本発明は、液晶表示装置及びその製造方法に関し、特にコントラストの低下を抑制しながら応答速度、配向安定性を改善する方法に関するものである。
近年、ディスプレイ装置として従来使用されてきたブラウン管(Cathode Ray Tube)に代わり、いわゆるフラットパネルディスプレイが主流となって市場を拡大しつつある。中でも、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)は、薄型、軽量、低消費電力、高精細を特徴としており、テレビやパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の広い分野に用いられている。
液晶表示装置としては、一般に、液晶素子としてネマティック液晶を用いたTN(Twisted Nematic)型や、STN(Super Twisted Nematic)型などが用いられており、2枚の基板の間に液晶を注入し、これに与える電圧の強さを調節して液晶分子の相転移現象により光の透過量を調整する構造になっている。液晶表示装置は、例えば、内側面に透明電極が形成されている1対の透明基板と、この間に封入される液晶と、それぞれの透明基板の外側に設けられた、光を偏光させる2枚の偏光板とから構成される。
フルカラー表示が可能なカラー液晶素子のセル構造は、カラー生成を分担する受動エレメントであるカラーフィルタと、光シャッターとして機能する液晶セルを組み合わせた構成であり、基本的には赤(R)、緑(G)、青(B)、又はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3原色の画素を有するカラーフィルタ基板と、透明基板上にTFT(薄膜トランジスタ)等の能動素子や導電膜を形成した対向基板との隙間に液晶層を封入して成るものである。
カラーフィルタ基板の通常の製造方法としては、まず透明基板上にブラックマトリクス(以下、BMという)を形成する。BMは、各画素間に配列された遮光領域を示し、液晶表示装置の表示コントラストを向上させ、またTFTなどの能動素子に光が入射して誤動作することを防ぐために設けられる。BMの形成は、通常、透明基板上にクロムやニッケル等の金属又はそれらの酸化物、或いはカーボンブラック等の遮光剤を分散させた感光性又は非感光性の樹脂を積層し、格子状にパターニングすることにより行われる。
次に、格子状のBMの開口部を埋めるように着色層を印刷(積層)して各色の画素を形成する。そして、この着色層の上に液晶を電界で駆動させるために必要なITO(酸化インジウムスズ)層などから成る透明電極層が形成される。セルの組み立てに際しては、この透明電極層の上にポリイミドから成るオーバーコート膜を積層した後、ラビング処理を行うことにより、液晶分子の配向性を安定化させるための配向膜を形成する。この後、セル組み立て工程へ送られ、対向基板と貼り合わされた後、液晶注入が行われる。
近年、液晶表示装置の大画面化やモニタ用途への展開に伴い視野角特性の改良が求められており、ネガ型液晶を使用したVA(Vertical Alignment)型液晶表示装置の開発が進められている。VA方式は、電圧無印加のときに液晶分子長軸が基板表面に対して垂直に配向して黒表示となり、電圧印加で液晶長軸が基板面と平行方向に倒れて白表示となる、いわゆる垂直配向型ノーマリーブラック方式であり、従来のTN方式に比べて高視野角化が可能であるという特長を有している。
しかし、上記のような液晶表示装置に用いられる液晶素子は、初期配向状態において所定のプレチルト角(液晶分子と基板表面とのなす角)を有しており、図11に示すように、電極101、102間に電圧を印加した時に液晶分子Lが同一方向に立ち上がる。このため、図11(b)のように異なる視角A及び視角Bからセルを観察した場合、液晶分子Lの見かけ上の屈折率が変化して表示のコントラストが低下し、さらに中間調状態では視角によりコントラストの反転現象が生じるなど、表示品位が著しく低下する。
なお、図11は、電圧無印加状態で図11(a)のように液晶分子の配向が水平方向となり、電圧印加状態で図11(c)のように液晶分子の配向が垂直方向となるTN型やSTN型の液晶素子について示しているが、VA型の液晶素子においても事情は同じである。
