JP4614407B2 - 偏光フィルム及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、液晶表示装置等の視認性や耐久性の向上に有用な耐熱性に優れる偏光フィルムに関する。
【0002】
【発明の背景】
従来、ヨウ素に代えて二色性染料を基材中に吸着配向させてなる偏光板が知られていた(特開昭62−123405号公報等)。斯かる偏光板は耐熱性を向上させたものである。すなわち液晶表示装置の普及に伴い携帯電話やPDA等の屋外使用を伴うものや、車載用ナビゲーションや液晶プロジェクタ用のものではその過酷な使用条件に耐える耐熱性が要求され、ヨウ素使用の偏光板ではヨウ素の昇華や錯体状態の変化等で偏光機能が大きく低下し、斯かる高温下での使用に耐えないためである。
【0003】
しかしながら従来の二色性染料を使用した偏光板には、その色素の吸収二色比が低いためヨウ素使用の偏光板に比べて光透過率と偏光度の両立性に劣る難点があった。すなわち光透過率を優先して二色性色素の濃度を薄くするとコントラストに乏しくなり、濃度を高めるとコントラストは向上するものの光透過率が低下して暗くなるため光透過率と偏光度を両立させることが難しく、ヨウ素使用の偏光板のように光透過率と偏光度に優れてそれらが両立したものを得ることが困難な問題点があった。
【0004】
【発明の技術的課題】
本発明は、光透過率と偏光度に優れると共に、耐熱性にも優れる偏光板の開発を課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
本発明は、ポリマーからなる透光性フィルム中にそのポリマーとは異種の材料からなる微小領域を分散含有してなり、その微小領域が50℃以上の加熱時に液晶化する複屈折性材料とその液晶化温度で二色性を喪失しない吸収型二色性材料との混合層からなり、前記微小領域を形成する複屈折性材料が透光性フィルムと0.03以上の最大屈折率差△n1となる光軸と、その光軸に直交して透光性フィルムとの屈折率差△n2が等しく、かつその△n2が前記△n1の50%以下である二方向の光軸を有し、前記複屈折性材料と前記吸収型二色性材料とが延伸により配向されたものであることを特徴とする偏光フィルム、及び液晶セルの片側又は両側に前記の偏光フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、微小領域中の吸収型二色性材料が示す吸収軸方向の振動面を有する光成分の吸収と、透過軸方向の振動面を有する光成分の透過を介して直線偏光が得られるが、その際に微小領域中の複屈折性材料が直線偏光を強く散乱する光軸(△n1方向)と直線偏光を効率よく透過する光軸(△n2方向)を有することに基づいてその△n1方向の光軸にて強く散乱された光成分の前記吸収軸を介した吸収効率が向上し、透過軸方向の光成分は影響を受け難い。その結果、透過軸を介した透過光の含有割合が高まり偏光度を向上させうることより光透過率と耐熱性に優れる偏光フィルムの構成にて偏光度の向上を図りコントラストを高めることができる。
【0007】
前記において吸収型二色性材料の吸収軸と複屈折性材料の直線偏光を強く散乱する光軸とが平行にある場合にはその散乱による当該吸収効率が最高となり、かつ吸収型二色性材料の透過軸と複屈折性材料の直線偏光を散乱し難くてそれを効率よく透過する光軸とが対応して平行となる結果、より偏光度の高い偏光を得ることができる。従って黒表示でのコントラストと白表示での明るさに優れ、良視認性で耐熱性等の耐久性に優れる液晶表示装置等を形成することができる。
【0008】
【発明の実施形態】
本発明による偏光フィルムは、ポリマーからなる透光性フィルム中にそのポリマーとは異種の材料からなる微小領域を分散含有してなり、その微小領域が50℃以上の加熱時に液晶化する複屈折性材料とその液晶化温度で二色性を喪失しない吸収型二色性材料との混合層からなるものである。その例を図1に示した。1が透光性フィルム、2が微小領域で、21がその複屈折性材料、22がその吸収型二色性材料である。
【0009】
透光性フィルムを形成するポリマーとしては、光を透過する適宜なポリマーの1種又は2種以上を用いることができ特に限定はない。ちなみにその例としてはポリエステル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(ASポリマー類)の如きスチレン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体やシクロ系ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィンの如きオレフィン系樹脂やカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂や塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂やアミド系樹脂があげられる。
