JP4620609B2 - 鋼材の応力−歪み関係の予測方法 - Google Patents
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Description
図3は、Type-Aについて、応力−歪み関係の実測値(波線で表示)を折れ線(直線で表示)で近似した一例である。鋼材に応力(Stress)をかけると弾性変形によって歪み(Strain)が生じ、さらに応力を増加させ、降伏応力(σy)に達すると、上降伏点(降伏伸びが始まる点)で降伏する。降伏後は、塑性変形して、その後、引張強度TSに至る。ただし、ここでは、上降伏点で降伏後にいったん下降伏点(降伏伸びが終了する点)まで応力が低下(このときの歪みX1)した後、歪みX3で引張強度TSに至っており、応力と歪みの関係は直線的ではない。
・第1の点(降伏伸びが始まる点):(σy/E,σy)、
・第2の点(降伏伸びが終了する点):(X1,σy)、
・第3の点(降伏応力と引張強度の間の任意の点):(X1+X2,σ2A)、
・第4の点(引張強度に到達する点):(X3,TS)
ここで、σyは降伏応力、Eは縦弾性係数、X1は降伏伸びが終了する点の歪み、X2は降伏応力と引張強度の間の任意の点の歪み、X3は引張強度に到達する点の歪み、σ2Aは降伏応力と引張強度の間の任意の点の応力、そして、TSは材料の引張強度である。
図4は、Type-Bについて、応力−歪み関係の実測値(波線で表示)を折れ線(直線で表示)で近似した一例である。鋼材に応力(Stress)をかけると弾性変形によって歪み(Strain)が生じ、さらに応力を増加させ、降伏応力(σy)に達すると、降伏点で降伏する。降伏後は塑性変形して、その後、引張強度TSに至る。ただし、ここでは、降伏後に歪みX3で引張強度TSに至るまでの応力と歪みの関係は直線的ではない。
・第1の点(降伏伸びが始まる点):(α×σ0.2/E,α×σ0.2)、
・第2の点(0.2%耐力に達する点):(σ0.2/E+0.2/100,σ0.2)、
・第3の点(降伏応力と引張強度の間の任意の点):(X2,σ2B)、
・第4の点(引張強度に到達する点):(X3,TS)
ここで、αは係数(0.60≦α≦0.99)、σ0.2は0.2%の耐力、Eは縦弾性係数、X2は降伏応力と引張強度の間の任意の点の歪み、X3は引張強度に到達する点の歪み、σ2Bは降伏応力と引張強度の間の任意の点の応力、そして、TSは材料の引張強度である。
σ0.2)と温度との関係を示すマスターカーブの2例である。引張強度が異なる材料では0.2%耐力も当然異なるが、0.2%耐力σ0.2を正規化することによって、高温域までを含めて異なる引張強度の鋼板のマスターカーブを一つの曲線で表すことができる。図5及び図6から、例えば、温度範囲を区切り、温度の多項式で与えることによって、マスターカーブを温度の関数で表現することができるから、それぞれの鋼種において、任意の温度におけるσ0.2が室温におけるσ0.2RTから計算することが可能となる。
TS)の関係がいくつかの鋼種毎にひとつの曲線(以後、マスターカーブと呼ぶ)で表現できることも判明した。
TS)と温度との関係を示すマスターカーブの2例である。引張強度が異なる材料では引張強度TSも当然異なるが、TSを正規化することによって、高温域までを含めて異なる引張強度の鋼板のマスターカーブを一つの曲線で表すことができる。図7及び図8から、例えば、温度範囲を区切り、温度の多項式で与えることによって、マスターカーブを温度の関数で表現することができるから、それぞれの鋼種において、任意の温度におけるTSが室温におけるTSRTから計算することが可能となる。
第1の点(σy/E,σy)、
第2の点(X1,σy)、
第3の点(X1+X2,σ2A)、
第4の点(X3,TS)
を結ぶ折れ線で近似するとともに、室温での降伏応力σyRTによって正規化した降伏応力σyと温度との関係及び室温での引張強度TSRTによって正規化した引張強度TSと温度との関係を定義してなるマスターカーブを用いることを特徴とする、鋼材の任意温度における応力−歪み関係を予測する方法。
