JP4628705B2 - 蓄熱材料 - Google Patents

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Description

本発明は、ボイラー、冷暖房機器、給湯機器などから排出される熱、あるいは太陽熱を貯蔵し、適時熱源として有効活用できる蓄熱材料に関し、特に、30℃から200℃付近の温度域において、蓄熱、放熱の繰り返しによる蓄熱材料の分解や変質がなく、安全に使用でき、大きな蓄熱量を有する蓄熱材料に関するものである。
現代社会では、快適な居住空間あるいは工業製品の生産現場において、ボイラー、冷暖房機器、給湯機器などの冷温熱機器は必要不可欠であり、これらの機器によるエネルギー消費量の増大は、ユーティリティ費の負担が増大するばかりでなく環境負荷の観点からも好ましくないため、エネルギー消費量削減に向けて種々の対策が検討されている。
日本で消費される全一次エネルギーの約66%は廃熱となり未利用であるという統計があるが、これらの廃熱の多くは低品位廃熱であるため、利用が難しいという課題を有している。低品位廃熱がどの温度までを指すかは、廃熱回収技術の進捗状況から判断されることもあり明確ではないが、少なくとも200℃以下の廃熱は殆ど有効利用できていないと考えて良い。
このような低品位廃熱の回収には、熱電変換素子を利用した電気への直接変換または蓄熱材料による熱回収などの方法が有効と考えられ、研究開発や実用化の検討が進められている。
熱電変換素子は、素子に熱エネルギーを直接あるいは間接的に供給し、電気に変換するが、エネルギー変換効率が10%未満と低く、素子の価格も高いという問題がある。したがって、エネルギー変換効率向上に向けた半導体材料の開発が国家プロジェクトとして研究開発が進められているが、広く普及させるためには現在の2倍から3倍の性能指数が要求されている。
蓄熱材料による廃熱回収は、比較的安価な材料および簡単な設備で廃熱の回収が可能で、蓄えた熱は随時、熱として取り出すことが可能である。蓄熱材料は、その熱を蓄える機構の違いから主として顕熱蓄熱材料と潜熱蓄熱材料とに分類される。
顕熱蓄熱材料は、物質の温度変化を伴って熱を蓄える材料である。顕熱蓄熱材料に蓄えられる熱量と温度の関係は、低温TL の物質に熱エネルギーが流入し、温度TH になったとすると、その物質の蓄熱量QS (J)は、その物質の比熱をC、密度をρ、体積をVとすると、次式で表される。ただし、比熱Cは一定と仮定する。
S =CρV(TH −TL )・・・・・・・・・(1)
すなわち、物質の温度を上昇させる過程が蓄熱であり、温度を下げる過程が放熱である。温度が変動する廃熱に対しては、その温度変化に連動して蓄熱または放熱が起こる。蓄熱量QS は温度差(TH −TL )および物質の熱容量CρVに比例して変化するので、大きな温度差をつけるか、もしくは大きな熱容量の蓄熱材料を使用すれば蓄えられる熱量が増加する。
顕熱蓄熱材料としては、例えば、288K付近で水(比熱4.18J/gK)、カロリアHT43(エクソン社製、比熱2.77J/gK)、サーミノールT66(モンサント社製、比熱2.77J/gK)、シルサーム800(ダウコーニング社製、比熱2.10J/gK)、コンクリートブロック(比熱0.88J/gK)、砂利(比熱0.88J/gK)、マグネシアレンガ(比熱0.88J/gK)などがある。
水は化学的に安定で、比熱も大きいため、非常に優れた顕熱蓄熱材料であるが、沸点が低いため廃熱が150℃以下の時に使用するのが通例である。一方、カロリアHT43など有機熱媒体は、沸点が高いため200℃付近の廃熱にも使用できるが、比熱が小さいため、より一層蓄熱量の大きな材料が要望されている。さらに、マグネシアレンガなどは、耐熱性が優れており、温度差を500℃以上とれば蓄熱量は大きくなるが、200℃以下の低品位廃熱に対しては比熱が非常に小さいことから蓄熱量が小さく、有効な材料でない。
