JP4658183B2 - 熱交換機能付濾過器及びこれを備える循環式浴用ユニット - Google Patents

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Description

本発明は、熱交換機能付濾過器、これを備える循環式浴用ユニットに関する。更に詳しくは、本発明は、濾材そのものを殺菌することができ、レジオネラ属菌等の細菌の増殖を抑えることができる熱交換機能付濾過器、及びこの濾過器を備え、レジオネラ症等の細菌症への感染を抑えることができ、過熱蒸気により水を急速に昇温させることができるため、省エネルギーの観点でも有利であり、且つ浴湯の循環を停止した後、従来に比べて短時間で運転を再開することができる循環式浴用ユニットに関する。
浴用水循環技術は、浴用水及び熱エネルギー等の有効利用に必要な技術として、従来から、公衆浴場等の浴用施設、並びにホテル、旅館等の観光施設及び福祉施設等における浴用施設などで用いられており、循環式浴用施設とすることで、夜間、早朝等、何時でも入浴することができる。この循環式浴用施設では、浴湯の循環を停止し、浴湯を排水し、その後、浴槽を清掃し、次いで、熱交換器等を稼動させて循環を再開させた場合、多量の浴用水を及びこの浴用水を適温に昇温させるための多くの熱エネルギーを必要とする。
特に、ホテル及び旅館等では、複数の浴槽が設置されることが多く、且つ各々の浴槽が大型であるため、浴湯の循環を停止、再稼動させる場合、より多くの浴用水と熱エネルギーとを必要とする。そのため、浴湯の循環が長期に渡って継続される傾向にある。また、複数の大型の浴槽が設置されることの他、多くの人が利用するため、洗髪等におけるシャワーの利用などによっても大量の浴湯が使用される。従って、循環を継続したとしても、多くの熱エネルギーを必要とし、特に、冬期には燃料費の更なる節減が大きな課題となっている。
更に、循環式浴用施設では、浴湯の汚れは十分に除去され、目視ではまったく問題のない程度に清浄である。また、大腸菌等の一般の細菌の浮遊数等は、通常、基準値を十分に下回っており、特に問題はない。しかし、終夜運転により菌の増殖が助長され、また、レジオネラ症等の感染症が発生することもあり、大きな社会問題になっている(例えば、特許文献1参照。)。このような感染症の発生は、配管の内壁及び濾過器の内部等に付着するバイオフィルム等においてレジオネラ属菌等の細菌が大量に増殖するためである。この感染症の発生を抑えるためには、殺菌及び浴湯の交換等が有効であるが、コストの点で浴湯の交換を頻繁に行うことは現実的ではない。
特開平10−314755号公報
配管の内壁等は、従来から、過塩素酸、次亜塩素酸及び過酸化物等を用いて殺菌されている。しかし、塩素系の薬剤はトリハロメタンの生成等により生体及び環境への悪影響が懸念され、過酸化物は危険物であって取り扱いに十分な注意が必要である。また、特に、濾過器の内部は、濾材による吸着と、濾材の内部の微細な多数の流路とにより、殺菌及び洗浄が容易ではない。更に、浴湯の交換についても、前記のように多くの浴用水と熱エネルギーとを必要とし、また、従来は約60℃の温水と10〜20℃の浴用水との熱交換であり、熱交換の効率が低く、浴用水の急速昇温ができないため、浴湯の交換頻度を高めることができないのが実情である。
本発明は上記の従来の問題を解決するものであり、過熱蒸気を供給することで内部を殺菌することができ、且つ濾材に付着したバイオフィルム等を剥離し、除去し易い熱交換機 能付濾過器、及び濾材を殺菌するための塩素系等の殺菌剤を用いることなく、レジオネラ属菌等の細菌を低減させることができ、且つ浴用水を急速昇温させることができ、又は浴湯を適温に保持することができる循環式浴用ユニットを提供することを課題とする。
本発明は以下のとおりである。
1.濾過器本体と、該濾過器本体に内装された濾材と、該濾過器本体に設けられ、該濾材の下方に開口し、該濾過器本体に過熱蒸気を供給するための濾過器用過熱蒸気供給管と、該濾過器本体に設けられた被処理水・逆洗水供給管と、を備え、上記被処理水・逆洗水供給管は、被処理水を上記濾過器本体の内部上方に供給するための被処理水供給管と、該被処理水供給管の一端部に接続され、且つ逆洗水を該濾過器本体の内部下方に供給するための逆洗水供給管と、を有し、上記濾過器用過熱蒸気供給管を分岐させ、上記濾材の上方に開口させたことを特徴とする熱交換機能付濾過器。
2.上記濾材の下方に開口する濾過器用過熱蒸気供給管は、殺菌用のものであり、上記濾材の上方に開口する濾過器用過熱蒸気供給管は、熱交換用のものである上記.に記載の熱交換機能付濾過器。
3.上記逆洗水供給管から分岐した処理水排出管、上記被処理水供給管から分岐した逆洗水排出管、並びに該被処理水供給管に配設されたバルブ、該逆洗水供給管の該被処理水供給管との接続部と該処理水排出管が分岐している分岐部との間に配設されたバルブ、該処理水排出管に配設されたバルブ、該逆洗水供給管の該処理水排出管が分岐している分岐部と上記逆洗水の供給口との間に配設されたバイパス用バルブ及び該逆洗水排出管に配設されたバルブ、を備える上記1.又は2.に記載の熱交換機能付濾過器。
4.上記.に記載の熱交換機能付濾過器を備える循環式浴用ユニットであって、
一端側が上記処理水排出管に接続された高温水排出管を備え、上記被処理水供給管に配設されたバルブ、上記バイパス用バルブ及び上記処理水排出管に配設されたバルブを開とし、且つ上記逆洗水供給管の該被処理水供給管との接続部と該処理水排出管が分岐している分岐部との間に配設されたバルブ及び上記逆洗水排出管に配設されたバルブを閉として、上記被処理水を濾過し、上記濾過時、上記濾過器用過熱蒸気供給管に配設されたバルブを開とし、上記熱交換機能付濾過器に供給される上記過熱蒸気と上記被処理水とを接触させて熱交換させることを特徴とする循環式浴用ユニット。
5.滅菌水を循環させる際、上記被処理水供給管に配設されたバルブ及び上記バイパス用バルブを閉とし、上記逆洗水供給管の該被処理水供給管との接続部と該処理水排出管が分岐している分岐部との間に配設されたバルブ及び上記処理水排出管に配設されたバルブを開として、該滅菌水を、上記逆洗水供給管の一部及び上記処理水排出管を経由して循環させる上記.に記載の循環式浴用ユニット。
