本発明は、液晶表示装置及びその製造方法に関し、特にコントラストの低下を抑制しながら応答速度、配向安定性を改善する方法に関するものである。
近年、ディスプレイ装置として従来使用されてきたブラウン管(Cathode Ray Tube)に代わり、いわゆるフラットパネルディスプレイが主流となって市場を拡大しつつある。中でも、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)は、薄型、軽量、低消費電力、高精細を特徴としており、テレビやパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の広い分野に用いられている。
液晶表示装置としては、一般に、液晶素子としてネマティック液晶を用いたTN(Twisted Nematic)型や、STN(Super Twisted Nematic)型などが用いられており、2枚の基板の間に液晶を注入し、これに与える電圧の強さを調節して液晶分子の相転移現象により光の透過量を調整する構造になっている。液晶表示装置は、例えば、内側面に透明電極が形成されている1対の透明基板と、この間に封入される液晶と、それぞれの透明基板の外側に設けられた、光を偏光させる2枚の偏光板とから構成される。
フルカラー表示が可能なカラー液晶素子のセル構造は、カラー生成を分担する受動エレメントであるカラーフィルタと、光シャッターとして機能する液晶セルを組み合わせた構成であり、基本的には赤(R)、緑(G)、青(B)、又はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3原色の画素を有するカラーフィルタ基板と、透明基板上にTFT(薄膜トランジスタ)等の能動素子や導電膜を形成した対向基板との隙間に液晶層を封入して成るものである。
カラーフィルタ基板の通常の製造方法としては、まず透明基板上にブラックマトリクス(以下、BMという)を形成する。BMは、各画素間に配列された遮光領域を示し、液晶表示装置の表示コントラストを向上させ、またTFTなどの能動素子に光が入射して誤動作することを防ぐために設けられる。BMの形成は、通常、透明基板上にクロムやニッケル等の金属又はそれらの酸化物、或いはカーボンブラック等の遮光剤を分散させた感光性又は非感光性の樹脂を積層し、格子状にパターニングすることにより行われる。
次に、格子状のBMの開口部を埋めるように着色層を印刷(積層)して各色の画素を形成する。そして、この着色層の上に液晶を電界で駆動させるために必要なITO(酸化インジウムスズ)層などから成る透明電極層が形成される。セルの組み立てに際しては、この透明電極層の上にポリイミドから成るオーバーコート膜を積層した後、ラビング処理を行うことにより、液晶分子の配向性を安定化させるための配向膜を形成する。この後、セル組み立て工程へ送られ、対向基板と貼り合わされた後、液晶注入が行われる。
近年、液晶表示装置の大画面化やモニタ用途への展開に伴い視野角特性の改良が求められており、ネガ型液晶を使用したVA(Vertical Alignment)型液晶表示装置の開発が進められている。VA方式は、電圧無印加のときに液晶分子長軸が基板表面に対して垂直に配向して黒表示となり、電圧印加で液晶長軸が基板面と平行方向に倒れて白表示となる、いわゆる垂直配向型ノーマリーブラック方式であり、従来のTN方式に比べて高視野角化が可能であるという特長を有している。
しかし、上記のような液晶表示装置に用いられる液晶素子は、初期配向状態において所定のプレチルト角(液晶分子と基板表面とのなす角)を有しており、図8に示すように、電極101、102間に電圧を印加した時に液晶分子Lが同一方向に立ち上がる。このため、図8(b)のように異なる視角A及び視角Bからセルを観察した場合、液晶分子Lの見かけ上の屈折率が変化して表示のコントラストが低下し、さらに中間調状態では視角によりコントラストの反転現象が生じるなど、表示品位が著しく低下する。
なお、図8は、電圧無印加状態で図8(a)のように液晶分子の配向が水平方向となり、電圧印加状態で図8(c)のように液晶分子の配向が垂直方向となるTN型やSTN型の液晶素子について示しているが、VA型の液晶素子においても事情は同じである。
