JP4638110B2 - 温度感受性モルビリウイルスの作成法 - Google Patents

温度感受性モルビリウイルスの作成法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、モルビリウイルス由来P蛋白質の位置特異的な変異により温度感受性を制御する方法に関する。本発明によるP蛋白質は、ウイルスの弱毒化に有用である。
背景技術
モルビリウイルス(Morbillivirus)属は、モノネガウイルス目パラミキソウイルス科の下位に位置する一属であり、麻疹ウイルスを初めとする多くの病原性ウイルスが含まれている。麻疹ウイルスは、急性の発疹性疾患である「ハシカ」の原因ウイルスである。麻疹ウイルスは広く小児に感染し、発熱、発疹、咳などの症状を示す。時に、麻疹脳炎、麻疹肺炎などの重篤な合併症を引き起こし、死にいたらしめる事もある。又、ごく稀に、感染治癒後にも持続感染し、予後不良の脳炎、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)をおこす。唯一有効な予防手段は弱毒麻疹ウイルスワクチンの予防接種である。
弱毒麻疹ウイルスワクチンの1つであるAIK−C株は、麻疹ウイルスEdmonston株を羊の腎臓細胞、鶏胚細胞に継代する事によって得られたウイルス株である。AIK−C株は、抗体獲得率と安全性に優れ、国際的にも高い評価を得ている。この弱毒生麻疹ワクチンの普及に伴って麻疹罹患者は著明に減少している。一般に、ワクチンの抗体獲得率と安全性とは相反する特性である。したがって、両者をともに高い水準で維持することは容易ではない。そのため、AIK−C株における弱毒化のメカニズムを他の株やウイルスに応用できれば、弱毒化ワクチンの開発において有用である。
AIK−C株は32℃でよく増殖するが、39℃での増殖が極めて低い事(ts;温度感受性)が知られている(SASAKI,K.,Studies on the modification of the live AIK measles vaccine.I Adaptation of the further attenuated AIK measles virus(the strain AIK−L33)to chick embryo cells.Kiasato Arch.of Exp.Med.,47,1−12,1974)。しかし、このウイルスの温度感受性が、どのようなメカニズムによりもたらされているのかは未だ不明である。
発明の開示
本発明は、その形質として温度感受性を導入するために用いるDNAを提供することを課題とする。また本発明は、ウイルスのP蛋白質の特定の部位を変異させてウイルスに温度感受性の形質を導入する方法、およびP蛋白質の特定の部位の変異により温度感受性の形質を持ったウイルス提供することを課題とする。本発明の方法により製造された温度感受性の形質を導入したウイルスは、弱毒ウイルスとしてワクチン製造などに有用である。
本発明者らは、ある種のウイルス蛋白質の変異が温度感受性を制御しているのであれば、その変異を同定し、変異蛋白質を有するウイルスを作製することにより、ウイルスの増殖や毒性を制御することができると考えた。そこで本発明者らは、麻疹ウイルス温度感受性ワクチン株であるAIK−C株と、その親株で非温度感受性株であるEdmonston株のN、P、L遺伝子を用いて、モルビリウイルス属のウイルスの温度感受性に関与している遺伝子の検索を行った。その結果、本発明者らは、P遺伝子が温度感受性に関与していることを突きとめた。
次に、Edmonston株またはAIK−C株のP遺伝子にアミノ酸の置換を導入し、それらのP遺伝子が温度感受性に及ぼす影響を調べた。その結果、P蛋白質の439位のアミノ酸が、温度感受性と密接に関与することを見出した。高温でも増殖可能なEdmonston株では、P蛋白質の439位はロイシンになっている。そして本発明者らは、複数の部位に変異を有するP蛋白質のうち、439位がEdmonston株と同じロイシンである変異体は、Edmonston株のP蛋白質と同等のウイルスの増殖能を示すが、このアミノ酸を変異させる事によって、温度感受性の形質を導入することに成功した。このように、本発明はP蛋白質の439位のアミノ酸と温度感受性との関係を初めて開示するものである。
本発明者らは以上の知見に基づき、ウイルスのP蛋白質の439位のアミノ酸を改変することにより、ウイルスに温度感受性の形質を導入することが可能であることを見出した。温度感受性の形質を導入したウイルスは、宿主における増殖と拡散が困難となり、弱毒化が達成される。これまで、ワクチン開発に有用な弱毒化ウイルスの単離はウイルス変異株のスクリーニングに頼っており、効率が低く時間を要するものであった。本発明により、任意のウイルスを容易に弱毒化することが可能になる。
本発明者らは、また、P蛋白質の439位のアミノ酸以外にも、110位のアミノ酸および275位のアミノ酸も、温度感受性に関与していることを見出した。従って、これらのアミノ酸を変異させることによっても、温度感受性の形質を導入することが可能となる。
すなわち本発明は、温度感受性の形質を導入するために用いるDNA、ウイルスのP蛋白質の特定のアミノ酸を変異させてウイルスの温度感受性の形質を導入する方法、およびP蛋白質の特定の部位の変異により温度感受性の形質を導入したウイルスに関し、より具体的には以下の各発明に関する。
〔1〕モルビリウイルス属に属するウイルスのP蛋白質に由来する蛋白質であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードする、ウイルスに温度感受性の形質を導入するために用いるDNA。
