JP4633291B2 - 磁気共鳴撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静磁場空間に被検体を収容し、磁気共鳴を利用して被検体の被検部位を撮影する磁気共鳴撮影装置に関し、特に、1繰り返し時間(TR;repetiton time)毎に磁気共鳴信号を得るパルスシーケンス(pulsesequence)でデータを収集し、そのデータに基づいて画像を再構成する磁気共鳴撮影装置において、特定の周波数ノイズが信号に混入することに起因するアーチファクト(artifact)の発生を低減する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴撮影処理では、1TR毎に励起パルスで被検体内のスピン(spin)を励起し、それによって生じる磁気共鳴信号を、たとえばスピンエコー(sion echo)またはグラディエントエコー(gradient echo)として2次元フーリエ空間に収集する。
磁気共鳴信号には、いわゆるビュー(view)毎に異なる位相エンコードを付与し、2次元フーリエ空間において位相軸上の位置が異なる複数のビューのエコーデータをそれぞれ収集する。
そして、収集した全ビューのエコーデータを2次元逆フーリエ変換することにより、画像を再構成する。
【0003】
このような磁気共鳴撮影処理においては、1TR毎に用いるパルスシーケンス(スキャンシーケンス)の数は、被検部位毎に対応して設定されたプロトコルによって異なる。
たとえば頭部、胸部、腹部等の被検部位に応じたプロトコル毎に、それぞれ異なる回数、たとえば64回〜512回繰り返されて、64ビューから512ビューのビューデータが得られる。
【0004】
このような磁気共鳴撮影処理を行う磁気共鳴撮影装置は、被検体を収容する内部空間(ボア)を有するマグネットシステムを有している。
このマグネットシステムは、ボア内に静磁場を形成する主磁場マグネットと、主磁場マグネットが形成した静磁場の強度に勾配を付けるための勾配磁場を形成する勾配コイルと、主磁場マグネットが形成した静磁場空間内で、被検体内にスピンを励起するための高周波磁場を形成するRFコイルを有している。
【0005】
そして、たとえば上述したスピンエコーによる磁気共鳴撮影処理を行う場合には、1パルスシーケンスにおいて、RFコイルに対して励起パルスである、90°パルスおよびスピン反転のための180°パルスがある間隔をおいて印加される。90°パルスによりスピンの90°励起が行われ、180°パルスにより180°励起すなわちスピン反転が行われる。
このとき、勾配コイルに対してそれぞれスライス勾配パルスが印加される。
また、90°励起とスピン反転の間に期間に、リードアウト勾配パルスおよびフェーズエンコード勾配パルスが印加される。
【0006】
励起パルスが印加されたRFコイルは、コイルのインダクタンスLとキャパシタのキャパシタンスCに基づく下記式(1)で表される共振周波数f0 をもって発振し、ボア内に高周波磁場を形成する。
【0007】
【数1】
f0 =1/2π(LC)1/2 …(1)
【0008】
ボア内に形成された高周波磁場により被検体の体内にスピンが励起され、励起されたスピンが生じる電磁波が磁気共鳴信号として取り出される。
そして、上述したように、磁気共鳴信号をデータ収集部で収集し、収集した全ビューのエコーデータを2次元逆フーリエ変換することにより、画像を再構成する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、磁気共鳴撮影装置においては、1TR(繰り返し時間)毎に磁気共鳴信号を得るパルスシーケンスでデータを収集し、そのデータに基づいて画像を再構成する。
ところで、たとえば図8に示すように、所望の高周波磁場を形成するためのRFコイルを駆動するパルスシーケンスの途中で、システム内のハードウェアから特定の周波数(fN )のノイズが混入した場合には、各TRで受信され、その位相関係は線形となり、画像上でドット(dot)状の高輝度アーチファクトとなる。
この場合の位相φは、たとえば次式により決まる。
【0010】
【数2】
φ=n・2π・fN ・TR …(2)
【0011】
ただし、nはビュー数である。
【0012】