【0010】
またイミド系樹脂やスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂やポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂やビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂やビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂やポリオキシメチレン系樹脂、シリコーン系樹脂やウレタン系樹脂、それら熱可塑性ポリマーのブレンド物、あるいはフェノール系やメラミン系、アクリル系やウレタン系、ウレタンアクリル系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型のポリマーなども透光性フィルムの形成に用いうる。
【0011】
透光性フィルムを形成するポリマーは、成形歪み等による配向複屈折を生じにくいものであってもよいし(等方性ポリマー)、生じやすいもであってもよい(異方性ポリマー)。可視光域での透明性に優れるポリマーが好ましく用いうる。また耐熱性や偏光フィルムへの加工性等の点より好ましく用いうるポリマーは、ガラス転移温度が50℃以上、就中80℃以上、特に120℃以上のポリマー、殊に加重撓み温度が80℃以上で、かつガラス転移温度が110℃以上、就中115℃以上、特に120℃以上の熱可塑性ポリマーである。なお前記の加重撓み温度は、JIS K 7207に準じ、181.4N/cm2の曲げ応力を加熱浴中の高さ10mmの試験片に加えながら2℃/分で伝熱媒体を昇温させ、試験片の撓み量が0.32mmに達したときの伝熱媒体の温度にて定義される。
【0012】
一方、微小領域を形成する複屈折性材料としては、50℃以上、就中75℃以上、特に100℃以上の加熱温度で溶融して液晶状態を呈する適宜な光透過性のものを1種又は2種以上用いうる。斯かる複屈折性材料を用いることにより、その加熱液晶化による配向状態を冷却固定して透光性フィルム中に複屈折による屈折率異方性の微小領域を形成でき、透光性フィルムと微小領域を形成する屈折率異方性の複屈折性材料との屈折率差に基づいて直線偏光の散乱異方性を示す耐熱性の偏光フィルムを形成することができる。
【0013】
ちなみに前記複屈折性材料の例としては、加熱溶融時にネマチック相やスメクチック相等の適宜な液晶状態を呈する主鎖型や側鎖型等の液晶型熱可塑性ポリマーなどがあげられる。粒径分布の均一性に優れる微小領域の形成性や熱的安定性、フィルムへの成形性や配向処理の容易性などの点より好ましく用いうる液晶型熱可塑性ポリマーは、重合度が8以上、就中10以上、特に15〜5000のものである。
【0014】
また上記した耐熱性や屈折率異方性の制御性等の点より複屈折性材料として好ましく用いうる液晶型熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度が50℃以上、就中80℃以上で、併用の透光性フィルムを形成するポリマーのガラス転移温度よりも低い温度域でネマチック液晶相を呈するものである。ちなみにその具体例としては、下記の一般式で表されるモノマー単位を有する側鎖型の液晶型熱可塑性ポリマーなどがあげられる。
【0015】
一般式:
【0016】
前記の一般式においてXは、液晶型熱可塑性ポリマーの主鎖を形成する骨格基であり、線状や分岐状や環状等の適宜な連結鎖にて形成されていてよい。ちなみにその例としては、ポリアクリレート類やポリメタクリレート類、ポリ−α−ハロアクリレート類やポリ−α−シアノアクリレート類、ポリアクリルアミド類やポリアクリロニトリル類、ポリメタクリロニトリル類やポリアミド類、ポリエステル類やポリウレタン類、ポリエーテル類やポリイミド類、ポリシロキサン類などがあげられる。
【0017】
またYは、主鎖より分岐するスペーサ基であり、偏光フィルムの形成性などの点より好ましいスペーサ基Yは、例えばエチレンやプロピレン、ブチレンやペンチレン、ヘキシレンやオクチレン、デシレンやウンデシレン、ドデシレンやオクタデシレン、エトキシエチレンやメトキシブチレンなどである。
