以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明を適用したフラットパネルスピーカの一実施形態に係る構成例を示す図である。
図1において、フラットパネルスピーカ1は、振動素子でパネルを振動させることにより音声を出力するスピーカである。ユーザ10は、その立ち位置において、フラットパネルスピーカ1のパネル2が振動することにより空気を介して伝播される音の波を取得することにより、フラットパネルスピーカ1より出力される音声を聴取する。
フラットパネルスピーカ1は、振動させる平面板状のパネル2、パネル2を振動させる振動素子3Aおよび振動素子3B、振動素子3A用の配線4A、振動素子3B用の配線4B、並びに、配線4Aおよび配線4Bにより電気的に接続される振動素子3Aおよび振動素子3Bの動作を制御することにより、音声出力および音声出力の指向性を制御する制御部5を有している。
パネル2は、例えば、アクリル、ガラス、紙、金属、石、若しくは木等に代表される各種素材、または、それらの合成素材により形成される振動板である。パネル2の形状は任意であるが、通常、平面状の板が用いられる。このパネル2は振動素子3Aおよび振動素子3Bにより振動させられる。
振動素子3Aおよび振動素子3Bは、例えば、コイル回路等を有し、パネル2の図中裏側の左右端付近に設けられている。振動素子3Aおよび振動素子3Bは、それぞれ、配線4Aおよび配線4Bを介して制御部5より供給される電気信号を振動に変換し、その振動をパネル2に伝達させる。なお、以下において振動素子3Aおよび振動素子3Bを互いに区別して説明する必要のない場合、単に振動素子3と称する。また、配線4Aおよび配線4Bを互いに区別して説明する必要のない場合、単に配線4と称する。
制御部5は、フラットパネルスピーカ1の外部より供給される音声信号入力に基づいて、振動素子3Aおよび振動素子3Bを制御して振動させる。つまり、制御部5は、入力される音声信号を振動素子3Aまたは振動素子3Bに適宜供給する。このとき、制御部5は、ユーザ指示等を受け付け、その指示に基づいて、振動素子3Aおよび振動素子3Bの制御方法を決定する。
なお、パネル2に設置される振動素子3の数はいくつであってもよい。また、制御部5がパネル2上に設けられるようにしてももちろんよい。
すなわち、制御部5は、振動素子3Aおよび振動素子3Bを制御することにより、音声の出力方向(指向性)を制御することができる。図2は、その指向性の制御方法の原理を説明する図である。
例えば、図2Aに示されるように、制御部5が、振動素子3Aを振動させず(白丸)に、振動素子3Bを振動させる(黒丸)と、パネル2は、図中左側が固定され、右側のみが振動することになる。従って、特定周波数の信号により振動素子3Bを振動させると、パネル2が図中左側を軸として振動されることになり、出力された音声は、矢印11に示されるように図中左方向に(パネル2の中央前方に向かうように)指向性を持つようになる。
逆に、図2Bに示されるように、制御部5が、振動素子3Aを振動させ(黒丸)、振動素子3Bを振動させない(白丸)ようにすると、パネル2は、図中右側が固定され、左側のみが振動することになる。従って、特定周波数の信号により振動素子3Aを振動させると、パネル2は図中右側を軸として振動されることになり、出力された音声は、矢印12に示されるように図中右方向に(パネル2の中央前方に向かうように)指向性を持つようになる。
なお、この周波数はパネル2の材質や形状等に依存する。以下に、指向性制御と周波数の関係についての具体的な実験例について説明する。
図3は、その実験に用いられる装置の構成例を示す図である。図3の場合、パネル2は、図中横方向40cm×縦方向30cm×奥行き2cmのアクリル板である。図1と同様に、パネル2の図中裏側左右端付近に振動素子3Aおよび振動素子3Bが配置されている。パネル2前方100cm離れた位置に7本のマイク(マイク21乃至マイク27)を30cm間隔で、パネル2の前面と平行な直線上に配置する。このとき、左右端から4本目のマイク24が、パネル2の前面の中心点を通過する前面の垂直線上の、前面より100cm前方に離れたところに位置するように配置される。
