィールド、及び消衰係数変化率フィールド、膜厚フィールド並びに膜厚変化率フィールドを含んで構成される。測定日時フィールドは分光エリプソメータ1により解析を行った日時を記憶している。CPU11aは例えばデータ取込機8から振幅比Ψ及び位相差Δが出力された場合、時計部11eからの日時情報を参照して測定日時フィールドに記憶する。
照射方向フィールドには透光性基板51側から光が照射されたのか、カバー部材57側から光が照射されたのか、透光性基板51及びカバー部材57の双方向から光が照射されたかの情報が記憶される。本実施の形態においては、図4に示す如く、透光性基板51側から光を照射するので、照射方向フィールドには、透光性基板51側と記憶されている。なお、この情報はキーボード13から入力された情報に基づき、CPU11aが履歴ファイル110にいずれかの情報を記憶する。発光状態フィールドには有機EL素子パネル50が発光状態で解析されたか、または非発光状態で解析されたかの情報が記憶されている。CPU11aはスイッチング制御回路17に対し、オン信号を出力した場合は、発光状態フィールドに発光との情報を記憶する。一方、スイッチング制御回路17に対し、オフ信号を出力した場合は、発光状態フィールドに非発光との情報を記憶する。
カバー部材の有無フィールドには、ステージ上の有機EL素子510にカバー部材57が取り付けられているか否かの情報が記憶されている。カバー部材57が取り付けられている場合は有りとの情報が記憶され、取り付けられていない場合は、無しとの情報が記憶される。CPU11aは、キーボード13からカバー部材57の有無に関する情報を受け付け、受け付けた情報に基づき、カバー部材の有無フィールドに有無の情報を記憶する。なお、本実施の形態においては、カバー部材57は取り付けられているので何れも有りの情報が記憶されている。
屈折率フィールドには、CPU11aにより算出された屈折率が記憶される。屈折率変化率フィールドには、対象となる解析対象相互間の屈折率の変化率が記憶される。本例では、2007年10月15日10時11分30秒における非発光状態に係る屈折率n2に対する、その1分15秒前における発光状態に係る屈折率n1の変化率1.07(n1/n2)が記憶されている。CPU11aは解析対象となる2つの屈折率が履歴ファイル110に記憶された場合に、屈折率を読み出し、屈折率の変化率を算出する。CPU11aは算出した屈折率の変化率を発光時の屈折率に対応させて記憶する。これにより、発光させた場合にどの程度屈折率が変化するのかを把握することが可能となる。なお実施の形態で述べる変化率等の数値例はあくまで一例でありこれに限るものではない。
消衰係数フィールドには、CPU11aにより算出された消衰係数が記憶される。消衰係数変化率フィールドには、対象となる解析対象相互間の消衰係数の変化率が記憶される。本例では、2007年10月15日10時11分30秒における非発光状態に係る消衰係数k2に対する、その1分15秒前における発光状態に係る消衰係数k1の変化率0.98(k1/k2)が記憶されている。CPU11aは解析対象となる2つの消衰係数が履歴ファイル110に記憶された場合に、消衰係数を読み出し、消衰係数の変化率を算出する。CPU11aは算出した消衰係数の変化率を発光時の消衰係数に対応させて記憶する。
膜厚フィールドには、CPU11aにより算出された膜厚が記憶される。膜厚変化率フィールドには、対象となる解析対象相互間の膜厚の変化率が記憶される。本例では、2007年10月15日10時11分30秒における非発光状態に係る膜厚d2に対する、その1分15秒前における発光状態に係る膜厚d1の変化率1.001(d1/d2)が記憶されている。CPU11aは解析対象となる2つの膜厚が履歴ファイル110に記憶された場合に、膜厚を読み出し、膜厚の変化率を算出する。CPU11aは算出した膜厚の変化率を発光時の膜厚に対応させて記憶する。なお、本実施の形態においては非発光時に対する発光時の屈折率、消衰係数及び膜厚の変化率を算出する例を説明するが、これに限るものではない。反対に、発光時に対する非発光時の屈折率、消衰係数及び膜厚の変化率を算出しても良い。
さらには、発光時の膜厚、屈折率及び消衰係数と、非発光時の膜厚、屈折率及び消衰係数との差分を算出するようにしても良い。なお、上述した履歴ファイル110のレコードレイアウトは一例であり、他の形態によりデータを保持しても良いことはもちろんである。本実施の形態において図示する履歴ファイル110は特定の波長で計測した際の各種データを、一例として示すものであり、履歴ファイル110には他の波長で計測した際の各種データも同様に記憶されている。さらに、本実施の形態において図示する履歴ファイル110はステージ4における特定の座標値にて計測した際の各種データを、一例として示すものであり、履歴ファイル110には他の座標値で計測した際の各種データも同様に記憶されている。
図8は閾値ファイル111のレコードレイアウトを示す説明図である。閾値ファイル111は屈折率の変化率、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率それぞれに対応づけて閾値が記憶されている。例えば屈折率の変化率は0.94以上1.06以下と記憶されている。なおこれらの情報は製品名別に記憶されている。この閾値を超える場合、CPU11aは異常を示す情報を出力する。例えば、図7の例では、屈折率の変化率が1.07と発光時において閾値1.06を超えるのでCPU11aは異常を示す情報をディスプレイ12へ出力(表示)する。一方、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率は、何れも図7の例では閾値を超えないので、異常を示す信号が出力されない。このように、発光時において閾値を超える光学定数の変化または膜厚の変化が生じる場合は、異常を示す情報が出力されるので、ユーザはその原因等を新たなアプローチにより調査することが可能となる。なお、閾値ファイル111の記憶内容はユーザがキーボード13から適宜の値を入力することにより、変更が可能である。
図9は解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。CPU11aは発光状態及び非発光状態における光学定数及び膜厚の変化率の算出後、図9に示す異常を示す情報を含む画面を生成し、ディスプレイ12へ出力する。CPU11aは履歴ファイル110から、各層の測定日時、発光状態、光学定数、光学定数の変化率、膜厚及び膜厚の変化率等を読み出し、図9の如くディスプレイ12へ出力する。なお、本実施の形態においては有機膜56が膜層52から膜層55とする4層構造であるため、A層乃至D層それぞれ別に表示する形態につき説明するが、A層乃至D層の全てを一度に一覧表示するようにしても良い。本例ではマウス14からA層乃至D層のいずれかのタブがクリックされた場合(図9の例ではA層)に、CPU11aは履歴ファイル110及び閾値ファイル111を参照して、図9に示す解析結果の画面を生成し、ディスプレイ12へ出力する。
CPU11aは閾値ファイル111を参照し、屈折率の変化率、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率がそれぞれの閾値を超える場合、異常を示す情報をディスプレイ12へ出力または図示しないスピーカ等から音声を出力する。本実施の形態においては、図9に示す解析結果の画面内に、異常項目に白色である背景色とは異なる赤色等の着色を施すことにより、異常を通知する。例えば、図9の例では屈折率の変化率に異常があるので、CPU11aは屈折率の変化率の欄に着色を施す処理を行う(図ではハッチングで示す。)。同様に、CPU11aは消衰係数の変化率または膜厚の変化率に異常がある場合も、背景色とは異なる着色を施す処理を行う。
さらにCPU11aは各層の異常状態を容易に識別できるよう、以下の画像処理を行っても良い。CPU11aは各層について矩形状の枠を描画し、屈折率の変化率、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率の異常をそれぞれ識別できる形態で、層別に異常状態を出力する。例えば、CPU11aは、屈折率の変化率に異常がある場合、右に傾斜するハッチング処理を、層を示す枠内に描画する。また、CPU11aは消衰係数の変化率に異常がある場合、左に傾斜するハッチング処理を、層を示す枠内に描画する。さらに、CPU11aは、膜厚の変化率に異常がある場合、該当する層の枠の側面に、上下方向を示す矢印を描画する。CPU11aは、層の数、閾値ファイル111及び履歴ファイル110を参照し、層の数に対応する枠の描画、層に係る枠に対応する層の名前(A層乃至D層)の記述、及び上述した描画処理を行う。
D層は図2(b)に示す膜層52、C層は膜層53、B層は膜層54、A層は膜層55に該当する。CPU11aは透光性基板51からカバー部材57へ向かう各層と各枠体とを対応付け、各層のデータに異常が存在する場合は、対応する枠体に異常を示す情報を表示する。図9の例では、A層に屈折率の異常が認められ、B層には膜厚の異常が認められ、C層には、屈折率及び消衰係数の異常が認められる。なお、D層には何の異常も認められないことが理解できる。さらにCPU11aは透光性基板51側またはカバー部材57側何れにより計測されたか、また、各層の配置関係を明確にすべく、透光性基板51に対応する枠体を他の枠体よりも大きい形態で表示する。
具体的には、CPU11aは、履歴ファイル110の照射方向フィールドに透光性基板51側と記憶されている場合、透光性基板51上に積層された層(本例ではD層)の枠体が最上層となるよう、全ての層に係る矩形状の枠体をディスプレイ12に表示する。これらと共に、各層の枠体よりも長手方向が長く、また面積の大きい矩形状の枠体を、透光性基板の文字と共に最上層の上側に隣接させて表示する。なお本実施の形態においては、図9に示す如く層別に各種データを表示したが、全層を全て表示しても良いことはもちろんである。
以上のハードウェア構成において各ソフトウェア処理の手順を、フローチャートを用いて説明する。図10及び図11は測定スペクトルの測定手順を示すフローチャートである。ユーザは有機EL素子パネル50を、透光性基板51が上向きとなる状態で、ステージ4上に載置する(ステップS101)。すなわち、透光性基板51が光照射器3の光照射面及び光取得器5の光取得面に対向するようカバー部材57をステージ4に当接させた状態で載置する。CPU11aはキーボード13から入力された照射方向の情報を受け付ける(ステップS102)。これは、透光性基板51側からか、またはカバー部材57側からかの情報を受け付ける。
CPU11aはカバー部材57の存否に関する情報を、キーボード13から受け付ける(ステップS103)。これはカバー部材57が存在するか否かの情報である。CPU11aはキーボード13から有機EL素子パネル50を発光させる旨の指示があったか否かを判断する(ステップS104)。CPU11aはキーボード13から発光の指示を受け付けたと判断した場合(ステップS104でYES)、スイッチング制御回路17へオン信号を出力する(ステップS105)。これによりスイッチ172がオンとなり、有機EL素子パネル50が点灯する。CPU11aは時計部11eの出力を参照し日時情報を取得する(ステップS106)。
CPU11aはステップS106で取得した日時情報に基づく測定日時、ステップS104の情報受け付けに基づく発光状態、ステップS102の情報受け付けに基づく照射方向、及び、ステップS103の情報受け付けに基づくカバー部材57の情報を、図7の如く測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS107)。分光エリプソメータ1は、光照射器3及び光取得器5を用いて、図4に示すように透光性基板51へ向けて光を照射し、発光時における、透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを測定する(ステップS108)。CPU11aはデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを受け付け、受け付けた測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを、測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS109)。
ステップS104において、CPU11aは発光の指示を受け付けていない場合(ステップS104でNO)、スイッチング制御回路17へオフ信号を出力する(ステップS111)。この場合、有機EL素子パネル50は発光しない。CPU11aは時計部11eの出力を参照し日時情報を取得する(ステップS112)。
CPU11aはステップS112で取得した日時情報に基づく測定日時、ステップS104の情報受け付けに基づく発光状態、ステップS102の情報受け付けに基づく照射方向、及び、ステップS103の情報受け付けに基づくカバー部材57の情報を、図7の如く測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS113)。分光エリプソメータ1は、光照射器3及び光取得器5を用いて、図4に示すように透光性基板51へ向けて光を照射し、非発光時における、透光性基板51側の測定スペクトルΨEg、ΔEgを測定する(ステップS114)。
CPU11aはデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨEg、ΔEgを受け付け、受け付けた測定スペクトルΨEg、ΔEgを、測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS115)。CPU11aは発光時及び非発光時双方の測定を終了したか否かを判断する(ステップS116)。具体的には、CPU11aは、履歴ファイル110に発光時における測定スペクトル及び非発光時における測定スペクトルが記憶されているか否かを判断する。CPU11aは双方の測定を終了していないと判断した場合(ステップS116でNO)、ステップS104へ移行し以上の処理を繰り返す。一方、双方の測定を終了したと判断した場合(ステップS116でYES)、一連の処理を終了する。
図12及び図13は変化率算出処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aはキーボード13からモデルの選択を受け付ける(ステップS121)。このモデルの選択は透光性基板51側のモデルとして図5(a)〜(c)に示すモデルm10乃至m12からモデルを選択する。モデルの選択は、有機EL素子パネル50の厚み等により適宜のものを選択すれば良い。なお、本実施の形態においては、透光性基板51側のモデルとして図5(b)に示すモデルm11が選択されたものとして説明する。
CPU11aは、選択されたモデルを記憶部11bから読み出す(ステップS122)。そして、CPU11aは、選択されたモデルm11に対応して、予め記憶されていた初期値となる複数の膜厚及び複数の分散式のパラメータを記憶部11bから読み出し、キーボード13から、各モデルの選択を受け付け(ステップS123)、各モデルを確定する。CPU11aは読み出したモデルに基づき、透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgを算出し、結果を記憶部11bに記憶する(ステップS124)。
CPU11aはステップS109で記憶した発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを読み出す(ステップS125)。CPU11aは、この読み出した測定スペクトルΨEgv、ΔEgvと、透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgとに基づいて、フィッティングを行う(ステップS126)。具体的には、CPU11aは、フィッティングのため読み出した、発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgvとモデルスペクトルΨMg、ΔMgとを比較し測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う。CPU11aはこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。平均二乗誤差χ2 は上述した数式(2)により算出することができる。
フィッティングの結果としてCPU11aは算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS127)。なお、この所定値は記憶部11bに記憶されている。CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2が所定値以下でないと判断した場合(ステップS127でNO)、各モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再び透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgを算出する(ステップS128)。なお、この変更はCPU11aによる変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。その後、再びステップS126へ移行し、同様の処理を繰り返す。
なお、本実施の形態においては、透光性基板51側及びカバー部材57側のモデルの初期膜厚及び分散式のパラメータを変更して透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgを算出するよう説明したが、透光性基板51側において適用するモデル自体を変更しても良い。例えば、透光性基板51側のモデルとして、図5(a)のモデルを用いる。その他、これらとは異なるモデル(例えば図5(c)のモデル)を記憶部11bから読み出し、この異なるモデルの初期膜厚及び分散式のパラメータを変更して、モデルスペクトルΨMg、ΔMgを算出するようにしても良い。なお、この変更はCPU11aによる変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。その他のモデルとしては例えば、図5(b)の有機膜層L12とボイド層L11との間に膜厚dのラフネス層がさらに存在するモデルが該当する。これら異なるモデルに対するモデルスペクトルを算出するためのモデルは記憶部11bに記憶されており、CPU11aはこのモデルを新たに読み出し、モデルスペクトルΨMg、ΔMgを算出する。なお、この変更はCPU11aによる変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。
CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であると判断した場合(ステップS127でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき値として決定する(ステップS129)。なお、ステップS127の処理においては、所定の値以下となるまで、処理を行うようにしている。しかし、所定時間内に各モデルへ設定すべき初期膜厚及び分散式のパラメータを逐次変更し、所定時間内で最小の平均二乗誤差をとる場合の膜厚及び分散式のパラメータを結果として採用するようにしても良い。また入射角度φ及び反射角度φを逐次変更し、平均二乗誤差が最小となる場合の膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき値として決定しても良い。例えば、入射角度φ1、反射角度φ1 において、所定時間各モデルの膜厚及び分散式のパラメータを変更して最小の平均二乗誤差χ2 1 を算出する。その後、入射角度をφ2 、反射角度をφ2 へ物理的に変更し、所定時間各モデルの膜厚及び分散式のパラメータを変更して最小の平均二乗誤差χ2 2 を算出する。さらにその後、入射角度をφ3 、反射角度をφ3 へ物理的に変更し、所定時間各モデルの膜厚及び分散式のパラメータを変更して最小の平均二乗誤差χ2 3 を算出する。分光エリプソメータ1は、入射角度φ1 、入射角度φ2 、及び入射角度φ3 (反射角度φ1 、反射角度φ2 、及び反射角度φ3 )それぞれの平均二乗誤差χ2 1 、平均二乗誤差χ2 2 、及び平均二乗誤差χ2 3をそれぞれ比較し、最小となる平均二乗誤差をとる入射角度における膜厚及び分散式のパラメータを結果として採用する。なお、物理的に入射角度及び反射角度を変える他、入射角度及び反射角度を一定のままで、値を適宜変更するようにしても良い。また入射角度自体をフィッティングのパラメータの一つとすることも可能である。
CPU11aは、各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の各膜層52乃至55の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する(ステップS131)。CPU11aは算出した屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110の発光時のレコードに対応づけて記憶する(ステップS132)。なおCPU11aは、透光性基板51に当接する膜層52(D層)、膜層52に当接する膜層53(C層)、膜層53に当接する膜層54(B層)、及び、膜層54に当接する膜層55(A層)に対応づけて、発光時における各層の屈折率、消衰係数及び膜厚を記憶する。次いで、CPU11aは、非発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEg、ΔEgを読み出す(ステップS133)。CPU11aは、この読み出した測定スペクトルΨEg、ΔEgと、透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgとに基づいて、フィッティングを行う(ステップS134)。CPU11aはこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。平均二乗誤差χ2 は上述した数式(2)により算出することができる。
フィッティングの結果としてCPU11aは算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS135)。CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下でないと判断した場合(ステップS135でNO)、各モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再び透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgを算出する(ステップS136)。その後、再びステップS134へ移行し、同様の処理を繰り返す。
CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であると判断した場合(ステップS135でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき値として決定する(ステップS137)。CPU11aは、各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の各膜層52乃至55の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する(ステップS138)。CPU11aは算出した屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110の非発光時のレコードに対応づけて記憶する(ステップS139)。なおCPU11aは、透光性基板51に当接する膜層52(D層)、膜層52に当接する膜層53(C層)、膜層53に当接する膜層54(B層)、及び、膜層54に当接する膜層55(A層)に対応づけて、非発光時における各層の屈折率、消衰係数及び膜厚を記憶する。
CPU11aは履歴ファイル110を参照し、非発光時における屈折率に対する発光時における屈折率の変化率、非発光時における消衰係数に対する発光時における消衰係数の変化率、及び、非発光時における膜厚に対する発光時における膜厚の変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する(ステップS1310)。CPU11aは閾値ファイル111を参照し、ステップS1310で算出した各変化率が閾値を超えるか否かを判断する(ステップS1311)。CPU11aはいずれかの変化率が閾値を超えると判断した場合(ステップS1311でYES)、異常を示す情報を各層に対応する屈折率、消衰係数または膜厚に関連づけてディスプレイ12へ表示する(ステップS1312)。具体的には、CPU11aは屈折率、消衰係数または膜厚に対応させて、異常を示す情報を変化率と共にディスプレイ12に表示する。またCPU11aは層数に応じた枠体を図9の如く積層させてディスプレイ12へ表示する(ステップS1313)。具体的には、透光性基板51上に積層された膜層52(D層)の枠体が最上層となるよう、全ての層に係る矩形状の枠体をディスプレイ12に表示する。より詳細には、膜層52(D層)、膜層53(C層)、膜層54(B層)、及び、膜層55(A層)の順に上から下に対応する枠体が表示される。
CPU11aは、表示した各層の枠体に屈折率、変化率または膜厚に係る異常を示す情報を表示する(ステップS1314)。具体的には、CPU11aは、屈折率の変化率が閾値を超える場合、屈折率に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。また、CPU11aは消衰係数の変化率が閾値を超える場合、消衰係数に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。さらに、CPU11aは膜厚の変化率が閾値を超える場合、膜厚に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。
CPU11aは、履歴ファイル110の照射方向フィールドに透光性基板51側と記憶されている場合、ステップS1313にて表示した枠体に加えて、これらの枠体よりも長手方向が長く、また面積の大きい矩形状の枠体を、透光性基板の文字と共に最上層の上側に隣接させて表示する(ステップS1315)。CPU11aはステップS1311において、屈折率、消衰係数及び膜厚の変化率が閾値を超えていないと判断した場合(ステップS1311でNO)、ステップS1312乃至S1315の処理をスキップし、有機EL素子パネル50は適正であるとして処理を終了する。
次いで経年変化を解析する場合の例を説明する。図14は履歴ファイル110のレコードレイアウトを示す説明図である。図14の例は図7及び図9で解析した後の、1年後のレコードレイアウトを示している。例えば、有機EL素子パネル50完成から1年後の2008年10月15日10時10分15秒に1年前と同一の有機EL素子パネル50を発光させ屈折率、消衰係数及び膜厚がどの程度変化するかを解析する。同様に、例えば、有機EL素子パネル50完成から1年後の2008年10月15日10時11分30秒に1年前と同一の有機EL素子パネル50を非発光の状態で屈折率、消衰係数及び膜厚がどの程度変化するかを解析する。なお、1年とした期間は一例であり、一ヶ月など適宜の期間とすればよい。
CPU11aは、上述した処理により、発光状態及び非発光状態において屈折率、消衰係数及び膜厚を算出し、履歴ファイル110に算出結果を記憶する。図14の例では、1年後における発光時の屈折率がn3、非発光時の屈折率がn4と記憶されている。CPU11aは上述した処理と同様に非発光時に対する発光時の変化率を算出し、履歴ファイル110に算出結果を記憶する。図14の例では、屈折率変化率が1.01と記憶されている。また、1年後における発光時の消衰係数はk3、非発光時の消衰係数はk4、消衰係数の変化率は0.96と記憶され、1年後における発光時の膜厚はd3、非発光時の膜厚はd4、膜厚の変化率は1.01と記憶されている。なおこれらの情報は製品名別に記憶されている。
図14に示す履歴ファイル110はさらに、経年変化率フィールドが設けられている。屈折率の経年変化率フィールドには、発光させた状態において、1年前の屈折率に対する1年後の屈折率の変化率(以下、発光時の屈折率の経年変化率)が記憶されている。CPU11aは履歴ファイル110の測定日時、発光状態及び屈折率を参照し、発光時の屈折率の経年変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する。本例では、n3÷n1により発光時の屈折率の経年変化率0.99が算出されている。さらに屈折率の経年変化率フィールドには、非発光の状態において、1年前の屈折率に対する1年後の屈折率の変化率(以下、非発光時の屈折率の経年変化率)が記憶されている。CPU11aは履歴ファイル110の測定日時、発光状態及び屈折率を参照し、非発光時の屈折率の経年変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する。本例では、n4÷n2により非発光時の屈折率の経年変化率0.95が算出されている。
消衰係数の経年変化率フィールドには、発光させた状態において、1年前の消衰係数に対する1年後の消衰係数の変化率(以下、発光時の消衰係数の経年変化率)が記憶されている。CPU11aは履歴ファイル110の測定日時、発光状態及び消衰係数を参照し、発光時の消衰係数の経年変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する。さらに消衰係数の経年変化率フィールドには、非発光の状態において、1年前の消衰係数に対する1年後の消衰係数の変化率(以下、非発光時の消衰係数の経年変化率)が記憶されている。CPU11aは履歴ファイル110の測定日時、発光状態及び消衰係数を参照し、非発光時の消衰係数の経年変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する。
膜厚の経年変化率フィールドには、発光させた状態において、1年前の膜厚に対する1年後の膜厚の変化率(以下、発光時の膜厚の経年変化率)が記憶されている。CPU11aは履歴ファイル110の測定日時、発光状態及び膜厚を参照し、発光時の膜厚の経年変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する。さらに膜厚の経年変化率フィールドには、非発光の状態において、1年前の膜厚に対する1年後の膜厚の変化率(以下、非発光時の膜厚の経年変化率)が記憶されている。CPU11aは履歴ファイル110の測定日時、発光状態及び膜厚を参照し、非発光時の膜厚の経年変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する。
図15は第2閾値ファイル112のレコードレイアウトを示す説明図である。第2閾値ファイル112は、有機EL素子パネル50完成時からの経過月または年別に、各経年(月)変化率に対する閾値が記憶されている。具体的には、発光時の屈折率の経年変化率に対する閾値、発光時の消衰係数の経年変化率に対する閾値、発光時の膜厚の経年変化率に対する閾値、非発光時の屈折率の経年変化率に対する閾値、非発光時の消衰係数の経年変化率に対する閾値、及び、非発光時の膜厚の経年変化率に対する閾値が、月、及び、年別に記憶されている。図15の例では、1月後、2月後、・・・1年後、・・・と経過した月または経過した年別にこれらの閾値が予め記憶されている。図15に表示する例は、有機EL素子パネル50の完成後1年経過した後の各経年変化率の閾値を示す。例えば、発光時の屈折率の経年変化率は、0.96以上1.04以下と記憶されている。なお、本実施の形態においては、有機EL素子パネル50の完成時を起算点として、経年変化を解析する例を示すが、有機EL素子パネル50完成後の任意の時期を起算点としても良いことはもちろんである。また第2閾値ファイル112に記憶した閾値はキーボード13から適宜変更が可能である。なおこれらの情報は製品名別に記憶されている。
図16は解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。図16に示すように、ディスプレイ12左側には、発光時及び非発光時それぞれの経年変化率、並びに、右側に異常を示す情報が表示され、右側には発光時及び非発光時それぞれの経年変化率に基づく異常を画像処理により表示している。CPU11aは図14に示す履歴ファイル110を参照し、測定日時に対する経年変化率を層別にディスプレイ12へ表示する。図16に示すように、1年後及び2年後の発光時の屈折率経年変化率、発光時の消衰係数経年変化率、発光時の膜厚経年変化率、非発光時の屈折率経年変化率、非発光時の消衰係数経年変化率、及び、非発光時の膜厚経年変化率がCPU11aの指示のもと表示される。
CPU11aは、さらに、第2閾値ファイル112を参照し、経過年に対応する屈折率、消衰係数及び膜厚の閾値を読み出す。そしてCPU11aは図16の表示のために読み出した発光時の屈折率経年変化率、発光時の消衰係数経年変化率、及び、発光時の膜厚経年変化率が発光時の屈折率、消衰係数及び膜厚の閾値を超えるか否かを判断する。CPU11aは超えると判断した場合、該当する経年変化率に対し、背景色とは異なる色を、異常を示す情報としてディスプレイ12に表示する。同様に、CPU11aは図16の表示のために読み出した非発光時の屈折率経年変化率、非発光時の消衰係数経年変化率、及び、非発光時の膜厚経年変化率が非発光時の屈折率、消衰係数及び膜厚の閾値を超えるか否かを判断する。CPU11aは超えると判断した場合、該当する経年変化率に対し、背景色とは異なる色を、異常を示す情報としてディスプレイ12に表示する。図16の例では、発光状態においてA層の消衰係数が2年後に異常有りと認識することができる。
さらにCPU11aは経過年毎に、有機膜56の層A乃至Dに応じた枠体をディスプレイ12へ表示する。そしてCPU11aは上述した処理により異常を示す経年変化率に対応する枠体に、屈折、消衰係数または膜厚のいずれかに対応する画像を付加する処理を行う。図16の例では1年後の発光時における各層の状態、及び、2年後の発光時における各層の状態を示している。1年後ではC層が屈折率に異常が存在していることが理解できる。さらに2年後ではC層に屈折率及び消衰係数の異常、D層に膜厚の異常、及びA層に消衰係数の異常が存在していることが理解できる。これにより、ユーザは経年変化の影響を容易に把握することが可能となる。なお、図9にて説明した如く、透光性基板51に対応する枠体を他の枠体と共に表示しても良い。
図17及び図18は経年変化率の記憶及び表示処理の手順を示すフローチャートである。図12及び図13で述べた処理によりCPU11aは発光時における屈折率、消衰係数、及び膜厚を算出し、測定日時に対応づけて履歴ファイル110にこれらの算出結果を記憶する(ステップS171)。同様に、CPU11aは非発光時における屈折率、消衰係数、及び膜厚を算出し、測定日時に対応づけて履歴ファイル110にこれらの算出結果を記憶する(ステップS172)。ステップS171及びS172の処理は例えば有機EL素子パネル50の完成時若しくは完成時から所定の日数内(例えば10日以内)、1年後、並びに、2年後等に実行される。CPU11aは完成段階における発光時及び非発光時の屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110から、測定日時をもとに読み出す(ステップS173)。
CPU11aは発光時における屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化について、ステップS171で算出した屈折率、消衰係数、及び、膜厚を、ステップS173で読み出した完成段階における屈折率、消衰係数、及び膜厚で除すことにより、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率を算出し、算出したそれぞれの経年変化率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS174)。なお、ステップS174の処理は各層について別々に行う。次いで、CPU11aは非発光時における屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化について、ステップS172で算出した屈折率、消衰係数、及び、膜厚を、ステップS173で読み出した完成段階における屈折率、消衰係数、及び膜厚で除すことにより、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率を算出し、算出したそれぞれの経年変化率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS175)。なお、ステップS175の処理は各層について別々に行う。
CPU11aは履歴ファイル110を参照し、測定日時、並びに、屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化率を読み出し、図16の如くディスプレイ12に表示する(ステップS176)。層別に測定日時に対応して、発光時または非発光時の経年変化率が表示される。CPU11aは読み出した完成段階の測定日時から該当する測定日時までの期間である該当年度に係る閾値を、第2閾値ファイル112から読み出す(ステップS177)。具体的には、CPU11aは履歴ファイル110に記憶されている最初の測定日時と、各測定日時との間隔を算出し、算出した間隔に最も近い期間に対応する閾値を第2閾値ファイル112から読み出す。CPU11aは読み出した発光時の屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び、膜厚経年変化率と、読み出した発光時の屈折率経年変化率に係る閾値、消衰係数経年変化率に係る閾値、及び、膜厚経年変化率に係る閾値とを比較し、閾値を超えるものを抽出する。
同様に、CPU11aは読み出した非発光時の屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び、膜厚経年変化率と、読み出した非発光時の屈折率経年変化率に係る閾値、消衰係数経年変化率に係る閾値、及び、膜厚経年変化率に係る閾値とを比較し、閾値を超えるものを抽出する。CPU11aは閾値を超える屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び膜厚経年変化率に対し、図16の如く異常を示す情報をディスプレイ12に表示する(ステップS178)。この表示処理は発光時及び非発光時それぞれについて層別に行われる。
CPU11aは記憶部11bに記憶した層数に応じた枠体を読み出して生成し、ディスプレイ12に表示する(ステップS179)。なおこの場合、CPU11aは、履歴ファイル110を参照し、生成した各枠体と、有機膜56が有する各層との関連づけを行う。CPU11aは記憶部11bに記憶した屈折率、消衰係数、または膜厚別に異常を示す情報を読み出す。そして、CPU11aは、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率が閾値を超える層の枠体に、屈折率、消衰係数、または膜厚の異常を示す情報を合成した画像を生成し、測定日時に対応づけて記憶部11bに記憶する(ステップS181)。なお、図16に示すように、透光性基板51側から計測を実施したことを明確にすべく、透光性基板51を示す枠体を有機膜56の各層を示す枠体上に表示しても良い。この場合、CPU11aは、記憶部11bに記憶した描画ソフトウェアを実行し、有機膜56の各層を示す枠体よりも、長手方向が長い矩形状の枠体を作成し、当該作成した枠体を有機膜56の最上層の枠体上に記述する。