そこで、従来の磁気共鳴撮影装置では、図9に示すように、スキャン(パルス)シーケンスのTRに、たとえば十〜数十μs程度のわずかな非線形の揺らぎを持たせることで、混入する特性周波数の位相に揺らぎを持たせている。
具体的には、従来の磁気共鳴撮影装置においては、受信信号のT1の回復では、信号値に差がでないTRの揺らぎを与え、画像上で高輝度に凝縮しないようにしていた。
この場合の非線形な位相Φは、次式により与えられる。
【0013】
【数3】
【0014】
ただし、Δt(n)は非線形なTRへの変化量を示している。
【0015】
ところで、このようにノイズの位相に揺らぎを持たせ、信号を分散させるには、たとえばハードウェアあるいはシーケンス以外のスイッチで実現する必要があるが、これにはTRの最初のトリガの認識が必要であり、システムによっては実現できないという不利益があった。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パルスシーケンスのTR(繰り返し時間)を非線形に変化させることなく、確実にハードウェアから混入するドットノイズを低減でき、ひいては高輝度アーチファクトの発生を低減できる磁気共鳴撮影装置およびその方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点は、静磁場空間に被検体を収容し、あらかじめ決められた繰り返し時間毎に磁気共鳴信号を得るパルスシーケンスでデータを収集し、そのデータに基づいて画像を再構成する磁気共鳴撮影装置であって、あらかじめ決められた繰り返し時間内において所定のパルスシーケンスが繰り返される駆動信号を受けて、上記被検体内にスピンを励起するための励起用磁場を形成する励起信号の送信を行い、被検体内に励起されたスピンが生じる磁気共鳴信号として受信するRFコイル部と、上記RFコイル部における送信位相および受信位相が、上記各繰り返し時間で非線形に変化するように、上記駆動信号を上記RFコイル部に供給する位相制御手段とを有する。
【0018】
また、本発明の第1の観点では、上記パルスシーケンスは、縦磁化を主信号とするイメージングするシーケンスである。
【0019】
また、好適には、上記位相制御手段は、各ビュー毎に上記繰り返し時間の繰り返し回数および差分位相に基づくオフセットを送信位相および受信位相に与えるように駆動信号を供給する。
【0020】
また、本発明の第1の観点では、上記差分位相は、横磁化の定常状態を破壊しない所定角度値以下に設定されている。
【0021】
また、本発明の第1の観点では、横磁化のステディステートが必要なシーケンスでは、上記差分位相は、上記所定角度値よりさらに小さい値に設定されている。
【0022】
また、本発明の第2の観点は、静磁場空間に被検体を収容し、あらかじめ決められた繰り返し時間毎に磁気共鳴信号を得るパルスシーケンスでデータを収集し、そのデータに基づいて画像を再構成する磁気共鳴撮影方法であって、上記被検体内にスピンを励起するための励起用磁場を形成する励起信号の送信を行い、被検体内に励起されたスピンが生じる磁気共鳴信号として受信するRFコイル部における送信位相および受信位相を、上記各繰り返し時間で非線形に変化させる。
【0023】
また、本発明の第2の観点では、上記パルスシーケンスは、縦磁化を主信号とするイメージングするシーケンスである。
【0024】
また、好適には、各ビュー毎に上記繰り返し時間の繰り返し回数、および差分位相の基づくオフセットを送信位相および受信位相に与える。
【0025】
また、好適には、上記差分位相は、横磁化の定常状態を破壊しない所定角度値以下に設定する。
【0026】
また、好適には、横磁化のステディステートが必要なシーケンスでは、上記差分位相は、上記所定角度値よりさらに小さい値に設定する。
【0027】
本発明によれば、たとえば主磁場方向(縦磁化方向)を主信号として撮影(イメージング)するパルスシーケンスが用いられ、RFコイル部は、この縦磁化を主信号として撮影するシーケンスにおいて、送信コイルおよび受信コイルで送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TR(繰り返し時間)で非線形に変化するように、位相制御手段による駆動信号により駆動される。
