(第1の従来技術)
鉛入りはんだによるめっきの代替として、半導体部品のリードフレーム表面にパラジウム層あるいはパラジウム合金層を設けることが行われている。しかし、このパラジウムは従来から使用されている錫−鉛はんだや鉛フリーはんだの有力候補となっている錫−銀−銅系のはんだや錫−銅系のはんだに対して濡れ性が悪いという問題やプリント配線板の銅ランドからはんだが浮いてしまうリフトオフ(Lift-off)の問題がある。以下に、このような従来技術及びその問題点について詳細に説明する。
上述のように、電子部品における鉛フリー化技術として、半導体部品のリードフレームの表面にめっき等によりパラジウム層あるいはパラジウム合金層を設けることが行われている。パラジウムは、ダイボンディングの際のろう材(銀ろう)や金等のボンディングワイヤに対して濡れ性が優れているからである。
なお、パラジウム層あるいはパラジウム合金層だけではリードフレームに錆が発生することがあるため、その下地層としてニッケル層等を設けることが一般的に行われている。
図3は、半導体部品のリードフレーム(はんだ付けリード)の断面を示す図で、めっき層がわかり易いようにその厚さを厚めに描いてある。
すなわち、はんだ付けリード30においては、例えば、鉄−ニッケル合金31から成るリードフレーム素材の表面を、ニッケル層32から成る下地層で一旦被覆し、その上層をパラジウム層33(あるいはパラジウム合金層)で覆うように構成されている。
このような電子部品すなわち半導体部品をプリント配線板に搭載し、フローはんだ付け方法によりはんだ付け実装する場合には、そのはんだ付けリード端子をプリント配線板のスルーホールに挿入し、このスルーホールの周囲に形成されたはんだ付けランドおよび前記はんだ付けリード端子に溶融状態のはんだの噴流波に接触させてはんだ付けが行われる。なお、高信頼性のはんだ付け実装を行うために、スルーホールに銅めっき等を施しためっきスルーホールとすることが行われている。
図4は、めっきスルーホールを有するプリント配線板に半導体部品のはんだ付けリード端子が挿入されている状態の断面を説明する図で、スルーホールの縦断面を示す図である。
すなわち、プリント配線板40の下方側の面および上方側の面にははんだ付けランド41が設けてあり、これら両ランド41がめっきスルーホール42によって接続されている。そして、このスルーホール42に半導体装置のはんだ付けリード端子43が挿入され、これらランド41およびめっきスルーホール42とはんだ付けリード端子43との間に被はんだ付け部44が構成されている。
なお、溶融状態のはんだの噴流波は同図4の下方側からプリント配線板40の下方側の面すなわち該下方側の面の被はんだ付け部44側から接触させてフローはんだ付けが行われる。
このはんだ付け実装に際しては、その被はんだ付け部44に十分に溶融状態のはんだを供給して良好な濡れ性を得ることが必要である。すなわち、被はんだ付け部44の良好な電気的接続性と十分な強度の機械的接続性とを満足する上で必要だからである。また、めっきスルーホール42を有するプリント配線板40では、スルーホール42内に十分にはんだが充填され濡れ上がることが必要である。
従来、プリント配線板に電子部品をはんだ付けするときに、はんだ付け性を確保するために、液状フラックスを塗布することが一般的である。この液状フラックスの塗布は、浸漬、ブラッシング、スプレー、発泡などの方法で行われる。電子工業において用いられるポストフラックスは、一般にイソプロピルアルコールのような低級アルコール系有機溶剤にベース樹脂としてロジン、また活性剤としてアミンのハロゲン化水素酸塩などを配合して溶解したものを主成分として構成されている。
しかし、ボンディング性に優れているパラジウムやパラジウム合金も、半導体部品製造の際のダイボンディグ工程やワイヤボンディグ工程でリードフレームが温度上昇することによって、プリント配線板へのはんだ付け実装に際してリードフレームのはんだ濡れ性が低下する問題がある。すなわち、半導体部品のはんだ付けリード端子のはんだ濡れ性が低下してしまうのである。
図5は、濡れ性の低下したはんだ付けリード端子のはんだ付け状態を説明するための図で、スルーホールの縦断面を示す図である。
すなわち、はんだ付けリード端子53の濡れ性低下が、めっきスルーホール52内へのはんだの濡れ上がりを阻止し、プリント配線板50の上方側の面に設けられたはんだ付けランド51迄に十分に濡れ上がらないのである。このようなはんだ54の濡れ上がり不良は、従来から使用されている錫−鉛はんだでも、また、鉛フリーはんだの有力候補となっている錫−銀−銅系のはんだや錫−銅系のはんだに対しても同様に発生する。
一方、鉛フリーはんだ化技術として、錫−銀−銅系のはんだが有力候補となっているが、このはんだを用いて各種めっきが施されている電子部品のはんだ付けリード端子を、鉛を含まないプリント配線板表面処理を行う際の有力候補であるプリフラックスを施したスルーホールに挿入して、前記の錫と銀と銅系のはんだを用いてはんだ付けを行うと、プリント配線板の銅ランドからはんだが浮くリフトオフ(Lift-off)という不具合(接合不良)が発生することが知られている。図6(a)(b)は鉛フリーはんだで発生したリフトオフの鳥瞰図である。
このように、めっきスルーホール内へ溶融状態のはんだが十分に充填され濡れ上がらず、また、リフトオフを生じると、プリント配線板が電子装置に搭載されて使用される際に加わるストレス(例えば、温度変化や振動,加速度,プリント配線板のたわみ等による変形等)や経時変化により、プリント配線板の下方側の面に設けられたはんだ付けランドすなわちそのプリント配線とプリント配線板の上方側の面に設けられたはんだ付けランドすなわちそのプリント配線とが断線したり、はんだ接合が離間し断線しやすくなる問題がある。すなわち、当該プリント配線板が搭載された電子装置の信頼性が著しく低下する。
(第2の従来技術)
図15は、従来の方法によるプリント配線板60の一方の面についてリフローはんだ付けを行い、他方の面についてフローはんだ付けを行う場合のはんだ付け手順の例を説明する図である。なお、この従来例はめっきスルーホール61を有するプリント配線板60の例を示し、(1)〜(9)の数字は工程の番号を表している。
すなわち、工程(1)で先ずフローはんだ付けを行う電子部品12(例えば、チップ部品等のSMD)を接着するための接着剤63を塗布し、続いて工程(2)で当該の電子部品12を搭載する。その後工程(3)で前記(1)で塗布した接着剤63を硬化させ、電子部品12をランド64(回路パターン)上に固定する。
次に、工程(4)でプリント配線板60を反転し、リフローはんだ付けを行う電子部品62、66のはんだ付け端子が載置されるランド64上に例えばクリームはんだ等のはんだ65を予め供給し、続いて工程(5)でチップ部品やQFP IC等の電子部品62,66を搭載する。
その後工程(6)において、リフローはんだ付け装置によりリフローはんだ付けを行う。すなわち、前記工程(4)で供給したはんだ65を加熱し溶融させ、チップ部品やQFP IC等の電子部品62,66のはんだ付け端子67とランド64との間に形成された被はんだ付け部のはんだ付けを行う。
リフローはんだ付けが完了したら、工程(7)でプリント配線板のリフローはんだ付け面側から、例えばコネクタ等の挿入型の電子部品68(以後、挿入部品と呼称する)のリード端子69をスルーホール61に挿入し、工程(8)でフローはんだ付け装置によりフローはんだ付けを行う。
すなわち、前記工程(3)においてランド64と該ランド64上に固定された電子部品62との間に形成された被はんだ付け部、および前記工程(7)でめっきスルーホール61を含むランド64と該スルーホール61に挿入された挿入部品68のリード端子69との間に形成された被はんだ付け部とを、溶融状態のはんだの噴流波に接触させてこれら被はんだ付け部にはんだを供給し、フローはんだ付けを行う。
なお、プリント配線板60に電子部品12や挿入部品68をフローはんだ付けするときに、はんだ付け性を確保するために、液状フラックスを塗布することが一般的である。この液状フラックスの塗布は、浸漬、ブラッシング、スプレー、発泡などの方法で行われる。電子工業において用いられるポストフラックスは一般にイソプロピルアルコールのような低級アルコール系有機溶剤にベース樹脂としてロジン、また活性剤としてアミンのハロゲン化水素酸塩などを配合して溶解したものを主成分として構成されている。
以上の手順により、図15の工程(9)に示すように冷却されてプリント配線板60の両方の面に存在する被はんだ付け部のはんだ付けが完了し、SMD(電子部品12)の被はんだ付け部や挿入部品68の被はんだ付け部にはんだのフィレット600が形成される。
なお、プリント配線板60の一方の面に設けられたランド64と他方の面に設けられたランド64とがめっきスルーホール61で接続されている場合においては、前記工程(8)のフローはんだ付け工程において、めっきスルーホール61内にはんだ65が濡れ上がると供に両ランド64にはんだ65が濡れ広がっている必要がある。また、このめっきスルーホール61に挿入部品68のリード端子69が挿入されている場合には、工程(9)に示すように両ランド64にはんだ65が濡れ広がってフィレット600が形成されている必要がある。
これは、プリント配線板60が電子装置に搭載された際に受ける熱ストレスや加速度や振動等のストレス等々によって、めっきスルーホール61にクラック等を生じて回路的な断線を生じ、このプリント配線板60によって作動する電子装置の信頼性を損なわないようにするためである。
また、最も重要な事項は、工程(8)のフローはんだ付けの際に工程(6)でリフローはんだ付けされた被はんだ付け部のはんだが再溶融しないようにすることである。すなわち、フローはんだ付けの際にプリント配線板60に接触させたはんだの噴流波からの熱伝導によって、リフローはんだ付けされた被はんだ付け部の温度が上昇するからである。
このフローはんだ付けの際に、リフローはんだ付けされた被はんだ付け部のはんだの再溶融を生じると、フローはんだ付けの際にリフローはんだ付けされた電子部品62の位置が移動してはんだ付け不良を生じたり、甚だしくは電子部品62がその被はんだ付け部を構成するランド64上から外れて移動し、回路的な機能不良を生じるからである。また、再溶融を生じただけでも、はんだ濡れ不良を生じてはんだ付け強度が低下したりする。
このような問題を解消するために、種々のはんだ付け方法が提案されている。
例えば、特許文献1(従来例)にその一例を見ることができる。すなわち、この従来例は、錫−銀−ビスマス系の鉛フリーはんだと錫−亜鉛−ビスマス系の鉛フリーはんだとを使用して、「それぞれのはんだの融点範囲をずらすことで、第2面リフローもしくはフローはんだ付けの際の第1面リフローにより接続された部品のはずれあるいは接続強度低下を抑制」(特許文献1の従来例の段落〔0009〕参照)した技術である。
上述の従来例に開示された技術は、主にビスマスを融点調節剤として使用し、はんだ中のビスマス含有量を調節して当該はんだの融点範囲を調節している。しかし、はんだ中にビスマスを含有すると、被はんだ付け部のはんだが脆化し易く、被はんだ付け部に加わるサイクルストレスに対してはんだ付け強度が急速に低下し易い問題がある。すなわち、靱性が無いのである。
また、従来例では、「部品の種類によっては、部品がはんだとともに基板上の電極からはがれるという現象」(従来例の段落〔0005〕参照)については説明されているが、それがどのようなメカニズムによって発生するかについては解明されていないため、理論的に適切な技術によってその問題を解消するに至ってはいない。すなわち、鉛フリーはんだにビスマスを含めることによって強制的にその融点を下げ、フローはんだ付けの際の温度上昇の影響をできるだけ少なくなるように構成した技術である。