潜熱蓄熱材料は、物質の相変化または転移に伴う潜熱を利用して熱を蓄える材料で、主として潜熱蓄熱材料固有の融点または転移点で蓄熱および放熱が行われる。したがって、潜熱蓄熱材料の融点または転移点以上にならないと大きな蓄熱量は得られず、逆に蓄えられた熱は融点または転移点未満にならないと十分な放熱が行われることはない。したがって、廃熱の温度が変動する場合に対応させるため、数種類の潜熱蓄熱材料を併用するなどの方法があるが、化学的性質や物理的性質が一致しないなどの問題があり効果的な蓄熱システムの構築ができない。また、融解、凝固、または転移を繰り返すため物質の分解、変質などが起こりやすく、さらに融解した潜熱蓄熱材料が充填容器などの周辺材料を腐食させやすいという問題もあった。
潜熱が大きい材料の例を挙げると、融点または転移点が2℃〜94℃においては、炭化水素類で1−デカノール(潜熱206J/g)、C16パラフィン(潜熱200J/g)などがあり、無機塩水和物ではSr(OH)2 ・8H2 O(潜熱351J/g)、Ba(OH)2 ・8H2 O(潜熱293J/g)、Na2 SO4 ・10H2 O(潜熱200J/g)、Na2 CH3 COO・3H2 O(潜熱251J/g)などがある。さらに133℃〜250℃ではペンタエリスリトール(潜熱322J/g)、LiOH−NaOH共晶塩(潜熱362J/g)、尿素(潜熱251J/g)などがある(非特許文献1〜3、特許文献1参照)。
最近では、融点が簡便な方法で変えられる物質として硝酸マンガン水和物も提案されている(特許文献2参照)。
上記例からわかるように、潜熱の大きい材料は、可燃物または劇物あるいは腐食性を有する物質が多いことが欠点である。
さらに、従来とは異なる機構で蓄熱、放熱が行われる例として、見かけ比重が0.5〜1.1である酸化アルミニウムを含む蓄熱材料が提案されている。これは、酸化アルミニウムへの水分の吸着、脱離を利用したものである。原理的には活性アルミナに吸着した水分子の脱離による蓄熱と水分子の再吸着による放熱を利用しているため、化学的に安定で、蓄熱量は150℃の加熱による水分子の脱離で282J/g程度が得られている(特許文献3参照)。しかし、見け比重が0.5〜1.1に限定されているため、体積当たりの蓄熱量が小さいという問題があった。
特開昭59−134497号公報 特開2001−064635号公報 特開2002−162184号公報 成田勝彦外1名、「潜熱蓄熱材」、電気学会雑誌、101(1)、1981、p.15〜22 小沢丈夫外4名、「潜熱蓄熱材の予備的検討1」、電子技術総合研究所彙報44(11、12)、1980、p.707〜p.724 田中耕太郎外6名、「潜熱蓄熱材料の予備的検討3」、電子技術総合研究所彙報51(7)、1987、p.469〜p.483
以上のように、従来の蓄熱材料は、200℃以下の低品位廃熱に対し体積当たりの蓄熱量が不十分である、温度が変動する廃熱に対して有効な蓄熱ができない、可燃性である、劇物である、または腐食性があるなどの問題があった。
本発明は、従来技術の上記問題点を解決するものであって、30℃から200℃付近の温度域において蓄熱、放熱が容易であり、その繰り返しによる蓄熱材料の分解や変質がなく、安全に使用でき、大きな蓄熱量を有する蓄熱材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルカリ金属を含む層状構造遷移金属酸化物に着目し、その中でも二チタン酸カリウムが目的を達成する材料であることを見出した。
すなわち、本発明の蓄熱材料は、一般式K2 Ti2 5-x ・nH2 O(0≦x≦1 、0≦n≦2.7)で表記される二チタン酸カリウムを主成分とすることを特徴とするものである。