そこで、液晶表示装置の視野角を拡大する方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、カラーフィルタの画素上での液晶配向を分割するために、VA型液晶表示装置のカラーフィルタ基板若しくは対向基板の表面に、液晶分子の軸対称の配向中心となる突起を設けることにより、液晶配列方向の制御を自動的に行う広視野角なMVA(Multi domain Vertical Alignment)型液晶表示装置が開示されている。
また、特許文献2には、液晶と光硬化性又は熱硬化性樹脂とを混合して硬化させて樹脂中に液晶滴を形成した高分子分散型の液晶表示素子において、対向する2枚の基板の少なくとも一方に凸部、凹部或いは柱部を設けて液晶分子を軸対称状に配向するとともに、凸部を形成する材料に有色の添加物を加えて遮光性を付与してコントラストの低下を防止する方法が開示されている。
MVA型液晶素子の構造を図9に示す。ここでは一例として、透過型の液晶素子について説明する。図9において、液晶素子1は、カラーフィルタ基板(第1の基板)2、及びカラーフィルタ基板2に対向して設けられた対向基板(第2の基板)3と、その隙間に封入される液晶層4から構成される。なお、図9は電圧の無印加状態を示している。
カラーフィルタ基板2は、ガラス等から成る透明基板5と、透明基板5上に形成される赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の着色層6と、着色層6上にベタ状に積層されるITO層などから成る透明電極層7から構成されている。なお、ここでは図示しないが、透明基板5と着色層6との間には、遮光膜となるBMが格子状に形成されており、その格子間の開口部を埋めるように着色層6が形成されている。また、透明電極層7の上に形成される配向膜も記載を省略している。
一方、カラーフィルタ基板2に対向する対向基板3は、ゲート線及びソース線をマトリクス状に配置し、その交点にTFT(いずれも図示せず)が接続された透明なTFT基板8と、TFT基板8上に積層される透過電極9から構成されている。なお、対向基板3上にも配向膜が形成されているが、ここでは記載を省略している。そして、図示しないバックライト光源からの光をTFT基板8側からカラーフィルタ基板2側へ透過させることにより、所望のカラー画像の表示を行う。
10は、基板上の一部に設けられた配向中心形成用突起(以下、リベットという)である。リベット10周辺の液晶分子はリベット表面に対し垂直に配向するため、リベット10が角錐であればその斜面の数によって配向分割数が決まり、リベット10が円錐であれば放射状の液晶配向が得られる。即ち、液晶分子Lはリベット10により軸対称に均等配向されるため、視野角特性を改善することができる。
なお、リベット10の頂部は配向規制力がほとんど存在せず、液晶分子の配向が不安定となるため、頂部はなるべく狭いことが望ましい。また、リベット10の側面の傾斜は順テーパ形状であることが望ましい。
また、リベット10の形状が不均一であると液晶配向の乱れが生じ、表示ムラが発生する原因となるため、リベット10を均一に形成することが求められる。このため、リベット10を形成する手法としては、微細なパターンを精度良く加工できるフォトリソグラフィ法が用いられる。即ち、リベット10が非感光性の樹脂で形成される場合は、その上にフォトレジスト膜を形成した後に、また、リベット10が感光性の樹脂で形成される場合は、そのまま、或いは酸素遮断膜を形成した後に、所定のパターンを有するフォトマスクを介し、露光、現像を行うことにより形成される。その後、さらにリベット10上も含めて配向膜(図示せず)が積層される。
ここで、液晶素子には、光源としてバックライトのみを利用する透過型、外光の反射のみを利用する反射型、外光の反射とバックライトの両方を利用する半透過型の3タイプがある。画面背面のバックライトを光源とする透過型液晶は、彩度が高く、暗い室内で見やすいという特徴があるが、消費電力が大きく、明るい屋外ではコントラストが低下するという欠点がある。