CPU11aは当該生成した合成画像を図16の如くディスプレイ12に表示する(ステップS182)。CPU11aは記憶部11b及び履歴ファイル110を参照し、他の測定日時に対応する合成画像が記憶されているか否かを判断する(ステップS183)。CPU11aは他の測定日時に対応する合成画像が記憶されていると判断した場合(ステップS183でYES)、例えば図16の如く、1年後のみならず2年後の合成画像が記憶されている場合、当該記憶された合成画像を読み出す(ステップS184)。CPU11aは測定日時に基づき、合成画像を時系列にディスプレイ12に表示する(ステップS185)。これにより、既に生成された合成画像が時系列で表示されることから、ユーザは各有機膜56の経年変化を視覚的に、また、段階的に、把握することが可能となる。一方、CPU11aは他の測定日時に対応する合成画像が記憶されていないと判断した場合(ステップS183でNO)、例えば1年分の合成画像しか記憶されていない場合、ステップS184及びS185の処理をスキップし処理を終了する。
実施の形態2
実施の形態2はカバー部材57側から有機EL素子パネル50を解析する形態に関する。図19は有機EL素子パネル50をカバー部材57側から計測する際の光の入射及び反射状態を示す模式的断面図である。有機EL素子パネル50は、カバー部材57側から光を照射すべく、透光性基板51がステージ4に接触する方向にて載置される。分光エリプソメータ1は、カバー部材57へ向けて偏光状態の光Kを照射し、カバー部材57及び空間60を通過した光Kは、複数の膜層52乃至55(図2(b)参照)で構成される有機膜56に到達する。さらに光Kは有機膜56を通過してから、有機膜56と透光性基板51の境界で反射する場合(反射光K10の場合)と、透光性基板51も通過して透光性基板51とステージ4の境界で反射する場合(反射光K11の場合)が生じる。なお、いずれの反射光K10、K11もカバー部材57から出射して光取得器5で取得されて、偏光状態が測定される。
なお、図19においても実際には、カバー部材57表面での反射(P10)、カバー部材57内面での反射(P20)、及び有機膜56表面での反射(P30)や多重反射も含むが、このような反射(P10、P20、P30)も、解析に用いるモデルの選択に直接利用しないため扱いを省略している。
図19に示す有機EL素子パネル50の載置形態で試料の解析を行う場合、解析に用いるモデルには、上述した反射光K10、K11に応じた構造のものを用いる必要がある。図20はカバー部材57側から計測する際のモデルを示す説明図である。図20(a)は、反射光K10に応じた構造のモデルm20を示している。モデルm20は、最下方の透光性基板51をガラス層(S30)にして、その上に有機膜層L31(有機膜56に相当)、ボイド層L32(空間60に相当)、封止材料層L33(カバー部材57の表面粗さが無い部分に相当)、及びラフネス層L34(カバー部材57の表面粗さに応じた部分)が重なり合った構造にしている。なお、モデルm20の各層の厚みd31〜d34は、準備段階でユーザから入力される値により設定される。
一方、図20(b)は、反射光K11に応じた構造のモデルm21を示している。モデルm21は、透光性基板51の下方の周囲雰囲気を構成する媒体(図19では、透光性基板51とステージ4の間に存在する空間のボイド層が相当)を基板にみなす。そのボイド層S40(基板)にガラス層L41(透光性基板51に相当)、有機膜層L42(有機膜56に相当)、ボイド層L43(空間60に相当)、封止材料層L44(カバー部材57の表面粗さが無い部分に相当)、及びラフネス層L45(カバー部材57の表面粗さに応じた部分)が重なり合った構造にしている。なお、モデルm21の各層の厚みd41〜d45は、準備段階でユーザから入力された値により設定される。ユーザはキーボード13またはマウス14から採用するモデルを選択する。
図21はステージ4に有機EL素子パネル50を載置した状態を示す模式的斜視図である。本実施の形態においてはカバー部材57側から光を照射して解析を実行すべく、透光性基板51をステージ4に当接させた状態で載置する。平面視矩形状の透光性基板51側一側辺表面には陽極58と導通する表面陽極581が形成されている。また透光性基板51側他側表面には陰極59と導通する表面陰極591が形成されている。平面視矩形状のステージ4の一側には導通スタンド175が突設されており、導通スタンド175の先端付近からはプローブ176がY正方向へ向けて延設されている。
同様に、ステージ4の他側には導通スタンド173が突設されており、導通スタンド375の先端付近からはプローブ174がX負方向へ向けて延設されている。プローブ176は導通スタンド175を介して直流電源171の陽極に接続される。またプローブ174は導通スタンド173を介して直流電源171の陰極に接続される。有機EL素子パネル50を発光させる場合、プローブ176の先端を表面陽極581に接触させ、またプローブ174の先端を表面陰極591に当接させる。この状態で、スイッチング制御回路17はスイッチ172をオンとする。これにより直流電源171により有機EL素子パネル50に電圧が印加され発光することとなる。CPU11aの指示に従い、スイッチング制御回路17がスイッチ172をオフとした場合、電圧が非印加の状態となり、有機EL素子パネル50は非発光状態となる。
図22は記憶部11bに記憶される履歴ファイル110のレコードレイアウトを示す説明図である。履歴ファイル110は層毎に測定日時における光学定数等を記憶している。履歴ファイル110は、各層別に、測定日時フィールド、照射方向フィールド、発光状態フィールド、カバー部材の有無フィールド、光学定数フィールド内の屈折率フィールド、屈折率変化率フィールド、消衰係数フィールド、及び消衰係数変化率フィールド、膜厚フィールド並びに膜厚変化率フィールドを含んで構成される。実施の形態1で述べた図7に示す履歴ファイル110と異なり、照射方向フィールドには、カバー部材57側の情報が記憶されている。CPU11aは測定日時に対応させて実施の形態1で述べた処理と同様の処理を行うことにより、カバー部材57側から計測した場合の、発光時及び非発光時それぞれの屈折率変化率、消衰係数変化率及び膜厚変化率を記憶する。他の構成については実施の形態1で述べたとおりであるので詳細な説明は省略する。
図23は解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。CPU11aは発光状態及び非発光状態における光学定数及び膜厚の変化率の算出後、図23に示す異常を示す情報を含む画面を生成し、ディスプレイ12へ出力する。CPU11aは履歴ファイル110から、各層の測定日時、発光状態、光学定数、光学定数の変化率、膜厚及び膜厚の変化率等を読み出し、図23の如くディスプレイ12へ出力する。CPU11aは閾値ファイル111を参照し、屈折率の変化率、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率がそれぞれの閾値を超える場合、異常を示す情報をディスプレイ12へ表示する。図23の例では、カバー部材57側から測定した場合、屈折率変化率に異常が存在することが認められる。
またCPU11aは各層の異常状態を容易に識別できるよう、以下の画像処理を行う。CPU11aは各層について矩形状の枠を描画し、屈折率の変化率、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率の異常をそれぞれ識別できる形態で、層別に異常状態を出力する。CPU11aは、層の数、閾値ファイル111及び履歴ファイル110を参照し、層の数に対応する枠の描画、層に係る枠に対応する層の名前(A層乃至D層)の記述、及び上述した描画処理を行う。
A層は図2(b)に示す膜層55、B層は膜層54、C層は膜層53、D層は膜層52に該当する。CPU11aはカバー部材57から透光性基板51へ向かう各層と各枠体とを対応付け、各層のデータに異常が存在する場合は、対応する枠体に異常を示す情報を表示する。図23の例では、A層に屈折率の異常が認められ、B層には膜厚の異常が認められ、C層には、屈折率及び消衰係数の異常が認められる。なお、D層には何の異常も認められないことが理解できる。さらにCPU11aは透光性基板51側またはカバー部材57側何れにより計測されたか、また、各層の配置関係を明確にすべく、カバー部材57に対応するC字型の枠体を表示する。具体的には、CPU11aは、履歴ファイル110の照射方向フィールドにカバー部材57側と記憶されている場合、透光性基板51上に積層された層(本例ではD層)の枠体が最下層、カバー部材57に最も近接する層(本例ではA層)が最上層となるよう、全ての層に係る矩形状の枠体をディスプレイ12に表示する。さらに、CPU11aは、最下層側に向けて開口するC字型の枠体を、各枠体を覆うようにカバー部材の文字と共に表示する。
図24及び図25は測定スペクトルの測定手順を示すフローチャートである。ユーザは有機EL素子パネル50を、カバー部材57が上向きとなる状態で、ステージ4上に載置する(ステップS241)。すなわち、カバー部材57が光照射器3の光照射面及び光取得器5の光取得面に対向するよう透光性基板51をステージ4に当接させた状態で載置する。CPU11aはキーボード13から入力された照射方向の情報を受け付ける(ステップS242)。
CPU11aはカバー部材57の存否に関する情報を、キーボード13から受け付ける(ステップS243)。CPU11aはキーボード13から有機EL素子パネル50を発光させる旨の指示があったか否かを判断する(ステップS244)。CPU11aはキーボード13から発光の指示を受け付けたと判断した場合(ステップS244でYES)、スイッチング制御回路17へオン信号を出力する(ステップS245)。これによりスイッチ172がオンとなり、有機EL素子パネル50が点灯する。CPU11aは時計部11eの出力を参照し日時情報を取得する(ステップS246)。
CPU11aはステップS246で取得した日時情報に基づく測定日時、ステップS244の情報受け付けに基づく発光状態、ステップS242の情報受け付けに基づく照射方向、及び、ステップS243の情報受け付けに基づくカバー部材57の情報を、図22の如く測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS247)。分光エリプソメータ1は、光照射器3及び光取得器5を用いて、図19に示すようにカバー部材57へ向けて光を照射し、発光時における、カバー部材57側の測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを測定する(ステップS248)。CPU11aはデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを受け付け、受け付けた測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを、測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS249)。
ステップS244において、CPU11aは発光の指示を受け付けていない場合(ステップS244でNO)、スイッチング制御回路17へオフ信号を出力する(ステップS251)。この場合、有機EL素子パネル50は発光しない。CPU11aは時計部11eの出力を参照し日時情報を取得する(ステップS252)。なお、CPU11aはステップS244へ移行後一定時間経過しない場合は、オフ信号を出力することなくステップS252へ移行しても良い。
CPU11aはステップS252で取得した日時情報に基づく測定日時、ステップS244の情報受け付けに基づく発光状態、ステップS242の情報受け付けに基づく照射方向、及び、ステップS243の情報受け付けに基づくカバー部材57の情報を、図22の如く測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS253)。分光エリプソメータ1は、光照射器3及び光取得器5を用いて、図19に示すようにカバー部材57へ向けて光を照射し、非発光時における、カバー部材57側の測定スペクトルΨEc、ΔEcを測定する(ステップS254)。
CPU11aはデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨEc、ΔEcを受け付け、受け付けた測定スペクトルΨEc、ΔEcを、測定日時に対応づけて履歴ファイル110に記憶する(ステップS255)。CPU11aは発光時及び非発光時双方の測定を終了したか否かを判断する(ステップS256)。具体的には、CPU11aは、履歴ファイル110に発光時における測定スペクトル及び非発光時における測定スペクトルが記憶されているか否かを判断する。CPU11aは双方の測定を終了していないと判断した場合(ステップS256でNO)、ステップS244へ移行し以上の処理を繰り返す。一方、双方の測定を終了したと判断した場合(ステップS256でYES)、一連の処理を終了する。
図26及び図27は変化率算出処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aはキーボード13からモデルの選択を受け付ける(ステップS261)。このモデルの選択はカバー部材57側のモデルとして図20(a)及び(b)に示すモデルm20またはm21からモデルを選択する。モデルの選択は、有機EL素子パネル50の厚み等により適宜のものを選択すれば良い。
CPU11aは、選択されたモデルを記憶部11bから読み出す(ステップS262)。そして、CPU11aは、選択されたモデルに対応して、予め記憶されていた初期値となる複数の膜厚及び複数の分散式のパラメータを記憶部11bから読み出し、キーボード13から、各モデルの選択を受け付け(ステップS263)、各モデルを確定する。CPU11aは読み出したモデルに基づき、カバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出し、結果を記憶部11bに記憶する(ステップS264)。
CPU11aはステップS249で記憶した発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを読み出す(ステップS265)。CPU11aは、この読み出した測定スペクトルΨEcv、ΔEcvと、カバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcとに基づいて、フィッティングを行う(ステップS266)。具体的には、CPU11aは、フィッティングのため読み出した、発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEcv、ΔEcvとモデルスペクトルΨMc、ΔMcとを比較し測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う。CPU11aはこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。平均二乗誤差χ2 は上述した数式(2)により算出することができる。
フィッティングの結果としてCPU11aは算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS267)。CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下でないと判断した場合(ステップS267でNO)、各モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再びカバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出する(ステップS268)。その後、再びステップS266へ移行し、同様の処理を繰り返す。
CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であると判断した場合(ステップS267でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき値として決定する(ステップS269)。CPU11aは、各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の各膜層52乃至55の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する(ステップS271)。CPU11aは算出した屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110の発光時及びカバー部材57側の情報に対応づけて記憶する(ステップS272)。なおCPU11aは、透光性基板51に当接する膜層52(D層)、膜層52に当接する膜層53(C層)、膜層53に当接する膜層54(B層)、及び、膜層54に当接する膜層55(A層)に対応づけて、発光時における各層の屈折率、消衰係数及び膜厚を記憶する。次いで、CPU11aは、非発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEc、ΔEcを読み出す(ステップS273)。CPU11aは、この読み出した測定スペクトルΨEc、ΔEcと、カバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcとに基づいて、フィッティングを行う(ステップS274)。CPU11aはこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。
フィッティングの結果としてCPU11aは算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS275)。CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下でないと判断した場合(ステップS275でNO)、各モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再びカバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出する(ステップS276)。その後、再びステップS274へ移行し、同様の処理を繰り返す。
CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であると判断した場合(ステップS275でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき値として決定する(ステップS277)。CPU11aは、各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の各膜層52乃至55の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する(ステップS278)。CPU11aは算出した屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110の非発光時及びカバー部材57側の情報に対応づけて記憶する(ステップS279)。なおCPU11aは、透光性基板51に当接する膜層52(D層)、膜層52に当接する膜層53(C層)、膜層53に当接する膜層54(B層)、及び、膜層54に当接する膜層55(A層)に対応づけて、非発光時における各層の屈折率、消衰係数及び膜厚を記憶する。