その二チタン酸カリウムが、炭酸カリウムと酸化チタン、水酸化チタン、ルチルサンド、アナターゼ精鉱、またはチタンスラグとの混合粉末を、酸素分圧0.02MPa以上の雰囲気下において891℃以上965℃未満の温度で一定時間加熱することで得られる短冊状粉末である場合、非常に大きな蓄熱量を有する蓄熱材料として適用できる。
蓄熱材料が一般式K2 Ti2 5-x ・nH2 O(0≦x≦1 、0≦n≦2.7)で表記される二チタン酸カリウムと黒鉛との混合物であると、熱伝導率が向上し外部との熱交換が行われやすい。また、潤滑性が高く水分の吸着、脱離時に起こる蓄熱材料の膨張、収縮の流動性が向上するので熱の伝達効率の低下を抑制できる。
本発明の蓄熱材料は、30℃から200℃付近の温度域において蓄熱、放熱が可能であり、その繰り返しによる蓄熱材料の分解や変質がなく、安全に使用でき、大きな蓄熱量を有する。したがって、工場や家屋に設置されるボイラー、冷暖房機器あるいは給湯機器などから排出される低品位熱エネルギーを回収するだけでなく、太陽熱エネルギーを回収し、暖房に利用するなどにも有効である。
二チタン酸カリウムの一般式は、通常K2 Ti2 5 と表記されるが正確にはK2 Ti2 5-x であり、xは合成温度および合成時の雰囲気中酸素分圧によって変化する。合成温度が低いほど、また雰囲気中酸素分圧が高いほどxは0に近づく。
また、xが1より大きければ、二チタン酸カリウムとしての結晶構造を取り得ず、目的を達する物性は得られない。なお、xを1より大きくするには強力な還元雰囲気で合成する必要がある。
二チタン酸カリウムの結晶構造は、TiO5 三角両錘体が連鎖した層状構造を有し、TiO5 三角両錘体からなる層と層との間にK+ イオンが配置されていると考えられている。結晶構造から推察すると、xは0に近いほど格子欠陥の少ない安定な状態と考えられ、本発明の蓄熱材料に最も適している。
このような層状構造結晶は、層間に配置されたK+ イオンが容易に水和され、一般式としてK2 Ti2 5-x ・nH2 Oで表記される二チタン酸カリウム水和物となる。このとき、H2 O分子は、K+ イオンに誘導されるようにTiO5 三角両錘体からなる層間にゲストとして侵入する。H2 O分子が侵入する際には、TiO5 三角両錘体からなる層と層との間隔が膨張するが、結晶構造は維持される。H2 O量を示すnは、理論的データではないが、実験から求めた最大値は2.7である。
本発明者らは、K2 Ti2 5-x が大気中の水分を速い速度で吸収し、生成したK2 Ti2 5-x ・nH2 Oを室温20℃、相対湿度50%の大気中で250℃まで加熱すると、K2 Ti2 5-x ・nH2 Oの質量の約15%に相当するnH2 Oが脱離し、TiO5 三角両錘体からなる層と層との間隔の収縮を伴って元のK2 Ti2 5-x になることを見出した。
この反応は、一種のトポケミカルな反応と考えられ、結晶構造の変化を伴わないため、水和、脱水の繰り返しに対して極めて安定である。ただし、K2 Ti2 5-x ・nH2 Oは、TiO5 三角両錘体からなる層と層との間隔が膨張した状態であるためへき開を起こしやすく、大きな剪断応力を加えることは避けなければならない。へき開を起こすことによって、K+ イオンとH2 O分子が配置される層が消滅するので、K2 Ti2 5-x の水和量は減少する。
蓄熱量は、K2 Ti2 5-x ・nH2 O(n=2.6)を室温20℃、相対湿度50%の大気下で、30℃から250℃まで10℃/minで昇温し、nH2 Oが脱離するときの吸熱量を測定した結果、306J/g(780J/cm3 )に達したことから、K2 Ti2 5-x ・nH2 Oが蓄熱材料として有用であることが確認された。