〔2〕配列番号:2に記載のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有する蛋白質であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードする、ウイルスに温度感受性の形質を導入するために用いるDNA。
〔3〕前記ロイシン以外のアミノ酸がプロリンである、〔1〕または〔2〕に記載のDNA。
〔4〕麻疹ウイルス由来の蛋白質をコードする、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のDNA。
〔5〕DNAが、さらに下記(a)および/または(b)である蛋白質をコードする、〔4〕に記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の110位またはその相同な位置のアミノ酸がアスパラギン酸以外のアミノ酸である蛋白質。
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の275位またはその相同な位置のアミノ酸がシステイン以外のアミノ酸である蛋白質。
〔6〕前記アスパラギン酸以外のアミノ酸および/またはシステイン以外のアミノ酸がチロシンである、〔5〕に記載のDNA。
〔7〕〔1〕から〔6〕のいずれかに記載のDNAによりコードされる蛋白質。
〔8〕〔1〕から〔6〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
〔9〕温度感受性の形質を導入した麻疹ウイルスを再構成するために用いる、〔8〕に記載のベクター。
〔10〕モルビリウイルス属に属するウイルスに温度感受性の形質を導入する方法であって、該ウイルスのP蛋白質において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のアミノ酸に変異を導入することを特徴とする方法。
〔11〕配列番号:2に記載のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有する蛋白質を有するウイルスに温度感受性の形質を導入する方法であって、該蛋白質において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のアミノ酸に変異を導入することを特徴とする方法。
〔12〕前記439位またはその相同な位置のアミノ酸をプロリンに置換することを特徴とする、〔10〕または〔11〕に記載の方法。
〔13〕ウイルスが麻疹ウイルスである、〔10〕から〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕前記蛋白質において、さらに下記(a)および/または(b)に記載のアミノ酸に変異を導入することを特徴とする、〔13〕に記載の方法。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の110位またはその相同な位置のアミノ酸。
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の275位またはその相同な位置のアミノ酸。
〔15〕前記110位および/または275位、あるいはそれらの相同な位置のアミノをチロシンに置換することを特徴とする、〔14〕に記載の方法。
〔16〕〔10〕から〔15〕のいずれかに記載の方法により得ることができる、温度感受性の形質を導入したウイルス。
〔17〕弱毒ウイルスである、〔16〕に記載のウイルス。
〔18〕〔16〕または〔17〕に記載のウイルスを含む医薬組成物、および
〔19〕ワクチンとして用いる、〔18〕に記載の医薬組成物。
あるいは本発明は、モルビリウイルス属に属するウイルスのP蛋白質に由来する蛋白質であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAの、温度感受性の形質を導入したウイルスの製造方法における使用に関する。また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有する蛋白質であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAの、温度感受性の形質を導入したウイルスの製造におけるDNAの使用に関する。更に本発明は、これらDNAを含むベクターの、温度感受性の形質を導入した麻疹ウイルスの再構成における使用に関する。
本発明は、温度感受性の形質を導入するために用いるDNAに関する。本発明のDNAは、モルビリウイルス属に属するウイルスのP蛋白質に由来する蛋白質であって、麻疹ウイルスEdmonston株のP蛋白質(配列番号:2)の439位またはその相同な位置のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAが含まれる。また、本発明のDNAには、Edmonston株のP蛋白質のアミノ酸配列(配列番号:2)と少なくとも40%の同一性を有する蛋白質であって、Edmonston株のP蛋白質の439位またはその相同な位置のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAが含まれる。配列番号:2に示すアミノ酸配列との同一性は、望ましくは60%以上、より望ましくは80%以上とする。アミノ酸配列の同一性は、Genetyx−Mac Ver.10(ソフトウエア開発株式会社)を使用した3Lipman−Person法によって決定することができる。
