JP4632998B2 - 岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法及びシステム - Google Patents

岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法及びシステム Download PDF

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本発明は岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法及びシステムに関し、とくに岩盤内に構築した空洞周囲の岩盤の透水性を低下させて遮蔽性能を改良する工法及びシステムに関する。
地下深部の地層(以下、岩盤という)は難透水性・低透気性といった遮蔽性能を有しており、そのような遮蔽性能を利用して不要な物質等を岩盤内に貯留・処分する技術の開発が進められている。例えば原子力発電所から生じる放射性廃棄物(放射性核種を含む)を人間の生活環境から隔離して処分するため、図3(A)に示すように、地下深部の安定した岩盤内に構築した空洞(処分坑道)に放射性廃棄物を閉じ込める地層処分施設の建設が計画されている(非特許文献1参照)。図示例の地層処分施設は、地表2上の地上設備3と、岩盤1内の地下施設とからなる。地下施設は、地下深度300〜1000m程度の岩盤1内に構築した複数の処分坑道10と、それらを相互に連絡する連絡坑道6と、作業員等が処分坑道10に出入りするためのアクセス立坑4と、放射性廃棄物を処分坑道10に搬入するためのアクセス斜坑5とにより構成されている。
放射性廃棄物は、ガラス固化体に閉じ込め、金属容器等のオーバーパックに包み込んだうえで、地下施設の処分坑道10内に搬入する。また図3(B)の断面図に示すように、処分坑道10の内周面を難透水性のベントナイト系材料等の緩衝材8で覆い、搬入した放射性廃棄物を緩衝材8の内側の構造躯体9内に集積する。放射性廃棄物を搬入・集積した後、構造躯体9の内側をベントナイト等で充填して全ての空間を塞ぎ、岩盤1の遮蔽性能を損なわないような状態に復帰させる。放射性廃棄物中の核種は千年を超える長期にわたり減衰しつつも存在し続けるが、岩盤1からなる天然バリアとガラス固化体・オーバーパック・緩衝材等からなる人工バリアとを組み合わせた多重バリアによって放射性廃棄物を閉じ込めることにより、地下水等によって放射性核種が人間の生活環境に移行することを長期にわたり確実に抑止する。
図3のように岩盤の遮蔽性能を利用した処分施設は、長期にわたり安定している岩盤1を選定し、その遮蔽性能を極力損なわないにような工法で構築される。ただし、安定した岩盤1中にも地下水の経路となる透水性の高い箇所(亀裂や破砕帯が存在する箇所)が存在しており、処分坑道10の掘削の影響により岩盤1の力学的・水理学的・地球科学的な性質が変化する場合もある。実際に岩盤1内に掘削した処分坑道10の周囲には、図4に示すように、(1)マイクロ・クラックが発生して物性が低下した〜1m程度の掘削損傷領域1a、(2)空隙の水圧が低下して地下水の化学的状態が変化した〜数m程度の不飽和領域1b、(3)応力状態が変化して既存の割れ目等の開閉が生じた坑道径の2〜3倍程度の応力再配分領域1cといった緩み域(応力開放により地盤が緩む領域)が分布していると想定される。地層処分施設の長期にわたる信頼性・安全性を確保するため、このような処分坑道10の周辺の高透水性箇所を改良すると共に緩み域を修復し、天然バリアである岩盤1の遮蔽性能を改良・修復することが望まれている。
岩盤1の遮蔽性能を改良・修復するため、処分坑道10の周辺の高透水性箇所や緩み域にセメント系グラウトを注入する方法が考えられる。しかしセメント系グラウトは、硬化後に透水性を低減させる機能を有するものの、溶脱等による劣化が生じて徐々に機能が低下すると考えるため、長期にわたる品質保証が得られない問題点がある。また、セメント系グラウトは周辺の地下水のpHを高める作用があり、高pHの地下水がベントナイト等の人工バリアの性能を低下させるおそれもある。放射性廃棄物の地層処分は長期にわたり機能を維持し続けることが求められており、ナチュラルアナログ(10〜100万年スケールの天然類似現象)による性能が確認できていないセメント系グラウト等を用いることは好ましくない。