本発明者らは、この「部品がはんだとともに基板上の電極からはがれるという現象」、すなわちランドからのフィレット剥離の発生が、錫−銀−x(他の元素)系の鉛フリーはんだを使用してはんだ付けを行った際に錫−鉛はんだによるコーティング、例えばめっきが行われたはんだ付け端子を有する電子部品についてのみ発生していることに着目し、剥離部分を電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、剥離部分に鉛の偏析を認めた。すなわち、ランドとフィレットとの界面においてミクロ的に錫−銀−鉛の3元共晶合金組成が形成され、その融点が178℃の低い温度になっているためであることを解明した。(「鉛フリーはんだのSMTフィレット剥離に関する実験的考察」田辺一彦 斉藤 優 論文名:第15回エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集参照)。
図16は、このフィレット剥離を説明するための被はんだ付け部の端面を示す図で、(a)は正常なはんだ付け状態を説明するための図、(b)は剥離したフィレット600の様子を説明する図で剥離部分70がわかり易いように誇張して描いた図である。このように、フィレット剥離はランド64とはんだの界面から剥がれる態様で発生する。
なお、上記従来例では、「Sn−Pb系はんだに代わるPbフリーはんだ合金としてSn−Ag−BiあるいはSn−Zn−Bi系3元系をベースとしたものが有力候補としてクローズアップされている」とし、「Sn−9重量%Zn(融点199℃)は融点はほぼ適正であるが、大気中のはんだ付けでは、はんだ表面が著しく酸化されやすく使用しにくい」(第1の従来例の段落〔0003〕参照)として発明の範囲の境界点に退けている。
特に、この従来例の出願時点においては、錫−9亜鉛はんだ(錫−9重量%亜鉛はんだ:以下同様に元素前の数字は重量%を表す)を使用したプリント配線板のフローはんだ付け技術は未だ確立されていなかったのである。この錫−9亜鉛はんだを使用したプリント配線板のフローはんだ付け技術は、その後に、特許文献2特開2001−293559号公報等により公開され、その技術的確立が公知となっている。
(第3の従来技術)
鉛毒の自然環境への拡散ひいては人体への影響が問題となり、鉛を使用しない鉛フリーはんだによって電子装置のはんだ付けひいてはプリント配線板のはんだ付けが行われるようになってきた。しかし、現在使用されている鉛フリーはんだの殆どは、その融点が約220℃程度の高融点鉛フリーはんだであり、その最適なはんだ付け温度は、従来から使用されてきた錫−鉛はんだのはんだ付け温度(約240℃〜250℃)よりも約10℃〜15℃程度高く250℃〜255℃程度である。
電子部品を搭載したプリント配線板すなわち被はんだ付けワークをフローはんだ付けする際に、該プリント配線板と電子部品に熱ストレスが加わる。すなわち、溶融状態のはんだにその被はんだ付け部つまりプリント配線板の被はんだ付け面を接触させてはんだ付けを行う必要があるからである。
そして、現在使用されている高融点鉛フリーはんだの場合には、この熱ストレスが従来よりも大きくなるために、電子装置の寿命を従来よりも短命化させてしまうことが問題となっいる。その対策として、電子部品の耐熱性を向上させるための開発と低温のはんだでフローはんだ付けを行うことを実現する開発とが現在行われている。
この熱ストレスは電子部品等の寿命に与える影響が大きい。すなわち、低温のはんだでフローはんだ付けを行うことにより、長寿命の電子装置を実現することができるのである。しかも、従来から使用されて来た錫−鉛はんだよりも最適はんだ付け温度の低いはんだを使用すれば、従来よりも長寿命の電子装置を実現できる。
このように、フローはんだ付けの際のはんだの温度は電子装置を外から見ただけでは判断できない信頼性上の差となって現れるため、ユーザに信頼性の高い電子装置を供給する為の重要な指標として、最適はんだ付け温度の低いはんだを使用したフローはんだ付け技術が注目されている。
錫−亜鉛はんだの融点は(例えば、錫−9亜鉛はんだの融点)約199℃程度で他の鉛フリーはんだの融点(例えば、約220℃程度)と比較して低融点であり、フローはんだ付けに際してプリント配線板や電子部品に与える熱ストレスを小さくすることができる長所がある。しかし、錫−亜鉛はんだを使用してプリント配線板のフローはんだ付けを行うことは、濡れ性等のはんだ付け性が良くないために不可能とされていた。
本発明者等は、既に特願2002−4185号において、プリント配線板の被はんだ付けランドやめっきスルーホールに錫−亜鉛はんだによるHAL(Hot Air Leveler) 処理等のレベラ処理を行う等してその表面に錫と亜鉛を主成分とするはんだの層を形成することにより、特には電子部品のはんだ付けリード端子の表面にパラジウム層またはパラジウム合金層が形成された電子部品のはんだ付けを、優れた濡れ性で行うことができると供に、被はんだ付け部の接続信頼性も高い技術を特許出願している。
これにより、従来と同様あるいはそれよりも低い温度のはんだでフローはんだ付けを行うことができるようになった。なお、このパラジウム層やパラジウム合金層は、従来から広く使用されていた錫−鉛はんだ層の代替え部材として鉛フリー化の為に使用されるようになってきた部材である。
ちなみに前記のHAL処理とは、溶融状態のはんだや金属中にプリント配線板を浸漬し、その後に溶融状態のはんだ中から当該プリント配線板を引き出しながらエアや不活性ガス等を吹きつけてレベリングを行う処理のことである。
多種・多数の電子部品を搭載して多数の被はんだ付け部を有するプリント配線板の各被はんだ付け部を一括してフローはんだ付けするような場合においては、はんだの濡れ性や濡れ上がり性等のはんだ付け性に影響を与える主要因を制御することで、その他の副要因によるはんだ付け性への影響が無視できるようにすることが、多数の各被はんだ付け部のはんだ付け品質を向上させると供に均一化させ、しかも大量生産されるプリント配線板のはんだ付け品質を向上させ安定化させる上では必要である。
そこで、本発明者等は、錫−亜鉛はんだを使用したフローはんだ付け方法において、プリント配線板上の被はんだ付けランドやめっきスルーホールにおける錫−亜鉛はんだの濡れ性や濡れ上がり性を向上させるための該プリント配線板における主要因を特定し、錫−亜鉛はんだを使用したフローはんだ付け方法を安定したはんだ付け品質で行える条件を解明することを技術的課題としてフローはんだ付け方法の開発を行った。
特開2001−358456号公報
特開2001−293559号公報
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態のはんだ付け方法およびはんだ接合体について図を用いて詳細に説明する。
最初に、はんだ付け装置の構成を図1を参照して説明する。図1は、本発明のはんだ付け方法を実現するはんだ付け装置の例を説明する縦断面図である。なお、窒素ガス供給系はシンボル図で示してある。
先ず、プリント配線板のランドおよびスルーホールにHAL処理により錫−亜鉛はんだ(錫−9重量%亜鉛はんだ)の被覆を設ける。なお、プリント配線板に(錫−亜鉛はんだにより)HAL処理を実施する方法については公知であるので図示は省略する。例えば、上記HAL処理を実施する方法については、特開2001−168513号公報に記載されている。
ここで、上述のように、HAL処理とは、例えば、電子回路基板におけるはんだ付け性を向上させるために、基板そのものにはんだをコーティングさせ、その上に電子部品をはんだ付けする方式において、はんだ浴にディップした基板に加熱した空気を吹き付けてレベリングを行う処理である。
次に、はんだ付けリード端子にパラジウムめっきやパラジウム合金めっきが施された電子部品(例えば、はんだ付け端子がリード端子型の半導体部品)を前記プリント配線板のスルーホールに挿入して搭載し(図4参照)、被はんだ付けワークを形成する。
他方、この被はんだ付けワークすなわちそのはんだ付けリード端子にパラジウムめっきが施された電子部品を搭載したプリント配線板は、通常行われているように図示しないフラックス塗布装置によりその被はんだ付け面にフラックスが塗布された後、図1に例示するはんだ付け装置100によりはんだ付けを行う。
図1に示すはんだ付け装置100は、低酸素濃度の不活性ガスすなわち窒素ガス雰囲気中ではんだ付け作業を行うように構成されている。
すなわち、前記被はんだ付けワークつまりプリント配線板101を搬送する搬送コンベアは、仰角搬送(仰角θ1)の第1の搬送コンベア102と俯角搬送(俯角θ2)の第2の搬送コンベア103とにより構成してあり、これらの搬送コンベアを覆うようにトンネル状チャンバ104を設けてある。
このトンネル状チャンバ104の縦断面は、同図にも示すように「へ」の字状に構成してあり、水平面から搬入口105の高さと搬出口106の高さが同じ高さになるように構成してある。このように、搬入口105の高さと搬出口106の高さが同じ高さになるように構成することにより、はんだ付け装置100を他の装置と連繋してインラインで使用することが容易となる。また、最も重要なことは、チャンバ104外の大気よりも温度の高いチャンバ内雰囲気をその内部に滞留させ易くなり、成分(例えば、酸素濃度)の安定した雰囲気を形成できるようになることである。
第1および第2の搬送コンベア102,103は、プリント配線板101の両側端部を保持する保持爪を備え、両側端部側に設けられ平行2条に構成されたコンベアフレームから成る。なお、幅の異なるプリント配線板101を保持できるように、通常は一方のコンベアフレームがプリント配線板101の幅方向に移動し調節できるように構成されている。図中の矢印Aはプリント配線板101の搬送方向を示している。
また、第1の搬送コンベア102に沿ってトンネル状チャンバ104内に、プリント配線板101の予備加熱工程を構成するプリヒータ107とはんだ付け工程を構成するはんだ槽108とが配設してある。
予備加熱工程のプリヒータ107は、予めフラックスが塗布されたプリント配線板101の予備加熱を行い、フラックスの前置的活性化とプリント配線板101および搭載電子部品に与えるヒートショックを軽減するために設けられている。
また、はんだ付け工程のはんだ槽108には図示しないヒータにより加熱されて溶融状態の錫−亜鉛はんだ109(錫−9%亜鉛はんだ)が収容してあり、この溶融状態のはんだ109を第1のポンプ110により第1の吹き口体111に送出して第1の噴流波112を形成する。また、第2のポンプ113により第2の吹き口体114に送出して第2の噴流波115を形成する。
そして、これら噴流波112,115をプリント配線板101の下方側の面すなわち図4に例示するようなランド41やスルーホール42そして電子部品のはんだ付けリード端子43から成る被はんだ付け部44が存在する被はんだ付け面に接触させることにより、被はんだ付け部44に溶融状態のはんだを供給してはんだ付けを行う。
また、プリヒータ107は、トンネル状チャンバ104内に設けられている。しかし、はんだ槽108は、トンネル状チャンバ104に開口116を設けて開口116から第1の噴流波112と第2の噴流波115とがトンネル状チャンバ104内に位置するように構成してある。なお、トンネル状チャンバ104の封止を維持するため、トンネル状チャンバ104に設けた開口116にはスカート117を設け、このスカート117をはんだ槽108の溶融状態のはんだ中に浸漬して完全な封止を実現している。