図4は、図3中左側の振動素子3Aを、4000Hz、2000Hz、1000Hz、500Hz、250Hz、および125Hzの各周波数の信号で振動させたときの、マイク21乃至マイク27において取得された音声の振幅レベルを示すグラフである。図4において、曲線31に示されるように、1000Hzの信号の場合、振動素子3Aを振動させることにより出力された音声は、マイク27の位置が一番大きく検出することができる。すなわち、フラットパネルスピーカ1は、周波数が1000Hzの信号を出力するとき、最もその出力音声の指向性を図中右方向に傾ける(右前方に向かって出力させる)ことができる。
図5は、図3中左側の振動素子3Bを、4000Hz、2000Hz、1000Hz、500Hz、250Hz、および125Hzの各周波数の信号で振動させたときの、マイク21乃至マイク27において取得された音声の振幅レベルを示すグラフである。図5において、曲線32に示されるように、1000Hzの信号の場合、振動素子3Bを振動させることにより出力された音声は、マイク21の位置が一番大きく検出することができる。すなわち、フラットパネルスピーカ1は、周波数が1000Hzの信号を出力するとき、最もその出力音声の指向性を図中左方向に傾ける(左前方に向かって出力させる)ことができる。
図6は、各周波数の信号を振動素子3Aおよび振動素子3Bより出力させたときの、マイク21乃至マイク27において取得された音声の振幅レベルを示すグラフである。図6において、曲線32に示されるように、1000Hzの信号の場合、振動素子3Aおよび振動素子3Bを振動させることにより出力された音声は、マイク24の位置が一番大きく検出することができる。すなわち、フラットパネルスピーカ1は、振動素子3Aおよび振動素子3Bの両方を振動させることにより、パネル2の中央前方に放射される音声が最も大きくなるように制御することができる。
以上のように、1枚のフラットパネルの、上下左右等の、互いに対向する両端付近に、フラットパネルを振動させる振動素子対を設け、制御部がその振動素子対の各振動素子の動作を制御することにより、フラットパネルスピーカは、フラットパネルからの出力音声の指向性を制御することができる。なお、指向性を制御する出力音声の周波数成分は、フラットパネルの形状や材質に依存する。
次に、そのような制御を行う制御部5の構成について説明する。図7は、制御部5の内部の構成例を示すブロック図である。
図7において、制御部5は、指示受付部41および出力選択部42を有する。指示受付部41は、例えばキーボードやマウス、または、リモートコントローラより送信される赤外線信号の受信部を有し、それらよりユーザ指示等を受け付け、その指示を出力選択部42に供給する。出力選択部41は、フラットパネルスピーカ1の外部からの音声信号入力を受け付け、指示受付部41より供給される指示に基づいて、その音声信号を出力する振動素子3を選択する。そして、出力選択部41は、選択した振動素子3に、音声信号を出力する。なお、この振動素子の選択は、1つであっても複数であってもよい。
図8のフローチャートを参照して、図7の制御部5により実行される制御処理の流れの例を説明する。
制御処理が開始されると、指示受付部41は、ステップS1において、ユーザ指示受付処理を行い、ユーザ指示の入力を受け付け、ステップS2において、ユーザ指示を受け付けたか否かを判定する。ユーザ指示を受け付けていないと判定した場合、指示受付部41は、処理をステップS1に戻し、それ以降の処理を繰り返す。
ステップS2において、ユーザ指示を受け付けたと判定した場合、指示受付部41は、その指示を出力選択部42に供給し、処理をステップS3に進める。
ステップS3において、出力選択部42は、ユーザ指示に基づいて振動させる振動素子3(音声信号を供給する振動素子3)を選択し、ステップS4において、その選択した振動素子3に音声信号を供給することにより、選択した振動素子3付近のパネル2より音声を出力させる。ステップS4の処理を終了すると、制御部5は、制御処理を終了する。
以上のように、制御部5が、ユーザ指示に基づいて各振動素子3の振動を制御するように制御処理を行うことにより、ユーザは、容易に、振動させる振動素子3を選択することができる。この振動素子3のパネル2上の位置により、出力音声(パネル2前方に放射された音声)の指向性が決まるので、ユーザは、容易に出力音声の指向性を制御することができる。