これに対し特許文献1及び2は、粘土系グラウト(ベントナイト等)を用いて岩盤1の遮蔽性能を改良・修復する工法を提案している。一般に粘土系グラウトは粘性が高く注入が困難であるが、ベントナイト等のスメクタイト系粘土は親水性有機溶媒(例えばエタノール)と混合することにより低粘性の粘土スラリー(エタノール・ベントナイト改良材)とすることができる。高透水性箇所や緩み域の状況に応じて粘性を調整したエタノール・ベントナイト改良材を岩盤1内に加圧注入し、岩盤1内においてエタノールを地下水に置き換えて改良材を硬化させることにより、止水性を高めて岩盤1の遮蔽性能を改良・修復する。粘土系グラウトは天然材料であるため、セメント系グラウトのように岩盤1内で変質して材料劣化が生じるおそれが小さく、長期にわたり止水性を維持することが期待できる。
特開2003−096450号公報 特開2005−048404号公報 特開2001−200525号公報 電気事業連合会・核燃料サイクル開発機構「TRU廃棄物処分技術検討書第3章、地層処分の工学技術」、2005年9月、インターネット<URL:http://www.jaea.go.jp/05/report/re051128/TOP.htm> 村上由記他「東濃地域における地下水化学と地下微生物の相互作用」地学雑誌、Vol.112、No.2、p277-287
しかし、特許文献1及び2のように粘土系グラウトを用いた遮蔽性能の改良工法は、グラウト材の粘性の調整が難しく、岩盤1の高透水性箇所や緩み域を漏れなく改良・修復することが難しい問題点がある。例えば粘土系グラウトの粘性が高すぎると岩盤1の細かい空隙に注入できず、粘性が低すぎると地下水の圧力によって流出してしまい、何れの場合も岩盤1中にグラウト材の未充填部分が生じるおそれがある。放射性核種は、岩盤1内の透水性の高い大きな亀裂中を移行するだけでなく、岩盤1の細かい空隙中にも移行することが知られている。地層処分施設の信頼性・安全性を高めるためには、岩盤1中の細かい空隙の透水性も確実に低下させることができる技術の開発が必要である。
また、粘土系グラウトを用いた遮蔽性能の改良工法は、処分坑道10の周囲岩盤1の透水性を低下させることはできるものの、周囲岩盤1を還元状態に復元できない問題点もある。一般に地下深部の岩盤1は還元状態であるが、掘削した処分坑道10から酸素が供給されるため、処分坑道10の周囲岩盤1は酸化状態になると考えられる。酸化状態は錆等の化学反応性が高く、人工バリア材の変質を招きやすい等の問題がある。処分坑道10の構築により損なわれた地盤1の遮蔽性能を回復するためには、難透水性を回復させると共に、化学反応性の高い周囲岩盤1の酸化状態を迅速に還元状態に戻すことが望ましい。
そこで本発明の目的は、高透水性箇所や緩み域等を確実に改良・修復できる岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法及びシステムを提供することにある。
本発明者は、地下の微生物を活用して岩盤1中の空隙(高透水性箇所や緩み域等)に閉塞を生じさせることに注目した。岩盤1中の空隙に微生物が繁殖した場合、微生物の菌体(死骸)や微生物の生産物によって空隙が閉塞されて透水性が低下し、遮蔽性能の改良をもたらすことが期待できる。例えば特許文献3は、地層処分施設の天然バリア又は人工バリアの空隙内に棲息する微生物を特定し、その空隙に化学的成分(水素イオン、酸素、水分、有機物その他の各種栄養分、塩分等)又は物理的成分(超音波、電流、振動、圧力、光、放射能、磁界等)を投与して微生物の菌体数をコントロールし、微生物の生産物や老廃物又は微生物自身の死骸によって空隙を充填して天然バリア及び人工バリアの透水係数を改良する方法を提案している。しかし、化学的成分又は物理的成分の投与だけで岩盤1中の細かい空隙の菌体数をコントロールすることは困難であり、充填漏れ等が発生して遮蔽性能の改良が不十分となるおそれがある。本発明者は、岩盤1中の空隙閉塞状況を確認しながら地下の微生物を増殖させる技術の開発研究の結果、本発明の完成に至ったものである。