たとえば送信位相および受信位相は、各ビュー毎に繰り返し時間の繰り返し回数、および差分位相に基づくオフセットが与える。
なお、差分位相は、大きくすると、いわゆる横磁化の定常状態を壊してしまうおそれがあることから、所定角度値以下に設定される。
この送信位相および受信位相を、各TRで非線形に変化させることは、いわゆる回転座標の絶対位相を毎ビュー変えることに相当するが、縦磁化のイメージングにとっては励起以降の相対位相は変化しないため、主信号には影響しない。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る磁気共鳴撮影システムについて図面に関連付けて説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る磁気共鳴撮影装置を採用した磁気共鳴撮影(MRI:Magnetic Resonance Imaging)システムの一実施形態を示す構成図である。
【0030】
本実施形態に係るMRIシステム10は、図1に示すように、マグネットからの放射電磁波の洩漏や外乱電磁波の進入を防止する閉空間を形成した図示しないスキャンルームに配設されるMRI装置20、およびたとえばスキャンルームに隣接して設けられた操作ルーム内のオペレータOPが操作等するオペレータコンソール30を主構成要素として有している。
【0031】
以下、MRI装置20、およびオペレータコンソール30について順を追って説明する。
【0032】
MRI装置20は、図1に示すように、マグネットシステム21、RF駆動部22、勾配駆動部23、データ収集部24、制御部25、およびクレードル26を有している。
なお、RF駆動部22、および制御部25により位相制御手段が構成される。
【0033】
マグネットシステム21は、図1に示すように、概ね円柱状の内部空間(ボア:bore)211を有し、ボア211内には、クッションを介して被検体50を載せたクレードル26が図示しない搬送部によって搬入される。
【0034】
マグネットシステム21内には、図1に示すように、ボア211内のマグネットセンタ(走査する中心位置)の周囲に、主磁場マグネット部212、勾配コイル部213、およびRFコイル部214が配置されている。
【0035】
主磁場マグネット部212、勾配コイル部213、およびRFコイル部214のそれぞれは、検査時に被検体40が位置するボア211内の空間を挟んで対向する1対のコイルからなる。
【0036】
主磁場マグネット部212は、ボア211内に静磁場を形成する。静磁場の方向は、たとえば概ね被検体40の体軸方向と平行である。すなわち、平行磁場を形成する。主磁場マグネット部212を構成する一対の主磁場マグネットは、たとえば超伝導電磁石、あるいは永久磁石や常伝導電磁石などを用いて構成される。
【0037】
勾配コイル部213は、RFコイル部214が受信する磁気共鳴信号に3次元の位置情報を持たせるために、主磁場マグネット部212が形成した静磁場の強度に勾配を付ける勾配磁場を発生する。
勾配コイル部213が発生する勾配磁場は、スライス(slice)勾配磁場、リードアウト(read out)勾配磁場およびフェーズエンコード(phase encode)勾配磁場の3種類であり、これら3種類の勾配磁場に対応して勾配コイル部213は3系統の勾配コイルを有する。
【0038】
RFコイル部214は、主磁場マグネット部212が形成した静磁場空間内で被検体40の体内のスピンを励起するための高周波磁場を形成する。ここで、高周波磁場を形成することをRF励起信号の送信という。RFコイル部214は、被検体40の体内に励起されたスピンが生じる電磁波を磁気共鳴信号として受信する。
RFコイル部214は、図示しない送信用コイルおよび受信用コイルを有する。送信用コイルおよび受信用コイルは、同じコイルを兼用するかあるいはそれぞれ専用のコイルを用いる。
【0039】
なお、RFコイル部214は、RF駆動部22によるプロトコル対応の駆動信号DR1を受けて高周波磁場を形成する。
磁気共鳴撮影処理においては、1TR毎に用いるパルスシーケンス(スキャンシーケンス)の数は、被検部位毎に対応して設定されたプロトコルによって異なる。
たとえば頭部、胸部、腹部等の被検部位に応じたプロトコル毎に、それぞれ異なる回数、たとえば64回〜512回繰り返されて、64ビューから512ビューのビューデータが得られる。