吸熱は30℃から215℃までの全温度域において認められ、30℃から215℃までの温度域において蓄熱材料として機能する。放熱は、雰囲気中の水分を吸収することによって発現するので、放熱速度は雰囲気の水蒸気分圧が高く、温度が低いほど大きくなる。雰囲気は、大気が最も適しているが、K2 Ti2 5-x ・nH2 Oの結晶構造を崩壊させなければ他の雰囲気での使用も可能である。例えば、減圧脱気した密閉容器中に水を導入して得られる水蒸気のみで構成される雰囲気でも使用できる。
なお、二チタン酸カリウムは、以下の条件で合成したものが目的とする蓄熱材料に最適である。
まず、原料として炭酸カリウムと酸化チタン、水酸化チタン、ルチルサンド、アナターゼ精鉱、またはチタンスラグとを使用するが、これら原料を使用することは一般的であり、取り扱いが容易で、価格も安価である。
チタンスラグはイルメナイトの精製物であり、酸化チタンの含有量は68〜95%に達することからアナターゼ精鉱と比較して遜色のない原料といえる。
炭酸カリウムと酸化チタン、水酸化チタン、ルチルサンド、アナターゼ精鉱、またはチタンスラグとは、カリウムとチタンの原子比が1:1の比率になるように秤量し、それぞれの粉末が均一に分散するようによく混合する。水酸化チタン、ルチルサンド、アナターゼ精鉱、またはチタンスラグの秤量にあたっては、酸化チタンの含有量を良く確認する。特に、ルチルサンド、アナターゼ精鉱、またはチタンスラグは、酸化チタンの含有量が90%以上であることを必要とする。ルチルサンド、アナターゼ精鉱、またはチタンスラグに含まれる鉄などの不純物は、結晶構造を歪ませるため蓄熱量を低下させる原因となる。一方の炭酸カリウムの秤量にあたっては、大気中の水を吸収している場合が多々あるだけでなく、加熱合成時にごく微量のカリウムが気化損失されるため、原料中のカリウム含有量およびカリウム気化損失量を入念に調べた上で質量を調整し、生成物が二チタン酸カリウム単相になるようにしなければならない。原料の混合には、ボールミル等の混合機を使うのが適しているが、この方法に限定されるものではない。
混合した原料は、酸素分圧0.02MPa以上の雰囲気下において891℃
以上965℃未満の温度で加熱する。
二チタン酸カリウムの融点は965℃であり、965℃以上では二チタン酸カリウムは融解する。融解後冷却して得られる二チタン酸カリウムはやや柔軟性のある塊状物となり、大気中の水分を吸収しても容易に解れない。実用上は、表面積を大きくする方が水分子の出入りが行われやすく好ましいが、この塊状物を粉末にするため機械的な粉砕を行うと強いせん断応力によって結晶の層状構造が崩壊し、十分な蓄熱量が得られない。
また、塊状物に注水し、水和によって引き起こされる急激な膨張力で粉末に解す方法もあるが、その際にTiO5 三角両錘体からなる層と層との間に配置されたK+ イオンが、注水した水に溶出し、代わりにH+ イオンが取り込まれる。K+ イオンとH+ イオンの置換量は、温度、時間、水の量によって変化するが、H+ イオンが取り込まれることにより結晶は、不安定になり結晶構造の維持が難しくなる。
また、891℃未満では炭酸カリウム、酸化チタン、水酸化チタン、ルチルサンド、アナターゼ精鉱、およびチタンスラグはすべて固体である。固体どうしの反応速度を向上させるためには粉末どうしの接触面積を増大させることが重要であり、混合粉末を圧縮成形した後に加熱する手段が一般的には有効であるが、圧縮成形の工程に時間を要するため生産性が悪いという欠点がある。