また、トンネル状チャンバ104内には、トンネルの長手方向すなわち搬送コンベアの搬送方向に沿って、多数の板状部材すなわち抑止板118を設けてある。そしてこの抑止板118は、その板面が搬送コンベアの搬送方向に対して直交するように設けてある。すなわち、この抑止板118によりトンネル状チャンバ104内にラビリンスシールを形成し、トンネル状チャンバ104内に不要な雰囲気流動が生じないように構成してある。
なお、この抑止板118は、トンネル状チャンバ104の上壁から搬送コンベアに向けて下向きに設けられていると供に、トンネル状チャンバ104の下壁から搬送コンベアに向けて上向きに設けられている。
トンネル状チャンバ104内に不活性ガスである窒素ガスを供給する吐出口筐119は、搬送方向から見てはんだ槽108の後段側の抑止板118間に設けてあり、流量調節弁120および流量計121によって目的とする窒素ガス供給流量に調節できるように構成してある。窒素ガスは、ボンベやPSA方式の窒素ガス供給装置122から供給され、開閉弁123および不純物を除去するフィルタ124、目的とする供給圧力に調節する圧力制御弁125を介して前記流量調節弁120に供給される。圧力計126は圧力モニタ用である。
窒素ガス供給流量は、図示しない酸素濃度計によりトンネル状チャンバ104内の酸素濃度を測定し、例えば、プリント配線板101と溶融状態のはんだ109の噴流波とが接触する領域であるはんだ付け工程の雰囲気をサンプリングして測定し、目的の酸素濃度になるように流量調節弁120を調節して設定する。
さらに、必要があれば破線で示したように、予備加熱工程のプリヒータ107近傍に同様にして窒素ガス供給用の吐出口筐119を設けるように構成し、プリヒータ107近傍の雰囲気の酸素濃度を酸素濃度計で測定するように構成してもよい。
次に、図1に示すはんだ付け装置100の動作について説明する。
被はんだ付け部のあるプリント配線板101の下方側の面すなわち被はんだ付け面に予めフラックスを塗布したプリント配線板101を、図1に示すはんだ付け装置100の搬入口105から搬入すると、第1の搬送コンベア102の保持爪に両側端部を保持されて、搬送仰角θ1で矢印A方向に搬送される。
そして、プリヒータ107により、例えば、その被はんだ付け部が約100℃程度に予備加熱され、続いて、プリント配線板101の下方側の面すなわち被はんだ付け面を、温度が例えば約250℃程度の第1の噴流波112および第2の噴流波115に接触させ、その被はんだ付け部に溶融状態のはんだ109を供給してはんだ付けが行われる。
その後、プリント配線板101はトンネル状チャンバ104の頂部で第2の搬送コンベア103に移載され、搬送俯角θ2で搬送されて搬出口106から搬出され、はんだ付けが完了する。
この一連のはんだ付け作業は、低酸素濃度の窒素ガス雰囲気中で行われる。すなわち、窒素ガス供給用の吐出口筐119から供給される窒素ガスにより、トンネル状チャンバ104内が低酸素濃度の窒素ガス雰囲気になる。
以上のように構成された一連のはんだ付け作業により、錫と亜鉛を主成分とするはんだ層が形成されたはんだ付けランドおよびめっきスルーホールと該スルーホールに挿入されその表面にパラジウム層またはパラジウム合金層を形成した電子部品のはんだ付けリード端子とに錫と亜鉛を主成分とするはんだの噴流波から溶融状態のはんだを供給することによりに、錫−亜鉛はんだがはんだ付けリード端子を濡らしながらめっきスルーホール内に濡れ上がり、部品挿入面(図4や図5に示すプリント配線板の上方側の面)に設けられたランドにもはんだが濡れ広がってフィレット(図5の55参照)を形成し、濡れ性に優れた良好なはんだ接合体を得ることができた。
すなわち、パラジウムおよびパラジウム合金は錫と亜鉛を主成分とするはんだに対して良好な濡れ性を示し、銅で形成されたはんだ付けランドおよびめっきスルーホールの表面には、HAL処理により錫と亜鉛を主成分とするはんだが十分に濡れている錫−亜鉛はんだ層が形成されているからである。
[第1の実施例]
図2は、はんだ付け性を比較した結果を説明する図表で、(a)は比較結果をまとめた図表、(b)は被はんだ付け部のスルーホールに溶融状態のはんだが濡れ上がり充填された程度を表す評価基準(レベル)を説明する図で被はんだ付け部の縦断面を示す図、である。
先ず、はんだ付け性を評価する当たり、評価基準を定めた。すなわち、図2(b)に示すように、スルーホール22内にはんだが濡れ上がってプリント配線板20の下方側の面のランド21にも上方側の面のランド21にもはんだフィレットが形成された状態が良好なはんだ付け状態を示す「○」であり、プリント配線板20の下方側の面のランド21にははんだフィレット24が形成されスルーホール22内にもはんだが濡れ上がったが、プリント配線板20の上方側のランド21にはんだが濡れ広がることができずフィレット24が形成されなかった状態がやや不十分なはんだ付け状態を示す「△」、プリント配線板20の下方側の面のランド21にははんだフィレット24が形成されたがスルーホール22内に十分にはんだが濡れ上がらず、したがってプリント配線板20の上方側のランド21にはんだが濡れ広がることができずフィレット24が形成されなかった状態が不十分なはんだ付け状態を示す「×」である。
一方、はんだ付け性の比較を行うため、被はんだ付け部の構成として、はんだ付けリード端子の表面処理状態として3種類を用意した。すなわち、従来の鉛を有する錫−10重量%鉛はんだのめっきを施したはんだ付けリード端子、金めっきを施したはんだ付けリード端子、下地としてニッケル層を有し該ニッケル層の上層にパラジウムまたはパラジウム合金層を形成したはんだ付けリード端子とを用意した。
他方、被はんだ付け部のもう1つの構成要素であるプリント配線板のランドおよびスルーホールの表面処理状態として4種類を用意した。すなわち、a.配線パターンやランドとして使用されている銅そのものを露顕させているプリント配線板、b.前記銅ランドおよび銅スルーホールに錫−37重量%鉛はんだのHAL処理を行ったプリント配線板、c.前記銅ランドおよび銅スルーホールに錫−9重量%亜鉛はんだのHAL処理を行ったプリント配線板、d.さらにこの錫−9重量%亜鉛はんだのHAL処理を行ったプリント配線板の表面に防錆剤の塗布を行ったプリント配線板とを用意した。
また、はんだ付け工程において噴流波から前記被はんだ付け部に供給するはんだの種類として、イ.従来から使用されている錫−37重量%鉛はんだ、ロ.鉛フリーはんだの有力な候補となっている錫−3重量%銀−0.5重量%銅はんだ、ハ.錫−0.7重量%銅はんだ、ニ.錫−9重量%亜鉛はんだとを用意した。なお、はんだの温度は通常使用されるはんだの温度である250℃とした。
そして、これらのはんだ付けリード端子と、a.b.c.d.のプリント配線板と、イ.ロ.ハ.ニ.のはんだとの間におけるはんだ付け性の関係を一覧として纏めた表が図2(a)である。
すなわち、はんだ付けリード端子が、錫−37%鉛はんだのめっきのものと、金めっきのものとは、ランドおよびスルーホールの表面処理およびはんだの種類に依らず何れも良好なはんだ付け性が得られた。しかし、環境問題を源とする鉛フリー化の要請から錫−10重量%鉛はんだのめっき処理を電子部品のはんだ付けリード端子の表面処理として今後も続けることはできない。また、金は極めて高価であるためコストを問題にしない特別な用途でのみ使用され、その殆どを占める汎用の電子部品に使用することは行われていない。
一方、はんだ付けリード端子が、パラジウムめっきのものは、ランドおよびスルーホールに錫−9重量%亜鉛はんだのHAL処理を行ったプリント配線板を用いて錫−9重量%亜鉛はんだの噴流波からはんだを供給した場合にのみ良好なはんだ付け性が得られていることがわかる。
すなわち、半導体部品を製造しそれをプリント配線板にはんだ付け実装するという一連の全実装工程を視野に入れた見地から、これら全実装作業により製造された電子機器の実装信頼性を考えると、パラジウムめっきされたリードフレームは、銀ろうによるダイボンディング性や金線によるワイヤボンディング性に優れており、はんだ付け実装に際しては錫−亜鉛はんだによりHAL処理されたプリント配線板に搭載して錫−亜鉛はんだの噴流波から溶融はんだを供給してはんだ付けを行った場合に最も優れた実装体を形成できることがわかる。
次に、リフトオフ発生率の比較を行うため、電子部品はんだ付けリード端子部のめっき処理として3種類を用意した。すなわち(1)従来の鉛を有する錫−10重量%鉛はんだのめっきを施したはんだ付けリード端子、(2)下地としてニッケル層を有し該ニッケル層の上層に金めっきを施したはんだ付けリード端子、(3)下地としてニッケル層を有し該ニッケル層の上層にパラジウムまたはパラジウム合金層を形成したはんだ付けリード端子とを用意した。他方、被はんだ付け部のもう一つの構成要素であるプリント配線板のスルーホールの表面処理状態として2種類を用意した。
すなわち、a)配線パターンとして使用されている銅そのものの上に酸化防止としてプリフラックスを塗布させているプリント配線板、b)前記スルーホールに錫−9重量%亜鉛はんだのHAL処理を行った1.6mm厚さのプリント配線板を用意した。さらにプリント配線板のスルーホールとランド設計には9種類を用意した。
すなわち、1)スルーホール径0.8mm、ランド径1.1mm、2)スルーホール径0.8mm、ランド径1.4mm、3)スルーホール径0.8mm、ランド径1.7mm、4)スルーホール径1.0mm、ランド径1.3mm、5)スルーホール径1.0mm、ランド径1.6mm、6)スルーホール径1.0mm、ランド径1.9mm、7)スルーホール径1.2mm、ランド径1.5mm、8)スルーホール径1.2mm、ランド径1.8mm、9)スルーホール径1.2mm、ランド径2.1mmを用意した。
また、はんだ付け工程において噴流波から前記被はんだ付け部に供給するはんだの種類として、イ)鉛フリーはんだの有力な候補となっている錫−3重量%銀−0.5重量%銅はんだ、ロ)錫−9重量%亜鉛はんだを用意した。なお、はんだの温度は通常使用されるはんだの温度である250℃とした。
これら(1)(2)(3)のはんだ付けリード端子とa、bのプリント配線板とイ、ロのはんだ間におけるリフトオフ発生比率の関係を纏めた表が図7〜図9である。なお、これらの図においてT/H径とはスルーホール径を示し、Land径とはランド径を示している。
すなわち、図7に示すように(1)従来の鉛を有する錫−10重量%鉛はんだのめっきを施したはんだ付けリード端子において、プリフラックスを塗布させているプリント配線板と鉛フリーはんだの有力な候補となっている錫−3重量%銀−0.5重量%銅はんだでは50%以上のリフトオフ発生率に対し、スルーホールに錫−9重量%亜鉛はんだのHAL処理を行ったプリント配線板では50%以下のリフトオフ発生率と低減効果が認められた。
一方、図9に示すように下地としてニッケル層を有し該ニッケル層の上層にパラジウムまたはパラジウム合金層を形成したはんだ付けリード端子では、鉛フリーはんだの有力な候補となっている錫−3重量%銀−0.5重量%銅はんだでも錫−9重量%亜鉛はんだでもリフトオフの発生率は0で同等であった。また、図8に示すように下地としてニッケル層を有し該ニッケル層の上層に金めっきを施したはんだ付けリード端子では一部のスルーホール径とランド径の組み合わせにおいて、錫−3重量%銀−0.5重量%銅はんだではリフトオフの発生が認められたが、錫−9重量%亜鉛はんだではリフトオフ発生はゼロと完全に防止されていることが判る。
ところで、鉛フリーはんだである錫−亜鉛系はんだは、錫と亜鉛を主成分とするため従来の錫−鉛はんだと比較して高融点であり、濡れ性も悪い。そのため従来のポストフラックスを使用した場合には十分な濡れ性や接合信頼性を確保しがたい。
そこで、本発明では、ポストフラックスの耐熱性向上とはんだ濡れ性向上の観点から、従来のポストフラックスの樹脂成分であるガムロジンに代えて、より耐熱性の高いロジンのアクリル酸付加物を選択使用した。