【0018】
一方、Zはネマチック配向性を付与するメソゲン基であり、下記の化合物などがあげられる。
【0019】
前記の化合物における末端置換基Aは、例えばシアノ基やアルキル基、アルケニル基やアルコキシ基、オキサアルキル基や水素の1個以上がフッ素又は塩素にて置換されたハロアルキル基やハロアルコキシ基やハロアルケニル基などの適宜なものであってよい。
【0020】
前記においてスペーサ基Yとメソゲン基Zはエーテル結合、すなわち−O−を介して結合していてもよい。またメソゲン基Zにおけるフェニル基は、その1個又は2個の水素がハロゲンで置換されていてもよく、その場合、ハロゲンとしては塩素又はフッ素が好ましい。
【0021】
上記したネマチック配向性で側鎖型の液晶型熱可塑性ポリマーは、前記一般式で表されるモノマー単位を有するホモポリマーやコポリマー等の適宜な熱可塑性ポリマーであればよく、就中モノドメイン配向性に優れるものが好ましい。
【0022】
他方、微小領域を形成する吸収型二色性材料としては、併用の複屈折性材料を液晶化する際にその加熱温度で二色性を喪失しない耐熱性のものが用いられる。
斯かる吸収型二色性材料を用いることにより、複屈折性材料を加熱液晶化して配向処理する際にその吸収型二色性材料も配向させてその二色性による透過軸と吸収軸に基づて直線偏光を透過する偏光フィルムを形成することができる。前記の液晶化温度で分解や変質等にて二色性を喪失するものやヨウ素の如く昇華しやすいものでは良好な偏光機能を有するものの形成が困難である。
【0023】
従って前記の吸収型二色性材料としては、例えば上記した特開昭62−123405号公報などに記載された所定の耐熱性を有する適宜なものを1種又は2種以上用いうる。偏光度に優れるものを得る点などより好ましく用いうる吸収型二色性材料は、二色比が3以上、就中6以上、特に9以上となる吸収波長帯を可視光域に一箇所又は二箇所以上有する色素である。その色素の例としては、アゾ系やペリレン系、アントラキノン系やそれらの混合系等からなる特開昭54−76171号公報に記載のものなどがあげられ通例、非水溶性である。カラー偏光板もそのカラー特性に見合った吸収波長を有する二色性色素を用いることで形成でき、2種以上の二色性色素を併用して可視光の全域で吸収特性を示すニュートラルグレーの偏光板も形成することができる。
【0024】
前記の二色比は、二色性色素の評価に用いられる一般的な方法に基づく。すなわち該当の色素を適宜な液晶、例えば市販の液晶(メルク社製、E−7)に溶解させその溶液を用いてホモジニアス配向の液晶セルを形成し、そのセルの偏光吸収スペクトルを測定してそのスペクトルにおける吸収極大波長での吸収二色比に基づく。斯かる方法は、吸収型二色性材料の二色比が分子自体の吸収二色性に加えてその液晶中での配向性が影響することより、液晶中での配向性も加味した結果の得られることを目的とする。
【0025】
本発明による偏光フィルムは、図例の如く複屈折性材料21と吸収型二色性材料22との混合層からなる微小領域2を透光性フィルム1の中に分散含有するものである。その形成は例えば、透光性フィルムを形成するポリマーの1種又は2種以上を適宜な溶剤で溶解した溶液と、そのポリマーは溶解しない、ないし溶解しにくい溶剤で微小領域を形成するための複屈折性材料と吸収型二色性材料の1種又は2種以上を溶解した溶液とを混合して、透光性フィルムを形成するポリマー中に当該複屈折性材料と吸収型二色性材料を含む混合層が相分離により微小領域の状態で分散したフィルムを形成した後、必要に応じ適宜な配向処理で複屈折性材料と吸収型二色性材料を配向させる方法などにて行うことができる。
【0026】
前記では異種の溶剤による相溶性の相違を利用して相分離を生じさせる方法をあげたが、偏光フィルムの形成方法はそれに限定されずその形成には当該微小領域を形成できる適宜な方法を採ることができる。従って当該微小領域を分散含有する透光性フィルムの形成には例えばキャスティング法や押出成形法、射出成形法やロール成形法、流延成形法などの適宜な方式を適用することができる。
【0027】
微小領域の均等分布性に優れる偏光フィルムを得る点などよりは、前記した相分離方式による混合液をキャスティング法や流延成形法等にて製膜する方式が好ましい。その場合、溶剤の組合せや混合液の粘度、混合液展開層の乾燥速度などにより微小領域の大きさや分布性などを制御することができる。ちなみに微小領域の小面積化には混合液の低粘度化や混合液展開層の乾燥速度の急速化などが有利である。
【0028】