モルビリウイルスに属するウイルスとしては、例えば、麻疹ウイルス(Measles virus)、犬ジステンパーウイルス(Canine distemper virus)、アザラシジステンパーウイルス(Phocid distemper virus)、リンダーペストウイルス(Rinderpest virus)などが挙げられる。
本発明において、配列番号:2に示すアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有するアミノ酸配列からなる蛋白質は、配列番号:2に示すアミノ酸配列からなる蛋白質と類似の構造を持つ。したがって、その439位に相同な位置にあるロイシンは、配列番号:2における439位のロイシンと同様に温度感受性の表現型に重大な影響を与えると考えることができる。またモルビリウイルス属に属するウイルスは、分類学的に近縁のウイルスであることから、そのP蛋白質の構造は保存されている。したがって、やはり配列番号:2における439位に相同な位置のロイシンは、温度感受性の表現型に重大な影響を与えると考えることができる。モルビリウイルス属に属するウイルスのP蛋白質のアミノ酸配列を比較した結果を図8に示す。このようにして、各ウイルスのP蛋白質を構成するアミノ酸配列中の、439位に相当するアミノ酸を明らかにすることができる。
本発明において温度感受性の形質を導入されたか否かは、例えば、目的の蛋白を持つウイルス(P蛋白質の439位と相同な位置がロイシン以外である)が、439位と相同な位置にロイシンを有する対照蛋白を持つウイルスが生育可能なある温度において有意な生育不良性を示し、しかもそれより低いある別の温度では該対照蛋白を持つウイルスと同等の生育を示すことによって判定される。あるいは該目的の蛋白を持つウイルスが該対照蛋白を持つウイルスと比較して、その至適生育温度が有意に低下していれば、そのウイルスは温度感受性であると判定される。より具体的には例えば宿主の体温において対照蛋白を持つウイルス株より生育不良性を示せば温度感受性であると判定される。
また、本発明において「温度感受性の導入」には、温度感受性の付加的な導入も含まれる。すなわち、もともと温度感受性であるウイルスにおいて、さらにその温度感受性が上昇したウイルスも、本発明において温度感受性の形質を導入したウイルスに含まれる。例えば、P蛋白質の439位と相同な位置がロイシン以外であるウイルスと、ロイシンである対照ウイルスにおいて、ある生育温度での両者のウイルスの生育の違いに比べ、それより高い別の生育温度で、P蛋白質の439位と相同な位置がロイシン以外であるウイルスの生育が対照ウイルスに比べ有意に低ければ、そのウイルスは温度感受性が導入されたと言える。また、至適生育温度が有意に低下していることにより判定することもできる。
ウイルスの生育は、ウイルス感染細胞内あるいはその培養上清中のウイルス量を経時的に算定する事で測定できる。ウイルス量の算定には麻疹ウイルスのように適当な感受性細胞に細胞変性、壊死(CPE;cytopathic effect)を生ずるウイルスでは、主にプラーク(plaque)法とTCID50法を用いる。プラーク法は35mmシャーレ、又は6穴プレートに単層培養細胞を用意し、そこに10倍段階希釈したウイルスを接種し、寒天を重層して培養した後、ニュートラルレッドで生体染色する。生きている細胞は赤く染まり、ウイルス感染により変性、壊死した細胞は染色されず白い斑点(プラーク)として観察される。数十〜百のプラークが出現しているシャーレのプラーク数を数え、原液中のウイルス量(PFU;plaque forming unit/ml)を計算する。TCID50法は96穴プレート等に単層細胞を用意する。10倍段階希釈ウイルス液を調製し、各希釈液を一希釈に付4〜6穴の細胞に接種する。数日間培養後、CPEの出現を確認する。ウイルス量の算出(TCID50値)にはReed and Muench法を用いる(Reed,L and Muench,H.,A simple method of estimating fifty per cent endpoints.,Am.J.Hyg.,27,493(1938))ことができる。
温度感受性の形質を導入することによりウイルスの生育能が低下すると、その結果として弱毒化が達成される。一方で本発明に基づけばわずか1アミノ酸の変異によって弱毒化がもたらされるため、抗原としての構造は維持される。したがって、抗体獲得率を高い水準に保ちながら、弱毒化が効果的に達成されるのである。
麻疹ウイルスEdmonston株のP蛋白質のアミノ酸配列、および該蛋白質をコードするcDNA配列を、それぞれ配列番号:2および1に示す。対象とする蛋白質において、Edmonston株のP蛋白質の439位のアミノ酸と相同な位置は、相互のアミノ酸配列を比較することにより決定することができる。対象蛋白質における当該位置は、必ずしも439位である必要はない。例えば、Edmonston株のP蛋白質に対して1または複数のアミノ酸が付加、挿入、および/または欠失したような構造からなる蛋白質の場合は、439位以外の位置である可能性がある。このような蛋白質について、Edmonston株のP蛋白質の439位のアミノ酸と相同な位置を決定するには、相互のアミノ酸をなるべく一致させ、かつ性質の似たアミノ酸をなるべく一致させるように両者のアミノ酸配列に適宜ギャップを挿入してアミノ酸配列を並列(アライメント)させる。これにより、Edmonston株のP蛋白質の439位に相同な位置が、対象とする蛋白質でいずれの位置に相当するのかを決定することができる。このような手法は当業者にとっては周知であり、市販または公開されているコンピュータソフトウェア、例えば解析ソフトGENETYX−MAC VER.10(ソフトウエア株式会社)等を用いて容易に行うことができる。