そこで、液晶表示装置の視野角を拡大する方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、カラーフィルタの画素上での液晶配向を分割するために、VA型液晶表示装置のカラーフィルタ基板若しくは対向基板の表面に、液晶分子の軸対称の配向中心となる突起を設けることにより、液晶配列方向の制御を自動的に行う広視野角なMVA(Multi domain Vertical Alignment)型液晶表示装置が開示されている。
また、特許文献2には、液晶と光硬化性又は熱硬化性樹脂とを混合して硬化させて樹脂中に液晶滴を形成した高分子分散型の液晶表示素子において、対向する2枚の基板の少なくとも一方に凸部、凹部或いは柱部を設けて液晶分子を軸対称状に配向するとともに、凸部を形成する材料に有色の添加物を加えて遮光性を付与してコントラストの低下を防止する方法が開示されている。
MVA型液晶素子の構造を図12に示す。ここでは一例として、透過型の液晶素子について説明する。図12において、液晶素子1は、カラーフィルタ基板(第1の基板)2、及びカラーフィルタ基板2に対向して設けられた対向基板(第2の基板)3と、その隙間に封入される液晶層4から構成される。なお、図12は電圧の無印加状態を示している。
カラーフィルタ基板2は、ガラス等から成る透明基板5と、透明基板5上に形成される赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の着色層6と、着色層6上にベタ状に積層されるITO層などから成る透明電極層7から構成されている。なお、ここでは図示しないが、透明基板5と着色層6との間には、遮光膜となるBMが格子状に形成されており、その格子間の開口部を埋めるように着色層6が形成されている。また、透明電極層7の上に形成される配向膜も記載を省略している。
一方、カラーフィルタ基板2に対向する対向基板3は、ゲート線及びソース線をマトリクス状に配置し、その交点にTFT(いずれも図示せず)が接続された透明なTFT基板8と、TFT基板8上に積層される透過電極9から構成されている。なお、対向基板3上にも配向膜が形成されているが、ここでは記載を省略している。そして、図示しないバックライト光源からの光をTFT基板8側からカラーフィルタ基板2側へ透過させることにより、所望のカラー画像の表示を行う。
10は、基板上の一部に設けられた配向中心形成用突起(以下、リベットという)である。リベット10周辺の液晶分子はリベット表面に対し垂直に配向するため、リベット10が角錐であればその斜面の数によって配向分割数が決まり、リベット10が円錐であれば放射状の液晶配向が得られる。即ち、液晶分子Lはリベット10により軸対称に均等配向されるため、視野角特性を改善することができる。
なお、リベット10の頂部は配向規制力がほとんど存在せず、液晶分子の配向が不安定となる上、リベット10上の液晶層4がそれ以外の領域よりも薄くなって十分に表示に寄与できず、見かけ上、透過率が減少し開口率が低下したのと同様の表示状態になってしまう。これは、リベット10上の液晶層の厚さがそれ以外の領域と大きく異なると、その部分の液晶層のリタデーション量(屈折率異方性Δnとセルギャップ(基板間の距離)dとの積Δn・d)が設計値からずれることになり、表示に寄与する光量が低下することによる。従って、リベット10の頂部はなるべく狭いことが望ましい。また、リベット10の側面の傾斜は順テーパ形状であることが望ましい。
また、リベット10の形状が不均一であると液晶配向の乱れが生じ、表示ムラが発生する原因となるため、リベット10を均一に形成することが求められる。このため、リベット10を形成する手法としては、微細なパターンを精度良く加工できるフォトリソグラフィ法が用いられる。即ち、リベット10が非感光性の樹脂で形成される場合は、その上にフォトレジスト膜を形成した後に、また、リベット10が感光性の樹脂で形成される場合は、そのまま、或いは酸素遮断膜を形成した後に、所定のパターンを有するフォトマスクを介し、露光、現像を行うことにより形成される。その後、さらにリベット10上も含めて配向膜(図示せず)が積層される。
ここで、液晶素子には、光源としてバックライトのみを利用する透過型、外光の反射のみを利用する反射型、外光の反射とバックライトの両方を利用する半透過型の3タイプがある。画面背面のバックライトを光源とする透過型液晶は、彩度が高く、暗い室内で見やすいという特徴があるが、消費電力が大きく、明るい屋外では表示が暗くなるという欠点がある。