透光性フィルムの厚さは、配向処理性やフィルム強度、吸収型二色性材料の吸収係数に基づく偏光性能などの点より適宜に決定することができる。一般には、1μm〜3mm、就中5μm〜1mm、特に10〜500μmの厚さとされる。なおフィルムの形成に際しては例えば分散剤や界面活性剤、紫外線吸収剤や難燃剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することができる。
【0029】
前記した微小領域を形成する複屈折性材料と吸収型二色性材料の必要に応じての配向処理は、それらの配向状態のバラツキを少なくして複屈折性材料からなる領域の各光軸方向における屈折率を制御すること、及び微小領域の吸収型二色性材料による透過軸の一致性と吸収軸の一致性を向上させることを目的とする。斯かる配向処理には、例えば一軸や二軸、逐次二軸やZ軸等による延伸処理方式や圧延方式、ガラス転移温度又は液晶転移温度以上の温度で電場又は磁場を印加して急冷し配向を固定化する方式や製膜時に流動配向させる方式、等方性ポリマーの僅かな配向に基づいて複屈折性材料と吸収型二色性材料を自己配向させる方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を用いるができる。従って得られた偏光フィルムは、延伸フィルムであってもよいし非延伸フィルムであってもよい。
【0030】
前記において複屈折性材料が液晶型熱可塑性ポリマーからなる場合には、例えば透光性フィルム中に微小領域として分散分布する液晶型熱可塑性ポリマーがネマチック相等の目的とする液晶相を呈する温度に加熱して溶融させ、それを配向規制力の作用下に配向させたのち液晶転移温度未満に急冷して配向状態を固定化する方式などにても行うことができる。微小領域を形成する液晶型熱可塑性ポリマーの配向状態は、可及的にモノドメイン状態にあることが光学特性のバラツキ防止などの点より好ましい。
【0031】
前記した液晶型熱可塑性ポリマーの配向規制力としては、例えば透光性フィルムを適宜な倍率で延伸処理する方式による延伸力やフィルム形成時のシェアリング力、電界や磁界などの、液晶型熱可塑性ポリマーを配向させうる適宜な規制力を適用でき、その1種又は2種以上の規制力を作用させて液晶型熱可塑性ポリマーの配向処理を行うことができる。斯かる液晶型熱可塑性ポリマーの配向処理にて通例、吸収型二色性材料の配向処理も達成することができる。なお速やかに配向処理を完了する点よりは一軸延伸方式等の大きな外力を付加できる方式が好ましい。
【0032】
従って偏光フィルムにおける微小領域以外の透光性フィルム部分は、複屈折性を示してもよいし、等方性であってもよい。偏光フィルムの全体が複屈折性を示すものは、フィルム形成用のポリマーに配向複屈折性のものを用いて上記した製膜過程における分子配向などにより得ることができ、必要に応じ例えば延伸処理等の公知の配向手段を加えて複屈折性を付与ないし制御することができる。また微小領域以外の部分が等方性の偏光フィルムは、例えばフィルム形成用のポリマーに等方性のものを用いて、そのフィルムを当該ポリマーのガラス転移温度以下の温度領域で延伸処理する方式などにより得ることができる。
【0033】
好ましい偏光フィルムは、微小領域を形成する複屈折性材料が透光性フィルムと0.03以上、就中0.05以上、特に0.10以上の最大屈折率差△n1となる光軸と、その光軸に直交して透光性フィルムとの屈折率差△n2が等しく、かつその△n2が前記△n1の50%以下、就中30%以下、特に0.03以下の可及的に小さいものである二方向の光軸を有するものである。これにより最大屈折率差△n1を示す光軸方向に対応する偏光が強く散乱され、屈折率差△n2を示す光軸方向に対応する偏光はその偏光状態を維持して効率よく透過し、斯かる散乱異方性に基づいて偏光度と光透過率に優れる偏光フィルムとすることができる。
【0034】
また偏光度と光透過率に優れる偏光フィルムを得る点よりは、微小領域を形成する吸収型二色性材料の吸収軸と複屈折性材料の△n1を示す光軸方向とが可及的に平行関係となるように配向していることが好ましい。これにより前記の△n1を示す光軸方向に対応して強く散乱された偏光がその散乱による光路長の増大で吸収に関する見かけ厚さが増大し吸収型二色性材料の吸収軸を介して効率よく吸収することができる。
【0035】