また、外光の反射を光源とする反射型液晶は、消費電力が少なく、明るい屋外で見やすいという特徴があるが、彩度が低く、暗いところでは表示できなくなるという欠点がある。半透過型液晶は、一部の光を反射し、一部の光を透過するマジックミラーのような素材を液晶パネルの裏に挟むことで両者を融合したタイプや液晶素子内に外光を反射する反射部とバックライトの光を透過する透過部を有するタイプの液晶で、暗いところではバックライトを、明るいところでは外光を利用することで、両者の利点を生かした方式であり、携帯電話などに広く利用されている。
従来の半透過型のMVA型液晶素子を図10及び図11に示す。図10は、半透過型のMVA型液晶素子の平面図である。図10に示すように、TFT基板8(図11参照)上にゲート線20とソース線21がマトリクス状に配線され、ゲート線20とソース線21で囲まれた部分に液晶素子1が形成される。液晶素子1にはバックライト光源からの光を透過させる透明な透過電極9、及び外光を乱反射させる反射電極11が積層されており、反射電極11の一部が窓状に開口して透過電極9が露出する透過部17となり、反射電極11の存在する部分が反射部18となる。対向基板3とカラーフィルタ基板2(図11参照)との隙間には液晶層4(図11参照)が封入されており、カラーフィルタ基板2の内面にはリベット10が形成されている。
液晶素子1に画像を表示させるためには、走査信号をゲート線20に流し、データ信号をソース線21に流すことで、両信号線が平面的に見て交差する部分に配置された薄膜トランジスタ(以下、TFTという)22のソース電極にデータ信号が、ゲート電極に走査信号が供給される。このようにしてTFT22がONすると、TFT22のドレイン電極と兼用される透過電極9を介して液晶層4に電圧が印加されて液晶分子の配列方向が制御される。透過電極9の下方には絶縁層を介して補助容量線12が設けられており、ゲート線20からの走査信号がLOWレベルになってTFT22がOFFになっても、TFT22のゲート電位が補助容量線12により所定時間保持され、液晶分子の配向が継続する。
図11は、MVA型液晶素子の概略断面図(図10のAA′断面を左側から見た図)である。液晶素子1には、バックライト光源からの光を透過させる透過電極9が露出する透過部17と、外光を反射させる反射電極11が存在する反射部18が形成されている。反射電極11は、樹脂製層間絶縁膜15の表面にAl/Mo膜から成る反射電極膜16が積層されて成り、反射電極11の上面には、外光を乱反射させるための多数の凸部11a及び凹部11bが形成されている。補助容量線12上にはTFT基板8全面を被うように透明樹脂から成るゲート絶縁膜13が積層されており、ゲート絶縁膜13上には透過電極9が積層されている。反射部18の透過電極9上には、さらに保護絶縁膜14が積層されている。
このような半透過型液晶素子では、反射部18に形成されるリベット(以下、反射部リベットという)10bの直下にも凸部11aが形成されている。このとき、反射部18のセル厚Rがリベット高さRiに比べて十分に広い場合には反射部リベット10bと反射電極11とのクリアランスcが確保されており、リベット10bが反射電極11に接触するおそれはない。一方、良好な動画表示性能を得るために、液晶分子の電界応答速度を向上する必要性が発生する場合があり、その電界応答速度向上手段の一つとしてはセル厚Rを狭小化する方法がある。しかしながら、セル厚Rを狭小化した場合には、クリアランスcを十分に確保できず、反射部リベット10bが反射電極11の凸部11aに接触し、摩擦を生じるおそれがある。
リベットが反射電極に接触すると、リベット表面の配向膜が剥がれて液晶の配向性が低下し、微小欠陥等の表示不良が生じる。一方、反射電極の電極膜が剥がれた場合はその部分に表示不良が発生し、剥がれた電極膜がリークを誘発することもある。また、リベットが基板間の支点となることで、セル厚がリベット高さで決定されてしまい、リベット接触部分に部分的なセル厚のズレが生じて表示ムラが発生する。また、液晶素子全体のセル厚のズレが生じた場合は所望の光学特性が得られなくなる。さらに、リベット接触部分に液晶層が注入されにくくなり、注入不足部分に表示不良が発生するという問題点もあった。