また、外光の反射を光源とする反射型液晶は、消費電力が少なく、明るい屋外で見やすいという特徴があるが、彩度が低く、暗いところでは表示できなくなるという欠点がある。半透過型液晶は、光の透過部と反射部とを有するマジックミラーのような素材を液晶パネルの裏に挟むことで両者を融合したタイプの液晶で、暗いところではバックライトを、明るいところでは外光を利用することで、両者の利点を生かした方式であり、携帯電話などに広く利用されている。
従来の半透過型のMVA型液晶素子を図13に示す。TFT基板8上には、バックライト光源からの光を透過させる透過電極9と、外光を反射させる反射電極11が存在する。透過電極9の存在領域(透過部)におけるセルギャップaは4μm以上となり、反射電極11の存在領域(反射部)におけるセルギャップbに比べて大きくなっている。
このような半透過型液晶素子では、反射部のセルギャップbよりも高いリベット10を形成することはできないため、リベット10の高さは1.3μm程度となるが、透過部においては液晶の容積に対するリベット10の占める割合が低くなるため、リベット10の配向規制力が小さくなり配向安定性が低下するとともに、画素全体での応答速度が遅くなる。
例えば、電圧の速い変化に対して液晶分子の配向状態の変化が追随できず、規則的な配向状態が得られずにざらついた表示として観察される。また、液晶セルに外圧が局部的に加えられた場合、リベット10上での配向規制力が少ないため、液晶分子の流れ配向が発生して簡単に配向が乱れ、且つ、乱れた配向を復元するためには反射部の液晶分子に比較して長い時間が必要となるという問題点があった。
特開平7−120728号公報
特開平8−292423号公報
本発明は上記問題点に鑑み、コントラスト低下を抑えながら応答速度及び配向安定性を改善した半透過式の垂直配向型液晶素子及びそれを備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、透明基板上に透明電極層が積層された第1の基板と、外光を反射する反射電極と、バックライト光源からの光を透過する透過電極とが所定のパターンで配置され、前記反射電極及び前記透過電極に電圧を供給する能動素子を備えた第2の基板と、該第1及び第2の基板の間に挟持された液晶層と、から構成され、前記反射電極が存在する反射部と前記透過電極が存在する透過部を有し、前記透過部における液晶層厚が前記反射部よりも大きい垂直配向型の半透過型液晶素子において、前記反射電極上及び前記透過電極上には、前記液晶層に含まれる液晶分子の軸対称の配向中心となる配向中心形成用突起が形成されており、前記透過電極上に形成される前記配向中心形成用突起が設けられる位置の透過電極の下には、前記第2の基板上に配列され前記能動素子に接続されるゲート線又はソース線の形成材料を用いて、ゲート線又はソース線と同時に形成された下地が設けられているとともに、前記透過電極上に形成される前記配向中心形成用突起の前記下地を含む高さは、前記反射電極上に形成される前記配向中心形成用突起に比べて高く形成されることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の液晶素子が搭載された液晶表示装置である。
本発明の第1の構成によれば、透過電極上に形成される配向中心形成用突起を、反射電極上に形成される配向中心形成用突起に比べて高く形成することにより、透過部において液晶の容積に対する配向中心形成用突起の占める割合が増加するため、液晶分子の配向安定性も向上し、画素全体での応答速度も速くなる。また、透過電極上に形成される配向中心形成用突起の下地形成に、ゲート線又はソース線を形成する材料を用いることにより、透過部に形成される配向中心形成用突起自体の高さを従来と同等に形成しても、下地の厚み分だけ高くなるため、光漏れの発生やコントラストの低下も抑制することができる。さらに、透過部及び反射部に形成される配向中心形成用突起は同じ高さでよいため、配向中心形成用突起を1工程で形成でき、下地はゲート線又はソース線と同時形成できるため、液晶素子の製造工程が簡素化される。