さらに、本発明では、錫−亜鉛系はんだに用いるポストフラックスの要求性能である持続的な濡れ性を確保する観点から、配合する活性剤についても着目することにより、サルコシン骨格を有する活性剤を選択使用することによって持続的な濡れ性を可能にしたものである。本発明に用いるロジンのアクリル酸付加物とは、アクリル酸とロジンの付加反応物あるいはさらに水素化反応行ったロジン誘導体である。ロジンとは、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンである。
また、本発明に用いられるサルコシン骨格を有する活性剤としては、オレイルサルコシン、ラウロイルサルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシン等を挙げることができる。さらに本発明のフラックスには、前記特定の構成成分に加えて、一般用フラックスに用いる各種成分、例えば樹脂、活性剤、溶剤、酸化防止剤、艶消し剤、その他の添加剤などを併用することもできる。一般用フラックスに用いる樹脂成分としては、ガムロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジンなどの各種ロジン誘導体や、ポリアミド樹脂、テルペン樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。
一般用フラックスに用いる活性剤としては、アミンのハロゲン化水素酸塩、有機酸類、有機アミン、有機ハロゲン化物等が挙げられる。アミンのハロゲン化水素酸塩の具体例としては、ジエチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩を挙げることができ、有機酸類の具体例としては、アジピン酸、ステアリン酸、安息香酸等を挙げることができ、有機アミン類の具体例としては、ヘキシルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができ、有機ハロゲン化物の具体例としては、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等を挙げることができる。溶剤としては、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。さらに、酸化防止剤、艶消し剤、その他の添加剤としては特に限定はされず、各種公知のものから適宜に選択して使用すればよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。実施例1〜4及び比較例1〜3からなる液状フラックス組成物を調合し、これをスプレー塗布により、電子部品を搭載したプリント配線板に塗布し、自動はんだ付け装置によりはんだ付けを行った。はんだ付け状態を観察し、フィレットの形状によリ「○」、「△」、「×」ではんだ付け性の評価を行った。この評価結果を下記の表1に示す。
(実施例1)
アジピン酸 1.0wt%
ジブチルアミン 1.0wt%
シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩 0.2wt%
オレイルサルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 7.0wt%
水添ロジン 7.0wt%
イソプロピルアルコール 82.8wt%
(実施例2)
セバシン酸 1.0wt%
2,3−ジブロモ−1−プロパノール 0.5wt%
ジエチルアミン塩酸塩 0.2wt%
ラウロイルサルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 10.0wt%
ガムロジン 5.0wt%
イソプロピルアルコール 82.3wt%
(実施例3)
オクチル酸 1.0wt%
安息香酸 1.0wt%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 0.2wt%
ヤシ油脂肪酸サルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 20.0wt%
イソプロピルアルコール 77.8wt%
(実施例4)
グルタル酸 1.0wt%
2,3−ジブロモ−1−プロパノール 0.5wt%
シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩 0.2wt%
オレイルサルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 7.0wt%
不均化ロジン 7.0wt%
イソプロピルアルコール 83.3wt%
(比較例1)
アジピン酸 1.0wt%
ジブチルアミン 1.0wt%
シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩 0.2wt%
ガムロジン 15.0wt%
イソプロピルアルコール 82.8wt%
(比較例2)
セバシン酸 1.0wt%
2,3−ジブロモ−1−プロパノール 0.5wt%
ジエチルアミン塩酸塩 0.2wt%
ラウロイルサルコシン 1.0wt%
ガムロジン 15.0wt%
イソプロピルアルコール 82.3wt%
(比較例3)
オクチル酸 1.0wt%
安息香酸 1.0wt%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 0.2wt%
ロジンのアクリル酸付加物 10.0wt%
水添ロジン 10.0wt%
イソプロピルアルコール 77.8wt%
すなわち、表1に示すように実施例1,2,3において良好なはんだ付け性が得られている。以上のように、本発明のはんだ付け方法およびはんだ接合体においては、はんだ接合の基本である良好な電気的接続性と十分な強度の機械的接続性が得られることがわかる。しかも、錫−亜鉛はんだは適度な硬さと優れた伸び特性を有している。例えば、その高温伸びは125℃において従来の錫と37重量%鉛のはんだは66%であり、錫と9重量%亜鉛のはんだが67%と同等以上の値を有している。これに対し、錫と3重量%銀と0.5重量%銅とからなるはんだでは12%しかない。
したがって、表面にパラジウム層やパラジウム合金層を形成したリードフレームを有する半導体部品をプリント配線板にはんだ付け実装する場合においては、本発明のはんだ付け方法によって良好なはんだ付け性を得ることが可能となり、強靱で機械的接続性にも電気的接続性にも優れかつ長期信頼性に優れたはんだ接合体を得ることが可能となることがわかる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図面を参照しながら以下に詳述する。
(1)はんだ付け手順
本発明のはんだ付け方法を実現するはんだ付け手順を図10を用いて説明する。各工程(1)〜(9)の順番は図15とほぼ同じであるが、各工程における処理内容が図15とは異なる。
先ず工程(1)では、錫−亜鉛はんだによりHAL処理されたプリント配線板10を用意し、フローはんだ付けを行う電子部品(SMD)12を接着するための接着剤13を塗布し、続いて工程(2)で当該の電子部品12を搭載する。その後工程(3)で前記(1)で塗布した接着剤13を硬化させ、電子部品12をランド14上に固定する。
ここで、HAL処理とは、上述のように、例えば、電子回路基板におけるはんだ付け性を向上させるために、基板そのものにはんだをコーティングさせ、その上に電子部品をはんだ付けする方式において、はんだ浴にディップした基板に加熱したガス(空気)を吹き付けてレベリングを行う処理である。
次に、工程(4)でプリント配線板10を反転し、リフローはんだ付けを行う電子部品12のはんだ付け端子が載置されるランド14上に、錫−3銀−0.5銅のクリームはんだ15(固相線温度217℃、液相線温度220℃)または錫−3.5銀−0.75銅のクリームはんだ15(固相線温度217℃、液相線温度219℃)を予め供給し、続いて工程(5)でそのはんだ付け端子に錫−鉛はんだによるコーティング、例えばめっきが施されたチップ部品62やQFP IC等の電子部品16をランド14上に搭載する。もちろん、他の種類のめっきが施された電子部品が含まれていてもよい。
その後工程(6)において、リフローはんだ付け装置によりリフローはんだ付けを行う。すなわち、前記工程で供給したはんだを加熱し溶融させ、チップ部品62やQFP IC等の電子部品16のはんだ付け端子17(リード端子部)とランド14との間に形成された被はんだ付け部のはんだ付けを行う。
リフローはんだ付けが完了したら、工程(7)でプリント配線板10のリフローはんだ付け面側から、例えばコネクタ等の挿入部品18のリード端子19をスルーホール11に挿入する。そして、工程(8)で錫ー9亜鉛はんだの温度が温度制御装置により220℃〜230℃の範囲内の温度に制御された溶融状態のはんだを噴流させて形成した噴流波を、プリント配線板10のフローはんだ付け面側に接触させてフローはんだ付けを行う。
すなわち、前記工程(3)においてランド14と該ランド14上に固定された電子部品12との間に形成された被はんだ付け部、および前記工程(7)でめっきスルーホール11を含むランド14と該スルーホール11に挿入された挿入部品18のリード端子19との間に形成された被はんだ付け部とを、溶融状態の錫−9亜鉛はんだの噴流波に接触させてこれら被はんだ付け部に錫−9亜鉛はんだを供給し、フローはんだ付けを行う。
この工程(8)のフローはんだ付け工程では、錫−9亜鉛によりフローはんだ付けを行うので、その温度が220℃〜230℃という低い温度、すなわち従来の錫−37鉛はんだにおいて適切とされる245℃〜250℃の温度、また、錫−3銀−0.5銅の鉛フリーはんだ15や錫−3.5銀−0.75銅の鉛フリーはんだ15において適切とされる250℃〜255℃の温度と比較して遙に低い温度でフローはんだ付けを行うことができる。また、プリント配線板10に錫−亜鉛はんだによるHAL処理を施してあるので、めっきスルーホール11における錫−9亜鉛はんだの濡れ上がりも極めて良好である。
また、工程(8)のフローはんだ付け工程において、リフローはんだ付けされた被はんだ付け部のはんだ詳しくは部品16,62が搭載されたランド14とフィレット150との間にミクロ的に形成された錫−銀−鉛の3元共晶合金が、その融点である178℃を越えて加熱されることが無くなって、フィレット剥離を生じることがない。
その結果、工程(9)に示すように冷却されてプリント配線板10の両方の面に存在する被はんだ付け部のはんだ付けが完了し、SMDの被はんだ付け部や挿入部品18の被はんだ付け部には、フィレット剥離が無く良好な接合状態のはんだのフィレット150が形成され、はんだ付け品質に優れたプリント配線板10が完成する。
また、錫−9亜鉛はんだによりフローはんだ付けを行うので、他の鉛フリーはんだよりフローはんだ付けの際に発生するリフトオフ現象を防止または低減することができる。さらには、ビスマスを含有しない鉛フリーはんだを使用しているので、被はんだ付け部のはんだが脆化することがなく、熱サイクルストレスや繰り返し加わる加速度によるストレス、例えば振動等のストレスに対して強靱なはんだ付け実装を行うことができる。
なお、フローはんだ付けに際して塗布するフラックス組成物において、ロジンのアクリル酸付加物とサルコシン骨格を有する活性剤を用いることで、スルーホール11における錫−9亜鉛はんだの濡れ上がりを一層良好にすることができる。
本発明は、ポストフラックスの耐熱性向上の観点から、従来のポストフラックスの樹脂成分であるガムロジンに代えて、より耐熱性の高いロジンのアクリル酸付加物を選択使用したものである。