上記の問題点を解決する方法としては、全体のリベット高さを低くする方法、反射部のみリベット高さを低くする方法、或いは反射部のセル厚を広くする方法等が考えられるが、全体のリベット高さを低くすると、透過部での応答速度が低下し、さらに液晶分子の配向が不安定となって表示のざらつきが発生する。
また、反射部のみリベット高さを低くする場合には、リベット形成プロセスを追加する(2段階に分ける)必要が生じ、製造面、コスト面において不利となり、反射部のセル厚を広くする場合は透過部と反射部のセル厚の比が1/2からずれてしまい、透過部及び反射部での光学特性が一致しなくなる。
特開平7−120728号公報
特開平8−292423号公報
本発明は上記問題点に鑑み、製造プロセスの追加や光学特性の低下を伴うことなく、製造時におけるリベットと反射電極との衝突や摩擦を防止する半透過式の垂直配向型液晶素子及びそれを備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、透明基板上に透明電極層が積層された第1の基板と、表面に外光を乱反射する多数の凸部及び凹部が形成された反射電極と、バックライト光源からの光を透過する透過電極とが所定のパターンで配置され、前記反射電極及び前記透過電極に電圧を供給する能動素子を備えた第2の基板と、該第1及び第2の基板の間に挟持された液晶層と、から構成され、前記反射電極が存在する反射部と前記透過電極が存在する透過部を有する垂直配向型の半透過型液晶素子において、前記透明電極層上には、前記液晶層に含まれる液晶分子の軸対称の配向中心となる配向中心形成用突起が形成されており、前記配向中心形成用突起に対向する前記反射電極の表面には前記凸部の存在しない平坦部が形成されることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の液晶素子において、前記配向中心形成用突起の先端と前記平坦部との間に所定の間隔が設けられることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の液晶素子において、前記第1の基板側から平面的に見たとき、前記配向中心形成用突起の外周と、前記平坦部の外周との間に所定の間隔が設けられることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の液晶素子において、前記反射電極の厚みにより前記反射部のセル厚を調整することを特徴としている。
また本発明は、上記構成の液晶素子において、前記反射部に対向する前記第1の基板にセル厚調整用段差が設けられることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の液晶素子において、前記反射部と前記透過部のセル厚の比が略1/2であることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の液晶素子が搭載された液晶表示装置である。
本発明の第1の構成によれば、反射部の配向中心形成用突起に対向する反射電極表面に平坦部を設けることにより、製造時における反射電極の凸部と配向中心形成用突起との衝突や摩擦を抑制して表示不良の発生を低減することができる。
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の液晶素子において、配向中心形成用突起の先端と平坦部との間に所定の間隔を設けることにより、反射電極と配向中心形成用突起との衝突や摩擦を一層確実に防止する。
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の液晶素子において、第1の基板側から平面的に見たとき、配向中心形成用突起の外周と平坦部の外周との間に所定の間隔を設けることにより、配向中心形成用突起の形状や寸法精度に応じて反射電極との衝突や摩擦を効果的に防止可能な形状及び大きさの平坦部とすることができ、且つ、反射部全体として見た場合に反射率の低下が生じない必要最小限の大きさとすることができる。
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の液晶素子において、反射電極の厚みで反射部のセル厚を調整することにより、透過部及び反射部でのセル厚比を簡易な方法で調整することができる。