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の液晶素子を液晶表示装置に搭載することにより、コントラスト低下を抑制しながら応答速度、配向安定性及び生産性にも優れ、表示不良のない高画質、高精細な液晶表示装置を提供できる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。従来例の図12、図13と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、透過部に形成されるリベット(以下、透過部リベットという)10aは、反射部に形成されるリベット(以下、反射部リベットという)10bに比べて高く形成されている。この構成により、透過部において液晶の容積に対する透過部リベット10aの占める割合が増加するため、液晶分子の配向安定性も向上し、画素全体での応答速度も速くなる。
透過部リベット10aを反射部リベット10bよりも高く形成するためには、カラーフィルタ基板2の製造プロセスにおいて、リベット形成工程を2段階とすれば良い。図2(a)〜(d)は、第1実施形態の液晶素子に用いられるカラーフィルタ基板2の製造工程を示す断面図であり、図3(a)〜(c)は、対向基板3の製造工程を示す断面図である。図2、図3を用いて本実施形態の液晶素子の製造プロセスを説明する。
先ず、透明基板5上にマトリクス状のBM(図示せず)をフォトリソグラフィ法により形成した後、図2(a)に示すように、画素色に合わせて赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの着色層6を印刷する。次に、図2(b)に示すように、得られた基板上に、ITO等から成る透明電極層7をスパッタリング法で形成する。
さらに、図2(c)に示すように、得られた基板上の反射部に対応する位置に反射部リベット10bをフォトリソグラフィ法により形成する。次いで、図2(d)に示すように、透過部に対応する位置に透過部リベット10aを、フォトリソグラフィ法により反射部リベット10bよりも高く形成する。その後、垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布し、カラーフィルタ基板2を製造する。
一方、透明基板上に金属層を積層した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングしてゲート線、ソース線、TFT(いずれも図示せず)を形成し、図3(a)に示すようなTFT基板8とする。得られたTFT基板8上にITO層をスパッタリング法で積層し、所定のパターンにエッチングして図3(b)に示すような透過電極9を形成する。さらに反射率の高い金属層をスパッタリング法で積層し、所定のパターンにエッチングして反射電極11を形成する。その後、カラーフィルタ基板2と同様に垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布して図3(c)に示すように対向基板3を製造する。最後に、カラーフィルタ基板2及び対向基板3を所定の間隔を隔てて貼り合わせ、隙間に液晶層4を封入して図1に示したような液晶素子1が完成する。
透過部リベット10a及び反射部リベット10bの形状は、画素上の液晶分子の配向方向を2分割以上に分割できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、透過部及び反射部がストライプ状に形成されている場合は、断面が三角形状、半円形状ないし台形状で連続の線形状、透過部及び反射部がマトリクス状に形成されている場合は、三角錐ないし、断面が三角形状、台形状の円錐形状などが好適に用いられる。
第1実施形態の液晶素子においては、フォトリソグラフィ法により透過部リベット10a及び反射部リベット10bを別個に形成するため、各リベット10a、10bの高さが自由に設定可能となる反面、カラーフィルタ基板2の製造工程数は増加する。
また、液晶分子はリベット10a、10bの表面に対し垂直に配向するので、垂直配向型ノーマリーブラック方式の場合、本来なら、液晶分子の長軸が基板表面に垂直に配向して光を遮るべきところ、リベット10a、10bにより基板表面に対して平行或いは斜めに配向してしまい、光漏れが生じるため、電圧印加時の白表示との差であるコントラストが低下するという問題があった。
特に、透過部リベット10aは反射部リベット10bよりも高く形成されているため、図4に示すように、透過部においては基板表面に対して平行或いは斜めに配向する液晶分子Lの割合が多くなり、光漏れの領域も多くなってコントラストの低下も顕著になる。このような光漏れやコントラストの低下を抑制するためには、透過部リベット10aの形成される部分に土台となる下地を設けておき、透過部リベット10a及び反射部リベット10bが形成される部分のセルギャップの差を小さくしておけば良い。