本発明の熱交換機能付濾過器によれば、内部に過熱蒸気が供給されることで、塩素系等の殺菌剤を用いることなく、濾材等を殺菌することができ、且つ濾材に付着したバイオフィルム等の除去も容易である。
また、濾過器の内部の水が排出された状態で、濾過器用過熱蒸気供給管から過熱蒸気が供給され、濾材が殺菌される場合は、より短時間で殺菌することができ、且つ噴き出される過熱蒸気の衝撃により濾材に付着しているバイオフィルム等がより剥離し易くなる。
更に、濾過器用過熱蒸気供給口から過熱蒸気が供給され、内部の水が80℃以上の温度に保持されることで、濾材が殺菌される場合は、濾過器の内部の水を排出する必要がなく、より容易に濾材を殺菌することができる。
また、予め吸着材と接触させた被処理水が供給される場合は、濾材等をより十分に殺菌することができる。
更に、濾材が殺菌された後、被処理水が濾過時とは逆方向に流通することで、濾過器本体の内部が洗浄される場合は、濾材から剥離されたバイオフィルム等を濾過器の外部に流出させることができ、濾過器の内部をより清浄にすることができる。
熱交換器用過熱蒸気供給管に配設されたバルブの開閉により過熱蒸気の供給量を制御し、水を急速に昇温させる、又は水を恒温にするための過熱蒸気供給量制御部を備える熱交換器、及び熱交換器用過熱蒸気供給管に配設された2個のバルブと、2個のバルブの中間に配置された過熱蒸気溜と、2個のバルブの開閉により過熱蒸気の供給量を制御し、水を急速に昇温させる、又は水を恒温にするための過熱蒸気供給量制御部と、を備える他の熱交換器によれば、過熱蒸気と水とを接触させることで水を急速に昇温させることができ、過熱蒸気の供給量を制御することで、水を恒温にすることもできる。
循環式浴用ユニットは、濾過器及び熱交換器を備え、濾材を殺菌するための塩素系等の殺菌剤を用いることなく、浴湯を清浄に保持することができ、浴用水を急速に昇温させることができるため、必要な熱エネルギーを低減することができ、浴湯交換の頻度を高めることもできる。
また、過熱蒸気により濾材を殺菌し、その後、低温水と過熱蒸気との間で熱交換させて高温水とし、この高温水を循環させる場合は、濾材を十分に殺菌することができ、且つ短時間で適温の浴湯とすることができ、この浴湯を循環させることができる。
更に、濾過器用過熱蒸気供給管からの過熱蒸気の供給を開始する時点から、高温水の循環を開始する時点までの間隔が60分以内である場合は、連続運転の必要がなく、例えば、夜間は循環を停止、翌朝、運転を開始することもできる。
また、濾過器に、被処理水・逆洗水供給管と処理水排出管とをバルブを介して直接接続するバイパス管が配設され、浴槽を含む経路全体に滅菌水を循環させて滅菌する際に、このバルブを閉じ、被処理水・逆洗水供給管と処理水排出管との間に配設されたバルブを開いた状態で循環させる場合は、滅菌水が濾過器の内部を循環しないため、特に、濾過器の内部の水を排出しておけば、濾材における菌の増殖を十分に抑えることができる。
浴湯の循環方法によれば、浴湯の循環を停止した後、短時間で浴湯の循環を再開することができる。そのため、例えば、1週間から10日間、又はそれ以上の長期に渡って浴湯の循環を連続して行う必要がなく、細菌の増殖が抑えられ、且つ熱エネルギーを節減することができる。
更に、高温水の循環の開始から、浴湯の循環の停止を経て、高温水の循環を再開するまでの間隔が24時間以内である場合は、例えば、夜間、浴湯の循環を停止したときでも、翌朝、循環を再開することがきる。
以下、例えば、図1〜6を用いて本発明を詳しく説明する。
[1]濾過器(図1〜2参照)
本発明の濾過器1は、濾過器本体11と、濾過器本体11に内装された濾材2と、濾過器本体11に設けられ、濾材2の殺菌に用いられる過熱蒸気を供給するための濾過器用過熱蒸気供給管14と、を備え、水の濾過に用いられる。
上記「濾過器本体11」の形状は特に限定されないが、有底円筒形であることが多い。また、上部開口部の周縁にはフランジ部が設けられており、このフランジ部には、濾過器本体11の上部開口部を閉止するための蓋部材12のフランジ部が当接され、ボルト及びナット等により固定されている。濾過器本体11及び蓋部材12の寸法は特に限定されず、目的、用途及び必要とされる処理能力等により設定することができる。濾過器本体11及び蓋部材12の寸法は、通常、径が300〜2000mm、長さが1000〜3000mm程度である。更に、濾過器本体11及び蓋部材12の材質も特に限定されないが、いずれも強度が大きく、錆難く、優れた耐久性を有している必要があり、併せてコストの観点から、通常、ステンレス鋼により形成される。
上記「濾材2」は、被処理水から塵埃、挟雑物等を除去することができればよく、特に限定されない。この濾材2としては、チタニア、ジルコニア等のセラミック製の多孔質体を用いることができる。更に、ゼオライト及び一般に麦飯石及び光明石という名称で提供されている天然鉱物等、並びに活性炭などの吸着性に優れた濾材を用いることができる。これらの濾材は優れた濾過性能を有するが、被処理水が細孔に滞留し易く、菌の増殖が助長される傾向にある。本発明の濾過器では、濾材が過熱蒸気により殺菌されるため、被処理水が滞留することによる菌の増殖が抑えられ、上記のように多孔質の濾材を用いた場合でも、感染症の発生が防止される。
上記「濾過器用過熱蒸気供給管14」から濾過器1の内部に過熱蒸気が供給され、この過熱蒸気の熱によって濾材2が殺菌される。濾過器用過熱蒸気供給管14が濾過器本体11に開口する位置は特に限定されず、濾過器本体11の上部、中間部及び下部のいずれでもよいが、過熱蒸気は内部における水の有無にかかわらず、供給後、濾過器本体11の内部を上昇するため、濾過器用過熱蒸気供給管14は、濾過器本体11の下部に開口させることが好ましい。これにより、濾材2全体を効率よく殺菌することができる。