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の液晶素子において、反射部に対向する第1の基板にセル厚調整用段差を設けることにより、透過部及び反射部でのセル厚比を簡易な方法で調整することができる。
また、本発明の第6の構成によれば、上記第4又は第5の構成の液晶素子において、反射部と透過部のセル厚の比を略1/2とすることにより、透過部及び反射部での光学特性が一致した液晶素子となる。
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の液晶素子を液晶表示装置に搭載することにより、コントラスト低下を抑制しながら応答速度、配向安定性及び生産性にも優れ、表示不良のない高画質、高精細な液晶表示装置を提供できる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る液晶素子の構造を示す概略図である。従来例の図11と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図1(a)は第1実施形態の液晶素子の部分断面図であり、反射部リベット10bに対向する反射電極11の表面には凸部11aの存在しない平坦部23が形成されている。この構成により、反射部リベット10bと反射電極11との間には所定のクリアランスが確保されるため、反射部リベット10bと凸部11aとの衝突や摩擦に起因する表示不良の発生も低減する。
図1(b)は、反射部リベット10bと平坦部23との関係を示す平面図である。平坦部23は、液晶素子1の組み立て時における位置ずれおよび寸法ずれを考慮して、反射部リベット10bの最大直径Dよりも大きい直径Dexを有する円形状に形成されている。これにより、反射部リベット10bと凸部11aとの衝突や摩擦を効果的に防止する。
図2(a)〜(c)は、第1実施形態の液晶素子に用いられるカラーフィルタ基板2の製造工程を示す断面図であり、図3(a)〜(e)は、対向基板3の製造工程を示す断面図である。図2、図3を用いて本実施形態の液晶素子の製造プロセスを説明する。
先ず、透明基板5上にマトリクス状のBM(図示せず)をフォトリソグラフィ法により形成した後、図2(a)に示すように、画素色に合わせて赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの着色層6を印刷する。次に、図2(b)に示すように、得られた基板上に、ITO等から成る透明電極層7をスパッタリング法で形成する。
さらに、図2(c)に示すように、得られた基板上の透過部に対応する位置に透過部リベット10aを、反射部に対応する位置に反射部リベット10bをフォトリソグラフィ法により形成する。その後、垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布し、カラーフィルタ基板2を製造する。
一方、透明基板上に金属層を積層した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングして補助容量線12、及びゲート線20、ソース線21、TFT22(いずれも図9参照)、を形成し、図3(a)に示すようなTFT基板8とする。次に、透明樹脂層をスパッタリング法で積層し、所定のパターンにエッチングして図3(b)に示すようなゲート絶縁膜13を形成し、さらにITO等から成る透明電極層を積層し、所定のパターンにエッチングして図3(c)に示すような透過電極9を形成する。
次いで、図3(d)に示すように補助容量線12の存在する部分には保護絶縁膜14を積層し、さらに保護絶縁膜14上に樹脂性層間絶縁膜15及びAl/Mo膜から成る反射電極膜16をスパッタリング法で積層し、所定のパターンにエッチングして反射電極11を形成する。このとき、反射電極11の表面に凸部11a、凹部11b、及び平坦部23が形成される。その後、カラーフィルタ基板2と同様に垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布して図3(e)に示すように対向基板3を製造する。最後に、カラーフィルタ基板2及び対向基板3を所定の間隔を隔てて貼り合わせ、隙間に液晶層4を封入して図1に示したような液晶素子1が完成する。