なお、制御部5が同時に制御するパネル2の数は複数であってももちろんよい。また、制御部5が同時に制御する振動素子3の数もいくつであってもよい。
図9は、本発明を適用したフラットパネルスピーカの他の構成例を示す図である。
図9に示されるフラットパネルスピーカ51は、パネル61およびパネル62、振動素子61Aおよび振動素子61B、振動素子62Aおよび振動素子62B、並びに、制御部5を有している。
振動素子61Aおよび振動素子61Bは、パネル61に設置され、パネル61を振動させる振動素子であり、振動素子62Aおよび振動素子62Bは、パネル62に設置され、パネル62を振動させる振動素子である。
制御部5は、2枚のパネル(4つの振動素子)の音声出力の指向性を同時に制御する。この場合、制御する振動素子の数が増えるだけで、制御部5の構成は図7に示される場合と同様であり、その制御方法も基本的に同様である。
ただし、この場合、2枚のパネルを制御することができるので、最大2つの音声を互いに異なる2方向に指向させて出力させることができる。例えば、制御部5は、図9に示されるように、パネル61の図中右側の振動素子61Bと、パネル62の図中左側の振動素子62Aを振動させ、パネル61の図中左側の振動素子61Aと、パネル62の図中右側の振動素子62Bを振動させないようにすることにより、パネル61からの出力音声が矢印63に示されるように図中左方向に指向されるようにパネル61を振動させ、パネル62からの出力音声が矢印64に示されるように図中右方向に指向されるようにパネル62を振動させることができる。
このように制御することにより、制御部5は、フラットパネルスピーカ51の図中左前方に位置するユーザ71と、図中右前方に位置するユーザ72の両方に向けた音声出力を行わせることができる。つまり、制御部5は、同時に複数の方向に指向させて音声を出力させることができる。
また、本発明を適用したフラットパネルスピーカを単独で使用してもよいが、例えばモニタに表示される画像の音声を出力するスピーカとして適用するようにしてもよい。
図10は、本発明を適用したフラットパネルスピーカの使用例を示す図である。
図10において、フラットパネルスピーカは、複数のテレビジョン受像機を連携して動作させることができるスケーラブルTVシステムの音声出力部として使用される。
スケーラブルTVシステム80は、9台のテレビジョン受像機(テレビジョン受像機81乃至テレビジョン受像機89)を3行×3列にアレイ状に配置し、必要に応じてそれらを連携して動作させるシステムである。例えば、スケーラブルTVシステム80は、テレビジョン受像機81乃至テレビジョン受像機89が、それぞれの表示画面を1つの表示画面として全て使用して1枚の画像を表示したり、互いに異なる画像を表示したりする。
スケーラブルTVシステム80を構成するテレビジョン受像機の数はいくつであってもよく、その配置は縦方向および横方向に何台ずつであってもよい。また、各テレビジョン受像機の大きさが全て同じでなくてもよい。
スケーラブルTVシステム80は、テレビジョン受像機81乃至テレビジョン受像機89の動作を制御する制御部90を有し、この制御部90の制御により、上述したような連携した動作を行うことができる。
これらのテレビジョン受像機81乃至テレビジョン受像機89の表示面の前面には、それぞれ、フラットパネルスピーカ91乃至フラットパネルスピーカ99が重畳される。フラットパネルスピーカ91乃至フラットパネルスピーカ99は、それぞれ、上述したようにパネルと振動素子により構成され、図示は省略するが、いずれも制御部90に電気的に接続され、制御部90により制御される。
ただし、この場合、各フラットパネルスピーカのパネルは、テレビジョン受像機81乃至テレビジョン受像機89による画像表示の妨げとならないように、例えばアクリルやガラス等の透明な素材により構成されるのが望ましい。
このようなスケーラブルTVシステム80において、ユーザは例えばリモートコントローラ等によりモード選択するだけでフラットパネルスピーカ91乃至フラットパネルスピーカ99のそれぞれより出力される出力音声の指向性を制御することができる。