過熱蒸気は、飽和蒸気が更に加熱されて生成する蒸気であり、低圧の飽和蒸気を使用して生成させることができる。飽和蒸気は低圧であるほど熱伝導性に優れるため、容易に高温の過熱蒸気を生成させることができる。そのため、過熱蒸気を用いる場合、その生成に使用される蒸気発生のためのボイラーを増設する必要もなく、コスト面でも有利である。また、過熱蒸気は高温における熱伝導性に優れるため、濾材12全体を高温でより効率よく殺菌することができる。
この過熱蒸気の温度は特に限定されないが、100℃以上、特に105℃以上であることが好ましく、更に110〜160℃であることがより好ましい。過熱蒸気の温度が100℃未満であると、十分に殺菌することができない場合があり、又は十分に殺菌するためには長時間を必要とすることがある。一方、160℃を越えると、蒸気圧が高くなりすぎるため好ましくない。更に、過熱蒸気の圧力も特に特に限定されず、0.15〜0.40MPa、特に0.15〜0.25MPaであることが好ましい。
この圧力は殺菌効率には大きな影響は及ぼさないが、過熱蒸気を供給した際に濾材2に衝撃が加わり、これにより、被処理水を濾過時とは逆方向に流通させて濾過器本体11の内部を洗浄する、所謂、逆洗時に、例えば、濾材2に付着したバイオフィルム等を剥離させ易くなるため、この観点からは0.20MPa以上であることが好ましい。
尚、過熱蒸気を供給する時間は、過熱蒸気の温度及び濾過器1の容積等により設定することができるが、通常、5〜25分、特に10〜20分とすることができる。
本発明の濾過器1では、その内部の水が排出された状態で、濾過器用過熱蒸気供給管14から過熱蒸気が供給され、濾材2が殺菌される。この場合、水を排出させる操作が必要となるものの、供給される過熱蒸気の温度低下も少なく、より短時間で効率よく濾材2を殺菌することができる。例えば、115〜125℃の過熱蒸気を供給したとき、排出される過熱蒸気の温度は100〜115℃、特に100〜110℃であり、過熱蒸気を5〜25分、特に10〜20分供給することで、濾材2を十分に殺菌することができる。
また、本発明の濾過器1では、濾過器用過熱蒸気供給管14から過熱蒸気が供給され、内部の水が80℃以上の温度に保持されることで、濾材2を殺菌することもできる。この場合、水を排出させる操作は必要としないが、過熱蒸気が水と接触して熱交換されるため、濾材2を殺菌するための温度は80℃以上、特に80〜90℃、更に80〜85℃となる。そのため、水を排出した場合に比べて殺菌に必要とする時間は長くなり、例えば、水温が80〜85℃であるときは、過熱蒸気を30〜50分、特に35〜45分供給することで、濾材2を十分に殺菌することができる。
尚、この水の温度は80℃以上であることが好ましいが、65℃以上、特に70℃以上であれば、過熱蒸気の供給時間を長くすることで、濾材2を十分に殺菌することができる。例えば、水温が65℃以上、70℃未満であるときは、過熱蒸気を60〜90分、特に65〜85分供給することで、濾材2を十分に殺菌することができる。更に、水温が70℃を越え、80℃未満であるときは、過熱蒸気を40〜70分、特に45〜65分供給することで、濾材2を十分に殺菌することができる。
被処理水は、何ら処理することなく濾過器1に供給してもよく、予め吸着材と接触させ、その後、濾過器1に供給してもよい。予め吸着材と接触させることで、濾過効率を高めることができ、濾過器1を逆洗する間隔を長くすることもできる。吸着材としては特に限定されず、多孔質セラミック、ゼオライト、麦飯石、光明石及び活性炭等を用いることができる。尚、これらの吸着性に富む多孔質セラミック及び天然鉱物は、前記のように、安全で、且つ水質浄化の作用に優れる濾材2として有用である。
本発明の濾過器1では、殺菌によりバイオフィルム等における細菌の増殖を抑えることができるが、濾材2に付着するバイオフィルム等の異物が多くなった場合は、これらを濾過器1から流出させ、内部を清浄にする必要がある。この濾過器本体11の内部の洗浄は、被処理水を濾過時とは逆方向に流通させる、所謂、逆洗により行うことができる。過熱蒸気は、通常、加圧されて供給されるため、殺菌時、前記のように濾材2に衝撃が加わり、濾材2に密着していたバイオフィルム等を濾材2から部分的に剥離させることができる。これにより、逆洗時にバイオフィルム等を剥離させ易くなり、濾材2等を十分に清浄にすることができる。このように濾材2等を清浄にすることで、逆洗の間隔を長くすることができ、運転コストを低減させることもできる。
この濾過器1を、例えば、循環式浴用ユニットに用いる場合、滅菌水を浴槽を含む経路全体に循環させて滅菌する操作が行われるが、このように滅菌水等を循環させると、特に、多孔質の濾材2を用いた濾過器1では、浴湯が細孔に滞留し易く、菌の増殖が助長され易い。このような菌の増殖を抑えるため、本発明の濾過器1では、逆洗水供給管にバイパス用バルブを配設し、浴槽を含む経路全体に滅菌水を循環させる際に、このバイパス用バルブ及び処理水供給管に配設されたバルブを閉じ、処理水排出管に配設されたバルブを開いた状態で滅菌水を循環させることにより、滅菌水等を、濾過器1の内部を流通させることなく、バイパス流路16を流通させ、循環させることができる。このように滅菌水等が濾過器1の内部を流通しない場合は、従来のように滅菌水等が濾過器の内部で消費されることがない。従って、浴槽及び配管等をより効率よく滅菌することができる。また、濾過器1の内部を浴湯が流通しないため、濾材2等が低温になり、濾材2における菌の増殖がより抑えられる。
尚、本発明の濾過器1において、被処理水・逆洗水供給管13、処理水排出管131、逆洗水排出管132、及び濾過器用過熱蒸気供給管14等は、通常、ステンレス鋼製である。