対象とする蛋白質において、Edmonston株P蛋白質の439位に相当する位置がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAは、本発明の温度感受性の形質を導入するために用いられる。DNAの由来に特に制限はなく、天然のDNAであっても、人為的または自発的に変異が導入されたDNAであってもよい。また、人工的にデザインされた配列からなるDNAであってもよい。
本発明のDNAは、例えば、公知のハイブリダイゼーション技術(Sambrook J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis T.Molecular cloning:A Laboratory Manual(2nd edition).Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor.)を利用して調製することができる。DNAの単離には、ポリメラーゼ連鎖反応技術(Sambrook J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis T.Molecular cloning:A Laboratory Manual(2nd edition).Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor.)を利用することもできる。
即ち、当業者においては、ハイブリダイゼーション法やPCR法により、ウイルス由来のDNAなどをスクリーニングしDNAを単離することができる。ハイブリダイゼーション法に必要なプローブや、PCR法に必要なプライマーの塩基配列は、例えばEdmonston株P蛋白質のcDNA配列(配列番号:1)に基づいて設計することができる。単離したDNAがコードするアミノ酸配列におけるEdmonston株P蛋白質の439位のアミノ酸と相同な位置を同定して、その位置がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAを調製することは容易になし得ることである。
得られたDNAを適宜改変することにより、該DNAがコードする蛋白質におけるEdmonston株P蛋白質の439位に相当するアミノ酸が、ロイシン以外の所望のアミノ酸となるようにすることができる。あるいはこのロイシンを欠失(deletion)する変異を導入することも、本発明に含まれる。どのアミノ酸に置換するかは、適宜選択することが可能と考えられる。実施例に記載したように、Edmonston株P蛋白質の439位のアミノ酸と相同な位置のアミノ酸をプロリンに置換した蛋白質は、ウイルスに温度感受性の形質を与えた。従って、Edmonston株P蛋白質の439位のアミノ酸と相同な位置のアミノ酸をプロリンに改変されている蛋白質をコードするDNAは、本発明において好適に用いられる。
また、本発明によりP蛋白質のこの位置のアミノ酸は温度感受性の表現型に重大な影響を与えることが判明した。従って、該当する位置がロイシン以外のアミノ酸である場合に、このアミノ酸をさらに別のアミノ酸に変異させれば、温度感受性をより上昇させたり、逆に上昇の程度を減少させたりすることが可能である。なお、本発明における温度感受性の上昇、あるいは温度感受性の形質の導入には、すべての温度範囲においてP蛋白質の機能が完全に失活している場合も含まれる。
アミノ酸に変異を導入する方法はよく知られている。例えば、変異ウイルスを含むウイルスライブラリーや、変異P蛋白質をコードするDNAライブラリー等を作製し、望みのアミノ酸配列をコードするDNAをスクリーニングすることによって単離することができる。あるいは変異の入ったウイルスを自然界からスクリーニングすることもできる。更に、公知の遺伝子工学的技術を用いて、部位特異的に変異を導入することも可能である。部位特異的に変異を導入するためには、例えば、SOE(splicing−by−overlap−extention)−PCR法(Ho,S.N.,Hunt,H.D.,Horton,R.M.,Pullen,J.K.,and Pease,L.R.(1989).Gene 77,51−59)、Kunkel法(Kunkel,T.A.(1985)Proc Natl Acad Sci U S A;82(2):488−92)法を用いることができる。
また本発明においては、P蛋白質の439位に相当する部位がロイシン以外のアミノ酸である限り、それ以外の部位を変異させても構わない。実施例に示されるように、例えばEdmonston株のP蛋白質(配列番号:2)において110位のアスパラギン酸をチロシンに置換することにより、温度感受性が上昇することが判明した(図5および6;pCIP005)。また、例えば275位のシステインをチロシンに置換した場合も、温度感受性が上昇した(図5および6;pCIP003)。これらの事実は、110位および275位のアミノ酸の変異が、ウイルスの温度感受性を上昇させることを示している。従って、P蛋白質の439位に相当する部位がロイシン以外のアミノ酸であって、かつ110位に相当するアミノ酸および/または275位に相当するアミノ酸が、それぞれアスパラギン酸以外のアミノ酸および/またはシステイン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAは、より効果的に温度感受性の形質を導入するために好適である。110位および/または275位に相当するアミノ酸は、好ましくはチロシンとすることができる。天然のウイルスにおいて、110位および/または275位に相当するアミノ酸がチロシンである場合は、この位置のアミノ酸はそのままにして、本発明による温度感受性の導入に用いることができるし、また、この位置のアミノ酸を、例えばアスパラギン酸などに変異させることにより、温度感受性の程度を緩和させることも可能である。