さらに、本発明では、錫−亜鉛系はんだに用いるポストフラックスの要求性能である持続的な濡れ性を確保する観点から、配合する活性剤についても着目することにより、サルコシン骨格を有する活性剤を選択使用することによって持続的な濡れ性を可能にしたものである。
本発明に用いるロジンのアクリル酸付加物とは、アクリル酸とロジンの付加反応物あるいはさらに水素化反応行ったロジン誘導体である。ロジンとは、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンである。また、本発明に用いられるサルコシン骨格を有する活性剤としては、オレイルサルコシン、ラウロイルサルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシン等を挙げることができる。
本発明のフラックスには、前記特定の構成成分に加えて、一般用フラックスに用いる各種成分、例えば樹脂、活性剤、溶剤、酸化防止剤、艶消し剤、その他の添加剤などを併用することもできる。
一般用フラックスに用いる樹脂成分としては、ガムロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジンなどの各種ロジン誘導体や、ポリアミド樹脂、テルペン樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。一般用フラックスに用いる活性剤としては、アミンのハロゲン化水素酸塩、有機酸類、有機アミン、有機ハロゲン化物等が挙げられる。アミンのハロゲン化水素酸塩の具体例としては、ジエチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩を挙げることができ、有機酸類の具体例としては、アジピン酸、ステアリン酸、安息香酸等を挙げることができ、有機アミン類の具体例としては、ヘキシルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができ、有機ハロゲン化物の具体例としては、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等を挙げることができる。溶剤としては、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。
さらに、酸化防止剤、艶消し剤、その他の添加剤としては特に限定はされず、各種公知のものから適宜に選択して使用すればよい。
(2)はんだ付け装置の構成
次に、リフローはんだ付け装置の構成例とその作動を図11を参照して説明する。
リフローはんだ付け装置は、予めはんだが供給された被はんだ付け部を加熱してはんだを溶融させ、プリント配線板に形成されたランドひいては回路パターンと電子部品とのはんだ付けを行う装置である。
リフローはんだ付け装置の加熱方式としては、赤外線等による熱線加熱、熱風加熱、蒸気加熱、伝熱加熱、これらを併用した加熱、等の方式がある。これら何れの方式においても、高温の雰囲気を維持するためにチャンバ形式の加熱炉内においてプリント配線板を加熱し、リフローはんだ付けが行われる。また、これらの加熱は窒素ガス等の不活性ガスを供給して低酸素濃度の雰囲気中で行われることもある。
図11は、リフローはんだ付け装置200の一例を示す側断面すなわち縦断面である。なお、窒素ガス供給系はシンボル図で描いてある。
この例は、加熱炉すなわち炉体216を7つの領域に区画して形成したいわゆる7ゾーン構成のリフローはんだ付け装置で、プリント配線板201を搬送する搬送コンベア202を堺にして加熱手段203を設けた加熱室204を上下対称に設けた構造であり、この加熱室204が14室設けてある。そして、プリント配線板201の搬送方向Aに沿って第1ゾーンと第2ゾーンが昇温部加熱室、第3ゾーン〜第5ゾーンが均熱部加熱室、第6ゾーンと第7ゾーンがリフロー部加熱室である。
加熱手段203としては、公知の熱風加熱手段や赤外線加熱手段を使用する。またはこれらの加熱手段203を併用して使用する。プリント配線板201への供給熱量は、熱風加熱手段では熱風温度により最終供給熱量が決まり、熱風の風速で単位時間当たりの供給熱量が決まる。
また、赤外線加熱手段では、赤外線ヒータの表面温度の概ね4乗に比例して供給熱量を増加させることができる。そして、これらの熱風温度や熱風の風速、赤外線ヒータの表面温度を調節することによりプリント配線板201の加熱温度を調節し、目的とする加熱温度プロファイルを得る仕組みとなっている。
また、搬送コンベア202の詳細は図示しないが、通常使用されている搬送コンベアであり、平行2条の搬送チェーンによりプリント配線板201の両側端部を保持して搬送する構成となっている。なお、搬入口205および搬出口206には並設した抑止板によりラビリンスシール部すなわち入り口ラビリンス部207と出口ラビリンス部208とを構成し、加熱室204の内部と外部すなわち炉体216外との封止性を確保している。
一方、はんだを溶融させるリフロー部加熱室には窒素ガスが供給され、リフロー部加熱室に最も酸素濃度の低い窒素ガス雰囲気を形成している。すなわち、ボンベやPSA方式等の窒素ガス供給装置209から開閉弁210を通ってフィルタ211で不要物を除去した後圧力制御弁212で目的の圧力に維持し、流量制御弁213と流量計214とで目的とする流量に調節して供給される。圧力計215は圧力モニタ用である。
はんだ付け作業は、搬送コンベア202によりプリント配線板201を搬送しながら行われる。すなわち、搬入口205から搬入されたプリント配線板201は矢印A方向へ搬送され、昇温部→均熱部→リフロー部の順に各加熱室204を通って加熱され、はんだ付けが完了したプリント配線板201は搬出口206から搬出される。
各加熱室204におけるプリント配線板201の加熱到達温度は、各加熱室204の加熱手段203からプリント配線板201へ供給される熱量で調節され、熱風温度や熱風の風速、さらには、赤外線ヒータの表面温度等によって調節される。これにより、プリント配線板201は目的とする所定の加熱温度プロファイルで加熱されてリフローはんだ付けが行われる。
例えば、本実施形態で使用した錫−銀−銅系の鉛フリーはんだすなわち錫−3銀−0.5銅のクリームはんだまたは錫−3.5銀−0.75銅のクリームはんだでは、リフロー部において被はんだ付け部の温度を230℃〜240℃程度の温度範囲に制御してはんだ付けが行われるのが通常である。
なお、錫−銀−銅系の鉛フリーはんだのリフローはんだ付け作業を行う場合においては、加熱室204内に窒素ガスを供給することなく大気雰囲気においてリフローはんだ付けを行うこともできる。ちなみに、低酸素濃度の窒素ガス雰囲気中でリフローはんだ付けを行うことにより、プリント配線板201の被はんだ付け部やはんだの酸化が抑止され、大気雰囲気中よりも一層良好な濡れ性のはんだ付けを行うことができるようになる。
次に、フローはんだ付け装置の構成例とその作動を図12を参照して説明する。ここで、図12は、フローはんだ付け装置の一例を説明する縦断面図で、窒素ガス供給系はシンボル図で描いてある。
フローはんだ付け装置300は、低酸素濃度の不活性ガスすなわち窒素ガス雰囲気中ではんだ付け作業を行うように構成されている。なお、同図のフローはんだ付け装置は、図1のフローはんだ付け装置と同様の構成である。
すなわち、前記被はんだ付けワークつまりプリント配線板301を搬送する搬送コンベアは、仰角搬送(仰角θ1 )の第1の搬送コンベア302と俯角搬送(俯角θ2 )の第2の搬送コンベア303とにより構成してあり、これらの搬送コンベアを覆うようにトンネル状チャンバ304を設けてある。
このトンネル状チャンバ304の縦断面は、同図にも示すように「へ」の字状に構成してあり、水平面から搬入口305の高さと搬出口306の高さが同じ高さになるように構成してある。これにより、チャンバ304外の大気よりも温度の高いチャンバ304内の雰囲気をその内部に滞留させ易くなり、成分(例えば、酸素濃度)の安定した雰囲気を形成できるようになる。
第1および第2の搬送コンベア302,303は、プリント配線板301の両側端部を保持する保持爪を備え、両側端部側に設けられ平行2条に構成されたコンベアフレームから成る。そして、第1の搬送コンベア302に沿ってトンネル状チャンバ304内に、プリント配線板301の予備加熱工程を構成するプリヒータ307とはんだ付け工程を構成するはんだ槽308とが配設してある。なお、図中の矢印Aはプリント配線板301の搬送方向を示している。
はんだ付け工程のはんだ槽308には錫−9亜鉛はんだ309が収容してあり、はんだ309は図示しないヒータおよび温度センサそして温度制御装置とにより加熱されて溶融状態となっていて、その温度は予め指示された温度に制御されている。そして、この溶融状態のはんだ309を第1のポンプ310により第1の吹き口体311に送出して第1の噴流波312を形成し、また、第2のポンプ313により第2の吹き口体314に送出して第2の噴流波315を形成するように構成されている。
そして、プリント配線板301の下方側の面、すなわち図10の工程(7)に例示するプリント配線板10の下方側の面のランド14やスルーホール11そして電子部品12のはんだ付け端子やリード端子から成る被はんだ付け部が存在する被はんだ付け面つまりフローはんだ付け面に前記の噴流波312,315を接触させることにより、被はんだ付け部に溶融状態のはんだ309を供給してはんだ付けを行う。
また、プリヒータ307は、トンネル状チャンバ304内に設けられている。しかし、はんだ槽308は、トンネル状チャンバ304に開口316を設けて開口316から第1の噴流波312と第2の噴流波315とがトンネル状チャンバ304内に位置するように構成してある。なお、この開口316にはスカート317を設け、このスカート317をはんだ槽308の溶融状態のはんだ309中に浸漬して完全な封止を実現している。
さらに、トンネル状チャンバ304内には、トンネルの長手方向すなわち搬送コンベア302,303の搬送方向に沿って、多数の板状部材すなわち抑止板318を設けてラビリンスシールを形成し、トンネル状チャンバ304内に不要な雰囲気流動が生じないように構成してある。
トンネル状チャンバ304内に不活性ガスである窒素ガスを供給する吐出口筐319は、搬送方向から見てはんだ槽308の後段側の抑止板318間に設けてあり、流量調節弁320および流量計321によって目的とする窒素ガス供給流量に調節できるように構成してある。窒素ガスは、ボンベやPSA方式の窒素ガス供給装置322から供給され、開閉弁323および不純物を除去するフィルタ324、目的とする供給圧力に調節する圧力制御弁325を介して前記流量調節弁320に供給される。圧力計326は圧力モニタ用である。
窒素ガス供給流量は、図示しない酸素濃度計によりトンネル状チャンバ304内の酸素濃度を測定し、例えば、プリント配線板301と溶融状態のはんだ309の噴流波312,315とが接触する領域であるはんだ付け工程の雰囲気をサンプリングして測定し、目的の酸素濃度になるように流量調節弁320を調節して設定する。
さらに、必要があれば破線で示したように、予備加熱工程のプリヒータ307近傍に同様にして窒素ガス供給用の吐出口筐319を設けるように構成し、プリヒータ307近傍の雰囲気の酸素濃度を酸素濃度計で測定するように構成してもよい。このように構成することにより、予備加熱工程の酸素濃度とはんだ付け工程の酸素濃度を別々に調節し制御することもできるようになる。
はんだ付け作業は、搬送コンベア302,303によりプリント配線板301を搬送しながら行われる。すなわち、搬入口305から搬入されたプリント配線板301は矢印A方向へ搬送され、予備加熱工程→はんだ付け工程の順に搬送され、はんだ付け工程でプリント配線板301の被はんだ付け部に噴流波312,315によって溶融はんだ309が供給されてはんだ付けが行われ、はんだ付けが完了したプリント配線板301は搬出口306から搬出される。