例えば、1人モード、2人モード、および3人モード等、画像や音声を視聴するユーザの人数に応じて選択されるモードを設けるようにしても良い。
図11は、1人モードの場合の出力音声の指向性を説明する図である。図11の場合、画像や音声を視聴するユーザ100は1人である。このモードの場合、制御部90は、フラットパネルスピーカ91の図中左側の振動素子、フラットパネルスピーカ94の図中左側の振動素子、および、フラットパネルスピーカ97の図中左側の振動素子を振動させ、フラットパネルスピーカ91の図中右側の振動素子、フラットパネルスピーカ94の図中右側の振動素子、および、フラットパネルスピーカ97の図中右側の振動素子を振動させないようにすることにより、フラットパネルスピーカ91、フラットパネルスピーカ94、およびフラットパネルスピーカ97より音声を矢印101の方向に(ユーザ100に向かう矢印101の方向に指向性を有するように)出力させる。
また、制御部90は、フラットパネルスピーカ93の図中右側の振動素子、フラットパネルスピーカ96の図中右側の振動素子、および、フラットパネルスピーカ99の図中右側の振動素子を振動させ、フラットパネルスピーカ93の図中左側の振動素子、フラットパネルスピーカ96の図中左側の振動素子、および、フラットパネルスピーカ99の図中左側の振動素子を振動させないようにすることにより、フラットパネルスピーカ93、フラットパネルスピーカ96、およびフラットパネルスピーカ99より音声を矢印102の方向に(ユーザ100に向かう矢印102の方向に指向性を有するように)出力させる。また、
なお、このとき、制御部90は、フラットパネルスピーカ93の図中左側の振動素子、フラットパネルスピーカ96の図中左側の振動素子、および、フラットパネルスピーカ99の図中左側の振動素子を振動させないようにする。
以上のように音声出力を制御することにより、制御部90は、スケーラブルTVシステム80全体の左右から(3行×3列に構成されるテレビジョン受像機91乃至テレビジョン受像機39の全体からみて左右から)音声が中央前方に向かって放出されるように制御することができる。これにより出力音声を聴取するユーザは、より顕著なステレオ効果を得ることができ、臨場感の大きな音声を聴取することができる。
図12は、2人モードの場合を示している。この2人モードはスケーラブルTVシステム80の左右前方に居る2人のユーザ111およびユーザ112に対して音声を出力するモードである。
このモードの場合、制御部90は、フラットパネルスピーカ91の図中右側の振動素子、フラットパネルスピーカ94の図中右側の振動素子、フラットパネルスピーカ97の図中右側の振動素子、フラットパネルスピーカ93の図中左側の振動素子、フラットパネルスピーカ96の図中左側の振動素子、および、フラットパネルスピーカ99の図中左側の振動素子を振動させ、それ以外の振動素子を振動させないようにする。
つまり制御部90は、フラットパネルスピーカ91、フラットパネルスピーカ94、およびフラットパネルスピーカ97より音声を矢印113の方向に(ユーザ111に向かう矢印113の方向に指向性を有するように)出力させるとともに、フラットパネルスピーカ93、フラットパネルスピーカ96、およびフラットパネルスピーカ99より音声を矢印114の方向に(ユーザ112に向かう矢印114の方向に指向性を有するように)出力させる。
以上のように音声出力を制御することにより、制御部90は、スケーラブルTVシステム80左右前方に位置する2人のユーザに対して指向するように音声を出力させることができる。つまり、例えば、制御部90は、ユーザ111とユーザ112に互いに異なる音声を聴取させるように制御することができる。つまり、スケーラブルTVシステム80のユーザ111とユーザ112が互いに異なる画像および音声を視聴することができる。
図13は、3人モードの場合を示している。この場合、制御部90は、図12の2人のユーザの他に、スケーラブルTVシステム80の正面前方に位置するユーザに対しても指向するように音声を出力させることができる。つまり、この3人モードはスケーラブルTVシステム80の左前方に位置するユーザ121、正面前方に位置するユーザ122、および右前方に位置するユーザ123に対して音声を出力するモードである。
