JP4627616B2 - 固形描画材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画線が複数の色を具現する固形描画材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数の色を具現する固形描画材としては種々知られており、例えば加熱軟化させた各色のクレヨンを重ね、加圧させて張り合わせたり、天然高分子あるいは合成高分子などの樹脂と顔料などからなる各色の色材を押出し、各色材が長手方向に連続層をなす多色の色芯としたり、またゲル形成剤を用いて各色材の造粒物を作成し、これを混合して加圧することにより多色のクレヨンとしている(特許文献1参照)(特許文献2参照)(特許文献3参照)。また、先に本発明者は色材が連続層及び/又は不連続層を有し、描画材の横断面がマーブル調の模様を呈する固形描画材を開発した(特許文献4参照)。上記構成とすることにより、画線に複数の色の変化が得られ、色の対比に基づく色彩感覚が楽しめ、装飾的な効果も大きくなるのである。
【0003】
【特許文献1】
特開昭57−202361号公報
【特許文献2】
特開昭60−44397号公報
【特許文献3】
特開昭63−57683号公報
【特許文献4】
特開2003−3107号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、押出しや加圧成形により作製された多色の固形描画材は、圧力のみで描画材としての形態を保持しているだけなので、全体としての強度が弱くなることは免れ得ず、また使用中に剥れるなどの単色のものでは生じ得ない問題が生じる。勿論、材料によっては優れた固着作用を有するものを用いる方法もあるが、単色のものと比べると強度的に劣化することは避けられない。即ち、固形描画材を形成する各色材の境界面における付着により形態を保持しているだけとなるのである。この問題を避けるために、例えば加熱により各色材の境界面を溶融させて融着する方法があり、この場合には互いが混じり合っているために強度の問題は解消する。さらに溶融化させた場合、加熱温度によっては境界面の融着だけでなく各色材の流動化が起こり、複雑な絡み合いが生じて剥れにくくなると同時に、多色の意外性に富んだ画線が得られるのである。ところが実際には、加熱温度が高くなると境界面を越えて色材どうしが大幅に混じり合ってしまい、多色ではあってもそれぞれがくすんだ発色となって鮮明さがなくなり、色の対比による面白さが半減してしまい、各色の色の変化も鈍くなってしまうという問題が生じる。逆に加熱温度が低くなると境界面での融着がなくなり、色材の流動化もなく、付着作用だけとなって、前記したように強度が劣化し、また使用中に剥れ易くなるという問題がある。この解決のためには、加熱温度を厳密に設定しなければならないが、例えば色や配合などの違いにより各色材の溶融温度が微妙にずれているなど、設定はきわめて難しいものとなるのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題について鋭意検討した結果なされたものであり、少なくとも着色材とゲル形成材が配合された複数の色材からなる固形描画材であって、前記固形描画材の横断面が複数の色を有し、前記色材どうしが境界面で融着された構造を有し、かつ色材中に0.1〜5重量%のチキソトロピー剤が含有され、色材間の混合防止作用を有してなり、またチキソトロピー剤としてスメクタイト粘土鉱物が好ましく、さらに固形描画材の長手方向において各色材が連続層及び/又は不連続層を形成する複数の色層となしたことを特徴とし、上記構成とすることにより、全体としての強度が向上し、各色材どうしが剥れにくく、さらには鮮やかな色の対比が得られると共に、意外性に富んだ変化を有する画線が得られる固形描画材となるのである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の固形描画材は複数の色材から構成され、前記固形描画材の横断面は複数の色を有している。この色材に用いる着色材としては、従来公知の顔料、染料であれば特に制限されるものではなく、例えば無機顔料、有機顔料、蛍光顔料、メタリック顔料、パール顔料、ガラスフレーク顔料などが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。具体的に無機顔料としてはカーボンブラック、鉄黒、弁柄、群青、マイカなどが挙げられる。