前記した散乱と吸収による偏光度と光透過率の関係は以下のモデルにて説明することができる。すなわち吸収型二色性材料が一方向に配向した偏光板の平行透過率Xと偏光度Pは、その二つの主透過率を第一主透過率K1(透過率が最大となる方向)、第二主透過率K2(透過率が最小となる方向)として、X=0.5×(K12+K22)、P=(K1−K2)/(K1+K2)で表すことができる。その場合に本発明においては吸収型二色性材料による吸収が吸収係数と光路長に比例することより、第一主透過率K1(△n2を示す光軸方向に対応する直線偏光透過率)は変わらないとし、△n1を示す光軸方向に対応して散乱された偏光の光路長の増大をα倍、かつ散乱による偏光の解消はないものとして第二主透過率K2’(△n1を示す光軸方向に対応する直線偏光透過率)はK2’=10αlogK2となることから、当該平行透過率X’と偏光度P’は、X’=0.5×(K12+K2’2)、P’=(K1−K2’)/(K1+K2’)にて表されることとなる。
【0036】
よってα倍の光路長の増大にて偏光度や平行透過率を向上させることができる。ちなみに平行透過率0.321、偏光度0.90、K1:0.80、K2:0.04の特性を示す偏光板の形成に用いた吸収型二色性材料を用いて本発明による偏光フィルムを形成した場合、当該αを2倍として前記式より平行透過率が0.320で偏光度が0.996のものとすることができる。また偏光度0.90を維持した場合には色素濃度を薄くして平行透過率が0.406のものとすることができる。
【0037】
前記の特性は、前記の理論式による計算上のものであり実際には作業精度等によるK1の変化(減少)や散乱による偏光の解消、表面反射や後方散乱などで偏光機能は前記式による特性よりも通例の場合、若干低下する。なお前記式より、散乱による光路長(α)が大きくなるほど、また吸収型二色性材料の二色比が大きいほど偏光機能を向上させうることがわかる。なおαは、上記した△n1を大きくするほど高い数値とすることができる。
【0038】
偏光フィルムにおける微小領域は、前記散乱効果等の均質性などの点より可及的に均等に分散分布していることが好ましい。微小領域の大きさ、特に散乱方向である△n1を示す光軸方向の長さは、散乱の強さに影響する。可視光域の波長で強く散乱させる点よりは、微小領域の長さを複屈折性材料の△n1を示す光軸方向に基づいて0.05〜500μm、就中0.1〜250μm、特に0.5〜100μmとすることが好ましい。斯かる長さが0.05μm未満では可視光域の光を散乱させる機能に乏しくなり、500μmを超えるとフィルム強度が低下したり、微小領域中での複屈折性材料の配向制御が困難となりやすい。
【0039】
前記した微小領域の寸法制御性等の点よりも上記した相分離による偏光フィルムの形成方法が好ましい。なお斯かる相分離方法によるとき微小領域は、通例ドメインの状態で偏光フィルム中に存在するが、その場合も含めて△n2を示す光軸方向の長さについては特に限定はない。偏光フィルム中に占める微小領域の割合は、△n1を示す光軸方向の散乱性などの点より適宜に決定しうるが、一般にはフィルム強度なども踏まえて0.1〜90重量%、就中1〜70重量%、特に5〜50重量%とされる。
【0040】
本発明による偏光フィルムは、従来の偏光子に準じた各種の目的に用いることができる。就中、耐熱性に優れることより屋外使用や車載等を目的とする液晶表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置は、従来に準じて液晶セルの片側又は両側に偏光フィルムを配置することにより形成することができる。
【0041】
偏光フィルムは、単層物として用いることもできるし、同種物又は異種物の2層以上を重畳したものとして用いることもできる。重畳に際しては吸収軸が上下の層で可及的に一致するようにすることが好ましい。また偏光フィルムは、その片側又は両側に必要に応じて従来の偏光板に準じた透明保護層を設けて実用に共することもできるが、薄型化の点よりは透明保護層を設けることなく用いることが好ましい。本発明による偏光フィルムは、透明保護層を有しない状態にても耐久性に優れている。
【0042】
液晶表示装置の形成に際しては、必要に応じて液晶セルと偏光フィルムの間に一層又は二層以上の位相差板を配置することもできる。その場合、偏光フィルムと位相差板を予め接着層等を介し接着積層したものとして用いることもできる。斯かる接着処理は、液晶表示装置等の組立効率の向上や光軸のズレ防止、各界面への異物等の侵入防止などを目的とする。接着処理には例えばホットメルト系や粘着系などの適宜な接着剤を用いうる。また前記の積層体には位相差板以外の適宜な光学部品を付加することもできる。従って液晶表示装置では、偏光フィルムや位相差板等のその他の光学部品が接着層を介して液晶セルと接着積層されて一体化していることが好ましい。
