以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1〜図6は、本願発明に係る穿刺装置に適用すると好適な穿刺用ユニットの一例を示している。
図1および図2によく表われているように、穿刺用ユニットUは、ケース1、ランセット2、キャップ29、センサホルダ3、ならびに複数の第1および第2の係合用突起19A,19Bを備えている。
ケース1は、たとえば合成樹脂製であり、第1および第2の端部10a,10bに開口部12A,12Bがそれぞれ形成された略円筒状の筒状部10と、この筒状部10内に設けられた区画壁11とを有している。この区画壁11により、ケース1の内部は、第1および第2の室18A,18Bに区画されている。第1の室18A内には、ランセット2、キャップ29、およびセンサホルダ3が配されている一方、第2の室18B内には、第1および第2の係合用突起19A,19Bが設けられている。
ケース1の第1および第2の端部10a,10bの内周には、後述するように、このケース1を穿刺装置Aのハウジング4の先端部に外嵌するときにこのケース1の回転止めの役割を果たす凸部13A,13Bが形成されている。開口部12Aは蓋材としてのフィルム14によって塞がれており、第1の室18A内は密封されている。フィルム14としては、たとえばアルミ箔のフィルムあるいはアルミ箔のラミネートフィルムが用いられている。
図3によく表われているように、ランセット2は、合成樹脂製のボディ部20と、このボディ部20に保持されて先端部がこのボディ部20から突出した金属製の針21とを有している。ボディ部20は、後述する穿刺装置Aのランセットホルダ5への装着を適切に行なうことが可能な形状に形成されており、たとえばその外周面には、針21と同方向に延びる複数条のリブ22や凹部23が形成されている。ボディ部20の下部外周には、係合用段部24も形成されている。この係合用段部24は、ランセット2をランセットホルダ5から取り外すときに利用される部分であり、図3に示すランセット2の姿勢において、上向きの略水平な面24aと、下向きの傾斜した面24bとを有している。この係合用段部24は、本実施形態においては、ボディ部20の全周にわたって連続して形成されたフランジ状とされているが、本願発明はこれに代えて、たとえばボディ部20の周方向において間隔を隔てて並んだ複数の凸状に形成されていてもかまわない。
キャップ29は、ランセット2の針21を覆うようにボディ部20と一体的に樹脂成形され、かつボディ部20の先端側(下端側)において針21と同方向に延びている。キャップ29とボディ部20との境界部分28は、これらを比較的容易に分離することができるように括れており、他の部分よりも小径とされている。後述する穿刺装置Aにおいては、ボディ部20がキャップ29に相対して回転させられることにより、境界部分28を捩じって破断させるようになっている。
キャップ29の下端部には、孔部29aが形成されており、図6に示すように、この孔部29aは、ケース1の区画壁11に突設されている突起15に嵌合可能である。この嵌合により、キャップ29はケース1内において起立保持されている。むろん、上記構造とは反対に、ケース1の区画壁11に凹部を形成するとともに、キャップ29の底部にその凹部に嵌入する突起を形成した構成とすることもできる。キャップ29は、接着剤などを利用してケース1に接着されている。このキャップ29およびケース1は、ランセット2を支持しており、これらキャップ29やケース1は、本願発明でいう支持部材の具体例に相当している。キャップ29とケース1とを一体に樹脂成形することも可能である。ランセット2の針21は、ケース1内に組み込む前の段階において、γ線照射などによって予め滅菌処理されている。好ましくは、ケース1の第1の室18A内には、後述するセンサSの品質保護を図るのに役立つ乾燥剤(図示略)も収容されている。
センサホルダ3は、本明細書いう分析用部品の一例に相当するものである。このセンサホルダ3は、合成樹脂製であり、図4によく表われているように、断面円弧状の側壁部31と、この側壁部31に繋がった本体壁部32とを有している。側壁部31には、このセンサホルダ3が後述する穿刺装置Aに装着されているときにこのセンサホルダ3を取り外すのに利用される係合用段部34が形成されている。この係合用段部34は、図4に示したセンサホルダ3の姿勢において、上向きの略水平な面34aと、下向きの傾斜した面34bとを有している。センサホルダ3の本体壁部32の底面部分は、たとえば傾斜状に形成されており、この部分にセンサSが接着されている。