このフローはんだ付け作業は、予備加熱工程においてはプリント配線板301の被はんだ付け部の温度が80℃〜150℃の範囲の予め決めた目的の値になるように制御して行い、はんだ付け工程では錫−9亜鉛はんだの温度が220℃〜230℃の範囲の予め決めた目的の値になるように制御して行う。
なお、特開2001−293559号公報に開示されているように、予備加熱工程の酸素濃度を1000ppm以下に、はんだ付け工程の酸素濃度を500ppm以下に制御することによって、錫−9亜鉛はんだによるプリント配線板301のフローはんだ付けを良好な濡れ性で行うことができる。
[第2の実施例]
本発明者らは、電子部品のはんだ付け端子に錫−鉛はんだによるコーティングが施されている場合に、錫−銀−銅系の鉛フリーはんだでリフローはんだ付けを行うと、被はんだ付け部ランドのフィレット界面にミクロ的に融点178℃の錫−銀−鉛の3元共晶合金が形成され、これが原因で、続いて行われるフローはんだ付けにおいてフィレット剥離が生じることを解明した。
そこで、本発明者らは、この事実を実際のプリント配線板のはんだ付け作業においてさらに確認した。図13は、フィレット剥離の発生条件を確認した結果を示す図表で、(a)ははんだの種類と電子部品のめっきの種類さらにはんだ付け手順のどの段階で発生しているのかを分析した結果を示し、(b)はフローはんだ付けの際に既にリフローはんだ付けによりはんだ付けが完了しているはんだ付け部等の温度を測定した結果を示し、(c)はフローはんだ付けを行う前に、QFP ICがリフローはんだ付けされた面とは反対側のフローはんだ付け面に、熱伝導を抑制する断熱テープを貼り付けた態様を示す図である。
この分析を行うに当たっては、リフローはんだ付け作業において被はんだ付け部のはんだ付け端子(リード端子)やはんだの温度が230℃になるようにして行い、フローはんだ付け作業においてははんだの温度を250℃に制御して行った。また、図13(a)において○印はフィレット剥離が発生していないことを示し、×印はフィレット剥離が発生したことを示している。
図13(a)からわかるように、錫−37鉛はんだおよび錫−3銀−0.5銅はんだそして錫−3.5銀−0.75銅はんだのいずれのはんだにおいても、部品のはんだ付け端子のめっきの種類すなわち錫−鉛はんだメッキおよび錫−ビスマスはんだメッキの種類にかかわらず、第1面のリフローはんだ付け作業だけではフィレット剥離が発生していないことがわかる。
しかし、続いて第2面のフローはんだ付けを行うと、第1面のリフローはんだ付けの際に錫−3銀−0.5銅はんだと錫−3.5銀−0.75銅はんだを使用し、部品に錫−鉛はんだめっきが施されたものにおいてのみフィレット剥離が発生していることがわかる。なお、フローはんだ付けに使用したはんだはリフローはんだ付けに使用したはんだと同じ組成のはんだである。
また、図13(c)のようにQFP IC16(240pin QFP IC)のはんだ付け端子の温度上昇を抑制するために断熱テープ40を貼り付けると、フローはんだ付けによってもフィレット剥離が発生しないことがわかる。
このフローはんだ付けの際のリフローはんだ付けされたはんだ付け部の温度は、図13(b)に示すように、断熱テープ40なしの通常のはんだ付け状態では182℃であり、断熱テープ40を貼り付けることにより122℃になる。なお、プリント配線板10の第1面すなわちリフローはんだ付け面の表面の温度はそれぞれ201℃と133℃であった。
これらの分析結果から、そのはんだ付け端子が錫−鉛はんだめっきされた電子部品12を錫−銀−銅系の鉛フリーはんだでリフローはんだ付けを行ったはんだ付け部にのみ、続いて行われるフローはんだ付けによってフィレット剥離が発生していることが確認され、このフローはんだ付けの際に、はんだ付け部の温度が錫−銀−鉛3元共晶合金の融点178℃を越える182℃に上昇することがその原因として特定できる。
次に、本発明のはんだ付け方法を用いてフィレット剥離の有無を検討した。図14はその結果を示す図表であり、(a)はリフローはんだ付けを行うはんだの種類と電子部品のめっきの種類さらにフローはんだ付けに使用する錫−9亜鉛はんだの温度を要因として、フィレット剥離の有無をまとめた図表、(b)はフローはんだ付けの際の各部の温度を、はんだの種類とはんだ付けに際して使用される適切な各はんだ温度において比較した図表である。
すなわち、図14(a)に示すように、リフローはんだ付けを行う際のはんだとして先の例と同様に錫−3銀−0.5銅はんだそして錫−3.5銀−0.75銅はんだを使用し、フローはんだ付けを行うはんだとして錫−9亜鉛はんだを使用し、その温度が220℃の場合と230℃の場合について検討した。その結果、いずれの場合についてもフィレット剥離は発生しなかった。
もちろん、めっきスルーホール内にも錫−9亜鉛はんだが十分に濡れ上がり、そのランドにも十分にはんだが濡れ広がった(図10の工程(9)に示す状態)。また、プリント配線板に錫−亜鉛はんだによりHAL処理が施されている場合、あるいは、フラックス組成物において、ロジンのアクリル酸付加物とサルコシン骨格を有する活性剤を用いる場合については、はんだの温度が220℃〜230℃という極めて低い温度であるにもかかわらず、この錫−9亜鉛はんだの濡れ上がり速度は大変に速く、極めて確実にフィレットが形成された。
一方、図14(b)に示すように、フローはんだ付けの際における240pinのQFP ICのリード端子部すなわちはんだ付け端子の温度は、錫−9亜鉛はんだで温度が220℃の場合に151℃、錫−9亜鉛はんだで温度が230℃の場合に160℃であり、錫−銀−鉛3元共晶合金の融点178℃よりは遙に低い温度になっていることがわかる。すなわち、フローはんだ付けのはんだの温度を低くできる分だけ、リフローはんだ付けされたはんだ付け部の温度上昇も低下する。
ちなみに、錫−37鉛はんだや錫−3銀−0.5銅はんだそして錫−3.5銀−0.75銅はんだを使用して、その適切なフローはんだ付け温度とされる250℃の温度においてフローはんだ付け行った場合には、先にも説明したように182℃となる。
すなわち、錫−9亜鉛はんだを使用してその温度を220℃〜230℃に制御してフローはんだ付けを行えば、リフローはんだ付けされたはんだ付け部の界面にミクロ的に存在する錫−銀−鉛3元共晶合金の溶融を阻止して、フィレット剥離を確実に防止できることがわかる。
なお、図13および図14に示し実験に使用したプリント配線板は、最も汎用的に使用されている厚さ1.6mmのガラスエポキシを基材とするところのASTM/NEMA規格のFR−4材である。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態のフローはんだ付け方法は、次のように実施することができる。
(1)フローはんだ付け装置の構成
先ず本発明のフローはんだ付け方法を実施可能なフローはんだ付け装置の構成例を説明する。図18は、フローはんだ付け装置の一例を説明する縦断面図で、窒素ガス供給系はシンボル図で描いてある。すなわち、このフローはんだ付け装置は、低酸素濃度の不活性ガスすなわち窒素ガス雰囲気中ではんだ付け作業を行うように構成されている。なお、図18のフローはんだ付け装置は、図1や図12に示すフローはんだ付け装置と同様の構成である。
被はんだ付けワークつまりプリント配線板401を搬送する搬送コンベアは、仰角搬送(仰角θ1 )の第1の搬送コンベア402と俯角搬送(俯角θ2 )の第2の搬送コンベア403とにより構成してあり、これらの搬送コンベアを覆うようにトンネル状チャンバ404を設けてある。
このトンネル状チャンバ404の縦断面は、同図にも示すように「へ」の字状に構成してあり、水平面から搬入口405の高さと搬出口406の高さが同じ高さになるように構成してある。これにより、チャンバ404外の大気よりも温度の高いチャンバ404内の雰囲気をその内部に滞留させ易くなり、成分(例えば、酸素濃度)の安定した雰囲気を形成できるようになる。
第1および第2の搬送コンベア402,403は、プリント配線板401の両側端部を保持する保持爪を備え、両側端部側に設けられ平行2条に構成されたコンベアフレームから成る。そして、第1の搬送コンベア402に沿ってトンネル状チャンバ404内に、プリント配線板401の予備加熱工程を構成するプリヒータ407とはんだ付け工程を構成するはんだ槽408とが配設してある。なお、図中の矢印Aはプリント配線板401の搬送方向を示している。
はんだ付け工程のはんだ槽408には錫−9亜鉛はんだ409が収容してあり、はんだ409は図示しないヒータおよび温度センサそして温度制御装置とにより加熱されて溶融状態となっていて、その温度は予め指示された温度に制御されている。そして、この溶融状態のはんだ409を第1のポンプ410により第1の吹き口体411に送出して第1の噴流波412を形成し、また、第2のポンプ413により第2の吹き口体414に送出して第2の噴流波415を形成するように構成されている。
そして、プリント配線板401の下方側の面、すなわち図10の工程(7)に例示するプリント配線板10の下方側の面のランド14やスルーホール11そして電子部品12のはんだ付け端子やリード端子から成る被はんだ付け部が存在する被はんだ付け面つまりフローはんだ付け面に前記の噴流波412,415を接触させることにより、被はんだ付け部に溶融状態のはんだ409を供給してはんだ付けを行う。
また、プリヒータ407は、トンネル状チャンバ404内に設けられている。しかし、はんだ槽408は、トンネル状チャンバ404に開口416を設けて開口416から第1の噴流波412と第2の噴流波415とがトンネル状チャンバ404内に位置するように構成してある。なお、この開口416にはスカート417を設け、このスカート417をはんだ槽408の溶融状態のはんだ409中に浸漬して完全な封止を実現している。
さらに、トンネル状チャンバ404内には、トンネルの長手方向すなわち搬送コンベア402,403の搬送方向に沿って、多数の板状部材すなわち抑止板418を設けてラビリンスシールを形成し、トンネル状チャンバ404内に不要な雰囲気流動が生じないように構成してある。
トンネル状チャンバ404内に不活性ガスである窒素ガスを供給する吐出口筐419は、搬送方向から見てはんだ槽408の後段側の抑止板418間に設けてあり、流量調節弁420および流量計421によって目的とする窒素ガス供給流量に調節できるように構成してある。窒素ガスは、ボンベやPSA方式の窒素ガス供給装置422から供給され、開閉弁423および不純物を除去するフィルタ424、目的とする供給圧力に調節する圧力制御弁425を介して前記流量調節弁420に供給される。圧力計426は圧力モニタ用である。
窒素ガス供給流量は、図示しない酸素濃度計によりトンネル状チャンバ404内の酸素濃度を測定し、例えば、プリント配線板401と溶融状態のはんだ409の噴流波412,415とが接触する領域であるはんだ付け工程の雰囲気をサンプリングして測定し、目的の酸素濃度になるように流量調節弁420を調節して設定する。
さらに、必要があれば破線で示したように、予備加熱工程のプリヒータ407近傍に同様にして窒素ガス供給用の吐出口筐419を設けるように構成し、プリヒータ407近傍の雰囲気の酸素濃度を酸素濃度計で測定するように構成してもよい。このように構成することにより、予備加熱工程の酸素濃度とはんだ付け工程の酸素濃度を別々に調節し制御することもできるようになる。
