JP4630515B2 - 一体型バルーン気管開口チューブ - Google Patents

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Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、気管開口術に使用される外科デバイスに関し、これは、声帯の下で気管を通って直接導入される、外科的に作製された気道である。
【0002】
(発明の背景)
現在使用されている気管開口チューブの大部分は、曲げられたチューブからなる基本的概念に従い、このチューブは、患者と空気供給源(代表的には、大気または機械的人工呼吸器)との間の空気の交換のための人工的通路として作用する。例えば、Turnerに対する米国特許第5,983,895号を参照のこと。このチューブは、しばしば、流体(例えば、空気)で充填され得る、小さい拡張可能なバルーン(カフ(cuff)とも呼ばれる)によって、その尾側の端部で包まれ、従って、しばしば、人工呼吸器によって吸息陽圧を使用する必要がある。例えば、Abelに対する米国特許第5,056,515号およびFauzaに対する米国特許第4,791,920号を参照のこと。バルーンは、人工呼吸器によって患者に吸入された空気が、気管開口または喉頭および咽頭を通って環境へと漏出するのを防止するために、その断面で気管の内部の内層に接着し、これによって、空気が、気道の下部、そして最終的に肺胞に到達するのを可能にする。バルーンはまた、気管の内側でのチューブの支持を補助する。
【0003】
しかし、これらの従来のチューブの設計は、気管開口術に関連する種々の頻繁な合併症に寄与する。これらの合併症のほとんどは、気管の内側のチューブの不安定性およびバルーンの内側の圧力の両方の結果である。
【0004】
(気管チューブの不安定性)
気管チューブは、正確には体内で係留されない、人体の異なる領域で現在使用されている数少ない(これだけではないが)バルーンチューブのうちの1つである。結果として、チューブは、気道の内側で、そして気道小孔および創傷を通って、かなり移動する。この問題は、一般的に観察されている。気管開口チューブは、頻繁に、この係留の不安定性および損失に起因して気管の内側で位置がずれ、これは、多くの異なる換気障害を導く。気管開口チューブはまた、偶発的に外れ得(時には、気道から完全に離れ落ちる)、チューブの再導入は、非常に困難であり得るので、潜在的な換気障害、脳の損傷、またはいくつかのケースにおいては死をも伴う。
【0005】
例えば、人工呼吸器の律動および患者による動きに起因する、気管開口チューブの継続的な動きは、主に小孔の頭側レベルでの、気管に対する直接的な損傷の原因となる。気管開口術の最も一般的な合併症の1つは、小孔のレベルでの気管の狭窄(stenosis)(または狭窄(stricture))であり、これは、主に、気管のその領域に対するチューブの継続的な動きによって引き起こされ、軟骨輪を直接損傷する。研究によれば、気管開口術を受けた患者の有意な割合が、通常には、小孔の頭側のレベル(ここでは、チューブの曲がった部分が、その継続的な動きの結果としてさらにより多くの損傷を生じる)での、いくらかの程度の気管の狭窄を有する。次いで、この狭窄は、いくらか長期間の臨床的発現(例えば、運動に対する不耐性および再発性の感染)を生じ得、これらは、いくらかの患者において、気管の部分の除去を必要とし得る。
【0006】
チューブの不安定性はまた、他のより外傷性の合併症(例えば、小孔から離れた(または尾側の)気管に対する損傷)の原因となり得、これは、気管または気管に隣接する構造(食道または腕頭動脈を含む)の全穿孔を生じる。腕頭動脈が穿孔された場合、いわゆる気管−腕頭動脈フィステルが存在し、その死亡率は約95%である。この種のフィステルはまた、小孔周辺の炎症反応から生じ得、この炎症反応は、チューブの継続的な動きからのその領域への繰り返しの損傷が存在する場合に、より強力である。これらのより外傷性の生命を脅かす合併症は稀であるが、現在なお可能性がある。