また有機顔料としてはフタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系などが用いられ、例えばピグメントブルー15、ピグメントブルー15:3、ピグメントグリーン7、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー55、ピグメントイエロー14、ピグメントレッド144、ピグメントオレンジ5、ピグメントバイオレット19、ピグメントレッド122、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット123、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド254などが挙げられる。さらに酸化チタン、亜鉛華、鉛白、アルミナホワイトなどの白色顔料なども、パステル調などの色調に応じて適宜配合することができる。
【0007】
色材を構成する材料としては、着色材の他に主材としてゲル形成剤を用い、必要に応じてワックスあるいは樹脂の1種又は2種以上を用いる。ワックスとしては、例えばポリエチレンワックス、パラフィンワックス、蜜ろう、木ろう、モンタンワックス、ワセリンなど従来公知のものが挙げられ、また樹脂としてはカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどの従来公知の天然樹脂、合成樹脂が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いる。ゲル形成剤としては、従来公知のものであれば何でもよく、例えば炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩や、ジベンジリデンソルビトール類、ベンザル化ソルビット、アミノ酸系油などが挙げられる。
【0008】
上記主材のうちではゲル形成剤が好ましく、特には脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩が画線の鮮明さ、滑らかな書き味など優れた描画性を有することから好適であり、例えばミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いる。
【0009】
本発明の固形描画材は、上記材料から構成される色材どうしが、その境界面において融着された構造を有する。融着構造とするためには、例えば色材どうしを加熱により溶融状態にして融着させる方法、あるいは材料を溶剤中に溶解させた色材どうしを融着させる方法などが挙げられるが、適度な融着構造を得るためには加熱による方法が好ましい。色材どうしが融着することにより、単なる付着による結合と比べて、全体としての強度が良好となり、色材どうしが剥れにくくなるという特徴が得られるのである。
【0010】
さらに本発明の固形描画材は、各色材にチキソトロピー剤が含有されていることを特徴とする。即ち、上記の融着構造により好ましい特徴が得られるのであるが、実際に色材どうしを融着させようとすると、境界面を越えて大幅に混じり合ってしまい、色の対比が不鮮明となったり、くすんだ画線となるなどの問題が生じる。そこでチキソトロピー剤を含有させることにより、目的とする良好な多色の固形描画材が得られるのである。つまり、色材どうしを加熱などにより溶融化するときに、その境界面において融着構造として過度の混じり合いが生ぜず、わずかな混じり合いに押さえるため、剥れのない描画材となり、色の対比が鮮明でかつ意外性に富んだ画線が得られ、例えば更なる溶融化により各色材を流動化させてもこの効果は維持される。また、描画材自体の全体的な強度も単なる付着と比べて向上する。さらにチキソトロピー剤が含有されていることにより、色材の配合や色が変わっても、加熱温度など溶融化の条件を厳密に設定しなくとも目的とする固形描画材が得られるため、安定した品質のものが得られ易く、工程管理上きわめて容易となるという特徴も有する。優れた特徴が得られる理由としては、チキソトロピー剤の増粘効果およびチキソトロピー剤が各色材の境界面において互いの混じり合いを最小限に押さえ、各色材が流動化したりあるいは加熱温度が高くなってもそれ以上の混じり合いはなく、色材間の混合防止作用のもとに、適度な融着構造となって目的とする効果が顕現されたものと考えられる。
【0011】