はんだ付け作業は、搬送コンベア402,403によりプリント配線板401を搬送しながら行われる。すなわち、搬入口405から搬入されたプリント配線板401は矢印A方向へ搬送され、予備加熱工程→はんだ付け工程の順に搬送され、はんだ付け工程でプリント配線板401の被はんだ付け部に噴流波412,415によって溶融はんだ409が供給されてはんだ付けが行われ、はんだ付けが完了したプリント配線板401は搬出口406から搬出される。
このフローはんだ付け作業は、予備加熱工程においてはプリント配線板401の被はんだ付け部の温度が80℃〜150℃の範囲の予め決めた目的の値になるように制御して行い、はんだ付け工程では錫−9亜鉛はんだの温度が220℃〜230℃の範囲の予め決めた目的の値になるように制御して行う。
一例としては、プリント配線板の被はんだ付け面の温度を約120℃に予備加熱加熱した後、220℃の錫−9亜鉛はんだの噴流波に接触させてフローはんだ付けを行う。
(2)はんだ付け手順
図17は、本発明のフローはんだ付けの方法を実現する手順を説明する図で、(a)〜(e)は手順毎のプリント配線板および搭載電子部品の状態を説明するための縦断面図である。なお、前記(1)のフローはんだ付け装置は(e)の工程で使用される。
(手順1)
図17(a)に示すような被はんだ付け部を構成する銅ランド171および銅スルーホール172のプリント配線板170に、錫−銀−銅系はんだ(例えば、錫−3.5銀−0.75銅はんだ、錫−3銀−0.5銅はんだ)や錫−銀系はんだ(例えば、錫−3.5銀はんだ)、錫−銅系はんだ(例えば、錫−0.75銅はんだ)、あるいは錫(100錫)で公知のHAL処理を行い、前記銅ランド171およず銅スルーホール172(銅のめっきスルーホール)の表面に前記はんだや錫の層173を形成する(図1(b))。もちろん、その他めっき等の公知の方法により前記はんだや錫の層を形成してもよい。
なお、ここで使用するはんだには錫リッチの鉛フリーはんだを使用する。すなわち、錫の含有量が90%以上の鉛フリーはんだが望ましい。これは、後述の実施例において説明するように、ランド171における錫−亜鉛はんだの濡れ広がりやめっきスルーホール172における錫−亜鉛はんだの濡れ上がりを良好な状態にするためである。
但し、この錫リッチ鉛フリーはんだは、ビスマスを含有しないものに限られる。ビスマスを含有すると、はんだ付け後において被はんだ付け部のはんだが脆化し、靱性が強い錫−亜鉛はんだの本来の特性が失われてサイクルストレスに対して被はんだ付け部の接続強度が弱くなるからである。
(手順2)
図17(b)のように、前記のはんだの層や錫の層を設けたプリント配線板170に、図17(c)のように接着剤174により電子部品175(例えば、SOP IC)を固定して搭載し、また、挿入型のリード端子176を有する電子部品175は、図17(d)のようにプリント配線板170を反転した後に当該電子部品175(例えば、DIP ICやSIP IC、ZIP IC等々)のリード端子176をスルーホール172に挿入して搭載する。もちろん、図17(c)で搭載される電子部品175や図17(d)で搭載される電子部品175は一例である。
なお、これらの電子部品175のはんだ付け端子やはんだ付けリード端子176には、鉛フリーの金属めっき処理や金属コーティング処理が施されたものを使用する。このめっき処理やコーティング処理に使用する金属は電子部品175の種類やその製造者により異なり、抵抗やコンデンサ等の受動部品でははんだ付けに使用するはんだと同様のはんだを使用する場合もあるが、IC等の半導体部品ではリードフレームにダイボンディグを行う際の濡れも考慮され、一例としてはパラジウムやパラジウム合金が用いられている。
(手順3)
手順2で電子部品175のプリント配線板170への搭載が完了したら、前記(1)で説明したフローはんだ付け装置によりこのプリント配線板170のはんだ付けを行う。すなわち、図17(e)で示す被はんだ付け面(図の下方側の面)を錫−亜鉛はんだ(例えば、錫−9亜鉛はんだ)の噴流波に接触させ、その被はんだ付け部177に錫−亜鉛はんだを供給して濡らし、めっきスルーホール172には錫−亜鉛はんだを濡れ上がらせる。
この場合、プリント配線板170のランド表面やめっきスルーホールの表面に前記手順1により錫リッチの鉛フリーはんだや錫の層を形成してあるので、錫−亜鉛はんだのランド171における濡れ広がりやめっきスルーホール172における濡れ上がりが良好となる。
また、ランド171上に搭載された電子部品175のはんだ付け端子やめっきスルーホール172に挿入されている電子部品175のはんだ付けリード端子176の表面にパラジウム層やパラジウム合金層が設けられている場合にも、錫−亜鉛はんだはこのパラジウム層やパラジウム合金層に良く濡れ広がるので、優れたはんだ付け性が得られる。ちなみに、他の鉛フリーはんだではこの錫−亜鉛はんだのような優れた濡れ広がりや濡れ上がりが得られない。
一方、プリント配線板のフローはんだ付けの際には、酸化防止や濡れ性改善のために通常予備加熱工程の前においてポストフラックスが塗布されるが、このフラックスとして、ロジンのアクリル酸付加物とサルコシン骨格を有する活性剤を含有するものを使用すると、噴流波に接触している際に持続的に濡れ性が向上するようになり、特に錫−亜鉛はんだにおいて一層良好な濡れ性が得られるようになる。
[第3の実施例]
(1)広がり率法によるはんだ付け性の評価
JIS−Z−3184に準拠してはんだの広がり率試験を行い、はんだ付け性の評価を行った。
先ず、りん脱酸銅板(JIS C−2100 50×50×0.3mm)に、錫(100錫)、錫−0.75銅はんだ、錫−3銀−0.5銅はんだ、錫−3.5銀はんだ、錫−3.5銀−0.75銅はんだの溶融めっき(レベラ処理)を実施した試験片を各3枚ずつと、めっき処理を行わない前記りん脱酸銅板(100銅)の試験片を3枚作成した。
次に、これら各試験片に錫−9亜鉛はんだペーストを印刷し、続いて、酸素濃度500ppmの窒素雰囲気を形成したリフロー炉に投入して、ピーク温度が220℃でありかつ200℃以上の保持時間が60秒の加熱条件ではんだ付けを行った。
そして、これらのはんだ付けを行った各試験片を常温で冷却し、その後アルコールで各試験片の表面に残っているフラックスを洗浄・除去し、続いて、各試験片上のはんだの高さをマイクロメータで測定し、それぞれ、次式(1)で広がり率S(%)を求めた。
S=(D−H)/D ×100 (%) ・・・・・(1)
但し、Hは広がったはんだの高さ(mm)、Dは前記の印刷したはんだの体積を球と見なした場合の直径(mm)である。
D=1.24V1/3 ・・・・・(2)
V=印刷したはんだの質量/比重 ・・・・・(3)
である。なお、前記HとDの意味を図19に示す。
そして、これらの測定結果を一覧にまとめたものが図20の図表で、図20(a)は錫−亜鉛はんだの広がり状態を写真で示すと供に広がり率S(%)の中心値を示した図表であり、図20(b)は広がり率S(%)を偏差を含めて示した図である。なお、図20においては各元素の表示について元素記号を用いている。
すなわち、銅ランドや銅スルーホールが形成されたプリント配線板に相当する100銅の場合の錫−9亜鉛はんだの濡れ広がり率が82.3%であるのに対し、レベラ処理されたプリント配線板に相当する溶融めっき処理が錫(100錫)の場合が90.9%、錫−0.75銅はんだの場合が91.4%、錫−3銀−0.5銅はんだの場合が90.3%、錫−3.5銀はんだの場合が89.4%、錫−3.5銀−0.75銅はんだの場合が89.3%の濡れ広がり率になっている。
また、図20(b)からレベラ処理の錫の含有率が多くなる程、錫−亜鉛はんだの濡れ広がりが比例して良くなることがわかる。
そして、この図表から錫または錫の含有率が90重量%以上の錫リッチはんだによりレベラ処理を行えば、概ね85%以上の満足できる濡れ広がり率を得ることが可能になることが結論できる。
(2)フローはんだ付けによる評価
次に、プリント配線板の被はんだ付けランドやめっきスルーホールに各種のレベラ処理を行って、錫や錫リッチはんだの層を形成したプリント配線板の錫−9亜鉛はんだによるフローはんだ付けを行い、はんだ付け性を評価した。はんだ付けの際のはんだの温度ひいては噴流波の温度は220℃という低温である。
図21は、各種のレベラ処理を行ったプリント配線板の錫−亜鉛はんだによるフローはんだ付けの結果を説明する図表で、(a)ははんだ付け結果を一覧にまとめた図表(各元素の表示について元素記号を使用)、(b)ははんだ付け性の評価基準を説明する図で被はんだ付け部の縦断面を示す図である。なお、(b)に示す評価基準は、フローはんだ付けにおいて最も困難を伴うめっきスルーホールに電子部品のリード端子が挿入された場合を示している。
すなわち、図21では、プリント配線板の被はんだ付けランドおよびめっきスルーホールに錫(100錫)の層を形成したプリント配線板、錫−1.2銀−0.75銅はんだの層を形成したプリント配線板、錫−3銀−0.5銅はんだの層を形成したプリント配線板、錫−3.5銀−0.75銅はんだの層を形成したプリント配線板、錫−9亜鉛はんだの層を形成したプリント配線板、銅ランドまた銅スルーホールに下地としてニッケルめっきを行いその上に金めっきを行ったプリント配線板、そして、銅ランドまた銅スルーホールに何も処理を行わない銅プリント配線板、のそれぞれについて、錫−9亜鉛はんだによるはんだ付け性を評価した結果を示している。
そして、この評価を行うに当たって、はんだ付けリード端子に錫−鉛はんだの層が形成された電子部品を前記スルーホールに挿入して搭載した場合と、はんだ付けリード端子に下地としてニッケルめっきを行いその上にパラジウムめっきを行い、該はんだ付けリード端子の表面にパラジウム層が形成された電子部品を前記スルーホールに挿入して搭載した場合とについて評価を行った。また、使用した電子部品はDIP ICである。
なお、はんだ付けリード端子に錫−鉛はんだの層が形成された電子部品を前記スルーホールに挿入して搭載した場合についても評価を行ったのは、鉛が使用されている従来例との比較を行うためである。
次に、図21(b)に示す評価基準について説明する。同図に示すように、スルーホール内にはんだが濡れ上がってプリント配線板の下方側の面のランドにも上方側の面ランドにもはんだフィレットが形成された状態が良好なはんだ付け状態を示す「○」であり、プリント配線板の下方側の面のランドにははんだフィレットが形成されスルーホール内にもはんだが濡れ上がったが、プリント配線板の上方側のランドにはんだが濡れ広がることができずフィレットが形成されなかった状態がやや不十分なはんだ付け状態を示す「△」、プリント配線板の下方側の面のランドにははんだフィレットが形成されたがスルーホール内に十分にはんだが濡れ上がらず、したがって、プリント配線板の上方側のランドにはんだが濡れ広がることができずフィレットが形成されなかった状態が不十分なはんだ付け状態を示す「×」である。
そして、図21(a)の評価結果から、プリント配線板の搭載電子部品に鉛フリーのパラジウム層が形成されたはんだ付けリード端子を有するものは、ニッケ/金めっきを行ったプリント配線板の場合と、なにも処理を行っていない銅プリント配線板の場合とにおいて、不十分なはんだ付け状態になるが、錫層を形成したプリント配線板および錫リッチはんだの層を形成したプリント配線板においては良好なはんだ付け状態が得られている。
パラジウム層やパラジウム合金層をはんだ付け端子やリード端子の表面に形成した電子部品(特にリードフレームを有するIC)では、一般的に鉛フリーはんだに対する濡れ性が錫や錫−鉛はんだ等の層を設けたものと比較して劣るとされているが、本発明のフローはんだ付け方法によれば、良好なはんだ付け状態を得ることができるようになる。
また、ニッケル/金めっき処理を行ったプリント配線板は、電子部品に従来の錫−鉛はんだの層が形成されている場合には優れた濡れ性ひいてははんだ付け性が得られるが、電子部品のはんだ付けリード端子にパラジウム層が形成されていると不十分なはんだ付け状態になることがわかる。