センサSは、チップ状であり、たとえば図5(a),(b)に示すような構成を有している。このセンサSは、基板390の表面に、血液中のグルコースと一定の反応(たとえば酸化反応)を生じる酵素を含有する試薬39aと、その反応度合いを電気的に検出するための一対の電極39bとが設けられた構成を有している。基板390上には、間隔を隔てて並んだ一対のスペーサ391およびこれら一対のスペーサ391を覆うカバー392も積層して設けられており、これらによってキャピラリ393が形成されている。基板390、各スペーサ391、およびカバー392には、血液の導入口となる凹部394が一連に形成されている。この凹部394内に血液が付着すると、この血液は毛細管現象によってキャピラリ393内を進行し、試薬39aに導かれるようになっている。
図4において、センサホルダ3の本体壁部32には、一対の貫通孔32aと、一対の保持用壁部32bとが形成されている。一対の貫通孔32aは、後述する穿刺装置Aの一対の測定プローブ62を挿通させることによってこれらの測定プローブ62をセンサSの一対の電極39bに接触させるための部分である。一対の保持用壁部32bは、キャップ29の下部29bに対してその両側から挟み付けるように外嵌可能である。キャップ29の下部29bはたとえば円柱状であるのに対し、一対の保持用壁部32bは、その外周面に対応した略円弧状に湾曲した形状を有している。図1および図2に示すように、センサホルダ3は、一対の保持用壁部32bがキャップ29の下部に外嵌していることにより、キャップ29を介してケース1内に組み付けられている。ただし、このセンサホルダ3は、その上方にスライドしてキャップ29から離脱可能となっている。
複数の第1および第2の係合用突起19A,19Bは、本願発明でいう第1および第2の係合手段のそれぞれの一例に相当するものである。本実施形態においては、第1の係合用突起19Aが複数設けられているのに対し、第2の係合用突起19Bは1つだけ設けられた構成とされているが、本願発明はこれに限定されない。これらの具体的な数は、適宜に変更することが可能である。これら第1および第2の係合用突起19A,19Bは、いずれも区画壁11に繋がるようにしてケース1と一体的に樹脂成形されており、筒状部10の軸長方向に延びている。ただし、これらは筒状部10の軸長方向と交差する方向に弾性復元力をもって撓み変形可能である。また、それらの先端部には、上記軸長方向と交差する方向に突出した凸状部19a,19bが形成されている。
第1の係合用突起19Aは、図18を参照して後述するように、ケース1を穿刺装置Aの所定部分に嵌合させたときには、穿刺装置Aの各部との不当な干渉を生じることなく、穿刺装置Aに保持されているランセット2の係合用段部24の面24aに凸状部19aが当接して係合する配置およびサイズとされている。これに対し、第2の係合用突起19Bは、穿刺装置Aに保持されているセンサホルダ3の係合用段部34の面34aに凸状部19bが当接して係合するような配置およびサイズとなっている。
図7〜図19は、本願発明に係る穿刺装置の一例およびこれに関連する事項を示している。
図7によく表われているように、本実施形態の穿刺装置Aは、ハウジング4、このハウジング4内に配されたランセットホルダ5、ラッチ用部材59、ストッパ機構部79、およびその他の後述する各部材を具備して構成されている。
ハウジング4は、たとえばその先端部、中間部、および後端部を構成する3つのスリーブ40a〜40cを一連に連結することにより構成されており、外部ケース70に固定されている。スリーブ40aの先端部(下端部)は、人体の皮膚に当接させるための部分であり、開口部41を形成している。図11および図18に示すように、このスリーブ40aには、穿刺用ユニットUのケース1を第1および第2の端部10a,10bのいずれの側からもスライド嵌合させることが可能となっている。このスリーブ40aの外面には、ケース1の凸部13A、13Bが嵌入可能な凹溝42がこのスリーブ40aの軸長方向に延びて形成されており、ケース1をスリーブ40aに外嵌させるときにはケース1が回転しないようになっている。この穿刺装置Aにおいては、穿刺用ユニットUのランセット2およびセンサホルダ3をこの穿刺装置Aに装着するとき、およびこれら装着されたランセット2およびセンサホルダ3を取り外すときには、ケース1をスリーブ40aにスライド嵌合させるようになっている。したがって、このことにより、ケース1内の所定部分と穿刺装置Aのそれに対応する部分との正確な位置合わせが可能となる。