図5は、本発明の第2実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、透過部リベット10aの形成される部分に、遮光領域として各画素間に配列されるBMの形成材料を用いて予めランド状の下地12を設けておき、その上に透過部リベット10aを形成している。
本実施形態における液晶素子の製造プロセスを、図6を参照しながら説明する。先ず、透明基板5上にマトリクス状のBM(図示せず)をフォトリソグラフィ法により形成する。このとき、図6(a)に示すように、BMの形成と同時にランド状の下地12を透過部リベット10aが形成される部分にのみ形成しておく。一方、反射部リベット10bが形成される部分には下地12は設けない。次に、図6(b)に示すように、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの着色層6を画素色に合わせて印刷する。その後、図6(c)に示すように、得られた基板上に、ITO等から成る透明電極層7をスパッタリング法で形成する。
さらに、図6(d)に示すように、得られた基板上の透過部に対応する位置に透過部リベット10aを、反射部に対応する位置に反射部リベット10bをフォトリソグラフィ法により形成する。これにより、透過部リベット10aは下地12、即ちBMの厚み分だけ反射部リベット10bよりも高くなる。従って、透過部リベット10aの高さはBMの厚みに依存し、透過部リベット10aをより高く形成したい場合にはBMを形成する金属層の厚みを厚くしておく必要がある。その後、垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布し、カラーフィルタ基板2を製造する。なお、対向基板3の製造プロセスについては図3と同様であるため説明は省略する。
本実施形態においても第1実施形態と同様に、透過部において液晶の容積に対する透過部リベット10aの占める割合が増加するため、液晶分子の配向安定性を向上させて画素全体での応答速度を速くすることができる。また、透過部リベット10a自体の高さを従来と同等に形成しても、下地12の厚み分だけ高くなるため、第1実施形態に比べて光漏れの発生やコントラストの低下も抑制することができる。
さらに、透過部リベット10a自体は反射部リベット10bと同じ高さでよいため、透過部リベット10a及び反射部リベット10bを同一工程で形成することができ、下地12はフォトリソグラフィ法によりBMと同時に透明基板5上にパターニングできるため、下地12を設けるための工程も別途設ける必要がない。従って、第1実施形態に比べてカラーフィルタ基板2の製造工程が一層簡素化される。
図7は、本発明の第3実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。図1及び図5と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、透過部リベット10aの形成される部分に、2層の着色層6を重ねて予めランド状の下地12を設けておき、その上に透過部リベット10aを形成している。
本実施形態における液晶素子の製造プロセスを、図8を参照しながら説明する。先ず、透明基板5上にマトリクス状のBM(図示せず)をフォトリソグラフィ法により形成した後、図8(a)に示すように、画素色となる赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの着色層6を印刷する。図8では赤色の画素について説明しており、赤色の着色層6aがベタ状に印刷されている。次に、図8(b)、(c)に示すように、透過部リベット10aの形成される部分にのみ、画素色以外の2色の着色層6をランド状に重ねて印刷し、下地12を形成しておく。ここでは緑色の着色層6bと青色の着色層6cを重ねて印刷する。
下地12の形成に用いられる着色層6b、6cは、緑色及び青色の画素においては画素色としてベタ状に印刷されるため、下地12の形成される順序は画素色によって異なる。即ち、緑色の画素では先ず着色層6aがランド状に印刷され、着色層6bがベタ状に印刷された後、着色層6cがランド状に印刷される。また、緑色の画素では先ず着色層6a、6bがランド状に印刷された後、着色層6cがベタ状に印刷される。なお、この例では赤色の着色層6aを印刷した後、緑色の着色層6b及び青色の着色層6cを順次印刷することとしているが、各着色層6a〜6cの印刷順序についても特に制限はない。そして、図8(d)に示すように、得られた基板上にITO等から成る透明電極層7をスパッタリング法で形成する。