加えて、酸化カリウムへ分解する速度が非常に遅いため二チタン酸カリウムに炭酸カリウムが混入し易い。891℃以上に加熱すると炭酸カリウムは融解するため、酸化チタン、水酸化チタン、ルチルサンド、アナターゼ精鉱石、またはチタンスラグの粉末表面が炭酸カリウムの融液で覆われ原料どうしの接触面積は圧縮成形を行った場合以上に増大し反応速度は各段に向上する。酸素分圧は、0.02MPa以上に制御することによって二チタン酸カリウム中の酸素含有量を化学量論量(n=0)に近づけることが可能となる。加熱時間は、製造量によって異なるが、6時間以上加熱することが必要で、通常は48時間程度加熱することが好ましい。
したがって、酸素分圧0.02MPa以上の雰囲気下において891℃以上965℃未満の温度で一定時間加熱することによって得られる二チタン酸カリウムが好ましく、この条件で製造される二チタン酸カリウムは粒子サイズの揃った短冊状粉末となり、大きな表面積が確保される。さらに、粉砕の必要がないため層状構造が破壊されることもない。
二チタン酸カリウムは、活性アルミナやゼオライトと同様に、蓄熱、放熱の過程で常に固体状態で維持されるため取り扱いが容易である。加えてトポケミカル反応のため活性アルミナやゼオライトほど蓄熱量が比表面積の影響を受け難く、見掛け比重が約2倍以上あるため体積当たりの蓄熱量が大きい。また、活性アルミナやゼオライトは、水分子が脱離、吸着することで蓄熱、放熱するため、雰囲気の水蒸気分圧や温度の変動の影響を顕著に受けるのに対し、二チタン酸カリウムはTiO5 三角両錘体からなる層と層との間におけるK+ イオンとH2 O分子の結合が強いため、特に130℃未満の放熱時には雰囲気の水蒸気分圧や温度が僅かに変動しても、ほぼ一定の速度で水和し続け、一定の放熱を続行する特徴を有する。
しかし、二チタン酸カリウムは、蓄熱、放熱の過程で常に固体状態であるため流動性がなく、熱伝導性が非常に低いため外部との熱交換が行われ難い。また、水分の吸着、脱離時に起こる蓄熱材料の膨張、収縮の流動性を向上させるためには潤滑性を高めることが重要である。
このため、蓄熱材料として、二チタン酸カリウムと黒鉛との混合物を用いるのが良い。黒鉛は六方晶でa軸方向に結晶がへき開するための潤滑性に富み、その熱伝導率は273K〜523Kの範囲で50〜230W/m・Kを有する。さらに、化学的に安定であるため二チタン酸カリウムを充填する金属容器の一つであるステンレス鋼を化学的あるいは電気化学的に腐食させる問題も発生しない。
二チタン酸カリウムと黒鉛の混合比は、特に限定しないが、蓄熱量、熱伝導率および流動性を確保するために99:1〜80:20の範囲内で調整する。
TiO5 三角両錘体からなる層と層との間へ侵入した水分子は、乾燥空気、熱風、マイクロ波加熱あるいは太陽熱によっても脱離させることが可能であり、二チタン酸カリウムは低品位廃熱の回収だけでなく緊急時の熱源あるいは再生可能エネルギーの回収など汎用性に富む蓄熱材料である。
炭酸カリウム(K2 CO3 )5.53gと酸化チタン(TiO2 ) 6.39gを秤量し、これら粉末をメノウ乳鉢でよく混合、粉砕した。得られた混合粉末を白金坩堝に入れ、マッフル炉を用いて、気温20℃、相対湿度50%、酸素分圧0.02MPaの大気下で、30℃から950℃まで10℃/minで昇温後、950℃で48h保持することで二チタン酸カリウムを合成した。二チタン酸カリウムに水分子を吸着させる操作は、合成に引き続きマッフル炉内で950℃から30℃まで3℃/minで降温後、そのまま30℃で24h放置する方法で行った。
生成した白色の繊維状粉末のX線回折を行ったところ、PDF No.13−0448(K2 Ti2 5 )に相当するピークと主に2θ=11°および22.5°付近のピークからなる物質であり、PDF No.13−0448(K2 Ti2 5 )のメインピーク強度は低下していた。ここで、2θ=11°および22.5°付近のピークは、K2 Ti2 5 がK2 Ti2 5 ・nH2 Oとなる際に結晶格子が膨張するために発生するピークである。