ここで、σyは降伏応力、Eは縦弾性係数、X1は降伏伸びが終了する点の歪み、X2は降伏応力と引張強度の間の任意の点の歪み、X3は引張強度に到達する点の歪み、σ2Aは降伏応力と引張強度の間の任意の点の応力、そして、TSは材料の引張強度である。
第1の点(α×σ0.2/E,α×σ0.2)、
第2の点(σ0.2/E+0.2/100,σ0.2)、
第3の点(X2,σ2B)、
第4の点(X3,TS)
を結ぶ折れ線で近似するとともに、室温での降伏応力σyRTによって正規化した降伏応力σyと温度との関係及び室温での引張強度TSRTによって正規化した引張強度TSと温度との関係を定義してなるマスターカーブを用いることを特徴とする、鋼材の任意温度における応力−歪み関係を予測する方法。
ここで、αは係数(0.60≦α≦0.99)、σ0.2は0.2%の耐力、Eは縦弾性係数、X2は降伏応力と引張強度の間の任意の点の歪み、X3は引張強度に到達する点の歪み、σ2Bは降伏応力と引張強度の間の任意の点の応力、そして、TSは材料の引張強度である。
・第1の点(降伏伸びが始まる点):(σy/E,σy)、
・第2の点(降伏伸びが終了する点):(X1,σy)、
・第3の点(降伏応力と引張強度の間の任意の点):(X1+X2,σ2A)、
・第4の点(引張強度に到達する点):(X3,TS)
の4つの点を結ぶ折れ線で近似される。
・第1の点(降伏伸びが始まる点):(α×σ0.2/E,α×σ0.2)、
・第2の点(0.2%耐力に達する点):(σ0.2/E+0.2/100,σ0.2)、
・第3の点(降伏応力と引張強度の間の任意の点):(X2,σ2B)、
・第4の点(引張強度に到達する点):(X3,TS)
の4つの点を結ぶ折れ線で近似される。
σ2A:
図9は、Type-Aの鋼材について、X2=0.02としたときの応力σ2Aとσ0.2との関係を示している。このように公称応力で表現したσ0.2とσ2Aは、温度に依存せず、一対一の関係があることが実験的結果より、確認された。この関係は次式で表すことができるので、σ2Aはσ0.2から一義的に求めることができる。
σ2A=0.995σ0.2+56.8 (MPa) ・・・・・・・・・(1)式
X1:
降伏伸びの値は鋼種や温度域によってばらつきがあるが、降伏伸びが終了する歪みは、0.7〜3%であり、平均的には降伏伸びが歪み1%で終了する。すなわち、応力−歪み関係を精度良く近似するためには、X1は上記範囲で設定することが良く、平均的にはX1を0.007〜0.03とするのが好ましく、X1=0.01とするのがさらに好ましい。
塑性域の応力−歪み関係は歪みの小さい範囲で大きく変化する曲線を描くので、歪み1〜5%の範囲で定義することが、応力―歪み関係の近似精度を保ち易い。したがって、X2を0.01〜0.05の歪み範囲とするのが好ましく、X2=0.01〜0.05とするのがさらに好ましい。
低炭素軟鋼鋼板、汎用型(固溶強化型)鋼板、高降伏比(析出強化型)鋼板、極低炭固溶強化型鋼板、低降伏比型鋼板および高延性型鋼板等の多くの鋼種において、X3の値は温度によって0.05〜0.15の範囲で変化し、高温になるほど値は小さくなる傾向があるが、平均的には公称歪み10%で引張強度TSに到達するとして、真応力−対数歪みに変換すれば、実際の応力―歪み関係と良く対応する。したがって、X3は0.05〜0.15とすることが好ましく、X3=0.1とするのがさらに好ましい。引張強度TSは通常、公称応力で表記されるが、熱弾塑性解析においては真応力−対数歪みで定義するデータを用いる。公称歪みeと対数歪みε、そして、公称応力σ0と真応力σとの間には、それぞれ、次の関係式が成り立つことが知られている。
ε=ln(1+e)
σ=σ0(1+e)
したがって、Type-Aにおける第4の点は、真応力−対数歪み線図上では、たとえば、X3=0.1とすると、(ln(1+0.1),TS(1+0.1))の点となる。