なお、錫−亜鉛はんだの温度を230℃および250℃と高めてフローはんだ付けを行ったが同様の評価結果が得られており、はんだの温度ひいては噴流波の温度による優位差は認められなかった。
このように、プリント配線板の被はんだ付けランドやめっきスルーホールの表面に錫(100錫)あるいは錫リッチ(錫含有率90重量%以上)の鉛フリーはんだの層を形成しておいて、このプリント配線板に電子部品を搭載して錫−亜鉛はんだによるフローはんだ付けを行うことにより、良好なはんだ付け性が得られるようになる。
すなわち、この錫−亜鉛はんだを使用してフローはんだ付けを行う場合に、濡れ性に関するプリント配線板の主要因が制御され、従来は濡れ性が悪いと評価されてフローはんだ付け用のはんだとして対象にされていなかった錫−亜鉛はんだを使用しても、優れたはんだ付け品質のプリント配線板を安定して大量生産することが可能となる。
しかも、はんだの温度ひいては噴流波の温度が220℃という低温のはんだであっても、被はんだ付けランドやめっきスルーホールにおいて良好な濡れ広がりと濡れ上がりが得られる。この温度は、従来の錫−鉛はんだによるフローはんだ付けの際のはんだの温度(約240℃〜250℃程度)や、高融点鉛フリーはんだによるフローはんだ付けの際のはんだの温度(約250℃〜255℃)と比較して遙に低い温度である。
その結果、はんだ付けに際して電子部品に与える熱ストレスが少なくなり、この熱ストレスを要因とする電子部品の寿命は従来の錫−鉛はんだよりもまた高融点鉛フリーはんだよりも遙に長寿命となり、他の要因による電子部品の劣化のみを問題にすれば良いようになる。
さらに、錫−亜鉛はんだは、他のどの鉛フリーはんだと比較しても靱性が強いことが知られており、適度な硬さと優れた伸び特性を有しているため、サイクルストレスに対してその接続状態を強靱に維持することが可能である。そのため、熱サイクルストレスや加速度サイクルストレス等が多い装置(例えば、自動車)に使用する場合においては、被はんだ付け部の接続破断(断線)に依る故障発生が極めて少ない抜群の信頼性を得ることができるようになる。
(3)持続的作用が得られるフラックス
前記のフローはんだ付けによる評価に際して、通常行われているようにポストフラックスをプリント配線板にスプレー塗布した。このフラックスには、従来のポストフラックスの樹脂成分であるガムロジンに代えて、より耐熱性の高いロジンのアルリル酸付加物を選択使用した。さらに、持続的な濡れ性向上を確保する観点から、配合する活性剤としてサルコシン骨格を有する活性剤を選択使用した。 ロジンのアクリル酸付加物とは、アクリル酸とロジンの付加反応物あるいはさらに水素化反応を行ったロジン誘導体である。ロジンとは、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンである。また、サルコシン骨格を有する活性剤としては、オレイルサルコシン、ラウロイルサルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシン等を挙げることができる。
なお、前記特定の構成成分に加えて、一般用フラックスに用いる各成分、例えば樹脂、活性剤、溶剤、酸化防止剤、艶消し剤、その他の添加剤などを併用することができる。
一般用フラックスに用いる樹脂成分としては、ガムロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン等の各種ロジン誘導体や、ポリアミド樹脂、テルペン樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。
また、一般用フラックスに用いる活性剤としては、アミンのハロゲン化水素酸塩、有機酸類、有機アミン、有機ハロゲン化物等が挙げられる。アミンのハロゲン化水素酸塩の具体例としては、ジエチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩を挙げることができ、有機酸類の具体例としては、アジピン酸、ステアリン酸、安息香酸等を挙げることができ、有機アミン類の具体例としては、ヘキシルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができ、有機ハロゲン化物の具体例としては、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1、4−ジオール等を挙げることができる。また、溶剤としては、フソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。
さらに、酸化防止剤、艶消し剤、その他の添加剤としては特に限定はされず、各種公知のものから適宜に選択して使用すればよい。
次に、フラックスの実施例を挙げてさらに詳しく説明する。以下の実施例5〜実施例8および比較例4〜比較例6から成る液状フラックス組成物を調合し、電子部品を搭載したプリント配線板にこのフラックスをスプレー塗布により塗布し、前記のフローはんだ付け装置によりはんだ付けを行った。
図22の(a)はその評価結果を説明する図表で、評価結果の○△×は同図の(b)に示すように図21(b)に示す評価基準と同じ評価基準により評価を行った。
(実施例5)
アジピン酸 1.0wt%(重量%)
ジブチルアミン 1.0wt%
シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩 0.2wt%
オレイルサルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 7.0wt%
水添ロジン 7.0wt%
イソプロピルアルコール 82.8wt%
(実施例6)
セバシン酸 1.0wt%
2,3−ジブロモ−1−プロパノール 0.5wt%
ジエチルアミン塩酸塩 0.2wt%
ラウロイルサルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 10.0wt%
ガムロジン 5.0wt%
イソプロピルアルコール 82.3wt%
(実施例7)
オクチル酸 1.0wt%
安息香酸 1.0wt%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 0.2wt%
ヤシ油脂肪酸サルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 20.0wt%
イソプロピルアルコール 77.8wt%
(実施例8)
グルタル酸 1.0wt%
2,3−ジブロモ−1−プロパノール 0.5wt%
シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩 0.2wt%
オレイルサルコシン 1.0wt%
ロジンのアクリル酸付加物 7.0wt%
不均化ロジン 7.0wt%
イソプロピルアルコール 83.3wt%
(比較例4)
アジピン酸 1.0wt%
ジブチルアミン 1.0wt%
シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩 0.2wt%
ガムロジン 15.0wt%
イソプロピルアルコール 82.8wt%
(比較例5)
セバシン酸 1.0wt%
2,3−ジブロモ−1−プロパノール 0.5wt%
ジエチルアミン塩酸塩 0.2wt%
ラウロイルサルコシン 1.0wt%
ガムロジン 15.0wt%
イソプロピルアルコール 82.3wt%
(比較例6)
オクチル酸 1.0wt%
安息香酸 1.0wt%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 0.2wt%
ロジンのアクリル酸付加物 10.0wt%
水添ロジン 10.0wt%
イソプロピルアルコール 77.8wt%
図22の評価結果に示すように、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8において良好なはんだ付け性が得られる。
このように、耐熱性に優れ持続した濡れ性向上が得られる本実施例のフラックス組成物により、プリント配線板と錫−亜鉛はんだの噴流波とが接触している際における濡れ性の向上等のフラックスの作用が持続して得られるようになり、錫−亜鉛はんだを被はんだ付けランドに濡れ広がらせ、また、めっきスルーホールに濡れ上がらせる際に好適な作用が得られる。
第1の発明のはんだ付け方法によれば、リフトオフを生じないはんだ付け実装を行うことが可能であり、はんだ付けリード端子にパラジウム層やパラジウム合金層を有する電子部品をプリント配線板にはんだ付けする場合において、はんだ濡れ性に優れていて機械的接続性が強靱であり電気的接続性も良好なはんだ付け信頼性の高いプリント配線板のはんだ付け実装を行うことができる。
また、第1の発明のはんだ接合体によれば、パラジウム層やパラジウム合金層を形成したリードフレームが用いられた鉛を使用しない所謂鉛フリーの半導体部品の高信頼性特性と半導体部品のプリント配線板へのはんだ付け実装における高い信頼性特性とを両立させ得ることができる。
これにより、半導体部品のパッケージングから半導体部品のプリント配線板へのはんだ付け実装に至る全工程において高信頼性特性を得ることができるようになり、その結果、極めて信頼性の高い電子機器を得ることができる。
第2の発明によれば、フローはんだ付けの際にランド剥離を生じる条件を有する電子部品や鉛フリーはんだ(錫−鉛はんだめっきのはんだ付け端子と錫−銀−銅系の鉛フリーはんだ)を使用してプリント配線板のリフローはんだ付けを行った後に、当該リフローはんだ付け面とは反対側の面を、錫−9亜鉛はんだを使用してその温度を220℃〜230℃の範囲に制御してフローはんだ付けを行う。これにより、前記リフローはんだ付けされたはんだ付け部の温度を錫−銀−鉛3元共晶合金の融点178℃以下に保持することが可能となり、フローはんだ付けの際にランド剥離を生じることがない。
また、はんだにビスマスを含有させないので、はんだ付け強度が強靱でありサイクルストレスに対して強固なはんだ付けを行うことができる。
さらに、錫−亜鉛はんだによりHAL処理を施したプリント配線板を使用することにより、フローはんだ付けに使用する錫−9亜鉛はんだの温度が低いにもかかわらず、めっきスルーホールとそれに繋がるランドに錫−9亜鉛はんだを素早く濡れ広がらせ、スルーホールにも確実で良好なはんだ付けを行うことができる。
加えて、酸化しやすい錫−亜鉛はんだによく適合するフラックスを使用することで、はんだ濡れ性が一層優れたはんだ付けを行なうことができるようになる。
その結果、鉛フリーはんだを使用した際のランド剥離を確実に阻止し、はんだ付け品質と信頼性に優れたプリント配線板のはんだ付け実装が可能となる。
第3の発明のフローはんだ付け方法によれば、錫−亜鉛はんだを使用したフローはんだ付け作業において、はんだ付け品質に影響を与える主要因が制御され特にはプリント配線板における主要因が制御され、錫−亜鉛はんだの良好な濡れ広がりと濡れ上がりとが得られるようになり、プリント配線板に多種・多数の電子部品を錫−亜鉛はんだを使用してはんだ付け実装する場合において、各被はんだ付け部を優れたはんだ付け状態で均一かつ安定してはんだ付けすることができるようになる。
しかも220℃程度の低温のはんだでフローはんだ付けを行うことが可能となり、プリント配線板に搭載される電子部品の寿命ひいてはプリント配線板が搭載される電子装置の寿命を長寿命化することが可能となる。
したがって、サイクルストレスに強く長寿命の電子装置すなわち高信頼性の電子装置を実現することができるようになる。また、亜鉛は安価であるため、他の鉛フリーはんだよりも低コストでの製造が可能となる。