さらに、図8(e)に示すように、得られた基板上の透過部に対応する位置に透過部リベット10aを、反射部に対応する位置に反射部リベット10bをフォトリソグラフィ法により形成する。透過部リベット10aは2層の着色層6b、6cで形成された下地12に重なるように設けられており、1層当たりの着色層6の厚みは約1.3〜1.7μmであるため、透過部リベット10aは全体として約2.6〜3.4μmだけ反射部リベット10bよりも高くなる。反射部リベット10bの高さは約1.3μmであるため、透過部リベット10aは全体として約3.9〜4.7μmの高さに形成することができる。その後、垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布し、カラーフィルタ基板2を製造する。なお、対向基板3の製造プロセスについては図3と同様であるため説明は省略する。
本実施形態においても第1、第2実施形態と同様に、透過部において液晶の容積に対する透過部リベット10aの占める割合が増加するため、液晶分子の配向安定性を向上させて画素全体での応答速度を速くすることができる。また、透過部リベット10a自体の高さを従来と同等に形成しても、下地12の厚み分だけ高くなるため、第2実施形態と同様に光漏れの発生やコントラストの低下を抑制することができる。
さらに、透過部リベット10a及び反射部リベット10bを同一工程で形成することができ、下地12は他の画素の画素色となる着色層6b、6cにより印刷されるため、下地12を設けるための工程も別途必要としない。従って、第2実施形態と同様にカラーフィルタ基板2の製造工程が一層簡素化される。
本実施形態においては、画素色として用いる着色層6上に、他の2色の着色層6をランド状に重ねて3色載せとして下地12を形成しているが、画素色として用いる以外のいずれか1色を重ねて下地12を形成することもできる。しかし、画素色に他の1色を重ねた2色載せとして下地12を形成した場合、2色の組み合わせにより各画素の透過部リベット10a部分の色変化(色シフト)が発生する。そのため、本実施形態のように3色載せにより下地12を形成することが好ましい。
図9は、本発明の第4実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。図1、図5及び図7と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、第1〜第3実施形態とは異なり、透過部リベット10a及び反射部リベット10bは、それぞれ対向基板3側の透過電極9上及び反射電極11上に形成されている。また、透過部リベット10aの形成される部分には、TFTに駆動電圧を供給するゲート線の形成材料を用いて予めランド状の下地12を設けておき、その上に透過部リベット10aを形成している。
本実施形態における液晶素子の製造プロセスを、図10を参照しながら説明する。先ず、TFT基板8上にゲート線、ソース線、TFTをフォトリソグラフィ法により形成する。このとき、図10(a)に示すように、ゲート線の形成と同時にランド状の下地12を透過部リベット10aが形成される部分にのみ形成しておく。一方、反射部リベット10bが形成される部分には下地12は設けない。次に、図10(b)に示すように、TFT基板8上にITO層をスパッタリング法で積層し、所定のパターンにエッチングして透過電極9を形成する。さらに図10(c)に示すように、金属層をスパッタリング法で積層し、所定のパターンにエッチングして反射電極11を形成する。
さらに、図10(d)に示すように、透過電極9上に透過部リベット10aを、反射電極11上に反射部リベット10bをフォトリソグラフィ法により形成する。これにより、透過部リベット10aは下地12、即ちゲート線の厚み分だけ反射部リベット10bよりも高くなる。従って、透過部リベット10aの高さはゲート線の厚みに依存し、透過部リベット10aをより高く形成したい場合にはゲート線を形成する金属層の厚みを厚くしておく必要がある。その後、垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布し、対向基板3を製造する。なお、カラーフィルタ基板2の製造プロセスについては、リベット形成工程を含まない以外は図2と同様であるため説明は省略する。