更に、本発明の濾過器1には、濾材2を殺菌するために供給される過熱蒸気により熱交換機能が付与されている。即ち、この濾過器1に過熱蒸気を供給するための濾過器用過熱蒸気供給管14の流路を、三方弁等により分岐させて濾材2の上方と下方とに開口させ(図2では、濾過器用過熱蒸気供給管14は、濾材2の下方のみに開口しているが、この下方の開口部と併せて、例えば、被処理水・逆洗水供給管13の濾材2の上方における開口部と濾材2との間に開口させ。)、濾材2の殺菌時には過熱蒸気を下方から供給し、熱交換時には過熱蒸気を上方から供給することで、濾過器1を熱交換器として機能させることできる。このように熱交換器として機能させる場合、上方と下方の両方から過熱蒸気を供給してもよいが、水温が上昇し過ぎる傾向がある。このようなときは、後記の熱交換器4における熱交換器用過熱蒸気供給管43と同様に分岐管にバルブを配設し、同様にして過熱蒸気の供給量を制御することもできる。これにより、濾材2を殺菌するとともに、熱交換によって水を急速に、且つ適温に昇温させる、又は水を恒温にすることができる。この場合、水と過熱蒸気とを十分に接触させ、熱交換の効率を向上させるため、所定個所に攪拌板等の攪拌手段を設けることもできる。また、濾過器1熱交換器として機能するときは、この濾過器1を備える循環式浴用ユニットにおいて、熱交換器4は併用してもよく、熱交換器4を備えていない循環式浴用ユニットとしてもよい。
即ち、本発明の濾過器と、一端側が該濾過器に接続された被処理水・逆洗水供給管と、一端側が該濾過器の処理水排出管に接続された高温水排出管と、を備える循環式浴用ユニット、例えば、図6の循環式浴用ユニットにおいて、熱交換器4を備えていない他は同様の構成の循環式浴用ユニットとすることができる。
[2]熱交換器(図3〜5参照)
熱交換器4(図3及び5参照)は、熱交換器本体41と、熱交換器本体41に取り付けられ、内部に過熱蒸気を供給するための熱交換器用過熱蒸気供給管43と、熱交換器用過熱蒸気供給管43に配設されたバルブB6と、バルブB6の開閉により過熱蒸気の供給量を制御し、水を急速に昇温させる、又は水を恒温にするための過熱蒸気供給量制御部と、を備える。
更に、他の熱交換器4(図4〜5参照、この他の熱交換器は、上記の熱交換器4とは構成を異にするものであるが便宜上同じ符号を付する。)は、熱交換器本体41と、熱交換器本体41に取り付けられ、内部に過熱蒸気を供給するための熱交換器用過熱蒸気供給管43と、熱交換器用過熱蒸気供給管43に配設された2個のバルブ4311、4312と、2個のバルブの中間に配置された過熱蒸気貯留容器432と、2個のバルブの開閉により過熱蒸気の供給量を制御し、水を急速に昇温させる、又は水を恒温にするための過熱蒸気供給量制御部と、を備える。
上記「熱交換器本体41」の形状は特に限定されないが、有底円筒形であることが多い。また、上部開口部の周縁にはフランジ部が設けられており、このフランジ部には、熱交換器本体41の上部開口部を閉止するための蓋部材42のフランジ部が当接され、ボルト及びナット等により固定される。熱交換器本体41及び蓋部材42の寸法は特に限定されず、目的、用途及び必要とされる処理能力等により設定することができる。熱交換器本体41及び蓋部材42の寸法は、通常、径が150〜800mm、長さが500〜2000mm程度である。更に、熱交換器本体41及び蓋部材42の材質も特に限定されないが、いずれも強度が大きく、錆難く、優れた耐久性を有している必要があり、併せてコストの観点から、通常、ステンレス鋼により形成される。
上記「熱交換器用過熱蒸気供給管43」は、通常、熱交換器本体41の上部側面に開口している。
熱交換器4では、この熱交換器用過熱蒸気供給管43の中間部にバルブB6が配設されている。バルブB6としては、この用途において一般に使用されているバルブを用いることができ、例えば、モターバルブ、ソレノイドバルブ等が挙げられる。このバルブB6の開閉により、即ち、開時間、閉時間及び開時間と閉時間との間隔を調整することによって、過熱蒸気の供給量を制御し、水を急速に昇温させる、又は水を恒温にすることができる。この過熱蒸気の供給量は、高温水排出管442における高温水の温度を測定し、この温度データを過熱蒸気供給量制御部にフィードバックし、この制御部から出力される制御データにより、バルブB6の開時間、閉時間及び開時間と閉時間との間隔を調整することで制御することができる。
他の熱交換器4では、熱交換器用過熱蒸気供給管43の中間部に、2個のバルブ4311、4312及び過熱蒸気貯留容器432が配設されている。この2個のバルブ4311、4312としては、この用途において一般に使用されているバルブを用いることができ、例えば、モターバルブ、ソレノイドバルブ等が挙げられる。更に、過熱蒸気貯留容器432の形状は特に限定されず、上面が閉止された断面円形、楕円形等の柱状とすることができる。また、過熱蒸気貯留容器432の容量も特に限定されないが、特に水温を恒温にする場合、水温を微調整するためには2000〜8000mm、特に3000〜7000mm、更に4000〜6000mmとすることができる。
更に、過熱蒸気の供給量をより正確に制御するためには、バルブ4311、4312の各々と過熱蒸気貯留容器432とは近接していることが好ましく、それぞれの間隔は50mm以下、特に15mm以下であることが好ましい。更に、バルブ4312と熱交換器用過熱蒸気供給管43の熱交換器本体41への取り付け部も近接していることが好ましく、この間隔は50mm以下、特に20mm以下であることが好ましい。尚、バルブ4312と熱交換器用過熱蒸気供給管43の熱交換器本体41への取り付け部との間には、通常、逆止弁433が配設され、高温水の熱交換器用過熱蒸気供給管43への逆流が防止されている。
他の熱交換器4では、バルブ4311、4312の各々の開閉により、過熱蒸気を連続的に供給する、又は一定量の過熱蒸気を間歇的に供給する。即ち、バルブ4311、4312の各々の開時間、閉時間及び各々の開閉のタイミングを調整することによって、過熱蒸気の供給量を制御し、水を急速に昇温させる、又は水を恒温にすることができる。この過熱蒸気の供給量は、高温水排出管442から排出される高温水の温度を測定し、この温度データを過熱蒸気供給量制御部にフィードバックし、この制御部から出力される制御データにより、バルブ4311、4312の開時間、閉時間及び各々の開閉のタイミングを調整することで制御することができる。