このモードの場合、制御部90は、図12の場合に振動させる振動素子に加えて、さらに、フラットパネルスピーカ92の振動素子、フラットパネルスピーカ95の振動素子、およびフラットパネルスピーカ98の振動素子も振動させる。
つまり制御部90は、フラットパネルスピーカ91、フラットパネルスピーカ94、およびフラットパネルスピーカ97より音声を矢印124の方向に(ユーザ121に向かう矢印124の方向に指向性を有するように)出力させるとともに、フラットパネルスピーカ92、フラットパネルスピーカ95、およびフラットパネルスピーカ98より音声を矢印125の方向に(ユーザ122に向かう矢印125の方向に指向性を有するように)出力させ、フラットパネルスピーカ93、フラットパネルスピーカ96、およびフラットパネルスピーカ99より音声を矢印126の方向に(ユーザ123に向かう矢印126の方向に指向性を有するように)出力させる。
ユーザが、図11乃至図13に示されるようなモードを、例えばリモートコントローラで選択することにより、切り替えると、制御部90は、その指示に従って、振動させる振動素子を切り替えて出力のモードを変更する。すなわち、ユーザは、モードを変更するだけで、容易に出力音声の指向性を制御することができる。
なお、スケーラブルTVシステム80に装着されるフラットパネルスピーカのパネルの大きさは全て同じでなくてもよい。例えば、図14に示されるように、フラットパネルスピーカのパネルの大きさが互いに異なっていても良い。
図14において、スケーラブルTVシステム80に装着されるフラットパネルスピーカのパネルであるパネル131乃至パネル135の大きさは互いに異なる。このような場合、各パネルが指向させる出力音声の周波数帯が互いに異なる。つまり、制御部90は、指向させる出力音声の周波数帯域に応じて振動させるパネルを選択する。このようにすることにより、複数の周波数の出力音声を指向させるようにすることができる。
図15は、制御部90の内部の構成例を示すブロック図である。
図15に示されるように、制御部90には、外部より、例えばテレビジョン信号のように、映像信号や音声信号等を含む入力信号が入力される。また、制御部90には、映像信号の出力先として第1モニタ143−1乃至第Nモニタ143−N(例えば、スケーラブルTVシステム80のテレビジョン受像機81乃至テレビジョン受像機89)が接続されている。さらに、制御部90には、音声信号の出力先として第1振動素子147−1乃至第N振動素子147−N(例えば、振動素子91乃至振動素子99)が接続されている。
制御部90は、入力信号より出力用の映像信号や音声信号を生成し、それらを出力するモニタやスピーカを選択し、その選択先に各信号を出力する。このような処理を行うために制御部90は、第1信号受信部141−1乃至第N信号受信部141−N、映像出力制御部142、受信部144、CPU(Central Processing Unit)145、および音声出力制御部146を有している。
第1信号受信部141−1乃至第N信号受信部141−Nは、それぞれ、入力信号に含まれる映像信号と音声信号を抽出し、映像信号を映像出力制御部142に供給し、音声信号を音声出力制御部146に供給する。第1信号受信部141−1乃至第N信号受信部141−Nは、例えば、各テレビジョン受像機のチューナにより構成される。つまり、第1信号受信部141−1乃至第N信号受信部141−Nは、例えば、テレビジョン信号である入力信号より、任意のチャンネルの番組の映像信号と音声信号を抽出する。
映像出力制御部142は、供給された映像信号に対して復号処理や画像処理等、所定の処理を施すとともに、後述するようにCPU145を介して入力されるユーザ指示に基づいてその映像信号の出力先として、第1モニタ143−1乃至第Nモニタ143−Nの中から1つまたは複数選択し、その選択先に映像信号を出力し映像を表示させる。
受信部144は、例えば、ユーザからのモード選択指示を、リモートコントローラ等を介して受信し、それをCPU145に供給する。CPU145は、そのモード選択指示を映像出力制御部142および音声出力制御部146等に供給する。