本実施形態においても第1〜第3実施形態と同様に、透過部において液晶の容積に対する透過部リベット10aの占める割合が増加するため、液晶分子の配向安定性を向上させて画素全体での応答速度を速くすることができる。また、透過部リベット10a自体の高さを従来と同等に形成しても、下地12の厚み分だけ高くなるため、第1実施形態に比べて光漏れの発生やコントラストの低下も抑制することができる。
さらに、透過部リベット10a自体は反射部リベット10bと同じ高さでよいため、透過部リベット10a及び反射部リベット10bを同一工程で形成することができ、下地12はフォトリソグラフィ法によりゲート線と同時にTFT基板8上にパターニングできるため、下地12を設けるための工程も別途設ける必要がない。従って、第1実施形態に比べてカラーフィルタ基板2の製造工程が一層簡素化される。
なお、ここではゲート線の形成材料(ゲート線形成層)を用いて、下地12をゲート線と同時形成しているが、ゲート線の代わりにソース線の形成材料(ソース線形成層)を用いて、下地12をソース線と同時形成することもでき、さらにゲート線とソース線の形成材料を重ね合わせて下地12を形成することも可能である。この場合、ゲート線若しくはソース線の形成材料のみで形成する場合に比べ、下地12をより高く形成可能となる。
上記各実施形態で説明した液晶モジュールを、バックライト装置と共に液晶テレビやパソコン、デジタルカメラ等の筐体内に搭載することにより、高コントラストで応答速度、配向安定性も良好で、且つ生産性にも優れた液晶表示装置を提供でき、液晶表示装置を搭載した製品の高画質化、高精細化に貢献する。
その他本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ここでは能動素子としてTFTを用いたTFT方式の液晶素子について説明したが、TFTに代えてダイオードを用いたダイオード方式の液晶素子にも適用できるのはもちろんである。また、各実施形態における液晶素子の製造プロセスは例示したものに限定されるものではなく、BMや着色層、透明電極層等は、従来公知の製膜技術及びパターニング法を適宜組み合わせて形成することができる。
また、上記第1、第2、及び第4実施形態においては、対向する2枚の透明基板のうち一方に着色層6を印刷してカラーフィルタ基板としたカラー液晶素子について説明したが、着色層6を設けないモノクロタイプの液晶素子についても全く同様に適用可能である。
なお、上記第2〜第4実施形態においては、透過部リベット10aに下地12を設けるため、下地12の分だけ透過光を遮光することとなるが、リベット自体が有色であること、リベット部分はセルギャップが狭くリタデーション量が少ないこと、及び、リベットによる電圧降下のため液晶分子にかかる電圧が小さいこと、の3つの理由から、リベット領域は元々透過率が3割程度しかなく、さらにリベット面積は透過領域全体の面積に対して僅かであるため、下地12を設けても透過率の低下による不都合は発生しない。
本発明の液晶素子を用いた場合の応答速度、コントラスト、及び配向安定性の変化を、実施例を用いて具体的に説明する。ここでは、下地12を設けず透過部リベット10a自体を高く形成する第1実施形態の液晶素子において、透過部リベット10aを1.6μmとした場合(本発明1)、2.0μmとした場合(本発明2)、BMを用いて下地12を設け、その上に透過部リベット10aを形成する第2実施形態の液晶素子において、透過部リベット10aを2.0μmとした場合(本発明3)、3.0μmとした場合(本発明4)、及び下地12を設けず透過部リベット10aを1.0μmとした場合(比較例)について、それぞれ応答速度、コントラスト、配向安定性を評価した。
なお、液晶素子としては、電圧を加えた際に輝点、電圧を加えないときに黒点となる垂直配向型のノーマリーブラック方式の液晶素子を用いた。また、配向安定性は、中間調表示時に液晶素子に一定の力を加えた際、液晶分子が元の状態に戻るまでの時間(sec)を測定することにより評価した。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、透過部リベット10aを高く形成した本発明1〜4では、透過部リベット10aの高さに比例して応答速度及び配向安定性の向上が認められた。一方、コントラストについては、下地12を設けず透過部リベット10a自体を高く形成した本発明1、2では、比較例に比べてコントラストがやや低下する傾向が見られたが、下地12の上に透過部リベット10aを形成した本発明3、4では比較例に比べてコントラストが高くなった。