CPU11aは履歴ファイル110を参照し、非発光時における屈折率に対する発光時における屈折率の変化率、非発光時における消衰係数に対する発光時における消衰係数の変化率、及び、非発光時における膜厚に対する発光時における膜厚の変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する(ステップS2710)。CPU11aは閾値ファイル111を参照し、ステップS2710で算出した各変化率が閾値を超えるか否かを判断する(ステップS2711)。CPU11aはいずれかの変化率が閾値を超えると判断した場合(ステップS2711でYES)、異常を示す情報を屈折率、消衰係数または膜厚に関連づけてディスプレイ12へ表示する(ステップS2712)。具体的には、CPU11aは屈折率、消衰係数または膜厚に対応させて、異常を示す情報を変化率と共にディスプレイ12に表示する。またCPU11aは層数に応じた枠体を図23の如く積層させてディスプレイ12へ表示する(ステップS2713)。具体的には、透光性基板51上に積層された層の枠体が最下層となるよう、全ての層に係る矩形状の枠体をディスプレイ12に表示する。
CPU11aは、表示した各層の枠体に屈折率、変化率または膜厚に係る異常を示す情報を表示する(ステップS2714)。具体的には、CPU11aは、屈折率の変化率が閾値を超える場合、屈折率に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。また、CPU11aは消衰係数の変化率が閾値を超える場合、消衰係数に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。さらに、CPU11aは膜厚の変化率が閾値を超える場合、膜厚に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。
CPU11aは、履歴ファイル110の照射方向フィールドにカバー部材57側と記憶されている場合、ステップS2713にて表示した枠体に加えて、最下層に向けて開口するC字型の枠体を、カバー部材の文字と共に各層から所定距離を空けた状態で表示する(ステップS2715)。CPU11aはステップS2711において、屈折率、消衰係数及び膜厚の変化率が閾値を超えていないと判断した場合(ステップS2711でNO)、ステップS2712乃至S2715の処理をスキップし、有機EL素子パネル50は適正であるとして処理を終了する。これにより、カバー部材57側からにおいても発光時及び非発光時における光学定数の異常を容易に把握することが可能となる。なお、経年変化については、上述した処理及び実施の形態1で述べた処理を用いることにより、同様にカバー部材57側からの経年変化率及びその異常を認識することができるため詳細な説明は省略する。
本実施の形態2は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態3
実施の形態3は透光性基板51側及びカバー部材57側の双方から発光時及び非発光時のそれぞれについて光学定数の変化を解析する形態に関する。図28は記憶部11bに記憶される履歴ファイル110のレコードレイアウトを示す説明図である。履歴ファイル110は層毎に測定日時における光学定数等を記憶している。履歴ファイル110は、各層別に、測定日時フィールド、照射方向フィールド、発光状態フィールド、カバー部材の有無フィールド、光学定数フィールド内の屈折率フィールド、変化率フィールド、消衰係数フィールド、及び変化率フィールド、膜厚フィールド並びに変化率フィールドを含んで構成される。実施の形態1で述べた図7に示す履歴ファイル110と異なり、照射方向フィールドには、透光性基板51側及びカバー部材57側の情報が記憶されている。CPU11aは測定日時に対応させて実施の形態1及び実施の形態2で述べた処理を、透光性基板51側及びカバー部材57側それぞれにおいて同様に行うことにより、透光性基板51及びカバー部材57の両側から計測した場合の、発光時及び非発光時それぞれの屈折率変化率、消衰係数変化率及び膜厚変化率を記憶する。他の構成については実施の形態1及び実施の形態2で述べたとおりであるので詳細な説明は省略する。
図29は解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。CPU11aは透光性基板51側及びカバー部材57側双方向からの照射に基づく計測、並びに、発光状態及び非発光状態における光学定数及び膜厚の変化率の算出後、図29に示す異常を示す情報を含む画面を生成し、ディスプレイ12へ出力する。CPU11aは履歴ファイル110から、各層の測定日時、発光状態、光学定数、光学定数の変化率、膜厚及び膜厚の変化率等を読み出し、図29の如くディスプレイ12へ出力する。CPU11aは閾値ファイル111を参照し、屈折率の変化率、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率がそれぞれの閾値を超える場合、異常を示す情報をディスプレイ12へ表示する。図29の例では、屈折率変化率に異常が存在することが認められる。
またCPU11aは各層の異常状態を容易に識別できるよう、以下の画像処理を行う。CPU11aは各層について矩形状の枠を描画し、屈折率の変化率、消衰係数の変化率及び膜厚の変化率の異常をそれぞれ識別できる形態で、層別に異常状態を出力する。CPU11aは、層の数、閾値ファイル111及び履歴ファイル110を参照し、層の数に対応する枠の描画、層に係る枠に対応する層の名前(A層乃至D層)の記述、及び上述した描画処理を行う。
A層は図2(b)に示す膜層55、B層は膜層54、C層は膜層53、D層は膜層52に該当する。CPU11aはカバー部材57から透光性基板51へ向かう各層と各枠体とを対応付け、各層のデータに異常が存在する場合は、対応する枠体に異常を示す情報を表示する。図29の例では、A層に屈折率の異常が認められ、B層には膜厚の異常が認められ、C層には、屈折率及び消衰係数の異常が認められる。なお、D層には何の異常も認められないことが理解できる。さらにCPU11aは透光性基板51側及びカバー部材57側双方から計測されたことを明確にすべく、カバー部材57に対応するC字型の枠体、及び、透光性基板51に対応する膜層52乃至膜層55よりも大きい面積を有する矩形状の枠体を表示する。具体的には、CPU11aは、透光性基板51上に積層された層(本例ではD層)の枠体が最下層、カバー部材57に最も近接する層(本例ではA層)が最上層となるよう、全ての層に係る矩形状の枠体をディスプレイ12に表示する。そして、CPU11aは、履歴ファイル110の照射方向フィールドに透光性基板51及びカバー部材57側と記憶されている場合、透光性基板51に積層された最下層(D層)よりも下層に、当該層と隣接させた形態で最下層よりも面積の大きい矩形状の枠体をディスプレイ12に表示する。さらに、CPU11aは、最下層側に向けて開口するC字型の枠体を、膜層52乃至膜層55に係る全ての枠体を覆い、かつ、C字型の枠体開口が、上述した透光性基板51に係る枠体により閉鎖された形態でディスプレイ12に表示する。
図30及び図31は膜厚及び光学定数の算出処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aはキーボード13またはマウス14からモデルの選択を受け付ける(ステップS301)。このモデルの選択は透光性基板51側のモデルとして図5(a)〜(c)に示すモデルm10乃至m12からモデルを選択し、また、カバー部材57側のモデルとして図20(a)及び(b)に示すモデルm20またはm21からモデルを選択する。このモデルの選択は、有機EL素子パネル50の厚み等により適宜のものを選択すれば良い。なお、本実施の形態においては、透光性基板51側のモデルとして図5(b)に示すモデルm11が、カバー部材57側のモデルとして図20(a)に示すモデルm20がそれぞれ選択されたものとして説明する。
CPU11aは、選択されたモデルを記憶部11bから読み出す(ステップS302)。そして、CPU11aは、選択されたモデルm11、m20に対応して、予め記憶されていた初期値となる複数の膜厚及び複数の分散式のパラメータを記憶部11bから読み出し、キーボード13またはマウス14から、各モデルの選択を受け付け(ステップS303)、各モデルを確定する。CPU11aは読み出したモデルに基づき、透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgを算出し、結果を記憶部11bに記憶する(ステップS304)。同様に、CPU11aは、カバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出し、結果を記憶部11bに記憶する(ステップS305)。
CPU11aはステップS304で算出した透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMg、ステップS305で算出したカバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMc、実施の形態1のステップS108で測定した発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgv、及びステップS114で測定した非発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEg、ΔEg、並びに、実施の形態2のステップS248で測定した発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEcv 、ΔEcv、及び、ステップS254で測定した非発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEc、ΔEcをそれぞれ読み出してフィッティングを行い、有機膜56の各膜層52乃至55の膜厚及び分散式のパラメータを確定する(ステップS306)。なお、このステップの詳細な処理については別紙に説明する。
図32及び図33はフィッティング処理の手順を示すフローチャートである。CPU11aは、ステップS108で測定した発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを記憶部11bから読み出す(ステップS321)。また、CPU11aは、ステップS304で算出した透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMgを記憶部11bから読み出す(ステップS322)。同様にカバー部材57側も、CPU11aは、ステップS248で測定した発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを記憶部11bから読み出し(ステップS323)、またステップS305で算出したカバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcを記憶部11bから読み出す(ステップS324)。
CPU11aは、フィッティングのため読み出した、発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgvとモデルスペクトルΨMg、ΔMg、並びに、発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEcv、ΔEcvとモデルスペクトルΨMc、ΔMcとを比較し測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う(ステップS325)。CPU11aはこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。ステップS325における平均二乗誤差χ2 は式(7)により算出することができる。
なお、有機EL素子パネル50を透光性基板51側から測定した場合におけるTg 個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,Tg )、Tg 個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,Tg )とする。カバー部材57側から測定した場合におけるTc個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,Tc )、Tc 個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,Tc )としている。また、Pg は透光性基板51側から測定する際のパラメータの数であり、Pc はカバー部材57側から測定する際のパラメータの数である。
フィッティングの結果としてCPU11aは算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS326)。なお、この所定値は記憶部11bに記憶されている。
CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下でないと判断した場合(ステップS326でNO)、各モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再びモデルスペクトルΨMg、ΔMg及びモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出する(ステップS327)。なお、この変更はCPU11aによる変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。その後、再びステップS325へ移行し、同様の処理を繰り返す。なお、本実施の形態においては、透光性基板51側及びカバー部材57側のモデルの初期膜厚及び分散式のパラメータを変更してモデルスペクトルΨMg、ΔMg及びモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出するよう説明したが、透光性基板51側及びカバー部材57側において適用するモデル自体を変更しても良い。例えば、透光性基板51側のモデルとして、図5(b)のモデルを用い、またカバー部材57側のモデルとして図20(a)のモデルを用いる。その他、これらとは異なるモデル(例えば図5(c)及び図20(b)のモデル)を記憶部11bから読み出し、この異なるモデルの初期膜厚及び分散式のパラメータを変更して、モデルスペクトルΨMg、ΔMg及びモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出するようにしても良い。なお、この変更はCPU11aによる変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。その他のモデルとしては例えば、図5(b)の有機膜層L12とボイド層L11との間に膜厚dのラフネス層がさらに存在するモデル、及び図20(a)のボイド層L32と有機膜層L31との間に膜厚dのラフネス層がさらに存在するモデルが該当する。これら異なるモデルに対するモデルスペクトルを算出するためのモデルは記憶部11bに記憶されており、CPU11aはこのモデルを新たに読み出し、モデルスペクトルΨMg、ΔMg及びモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出する。なお、この変更はCPU11aによる変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。
分光エリプソメータ1は、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であると判断した場合(ステップS326でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき発光時の値として決定する(ステップS328)。
次いで非発光時の処理を行う。CPU11aは、ステップS114で測定した非発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEg、ΔEgを記憶部11bから読み出す(ステップS329)。CPU11aは、ステップS254で測定した非発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEc、ΔEcを記憶部11bから読み出す(ステップS331)。
CPU11aは、フィッティングのため読み出した、非発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEg、ΔEgとステップS322で読み出した透光性基板51側のモデルスペクトルΨMg、ΔMg、並びに、非発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEc、ΔEcとステップS324で読み出したカバー部材57側のモデルスペクトルΨMc、ΔMcとを比較し測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う(ステップS332)。CPU11aはこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。ステップS332における平均二乗誤差χ2 は上述した式(7)により算出することができる。
フィッティングの結果としてCPU11aは算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS333)。なお、この所定値は記憶部11bに記憶されている。
CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下でないと判断した場合(ステップS333でNO)、各モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再びモデルスペクトルΨMg、ΔMg及びモデルスペクトルΨMc、ΔMcを算出する(ステップS334)。その後、再びステップS332へ移行し、同様の処理を繰り返す。CPU11aは、算出した平均二乗誤差χ2が所定値以下であると判断した場合(ステップS333でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき非発光時の値として決定する(ステップS335)。
次いで、図30のステップS307へ移行する。CPU11aは、発光時の各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の各膜層52乃至55の発光時の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する(ステップS307)。CPU11aは算出した発光時における屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110に記憶する(ステップS308)。なおCPU11aは、透光性基板51に当接する膜層52(D層)、膜層52に当接する膜層53(C層)、膜層53に当接する膜層54(B層)、及び、膜層54に当接する膜層55(A層)に対応づけて、発光時における各層の屈折率、消衰係数及び膜厚を記憶する。同様に、CPU11aは、非発光時の各膜層52乃至55の膜厚、分散式のパラメータ、及びボイド等を参照することで、有機EL素子パネル50の有機膜56の非発光時の各膜層52乃至55の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する(ステップS309)。CPU11aは算出した非発光時における屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110に記憶する(ステップS310)。なおCPU11aは、透光性基板51に当接する膜層52(D層)、膜層52に当接する膜層53(C層)、膜層53に当接する膜層54(B層)、及び、膜層54に当接する膜層55(A層)に対応づけて、非発光時における各層の屈折率、消衰係数及び膜厚を記憶する。