【0043】
前記の位相差板としては例えば1/4波長板や1/2波長板、一軸や二軸等による延伸フィルムタイプやさらに厚さ方向にも分子配向させた傾斜配向フィルムタイプ、液晶タイプ、視野角や複屈折による位相差を補償するタイプ、それらを積層したタイプのものなどの各種のものを用いうる。また前記の光学部品についても特に限定はなく、例えば導光板等のバックライトや反射板、反射防止膜や防眩層、多層膜やコレステリック液晶層等からなる偏光分離板などの適宜なものであってよい。
【0044】
【実施例】
実施例1
ポリビニルアルコール(PVA)850部(重量部、以下同じ)を含有する10重量%水溶液と下式1で表される液晶型熱可塑性ポリマー100部、及び市販の吸収型二色性色素(M86:三井化学社製)50部を含有する10重量%トルエン溶液をホモミキサーにて撹拌混合し、キャスト法にて厚さ80μmのフィルムを得た後その水とトルエンの両溶媒を十分に乾燥させたフィルムを160℃で2倍に延伸処理し急冷して偏光フィルムを得た。
【0045】
式1:
【0046】
前記の偏光フィルムは、PVAからなる透光性フィルム中に、当該液晶型熱可塑性ポリマーと当該吸収型二色性色素の混合物からなる微小領域が分散分布すると共に、その微小領域中で液晶型熱可塑性ポリマーと吸収型二色性色素が延伸方向に配向したものであり、△n1が0.18で、その光軸に直交する二方向の光軸における△n2がいずれの場合も0.01であった。また吸収型二色性色素の吸収軸と液晶型熱可塑性ポリマーの△n1を示す光軸方向とがほぼ一致していた。さらに偏光顕微鏡観察による位相差に基づく着色にて、分散分布する微小領域(液晶型熱可塑性ポリマー)の平均サイズを見積もった結果、液晶型熱可塑性ポリマーの△n1を示す光軸方向に基づいて約7μmであった。
【0047】
前記の偏光フィルムについて分光光度計によりその吸収極大波長(510nm)における平行透過率と偏光度を調べた。その結果、市販の高透過高偏光度タイプの耐熱性染料系偏光板よりも高透過率、かつ高偏光度であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の断面図
【符号の説明】
1:透光性フィルム
2:微小領域
21:複屈折性材料
22:吸収型二色性材料
Claims (10)
- ポリマーからなる透光性フィルム中にそのポリマーとは異種の材料からなる微小領域を分散含有してなり、その微小領域が50℃以上の加熱時に液晶化する複屈折性材料とその液晶化温度で二色性を喪失しない吸収型二色性材料との混合層からなり、前記微小領域を形成する複屈折性材料が透光性フィルムと0.03以上の最大屈折率差△n1となる光軸と、その光軸に直交して透光性フィルムとの屈折率差△n2が等しく、かつその△n2が前記△n1の50%以下である二方向の光軸を有し、前記複屈折性材料と前記吸収型二色性材料とが延伸により配向されたものであることを特徴とする偏光フィルム。
- 請求項1において、前記微小領域を形成する吸収型二色性材料の吸収軸と複屈折性材料の△n1を示す光軸方向とがほぼ一致している偏光フィルム。
- 請求項2において、微小領域を形成する吸収型二色性材料の吸収軸と複屈折性材料の△n1を示す光軸方向とが平行関係となるように配向してなる偏光フィルム。
- 請求項2又は3において、微小領域の長さが複屈折性材料の△n1を示す光軸方向に基づいて0.05〜500μmである偏光フィルム。
- 請求項1〜4において、微小領域を形成する複屈折性材料が透光性フィルムを形成するポリマーのガラス転移温度よりも低い温度域でネマチック液晶相を呈するガラス転移温度50℃以上の液晶型熱可塑性ポリマーからなる偏光フィルム。
- 請求項1〜5において、透光性フィルムが加重撓み温度80℃以上、ガラス転移温度110℃以上の熱可塑性ポリマーからなる偏光フィルム。
- 請求項1〜6において、微小領域を形成する吸収型二色性材料が可視光域に二色比が3以上となる少なくとも一箇所の吸収波長帯を有する色素からなる偏光フィルム。
- 液晶セルの片側又は両側に請求項1〜7に記載の偏光フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項8において、液晶セルと偏光フィルムの間に一層又は二層以上の位相差板を有する液晶表示装置。
- 請求項8又は9において、偏光フィルムが接着層を介して液晶セル又は位相差板と接着積層されてなる液晶表示装置。
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