チキソトロピー剤としては、例えば天然スメクタイト、合成スメクタイト、有機ベントナイト、無機ベントナイトなどが挙げられ、特にはコロイド性含水ケイ酸塩であるスメクタイト粘土鉱物が優れた高粘性を示し、適度の融着効果を有していて好ましい。スメクタイト粘土鉱物の種類としては、天然、合成のモンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、スチィブンサイトなどが挙げられる。チキソトロピー剤の含有量としては、固形描画材全量に対し0.1〜5重量%の範囲を用いる。0.1重量%以下だと、境界面での混じり合いが大きくなって、色材間の混合が生じて目的のものが得られず、5重量%以上では色材の粘度が大きくなって境界面での融着がなくなり、付着のみとなって色材どうしが剥れ易いなどの問題が生じる。
【0012】
上記材料以外に、保湿剤としての役割を有するエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどの多価アルコール系、また分散剤として界面活性剤、さらに増量材あるいは充填材としてタルク、クレー、シリカ、カオリン、炭酸カルシウムなどの体質材を併用してもよい。さらに必要に応じて、防腐剤や防黴剤などを適宜添加することもできる。
【0013】
本発明の固形描画材は、異なった着色材を用いた各色材が、棒状体である固形描画材の長手方向において複数の色層を構成していることが好ましい。この色層は連続層、不連続層を形成し、連続層は一本の描画材で全て消耗されるまでその色層は具現され、不連続層は同じ色層のものが突然現れたり消えたりする層であり、種類としては連続層のみのもの、不連続層のみのもの、連続層と不連続層の混じりあった混合層の3つが挙げられる。
【0014】
連続層の形状としては、例えば各色層が長手方向に沿って直線的な層で形成されたもの、各色層が絡み合った形で形成されたもの例えば螺旋状のものなどが挙げられ、各色層が連続していればどのような形状でも可能となる。不連続層の形状としては、例えば上記連続層の間に他の色のものが入ったりするなど、同じ色の層が切断された状態であったり、各色材を切片状にして積層した形状もこの範疇に入る。連続層と不連続層とが混合されている場合、例えば色材が4つのときは、長手方向の位置によっては横断面に現れる色の数は、4つのときもあれば3つあるいは2つの場合も生じる。この形状は、例えば連続層を形成する色材と不連続層を形成する切片状の複数の色材とを同じ型内に充填して溶融化したり、あるいは溶融状態のまま複数の色材を異なったノズルから同じ型内に流し込む際、色材に応じて連続あるいは断続して流し込んだり、あるいは連続した各色材を同時に型内に充填し、十分に加熱して色材を流動させることにより、連続した層に他の色材が入り込むことで得ることができる。
【0015】
本発明の固形描画材の製造方法としては、目的とする形状に応じて種々の方法が用いられる。例えばゲル形成剤、ワックスあるいは樹脂の1種又は2種以上を組み合わせて、そのまま概ね材料の融点以上に加熱、あるいは水、有機溶剤等の溶剤中にて攪拌しながら概ね溶剤の沸点以下に加熱又は加熱しないで溶解して液状物とする。次に、1種又は2種以上の着色材およびチキソトロピー剤を上記液状物中に加え、さらに必要に応じて保湿剤、体質材などを加えて攪拌したのち、得られた液状物を所定の型に充填し、冷却固化して固化物を作製する。同様にして、別の色の固化物を作製し、得られた複数の固化物を束ね、これを押出成形して芯材となし、この芯材を型内に充填して加熱溶融したのち冷却固化させて固形描画材とするか、あるいは冷却固化して得られた個々の固化物を押出成形し、得られた細径の固化物を束ねてそのまま型内に充填し、加熱溶融したのち冷却固化させて固形描画材としてもよい。他の例としては、上記各色材の溶融状態にある液状物を複数のノズルを用いて回転させながらもしくは回転しないで同時に型に流し込み、冷却固化して固形描画材としてもよい。これらの方法により、各色材間の境界面において、溶融化させても過度の混じり合いが生ぜず適度な融着構造となり、鮮やかな色の対比が得られ、かつ強度も向上した固形描画材が得られる。次に、本発明の実施例を示す。なお、「部」は重量部である。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
<サンプル1>
ステアリン酸ナトリウム15部、ピグメントイエロー55(着色材)2.5部、ピグメントグリーン7(着色材)15.5部、酸化チタン(着色材)2部、グリセリン20部、サポナイト2部、水43部とし、まず水中にステアリン酸ナトリウムおよびグリセリンを攪拌しながら、約85℃に加熱する。ステアリン酸ナトリウムが十分に溶解したのち、着色材およびサポナイトを加えて攪拌し、緑色の液状物を作製した。