【0040】
そして、本実施形態の場合、主磁場方向(縦磁化方向:Z方向)を主信号として撮影(イメージング)するパルスシーケンスが用いられ、RFコイル部214は、この縦磁化を主信号として撮影するシーケンスにおいて、送信コイルおよび受信コイルで送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TR(繰り返し時間)で非線形に変化するように、駆動信号DR1により駆動される。
たとえば送信位相および受信位相は、オフセットとして、各ビュー毎に次のように与えられる。
【0041】
【数4】
OT=(1/2)・n・(n+1)・α …(4)
【0042】
ただし、nはTRの繰り返し回数、αは差分位相をそれぞれ表している。
差分位相αは、大きくすると、いわゆる横磁化の定常状態を壊してしまうおそれがあることから、15°以下が望ましい。
【0043】
具体的には、RFコイル部214において、送信コイルの送信時、および受信コイルの受信時の初期位相Δθ(n)が上記(4)式で与えられ、シーケンス内で送受信時に位相が非線形に変化される。
【0044】
この送信位相および受信位相を、各TRで非線形に変化させることは、いわゆる回転座標の絶対位相を毎ビュー変えることに相当するが、縦磁化のイメージングにとっては励起以降の相対位相は変化しないため、主信号には影響しない。
【0045】
すなわち、本実施形態では、スピンの回転座標系の相対位相をシーケンスにて揺らぎを与え、ノイズのみの位相をばらつかせる。
具体的には、図2(a),(b)に示すように、TR間では回転座標の相対位相のみ異なるため、横磁化の信号位相は変化させずに、混入ノイズ位相のみに揺らぎが与えられる。
【0046】
この方法では、TRも変化なく、横磁化への揺らぎやTRの変化による信号の振幅変化も全くないため、縦磁化のみをイメージングするシーケンスには、いわゆるゴースト(ghost)やコントラストに変化を与えずに済み、しかも、ドットのように一点あるいは複数点にエネルギが凝縮する場合には、その原因となるノイズの位相に揺らぎを与えることで、画像位相方向に信号を散らせ、バックグランドノイズに近いレベルに低下させることができる。
【0047】
換言すれば、本方法は、送信位相および受信位相をずらすことにより、回転座標系を僅かずつずらして、同一軸上で受信する信号は変わらないが、外部から入ってくる周波数に対する位相を相対的に変化させ、これにより、ハードウェアからの混入ドットノイズを低減させている。
【0048】
なお、横磁化のステディステート(steady state)が必要なシーケンスについても、差分位相αを、たとえば10°以下等の小さな値とすることで、コントラストに影響を与えずにドットノイズを低減できる。
【0049】
RF駆動部22は、制御部25の指示に基づいたプロトコル対応の駆動信号DR1をRFコイル部214に与えてRF励起信号を発生させて、被検体40の体内のスピンを励起する。
本実施形態では、RF駆動部22は、上述したように、RFコイル部214の送信コイルおよび受信コイルで送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TR(繰り返し時間)で非線形に変化するように、駆動信号DR1をRFコイル部214に印加する。
【0050】
勾配駆動部23は、制御部25の指示に基づいたプロトコル対応の駆動信号DR2を勾配コイル部213に与えて勾配磁場を発生させる。
勾配駆動部23は、勾配コイル部213の3系統の勾配コイルに対応して、図示しない3系統の駆動回路を有する。
【0051】
データ収集部24は、RFコイル部214が受信した受信信号を取り込み、それをビューデータ(view data)として収集して、オペレータコンソール30のデータ処理部31に出力する。
【0052】
制御部25は、オペレータコンソール30のデータ処理部31から送られてくる被検体40の被検部位に対応した実行すべきプロトコルに即して、あらかじめ決められた繰り返し時間TR内において所定のパルスシーケンスが所定回数繰り返される駆動信号DR1をRFコイル部214に印加するようにRF駆動部22を制御する。