CPU11aは履歴ファイル110を参照し、非発光時における屈折率に対する発光時における屈折率の変化率、非発光時における消衰係数に対する発光時における消衰係数の変化率、及び、非発光時における膜厚に対する発光時における膜厚の変化率を算出し、履歴ファイル110に記憶する(ステップS311)。CPU11aは閾値ファイル111を参照し、ステップS311で算出した各変化率が閾値を超えるか否かを判断する(ステップS312)。CPU11aはいずれかの変化率が閾値を超えると判断した場合(ステップS312でYES)、異常を示す情報を屈折率、消衰係数または膜厚に関連づけてディスプレイ12へ表示する(ステップS313)。具体的には、CPU11aは屈折率、消衰係数または膜厚に対応させて、異常を示す情報を変化率と共にディスプレイ12に表示する。またCPU11aは層数に応じた枠体を図29の如く積層させてディスプレイ12へ表示する(ステップS314)。具体的には、透光性基板51上に積層された層の枠体が最下層となるよう、全ての層に係る矩形状の枠体をディスプレイ12に表示する。
CPU11aは、表示した各層の枠体に屈折率、変化率または膜厚に係る異常を示す情報を表示する(ステップS315)。具体的には、CPU11aは、屈折率の変化率が閾値を超える場合、屈折率に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。また、CPU11aは消衰係数の変化率が閾値を超える場合、消衰係数に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。さらに、CPU11aは膜厚の変化率が閾値を超える場合、膜厚に対応する異常を示す情報を記憶部11bから読み出し、異常を示す層の枠体に対応づけて表示する。
CPU11aは、履歴ファイル110の照射方向フィールドに透光性基板51側及びカバー部材57側と記憶されている場合、ステップS314にて表示した枠体に加えて、透光性基板の文字と共に、透光性基板51上に積層される最下層に係る枠体の下側に接触させて、当該枠体よりも大きな面積を有する枠体を表示する(ステップS316)。最後に、CPU11aは、最下層に向けて開口するC字型の枠体を、カバー部材の文字と共に各層から所定距離を空けた状態で表示する(ステップS317)。具体的には、CPU11aはC字型の枠体の開口が、ステップS316で表示した枠体により塞がれるよう、また、その他の各枠体に接触しないよう表示する。CPU11aはステップS312において、屈折率、消衰係数及び膜厚の変化率が閾値を超えていないと判断した場合(ステップS312でNO)、ステップS313乃至S317の処理をスキップし、有機EL素子パネル50は適正であるとして処理を終了する。以上述べた如く透光性基板51及びカバー部材57側双方の計測に基づく光学定数の算出により、より精度高く発光時及び非発光時の変化を解析することが可能となる。なお、経年変化については、上述した処理及び実施の形態1及び2で述べた処理を、必要な時期に実行することにより、同様に経年変化率及びその異常を認識することができるため詳細な説明は省略する。
本実施の形態3は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1及び2と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態4
実施の形態4は上述の実施の形態に係る分光エリプソメータ1を有機EL素子パネル50の製造装置に適用した形態に関する。図34は実施の形態4に係る製造装置80の概要を示す模式的平面図である。製造装置80は透光性基板51上に成膜物56(有機膜56に相当)を成膜する2連の第1成膜装置10D、第2成膜装置20D、及び成膜物56が成膜された透光性基板51にカバー部材57を張り合わせて有機EL素子パネル50を排出する封止装置30Dを含んで構成される。透光性基板51は第1成膜装置10D及び第2成膜装置20Dに搬送され、成膜物56が成膜された後、封止装置30Dへ搬送される。封止装置30Dにおいて、成膜物56が成膜された透光性基板51にカバー部材57が張り合わされた後、完成品である有機EL素子パネル50が外部へ排出される。
第1成膜装置10Dは搬送手段(搬送装置)である真空搬送用ロボット11D、基板搬送室41D、成膜室12D,13D,14D,15D、真空ゲートG、受渡室42D及びデータ送信手段Pを含んで構成される。第1成膜装置10Dの略中央部には真空搬送用ロボット11Dが設置される。その周囲を囲むように、基板搬送室41D、成膜室12D,13D,14D,15D及び受渡室42Dが密閉性を有する真空ゲートGを介して接続されている。真空ゲートG、Gが入口及び出口に設けられた基板搬送室41Dには前処理工程及び洗浄済みの透光性基板51(ITO基板)が搬送される。基板搬送室41Dへ搬送された透光性基板51は真空搬送用ロボット11Dにより、成膜室12Dに搬送される。
成膜室12D,13D,14D,15D及び第2成膜装置20Dの成膜室22D,23D,24D,25Dは正孔輸送層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層及び陰極を含む成膜物56をそれぞれ段階的に成膜するためのものである。なお、以下では成膜室12D乃至15D並びに22D乃至25Dで行われる成膜がCVD(Chemical Vapor Deposition)法による蒸着であるものとして説明するが、成膜対象に応じて適宜スパッタリング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法による成膜を用いても良い。以下では成膜室12D乃至15D並びに22D乃至25Dを、蒸着室12D乃至15D並びに22D乃至25Dであるものとし、また成膜物56を蒸着物56であるものとして説明する。
透光性基板51が蒸着室12Dへ搬送された場合、蒸着物56が透光性基板51上に蒸着される。1層目の蒸着物56が蒸着された透光性基板51は搬送手段である真空搬送用ロボット11Dにより、次段の蒸着室13Dへ搬送される。蒸着室13Dにおいては2層目の蒸着物56が蒸着される。その後、透光性基板51は次段の蒸着室14Dへ搬送される。各蒸着室12D乃至15D並びに22D乃至25Dは送信回線及び送受信装置を含むデータ送信手段Pにより接続されている。各蒸着室12D乃至15D並びに22D乃至25Dでの蒸着の状況に関する情報がデータ送信手段Pにより送受信される。
第1成膜装置10Dでの4層目の蒸着を終えた後、蒸着物56が蒸着された透光性基板51は、入口及び出口に真空ゲートG、Gが設けられた受渡室42Dへ真空搬送用ロボット11Dにより搬送される。受渡室42Dに連設される第2成膜装置20Dも第1成膜装置10Dと同様に、真空ゲートG、蒸着室22D乃至25D、データ送信手段P、真空搬送用ロボット21D及び受渡室43Dを含んで構成される。
透光性基板51は、受渡室42Dを経て第2成膜装置20Dの蒸着室22Dへ搬送され、5層目の蒸着が行われる。次いで蒸着室23D乃至25Dで蒸着物56が蒸着された透光性基板51は、真空搬送用ロボット21Dにより、受渡室43Dへ搬送される。なお、本実施の形態においては第1成膜装置10D及び第2成膜装置20Dの2段構成としているが、1段または3段以上の成膜装置を設けて成膜するようにしても良い。さらに、第1成膜装置10D及び第2成膜装置20Dは各4つの蒸着室12D乃至15D並びに22D乃至25Dを設けているが、その数は蒸着する層数に応じて適宜増減させても良い。
受渡室43Dに連設される封止装置30Dは真空搬送用ロボット31D、真空ゲートG、封止室34D、予備室33D、排出室44D、分光エリプソメータ1、及び封止基板搬送室32Dを含んで構成される。全ての層の蒸着を終えた透光性基板51は、真空搬送用ロボット31Dにより、封止室34Dへ搬送され、また封止基板搬送室32Dへ搬送されたカバー部材57も、同様に封止室34Dへ搬送される。蒸着物56が蒸着された透光性基板51とカバー部材57とは封止室34Dにおいて接着剤により張り合わせが行わる。
貼り合わせにより完成した有機EL素子パネル50は検査室としても機能する排出室44Dへ真空搬送用ロボット31Dにより搬送される。蒸着室12D等の下流に設けられる排出室44Dの上側には実施の形態1乃至3で述べた分光エリプソメータ1が載置されている。なお、排出室44Dの下側に分光エリプソメータ1を設けても良い。排出室44Dでは、有機EL素子パネル50を発光または非発光の状態で光学定数の変化を計測し、その変化に異常が存在するか否かを判断する。異常が存在する場合は分光エリプソメータ1によりその旨が通知される。排出室44Dでの解析の後、有機EL素子パネル50は外部へ搬送される。
図35は排出室44Dの断面を示す模式的断面図、図36は排出室44D内部の概要を示す模式的斜視図である。排出室44Dは筐体120、透過窓122,122、真空ゲートG、及び、有機EL素子パネル50を載置するラック121等を含んで構成される。排出室44Dはその断面において底部が矩形状、頂部が台形をなす筐体120を備え、筐体120の略中央部には2本のラック121、121が架設されている。カバー部材57により封止された有機EL素子パネル50は図34に示す真空搬送用ロボット11Dにより、排出室44D内部へ搬送され、ラック121、121上に載置される。すなわち真空ゲートGから排出室44Dへ搬送された有機EL素子パネル50の両端が図36に示す如くラック121、121に支持され、発光または非発光の状態で分光エリプソメータ1による膜厚、光学定数の解析が可能な位置まで搬送される。なお、有機EL素子パネル50のラック121、121上での位置決めは図示しない光センサ等により行えばよい。
なお、本実施の形態においては、有機EL素子パネル50の透光性基板51が上側を向いた状態で搬送される形態につき説明するが、カバー部材57が上側を向いた状態で搬送するようにしても良い。筐体120の頂部は断面視が2斜辺を有する台形状をなし、2斜辺にはガラス等の透過窓122、122がそれぞれ密閉性を保った状態で固設されている。筐体120の上側には光照射器3及び光取得器5を備える分光エリプソメータ1が設けられている。
光照射器3の出射面と透過窓122の筐体120外面側とは相互に当接されており、同様に、光取得器5の受光面と透過窓122の筐体120外面側とは相互に当接されている。なお、光照射器3及び光取得器5を透過窓122から隔離して設けても良い。光照射器3からの入射光は斜辺に設けられる透過窓122に対して略垂直に入射し、透光性基板51またはカバー部材57を照射する。有機EL素子パネル50からの反射光は透過窓122に対して略垂直に入射し、光取得器5へ到達する。なお、本実施の形態においては、分光エリプソメータ1を排出室44Dの上側に設ける構成としたが、下側に設けても良い。さらに、分光エリプソメータ1の光照射器3及び光取得器5を排出室44Dの内部に取り付ける構成であっても良い。
続いて排出室44D内部の詳細構造を、図36を用いて説明する。排出室44D内部には、実施の形態1で述べた導通スタンド173、175、プローブ174、176、及び、有機EL素子パネル50を反転させるための反転機構1760等が備わっている。導通スタンド173は排出室44Dの底部から立設されており、先端付近からは有機EL素子パネル50の陰極59方向へ向かうプローブ174が設けられている。プローブ174は導通スタンド173内部の図示しないギア等からなる回動機構1730に他端が連結されている。この回動機構1730の動作に伴い、プローブ174は上下方向に他端を中心とした回動運動を行う。プローブ174が回動機構1730の動作により下方向に回転し、その先端が陰極59の裏面陰極590または表面陰極591に接触する。
導通スタンド173内部の回動機構1730及びコンピュータ本体11に接続される昇降制御部175aは回動機構1730を制御する回路である。昇降制御部175aはコンピュータ本体11にUSB等により接続されており、CPU11aの指示に従い、回動機構1730を動作させる。具体的には、CPU11aは排出室44Dへ有機EL素子パネル50が搬送される前に、回動機構1730を上方向に回転させ、プローブ174を上昇させる指示を昇降制御部175aへ出力する。一方、CPU11aは排出室44Dへ有機EL素子パネル50が搬送された場合、回動機構1730を下方向に回転させ、プローブ174を下降させ、その先端を電極59へ接触させる指示を昇降制御部175aへ出力する。なお、陽極58に対しても、同様に導通スタンド175、回動機構1750及びプローブ176が備わるが、陰極59側と同様の構成であるため詳細な説明は省略する。
陽極58側のプローブ176及び陰極59側のプローブ174は実施の形態1等で述べた電圧印加手段としての直流電源171、スイッチ172、及び、スイッチング制御回路17等に接続されている。なお、これらの構成については上述したとおりであるので詳細な説明は省略する。反転機構1760は駆動制御部1710、スタンド179,伸縮アーム178、及び、把持機構177等を含んで構成される。駆動制御部1710はコンピュータ10にUSB等により接続されており、CPU11aの指示に従い把持機構177及び伸縮アーム178等を制御する。
伸縮アーム178はモータによりベルトを介して移動する多段のスライドアーム等から構成され、透光性基板51と略同一高さにおいて、ラック121と略直交する方向に進退する。伸縮アーム178は、スタンド179との交点を中心に上下方向に回動する。伸縮アーム178の先端には把持機構177が取り付けられている。把持機構177は多関節のロボットハンド等で構成されており、駆動制御部1710の指示に従い透光性基板51の一側を把持した状態で、伸縮アーム178との接合部において180度回転する。回転後、伸縮アーム178は下降し、有機EL素子パネル50はカバー部材57が上向きの状態となる。
伸縮アーム178は把持機構177が透光性基板51を把持することが可能な距離まで伸びることができる。回転後駆動制御部1710の指示により把持機構177は透光性基板51を非把持の状態とする。その後、駆動制御部1710は伸縮アーム178を初期位置まで縮ませる。
以上のハードウェア構成において、排出室44D内での分光エリプソメータ1を用いた解析処理の流れを、フローチャートを用いて説明する。図37乃至図39は排出室44D内部における処理手順を示すフローチャートである。CPU11aは、実施の形態1で述べた透光性基板51側からの解析を実行するか、実施の形態2で述べたカバー部材57側からの解析を実行するか、または実施の形態3で述べた両方向から解析を実行するかを問う画面を記憶部11bから読み出しディスプレイ12へ表示する。CPU11aはキーボード13から、透光性基板51側からの解析を実行するか、カバー部材57側からの解析を実行するか、または両方向から解析を実行するかの選択を受け付ける(ステップS371)。
CPU11aは有機EL素子パネル50が排出室44D内へ搬送されたか否かを判断する(ステップS372)。これは真空ゲートG近傍に設けたカメラまたは光センサ等により有機EL素子パネル50の排出室44D内への搬送を認識させればよい。認識した情報はカメラまたは光センサからCPU11aへ出力される。CPU11aは排出室44D内へ有機EL素子パネル50が搬送されていないと判断した場合(ステップS372でNO)、搬送されるまで待機する。一方、CPU11aは搬送されたと判断した場合(ステップS372でYES)、昇降制御部175aへプローブ174及びプローブ176の上昇信号を出力する(ステップS373)。なお、上述したように本実施の形態においては透光性基板51の裏面が上側に向けて搬送されるものとする。
昇降制御部175aは、プローブ174及び176が上昇するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。CPU11aはステップS371において、両方側から解析する選択を受け付けたか否かを判断する(ステップS374)。CPU11aは両方側から解析する選択を受け付けたと判断した場合(ステップS374でYES)、測定日時、発光状態、透光性基板51側及びカバー部材57側とする照射方向、並びに、カバー部材57の有無を履歴ファイル110に記憶する(ステップS375)。一方CPU11aは、両方側から解析するとの選択を受け付けていない場合は(ステップS374でNO)、透光性基板51側のみからの解析の選択を受け付けたか否かを、ステップS371にて受け付けた情報を参照して、判断する(ステップS376)。
CPU11aは透光性基板51側との選択を受け付けたと判断した場合(ステップS376でYES)、測定日時、発光状態、透光性基板51側とする照射方向、並びに、カバー部材57の有無を履歴ファイル110に記憶する(ステップS378)。CPU11aは実施の形態1で述べたように、非発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEg、ΔEgを測定する(ステップS379)。そしてCPU11aは、測定した測定スペクトルΨEg、ΔEgを履歴ファイル110に記憶する(ステップS381)。
CPU11aは昇降制御部175aに対しプローブ174及びプローブ176の下降信号を出力する(ステップS382)。昇降制御部175aは、プローブ174及び176が下降するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。CPU11aは、スイッチング制御回路17へオン信号を出力する(ステップS383)。これにより有機EL素子パネル50は発光する。CPU11aは、発光時の履歴を記憶すべく、測定日時、発光とする発光状態、ステップS375を経た場合は透光性基板51側及びカバー部材57側とする照射方向、または、ステップS378を経た場合は透光性基板51側とする照射方向、並びに、カバー部材57の有無を履歴ファイル110に記憶する(ステップS384)。
CPU11aは発光時における透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを測定する(ステップS385)。CPU11aは測定した測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを履歴ファイル110に記憶する(ステップS386)。CPU11aは、スイッチング制御回路17へオフ信号を出力する(ステップS387)。CPU11aは昇降制御部175aに対しプローブ174及びプローブ176の上昇信号を出力する(ステップS388)。昇降制御部175aは、プローブ174及び176が上昇するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。
CPU11aは両方側から解析する選択を受け付けたか否かを判断する(ステップS389)。CPU11aは両方側から解析する選択を受け付けていない場合(ステップS389でNO)、実施の形態1で述べた膜厚及び光学定数の算出、変化率の算出並びに異常を示す情報の表示等の各種処理後、有機EL素子パネル50を外部へ排出する(ステップS391)。