図1及び図2の実施例を参照するに、本発明による岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法は、岩盤1内に構築した空洞10(図2参照)から周囲の岩盤1中にボーリング孔12を穿ち、ボーリング孔12内のパッカー対13、13で仕切られた注入区画Aに酸素又は二酸化炭素を注入して岩盤1中の微生物を増殖させると共に注入圧を継続的に計測し、その注入圧の計測値が所定注入圧に増加するまで酸素又は二酸化炭素の注入を継続してなるものである。
好ましくは、パッカー対13、13をボーリング孔12内の深さ方向に移動可能なものとし、注入区画Aを移動させながら各注入区間Aにおいて注入圧の計測値を所定注入圧まで増加させる酸素又は二酸化炭素の注入を繰り返す。この場合は、注入区間Aをボーリング孔12の先端側から入口側へ徐々に移動させたのち、ボーリング孔12を粘土系グラウト材で埋め戻すことができる。更に好ましくは、周囲岩盤1中に酸素又は二酸化炭素の含有水を注入し、注入圧の計測値が周囲岩盤1の所要透水性に応じた所定注入圧に増加するまでその含有水の注入を継続する。
また図1のブロック図を参照するに、本発明による岩盤内空洞の遮蔽性能改良システムは、岩盤1内に構築した空洞10から周囲の岩盤1中に穿ったボーリング孔12内に注入区画Aを画成するパッカー対13、13、注入区画Aに酸素又は二酸化炭素を注入する注入装置20、及び注入装置20の注入圧を計測する注入圧計測装置23を備え、注入圧の計測値が所定注入圧に増加するまで酸素又は二酸化炭素の注入を継続してなるものである。
本発明による岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法及びシステムは、岩盤1内の空洞10から周囲岩盤1中にボーリング孔12を穿ち、ボーリング孔12内のパッカー対13、13で仕切られた注入区画Aに酸素又は二酸化炭素を注入して周囲岩盤1中の微生物を増殖させると共に、その注入圧を継続的に計測して微生物の増殖による周囲岩盤1中の空隙の閉塞状況を検出し、注入圧が所定計測値に増加するまで酸素又は二酸化炭素の注入を継続するので、次の顕著な効果を奏する。
(イ)酸素又は二酸化炭素の注入圧により周囲岩盤1中の空隙閉塞の進行を確認しながら微生物を増殖させるので、岩盤1中の空隙の閉塞漏れ等を避けることができる。
(ロ)また、従来の粘土系グラウト等に比して酸素又は二酸化炭素は岩盤1の細かい空隙にも容易に進入させることができ、注入圧を継続的に計測しながら酸素又は二酸化炭素の注入を継続することにより、周囲岩盤1中の細かい空隙も確実に閉塞させることができる。
(ハ)岩盤1中に存在していた微生物の増殖によって周囲岩盤1を改良するので、従来のセメント系グラウトのように機能が劣化するおそれが小さく、地盤改良効果を長期にわたり維持することが期待できる。
(ニ)酸素の注入によって好気性微生物を増殖させた場合は、その酸素注入により周囲岩盤1が一時的に酸化状態となるものの、注入終了後に増殖した好気性微生物によって酸素が急激に消費されるので、周囲岩盤1を迅速に還元状態に復帰させることが期待できる。
図1及び図2は、岩盤1内の地下深部に構築した放射性廃棄物の地層処分施設である空洞10に本発明を適用した実施例を示す。地下深部の岩盤1は一般に無光・無酸素という環境であるが、このような岩盤1の地下水中にも、環境により種類は異なるものの、様々な微生物の存在することが知られている。例えば非特許文献2は、分子状酸素が存在しない地下300〜800mの地下深部の環境にも鉄細菌(鉄酸化細菌)や硫酸還元菌(硫化水素発生菌)が分布しており、例えば鉄細菌が硝酸イオンを利用して鉄の酸化を行っている可能性を報告している。
このような鉄細菌等が存在する岩盤1の地下水中に酸素を供給すれば、鉄細菌による鉄の酸化反応((1)式)を促進し、その生産物である水酸化鉄Fe(OH)3の沈澱により岩盤1中の空隙を閉塞して遮蔽性能を改良することが期待できる。また、岩盤1の地下水中に硫黄細菌(硫黄酸化細菌)が存在する場合は、酸素の供給により硫黄細菌による硫黄の酸化反応((2)式)を促進し、その生産物である硫酸カルシウム等の硫酸金属の沈澱による岩盤1の遮蔽性能の改良が期待できる。