このとき、制御部25は、RFコイル部214の送信コイルおよび受信コイルで送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TRで非線形に変化するように、駆動信号DR1をRFコイル部214に印加するように制御する。
同様に、制御部25は、実行すべきプロトコルに即して、1TR内に、所定のパターンのパルス信号を勾配コイル213に印加するように勾配駆動部23を制御する。
また、制御部25は、RFコイル部214が受信した受信信号を取り込み、それをビューデータ(view data)として収集して、オペレータコンソール30のデータ処理部31に出力するように、データ収集部24を制御する。
【0053】
図3は、本発明に係るRFコイルの駆動系であるRFコイル部214、RF駆動部22、データ収集部23の一構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、RFコイル部214は、送信コイル2141および受信コイル2142を有する。
また、RF駆動部22は、ゲート変調回路221、RF電力増幅器222、およびRF発振回路223を有する。
そして、データ収集部23は、前置増幅器231、位相検波器232、およびアナログ/デジタル(A/D)変換器233を有する。
なお、RF発振回路223は、制御部25に配置することも可能である。
【0054】
このRF駆動系においては、たとえば制御部25は、データ処理部331による指令に従い、ゲート変調回路221を駆動し、RF発振回路223からの高周波出力信号を所定タイミング・所定包絡線のパルス状信号に変調する。
制御部25は、この変調処理に際して、前述したようにRFコイル部214の送信コイル2141および受信コイル2142で送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TRで非線形に変化するように、あらかじめ設定されたデータに基づいて制御する。
ゲート変調回路221は、変調したRF信号をRF電力増幅器222に出力し、RF電力増幅器222で電力を増幅した後、送信コイル2141に印加し、RFパルスを送信させる。
【0055】
前置増幅器231は、受信コイル2141で検出された被検体からの磁気共鳴信号を増幅し、位相検波器232に入力する。
位相検波器232は、RF発振回路223の出力を参照信号として、前置増幅器231からの磁気共鳴信号を位相検波して、A/D変換器233に与える。
A/D変換器233は、位相検波後のアナログ信号をデジタル信号の磁気共鳴(MR)データに変換してデータ処理部31に出力する。
【0056】
なお、制御部25に指定される実行すべきプロトコルは、磁気共鳴撮影を行うために、被検体40の被検部位に対応して定められており、各プロトコル毎に、1TR(繰り返し時間)内におけるパルスシーケンスの繰り返し回数が異なる。
【0057】
この磁気共鳴撮影用パルスシーケンスは、いわゆるスピンエコー(SE:Spin Echo)法、グラディエントエコー(GRE:GRadient Echo)法、ファーストスピンエコー(FSE:Fast Spin Echo)法、ファーストリカバリFSE(Fast Recovery Spin Echo)法、エコープラナー・イメージング(EPI:Echo PlanarImaging)法等、各撮影方法によって異なる。
【0058】
ここで、各撮影方法のパルスシーケンスのうち、SE法のパルスシーケンスについて、図4に関連付けて説明する。
図4(a)はSE法におけるRF励起用の90°パルスおよび180°パルスのシーケンスであり、RF駆動部22がRFコイル部214に印加する駆動信号DR1に相当する。
図4(b)、(c)、(d)、および(e)は、それぞれスライス勾配Gs、リードアウト勾配Gr、フェーズエンコード勾配Gp、およびスピンエコーMRのシーケンスであり、スライス勾配Gs、リードアウト勾配Gr、およびフェーズエンコード勾配Gpのパルスは、勾配駆動部23が勾配コイル部213に印加する駆動信号DR2に相当する。
【0059】
図4(a)に示すように、RF駆動部22によりRFコイル部214に対して90°パルスが印加され、スピンの90°励起が行われる。このとき、図4(b)に示すように、勾配駆動部23により勾配コイル部213に対してスライス勾配パルスGsが印加され、所定のスライスについて選択励起が行われる。