ステップS376において、CPU11aは透光性基板51側のみからの解析の選択を受け付けていない場合(ステップS376でNO)、カバー部材57側からの選択を受け付けたと判断し、測定日時、発光状態、カバー部材57側とする照射方向、並びに、カバー部材57の有無を履歴ファイル110に記憶する(ステップS377)。ステップS377の処理の後、または、ステップS389においてCPU11aが両方側から解析の選択を受け付けたと判断した場合(ステップS389でYES)、CPU11aは駆動制御部1710に対し、反転指示を出力する(ステップS392)。駆動制御部1710は伸縮アーム178を最長位置まで伸ばし、また把持機構177を開閉動作させ、透光性基板51を把持させ、伸縮アーム178を所定角度まで上昇させる。その後、駆動制御部1710は把持機構177を180度回転させる。
駆動制御部1710は回転の後、伸縮アーム178を下降させることにより、カバー部材57が上側を向いた状態で透光性基板51をラック121、121上に載置する。駆動制御部1710は把持機構177を閉開動作させ、非把持状態とする。その後、駆動制御部1710は伸縮アーム178を縮ませる。CPU11aは、実施の形態2で述べたように、非発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEc、ΔEcを測定する(ステップS393)。そしてCPU11aは、測定した測定スペクトルΨEc、ΔEcを履歴ファイル110に記憶する(ステップS394)。
CPU11aは昇降制御部175aに対しプローブ174及びプローブ176の下降信号を出力する(ステップS395)。昇降制御部175aは、プローブ174及び176が下降するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。CPU11aは、スイッチング制御回路17へオン信号を出力する(ステップS396)。これにより有機EL素子パネル50は発光する。CPU11aは、発光時の履歴を記憶すべく、測定日時、発光とする発光状態、ステップS375を経た場合は透光性基板51側及びカバー部材57側とする照射方向、または、ステップS377を経た場合はカバー部材57側とする照射方向、並びに、カバー部材57の有無を履歴ファイル110に記憶する(ステップS397)。
CPU11aは発光時におけるカバー部材57側の測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを測定する(ステップS398)。CPU11aは測定した測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを履歴ファイル110に記憶する(ステップS399)。CPU11aは、スイッチング制御回路17へオフ信号を出力する(ステップS3910)。CPU11aは昇降制御部175aに対しプローブ174及びプローブ176の上昇信号を出力する(ステップS3911)。昇降制御部175aは、プローブ174及び176が上昇するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。
CPU11aはステップS389を経た場合、両面解析であるので、実施の形態3で述べた膜厚及び光学定数の算出、変化率の算出並びに異常を示す情報の表示等の各種処理後、有機EL素子パネル50を外部へ排出する(ステップS3912)。同様に、CPU11aは、ステップS377を経た場合、カバー部材57側の解析であるので、実施の形態2で述べた膜厚及び光学定数の算出、変化率の算出並びに異常を示す情報の表示等の各種処理後、有機EL素子パネル50を外部へ排出する(ステップS3912)。
本実施の形態4は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至3と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態5
実施の形態5は排出室44Dに両面解析用の分光エリプソメータ1を配置した形態に関する。図40は排出室44Dの断面を示す模式的断面図である。実施の形態4と異なり、排出室44D内部上側に光照射器3及び光取得器5が取り付けられている。また光照射器3及び光取得器5に対応して補助用の一組の補助光照射器3S及び補助光取得器5Sが検査室35D内部の下側に取り付けられている。なお、実施の形態4で述べた如く、光照射器3及び光取得器5、並びに、補助光照射器3S及び補助光取得器5Sを、透過窓122を設けることにより、排出室44D外部に取り付けても良い。
補助光照射器3Sは排出室44Dの床面から突設される支持台3S1の先端に取り付けられている。同様に、補助光取得器5Sも排出室44Dの床面から突設される支持台5S1の先端に取り付けられている。補助光照射器3S及び補助光取得器5Sは光照射器3及び光取得器5と同様の機能を果たすべくコンピュータ本体11に接続されており、分光エリプソメータ1内のコンピュータ本体11へ計測したデータを出力する。
補助光照射器3SはCPU11aの指示に従い、光を有機EL素子パネル50の下側から照射する。補助光取得器5SはCPU11aの指示に従い、有機EL素子パネル50の下側にて反射した光を取得する。取得した情報は実施の形態1で述べた如く分光エリプソメータ1内のコンピュータ本体11へ出力され、各種処理が実行される。実施の形態4の図36で述べた反転機構1760は両面から略同タイミングで解析を行うため、省略しても良い。なお、本実施の形態においては両面からの測定を可能とすべく、上下一組の光照射器3及び光取得器5、並びに、補助光照射器3S及び補助光取得器5Sを設ける構成としたが、これに限るものではない。例えば、光照射器3及び光取得器5を、排出室44D内部にて上側及び下側へ移動可能となるよう構成しても良い。この場合、ラック121に載置される有機EL素子パネル50を中心とする環状のレールを排出室44D内部に設ける。そして光照射器3及び光取得器5を、レール上をモータにより移動できるよう取り付ける。上側から計測する場合は、図40の例では、光照射器3が2時位置、光取得器5が10時位置に存在する。そして、その後下側から計測する場合は、光照射器3は時計方向へ4時位置までレール上を移動する。また、光取得器5は10時位置から反時計方向へ8時位置までレール上を移動する。
以上のハードウェア構成において解析処理の手順を、フローチャートを用いて説明する。図41及び図42は実施の形態5に係る処理の手順を示すフローチャートである。CPU11aは有機EL素子パネル50が排出室44D内へ搬送されたか否かを判断する(ステップS411)。CPU11aは排出室44D内へ有機EL素子パネル50が搬送されていないと判断した場合(ステップS411でNO)、搬送されるまで待機する。一方、CPU11aは搬送されたと判断した場合(ステップS411でYES)、昇降制御部175aへプローブ174及びプローブ176の上昇信号を出力する(ステップS412)。なお、上述したように本実施の形態においては透光性基板51が上側に向けて搬送されるものとする。
昇降制御部175aは、プローブ174及び176が上昇するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。CPU11aは、測定日時、非発光状態とする発光状態、透光性基板51側及びカバー部材57側とする照射方向、並びに、カバー部材57の有無を履歴ファイル110に記憶する(ステップS413)。CPU11aは、光照射器3及び光取得器5に対し動作を開始すべき旨の信号を出力する(ステップS414)。CPU11aは実施の形態1で述べたように、非発光時の透光性基板51側の測定スペクトルΨEg、ΔEgを測定する(ステップS415)。そしてCPU11aは、測定した測定スペクトルΨEg、ΔEgを履歴ファイル110に記憶する(ステップS416)。
その後、CPU11aは、光照射器3及び光取得器5に対し動作を停止すべき旨の信号を出力する(ステップS417)。続いて、CPU11aは、補助光照射器3S及び補助光取得器5Sに対し動作を開始すべき旨の信号を出力する(ステップS418)。CPU11aは、実施の形態2で述べたように、非発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEc、ΔEcを測定する(ステップS419)。そしてCPU11aは、測定した測定スペクトルΨEc、ΔEcを履歴ファイル110に記憶する(ステップS421)。CPU11aは、補助光照射器3S及び補助光取得器5Sに対し動作を停止すべき旨の信号を出力する(ステップS422)。そして非発光時におけるフィッティングが実施の形態3の如く実行され、膜厚及び光学定数等が算出される。
CPU11aは昇降制御部175aに対しプローブ174及びプローブ176の下降信号を出力する(ステップS423)。昇降制御部175aは、プローブ174及び176が下降するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。CPU11aは、スイッチング制御回路17へオン信号を出力する(ステップS424)。これにより有機EL素子パネル50は発光する。CPU11aは、発光時の履歴を記憶すべく、測定日時、発光とする発光状態、透光性基板51側及びカバー部材57側とする照射方向、及び、カバー部材57の有無を履歴ファイル110に記憶する(ステップS425)。
CPU11aは、光照射器3及び光取得器5に対し動作を開始すべき旨の信号を出力する(ステップS426)。CPU11aは発光時における透光性基板51側の測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを測定する(ステップS427)。CPU11aは測定した測定スペクトルΨEgv、ΔEgvを履歴ファイル110に記憶する(ステップS428)。CPU11aは、光照射器3及び光取得器5に対し動作を停止すべき旨の信号を出力する(ステップS429)。CPU11aは、補助光照射器3S及び補助光取得器5Sに対し動作を開始すべき旨の信号を出力する(ステップS4210)。CPU11aは、実施の形態2で述べたように、発光時のカバー部材57側の測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを測定する(ステップS4211)。そしてCPU11aは、測定した測定スペクトルΨEcv、ΔEcvを履歴ファイル110に記憶する(ステップS4212)。そして発光時におけるフィッティングが実施の形態3の如く実行され、膜厚及び光学定数等が算出される。CPU11aは、補助光照射器3S及び補助光取得器5Sに対し動作を停止すべき旨の信号を出力する(ステップS4213)。
CPU11aは、スイッチング制御回路17へオフ信号を出力する(ステップS4214)。CPU11aは昇降制御部175aに対しプローブ174及びプローブ176の上昇信号を出力する(ステップS4215)。昇降制御部175aは、プローブ174及び176が上昇するよう回動機構1730及び回動機構1750をそれぞれ制御する。最後にCPU11aは実施の形態3で述べた、非発光時に対する発光時の膜厚、屈折率及び消衰係数それぞれの変化率を層別に算出し、変化率に異常が存在する場合は異常を示す信号をディスプレイ12に表示する。その後、CPU11aは、有機EL素子パネル50を外部へ排出する信号を出力する(ステップS4126)。
本実施の形態5は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至4と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態6
図43は実施の形態6に係る分光エリプソメータ1の構成を示すブロック図である。実施の形態6に係る分光エリプソメータ1のコンピュータ10を動作させるためのコンピュータプログラムは、本実施の形態6のように、CD−ROM、メモリーカード等の可搬型記録媒体1Aで提供することも可能である。さらに、コンピュータプログラムを、LAN、またはインターネット等の図示しない通信網を介して図示しないサーバコンピュータからダウンロードすることも可能である。以下に、その内容を説明する。
図43に示すコンピュータ10の図示しない記録媒体読み取り装置に、発光時における測定をさせ、発光時の光学定数を算出させ、非発光時における測定をさせ、非発光時の光学定数を算出させ、差または比を出力させる等のコンピュータプログラムが記録された可搬型記録媒体1Aを、挿入して記憶部11bのプログラム内にこのプログラムをインストールする。または、かかるプログラムを、図示しない通信部を介して外部の図示しないサーバコンピュータからダウンロードし、記憶部11bにインストールするようにしても良い。かかるプログラムはRAM11cにロードして実行される。これにより、上述のような本発明のコンピュータ10として機能する。
本実施の形態6は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至5と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態7
実施の形態7はカバー部材57側から計測した際の経年変化の表示処理、及び、双方から計測した際の経年変化の表示処理に関する。まず、カバー部材57側から計測した際の経年変化の表示処理について説明する。図44及び図45はカバー部材57側から計測した際の経年変化率の記憶及び表示処理の手順を示すフローチャートである。図24及び図25で述べた処理により、CPU11aはカバー部材57側の発光時における屈折率、消衰係数、及び膜厚を算出し、測定日時に対応づけて履歴ファイル110にこれらの算出結果を記憶する(ステップS441)。同様に、CPU11aはカバー部材57側の非発光時における屈折率、消衰係数、及び膜厚を算出し、測定日時に対応づけて履歴ファイル110にこれらの算出結果を記憶する(ステップS442)。ステップS441及びS442の処理は例えば有機EL素子パネル50の完成時若しくは完成時から所定の日数内(例えば10日以内)、1年後、並びに、2年後等に実行される。CPU11aは完成段階における発光時及び非発光時の屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110から、測定日時をもとに読み出す(ステップS443)。
CPU11aは発光時における屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化について、ステップS441で算出した屈折率、消衰係数、及び、膜厚を、ステップS443で読み出した完成段階における屈折率、消衰係数、及び膜厚で除すことにより、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率を算出し、算出したそれぞれの経年変化率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS444)。なお、ステップS444の処理は各層について別々に行う。次いで、CPU11aは非発光時における屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化について、ステップS442で算出した屈折率、消衰係数、及び、膜厚を、ステップS443で読み出した完成段階における屈折率、消衰係数、及び膜厚で除すことにより、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率を算出し、算出したそれぞれの経年変化率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS445)。なお、ステップS445の処理は各層について別々に行う。
CPU11aは履歴ファイル110を参照し、測定日時、並びに、屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化率を読み出し、図46に示す如くディスプレイ12に表示する(ステップS446)。図46はカバー部材57側の解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。図46に示す如く、層別に測定日時に対応して、発光時または非発光時の経年変化率が表示される。CPU11aは読み出した完成段階の測定日時から該当する測定日時までの期間である該当年度に係る閾値を、第2閾値ファイル112から読み出す(ステップS447)。具体的には、CPU11aは履歴ファイル110に記憶されている最初の測定日時と、各測定日時との間隔を算出し、算出した間隔に最も近い期間に対応する閾値を第2閾値ファイル112から読み出す。CPU11aは読み出した発光時の屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び、膜厚経年変化率と、読み出した発光時の屈折率経年変化率に係る閾値、消衰係数経年変化率に係る閾値、及び、膜厚経年変化率に係る閾値とを比較し、閾値を超えるものを抽出する。
同様に、CPU11aは読み出した非発光時の屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び、膜厚経年変化率と、読み出した非発光時の屈折率経年変化率に係る閾値、消衰係数経年変化率に係る閾値、及び、膜厚経年変化率に係る閾値とを比較し、閾値を超えるものを抽出する。CPU11aは閾値を超える屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び膜厚経年変化率に対し、図46の如く異常を示す情報をディスプレイ12に表示する(ステップS448)。この表示処理は発光時及び非発光時それぞれについて層別に行われる。
CPU11aは記憶部11bに記憶した層数に応じた枠体を読み出して生成し、ディスプレイ12に表示する(ステップS449)。なおこの場合、CPU11aは、履歴ファイル110を参照し、生成した各枠体と、有機膜56が有する各層との関連づけを行う。CPU11aは記憶部11bに記憶した屈折率、消衰係数、または膜厚別に異常を示す情報を読み出す。そして、CPU11aは、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率が閾値を超える層の枠体に、屈折率、消衰係数、または膜厚の異常を示す情報を合成した画像を生成し、測定日時に対応づけて記憶部11bに記憶する(ステップS451)。ステップS441乃至S451の処理は、完成時と一年後と、及び、完成時と2年後との如く、完成時と完成時後の測定日時との全ての組み合わせに対して実行される。なお、図46に示すように、カバー部材57側から計測を実施したことを明確にすべく、カバー部材57を示すC字型の枠体を有機膜56の各層を示す枠体上に表示しても良い。この場合、CPU11aは、記憶部11bに記憶した描画ソフトウェアを実行し、有機膜56の各層を示す枠体を開口部にて被うC字型の枠体を生成する。CPU11aは生成したC字型の枠体の開口部を下側に向け、有機膜56の各層の枠体から所定間隔離した状態で記述する。
CPU11aは当該生成した合成画像を図46の如くディスプレイ12に表示する(ステップS452)。CPU11aは記憶部11b及び履歴ファイル110を参照し、他の測定日時に対応する合成画像が記憶されているか否かを判断する(ステップS453)。CPU11aは他の測定日時に対応する合成画像が記憶されていると判断した場合(ステップS453でYES)、例えば図46の如く、1年後のみならず2年後の合成画像が記憶されている場合、当該記憶された合成画像を読み出す(ステップS454)。CPU11aは測定日時に基づき、合成画像を時系列にディスプレイ12に表示する(ステップS455)。これにより、既に生成された合成画像が時系列で表示されることから、ユーザは各有機膜56の経年変化を視覚的に、また、段階的に、把握することが可能となる。一方、CPU11aは他の測定日時に対応する合成画像が記憶されていないと判断した場合(ステップS453でNO)、例えば1年分の合成画像しか生成されていない場合、ステップS454及びS455の処理をスキップし処理を終了する。