σ2B:
図10は、Type-Bの鋼材について、X2=0.02としたときの応力σ2Bとσ0.2との関係を示している。このように公称応力で表現したσ0.2とσ2Bは、温度に依存せず、一対一の関係があることが実験的結果より、確認された。この関係は次式で表すことができるので、σ2Bはσ0.2から一義的に求めることができる。
σ2B=1.246σ0.2 ・・・・・・・・(2)式
α:
αは降伏応力と0.2%耐力の比を表す係数であり、0.65〜0.90の範囲の値をとる。
なお、極低炭素系軟鋼や340MPa級以下の高深絞り性鋼板などの限られた鋼種においては、αは0.70〜0.96の値をとる。室温から700℃までの温度域においてαの値に一定値を用いる場合は、α=0.80のときに、0.2%耐力と降伏応力とを精度よく対応させることができる。800〜1000℃ではα=0.88のとき、そして、1100℃以上ではα=0.96のとき、1200℃以上ではα=0.99のとき、それぞれ、耐力と降伏応力を一層対応させることができる。したがって、平均的には室温から700℃まではα=0.80とし、800〜1000℃ではα=0.88とし、1100℃以上でα=0.96とするのが、より好ましい。
Type-Aの鋼材の場合と同様に、塑性域の応力−歪み関係は歪みの小さい範囲で大きく変化する曲線を描くので、歪み1〜5%の範囲で定義することが、応力―歪み関係の近似精度を保ち易い。したがって、X2=0.01〜0.05とするのが好ましい。
Type-Aの場合と同様に、低炭素軟鋼鋼板、汎用型(固溶強化型)鋼板、高降伏比(析出強化型)鋼板、極低炭固溶強化型鋼板、低降伏比型鋼板および高延性型鋼板等の多くの鋼種において、X3の値は温度によって0.05〜0.15の範囲で変化し、高温になるほど値は小さくなる傾向があるが、平均的には公称歪み10%で引張強度TSに到達するとして、真応力−対数歪みに変換すれば、実際の応力―歪み関係と良く対応する。したがって、X3は0.05〜0.15とすることが良く,平均的にはX3=0.1とするのが好ましい。また、X3については鋼種によって差がある。極低炭素系軟鋼や340MPa級の高深絞り型鋼板などの限られた鋼種においては、公称ひずみで0.10〜0.20の範囲で変化し,平均的には公称歪みで15%とする方が、実験結果と良く一致するので、X3は0.10〜0.20の範囲とし、平均的にはX3=0.15とするのが好ましい。
E=-2.5186×10−7T3+1.1420×10−4T2-6.1548×10−2T+210.8・・・・・・・(3)式
E=-0.0445×T+141.2 ・・・・・・・(4)式
また、室温におけるσ0.2とTSは室温における引張試験結果から、軟鋼(鋼種:JSC270C)については、以下のように与えた。なお、ここでσ0.2とTSは公称応力で表記している。
軟鋼(鋼種:JSC270C):σ0.2=212MPa、TS=324MPa
E=-2.5186×10−7T3+1.1420×10−4T2-6.1548×10−2T+210.8・・・・・・・(3)式
E=-0.0445×T+141.2 ・・・・・・・(4)式
また、室温におけるσ0.2とTSは室温における引張試験結果から、汎用型鋼板(鋼種:JSC440W)については、以下のように与えた。なお、ここでσ0.2とTSは公称応力で表記している。
汎用型鋼板(鋼種:JSC440W):σ0.2=339MPa、TS=457MPa
E=-2.5186×10−7T3+1.1420×10−4T2-6.1548×10−2T+210.8・・・・・・・(3)式
E=-0.0445×T+141.2 ・・・・・・・(4)式
また、室温におけるσ0.2とTSは室温における引張試験結果から、低降伏比型鋼板(鋼種:JSC780Y)については、以下のように与えた。なお、ここでσ0.2とTSは公称応力で表記している。
低降伏比型鋼板(鋼種:JSC780Y):σ0.2=485MPa、TS=846MPa