図8によく表われているように、スリーブ40a内には、保持部6が設けられている。この保持部6は、穿刺用ユニットUのセンサホルダ3を保持するための部分であり、空隙部60aを形成する第1および第2の壁部60b,60cを有する合成樹脂製のアタッチメント60がスリーブ40aに固定して取り付けられていることにより構成されている。空隙部60aは、図12および図13に示すように、穿刺用ユニットUのセンサホルダ3の側壁部31をその下方から進入させるための部分である。保持部6には、バネ61が設けられており、空隙部60a内にセンサホルダ3の側壁部31が進入したときにはこのバネ61が側壁部31を第2の壁部60c寄り、すなわちスリーブ40aの中心寄りに向けて押圧する弾発力Fを発揮し、このことによりセンサホルダ3を保持できるようになっている。もちろん、センサホルダ3の保持を確実化するため、センサホルダ3および保持部6に係脱自在な係合手段をさらに設けるといった構成を採用することもできる。
図13によく表われているように、空隙部60aの幅s1は、センサホルダ3の側壁部31の厚みt1よりも大きくされている。このことにより、センサホルダ3がケース1内に組み付けられたまま、その側壁部31が空隙部60a内に進入したときには、この側壁部31と第2の壁部60cとの間に隙間60a'が発生するようになっている。その一方、図14に示すように、センサホルダ3とキャップ29とが分離した状態では、バネ61の弾発力Fによってセンサホルダ3の側壁部31が第2の壁部60cの一側面に押し当てられるようになっている。
図7および図8において、保持部6の第2の壁部60cには、一対の測定プローブ62が保持されている。これら一対の測定プローブ62は、センサSの一対の電極39bに接触させるためのものであり、ハウジング4の軸長方向に延びている。各測定プローブ62の先端部62aは、伸縮自在であり、センサホルダ3が穿刺装置Aに装着されていないときには適当なバネ(図示略)の弾発力によって下方に伸びている。これに対し、図12〜図14に示すように、保持部6にセンサホルダ3が装着されるときには、先端部62aは、センサSによって上方に押されて収縮するように構成されている。図面においては省略しているが、外部ケース70内の適所には、一対の測定プローブ62と電気的に接続された制御回路が設けられている。この制御回路は、たとえばCPUとこれに付属するメモリなどから構成されており、一対の測定プローブ62を介して検出される電流値に基づいて試薬39aに導入された血液中のグルコース濃度の算出を行なう。
ランセットホルダ5は、ランセット2を保持して往復動する部材であり、本願発明でいう可動部材の一例に相当する。このランセットホルダ5は、スリーブ40bに対し、回転可能かつその軸長方向にスライド可能に嵌入している。このランセットホルダ5の下端部には、凹部50が形成されており、この凹部50にランセット2のボディ部20を押し込むことによって、このランセットホルダ5にランセット2を嵌合保持させることができるようになっている。このようなランセット2の嵌合保持を確実に行なわせるための手段としては、たとえばランセットホルダ5の下端部にその軸長方向に延びる1または複数のスリットを形成するなどして、このランセットホルダ5の下端部をその半径方向に拡縮変形可能とし、凹部50にボディ部20が嵌入されたときにはこのボディ部20をランセットホルダ5の下端部が適度な弾発力をもって締めつけるようにする手段を用いることができる。また、これとは異なる手段としては、ランセットホルダ5に、ボディ部20の凹部23に係入して引っ掛かりを生じる部分を設けておき、その引っ掛かり作用によってボディ部20が凹部50から容易に抜け外れないようにするといった手段を採用することもできる。もちろん、これら以外の手段を用いることもできる。
ランセットホルダ5の凹部50内には、ボディ部20の複数のリブ22が嵌入可能な複数の凹溝が形成されている。このことにより、凹部50内にランセット2のボディ部20が嵌入したときには、このボディ部20とランセットホルダ5との相対回転が規制されるようになっている。図9に示すように、ランセットホルダ5の頭部51の周面には複数の突起52が等角度間隔で設けられており、これらの突起52は、スリーブ40bの内壁面に形成された複数条ずつの第1および第2のガイド溝43A,43Bに嵌入してガイドされるようになっている。