また、鉄細菌や硫黄細菌が存在する岩盤1の地下水中に、酸素と共に又は酸素に代えて二酸化炭素を供給させた場合は、微生物による炭素固定反応((3)式)を促進して微生物を増殖させ、その増殖した微生物の菌体の沈澱により岩盤1中の空隙を閉塞する作用が期待できる。更に、岩盤1の地下水中に硫酸還元菌が存在する場合は、二酸化炭素と水素の供給によって硫酸還元菌を増殖させることにより硫化水素と地下水中の金属イオンとの反応((4)式)を促進し、その生成物である硫酸鉄等の硫酸金属の沈澱による岩盤1の遮蔽性能の改良も期待できる。
Fe2++0.75O2+1.5H2O↓→Fe(OH)3↓ …………………………………(1)
Ca+H2S+2.5O2→CaSO4↓+H2O …………………………………………(2)
CO2+H2O=菌体(CxHyOz)↓ …………………………………………(3)
X2++S2-→硫化物XS(Xは金属元素)↓ ………………………………(4)
図示例では、岩盤1内の空洞10の内側から周囲岩盤1中にボーリング孔10を穿ち、そのボーリング孔10内に遮蔽性能改良システムを設置している。ボーリング孔12は、空洞10から掘削損傷領域1a及び不飽和領域1bを貫いて応力再配分領域1cに至り、空洞10の周囲の緩み域全体に酸素又は二酸化炭素を供給できるものとすることが望ましい。このような空洞10の周囲岩盤1の緩み域構造は、従来技術に属する適当な地盤解析手法を用いて予め求めることができる。また図2に示すように、緩み域の広がり等に応じて空洞10から放射状に複数のボーリング孔12を穿ち、各ボーリング孔12に遮蔽性能改良システムを設けることができる。ボーリング孔12の長さや角度、本数や間隔等は、周囲岩盤1の緩み域や高透水性箇所の広がり状況に応じて適当に選択できる。
周囲岩盤1中にボーリング孔10を穿った後、岩盤1中の地下水の水質を調査し、地下水中に存在する微生物及び溶解イオン等を検出する。地下水中の微生物及び溶解イオンを検出することにより、岩盤1中に酸素又は二酸化炭素の何れを供給すべきかを判断する。例えば地下水中に鉄細菌及び鉄(Fe2+)イオンが存在している場合は、酸素を供給することにより、上述した鉄の酸化反応((1)式)を促進できる。また地下水中に鉄細菌が存在するが、鉄(Fe2+)イオンの存在量が少ない場合は、二酸化炭素を供給することにより、上述した炭素固定反応((3)式)を促進する。ただし、地下水中の鉄イオンの存在量が少ない場合でも、酸素と同時に鉄(Fe2+)イオンを供給することにより、岩盤1内における鉄の酸化反応((1)式)を促進することが可能である。
図示例の遮蔽性能改良システムは、ボーリング孔10の所定深さ部位に注入区画Aを画成するパッカー対13、13と、その注入区画Aの周囲岩盤1に酸素又は二酸化炭素の含有水(酸素又は二酸化炭素を溶解した水)を注入する注入装置20と、注入装置20の注入圧を継続的に計測する注入圧計測装置23とを有する。図中の符号22は、酸素又は二酸化炭素の含有水を貯えた貯留槽を示す。図示例のパッカー対13、13は、地上から吊り下げるワイヤ14及びウィンチ等の昇降装置15と、その拡張・収縮を制御するパッカー制御装置16とに接続されている。昇降装置15によりパッカー対13、13をボーリング孔12内の任意深度部位に吊り下げ、制御装置16によりパッカー対13、13を拡張することにより注入区画Aを形成する。パッカー対13、13の一例は、制御装置16により注入・回収する液体(水等)又は気体(空気等)の圧力により拡張・収縮する遮水パッカー又はメカニカルパッカーである。
好ましくは、ボーリング孔12内にパッカー対13、13を設置する前に、適当な流体検層法等を用いてボーリング孔12内の深さ方向の透水性を把握する。ボーリング孔12内の透水性を把握することにより、空洞10の周囲岩盤1の詳細な空隙状況が解析できると共に、その空隙状況を考慮して酸素又は二酸化炭素の含有水の初期注入流量を決定することができる。注入流量(単位吐出量)は、過度に大きくすると岩盤1の急激な変位を招くため、できるだけ小さく抑えることが望ましい。例えば、注入区間Aの透水性に基づき、その注入区間Aに対する酸素又は二酸化炭素の含有水の初期注入流量を決定する。