また、本発明のDNAには、例えば、Edmonston株のP蛋白質(配列番号:2)において439位がロイシン以外であり、439位のアミノ酸以外の1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加された蛋白質をコードするDNAが含まれる。モルビリウイルスに属するウイルスから得たDNAがコードするP蛋白質のアミノ酸を人為的に改変するのであれば、改変されるアミノ酸の数は、通常、439位に相当するアミノ酸以外のアミノ酸において、10アミノ酸以内、好ましくは5アミノ酸以内、さらに好ましくは3アミノ酸以内である。このようなアミノ酸の改変は、例えばP蛋白質のさらなる温度感受性の上昇を目的として、また、制限酵素部位の導入などDNAの操作性の向上を目的として、さらに、P蛋白質が持つ温度感受性以外の性質の改変を目的として行われ得る。また、蛋白質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。
一般に蛋白質の性質をできるだけ損なわないようにするためには、置換されるアミノ酸は、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましいと考えられる。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有すると考えられる。また、非荷電性としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。また、酸性アミノ酸としては、AspおよびGluが挙げられる。また、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。
また、本発明は、本発明のDNAによりコードされる蛋白質に関する。本発明の蛋白質を用いて、ウイルスに温度感受性の形質を導入することができる。本発明の蛋白質は、これをコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入し、宿主細胞に導入することにより発現させることができる。麻疹ウイルスなどにおいては、本発明の蛋白質をコードするDNAを含むベクターから、温度感受性の形質を導入したウイルスを再構成させることができる。麻疹ウイルスをcDNAから再構成させる方法は、Radecke(Radecke F,Spielhofer P,Schneider H,Kaelin K,Huber M,Dotsch C,Christiansen G,Billeter MA.(1995)EMBO J;14(23):5773−84)の方法、およびSchneider(Schneider H,Spielhofer,P.,Kaelin,K.,Dotsch,C.,Radecke,F.,Sutter,G.,and Billeter,M.A.(1997)J Virol Methods.64(1):57−64)の方法が報告されている。これらの方法によれば、麻疹ウイルスのN、P、M、F、H、およびL蛋白質をコードするDNAから、麻疹ウイルスを再生することができる。従って、このP蛋白質をコードするDNAとして、本発明のDNAを用いれば、温度感受性の形質を導入した麻疹ウイルスを再構成させることができる。すなわち、N、P、M、F、H、およびL蛋白質をコードするDNAを転写させることにより、その転写産物は麻疹ウイルスのゲノムRNAとして機能し、N、P、およびL蛋白質の存在下で麻疹ウイルス粒子が形成される。得られたウイルスは、適当な宿主に感染させることによって、さらに増幅することができる。
麻疹ウイルス以外のモルビリウイルスの再構成法としては、Baronら(Baron,M.D.,and Barrett,T.(1997).J Virol;71(2):1265−71)の方法、および甲斐ら(甲斐智恵子、三浦竜一、清水房子、佐藤宏樹、藤田賢太郎、畠間真一、大橋謙司朗、上間匡、高橋英司、第47回日本ウイルス学会学術集会抄録集(1999)p289、Reverse genetics法を用いた組み換えイヌジステンパーウイルスの作製)の方法、さらには特許WO97/16538が知られている。
本発明に加えて、ウイルスのF蛋白質に変異を与えることによって、温度感受性の形質の導入とともに、細胞融合能の低下をウイルスに導入することができる。本発明者らは、モルビリウイルスのF蛋白質において、麻疹ウイルスEdmonston株F蛋白質の278位またはその相同な位置のアミノ酸がフェニルアラニン以外のアミノ酸である蛋白質を用いることによって細胞融合能の低下を導入することもできることを明らかにしている。この知見を本発明に組み合わせることにより、温度感受性とともに細胞融合能についても変異をもたらし、より安全性に優れたワクチン製剤を提供することができる。
又、P蛋白の439位、またはそれに相同する位置のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である蛋白質、及びF蛋白の278位またはそれに相同する位置のアミノ酸がフェニルアラニン以外のアミノ酸である蛋白質をコードするDNAを含むベクターに、抗原性の異なる麻疹ウイルスの蛋白質をコードするDNA、例えば感染防御に最も関連するH蛋白を発現する遺伝子を組み込んで、宿主細胞に導入し、ウイルスを再構成させることによって、異なる抗原性をもつ安全で優れたワクチン製剤を提供することが可能になる。