第1のガイド溝43Aは、このランセットホルダ5が穿刺用ユニットUのランセット2によって上方に押し込まれるときにこのランセットホルダ5を回転させるための溝であり、スリーブ40bの軸長方向に対して傾斜している。これに対し、第2のガイド溝43Bは、ランセット2を人体の皮膚に突き刺すようにランセット2およびランセットホルダ5をハウジング4の先端部に向けて前進させるときにこれらの直進ガイドを行なうための溝であり、スリーブ40bの軸長方向に直線状に延びている。これら複数ずつの第1および第2のガイド溝43A,43Bの一部分を平面的に展開すると、図10(a)〜(e)に示すような形状であり、これらは互いに繋がっている(同図においては、第1および第2のガイド溝43A,43Bの周辺部分にクロスハッチングを入れている)。ランセットホルダ5がハウジング4の軸長方向に移動するときには突起52が第1および第2のガイド溝43A,43Bに沿って移動するが、その具体的な内容については後述する。
図7および図8に示すように、ラッチ用部材59は、ランセットホルダ5の上部に連結され、かつハウジング4内にスライド可能に収容されている。ラッチ用部材59の下端部にはブッシュ58が回転不能に嵌入しているとともに、このブッシュ58内には、ランセットホルダ5の上面部に突設された複数の突起53が回転可能に挿通している。このことにより、ランセットホルダ5は回転可能であるのに対し、ラッチ用部材59はそれに伴って回転しないようになっている。各突起53の上端は、ブッシュ58の上端部に対して抜け止め状態に係止しており、このことによりランセットホルダ5とラッチ用部材59との連結が図られている。
ラッチ用部材59の上部には、一対のラッチ爪59aが形成されている。これら一対のラッチ爪59aは、スリーブ40cに設けられた一対の切り欠き孔44の各一端縁に係止させるためのものであり、後述するように、ランセットホルダ5およびラッチ用部材59が穿刺用ユニットUのランセット2によって上方に押し込まれることにより上記係止がなされる。スリーブ40cの上部には、ラッチ解除用のプッシャ71と、これに連結された操作用キャップ72とが装着されている。また、プッシャ71とラッチ用部材59の中間壁部59bとの間には、バネ73が設けられている。このバネ73は、たとえば圧縮コイルバネである。操作用キャップ72は、スリーブ40cに対してその軸長方向にスライド可能であり、バネ73を圧縮させながらこの操作用キャップ72を押し下げると、これに伴ってプッシャ71も下降し、ラッチ爪59aを押圧するようになっている。このことにより、図16に示すように、切り欠き孔44の一端縁からラッチ爪59aを強制的に外し、圧縮されたバネ73の弾発力によってラッチ用部材59およびランセットホルダ5を下方に前進させることができる。ハウジング4内には、ランセットホルダ5およびラッチ用部材59が前進した後にこれらを後退させるリターン用バネ74も設けられている。
図7において、ストッパ機構部79は、ストッパ部材79aと、このストッパ部材79aをハウジング4の軸長方向と交差する矢印N6方向に往復動させる駆動部79bとを備えている。駆動部79bは、たとえば電磁力などを利用した比較的小型のアクチュータを利用して構成されている。ストッパ部材79aは、その先端部がハウジング4の周壁に設けられた孔部49を通過してハウジング4の外部からその内部に前進することによりハウジング4内のラッチ用部材59の往復移動経路途中に出現する動作と、ハウジング4の外部寄りに移動して上記往復移動経路から退避する動作とが可能である。ストッパ部材79aが上記往復移動経路に出現する位置は、図7に示したようにラッチ用部材59およびランセットホルダ5が下降前進している場合に、ラッチ用部材59の上端よりも上方であって、かつハウジング4の一対の切り欠き孔44の下端縁よりも下方の位置である。このストッパ部材79aにラッチ用部材59の上端が当接すると、このラッチ用部材59のそれ以上の上昇が阻止されることとなる。
次に、上記した穿刺用ユニットUおよび穿刺装置Aの使用例ならびに作用について説明する。
穿刺用ユニットUは、図1および図2に示したように、その使用前においてはフィルム14によって第1の室18A内が密封された状態にあるために、センサSの試薬39aが湿気などに晒されるといったことはなく、短期間で品質劣化をきたさないようにすることができる。ランセット2の針21は、キャップ29によって覆われており、しかもこのキャップ29はランセット2のボディ部20と一体形成されたものであるから、優れた密封性が得られ、ランセット2をケース1に組み込む以前の段階から、その滅菌状態を適切に維持することができる。