【0007】
(バルーン圧力)
バルーンの内側の高い圧力は、気管壁に対する損傷の主な原因として長く認められてきた。このような損傷はまた、気管の狭窄および/または穿孔を生じ得る。高容量−低圧バルーンの概念が、正確には、1970年代に導入され、市場に大きな衝撃を与えた。なぜなら、これは、以前の低容量−高圧バルーンと比較して、バルーンの内側の圧力、ならびに結果として、多くの合併症の確率および重篤度を有意に減少したからである。このバルーンの概念は、約30年間「標準」として使用されてきた。しかし、高容量−低圧バルーンは、なお合併症に関連し、これには、主に、以下の2つの理由がある:(1)ある程度の拡張後に、チューブが気管の内側でどれくらい密接に適合しているかに依存して、バルーンの容量対圧力曲線が、バルーンの内側にさらなる容量がほとんどないことに起因して、低容量−高圧バルーンの曲線に向かって変化する;および(2)チューブの継続的な動きが、バルーンの容量(そして従って圧力)を非常に不安定にし、そしてまたバルーンを気管壁に対して直接押し付ける。結果として、気管の狭窄および穿孔は、バルーンの位置または位置付近でなお生じる。
【0008】
従って、現在利用可能なチューブよりも患者内でより安定であり、一方、バルーン内の圧力を最小化し、従って、狭窄および穿孔の発生を減少する、気管開口チューブおよびバルーンの設計を提供することが所望される。
【0009】
(他の設計の欠陥)
感染は、依然として気管開口術の主な合併症のままである。最近の報告によれば、気管開口術を受けた患者の約66%が、院内肺炎を有し、そしてその100%が、気道における細菌および/または真菌のコロニー化を有する。これらの合併症は、主に、小孔を介する気管と創傷との間(そして結果として、気管と環境との間)の直接連絡および咽頭の内容物の吸引に起因する。これらの原因から生じる感染を最小化または予防する気管開口チューブおよびバルーンの設計を開発することが有利である。
【0010】
別の比較的頻繁かつ潜在的に主要な合併症は、粘液栓による気管開口チューブの閉塞である。チューブの一定した清浄が必須である。別の比較的小さな合併症は、気管開口チューブが外れるのを防止するために必要とされる頸部周辺のストラップによって引き起こされる、不快性および/または皮膚の損傷である。
【0011】
従って、標準的な気管開口チューブ設計の使用に関連する合併症を回避または最小化するために患者内で安定でありかつバルーン内の圧力を最小化する、気管開口チューブおよびバルーンのアセンブリが、本発明の目的である。
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、以下によって気管開口術の安全性を増加するように設計されたバルーンの形式および配置を有する、気管開口チューブに関する:チューブの係留能力を増強し、それ故、気管内でより良好にチューブを安定化する;気道内のチューブの配置を改善する;容量を増加し、それ故、バルーンの内側の圧力を低下する;バルーンの容量対圧力曲線を増強する;気管開口術による創傷、喉頭および咽頭から気管を完全に封鎖する;チューブサイズを短縮し、そして移動可能な頸部フランジを提供する。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明の気管開口チューブは、以下に示される図1〜3を参照して、より良好に理解され得る。
【0014】