<サンプル2>
ステアリン酸ナトリウム15部、ピグメントイエロー14(着色材)15部、ピグメントレッド122(着色材)15部、グリセリン20部、サポナイト2部、水33部とし、サンプル1と同様の方法にて赤色の液状物を作製した。
<サンプル3>
ステアリン酸ナトリウム15部、ピグメントブルー15:3(着色材)12部、酸化チタン(着色材)3部、グリセリン20部、サポナイト2部、水48部とし、サンプル1と同様の方法にて青色の液状物を作製した。
<サンプル4>
ステアリン酸ナトリウム15部、ピグメントイエロー14(着色材)15部、酸化チタン(着色材)2部、グリセリン20部、サポナイト2部、水46部とし、サンプル1と同様の方法にて黄色の液状物を作製した。
【0017】
以上、緑色、赤色、青色、黄色の液状物を冷却固化して、それぞれ棒状の固化物を作製した。4色の棒状物を筒状に束ね、押出成形機にて縦状に押し出して芯材を作製した。この芯材を内径8mmの型に充填させ、85℃に加熱したのち冷却固化させ、型より取り出して外径8mm、長さ40mmの固形描画材とした。得られた固形描画材は、色材が長手方向にほぼ直線状の4つの色層を構成し、その横断面は4色に分割された形状となり、境界面においては単なる付着ではなくわずかに融着が認められ、相互に大きく混じり合うことはなく、使用しても剥れは殆ど生ぜず、強度も高いものとなった。また、画線における色の対比も鮮やかなものとなった。
【0018】
(実施例2)
実施例1のサンプル1〜4を用い、溶融化された液状物のままで、4つのノズルからサンプル1、2は連続して、サンプル3、4は断続的に内径8mmの型内に流し込み、冷却固化させ型より取り出して外径8mm、長さ40mmの固形描画材とした。得られた固形描画材は、長手方向に多少うねりを有する2つの連続した色層と、2つの不連続の色層を有し、その横断面は長手方向の位置によって4色あるいは3色となった。色材の境界面においては、単なる付着ではなく、わずかな融着が認められたが、相互に大きく混じりあうことはなく、剥れも生ぜず、強度も高い。また画線における色の対比も鮮やかなものとなった。
【0019】
(比較例1)
実施例1のサンプル1〜4において、それぞれサポナイトを除去した配合を用い、実施例1と同様の方法にて固形描画材を作製した。得られた固形描画材は、実施例1と同様に長手方向にほぼ直線状の4つの色層を有し、その横断面は4色に分割された形状となったが、境界面に大幅な混じり合いが生じて、互いに溶け合う部分が多くなり、強度は高くなったが、画線における色の対比が不鮮明となり、色そのものもくすんだような色調となった。
【0020】
(比較例2)
実施例1で押し出した芯材をそのまま固形描画材とした。この固形描画材は、色材間に融着がなく付着しているだけなので、画線における色の対比は鮮明であるものの、剥離し易く、全体的な強度も弱いものとなった。
【0021】
(比較例3)
実施例1のサンプル1〜4において、それぞれサポナイトを除去した配合を用い、実施例2と同様の方法にて固形描画材を作製した。この固形描画材は、4つの色材が大きく混ざり合った状態となってしまい、多色描画材としての特徴を有していない。
【0022】
【発明の効果】
本発明の固形描画材は、色材どうしの境界面において大幅に混じり合うこともなく、適度な融着構造を有し、そのため画線における色の対比がきわめて鮮やかなものとなり、さらに単なる付着ではないため使用中に剥れも生ぜず、また全体的な強度も向上し、常に安定した品質のものが得られるという特徴も有する。
Claims (3)
- 少なくとも着色材とゲル形成剤が配合された複数の色材からなる固形描画材であって、前記固形描画材の横断面が複数の色を有し、前記色材どうしが境界面で融着された構造を有し、かつ色材中に0.1〜5重量%のチキソトロピー剤が含有され、色材間の混合防止作用を有することを特徴とする固形描画材。
- チキソトロピー剤がスメクタイト粘土鉱物であることを特徴とする請求項1記載の固形描画材。
- 複数の色材が、固形描画材の長手方向において連続層及び/又は不連続層を形成する複数の色層となしたことを特徴とする請求項1又は2記載の固形描画材。
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