加えて本発明は、ウイルスに温度感受性の形質を導入する方法に関する。本発明の方法は、モルビリウイルス属に属するウイルスのP蛋白質、またはEdmonston株のP蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有する蛋白質において、麻疹ウイルスEdmonston株のP蛋白質(配列番号:2)の439位またはそれとに相同な位置のアミノ酸に変異を導入することを特徴とする。導入する変異に特に制限はないが、例えばプロリンに置換する変異が挙げられる。本発明によって得られるウイルスは、上記に記載した方法よりウイルスの温度感受性を比較することができる。
前記蛋白質において、さらに、麻疹ウイルスEdmonston株のP蛋白質(配列番号:2)の110位および/または275位、またはそれらと相同な位置のアミノ酸に変異を導入し、ウイルスの温度感受性の形質をさらに付加的に導入することができる。これらの位置のアミノ酸は、例えばチロシンに置換することができる。
これにより得ることができる、温度感受性の形質を導入したウイルスは、宿主内での増殖、拡散能が低下するため毒性が少ない。これらのウイルスは安全な生ワクチンの製造のために極めて有用である。本発明によれば、どのようなウイルス株に対しても、そのP蛋白質を遺伝子工学的に改変して弱毒化することが可能である。本発明のウイルスをワクチンなどの医薬組成物として使用する場合は、ウイルス自体を医薬として使用する以外に、公知の薬学的処方を適用して製剤化されうる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤などと適宜組み合わせて製剤化して投与することが考えられる。ワクチンとして使用する場合は、適宜アジュバントと組み合わせて投与することができる。患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法、使用目的などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
一般に麻疹ワクチン株ウイルスは、日本においては、厚生省が許可したSPF設備で生産された発育卵から調製したニワトリ胚培養細胞に接種して培養する。培養後、微生物迷入否定試験に合格したワクチン液に安定剤を加えて精製してワクチン原液を得る。ワクチン原液は−80℃に保存されるとともに、安全性と有効性について検定する。検定に合格したワクチン原液を最終バルクとしてプールする。これをワクチン製剤として、数度の国家検定と自家検定に合格したものが最終製品として販売される。
また、本発明のウイルスは、遺伝子治療用のベクターとしても利用できる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1] 麻疹ウイルスAIK−C株の温度感受性に関与する遺伝子の同定
麻疹ウイルスEdmonston株由来のcDNAを用いて、Renilla reniformisルシフェラーゼをレポーター遺伝子に持つミニゲノムRNA合成用鋳型DNAを構築した。このミニゲノム転写用DNAは、麻疹ウイルスのleader配列、N遺伝子上流の非翻訳配列、Renilla reniformisルシフェラーゼ遺伝子、L遺伝子下流の非翻訳配列、およびtrailer配列を持ち1,152塩基から成る。trailer配列の下流にはT7プロモーター配列を、leader配列上流にはリボザイム配列を持ち、それらはT7 RNAポリメラーゼによりin vitro transcription法でミニゲノムRNAを合成した時、ミニゲノムRNAの両末端が、麻疹ウイルスゲノムRNAの両末端を正確に再現するように配置した(図1)。
麻疹ウイルス、Edmonston株、AIK−C株由来のN,P,L遺伝子をクローニングし、T7プロモーターの下流にIRES構造を持つプラスミド、pCITE−4a(Novagen,USA)にクローニングし、それぞれをpCIN01(Edmonston N蛋白発現)、pCIP001(Edmonston P蛋白発現)、pCIL01(Edmonston L蛋白発現)、pCIAN01(AIK−C N蛋白発現)、pCIAP001(AIK−C P蛋白発現)、pCIAL01(AIK−C L蛋白発現)とした。
HeLa細胞を12穴プレートに用意し、T7 RNAポリメラーゼを発現するワクシニアウイルス、vTF7−3をm.o.i=3で感染させた後、麻疹ウイルスN、P、L蛋白を発現する上記ヘルパープラスミドと、合成したミニゲノムRNAをコトランスフェクションした。40時間培養後、細胞を洗浄、溶解し、細胞抽出液を回収した。この抽出液中のルシフェラーゼ活性を計測した(図2)。
Edmonston株、AIK−C株由来のN、P、L蛋白発現プラスミドを組み合わせて、32.5℃または37℃でミニゲノム転写、複製系を用い、ルシフェラーゼの発現量を観察した。その結果、AIK−CのP遺伝子を含む系は37℃ではルシフェラーゼの発現がみられず、AIK−CのP遺伝子が温度感受性に関与している事が示された(図3)。
[実施例2] AIK−C株の温度感受性に関するP蛋白上のアミノ酸変異の同定
AIK−C株とEdmonston株のP蛋白およびC蛋白質上にみられるアミノ酸変異を、それぞれの塩基配列より類推した。Edmonston株のP蛋白質およびC蛋白質をコードするcDNAの塩基配列を配列番号:1に、該cDNAによりコードされるP蛋白質およびC蛋白質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:2および配列番号:3に示す。また、AIK−C株のP蛋白質およびC蛋白質をコードするcDNAの塩基配列を配列番号:4に、該cDNAによりコードされるP蛋白質およびC蛋白質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:5および配列番号:6に示す。P蛋白上には110番目アミノ酸(Edmonston;D−−−AIK;Y)、275番目アミノ酸(Edmonston;C−−−AIK;Y)、439番目アミノ酸(Edmonston;L−−−AIK;P)、また、P遺伝子上に存在するもう一つの蛋白であるC蛋白上の134番目アミノ酸(Edmonston;S−−−AIK;Y)に違いが見いだされた(図4)。