図4(a)に示すように、90°励起から所定の時間後に、RF駆動部22によりRFコイル部214に対して180°パルスが印加され、180°励起、すなわちスピン反転が行われる。このときも、図4(b)に示すように、勾配駆動部23により勾配コイル部213に対してスライス勾配パルスGsが印加され、同じスライスについて選択的な反転が行われる。
【0060】
図4(c)および(d)に示すように、90°励起とスピン反転の間の期間に、勾配駆動部23により勾配コイル部213に対してリードアウト勾配パルスGr、およびフェーズエンコード勾配パルスGpが印加される。
そして、リードアウト勾配パルスGrによりスピンのディフェーズが行われ、フェーズエンコード勾配パルスGpによりスピンのフェーズエンコードが行われる。
【0061】
スピン反転後、図4(b)に示すように、勾配駆動部23により勾配コイル部213に対してリードアウト勾配パルスGrが印加されて、リフェーズされて、図4(e)に示すように、スピンエコーMRが発生される。
このスピンエコーMRは、データ収集部24によりビューデータとして収集される。
【0062】
制御部25は、このようなパルスシーケンスで、実行プロトコルに応じて、周期TRでたとえば64〜512回繰り返すように、RF駆動部22、勾配駆動部23、およびデータ収集部24を制御する。
また、制御部25は、繰り返しのたびに、フェーズエンコード勾配パルスGpを変更し、毎回異なるフェーズエンコードを行うように、制御を行う。
【0063】
オペレータコンソール30は、図1に示すように、データ処理部31、操作部32、および表示部33を有している。
【0064】
データ処理部31は、データ収集部24から取り込んだデータをメモリに記憶する。メモリ内にはデータ空間が形成される。メモリに形成されるデータ空間は、2次元フーリエ空間を構成する。
データ処理部31は、これら2次元フーリエ空間のデータを2次元逆フーリエ変換、すなわちフーリエ周波数空間から実空間への変換を行って、被検体40の画像を生成(再構成)する。
なお、2次元フーリエ空間をkスペースともいう。
【0065】
データ処理部31には、制御部25が接続されており、制御部25の上位にあってそれを統括する。
データ処理31には、また、操作部32、および表示部33が接続されている。
【0066】
操作部32は、ポインティングデバイスを備えたキーボードやマウス等により構成され、オペレータOPの操作に応じた操作信号をデータ処理部31に出力する。また。操作部32からは、たとえば上述した実行すべきプロトコルの入力が行われる。データ処理部31は、操作部32から入力されたプロトコルに関する情報(プロトコル番号等)を制御部25に供給する。
【0067】
表示部33は、グラフィックディスプレイ等により構成され、操作部32からの操作信号に応じて、MRI装置20の動作状態に応じた所定の情報を表示する。
【0068】
次に、上記構成による動作を、図5のフローチャートに関連付けて説明する。
【0069】
先ず、クッションを介してクレードル26上に載せられた被検体40が、図示しない搬送部によって、MRI装置20のマグネットシステム21のボア211内に搬入される(ST1)。
【0070】
次に、被検体40の被検部位をボア211内のマグネットセンタに位置させる(ST2)。このとき、マグネットセンタを含むボア211内の所定の領域には、主磁場マグネット部212による静磁場が形成されている。
【0071】
そして、オペレータOPにより、被検部位に対応したプロトコル情報が操作部32から入力される(ST3)。
操作部32から入力されたプロトコルに関する情報(プロトコル番号等)がデータ処理部31により制御部25に供給される。
【0072】
制御部25では、オペレータコンソール30のデータ処理部31により実行すべきプロトコルの指定があると、オペレータコンソール30のデータ処理部31から送られてくる被検体40の被検部位に対応した実行すべきプロトコルに即して、あらかじめ決められた繰り返し時間TR内において所定のパルスシーケンスが所定回数繰り返される駆動信号DR1をRFコイル部214に印加するようにRF駆動部22が制御され、実行すべきプロトコルに即して、1TR内に、所定のパターンのパルス信号を勾配コイル213に印加するように勾配駆動部23が制御される。