穿刺用ユニットUは、ケース1内にキャップ29を備えたランセット2を組み付けた後に、センサホルダ3をキャップ29に組み付け、その後フィルム14によってケース1の開口部12Aを塞ぐことにより、容易に製造することができる。とくに、ランセット2の組み付けはキャップ29の孔部29aをケース1の突起15に嵌合させることにより行なうことができるとともに、センサホルダ3の組み付けは一対の保持用壁部32bをキャップ29に外嵌させることにより行なうことができるため、穿刺用ユニットUの製造は一層容易となり、製造コストを廉価にすることができる。また、この穿刺用ユニットUにおいては、ランセット2やセンサホルダ3をケース1内において支持させるための特殊な専用部品を用いるといった必要もないため、全体の構造が簡素となり、このことによっても穿刺用ユニットUの製造コストを廉価にすることができる。
穿刺用ユニットUを使用するには、フィルム14を破断または剥離するなどしてケース1の開口部12Aを開放させた後に、図11に示すように、ケース1の第1の端部10a寄りの部分を穿刺装置Aのスリーブ40aに外嵌させる。この操作により、ランセット2のボディ部20をランセットホルダ5の凹部50に嵌入させてランセットホルダ5に保持させることができる。このランセット2の装着時においては、ストッパ部材79aをハウジング4内から退避させておく。ケース1を矢印N1に示す上方に押し上げていくと、ランセット2がバネ73の弾発力に抗してランセットホルダ5を上方に押し上げる。その際、ランセットホルダ5とランセット2のボディ部20とが矢印N2方向に回転し、この回転作用によってランセット2とキャップ29との境界部分28が捩じられて破断する。
より具体的には、図10(a)に示すように、ランセットホルダ5の突起52は、当初は第2のガイド溝43B内に位置しているものの、まず同図(b)の矢印N3に示すように、第1のガイド溝43A寄りに変移する。この変移は、たとえばランセット2のボディ部20の各リブ22の先端部分とランセットホルダ5の凹部50内の各凹溝とのいずれか一方を螺旋状に傾斜させておき、凹部50内にボディ部20が嵌入したときにボディ部20がランセットホルダ5を僅かな角度だけ上記矢印N3方向に回転させる力が発生するように構成しておくことにより行なわせることができる。次いで、ランセットホルダ5がランセット2によって上方へ押し上げられていくと、突起52は、図10(c),(d)に示すように、第1のガイド溝43A内を移動する。この作用により、ランセットホルダ5が回転し、またこれに伴ってランセット2のボディ部20も回転する。一方、穿刺用ユニットUのキャップ29は、ケース1に固定されているため回転しない。したがって、ランセット2のボディ部20とキャップ29との境界部分28は捩じられて破断することとなる。
一方、ケース1を適当量だけ上方に押し上げると、図12に示すように、ラッチ用部材59も上昇し、各ラッチ爪59aが各切り欠き孔44の一端縁に係止する。これにより、ラッチ用部材59はバネ73を圧縮させた状態でラッチされる。また、ケース1が上方に押し上げられると、図13に示したように、センサホルダ3の側壁部31が保持部6の空隙部60a内に進入し、バネ61の弾発力Fを受ける。センサホルダ3は、キャップ29に支持されている状態では弾発力Fに対して突っ張った姿勢を維持するため、第2の壁部60cと側壁部31との間には隙間60a'が形成されたままとなる。各測定プローブ62の先端部62aは、センサSによって上方へ押し上げられるが、その押し上げに対する反発力を発揮しつつセンサSの電極39bに接触する。したがって、各測定プローブ62と各電極39bとの電気的な接続は確実化される。
上記したケース1の押し上げ動作の完了後には、図14に示すように、ケース1をスリーブ40aから下方に抜く。既述したとおり、ランセット2のボディ部20とキャップ29との境界部分28は捩じりにより破断しているために、ランセット2とキャップ29とは適切に分離することとなる。この分離により、ランセット2については針21を露出させた状態でランセットホルダ5に保持させておくことができるとともに、キャップ29についてはケース1に組み付けたままにすることができる。一方、センサホルダ3については、保持部6に保持され、キャップ29とは分離することとなる。このように、この穿刺用ユニットUおよび穿刺装置Aによれば、ケース1をスリーブ40aに適当量だけスライド外嵌させてから抜き外す操作を行なうだけで、ランセットホルダ5へのランセット2の装着、ラッチ用部材59のラッチ、ランセット2とキャップ29との分離、および保持部6へのセンサホルダ3の装着を行なうことができる。