この生成物を気温20℃、相対湿度50%の大気下で、250℃で30min加熱した後の生成物について再びX線回折を行ったところ、PDF No.13−0448(K2 Ti2 5 )に相当するピークのみからなる物質であり、ピーク強度比も既報値通りであった。加熱後の質量減少率は15.3%であり、生成した白色の短冊状粉末はK2 Ti2 5-x ・nH2 O(n=2.6)であった。
蓄熱量の繰り返し安定性は、示差熱分析計(セイコーインスツルメント製、DSC630)を用いて測定した。K2 Ti2 5-x ・nH2 O(n=2.6)を4〜5mgセットし、気温20℃、相対湿度50%の大気導入下で、30℃から250℃まで10℃/minで昇温した後、2h保持し、続けて2℃/minで30℃まで降温した後、32h保持する工程を1サイクルとし、各サイクルにおいて30℃から250℃まで昇温する間の吸熱量を10サイクルまで測定した。
結果は表1に示す通りであり、290J/g以上の蓄熱量が安定して得られることが分かった。さらに体積当たりの蓄熱量は、740J/cm3 以上が得られた。ただし、見掛け比重は2.55を適用した。
Figure 0004628705
炭酸カリウム(K2 CO3 )5.53gと酸化チタン(TiO2 ) 6.39gを秤量し、これら粉末をメノウ乳鉢でよく混合、粉砕した。得られた混合粉末を白金坩堝に入れ、マッフル炉を用いて、気温20℃、相対湿度50%、酸素分圧0.02MPaの大気下で、30℃から1100℃まで10℃/minで昇温後、1100℃で48h保持することで二チタン酸カリウムを合成した。二チタン酸カリウムに水分子を吸着させる操作は、合成に引き続きマッフル炉内で1100℃から30℃まで3℃/minで降温後、そのまま30℃で24h放置する方法で行った。
生成した白色の塊状物をメノウ乳鉢で−100μmまで粉砕しX線回折を行ったところ、バックグランドが高く、弱いピーク強度であるがPDF No.13−0448(K2 Ti2 5 )に相当するピークと主に2θ=11°および22.5°付近のピークからなる物質であり、PDF No.13−0448(K2 Ti2 5 )のメインピーク強度は低下していた。
この生成物を気温20℃、相対湿度50%の大気下で、250℃で30min加熱した後の生成物について再びX線回折を行ったところ、バックグランドが高く、弱いピーク強度であるがPDF No.13−0448(K2 Ti2 5 )に相当するピークのみからなる物質であり、ピーク強度比も既報値通りであった。加熱後の質量減少率は10.1%であり、白色の塊状物はK2 Ti2 5-x ・nH2 O(n=1.6)であった。
蓄熱量の繰り返し安定性は、実施例1と同様に調べた。結果は表2に示す通りであり、170J/g以上の蓄熱量が安定して得られることが分かった。さらに体積当たりの蓄熱量は、420J/cm3 以上が得られた。ただし、見掛け比重は2.55を適用した。
Figure 0004628705
二チタン酸カリウムを実施例1と同様の方法で製造した。K2 Ti2 5-x 95重量部に対して天然黒鉛5重量部を計量し、混練機を使用して混合した。
この混合物を0.05MPaで直径10mm、厚さ1mmにプレス成形し、レーザーフラッシュ法で熱伝導率を測定した。このとき、天然黒鉛を混合しないK2 Ti2 5-x を0.05MPaで直径10mm、厚さ1mmにプレス成形したものについても熱伝導率を測定した。
熱伝導率は、天然黒鉛を混合しないK2 Ti2 5-x が2W/m・Kであるのに対し、K2 Ti2 5-x と天然黒鉛の混合物は15W/m・Kであった。
蓄熱量の繰り返し安定性は、示差熱分析計(セイコーインスツルメント製、DSC630)にK2 Ti2 5-x と天然黒鉛の混合物を大気中、30℃で24h保持したものを4〜5mgセットした以外は実施例1と同じ方法で測定した。