透過部リベット10a及び反射部リベット10bの形状は、画素上の液晶分子の配向方向を2分割以上に分割できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、透過部及び反射部がストライプ状に形成されている場合は、断面が三角形状、半円形状ないし台形状で連続の線形状、透過部及び反射部がマトリクス状に形成されている場合は、三角錐ないし、断面が三角形状、台形状の円錐形状などが好適に用いられる。
図4は、図1に示す液晶素子1各部の寸法を示した表である。透過部17及び反射部18のセル厚T、Rは、液晶分子の物性値や駆動電圧等に依存する液晶素子全体の光学特性により決定される。透過部17及び反射部18での光学特性を一致させるためには、透過部17に対する反射部18のセル厚の比を略1/2とすることが望ましい。ここでは透過部セル厚T=3.4μm、反射部セル厚R=1.7μmとし、R/T=1/2に設定している。なお、反射部18のセル厚Rは、凸部11a及び凹部11bの中間の高さからカラーフィルタ基板2の透明電極層7表面までの距離とする。
リベット高さRi及びリベット最大直径Dは、液晶素子の応答速度と液晶分子の配向安定性を得るために必要な値であり、ここではRi=1.5μm、D=15μmとしている。反射電極11の樹脂膜厚hは、反射部セル厚Rを決定するために必要な値であり、ここではh=1.9μmとしている。反射電極11表面に形成される凸部11a及び凹部11bの凹凸深さΔ、及び凹凸ピッチpは、反射角度に依存する反射電極11の散乱特性を最適化するために必要な値であり、ここではΔ=0.8μm、p=10μmとしている。
反射部リベット10bと平坦部23とのクリアランスcは、樹脂膜厚h及び樹脂上に積層される反射電極膜(Al/Mo膜)の膜厚tに依存する反射部セル厚Rの精度と、リベット高さRiの寸法精度、ならびに基板間距離を決定するための球状あるいは柱状スペーサの寸法精度とを考慮して決定される。ここではc=0.6μmとしている。
なお、上記実施形態においては、反射部リベット10bの下方には凸部11a及び凹部11bが存在しないこととなるが、平坦部23でも反射率には寄与するため、反射部18全体として見た場合に反射率の低下は生じない。また、リベット自体が有色であること、リベット部分はセルギャップが狭くリタデーション量が少ないこと、及び、リベットによる電圧降下のため液晶分子にかかる電圧が小さいこと、の3つの理由から、リベット領域は元々透過率が3割程度しかなく、さらにリベット面積は反射領域全体の面積に対して僅かであるため、リベット10bの下方に平坦部23を設けても透過率の低下による不都合は発生しない。
しかし、凸部11a及び凹部11bの存在する面積を最大として散乱特性を最適にするためには、平坦部23の面積をできるだけ小さくする必要がある。ここでは反射部リベット10bが円錐形であり、その断面形状が円形であるため、平坦部23も円形に形成しているが、平坦部23は円形に限られるものではなく、リベットの断面形状に合わせて任意の形状に設計することができる。例えばリベット10bの断面形状が菱形であれば、平坦部23も菱形に形成すれば良い。
一方、リベット10bと反射電極11との摩擦や衝突を確実に防止するためには、カラーフィルタ基板2側から平面的に見たとき、平坦部23の外周とリベット10bの外周との間に所定の間隔を設けておくことが好ましい。この間隔は、リベット10b及び平坦部23の寸法精度、位置精度、並びに基板の貼り合わせ精度を考慮して決定される。ここではリベット直径D=15μm、平坦部直径Dex=29μmとし、平坦部の外周とリベットの外周との間隔を(29−15)/2=7μmとしている。
なお、セル厚T、Rやリベット高さRi、リベット直径D、反射電極11の樹脂膜厚h、Al/Mo膜厚t、凹凸深さΔ、及び凹凸ピッチpについても、上記数値に限定されるものではなく、光学特性や応答速度等の液晶素子1の仕様に応じて任意に設定される。また、クリアランスcも本実施形態に示した値に限定されるものではなく、上述した寸法精度や組み立て精度に応じて適宜設定することができる。