この結果より、透過部リベット10aを高く形成することにより、液晶分子の応答速度及び配向安定性を改善することができ、さらにBMを用いて下地12を設けた場合は、コントラスト低下も効果的に防止できることが確認された。なお、ここには記載しないが、着色層6を重ね合わせて下地12を形成する第3実施形態の液晶素子を用いた場合も、本発明3、4と同様に、コントラストの低下を抑制しながら、応答速度及び配向安定性の向上が可能であることが確認されている。
本発明は、透明基板上に透明電極層が積層された第1の基板と、外光を反射する反射電極と、バックライト光源からの光を透過する透過電極とが所定のパターンで配置され、反射電極及び透過電極に電圧を供給する能動素子を備えた第2の基板と、該第1及び第2の基板の間に挟持された液晶層と、から構成され、反射電極が存在する反射部と透過電極が存在する透過部を有し、透過部における液晶層厚が反射部よりも大きい垂直配向型の半透過型液晶素子において、反射電極上及び透過電極上には、液晶層に含まれる液晶分子の軸対称の配向中心となる配向中心形成用突起が形成されており、前記透過電極上に形成される前記配向中心形成用突起が設けられる位置の透過電極の下には、第2の基板上に配列され能動素子に接続されるゲート線又はソース線の形成材料を用いて、、ゲート線又はソース線と同時に形成された下地が設けられているとともに、透過電極上に形成される前記配向中心形成用突起の下地を含む高さは、反射電極上に形成される前記配向中心形成用突起に比べて高く形成されることとする。
これにより、セルギャップの大きい透過部においても、液晶の容積に対する配向中心形成用突起の占める割合が増加するため、液晶分子の配向安定性が向上する。また、画素全体での応答速度も速くなるため、外部からの圧力等の影響で液晶分子の配向が簡単に乱れず、且つ、短時間で乱れた配向を復元することができる。また、透過電極上に形成される配向中心形成用突起の下地を形成したので、下地の厚み分だけ突起が高くなるため、突起自体の高さに比例して発生する光漏れの発生やコントラストの低下も抑制することができる。さらに、TFT等の能動素子に接続するゲート線又はソース線の形成材料を用いて下地を同時形成したので、液晶素子の製造工程が簡素化される。
また、本発明の液晶素子を搭載することにより、視野角特性に優れ、且つコントラスト低下を抑制しながら応答速度、配向安定性及び生産性も向上した、表示不良のない高画質、高精細な液晶表示装置を提供することができる。
は、本発明の第1実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。
は、第1実施形態に係る液晶素子のカラーフィルタ基板の製造工程を示す断面図である。
は、第1実施形態に係る液晶素子の対向基板の製造工程を示す断面図である。
は、第1実施形態の液晶素子における液晶分子の配向を示す図である。
は、本発明の第2実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。
は、第2実施形態に係る液晶素子のカラーフィルタ基板の製造工程を示す断面図である。
は、本発明の第3実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。
は、第3実施形態に係る液晶素子のカラーフィルタ基板の製造工程を示す断面図である。
は、本発明の第4実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。
は、第4実施形態に係る液晶素子のTFT基板の製造工程を示す断面図である。
は、従来のTN型液晶素子の視角によるコントラスト変化を示す断面図である。
は、従来のMVA型液晶素子を示す部分断面図である。
は、従来の半透過型のMVA型液晶素子を示す部分断面図である。
符号の説明
1 液晶素子
2 カラーフィルタ基板(第1の基板)
3 対向基板(第2の基板)
4 液晶層
5 透明基板
6 着色層
7 透明電極層
8 TFT基板
9 透過電極
10 リベット(配向中心形成用突起)
10a 透過部リベット(配向中心形成用突起)
10b 反射部リベット(配向中心形成用突起)
11 反射電極
12 下地