P蛋白質に見られた変異の部位を入れ替えた8つのキメラプラスミドpCIP002,pCIP003,pCIO004,pCIP005,pCIAP002,pCIAP003,pCIAP004,pCIAP005を構築した(図5)。
これらのキメラプラスミドを用いて、pCIN01,pCIL01プラスミドとともにミニゲノム転写、複製系を上記と同様にして行った。pCIP002を用いた時、37℃におけるルシフェラーゼの発現がみられず、又、逆にpCIAP002を用いた時、37℃においてルシフェラーゼの発現がみられた。このことよりAIK−C P蛋白上の439番目アミノ酸(プロリン;P)が温度感受性に関与していると考えられた(図6)。又、pCIP005においては、37℃ではやや発現の抑制がみられ、pCIAP005においては、弱いルシフェラーゼの発現が観察されたことから、110番目アミノ酸(チロシン;Y)も温度感受性に関与していると考えられた。また、pCIP003においては、37℃ではやや発現の抑制がみられ、pCIAP003においては、弱いルシフェラーゼの発現が観察されたことより275番目アミノ酸(チロシン;Y)も、温度感受性に関与していると考えられる。
[実施例3] 感染性クローンによるアミノ酸置換と温度感受性の関係
リバースジェネティクスを用いてAIK−C株の全cDNAを基盤に以下の変異を入れた組換え麻疹ウイルス(infectious clones)を作成した。
▲1▼P遺伝子がAIK−Cのもの(AIK−P infectious clone)。
▲2▼P遺伝子(P蛋白)だけをEdmonston株P遺伝子(P蛋白)にかえたもの(Edm−P infectious clone)。
▲3▼P遺伝子(P蛋白)の439番目のアミノ酸だけをロイシン(Edmonston P蛋白439アミノ酸)に置換し、他はすべてAIK−Cのもの(AIK/Edm−P infectious clone)
▲4▼▲2▼のP蛋白の439番目のアミノ酸だけをプロリン(AIK−C P蛋白439アミノ酸)に代えたもの(Edm/AIK−P infectoius clone)。
Vero細胞に各ウイルスをmoi=0.05で感染させ、32.5℃、37℃、39℃の各温度で培養し、細胞内のウイルス価のタイムコースをとった。すなわち、細胞内の24、48、72、96時間後のウイルス量を測定するため、各時間ごとにプレートよりウイルス感染Vero細胞を培養液ごと回収し、一度遠心して培養上清をとりのぞき、0.5mlの新鮮な培養液に再懸濁した。超音波破砕機で細胞を破壊後、再度遠心し上清を回収した。96穴プレートにB95a細胞を培養し、回収した上清から調整した10倍段階希釈ウイルス液、0.25μlを一希釈に付き、4穴づつ接種した。32.5℃で7日間培養後、CPEの出現を観察し、Reed and Muench法で回収したウイルス原液1ml中のウイルス量(TCID 50/ml)を計算した(Reed,L and Muench,H.,Asimple method of estimating fifty per cent endpoints.,Am.J.Hyg.,27,493(1938))。
実験の結果、32.5℃ではいずれのP遺伝子を用いた場合も、infectious cloneウイルスはほぼ同程度の生育が観察された。また、37℃では▲1▼のAIK−P infectious cloneウイルスは生育しなかった。これに対して、439番目のアミノ酸をロイシンにしたEdm/AIK−P infectious clone(▲3▼)は37℃でも生育した(図7)。 この結果から439番目のアミノ酸(ロイシン)に変異を導入する事により温度感受性の形質を導入できる事が判明した。一方、P遺伝子をEdmonston−Pに入れ替えたEdm−P infectious clone(▲2▼)は37℃で生育し、39℃でも弱い生育を示した。またEdm−P infectious cloneの439番目のアミノ酸(ロイシン)をプロリンにかえたAIK/Edm−P infectious cloneは37℃で生育するが39℃では生育できないことからP蛋白質における439位以外の部位の変異も温度感受性に関連していることが示された。P蛋白質の439番目のアミノ酸以外には110番目アミノ酸;Yが温度感受性に関与している可能性が推測される。また、275番目アミノ酸;Yも温度感受性に関与していることが推測される。さらにP遺伝子にコードされているC蛋白質の134番目アミノ酸;Yも温度感受性に関与していると推測される。
産業上の利用の可能性
本発明により、温度感受性ウイルスを製造するために用いるDNA、ウイルスのP蛋白質の特定の部位を変異させてウイルスに温度感受性の形質を導入する方法、およびP蛋白質の特定の部位の変異により温度感受性の形質を導入したウイルスが提供された。本発明により、弱毒化ウイルスを容易に作り出すことができる。これにより、新たに出現してくる新型ウイルスに対する生ワクチンを迅速に開発することが可能になる。
特にモルビリウイルス属には麻疹ウイルスの他、犬ジステンパーウイルス、アザラシジステンパーウイルス、リンダーペストウイルスのような病原ウイルスが多く含まれる。したがって、モルビリウイルス属のウイルスを最小限の変異で弱毒化しうる本発明の方法は、ワクチン開発において大変有用である。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、ミニゲノムRNA合成用の鋳型cDNAの構造を示す図である。