現在の技術水準と比べた場合、本発明の主な差異は、そのバルーン(1)である。これは、現在のモデルのようにチューブ(2)の周囲で拡張するのみならず、チューブおよび小孔に対して頭側で拡張する、「一体型」設計を有する。これは、このバルーン(1)とチューブ(2)との間の2つの接着領域、すなわち(1a)および(1b)の正射影が、連続的でない、言い換えると、現在のモデルの場合のような180°以外の角(α)であるという事実によって達成される。このことの6つの最も重要な結果は、以下である:a)このバルーン(1)設計は、それが小孔に対して遠位かつ頭側の両方で拡張するので、チューブ(2)を気管の内側で係留し、これは、チューブ(2)を完全に安定化し、そして結果として、気管、小孔および創傷を通るチューブの動きまたは「遊び」を(完全には回避しなくとも)劇的に最小化する;b)このバルーン(1)設計はまた、本質的に、チューブ(2)の先端が、常に、気管の内側に適切に配置され、そして遠位の気道および肺以外のいずれの方向に方向付けられないことを保証する;c)このバルーン(1)の頭側の拡張は、その容量を大いに増大し、そして結果としてバルーンの内側の圧力を有意に低下する;d)このバルーン(1)の頭側の拡張は、一種の「漏出弁」として作用し、これは、その容量対圧力曲線を現在のバルーンのそれよりもさらにより良好にし、つまり、バルーン(1)の内側に多量に空気が注入されたとしても、バルーンの内側の圧力の増加がほとんど存在しない;e)このバルーン(1)は、気管小孔を完全に封鎖し、これは、気管と創傷または環境との直接連絡を妨げ、従って、混入または感染の危険性を最小化する;およびf)このバルーン(1)によって生じるより良好な気管封鎖は、咽頭からの吸引の機会を最小化する。
【0015】
チューブ(2)自体は、実際には、現在のモデルに見出されるチューブと同じである。唯一の差異は、バルーン(1)の上述の特徴に起因して、チューブはより短く、これは、次いで、a)チューブ(2)の「遊び」または動きの可能性をさらにより最小化し;b)気管−腕頭動脈フィステルの危険性を(完全に無くさないにしても)低下させ(なぜなら、このチューブは、腕頭動脈との気管の交差領域に到達しないからである);c)空気流に対する抵抗を減少し;そしてd)吸引カテーテルを介するチューブ(2)のより容易な清浄を提供する。このチューブは、二重の内腔、言い換えると、内部の移動可能な内側チューブ(5)を有し得(これは、例えば、粘液栓による、チューブの重篤な急性の閉塞の場合に除去され得る)、外側のチューブ(2)を通る空気流の即時の確立および内側チューブ(5)のより容易な清浄を可能にする。
【0016】
バルーン(1)のガス注入は、キャップ付の、弁を有する可撓性の導管(4)による。この導管は、バルーン(1)を環境へ接続する。移動可能な頸部フランジ(3)は、局所的な解剖学的構造に依存して、バルーン(1)から異なる距離で患者の頸部の周辺でのストラップ固定を可能にすることによって、安全性を付加する。このフランジ(3)を移動させる能力は、チューブ(2)の絶対的な係留能力を考慮して、有用である。
【0017】
このチューブ(2)の得られる安定性、そのバルーン(1)の内側の非常に低い圧力、そのバルーン(1)の容量対圧力曲線、およびそのチューブ(2)のより短い長さは、全て、現在のモデルの係留の欠失およびそのバルーンの圧力プロフィールの両方に依存する、(全てではないにしても)ほとんどの気管開口術の関連のある合併症を、(完全に無くさなくとも)有意に最小化するのを補助する。なお別の利点は、そのバルーン(1)の「一体型」設計に起因して、気管が、全体的に封鎖され、創傷および環境から分離され、同時に、患者が咽頭から内容物をさらにより吸引させにくくすることである。これら全ての結果として、感染の確率および重篤度は、現在のモデルで観察される確率および重篤度よりはるかに低い。さらに、このチューブ(2)は非常に安定であるので、患者は、必ずしも、時折不快になる頸部周囲のストラップを着用しなくてよい。
【0018】
本発明の気管開口チューブの機能は、はるかに高いレベルの安全性および快適性を有することを除き、現在のモデルによって達成される機能と同じである。気管開口術自体の十分に確立された外科技術において、本発明のデバイスが使用されるのに必要とされる変更点は存在しない。
【0019】