最後に、透光性基板51側及びカバー部材57側の双方から計測した際の経年変化表示処理について説明する。図47及び図48は双方から計測した際の経年変化率の記憶及び表示処理の手順を示すフローチャートである。図30乃至及び図33で述べた処理により、CPU11aは透光性基板51及びカバー部材57双方からの照射に基づく発光時の屈折率、消衰係数、及び膜厚を算出し、測定日時に対応づけて履歴ファイル110にこれらの算出結果を記憶する(ステップS471)。同様に、CPU11aは透光性基板51及びカバー部材57双方からの照射に基づく非発光時における屈折率、消衰係数、及び膜厚を算出し、測定日時に対応づけて履歴ファイル110にこれらの算出結果を記憶する(ステップS472)。ステップS471及びS472の処理は例えば有機EL素子パネル50の完成時若しくは完成時から所定の日数内(例えば10日以内)、1年後、並びに、2年後等に実行される。CPU11aは完成段階における発光時及び非発光時の屈折率、消衰係数及び膜厚を履歴ファイル110から、測定日時をもとに読み出す(ステップS473)。なお、完成段階とは必ずしも完成直後を意味するものではなく、完成直後から数週間内の所定期間であっても良い。
CPU11aは発光時における屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化について、ステップS471で算出した屈折率、消衰係数、及び、膜厚を、ステップS473で読み出した完成段階における屈折率、消衰係数、及び膜厚で除すことにより、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率を算出し、算出したそれぞれの経年変化率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS474)。なお、ステップS474の処理は各層について別々に行う。次いで、CPU11aは非発光時における屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化について、ステップS472で算出した屈折率、消衰係数、及び、膜厚を、ステップS473で読み出した完成段階における屈折率、消衰係数、及び膜厚で除すことにより、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率を算出し、算出したそれぞれの経年変化率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS475)。なお、ステップS475の処理は各層について別々に行う。
CPU11aは履歴ファイル110を参照し、測定日時、並びに、屈折率、消衰係数、及び、膜厚の経年変化率を読み出し、図49に示す如くディスプレイ12に表示する(ステップS476)。図49は透光性基板51及びカバー部材57双方からの解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。図49に示す如く、層別に測定日時に対応して、発光時または非発光時の経年変化率が表示される。CPU11aは読み出した完成段階の測定日時から該当する測定日時までの期間である該当年度に係る閾値を、第2閾値ファイル112から読み出す(ステップS477)。具体的には、CPU11aは履歴ファイル110に記憶されている最初の測定日時と、各測定日時との間隔を算出し、算出した間隔に最も近い期間に対応する閾値を第2閾値ファイル112から読み出す。CPU11aは読み出した発光時の屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び、膜厚経年変化率と、読み出した発光時の屈折率経年変化率に係る閾値、消衰係数経年変化率に係る閾値、及び、膜厚経年変化率に係る閾値とを比較し、閾値を超えるものを抽出する。
同様に、CPU11aは読み出した非発光時の屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び、膜厚経年変化率と、読み出した非発光時の屈折率経年変化率に係る閾値、消衰係数経年変化率に係る閾値、及び、膜厚経年変化率に係る閾値とを比較し、閾値を超えるものを抽出する。CPU11aは閾値を超える屈折率経年変化率、消衰係数経年変化率、及び膜厚経年変化率に対し、図49の如く異常を示す情報をディスプレイ12に表示する(ステップS478)。この表示処理は発光時及び非発光時それぞれについて層別に行われる。
CPU11aは記憶部11bに記憶した層数に応じた枠体を読み出して生成し、ディスプレイ12に表示する(ステップS479)。なおこの場合、CPU11aは、履歴ファイル110を参照し、生成した各枠体と、有機膜56が有する各層との関連づけを行う。CPU11aは記憶部11bに記憶した屈折率、消衰係数、または膜厚別に異常を示す情報を読み出す。そして、CPU11aは、屈折率、消衰係数、及び膜厚の経年変化率が閾値を超える層の枠体に、屈折率、消衰係数、または膜厚の異常を示す情報を合成した画像を生成し、測定日時に対応づけて記憶部11bに記憶する(ステップS481)。ステップS471乃至S481の処理は、完成時と一年後と、及び、完成時と2年後との如く、完成時と完成時後の測定日時との全ての組み合わせに対して実行される。なお、図49に示すように、透光性基板51及びカバー部材57側の双方から計測を実施したことを明確にすべく、カバー部材57を示すC字型の枠体及び透光性基板51を示す矩形状の枠体を、有機膜56の各層を示す枠体を覆うように表示しても良い。これらの枠体の表示処理は、実施の形態3で述べたとおりであるので詳細な説明は省略する。
CPU11aは当該生成した合成画像を図49の如くディスプレイ12に表示する(ステップS482)。CPU11aは記憶部11b及び履歴ファイル110を参照し、他の測定日時に対応する合成画像が記憶されているか否かを判断する(ステップS483)。CPU11aは他の測定日時に対応する合成画像が記憶されていると判断した場合(ステップS483でYES)、例えば図49の如く、1年後のみならず2年後の合成画像が記憶されている場合、当該記憶された合成画像を読み出す(ステップS484)。CPU11aは測定日時に基づき、合成画像を時系列にディスプレイ12に表示する(ステップS485)。これにより、既に生成された合成画像が時系列で表示されることから、ユーザは各有機膜56の経年変化を視覚的に、また、段階的に、把握することが可能となる。一方、CPU11aは他の測定日時に対応する合成画像が記憶されていないと判断した場合(ステップS483でNO)、例えば1年分の合成画像しか生成されていない場合、ステップS484及びS485の処理をスキップし処理を終了する。
本実施の形態7は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至6と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態8
実施の形態8は屈折率及び消衰係数の波長による変化を、発光時及び非発光時においてそれぞれ表示する形態に関する。図50は解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。実施の形態1の図9で示した解析結果に加えてCPU11aは屈折率及び消衰係数の波長に対する変化をグラフとして表示する。図50左側に示すグラフは屈折率の波長に対する変化を示す。縦軸は屈折率であり、横軸は波長(単位はnm)である。グラフ中、点線は発光時の屈折率の波長に対する変化を示し、実線は非発光時の屈折率の波長に対する変化を示す。
実施の形態1で述べた処理から波長全域にわたり、非発光時と発光時とにおける屈折率の変化が視認することができる。図50の例では、多くの帯域で一致しない点が散見される。CPU11aは実施の形態1にて屈折率に異常が存在すると判断した割合を屈折率異常率として算出する。CPU11aは算出した屈折率異常率を、グラフと共に表示部12へ出力する。
図50右側に示すグラフは消衰係数の波長に対する変化を示す。縦軸は消衰係数であり、横軸は波長(単位はnm)である。グラフ中、点線は発光時の消衰係数の波長に対する変化を示し、実線は非発光時の消衰係数の波長に対する変化を示す。なお、本実施の形態においては説明を容易にするために、層別にグラフを表示したが、全ての層を一括表示しても良いことはもちろんである。
実施の形態1で述べた処理から波長全域にわたり、非発光時と発光時とにおける消衰係数の変化が視認することができる。CPU11aは実施の形態1にて消衰係数に異常が存在すると判断した割合を消衰係数異常率として算出する。CPU11aは算出した消衰係数異常率を、グラフと共にディスプレイ12へ出力する。図の例では屈折率異常率が屈折率の変化を示すグラフと共に8%と表示され、消衰係数異常率が消衰係数の変化を示すグラフとともに5%と表示されている。
図51及び図52は波長に基づく不良品検出処理を示すフローチャートである。CPU11aは履歴ファイル110に記憶した各波長における非発光時の屈折率を読み出す(ステップS511)。またCPU11aは各波長における発光時の屈折率を読み出す(ステップS512)。CPU11aは図示しない表計算ソフトウェアを起動し、発光時及び非発光時における屈折率の波長に対する変化を示すグラフを作成する。CPU11aは作成したグラフを図50の如くディスプレイ12へ出力する(ステップS513)。
さらにCPU11aは予め定めたサンプリング数を記憶部11bから読み出す。CPU11aはステップS1311の処理により予め定めたサンプリング数の中で屈折率に異常ありと判断した数を履歴ファイル110から読み出す(ステップS514)。CPU11aはステップS514で読み出した数をサンプリング数で除すことにより、屈折率異常率を算出する(ステップS515)。なお、異常率の算出の際は%表示とすべく100を乗じる。例えば、CPU11aは予め記憶した閾値(例えば6%)を記憶部11bから読み出す。CPU11aは算出した屈折率異常率が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS516)。
CPU11aは閾値以上であると判断した場合(ステップS516でYES)、不良品を示す情報を表示する(ステップS517)。この情報は予め記憶部11bに記憶されており、例えば「屈折率に異常が多いため不良品と判断しました。」等のテキスト文とすればよい。一方、CPU11aは、閾値以上でないと判断した場合(ステップS516でNO)、ステップS517の処理をスキップする。CPU11aは当該処理の後及びステップ517の処理の後、ステップS515で算出した屈折率異常率をディスプレイ12へ出力する(ステップS518)。
CPU11aは履歴ファイル110に記憶した各波長における非発光時の消衰係数を読み出す(ステップS519)。またCPU11aは各波長における発光時の消衰係数を読み出す(ステップS521)。CPU11aは図示しない表計算ソフトウェアを起動し、発光時及び非発光時における消衰係数の波長に対する変化を示すグラフを作成する。CPU11aは作成したグラフを図50の如くディスプレイ12へ出力する(ステップS522)。
さらにCPU11aは予め定めたサンプリング数を記憶部11bから読み出す。CPU11aはステップS1311の処理により予め定めたサンプリング数の中で消衰係数に異常ありと判断した数を履歴ファイル110から読み出す(ステップS523)。CPU11aはステップS523で読み出した数をサンプリング数で除すことにより、消衰係数異常率を算出する(ステップS524)。CPU11aは予め記憶した閾値(例えば7%)を記憶部11bから読み出す。CPU11aは算出した消衰係数異常率が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS525)。
CPU11aは閾値以上であると判断した場合(ステップS525でYES)、不良品を示す情報を表示する(ステップS526)。この情報は予め記憶部11bに記憶されており、例えば「消衰係数に異常が多いため不良品と判断しました。」等のテキスト文とすればよい。一方、CPU11aは、閾値以上でないと判断した場合(ステップS525でNO)、ステップS526の処理をスキップする。CPU11aは当該処理の後及びステップ526の処理の後、ステップS524で算出した消衰係数異常率をディスプレイ12へ出力する(ステップS527)。
図53は座標別の異常状態を示す説明図である。CPU11aはステップS511乃至S527で算出した屈折率異常率及び消衰係数異常率を履歴ファイル110に記憶する。CPU11aはステージ4を移動させ、移動後の座標値についても同様の処理を行い移動後の座標値に対応づけて屈折率異常率及び消衰係数異常率を履歴ファイル110に記憶する。CPU11aは対象となる座標値についての処理を終えた場合、図53に示すグラフをディスプレイ12へ出力する。
図53に示すグラフは、有機EL素子パネル50の各座標値に対する屈折率異常率の変化を示すグラフである。横軸及び縦軸は有機EL素子パネル50のいずれか一角を原点座標とした場合のx軸及びy軸を示す。上方向へ伸びる軸は各座標値に対応する屈折率異常率を示す軸である。有機EL素子パネル50の各座標値に対応して、屈折率異常率が棒グラフとして表示される。これにより、有機EL素子パネル50の平面視における屈折率の異常箇所及びその量を視認することができる。
CPU11aは履歴ファイル110に記憶した各座標値に対する屈折率異常率に基づきグラフを作成しディスプレイ12へ出力する。同様にCPU11aは消衰係数異常率をもグラフ表示する。なお、本実施の形態においては説明を容易にするために、一画面に屈折率異常率のみを表示する例を説明したが、各座標値における消衰係数異常率をもあわせて一覧表示しても良いことはもちろんである。
図54及び図55は座標別の異常状態の表示処理手順を示すフローチャートである。CPU11aはステップS511乃至S527で述べた処理を座標値毎に行い、座標値毎に屈折率異常率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS540)。CPU11aは図53に示す屈折率タグがマウス14によりクリックされた場合、履歴ファイル110から各座標値における屈折率異常率を読み出す(ステップS541)。CPU11aは表計算ソフトウェアを起動し、座標値毎の屈折率異常率を示すグラフを作成し、ディスプレイ12へ出力する(ステップS542)。
CPU11aはさらに、異常の程度を客観化すべく点数計算を行う。以下では屈折率異常に係る点数を屈折率異常点数という。CPU11aは履歴ファイル110を参照し、各座標値における屈折率異常率を加算し、その合計値を屈折率異常点数として算出し、ディスプレイ12へ出力する(ステップS543)。CPU11aは算出した屈折率異常点数が予め記憶部11bに記憶した所定点数(例えば100点)以上であるか否かを判断する(ステップS544)。
CPU11aは所定点数以上であると判断した場合(ステップS544でYES)、不良品であることを示す情報を記憶部11bから読み出して表示する(ステップS545)。この情報は例えば「屈折率の異常が全般にわたり散見されます。」等のテキスト文とすればよい。CPU11aは所定点数以上でないと判断した場合(ステップS544でNO)、ステップS545の処理をスキップする。当該処理の後及びステップS545の処理の後、ステップS546の処理へ移行する。
CPU11aはステップS511乃至S527で述べた処理を座標値毎に行い、座標値毎に消衰係数異常率を履歴ファイル110に記憶する(ステップS546)。CPU11aは図53に示す消衰係数タグがマウス14によりクリックされた場合、履歴ファイル110から各座標値における消衰係数異常率を読み出す(ステップS547)。CPU11aは表計算ソフトウェアを起動し、座標値毎の消衰係数異常率を示すグラフを作成し、ディスプレイ12へ出力する(ステップS548)。
CPU11aはさらに、異常の程度を客観化すべく点数計算を行う。以下では消衰係数異常に係る点数を消衰係数異常点数という。CPU11aは履歴ファイル110を参照し、各座標値における消衰係数異常率を加算し、その合計値を消衰係数異常点数として算出し、ディスプレイ12へ出力する(ステップS549)。CPU11aは算出した消衰係数異常点数が予め記憶部11bに記憶した所定点数(例えば110点)以上であるか否かを判断する(ステップS5410)。
CPU11aは所定点数以上であると判断した場合(ステップS5410でYES)、不良品であることを示す情報を記憶部11bから読み出して表示する(ステップS551)。この情報は例えば「消衰係数の異常が全般にわたり散見されます。」等のテキスト文とすればよい。CPU11aは所定点数以上でないと判断した場合(ステップS5410でNO)、ステップS551の処理をスキップする。なお上述した点数の算出方法はあくまで一例でありこれに限るものではない。例えば、以下に示す点数算出処理を実行しても良い。CPU11aは、履歴ファイル110を参照し、各座標値における屈折率異常率(または消衰係数異常率)を算出する。CPU11aは、一の座標値に関し、算出した屈折率異常率(または消衰係数異常率)が、記憶部11bに予め記憶した閾値を超えるか否かを判断する。CPU11aは、閾値を超えると判断した場合、フラグをRAM11cに設定する。CPU11aは当該処理を全ての座標値に対して実行する。CPU11aはRAM11cに記憶したフラグ数を、屈折率異常点数(または消衰係数異常点数)として、計数する。CPU11aはこの計数した合計値が、記憶部11bに予め記憶した値を超えるか否かを判断する。CPU11aは合計値が、記憶した値を超えると判断した場合、測定対象である有機EL素子パネル50が不良品であることを示す情報を、ディスプレイ12へ出力する。なお、当該処理は、必ずしも全ての座標値に対して実行する必要はなく、予め定めた所定の座標値に対してのみ実行しても良い。また閾値を0、すなわち、屈折率異常率(または消衰係数異常率)の値が存在する場合に一律に異常箇所としてフラグを設定するようにしても良い。
本実施の形態8は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至7と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態9
実施の形態9は屈折率及び消衰係数の波長による変化を、完成時及びその後の計測時においてそれぞれ表示する形態に関する。図56は解析結果の出力画面のイメージを示す説明図である。実施の形態1の図11で示した解析結果に加えてCPU11aは屈折率及び消衰係数の波長に対する変化をグラフとして表示する。図56左側に示すグラフは屈折率の波長に対する変化を示す。縦軸は屈折率であり、横軸は波長(単位はnm)である。グラフ中、点線は発光時でありかつ第1計測時(本例では2007年10月15日)における屈折率の波長に対する変化を示し、実線は発光時でありかつ第1計測時よりも後の第2計測時(本例では1年後の2008年10月15日)の屈折率の波長に対する変化を示す。
実施の形態1で述べた処理から波長全域にわたり、第1計測時と第2計測時とにおける屈折率の変化が視認することができる。CPU11aは実施の形態1にて屈折率の経年変化率が閾値を超えると判断した割合を屈折率経年異常率として算出する。CPU11aは算出した屈折率経年異常率を、グラフと共にディスプレイ12へ出力する。なお図56に示すグラフは発光時における屈折率の変化を示したが、同様に非発光時の屈折率の変化を示しても良い。