より具体的には、他の熱交換器4では、バルブ4311及びバルブ4312を開き、過熱蒸気を供給することで、低温水供給管441から供給される低温水と過熱蒸気とを接触させ、低温水を急速に昇温させることができ、高温水排出管442から排出される高温水を所定の用途に用いることができる。この急速に昇温とは、低温水の温度を0.5〜1.2℃/分、特に0.6〜1.0℃/分の速度で昇温させることを意味し、昇温速度は、低温水の供給速度と過熱蒸気の供給速度とにより調整することができる。
また、他の熱交換器4では、高温水排出管442から排出される高温水の温度を恒温にすることもできる。具体的には、バルブ4312を閉じた状態で、バルブ4311を、所定時間、例えば、0.1〜2.5秒間、特に0.1〜2.0秒間、更に0.3〜1.5秒間開き、過熱蒸気貯留容器432に所定量の過熱蒸気を貯溜し、その後、バルブ4312を開き、同時にバルブ4311を閉じ、過熱蒸気を供給する。バルブ4312を開く時間は、例えば、0.1〜2.0秒間、特に0.1〜1.5秒とする。次いで、バルブ4312を閉じ、同時にバルブ4311を、例えば、上記の所定時間開き、過熱蒸気貯留容器432に所定量の過熱蒸気を貯溜する。このようにして、バルブ4311、4312の開閉と、過熱蒸気貯留容器432への過熱蒸気の貯溜と、この過熱蒸気の供給とを繰り返すことで、高温水排出管442から排出される高温水の温度を一定温度に保持することができる。
熱交換器4及び他の熱交換器4では、過熱蒸気と水とが接触することで熱交換がなされる。この接触の方法は特に限定されないが、通常、散気管45が用いられる。この散気管45は、熱交換器本体41の内部に延設された熱交換器用過熱蒸気供給管43の端部に接続されており、散気管45の周面に設けられた多数の散気孔から過熱蒸気が噴き出す構造になっている。一方、熱交換器本体41の内部には低温水供給管441から低温水が供給され、この低温水と過熱蒸気とが接触し、熱交換がなされることで、低温水が昇温し、高温水排出管442から高温水が排出される。
散気管45からは高温、高圧の過熱蒸気が噴き出されるため、相当な騒音が発生する。この騒音を抑えるため散気管45にサイレンサ46を取り付けることが好ましい。サイレンサ46としては、連通し、且つ表面に開口する多数の細孔を有する金属製の円柱体等を用いることができ、過熱蒸気が噴き出される際の衝撃が緩和され、騒音が抑えられる。更に、熱交換器本体41の内部には過熱蒸気と低温水とをむらなく接触させ、高温水排出管442から排出される高温水の温度が変動しないように、攪拌手段47を設けることが好ましい。この攪拌手段47は特に限定されず、例えば、熱交換器本体41の内部を上下方向に分画するように配設され、複数の透孔を有する攪拌板、及び攪拌翼等が挙げられる。
尚、熱交換器4及び他の熱交換器4においては、熱交換器用過熱蒸気供給管43の中間部に配設され、過熱蒸気の供給量を制御するためのバルブの上流側に、制御が不調となった場合に過熱蒸気の供給を停止するための非常停止バルブを配設することができる。また、熱交換器用過熱蒸気供給管43及び低温水を供給するための配管、高温水を排出するための配管、散気管、攪拌手段等は、通常、ステンレス鋼製である。更に、この熱交換器4において低温水及び高温水の温度は特に限定されないが、通常、低温水は、5〜30℃、特に8〜25℃、更に12〜20℃であり、高温水は、37〜42℃、特に38〜41℃、更に39〜41℃である。
[3]循環式浴用ユニット(図6参照)
循環式浴用ユニット5は、前記本発明の熱交換機能付濾過器1と、一端側が濾過器1に接続された被処理水・逆洗水供給管13と、前記の熱交換器4と、一端側が濾過器1の処理水排出管131に接続され、他端側が熱交換器4に接続された低温水供給管441と、一端側が熱交換器4に接続された高温水排出管442と、を備える。処理水排出管131と低温水供給管441とは継ぎ目のない連続した1本の配管であってもよい。この循環式浴用ユニット5は、過熱蒸気発生器51、ヘヤーキャッチャー52、浴湯を循環させるための循環ポンプ53、水位計54及び薬剤注入器56等を更に備える。また、通常、入浴者の好みに応じて浴湯の温度を調整するため、浴槽6に水道水等の冷水を供給するための冷水供給管55が配設されている。
尚、循環式浴用施設では、一般に、循環ポンプから熱交換器又は薬剤注入器までをユニットというが、例えば、図6の例では、浴槽を除く他の部分のすべてを循環式浴用ユニットであるとする。
この循環式浴用ユニット5では、浴槽6に上記の温度範囲の低温水(通常、水道水が用いられる。)を投入し、循環ポンプ53を稼動させて低温水を循環させ、この低温水を濾過器1から熱交換器4へと供給し、熱交換器4において低温水と過熱蒸気とを接触させ、熱交換させて、低温水を昇温させ、上記の温度範囲の高温水として循環させる。熱交換器の運転開始時は過熱蒸気を連続して供給し、熱交換器4に供給される低温水が所定温度の高温水となった時点で、過熱蒸気を間歇的な供給とし、この所定温度の高温水が浴湯として循環されるようにする。このようにして循環式浴用ユニット5により所定温度の浴湯が浴槽6に供給され、循環されて入浴に供せられる。
循環式浴用ユニット5では、上記のようにして連続運転がなされるが、定期的に、又は必要に応じて濾材2を殺菌する。濾材2の殺菌の際には、浴湯の循環を停止し、濾過器1の内部の浴湯を排出し、又は排出せずに、濾過器用過熱蒸気供給管14から過熱蒸気を供給し、濾材2を殺菌する。その後、逆洗水供給管から逆洗水を供給して濾過器1の内部を洗浄し、濾材2に付着していたバイオフィルム等を逆洗水排出管132から排出させる。この濾材2の殺菌及び濾過器1の内部の洗浄の際に、必要に応じて、浴槽6から浴湯を排水し、浴槽6を清掃してもよい。次いで、上記のようにして運転を再開する。この循環式浴用施設5では、過熱蒸気による直接加熱であるため、低温水を短時間で所定の温度にまで昇温させることができる。従って、例えば、夜間、濾材2の殺菌及び濾過器1の内部の洗浄並びに浴槽6の清掃等をした場合も、熱交換器4により浴用水を急速に昇温させることができ、翌日の営業開始時間までに運転を再開することができる。