ボーリング孔12内にパッカー対13、13で注入区画Aを形成したのち、注入装置20から注入区画Aに酸素又は二酸化炭素の含有水を初期注入流量で注入する。例えば岩盤1の地下水中に鉄細菌が存在し、地下水中の鉄(Fe2+)イオンが多量に存在する場合は、注入区間Aの近傍において注入された酸素や坑道内から浸透した酸素をエネルギーとして鉄細菌が増殖すると共に、通常の酸化と比較して数万倍以上の速度で水酸化鉄の沈殿が促進され、増殖した鉄細菌の菌体や沈殿した水酸化鉄(コロイドや鉱物)によって注入区間Aの周囲岩盤1中の空隙に閉塞を生じる。しかも、酸素又は二酸化炭素の含有水は粘性が非常に小さいので、岩盤1の細かい空隙にも容易に進入させることができ、細かい空隙も確実に閉塞させることができる。
また、注入装置20で酸素含有水を注入しながら、注入圧計測装置23によりその注入圧を継続的に計測する。岩盤1の透水性kは、注入流量Qと注入圧Pとから係数αを用いて(1)式により推定することがきる。例えば周囲岩盤1中の空隙に水酸化鉄を沈殿させる場合、その沈澱の増加に応じて注入圧Pが徐々に増加するが、注入装置20の注入量Qと注入圧計測装置23の注入圧Pとにより注入区間A近傍の周囲岩盤1の空隙閉塞状況、すなわち岩盤1の透水性kを検出することができる。例えば従来の粘土系グラウト材等を用いた遮蔽性能の改良工法においても、グラウト材の充填の進行に応じて注入圧が増加するので、その注入圧により周囲岩盤1の空隙充填をある程度把握することが可能である。しかし、粘性の高い粘土系グラウト材を用いた場合は岩盤1中に未充填部分が残る可能性があり、注入圧から透水性を検出することは難しい。これに対し本発明は、粘性が非常に小さい酸素又は二酸化炭素の含有水を用いるので、その注入圧により周囲岩盤1の透水性を精度よく推定することができる。
透水性k=α×(Q/P) ……………………………………………(1)
例えば、空洞10の周囲岩盤1に必要とされる所要透水性を予め算出し、酸素又は二酸化炭素の含有水の注入圧計測値がその所要透水性に応じた注入圧に増加するまで含有水の注入を継続する。注入圧の計測値により周囲岩盤1中の透水性を確認しながら酸素又は二酸化炭素の含有水を注入することにより、岩盤1中の空隙の閉塞漏れ等を避けることができる。また、周囲岩盤1の所要透水性に応じた注入圧に増加するまで含有水の注入を継続することにより、周囲岩盤1の遮蔽性能を所要レベルまで高めることができる。
ボーリング孔1内の注入区間Aにおいて所要透水性が得られたのち、昇降装置15及びパッカー制御装置16により注入区間Aを深さ方向に随時移動させ、移動させた注入区間Aにおいて注入圧計測値を所定注入圧まで増加させる酸素又は二酸化炭素の含有水の注入を繰り返す。好ましくは注入区間Aを、ボーリング孔12の先端側(最深部側)から入口側(手前側)へ順次移動させ、ボーリング孔12内の深さ方向の全ての部位を所要透水性とすることにより、空洞10の周囲の緩み域全体の透水性を改良する。注入区間Aをボーリング孔12の入口側まで移動させたのち、パッカー対13、13を撤去したボーリング孔12を粘土系グラウト材等で埋め戻す。一般にボーリング孔12はφ55mm程度以上あるため、例えば空洞10内にベントナイト等を充填する際に、同様のベントナイト等を先端から充填していくことができる。
本発明において、周囲岩盤1の微生物はボーリング孔12を埋め戻した後も酸素又は二酸化炭素がある限り増殖し続け、注入した酸素又は二酸化炭素は微生物により消費される。酸素の注入によって微生物を増殖させた場合は、その酸素注入により周囲岩盤1が一時的に酸化状態となるが、注入終了後に増殖した微生物によって酸素が急激に消費されるので、周囲岩盤1は迅速に還元状態に復帰すると考えられる。すなわち、微生物の増殖により岩盤1の遮蔽性能を改良する本発明によれば、岩盤1の透水性を低下させるだけでなく、岩盤1を還元状態に戻す効果が期待できる。また、二酸化炭素を注入した場合も、増殖した微生物により空洞10から供給された酸素が消費されることにより、岩盤1は還元状態に復帰すると考えられる。更に、微生物の菌体や微生物の生産物によって閉塞された空隙は、従来のセメント系グラウトのように閉塞機能が劣化するおそれが小さく、長期にわたり遮蔽性能を維持することが期待できる。