【0073】
RF駆動部22では、制御部25の指示に基づいたプロトコル対応の駆動信号DR1がRFコイル部214に印加され、勾配駆動部23では、制御部25の指示に基づいたプロトコル対応の駆動信号DR2が勾配コイル部213に印加される。
このとき、RF駆動部22では、制御部25の指示に基づいてRFコイル部214の送信コイルおよび受信コイルで送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TR(繰り返し時間)で非線形に変化するように、駆動信号DR1がRFコイル部214に供給される(ST4)。
【0074】
このように、RFコイル部214は、送信コイルおよび受信コイルで送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TR(繰り返し時間)で非線形に変化するように、RF駆動部22の駆動信号DR1により駆動されることから、スピンの回転座標系の相対位相がシーケンスにて揺らぎが与えられ、ノイズのみの位相がばらつく。
このとき、TR間では回転座標の相対位相のみ異なるため、横磁化の信号位相は変化させずに、混入ノイズ位相のみに揺らぎが与えられる(ST5)。
【0075】
これにより、マグネットセンタを含むボア211内の所定の領域に勾配磁場および高周波磁場が形成され、被検体40の被検部位で励起されたスピンが生じる電磁波が磁気共鳴信号として取り出され、これがデータ収集部24で収集され、検査結果のデータとしてオペレータコンソール30のデータ処理部31に出力される。
すなわち、被検部位の撮像が行われる(ST6)。
【0076】
データ処理部31では、データ収集部24から入力したデータがメモリに記憶され、メモリ内にデータ空間が形成される。データ処理部31では、これら2次元フーリエ空間のデータを2次元逆フーリエ変換して被検体40の被検部位の画像が生成(再構成)される(ST7)。
【0077】
そして、被検体40の被検部位のデータ収集が完了すると、図示しない搬送部によって、クレードル26と共に被検体40がボア211の外に搬出される(ST8)。
【0078】
図6および図7は、本発明に係る磁気共鳴撮影装置を採用した磁気共鳴撮影システムのノイズ位相のシミュレーション結果を示す図である。
なお、図6において、横軸は画像マトリクスを示し、縦軸は想定レベルを示している。
また、図6中、(A)はノイズ位相に揺らぎを与えない場合の分布を示し、(B)は、本実施形態のようにノイズ位相に揺らぎを与えた場合の分布を示している。(C)は同様にファーストスピンエコー法に適用した場合の分布を示している。
また、図7(a)はノイズ位相に揺らぎを与えない場合のドットノイズのカウント数を示し、図7(b)はファーストスピンエコー法にてノイズ位相に揺らぎを与えた場合のドットノイズのカウント数を示している。
【0079】
図6の(A)からわかるように、本発明に係る磁気共鳴撮影装置を採用しない場合、すなわちノイズ位相に揺らぎを与えない場合、1点にエネルギが集まり高信号となる。そして、図7に示すように、ドットノイズ数も多く観測されている。
これに対して、図6の(B)からわかるように、本発明に係る磁気共鳴撮影装置を採用した場合、すなわちノイズ位相に揺らぎを与えた場合、全体にエネルギが分散し、ノイズは小さなものとなる。また、ファーストスピンエコー法に採用した場合には、ドットのカウント数も、図6(C)に示すように、揺らぎを与えない場合に比べて、1/3程度に減少している。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、主磁場方向(縦磁化方向:Z方向)を主信号として撮影(イメージング)するパルスシーケンスが用いられ磁気共鳴撮影システムにおいて、RFコイル部214を、縦磁化を主信号として撮影するシーケンスにおいて、送信コイルおよび受信コイルで送受信される送信(RF)信号の位相および受信信号の位相が、各TR(繰り返し時間)で非線形に変化するように駆動するように構成したので、次のような効果を得ることができる。