上記の基本概念から開始する、本発明の気管開口カニューレは、その寸法(患者の解剖学的特徴に従って変化する)およびその設計(以下のバリエーションを示し得る)のような、いくつかの変化を受け得る。そのチューブ(2)および内側チューブ(5)に対して患者の脚側または頭側に、肺から声帯への空気の通過を可能にし、従って、患者が話すのを可能にする、開口部を有してもよいし、有さなくともよい。しかし、この基本設計のバリエーションが機能的であるためには、なお別の開口部が、バルーン(1)に対して後側または頭側に存在する必要があり、そしてこのような開口部は、封鎖可能でありそしてチューブ上の上記開口部と連絡する必要がある。別の可能な設計バリエーションは、チューブ(2)およびバルーン(1)に沿った、さらなる、キャップ付きの、弁を有する可撓性の導管の存在であり、これは、気管の内側のバルーン(1)に対して患者の脚側または頭側を環境に接続し、それ故、バルーンに隣接した領域に最終的に蓄積している分泌物が除去され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、気管開口チューブの好ましい実施形態の側面立面図である。
【図2】 図2は、図1の気管開口チューブの斜視図である。
【図3】 図3は、図1の気管開口チューブの拡張可能なバルーン成分の側面立面図である。

Claims (5)

  1. 気管開口チューブデバイスであって、以下:
    近位端部分、遠位端部分、および該端部分の間の曲がり部分を有する、中空チューブ(2)であって、該遠位端部分は、患者の喉頭および気管小孔を通って気管内腔への挿入に適合され、その結果、該チューブの遠位端部分が該気管内腔中で第1の方向で延びる場合に、該近位端部分が該気管小孔を通って第2の方向に延びる、中空チューブ(2);
    拡張可能なバルーン(1)であって、該バルーン(1)と該チューブ(2)との間の2つの接着領域の角度の付いた突出部(1a、1b)を備え、該突出部は互いに対して180°以外の角度で角度がついている、バルーン(1);
    該バルーン(1)を拡張および収縮するための手段(4)の領域;および
    該チューブ(2)の近位端部分に接続されたフランジ手段(3)であって、該フランジ手段は、該気管内腔における該チューブの遠位端部分の固定に適しており、ここで、該フランジ手段は、該患者の喉頭の外側に係留点を提供する、フランジ手段(3)
    を備え、
    該拡張可能なバルーンの該角度の付いた突出部(1a、1b)は互いに対して離れた位置に設けられ、該中空チューブ(2)の該近位端部分および遠位端部分は、角度の付いた突出部(1a、1b)のれぞれにおいて該バルーンに接着され、該チューブ(2)の該近位端および該遠位端の周りでの、該バルーンおよび該気管小孔に対して患者の頭側および脚側の方向への、そして該小孔の位置での径方向への、該バルーン(1)の拡張を提供することを特徴とする、デバイス。
  2. 請求項1に記載の気管開口チューブデバイスであって、前記フランジ手段(3)が、前記患者の頸部の異なる解剖学的特性に適応するように、前記チューブ(2)の少なくとも一部分に沿って移動可能である、デバイス。
  3. 請求項1に記載の気管開口チューブデバイスであって、前記バルーン(1)を拡張および収縮するための手段が、該バルーン(1)と連絡する可撓性の導管(4)を備える、デバイス。
  4. 請求項1に記載の気管開口チューブデバイスであって、前記チューブ(2)が、第1の開口部を備え、そして前記バルーンが、封鎖可能でかつ該第1の開口部と連絡する、第2の開口部を備え、該両方の開口部を通って空気が流れ、前記患者が話すのを可能にし得る、デバイス。
  5. 請求項1に記載の気管開口チューブデバイスであって、前記チューブ(2)および前記バルーン(1)の両方に沿った可撓性の導管をさらに備え、該導管は、前記気管の内側の前記第1の方向における、該バルーン(1)に対して患者の脚側または頭側を環境に連絡し、その結果、該バルーンに隣接した領域に最終的に蓄積している分泌物が除去され得る、デバイス。
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