こうして本発明の目的である「高透水性箇所や緩み域等を確実に改良・修復できる岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法及びシステム」の提供が達成できる。
以上、酸素又は二酸化炭素の含有水を用いた実施例について説明したが、本発明において酸素ガス又は二酸化炭素ガスを吹き込むことにより岩盤1中の微生物を増殖させて遮蔽性能を改良することも可能である。すなわち、注入装置20から注入区画Aの周囲の地下水中に酸素ガス又は二酸化炭素ガスを注入し、その注入圧を注入装置20により継続的に計測し、注入圧の計測値が所定注入圧に増加するまで酸素ガス又は二酸化炭素ガスの注入を継続する。この場合も、対象領域が完全に乾燥していないので、微生物の菌体や生産物の沈澱に応じて増加する注入圧Pと酸素ガス又は二酸化炭素ガスの注入量Qとにより、近似的に(1)式を用いて、注入区間A近傍の周囲岩盤1の透水性kを検出することが可能である。
本発明の一実施例の説明図である。 地層処分施設に適用した本発明の実施例の説明図である。 放射性廃棄物の地層処分施設の説明図である。 岩盤内に掘削した空洞周囲の地層構造の説明図である。
符号の説明
1…岩盤 1a…掘削損傷領域
1b…不飽和領域 1c…応力再配分領域
1d…飽和領域 2…地表
3…地上設備 4…アクセス立坑
5…アクセス斜坑 6…連絡坑道(主要坑道)
7…支保工 8…緩衝材
9…構造躯体 10…空洞(処分坑道)
12…ボーリング孔 13…パッカー対
14…ワイヤ 15…昇降装置
16…パッカー制御装置
20…注入装置 21…注入管
22…貯留槽 23…注入圧計測装置
24…記憶装置

Claims (7)

  1. 岩盤内に構築した空洞から周囲の岩盤中にボーリング孔を穿ち、前記ボーリング孔内のパッカー対で仕切られた注入区画に酸素又は二酸化炭素を注入して岩盤中の微生物を増殖させると共に注入圧を継続的に計測し、前記注入圧の計測値が所定注入圧に増加するまで酸素又は二酸化炭素の注入を継続してなる岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法。
  2. 請求項1の工法において、前記パッカー対をボーリング孔内の深さ方向に移動可能なものとし、前記注入区画を移動させながら各注入区間において前記注入圧の計測値を所定注入圧まで増加させる酸素又は二酸化炭素の注入を繰り返してなる岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法。
  3. 請求項2の工法において、前記注入区間をボーリング孔の先端側から入口側へ徐々に移動させたのち前記ボーリング孔を粘土系グラウト材で埋め戻してなる岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法。
  4. 請求項1から3の何れかの工法において、前記周囲岩盤中に酸素又は二酸化炭素の含有水を注入し、前記注入圧の計測値が周囲岩盤の所要透水性に応じた所定注入圧に増加するまで前記含有水の注入を継続してなる岩盤内空洞の遮蔽性能改良工法。
  5. 岩盤内に構築した空洞から周囲の岩盤中に穿ったボーリング孔内に注入区画を画成するパッカー対、前記注入区画に酸素又は二酸化炭素を注入する注入装置、及び前記注入装置の注入圧を継続的に計測する注入圧計測装置を備え、前記注入圧の計測値が所定注入圧に増加するまで酸素又は二酸化炭素の注入を継続してなる岩盤内空洞の遮蔽性能改良システム。
  6. 請求項5のシステムにおいて、前記パッカー対をボーリング孔内の深さ方向に移動させる移動手段を設け、前記注入区画を移動させながら各注入区間において前記注入圧の計測値を所定注入圧まで増加させる酸素又は二酸化炭素の注入を繰り返してなる岩盤内空洞の遮蔽性能改良システム。
  7. 請求項5又は6のシステムにおいて、前記注入装置により酸素又は二酸化炭素の含有水を注入し、前記計測装置に周囲岩盤の所要透水性に応じた所定注入圧を記憶し、前記注入圧の計測値が所定注入圧に増加するまで前記含有水の注入を継続してなる岩盤内空洞の遮蔽性能改良システム。
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