図2は、ワクシニアウイルスvTF7−3を用いたミニゲノム系の実験手順を示す図である。
図3は、Edmonston株およびAIK−C株に由来するN、P、およびL蛋白質を発現するプラスミドを様々に組み合わせたミニゲノム系におけるルシフェラーゼの発現を示す図である。
図4は、AIK−C株とEdmonston株のP蛋白質およびC蛋白質にみられるアミノ酸変異を示す図である。
図5は、様々なP発現プラスミドの構造を示す図である。
図6は、図5に示したP発現プラスミドを用いたミニゲノム系におけるルシフェラーゼの発現を示す図である。
図7は、様々なP発現プラスミドを用いて麻疹ウイルスを再構成し、各温度における生育を調べた結果を示す図である。
図8は、モルビリウイルス属に属するウイルスのP蛋白質のアミノ酸配列を比較した結果である。439位に相同な位置をボックスで示した。上から順に、AIK−C株、Edmonston株、犬ジステンパーウイルス(Canine distemper virus)、アザラシジステンパーウイルス(Phocid distemper virus)、およびリンダーペストウイルス(Rinderpest virus)のP蛋白質のアミノ酸配列を示す。

Claims (15)

  1. モルビリウイルス属に属するウイルスのP蛋白質に由来する蛋白質であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のロイシンプロリンである蛋白質をコードする、ウイルスに温度感受性の形質を導入するために用いるDNA。
  2. 該蛋白質が、麻疹ウイルスのP蛋白質に由来する蛋白質である、請求項1に記載のDNA。
  3. 該蛋白質が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位のロイシンがプロリンである蛋白質である、請求項2に記載のDNA。
  4. 該蛋白質が、さらに下記(a)および/または(b)である蛋白質である、請求項2または3に記載のDNA
    (a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の110位またはその相同な位置のアスパラギン酸チロシンである
    (b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の275位またはその相同な位置のシステインチロシンである。
  5. 該蛋白質が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位のロイシンがプロリンであり、110位のアスパラギン酸がチロシンであり、及び275位のシステインがチロシンである、請求項4に記載のDNA。
  6. 請求項1からのいずれかに記載のDNAによりコードされる蛋白質。
  7. 請求項1からのいずれかに記載のDNAを含むベクター。
  8. 温度感受性の形質を導入した麻疹ウイルスを再構成するために用いる、請求項に記載のベクター。
  9. モルビリウイルス属に属するウイルスに温度感受性の形質を導入する方法であって、該ウイルスのP蛋白質において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のロイシンのプロリンへの変異を導入することを特徴とする方法。
  10. ウイルスが麻疹ウイルスである、請求項9に記載の方法。
  11. 前記蛋白質において、さらに下記(a)および/または(b)に記載のアミノ酸変異を導入することを特徴とする、請求項10に記載の方法
    (a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の110位またはその相同な位置のアスパラギン酸のチロシンへの変異;
    (b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の275位またはその相同な位置のシステインのチロシンへの変異
  12. 前記蛋白質において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位のロイシンのプロリンへの変異、110位のアスパラギン酸のチロシンへの変異、及び275位のシステインのチロシンへの変異を導入することを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 請求項から12のいずれかに記載の方法により温度感受性の形質を導入することを特徴とする、温度感受性の形質を導入したウイルスの製造方法
  14. 麻疹ウイルスのP蛋白質において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位またはその相同な位置のロイシンのプロリンへの変異、110位またはその相同な位置のアスパラギン酸のチロシンへの変異、及び275位またはその相同な位置のシステインのチロシンへの変異を導入することを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 前記蛋白質において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の439位のロイシンのプロリンへの変異、110位のアスパラギン酸のチロシンへの変異、及び275位のシステインのチロシンへの変異を導入することを特徴とする請求項14に記載の方法。
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