TRも変化なく、横磁化への揺らぎやTRの変化による信号の振幅変化も全くないため、縦磁化のみをイメージングするシーケンスには、いわゆるゴーストやコントラストに変化を与えずに済み、しかも、ドットのように一点あるいは複数点にエネルギが凝縮する場合には、その原因となるノイズの位相に揺らぎを与えることで、画像位相方向に信号を散らせることができ、バックグランドノイズに近いレベルに低下させることができる。
すなわち、本実施形態によれば、特定周波数の混入ノイズが凝縮し高輝度アーチファクトとなることを防止することができる。
【0081】
なお、送信機としてのRF駆動部22と受信機としてのデータ収集部にビューの先頭のトリガをわたすように制御部25により制御することにより、送信および受信の初期位相をTRでは同一として非線形に変化させるように構成することも可能である。
この場合も、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、パルスシーケンスのTRを非線形に変化させることなく、確実にハードウェアから混入するドットノイズを低減でき、ひいては高輝度アーチファクトの発生を低減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁気共鳴撮影装置を採用した磁気共鳴撮影システムの一実施形態を示す構成図である。
【図2】ノイズ位相に揺らぎを与える場合の原理を説明するための図である。
【図3】本発明に係るRFコイルの駆動系であるRFコイル部、RF駆動部、データ収集部の一構成例を示すブロック図である。
【図4】スピンエコー法のパルスシーケンスについて説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明に係る磁気共鳴撮影装置を採用した磁気共鳴撮影システムのノイズ位相のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】本発明に係る磁気共鳴撮影装置を採用した磁気共鳴撮影システムのノイズ位相のシミュレーション結果を示す図である。
【図8】一般的な磁気共鳴撮影装置において、特定周波数ノイズが混入した場合の不利益を説明するための図である。
【図9】特定周波数ノイズの混入に伴うアーチファクト発生を防止するための従来の方法を説明するための図である。
【符号の説明】
10…MRIシステム、20…MRI装置、21…マグネットシステム、211…ボア、212…主磁場マグネット部、213…勾配コイル部、214…RFコイル部、2141…送信コイル、2142…受信コイル、22…RF駆動部、221…ゲート変調回路、222…RF電力増幅器、223…RF発振回路、23…勾配駆動部、24…データ収集部、241…前置増幅器、242…位相検波器、243…A/D変換器、25,25A〜25C…制御部、26…クレードル、30…オペレータコンソール、31…データ処理部、32…操作部、33…表示部、40…被検体。
Claims (5)
- 静磁場空間に被検体を収容し、あらかじめ決められた繰り返し時間毎に磁気共鳴信号を得るパルスシーケンスでデータを収集し、そのデータに基づいて画像を再構成する磁気共鳴撮影装置であって、
あらかじめ決められた繰り返し時間内において所定のパルスシーケンスが繰り返される駆動信号を受けて、上記被検体内にスピンを励起するための励起用磁場を形成する励起信号の送信を行い、被検体内に励起されたスピンが生じる磁気共鳴信号として受信するRFコイル部と、
上記RFコイル部における送信位相および受信位相が、上記各繰り返し時間で非線形に変化するように、上記駆動信号を上記RFコイル部に供給する位相制御手段と
を有する磁気共鳴撮影装置。 - 上記パルスシーケンスは、縦磁化を主信号とするイメージングするシーケンスである
請求項1記載の磁気共鳴撮影装置。 - 上記位相制御手段は、各ビュー毎に上記繰り返し時間の繰り返し回数および差分位相に基づくオフセットを送信位相および受信位相に与えるように駆動信号を供給する
請求項1または2記載の磁気共鳴撮影装置。 - 上記差分位相は、横磁化の定常状態を破壊しない所定角度値以下に設定されている
請求項3記載の磁気共鳴撮影装置。 - 横磁化のステディステートが必要なシーケンスでは、上記差分位相は、上記所定角度値よりさらに小さい値に設定されている
請求項4記載の磁気共鳴撮影装置。
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