結果は表3に示す通りであり、275J/g以上の蓄熱量が安定して得られることが分かった。さらに体積当たりの蓄熱量は、688J/cm3 以上が得られた。ただし、見掛け比重は2.50を適用した。
Figure 0004628705
図1に示す反応器を二組用意した。この反応器は、ステンレス製で内容積が150mlの純水容器2と、ステンレス製で内容積が700mlの蓄熱材料容器7と、断熱剤で覆われた内容積が1000mlの断熱容器6と、中間部にバルブ12とバルブ13が配置され、純水容器2と蓄熱材料容器7を接続する直径10mmでステンレス製のパイプ5とを備えている。パイプ5のバルブ12とバルブ13の間からはステンレス製のパイプ14が分岐されており、このパイプ14に油回転真空ポンプ11が接続されている。パイプ14の途中にもバルブ15が設けられている。
一方の反応器は、純水容器2に純水50mlを入れ、蓄熱材料容器7にK2 Ti2 5-x 粉末254gを入れ、純水容器1と蓄熱材料容器7とをパイプ5で接続した。次に油回転真空ポンプ11を使用し、バルブ13を閉じバルブ12、15を開いて純水容器1内を1650Pa以下とし、バルブ12を閉じバルブ13、15を開いて蓄熱材料容器7内を1650Pa以下とした後、バルブ12、13、15を全て閉じた状態とした。
他方の反応器は、純水容器1に純水50mlを入れ、蓄熱材料容器7にK2 Ti2 5-x 95重量部に対して天然黒鉛5重量部を混合した混合物粉末254gを入れ、純水容器1と蓄熱材料容器7とをパイプ5で接続した。次に油回転真空ポンプ11を使用し、バルブ13を閉じバルブ12、15を開いて純水容器1内を1650Pa以下とし、バルブ12を閉じバルブ13、15を開いて蓄熱材料容器7内を1650Pa以下とした後、バルブ12、13、15を全て閉じた状態とした。
何れの反応器も、蓄熱材料容器7を断熱容器6に収容し、断熱容器6内に純水650mlを入れ、外部から熱の流入がないようにパイプ5の接続部まで断熱材で覆った。また、断熱容器6内の純水の温度変化を計測するために温度センサー9を取り付けた。
反応器全体を、30℃に設定した恒温器4内に設置した。
双方の反応器でそれぞれバルブ12とバルブ13を開き、純水容器1と蓄熱材料容器7を連通させた後、断熱容器6内の純水の温度変化から5min後及び10min後の回収熱量を算出した。
表4に回収熱量を示す。5min後及び10min後の何れにおいても、K2 Ti2 5-x と天然黒鉛との混合物粉末を使用した方が、天然黒鉛を混合しないK2 Ti2 5-x 粉末を使用したものより回収熱量が多く、蓄熱材料の熱伝導率が向上したことによる効果が現れた。
Figure 0004628705
回収熱量の測定に用いた反応器の構成の説明図である。
符号の説明
2 純水容器
4 恒温器
5 パイプ
6 断熱容器
7 蓄熱材料容器
9 温度センサー
11 油回転真空ポンプ
12、13、15 バルブ
14 パイプ

Claims (3)

  1. 一般式K2 Ti2 5-x ・nH2 O(0≦x≦1 、0≦n≦2.7)で表記される二チタン酸カリウムを主成分とすることを特徴とする蓄熱材料。
  2. 二チタン酸カリウムが、炭酸カリウムと酸化チタン、水酸化チタン、ルチルサンド、アナターゼ精鉱、またはチタンスラグとの混合粉末を、酸素分圧0.02MPa以上の雰囲気下において891℃以上965℃未満の温度で一定時間加熱することで得られる短冊状粉末であることを特徴とする請求項1記載の蓄熱材料。
  3. 一般式K2 Ti2 5-x ・nH2 O(0≦x≦1 、0≦n≦2.7)で表記される二チタン酸カリウムと黒鉛との混合物であることを特徴とする請求項1記載の蓄熱材料。
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