図56右側に示すグラフは消衰係数の波長に対する変化を示す。縦軸は消衰係数であり、横軸は波長(単位はnm)である。グラフ中、点線は第1計測時の消衰係数の波長に対する変化を示し、実線は第2計測時の消衰係数の波長に対する変化を示す。なお、本実施の形態においては説明を容易にするために、層別にグラフを表示したが、全ての層を一括表示しても良いことはもちろんである。
実施の形態1で述べた処理から波長全域にわたり、第1計測時と第2計測時とにおける消衰係数の変化が視認することができる。CPU11aは実施の形態1にて消衰係数の経年変化率が閾値を超えると判断した割合を消衰係数経年異常率として算出する。CPU11aは算出した消衰係数経年異常率を、グラフと共にディスプレイ12へ出力する。図の例では屈折率経年異常率が屈折率の変化を示すグラフと共に20%と表示され、消衰係数経年異常率が消衰係数の変化を示すグラフとともに15%と表示されている。
図57及び図58は波長に基づく不良品検出処理を示すフローチャートである。CPU11aは図14に示す履歴ファイル110に記憶した各波長における発光時の第1計測時の屈折率を読み出す(ステップS571)。またCPU11aは各波長における発光時の第2計測時の屈折率を読み出す(ステップS572)。CPU11aは図示しない表計算ソフトウェアを起動し、第1計測時及び第2計測時における屈折率の波長に対する変化を示すグラフを作成する。CPU11aは作成したグラフを図56の如くディスプレイ12へ出力する(ステップS573)。
さらにCPU11aは予め定めたサンプリング数を記憶部11bから読み出す。CPU11aはステップS174及びS178の処理により予め定めたサンプリング数の中で屈折率の経年変化率が閾値を超え、異常ありと判断した数を履歴ファイル110から読み出す(ステップS574)。CPU11aは、ステップS574で読み出した数をサンプリング数で除すことにより、屈折率経年異常率を算出する(ステップS575)。CPU11aは予め記憶した閾値(例えば8%)を記憶部11bから読み出す。CPU11aは算出した屈折率経年異常率が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS576)。
CPU11aは閾値以上であると判断した場合(ステップS576でYES)、不良品を示す情報を表示する(ステップS577)。この情報は予め記憶部11bに記憶されており、例えば「屈折率が経年により劣化しています。不良品と判断しました。」等のテキスト文とすればよい。一方、CPU11aは、閾値以上でないと判断した場合(ステップS576でNO)、ステップS577の処理をスキップする。CPU11aは当該処理の後及びステップ577の処理の後、ステップS575で算出した屈折率経年異常率をディスプレイ12へ出力する(ステップS578)。
CPU11aは履歴ファイル110に記憶した各波長における発光時の第1計測時の消衰係数を読み出す(ステップS579)。またCPU11aは各波長における発光時の第2計測時の消衰係数を読み出す(ステップS581)。CPU11aは図示しない表計算ソフトウェアを起動し、第1計測時及び第2計測時における消衰係数の波長に対する変化を示すグラフを作成する。CPU11aは作成したグラフを図56の如くディスプレイ12へ出力する(ステップS582)。
さらにCPU11aは予め定めた波長のサンプリング数を記憶部11bから読み出す。CPU11aはステップS174及びS178の処理により予め定めたサンプリング数の中で消衰係数の経年変化率が閾値を超え、異常ありと判断した波長の個数を履歴ファイル110から読み出す(ステップS583)。CPU11aは、ステップS583で読み出した個数をサンプリング数で除すことにより、消衰係数経年異常率を算出する(ステップS584)。CPU11aは予め記憶した閾値(例えば10%)を記憶部11bから読み出す。CPU11aは算出した消衰係数経年異常率が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS585)。
CPU11aは閾値以上であると判断した場合(ステップS585でYES)、不良品を示す情報を表示する(ステップS586)。この情報は予め記憶部11bに記憶されており、例えば「経年により消衰係数に異常が見られます。不良品と判断します。」等のテキスト文とすればよい。一方、CPU11aは、閾値以上でないと判断した場合(ステップS585でNO)、ステップS586の処理をスキップする。CPU11aは当該処理の後及びステップ586の処理の後、ステップS584で算出した消衰係数経年異常率をディスプレイ12へ出力する(ステップS587)。なお以上で述べた処理は発光時における処理であるが、非発光時の処理も同様に行えばよい。
図59は座標別の経年異常状態を示す説明図である。CPU11aはステップS571乃至S587で算出した屈折率経年異常率及び消衰係数経年異常率を履歴ファイル110に記憶する。CPU11aはステージ4を移動させ、移動後の座標値についても同様の処理を行い移動後の座標値に対応づけて屈折率経年異常率及び消衰係数経年異常率を履歴ファイル110に記憶する。CPU11aは対象となる座標値についての処理を終えた場合、図59に示すグラフをディスプレイ12へ出力する。
図59に示すグラフは、有機EL素子パネル50の各座標値に対する屈折率経年異常率の変化を示すグラフである。横軸及び縦軸は有機EL素子パネル50のいずれか一角を原点座標とした場合のx軸及びy軸を示す。上方向へ伸びる軸は各座標値に対応する屈折率経年異常率を示す軸である。有機EL素子パネル50の各座標値に対応して、屈折率経年異常率が棒グラフとして表示される。これにより、有機EL素子パネル50の平面視における屈折率の異常箇所及びその量を視認することができる。図59の例では、有機EL素子パネル50の外周付近に経年に伴う異常が散見される。
CPU11aは履歴ファイル110に記憶した各座標値に対する屈折率経年異常率に基づきグラフを作成しディスプレイ12へ出力する。同様にCPU11aは消衰係数経年異常率及び膜厚経年変化率(詳細については後述する)をもグラフ表示する。なお、本実施の形態においては説明を容易にするために、一画面に屈折率経年異常率のみを表示する例を説明したが、各座標値における消衰係数経年異常率及び膜厚経年変化率をもあわせて一覧表示しても良いことはもちろんである。
図60及び図61は座標別の経年異常率及び点数の算出処理手順を示すフローチャートである。CPU11aは検査対象とする座標値を記憶部11bから読み出す(ステップS601)。有機EL素子パネル50は経年変化により透光性基板51とカバー部材57との接合部分から空気が侵入し、有機膜56の平面視における外周辺にて経年に基づく異常が発生する可能性が高いと想定される。本実施の形態においては、記憶部11bに予め検査対象とする座標値を記憶しておき、当該検査対象となる座標値について経年変化に伴う異常率及び点数を算出する。
具体的には、有機膜56の平面視における外周部分について検査対象とする座標値を多く記憶し、平面視における中央部分にかけて徐々に検査対象とする座標値を少なくするよう記憶しておく。これにより、より効率よく有機EL素子パネル50の経年変化に伴う異常を判断することが可能となる。なお、検査対象とする座標値の例はあくまで一例であり、これに限るものではなく、また全ての座標値について経年変化に伴う異常率及び点数を算出しても良い。
CPU11aはステップS575で述べた処理を実行することにより、屈折率経年異常率を算出する(ステップS602)。CPU11aは検査対象の座標値毎の屈折率経年異常率をグラフとしてディスプレイ12へ出力する(ステップS603)。CPU11aは検査対象の座標値に対する重みを記憶部11bから読み出す(ステップS604)。この重みは検査対象となる座標値に対応づけて値が記憶部11bに予め記憶されている。例えば重みは外周部分の座標値については大きな値が記憶されており、中心部分に向かうにつれて重みが小さくなるよう記憶されている。
CPU11aは、検査対象となる各座標値の屈折率経年異常率に、対応する座標値に係る重みをそれぞれ乗じて、座標値毎の屈折率経年異常率の補正値を算出する(ステップS605)。CPU11aは乗算後の各座標値の屈折率経年異常率の補正値を加算し、その合計値を屈折率異常点数として算出する(ステップS606)。CPU11aは屈折率経年異常点数が所定点数以上であるか否かを判断する(ステップS607)。この所定点数は予め記憶部11bに記憶されており、例えば30点とすればよい。
CPU11aは屈折率経年異常点数が所定点数以上であると判断した場合(ステップS607でYES)、不良品であることを示す情報を、記憶部11bから読み出して表示する(ステップS608)。当該処理の後及びCPU11aが、所定点数以上でないと判断した場合(ステップS607でNO)、ステップS609の処理へ移行する。
CPU11aはステップS584で述べた処理を実行することにより、消衰係数経年変化異常率を算出する(ステップS609)。CPU11aは検査対象の座標値毎の消衰係数経年異常率をグラフとしてディスプレイ12へ出力する(ステップS612)。CPU11aは、検査対象となる各座標値の消衰係数経年異常率に、対応する座標値に係る重みをそれぞれ乗じて、座標値毎の消衰係数経年異常率の補正値を算出する(ステップS613)。CPU11aは乗算後の各座標値の消衰係数経年異常率の補正値を加算し、その合計値を消衰係数異常点数として算出する(ステップS614)。CPU11aは消衰係数経年異常点数が所定点数以上であるか否かを判断する(ステップS615)。この所定点数は予め記憶部11bに記憶されており、例えば20点とすればよい。なお上述した点数の算出方法はあくまで一例でありこれに限るものではない。例えば、以下に示す点数算出処理を実行しても良い。CPU11aは、履歴ファイル110を参照し、各座標値における屈折率経年異常率(または消衰係数経年異常率)を算出する。CPU11aは、一の座標値に関し、算出した屈折率経年異常率(または消衰係数経年異常率)が、記憶部11bに予め記憶した閾値を超えるか否かを判断する。CPU11aは、閾値を超えると判断した場合、フラグをRAM11cに設定する。CPU11aは当該処理を全ての座標値に対して実行する。CPU11aはRAM11cに記憶したフラグ数を、屈折率異常点数(または消衰係数異常点数)として、計数する。CPU11aはこの計数した合計値が、記憶部11bに予め記憶した値を超えるか否かを判断する。CPU11aは合計値が、記憶した値を超えると判断した場合、測定対象である有機EL素子パネル50が不良品であることを示す情報を、ディスプレイ12へ出力する。なお、当該処理は、必ずしも全ての座標値に対して実行する必要はなく、予め定めた所定の座標値に対してのみ実行しても良い。また閾値を0、すなわち、屈折率経年異常率(または消衰係数経年異常率)の値が存在する場合に一律に異常箇所としてフラグを設定するようにしても良い。
CPU11aは消衰係数経年異常点数が所定点数以上であると判断した場合(ステップS615でYES)、不良品であることを示す情報を、記憶部11bから読み出して表示する(ステップS616)。当該処理の後及びCPU11aが、所定点数以上でないと判断した場合(ステップS615でNO)、ステップS617の処理へ移行する。CPU11aは所定の座標値について図14に示す履歴ファイル110に記憶した発光時の第1計測時の膜厚及び発光時の第2計測時の膜厚を読み出す(ステップS617)。
CPU11aは読み出した第1計測時の膜厚を第2計測時の膜厚で除すことにより膜厚の経年変化率を算出する(ステップS618)。なお、第2計測時の膜厚を第1計測時の膜厚で除しても良い。CPU11aは対応する座標値に経年変化率をグラフとしてディスプレイ12に出力する(ステップS619)。CPU11aは膜厚の経年変化率が、記憶部11bに予め記憶した閾値を超えるか否かを判断する(ステップS6111)。
CPU11aは膜厚の経年変化率が閾値を超えると判断した場合(ステップS6111でYES)、当該座標値にフラグを設定する(ステップS6112)。CPU11aは膜厚の経年変化率が閾値を超えないと判断した場合(ステップS6111でNO)、ステップS6112の処理をスキップする。CPU11aは全ての座標値について処理を終了したか否かを判断する(ステップS6113)。なお、上述したように全ての座標値に対してこれらの処理を行うのではなく、予め記憶部11bに予め記憶した所定の複数の座標値についてのみ処理を実行しても良い。
CPU11aは全ての座標値について処理を終了していないと判断した場合(ステップS6113でNO)、他の座標値について同様の処理を行うべくステップS617へ移行し同様の処理を行う。一方、CPU11aは全ての座標値について処理が終了したと判断した場合(ステップS6113でYES)、ステップS6112で設定した各座標値のフラグの合計値が記憶部11bに予め記憶した所定点数以上であるか否かを判断する(ステップS6114)。
ここでCPU11aはフラグ合計値が所定点数以上である場合(ステップS6114でYES)、不良品であることを示す情報をディスプレイ12へ表示する(ステップS6115)。一方、CPU11aはフラグ合計値が所定点数以上でない場合(ステップS6114でNO)、処理を終了する。なお、非発光時についても同様の処理であるので詳細な説明は省略する。
なお、ステップS6113の処理は座標値別の重みを考慮しても良い。この場合、CPU11aは座標値に対して付与された重みを記憶部11bから読み出す。この重みは有機EL素子パネル50の平面視における外縁周部に大きな重みが設定され、中心部に向かうにつれ重みが小さくなるようその値が記憶されている。CPU11aはステップS6112にて座標値にフラグを設定した場合、基本ポイント1に当該座標値の対応する重みを乗じて当該座標値の補正ポイントを算出する。CPU11aは当該処理をステップS6112の各座標値について行う。CPU11aは各座標値の補正ポイントの合計値を算出する。最後にCPU11aはこの補正ポイントの合計値が記憶部11bに予め記憶した所定ポイントを超える場合に不良品と判断する。なお紙面の都合上割愛したが、図14、22、及び28における履歴ファイル110には図7と同様に試料フィールドが設けられ対応する試料名が記憶されている。また紙面の都合上割愛したが、図9、16、23、29、46、49、50、53、56及び59等においてディスプレイ12上に対応する試料名を表示しても良いことはもちろんである。
本実施の形態9は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至8と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
(付記1)
透光性基板上に膜が形成された有機EL素子を封止部材で覆った試料を計測する分光エリプソメータにおいて、
前記有機EL素子に電圧を印加することにより該有機EL素子を発光させた状態で、前記透光性基板側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する発光測定手段と、
前記発光測定手段により測定した光の偏光状態に基づき、前記膜の光学定数を算出する発光算出手段と、
予め記憶部に記憶した前記試料の完成段階にて前記発光算出手段により算出された光学定数を読み出す手段と、
該手段により読み出した光学定数及び前記発光算出手段により算出した光学定数間の差または比を出力する手段と
を備えることを特徴とする分光エリプソメータ。
(付記2)
透光性基板上に膜が形成された有機EL素子を封止部材で覆った試料を計測する分光エリプソメータにおいて、
有機EL素子を発光させない状態で、前記透光性基板側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する非発光測定手段と、
前記非発光測定手段により測定した光の偏光状態に基づき、前記膜の光学定数を算出する非発光算出手段と、
予め記憶部に記憶した前記試料の完成段階にて前記非発光算出手段により算出された光学定数を読み出す手段と、
該手段により読み出した光学定数及び前記非発光算出手段により算出した光学定数間の差または比を出力する手段と
を備えることを特徴とする分光エリプソメータ。
(付記3)
透光性基板上に膜が形成された有機EL素子を封止部材で覆った試料を計測する分光エリプソメータにおいて、
前記有機EL素子に電圧を印加することにより該有機EL素子を発光させた状態で、前記封止部材側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する発光測定手段と、
前記発光測定手段により測定した光の偏光状態に基づき、前記膜の光学定数を算出する発光算出手段と、
予め記憶部に記憶した前記試料の完成段階にて前記発光算出手段により算出された光学定数を読み出す手段と、
該手段により読み出した光学定数及び前記発光算出手段により算出した光学定数間の差または比を出力する手段と
を備えることを特徴とする分光エリプソメータ。
(付記4)
透光性基板上に膜が形成された有機EL素子を封止部材で覆った試料を計測する分光エリプソメータにおいて、
有機EL素子を発光させない状態で、前記封止部材側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する非発光測定手段と、
前記非発光測定手段により測定した光の偏光状態に基づき、前記膜の光学定数を算出する非発光算出手段と、
予め記憶部に記憶した前記試料の完成段階にて前記非発光算出手段により算出された光学定数を読み出す手段と、
該手段により読み出した光学定数及び前記非発光算出手段により算出した光学定数間の差または比を出力する手段と
を備えることを特徴とする分光エリプソメータ。
(付記5)
透光性基板上に膜が形成された有機EL素子を封止部材で覆った試料を計測する分光エリプソメータにおいて、
前記有機EL素子に電圧を印加することにより該有機EL素子を発光させた状態で、前記透光性基板側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する基板側発光測定手段と、
前記有機EL素子に電圧を印加することにより該有機EL素子を発光させた状態で、前記封止部材側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する封止部材側発光測定手段と、
前記基板側発光測定手段及び封止部材側発光測定手段により測定した光の偏光状態に基づき、前記膜の光学定数を算出する発光算出手段と、
予め記憶部に記憶した前記試料の完成段階にて前記発光算出手段により算出された光学定数を読み出す手段と、
該手段により読み出した光学定数及び前記発光算出手段により算出した光学定数間の差または比を出力する手段と
を備えることを特徴とする分光エリプソメータ。
(付記6)
透光性基板上に膜が形成された有機EL素子を封止部材で覆った試料を計測する分光エリプソメータにおいて、
有機EL素子を発光させない状態で、前記透光性基板側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する基板側非発光測定手段と、
有機EL素子を発光させない状態で、前記封止部材側から光を照射し、前記試料で反射した光の偏光状態を測定する封止部材側非発光測定手段と、
前記基板側非発光測定手段及び封止部材側非発光測定手段により測定した光の偏光状態に基づき、前記膜の光学定数を算出する非発光算出手段と、
前記発光算出手段及び非発光算出手段により算出した光学定数間の差または比を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする分光エリプソメータ。