より具体的には、後記の例のように10日間連続運転するのではなく、より短時間、例えば、5〜6日間、特に2〜3日間、更に1日間以下連続運転し、その後、運転を停止し、上記のようにして濾材の殺菌等を実施し、次いで、上記のようにして運転を再開することができる。即ち、この例の循環式浴用ユニット5を用いた場合、循環を停止し、濾過器用過熱蒸気供給管14から過熱蒸気を供給して濾材2を殺菌し、その後、逆洗水供給管から逆洗水を供給して濾過器1の内部を逆洗により洗浄する。次いで、循環を再開し、薬剤注入器56より殺菌剤を注入し、且つこの殺菌剤を含有する滅菌水をバイパス流路16を流通させることで、濾過器1の内部を除く経路全体を滅菌する。その後、この滅菌水を低温水として低温水供給管441から熱交換器4に供給し、熱交換器用過熱蒸気供給管43から過熱蒸気を連続的に供給し、低温水と過熱蒸気との間で熱交換させて水を急速に昇温させる。このようにして水温を上昇させ、高温水になった時点で、過熱蒸気の供給を間歇的とし、この高温水を循環させることができる。このようにして、運転を再開することができ、この場合、濾過器用過熱蒸気供給管14からの過熱蒸気の供給を開始する時点から、高温水の循環を開始する時点までの間隔は、90分以内、特に60分以内、更に40分以内とすることができる。従って、浴湯の循環の開始から、浴湯の循環の停止を経て、浴湯の循環を再開するまでの間隔を72時間以内、特に48時間以内、更に24時間以内とすることができる。例えば、浴湯の循環を停止し、水温が室温(例えば、5〜30℃)にまで降下したときでも、翌朝、運転を開始することができ、終夜運転の必要がないため、熱エネルギーを大幅に節減することができる。
尚、殺菌剤の種類及び滅菌水の濃度は特に限定されず、殺菌剤としては、過塩素酸系、次亜塩素酸系及び過酸化物系等の一般的なものを用いることができ、殺菌剤の濃度は0.1〜3ppm、特に0.1〜1mm、更に0.3〜0.7ppmとすることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]濾過器
(1)濾過器の構造
濾過器本体11はステンレス鋼製であり、外径700mm、内径694mm、高さ1550mmである。また、蓋部材12はステンレス鋼製であり、外径700mm、部材厚さ3mmである。濾過器本体11と蓋部材12とは各々のフランジ部においてボルト及びナットにより固定され、当接面にはシリコンゴム製のパッキンが介装されており、気密、液密にシールされている。濾過器本体11の底部には型鋼製の支持脚111が取り付けられており、支持脚の下端部はボルト及びナットによりコンクリート製の土台に固定されている。尚、蓋部材12の頂部から支持脚111の下端部までの寸法は1950mmである。
濾過器本体11の内部には濾材2と支持材3とが充填されている。具体的には、濾過器本体11の底部から40mmの高さに径方向の全体に渡ってステンレス鋼製のメッシュが配設されており、このメッシュの上面に支持材3からなる厚さ210mmの支持材層が設けられており、この支持材層の上面に濾材2からなる厚さ800mmの濾材層が設けられている。支持材層は粒径の異なる麦飯石からなる3層構造であり、下層は厚さ70mm、且つ麦飯石の粒径は10〜20mm、中間層は厚さ70mm、且つ麦飯石の粒径は5〜10mm、上層は厚さ70mm、且つ麦飯石の粒径は2〜5mmである。また、濾材も麦飯石からなり、粒径は0.5〜1mmである。
濾過器本体11には、支持脚111の下端部から450mmの高さに内径25mmの濾過器用過熱蒸気供給管14が取り付けられており、この濾過器用過熱蒸気供給管14にはソレノイドバルブR1が配設されている。濾過器用過熱蒸気供給管14は、濾過器本体11の内部で上記のメッシュの下側において下方に向かって開口しており、過熱蒸気が濾過器本体11の底部に向かって噴き出すようになっている。更に、支持脚111の下端部から800mmの高さに内径2mmの被処理水・逆洗水供給管13が取り付けられており、この被処理水・逆洗水供給管13から処理水排出管131が分岐している。この被処理水・逆洗水供給管13及び処理水排出管131には、被処理水又は逆洗水を供給するための流路、被処理水を濾過器本体11の内部上方に供給するための流路、逆洗水を濾過器本体11の内部下方に供給するための流路、及び濾過後の処理水を排出するための流路、の各々を形成するために、所定の位置に4個のモターバルブB1、B2、B3及びB4が配設されている。被処理水の供給口は、濾過器本体11の内部上方において上方に向かって開口しており、被処理水が蓋部材12に向かって噴き出すようになっている。また、逆洗水の供給口は、濾過器本体11の内部下方において下方に向かって開口しており、逆洗水が濾過器本体11の底部に向かって噴き出すようになっている。
この他、濾過器本体11には、特に過熱蒸気を供給した際の内部の圧力を測定するための圧力計P1、圧力が高すぎるときに手動で内部の空気を抜くための空気抜き、圧力が高すぎるときに自動で内部の空気を抜くための安全弁、逆洗水を排出するための逆洗水排出管132、この逆洗水排出管132に配設されたモターバルブB5などを備える。また、配管内等を滅菌する際などに、滅菌水等を濾過器1の内部に導入させず、即ち、滅菌水等を濾材2と接触させずに循環させるためのバイパス流路16が形成されている。
(2)濾過器を用いた被処理水の濾過
(a)濾過
被処理水として着色した水道水を用いた。モターバルブB1、モターバルブB3及びモターバルブB4を開き、流路を処理水を排出する流路とし、一方、モターバルブB2及びモターバルブB5を閉じた。その後、被処理水・逆洗水供給管13から被処理水を5000kg/時間の速度で供給し、処理水排出管131から被処理水の供給速度と同じ排出速度で処理水を得た。
(b)濾材の殺菌
被処理水の供給を停止し、ソレノイドバルブR2を開き、ドレン排出口17から濾過器1の内部の処理水等のすべての水を排出した。その後、ソレノイドバルブR2を閉じ、モターバルブB2を開き、モターバルブB4を閉じて流路を切り替え、一方、ソレノイドバルブR1を開き、濾過器用過熱蒸気供給管14から温度120℃、圧力0.2MPaの過熱蒸気を6.6m/分の速度で25分間供給し、濾材2等の殺菌を行った。また、処理水排出管131から排出される水蒸気の温度を測定したところ、125℃であった。従って、濾材2等は少なくとも121℃以上の過熱蒸気により殺菌されたことが推察される。