図5は、本発明の第2実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、樹脂性層間絶縁膜15を対向基板3の全面に積層し、反射部18にのみ反射電極膜16を積層して反射電極11を形成している。また、反射部リベット10bの形成される部分に、透明樹脂材料を用いて予めセル厚調整用段差24を設けておき、その上に反射部リベット10bを形成している。即ち、セル厚調整用段差24を用いて透過部17と反射部18のセル厚T、Rを調整している。
本実施形態における液晶素子の製造プロセスを、図6を参照しながら説明する。先ず、図6(a)に示すように、透明基板5上にマトリクス状のBM(図示せず)をフォトリソグラフィ法により形成し、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの着色層6を画素色に合わせて印刷する。そして、図6(b)に示すように、着色層6上に透明性樹脂層を積層し、フォトリソグラフィ法により反射部15に当たる部分のみを残すことによりセル厚調整用段差24を形成する。その後、図6(c)に示すように、得られた基板上に、ITO等から成る透明電極層7をスパッタリング法で形成する。
さらに、図6(d)に示すように、得られた基板上の透過部に対応する位置に透過部リベット10aを、反射部に対応する位置に反射部リベット10bをフォトリソグラフィ法により形成する。その後、垂直配向膜(図示せず)を全面に塗布し、カラーフィルタ基板2を製造する。これにより、対向基板3に貼り合わせた時、反射部18のセル厚Rはセル厚調整用段差24の厚み分だけ透過部17のセル厚Tよりも狭くなる。なお、対向基板3の製造プロセスについては、樹脂性層間絶縁膜15を対向基板3の全面に積層し、Al/Mo膜から成る反射電極膜16を反射部18にのみ積層する以外は図3と同様であるため説明は省略する。
本実施形態においても第1実施形態と同様に、反射部リベット10bに対向する反射電極11の表面には平坦部23が形成されているため、反射部リベット10bと凸部11aとの衝突や摩擦に起因する表示不良の発生を低減することができる。本実施形態の液晶素子1各部の寸法を図7に示す。反射部リベット10bと平坦部23との位置関係については第1実施形態の図1(b)と同様であり、液晶素子1各部の寸法値の決定理由についても第1実施形態と同様であるため説明は省略する。
なお、ここでは透明性樹脂を用いてセル厚調整用段差24を形成しているが、透明電極層7を用いて、セル厚調整用段差24を透明電極層7と同時形成することもでき、さらに樹脂性層間絶縁膜15を透過部17と反射部18とで異なる厚みに積層して透過部17と反射部18とのセル厚比を調整することも可能である。
しかし、透明電極層7の厚みが大きくなると、透明電極での光吸収による色味変化や透過率の低下が無視できなくなり、さらに透明電極層7を厚膜に形成するにはそれだけ製造プロセスにおける膜形成時間も長くなる。また、厚みの異なる樹脂性層間絶縁膜15を透過部17と反射部18とにパターニング形成する場合も製造プロセスが複雑となる。従って、透明性樹脂を用いてセル厚調整用段差24を形成する本実施形態の方法でセル厚比を調整することが好ましい。
上記各実施形態で説明した液晶モジュールを、バックライト装置と共に液晶テレビやパソコン、デジタルカメラ等の筐体内に搭載することにより、高コントラストで応答速度、配向安定性も良好で、且つ生産性にも優れた液晶表示装置を提供でき、液晶表示装置を搭載した製品の高画質化、高精細化に貢献する。
その他本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ここでは能動素子としてTFTを用いたTFT方式の液晶素子について説明したが、TFTに代えてダイオードを用いたダイオード方式の液晶素子にも適用できるのはもちろんである。また、各実施形態における液晶素子の製造プロセスは例示したものに限定されるものではなく、BMや着色層、透明電極層等は、従来公知の製膜技術及びパターニング法を適宜組み合わせて形成することができる。