ケース1がスリーブ40aから抜き外されることにより、センサホルダ3からキャップ29が分離したときには、このセンサホルダ3の側壁部31は、バネ61の弾発力Fによって第2の壁部60cに押し付けられる。すなわち、センサホルダ3は、図13に示した隙間60a'の寸法分だけスリーブ40aの中心寄り(図14の矢印N4方向)に変移することとなる。このようにセンサホルダ3が変移すると、その分だけセンサSをランセット2による穿刺位置に接近させることが可能となり、後述するような利点が得られる。
上記した手順によりランセット2およびセンサホルダ3を穿刺装置Aに装着した後には、図15に示すように、穿刺装置Aのスリーブ40aの先端部分を、穿刺対象となる人体の皮膚99に当接させる。この状態において、操作用キャップ72を押圧し、プッシャ71を前進させる。すると、図16に示すように、各ラッチ爪59aが各切り欠き孔44の一端縁から外れ、バネ73の弾発力によってラッチ用部材59およびランセットホルダ5が下降前進し、ランセット2の針21が皮膚99に突き刺さる。その際、ランセット2のボディ部20の一部をセンサホルダ3の本体壁部32に当接させることにより、針21が皮膚99に対して必要以上に深く突き刺さらないようにすることができる。ランセットホルダ5の下降前進時には、図10(e)に示すように、突起52が第2のガイド溝43Bに沿って移動するために、ランセットホルダ5を適切に直進させることが可能である。また、この直進動作により、突起52を同図(a)に示した初期のポジションと同様なポジションに復帰させることが可能となり、その後の繰り返し動作が可能となる。
針21が皮膚99に突き刺さった直後には、リターン用バネ74の弾発力によってラッチ用部材59やランセットホルダ5は即座に適当量だけ後退し、針21は皮膚99から抜き去られる。好ましくは、穿刺装置Aには、ポンプまたはポンプ機構を具備させておき、穿刺を行なうときにスリーブ40a内に負圧を生じさせるように構成しておく。このようにすると、皮膚99からの出血を負圧により促進することができるために、ランセット2の針21の突き刺し量を少なくし、皮膚99のダメージを少なくするのに有利となる。
皮膚99から出た血液は、センサSに付着し、センサSの試薬39aに導かれる。図14を参照して説明したとおり、センサホルダ3については、スリーブ40aの中心寄り、すなわち穿刺位置に接近させているために、血液をセンサSの所定箇所に付着させることが確実化される。
センサホルダ3をスリーブ40aの中心寄りに配置させる手段としては、たとえば図1および図2に示した穿刺用ユニットUの構成において、当初からセンサホルダ3をケース1の中心寄りに装着しておくことが考えられる。ところが、穿刺用ユニットUはセンサホルダ3をキャップ29に支持させた構造を有しているために、センサホルダ3をケース1の中心寄りに配置しようとすれば、キャップ29を薄肉にする必要がある。その一方、キャップ29を余りに薄肉にすると、その機械的強度が不足するなどして、キャップ29にセンサホルダ3を確実に支持させることが困難となる虞れがある。これに対し、本実施形態のように、センサホルダ3が穿刺装置Aに装着されたときにスリーブ40aの中心寄りに変移する構成であれば、上記したような虞れを適切に解消することができる。
上記した穿刺作業がなされると、穿刺装置Aに組み込まれている既述の制御回路によって血液中のグルコース濃度が算出される。穿刺装置Aにおいては、その算出値をたとえば液晶画面などの表示部(図示略)を利用して表示させるといった構成を採用することができる。
その後は、使用済みとなったランセット2およびセンサホルダ3を穿刺装置Aから取り外す。この作業は、図17に示すように、ケース1をランセット2の装着時とは反対向きにして、ケース1の第2の端部10b寄りの部分をスリーブ40aに外嵌させることにより行なう。ケース1を外嵌させると、第1および第2の係合用突起19A,19Bがスリーブ40a内に進入する。この進入時において、第1および第2の係合用突起19A,19Bの先端部が係合用段部24,34の下向きの面24b,34bに接触したときには、これら第1および第2の係合用突起19A,19Bは弾性力をもって撓み、それらの面24b,34bを簡単に乗り越える。このため、図18に示すように、凸状部19a,19bを係合用段部24,34よりも高い位置まで到達させて、それら係合用段部24,34に係合させることができる。面24b,34bが傾斜面であることにより、上記係合動作をより円滑に行なわせることができる。また、第1および第2の係合用突起19A,19Bの上端を図示されているように傾斜面にしておけば、上記係合を円滑にするのにより好ましいものとなる。