(c)逆洗
ソレノイドバルブR1を閉じ、過熱蒸気の供給を停止し、その後、モターバルブB4及びモターバルブB5を開き、一方、モターバルブB1及びモターバルブB3を閉じ、流路を逆洗水を供給し、排出する流路に切り替えた。次いで、被処理水・逆洗水供給管13から逆洗水を30m/時間の流速で流通させ、逆洗圧力0.06MPaで濾過器1の内部を洗浄した。このようにして逆洗した後、濾材2を高倍率の顕微鏡により観察し、また、逆洗前後の乾燥重量を測定した。この観察結果によれば、濾材2の全表面のうちの86〜92%に付着物は観察されず、乾燥重量の変化からも、バイオフィルム等がほとんど除去されており、十分に洗浄されていることが分かった。尚、濾材2の全表面のうちの8〜14%には何物かが付着していたが、これが何であるかは明らかではない。
[1]熱交換器
(1)熱交換器の構造
熱交換器本体41はステンレス鋼製であり、外径300mm、内径294mm、高さ800mmである。また、蓋部材12はステンレス鋼製であり、外径300mm、部材厚さ3mmである。熱交換器本体41と蓋部材42とは各々のフランジ部においてボルト及びナットにより固定され、当接面にはシリコンゴム製のパッキンが介装されており、気密、液密にシールされている。熱交換器本体41の底部には型鋼製の支持脚411が取り付けられており、支持脚411の下端部はボルト及びナットによりコンクリート製の土台に固定されている。尚、蓋部材42の頂部から支持脚411の下端部までの寸法は1000mmである。
熱交換器本体41には、支持脚411の下端部から900mmの高さに内径50mmの低温水供給管441が取り付けられている。また、支持脚411の下端部から300mmの高さであり、且つ周方向において低温水供給管441と対向する側に内径50mmの高温水排出管442が取り付けられている。更に、支持脚411の下端部から900mmの高さであり、且つ周方向において低温水供給管441と対向する側に内径25mmの熱交換器用過熱蒸気供給管43が取り付けられている。この熱交換器用過熱蒸気供給管43の中間部には、2個のソレノイドバルブ4311、4312及び過熱蒸気貯留容器432並びに逆止弁433が配設されており、ソレノイドバルブ4311と過熱蒸気貯留容器432との間隔は20mm、過熱蒸気貯留容器432とソレノイドバルブ4312との間隔は20mm、ソレノイドバルブ4312と逆止弁433との間隔は50mm、逆止弁433と熱交換器本体41の外周面における熱交換器用過熱蒸気供給管43の取り付け部との間隔は50mmである。過熱蒸気貯留容器432は外径25mmであり、中間部に螺子部を有し、下部側は熱交換器用過熱蒸気供給管43に固定され、上面が閉止された上部側を回転させることで上下に可動である。この例では、高さを10mmとした。この場合、過熱蒸気貯留容器432の容量は5000mmである。
熱交換器用過熱蒸気供給管43は熱交換器本体41の内部の径方向の中心部において下方に向かって直角に曲げられ、この熱交換器用過熱蒸気供給管43の端部に散気管45が接続されている。この散気管45は内径25mm、長さ400mmであり、直径2mmの散気孔が周方向に90°、長さ方向に10mmの間隔で等間隔に160個形成されている。また、この散気管45は、連通した多数の細孔を有する円筒形であり、直径500mm、長さ450mmのサイレンサ46の径方向の中心部に挿入されている。更に、サイレンサ46の外周面と熱交換器本体41の内周面との間には、サイレンサ46の上端部、中間部及び下端部の位置に3枚の攪拌板47が水平方向に介装されている。この攪拌板47は厚さ3mmであり、各々の攪拌板47には直径20mmの透孔が等間隔にそれぞれ20個設けられている。
(2)熱交換器の運転
上記[1]、(2)、(a)において濾過器1の処理水排出管131から排出される処理水を、低温水供給管441から3000kg/時間の速度で供給した。また、ソレノイドバルブ4311、4312の各々を開き、温度120℃、圧力0.2MPaの過熱蒸気を熱交換器用過熱蒸気供給管43から連続的に供給し、高温水排出管442から排出される高温水の温度を測定した。その結果、15℃であった低温水が12分で40℃の高温水になった。この高温水の温度を過熱蒸気供給量制御部にフィードバックし、この制御部から出力される制御データにより、過熱蒸気を間歇的な供給に切り替えた。具体的には、ソレノイドバルブ4311、4312を一旦閉じ、その後、ソレノイドバルブ4312を閉じた状態で、バルブ4311を1秒間開き、過熱蒸気貯留容器432に過熱蒸気を貯溜し、次いで、ソレノイドバルブ4312を開き、同時にソレノイドバルブ4311を閉じ、ソレノイドバルブ4312を開く時間を1秒間として過熱蒸気を供給した。この操作を繰り返すことで、高温水排出管442から排出される高温水の温度を40℃に保持した。
[3]循環式浴用ユニットの運転
上記[1]、(1)の濾過器1、一端側が濾過器1に接続された被処理水・逆洗水供給管13(この被処理水・逆洗水供給管13の他端側は循環ポンプ53接続されている。)、上記[2]、(1)の熱交換器4、一端側が濾過器1の処理水排出管131に接続され、他端側が熱交換器4に接続された低温水供給管441、一端側が熱交換器4に接続された高温水排出管442(この高温水排出管442の他端側は浴槽6に接続されており、この配管の途中に薬剤注入器56が配設されている。)、過熱蒸気発生器51、ヘヤーキャッチャー52、循環ポンプ53、水位計54、冷水供給施設55、ヘヤーキャッチャー52と循環ポンプ53とを接続する配管、及び循環ポンプ53と過熱蒸気発生器51とを接続する配管、を備える循環式浴用ユニット5を以下のようにして運転して、容量1200リットルの浴槽6に、浴湯を供給し、且つ循環させた。