また、上記第1、第2実施形態においては、対向する2枚の透明基板のうち一方に着色層6を印刷してカラーフィルタ基板としたカラー液晶素子について説明したが、着色層6を設けないモノクロタイプの液晶素子についても全く同様に適用可能である。
また、本発明は反射部18にリベット10bが設けられる構成であれば適用可能であり、透過部17には必ずしもリベット10aが設けられていなくとも良い。例えば2枚の基板間の距離を規定する柱状スペーサをリベット10aの代わりに透過部17に設けた液晶素子であっても良い。
本発明は、透明基板上に透明電極層が積層された第1の基板と、表面に外光を乱反射する多数の凸部及び凹部が形成された反射電極と、バックライト光源からの光を透過する透過電極とが所定のパターンで配置され、反射電極及び透過電極に電圧を供給する能動素子を備えた第2の基板と、該第1及び第2の基板の間に挟持された液晶層とから構成され、反射電極が存在する反射部と透過電極が存在する透過部を有する垂直配向型の半透過型液晶素子において、透明電極層上には、液晶層に含まれる液晶分子の軸対称の配向中心となる配向中心形成用突起が形成されており、配向中心形成用突起に対向する反射電極の表面には凸部の存在しない平坦部が形成されることとする。
これにより、反射部のリベット高さやセル厚を変えることなく、製造時における反射電極の凸部と配向中心形成用突起との衝突や摩擦を抑制して表示不良の発生を低減することができ、透過部及び反射部での光学特性も変化しない優れた液晶素子を提供する。また、平坦部は反射電極に凸部及び凹部を形成する際に同時形成されるため、別途製造プロセスを追加する必要もない。さらに、リベットと平坦部との間に所定のクリアランスを設けておけば、反射電極とリベットとの衝突や摩擦を一層確実に防止することができる。
また、第1の基板側から平面的に見たとき、配向中心形成用突起の外周と平坦部の外周との間に所定の間隔を設けておけば、平坦部の形状及び大きさを、リベットの形状や寸法精度、基板の貼り合わせ精度を考慮して反射電極との衝突や摩擦を効果的に防止可能となる。また、反射部の面積を最大とすることができるため、反射部全体として見た場合に反射率の低下も発生しない。
また、反射電極の厚み、或いは第1の基板に設けられたセル厚調整用段差で反射部のセル厚を調整することにより、透過部及び反射部でのセル厚比を簡易な方法で調整することができ、セル厚比を略1/2に設定すれば、透過部及び反射部での光学特性が一致した液晶素子となる。
また、本発明の液晶素子を搭載することにより、視野角特性に優れ、且つコントラスト低下を抑制しながら応答速度、配向安定性及び生産性も向上した、表示不良のない高画質、高精細な液晶表示装置を提供することができる。
は、本発明の第1実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図(a)及び平坦部とリベットとの関係を示す平面図(b)である。
は、第1実施形態に係る液晶素子のカラーフィルタ基板の製造工程を示す断面図である。
は、第1実施形態に係る液晶素子の対向基板の製造工程を示す断面図である。
は、第1実施形態の液晶素子各部の寸法を示す表である。
は、本発明の第2実施形態に係る液晶素子の構造を示す部分断面図である。
は、第2実施形態に係る液晶素子のカラーフィルタ基板の製造工程を示す断面図である。
は、第2実施形態の液晶素子各部の寸法を示す表である。
は、従来のTN型液晶素子の視角によるコントラスト変化を示す断面図である。
は、従来のMVA型液晶素子を示す部分断面図である。
は、従来の半透過型のMVA型液晶素子を示す平面図である。
は、従来の半透過型のMVA型液晶素子を示す部分断面図である。
符号の説明
1 液晶素子
2 カラーフィルタ基板(第1の基板)
3 対向基板(第2の基板)
4 液晶層
5 透明基板
6 着色層
7 透明電極層
8 TFT基板
9 透過電極
10 リベット(配向中心形成用突起)
10a 透過部リベット(配向中心形成用突起)
10b 反射部リベット(配向中心形成用突起)
11 反射電極
11a 凸部
11b 凹部
16 反射電極膜
17 透過部
18 反射部
22 TFT
23 平坦部
24 セル厚調整用段差