上記した係合を行なわせる際には、ランセットホルダ5が第1の係合用突起19Aから上向きの押圧力を一時的に受ける。これに対し、図17に示すように、上記係合を行なわせる前には、ストッパ部材79aをハウジング4の内部に突出させておく。このようにしておけば、ラッチ用部材59の上昇が阻止されるために、ラッチ用部材59が不必要にラッチされないようにすることができる。また、このようにラッチ用部材59の上昇を阻止しておけば、第1の係合用突起19Aを上昇させていくときにランセットホルダ5を一定の高さに維持させておくことができるために、係合用段部24に対する第1の係合用突起19Aの係合動作が確実化される。
次いで、図19に示すように、ケース1をハウジング4からその下方に抜き外す。その際、第1および第2の係合用突起19A,19Bの凸状部19a,19bは、係合用段部24,34の上向きの面24a,34aに接触して係合しているために、それらの係合は確実なものとなり、それらの係合が容易に解除されないようにすることができる。したがって、ランセット2およびセンサホルダ3をランセットホルダ5および保持部6から適切に取り外すことができる。
上記したランセット2およびセンサホルダ3の取り外し作業は、ランセット2およびセンサホルダ3の装着作業と同様に、ケース1をハウジング4の先端部に嵌脱させるだけで行なえることとなる。したがって、その作業は容易である。また、使用済みのランセット2およびセンサホルダ3は、ケース1内に収容することができるために、ユーザがこれらランセット2やセンサホルダ3に手を触れる必要は無い。したがって、それらの廃棄処理の容易化および適正化も図ることができる。ケース1内には、キャップ29も収容されたままであるから、これらを一括して簡単に廃棄処分に付すことができる。
図20〜図24は、本願発明の他の実施形態を示している。これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図20(a)に示す穿刺用ユニットUaにおいては、ケース1Aが一端開口状に形成されており、このケース1Aの内部を区画することなく、ランセット2、キャップ29、センサホルダ3、ならびに第1および第2の係合用突起19A,19Bがケース1A内に設けられている。ただし、ケース1Aは、同図(b)に示すように、たとえば略長円形状に形成されており、ランセット2、キャップ29、およびセンサホルダ3は、ケース1Aの長手方向一端寄りに設けられているとともに、第1および第2の係合用突起19A,19Bは、ケース1Aの長手方向他端寄りに設けられている。ケース1Aの長手方向両端の円弧状部分の内面には、凸状部13A,13Bが形成されている。
このような構成によれば、ケース1Aの長手方向一端寄り部分を穿刺装置のハウジングに嵌合させることにより、ランセット2およびセンサホルダ3を穿刺装置に装着することができる。また、ケース1Aの長手方向他端寄り部分を穿刺装置のハウジングに嵌合させれば、穿刺装置からランセット2およびセンサホルダ3を取り外すことができる。ケース1Aを上記ハウジングに嵌合させるときには、凸状部13A,13Bのいずれか一方を上記ハウジングに形成された凹溝に嵌合させることによってケース1Aが回転しないようにすることもできる。したがって、ケース1A内の各部をそれに対応する穿刺装置の所定部分に正確に導くことが可能である。本願発明においては、本実施形態の穿刺用ユニットUaのように、ケース内の1つの室内に所定の部品または部分を設けた構成にしてもかまわない。このようにすれば、ランセットの装着後に穿刺装置からランセットを取り外すときに、ケースを反転させる必要がない。
図21に示す穿刺用ユニットUbにおいては、先の実施形態のセンサホルダ3および第2の係合用突起19Bに相当する部品または部分が設けられておらず、ケース1内には、ランセット2、キャップ29、および1または複数の第1の係合用突起19Aが設けられている。穿刺装置としては、穿刺用部材の針をたとえば人体の皮膚に突き刺すことによって出血を生じさせる機能のみを有するシンプルな構造のものに製作されたものがある。したがって、本願発明においては、そのような構成を有する穿刺装置に対応すべく、本実施形態の穿刺用ユニットUbのようにセンサホルダ3などの分析用部品や、その着脱機能を有しないものとして構成することもできる。