先ず浴槽6に水温15℃の水道水を浴用水として1000リットル投入し、循環ポンプ53を稼動させて循環させ、この浴用水を濾過器1から熱交換器4へと供給し、熱交換器4において温度120℃、圧力0.2MPaの過熱蒸気を連続的に供給して急速に昇温させた。また、熱交換器4の低温水供給管441に供給される浴用水の温度を測定し、この温度が40℃になった時点で、上記[2]、(2)のようにして過熱蒸気を間歇的な供給に切り替え、40℃の浴湯が循環されるようにした。浴用水の温度を40℃にまで昇温させるのに必要な時間は35分であった。
上記のようにして10日間連続運転し、その後、浴湯の循環を停止し、上記[1]、(2)、(b)のようにして濾材を殺菌し、(c)のようにして濾過器1の内部を逆洗して洗浄した。また、下記のようにしてバイパス流路等の滅菌を行った。次いで、滅菌水の循環を停止、浴槽6から浴湯を排水し、浴槽6の清掃も行った。次いで、上記のようにして運転を再開した。
バイパス流路等の滅菌は以下のようにして行った。
濾過器1の内部を逆洗した後、モターバルブB3を開き、一方、モターバルブB4を閉じ、処理水を、バイパス流路16、熱交換器4、浴槽6等、及びこれらを接続する配管内を循環させた。この際、薬剤注入器56から、殺菌剤である次亜塩素酸を濃度が0.5ppmとなるように供給し、この滅菌水を1時間流通させた。この滅菌水は、バイパス管16、熱交換器4、浴槽6等と、これらを接続する配管内を循環し、濾過器1の内部を除く経路全体が滅菌されるが、この滅菌水をバイパス流路16を流通させ、濾過器1の内部を流通させないことにより、濾材2における菌の増殖をより抑えることができた。
尚、本発明においては、上記の実施例の記載に限られず、本発明の範囲内において種々変更した実施例とすることができる。例えば、被処理水の供給速度は2000〜8000kg/時間とすることができる。また、逆洗水の流速は15〜45m/時間とすることができ、逆洗圧力は0.02〜0.1MPaとすることができる。更に、濾材の殺菌は、被処理水等を排出せずに行うこともでき、この場合は、例えば、濾過器1の内部の被処理水等の温度が80℃に保たれるように過熱蒸気を供給することにより、40分で十分に殺菌することができる。
濾過器の正面図である。 濾過器の断面及び配管を説明するための模式図である。 熱交換器の正面図である。 他の熱交換器の断面及び配管を説明するための模式図である。 熱交換器に組み込まれた散気管及びサイレンサを説明するための模式図である。(a)は側面からみた図、(b)はA−A断面、(c)はB−B断面である。 循環式浴用ユニットのシステムを説明するためのブロック図である。
符号の説明
1;濾過器、11;濾過器本体、111;支持脚、12;蓋部材、13;被処理水・逆洗水供給管、131;処理水排出管、132;逆洗水排出管、14;濾過器用過熱蒸気供給管、15;濾材取出口、16;バイパス流路、17;ドレン排出口、2;濾材、3;支持材、4;熱交換器、41;熱交換器本体、411;支持脚、42;蓋部材、43;熱交換器用過熱蒸気供給管、4311、4312;蒸気制御バルブ、432;過熱蒸気溜、433;逆止弁、434;過熱蒸気供給口、441;低温水供給管、442;高温水排出管、45;散気管、46;サイレンサ、47;攪拌板、48;ドレン排出口、5;循環式浴用ユニット、51;過熱蒸気発生器、52;ヘヤーキャッチャー、53;循環ポンプ、54;水位計、55;冷水供給管、56;薬剤注入器、6;浴槽、B1、B2、B3、B5、B6;モターバルブ、B4;バイパス用バルブ(モターバルブ)、R1、R2、R3;ソレノイドバルブ、P1、P2;圧力計、S1;安全弁、ST1、ST2;温度センサ、ST3;非常停止用温度センサ。

Claims (5)

  1. 濾過器本体と、該濾過器本体に内装された濾材と、該濾過器本体に設けられ、該濾材の下方に開口し、該濾過器本体に過熱蒸気を供給するための濾過器用過熱蒸気供給管と、該濾過器本体に設けられた被処理水・逆洗水供給管と、を備え、
    上記被処理水・逆洗水供給管は、被処理水を上記濾過器本体の内部上方に供給するための被処理水供給管と、該被処理水供給管の一端部に接続され、且つ逆洗水を該濾過器本体の内部下方に供給するための逆洗水供給管と、を有し、
    上記濾過器用過熱蒸気供給管を分岐させ、上記濾材の上方に開口させたことを特徴とする熱交換機能付濾過器。
  2. 上記濾材の下方に開口する濾過器用過熱蒸気供給管は、殺菌用のものであり、
    上記濾材の上方に開口する濾過器用過熱蒸気供給管は、熱交換用のものである請求項に記載の熱交換機能付濾過器。
  3. 上記逆洗水供給管から分岐した処理水排出管、上記被処理水供給管から分岐した逆洗水排出管、並びに該被処理水供給管に配設されたバルブ、該逆洗水供給管の該被処理水供給管との接続部と該処理水排出管が分岐している分岐部との間に配設されたバルブ、該処理水排出管に配設されたバルブ、該逆洗水供給管の該処理水排出管が分岐している分岐部と上記逆洗水の供給口との間に配設されたバイパス用バルブ及び該逆洗水排出管に配設されたバルブ、を備える請求項1又は2に記載の熱交換機能付濾過器。
  4. 請求項に記載の熱交換機能付濾過器を備える循環式浴用ユニットであって、
    一端側が上記処理水排出管に接続された高温水排出管を備え、
    上記被処理水供給管に配設されたバルブ、上記バイパス用バルブ及び上記処理水排出管に配設されたバルブを開とし、且つ上記逆洗水供給管の該被処理水供給管との接続部と該処理水排出管が分岐している分岐部との間に配設されたバルブ及び上記逆洗水排出管に配設されたバルブを閉として、上記被処理水を濾過し、
    上記濾過時、上記濾過器用過熱蒸気供給管に配設されたバルブを開とし、上記熱交換機能付濾過器に供給される上記過熱蒸気と上記被処理水とを接触させて熱交換させることを特徴とする循環式浴用ユニット。
  5. 滅菌水を循環させる際、上記被処理水供給管に配設されたバルブ及び上記バイパス用バルブを閉とし、上記逆洗水供給管の該被処理水供給管との接続部と該処理水排出管が分岐している分岐部との間に配設されたバルブ及び上記処理水排出管に配設されたバルブを開として、該滅菌水を、上記逆洗水供給管の一部及び上記処理水排出管を経由して循環させる請求項に記載の循環式浴用ユニット。
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