以上のとおりであるから、本発明の方法によって、室温での降伏応力σyRT又は0.2%耐力σ0.2RT、そして室温でのTSRTに基づいて、室温から高温までの任意温度における応力−歪み関係を予測することができる。
Claims (8)
- 室温で降伏伸びを有する鋼材の任意温度における応力−歪み関係を、室温での降伏応力σyRTと室温での引張強度TSRTから予測する方法であって、応力−歪み関係を原点及び少なくとも次の4つの座標で示される点:
第1の点(σy/E,σy)、
第2の点(X1,σy)、
第3の点(X1+X2,σ2A)、
第4の点(X3,TS)
を結ぶ折れ線で近似するとともに、室温での降伏応力σyRTによって正規化した降伏応力σyと温度との関係及び室温での引張強度TSRTによって正規化した引張強度TSと温度との関係を定義してなるマスターカーブを用いることを特徴とする、鋼材の任意温度における応力−歪み関係を予測する方法。
ここで、σyは降伏応力、Eは縦弾性係数、X1は降伏伸びが終了する点の歪み、X2は降伏応力と引張強度の間の任意の点の歪み、X3は引張強度に到達する点の歪み、σ2Aは降伏応力と引張強度の間の任意の点の応力、そして、TSは材料の引張強度である。 - X1を0.007〜0.03、X2を0.01〜0.05の歪み範囲とすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 鋼材が極低炭素軟鋼板または高深絞り性鋼板の場合には、X3を0.10〜0.20の範囲とすることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- 鋼材が低炭素軟鋼鋼板、汎用型(固溶強化型)鋼板、高降伏比(析出強化型)鋼板、極低炭固溶強化型鋼板、低降伏比型鋼板または高延性型鋼板の場合には、X3を0.05〜0.15とすることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- 室温で降伏伸びを有しない鋼材の任意温度における応力−歪み関係を、室温での0.2%耐力σ0.2RTと室温での引張強度TSRTから予測する方法であって、応力歪み関係を原点及び少なくとも次の4つの座標で示される点:
第1の点(α×σ0.2/E,α×σ0.2)、
第2の点(σ0.2/E+0.2/100,σ0.2)、
第3の点(X2,σ2B)、
第4の点(X3,TS)
を結ぶ折れ線で近似するとともに、室温での降伏応力σyRTによって正規化した降伏応力σyと温度との関係及び室温での引張強度TSRTによって正規化した引張強度TSと温度との関係を定義してなるマスターカーブを用いることを特徴とする、鋼材の任意温度における応力−歪み関係を予測する方法。
ここで、αは降伏応力と0.2%耐力との比を表す係数(0.60≦α≦0.99)、σ0.2は0.2%の耐力、Eは縦弾性係数、X2は降伏応力と引張強度の間の任意の点の歪み、X3は引張強度に到達する点の歪み、σ2Bは降伏応力と引張強度の間の任意の点の応力、そして、TSは材料の引張強度である。 - X2を0.01〜0.05の歪み範囲とすることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- 鋼材が極低炭素軟鋼または高深絞り鋼板の場合には、αを0.70〜0.99、X3を0.10〜0.20の範囲とすることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
- 鋼材が低炭素軟鋼鋼板、汎用型(固溶強化型)鋼板、高降伏比(析出強化型)鋼板、極低炭固溶強化型鋼板、低降伏比型鋼板または高延性型鋼板の場合には、αを0.60〜0.90、X3を0.05〜0.15とすることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
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