図22(a)に示す穿刺用ユニットUcにおいては、複数の第1の係合用突起19Aがキャップ29の周囲を取り囲むようにして、キャップ29の近傍に設けられている。ランセット2を穿刺装置に装着した後に、このランセット2を取り外すときには、同図(b)に示すように、凸部15を破断させるなどしてキャップ29をケース1から離脱させる。このようにすれば、第1の係合用突起19Aの周囲にキャップ29が存在しない構成に設定することができるために、第1の係合用突起19Aを利用して穿刺装置からランセット2を取り外す作業を適切に行なうことが可能となる。このような構成の穿刺用ユニットUcによれば、キャップ29およびランセット2に対して第1の係合用突起19Aを接近させて設けることができる分だけ、先の穿刺用ユニットU,Uaと比較して、ケースのサイズを小さくすることができる。
図23(a)に示す穿刺用部材の取り外し具Bは、凸状部13Aを有するケース1Bと、このケース1B内に設けられた第1および第2の係合用突起19A,19Bを有している。ケース1B内には、ランセット2やセンサホルダ3に相当する部材は組み込まれていない。このような構成の取り外し具Bは、たとえば同図(b)に示すような穿刺用ユニットUdとは別個に準備され、穿刺用ユニットUdを用いて穿刺装置に装着されたランセット2およびセンサホルダ3を穿刺装置から取り外すのに好適に利用することができる。その取り外しの際には、図1および図2に示した穿刺用ユニットUについて説明したのと同様な効果が得られる。このように、本願発明においては、穿刺装置から所定の部品を取り外すためにのみ用いられる取り外し具として構成することもできる。また、取り外し具として構成する場合、第2の係合用突起を具備しないものとして、穿刺用部材の取り外し機能のみを有するものとして構成することもできる。
図24は、ランセット2に設けられる係合用段部24とこれに係合させるための第1の係合用突起19Aの他の構成例を示している。同図(a)においては、ランセット2の係合用段部24が凹状に形成されており、かつ第1の係合用突起19Aの凸状部19aはその凹状部分に係入可能な構成とされている。同図(b)においては、ランセット2の係合用段部24が凸状とされ、かつ第1の係合用突起19Aの先端部には、その凸状部分に嵌合可能な凹状部19a'が形成された構成とされている。同図(c)においては、ランセット2の係合用段部24が複数の凹凸部を備えた形状とされ、かつ第1の係合用突起19Aの先端部はそれに対応した複数の凹凸部を備えた構成とされている。このように、本願発明においては、穿刺用部材に設けられる係合用段部の具体的な形状や数、ならびにその係合用段部に係合させるための係合用突起の具体的な形状は、適宜に変更することができる。本願発明でいう第1の係合手段は、穿刺装置のハウジング内にその開口部から挿入されたときに、穿刺用部材のうち、上記ハウジングの後部方向を向く面に係合可能な構成を有していればよい。
本願発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本願発明に係る穿刺装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
穿刺用ユニットの支持部材は、穿刺用部材の針を覆うキャップを有しないものとして、あるいは一端または両端が開口したケース状の形態を有しないものとして構成することもできる。穿刺用部材としては、上記実施形態のランセットとは異なる構造のものを用いることができる。
本願発明に係る穿刺装置は、血液中のグルコース濃度の測定に用いられるものに限定されない。それ以外の種々の測定、分析用途に利用することが可能である。分析用部品としては、試薬を備えたセンサが装着されたセンサホルダ以外として、たとえば適当な基板上に試薬が具備されたセンサ単品、あるいは試験紙そのものを用いることもできる。
本願発明に係る穿刺装置においては、ストッパ部材を動作させるための専用の駆動部を有しない構成にしてもよい。たとえば、ストッパ部材をユーザが手で動かすことができるようにし、ストッパ部材のポジションの切り替えをユーザが行なうようにしてもかまわない。また、本願発明においては、穿刺用部材が装着される可動部材(ランセットホルダ)に対してストッパ部材を直接当接させることによってその後退動作を阻止する構成にすることもできる。