音声出力制御部146は、CPU145を介して供給されるモード選択指示に基づいて、入力される音声信号に対して復号処理や音声処理等の所定の処理を施すとともに、その音声信号の出力先として、振動素子147−1乃至振動素子147−Nの中から1つまたは複数選択し、その選択先に音声信号を出力する。
音声出力制御部146は、信号選択部151、第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−N、並びにパラメータマップ153を有する。
信号選択部151は、第1信号受信部141−1乃至第N信号受信部141−Nより入力される音声信号のうち、どの音声信号を、どの振動素子に出力するかを、CPU145より供給されるモード選択指示に基づいて選択する。例えば、信号選択部151は、CPU145より供給されるモード選択指示に対応するパラメータや出力先を、パラメータマップ153を参照することにより選択し、その選択した出力先(振動素子)に対応する信号処理部(第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nのうちいずれか1つまたは複数)に音声信号を供給する。
第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、それぞれ、振動素子147−1乃至振動素子147−Nに供給される音声信号に対してノイズ除去やフィルタリング等の音声処理を施す。例えば、第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、それぞれ、振動素子が振動させるパネルの大きさや材質に適した周波数成分を抽出し、その周波数成分を振動素子に供給する。
第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、それぞれ、CPU145より供給されるモード選択指示に基づいて信号処理を行う。例えば、第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、CPU145より供給されるモード情報に対応するパラメータを、パラメータマップ153を参照することにより決定し、その決定したパラメータに対応する信号処理を行う。
パラメータマップ153は、例えばフラッシュメモリやハードディスク等の記憶媒体であり、信号処理や信号入出力に関する情報を、動作モードに対応付けたテーブル情報を有する。すなわち、信号選択部151や第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nがパラメータマップ153に対して、ユーザに指定されたモードの情報を提供すると、パラメータマップ153は、保持するテーブル情報に基づいて、そのモードに対応するパラメータや信号の入出力先に関する情報を提供する。
なお、図10においてはこの制御部90がスケーラブルTVシステム80の筐体内部に、テレビジョン受像機やフラットパネルスピーカとは異なる構成として設けられるように説明したが、これに限らず、例えば、フラットパネルスピーカ91乃至フラットパネルスピーカ99に内蔵されるようにしても良い。また、図15に示される構成が物理的な1つのユニットとして形成される必要はなく、図15に示されるように電気的に互いに接続されているのであれば、それらの一部がフラットパネルスピーカ91乃至フラットパネルスピーカ99のそれぞれに内蔵され、他の一部が各テレビジョン受像機に内蔵されるようにしてもよい。例えば、図15の第1信号受信部141−1乃至第N信号受信部141−Nがそれぞれのテレビジョン受像機に内蔵され、映像出力制御部142、受信部144、およびCPU145がテレビジョン受像機やフラットパネルスピーカと異なる構成として設けられ、音声出力制御部146がフラットパネルスピーカに内蔵されるようにしてもよい。
次に、制御部90による制御処理の具体的な流れの例について図16のフローチャートを参照して説明する。
音声制御処理が開始されると、CPU145は、ステップS21において、受信部144を制御し、図示せぬリモートコントローラより供給されるユーザ指示を受け付けるユーザ指示受付処理を行い、ステップS22において、そのユーザ指示受付処理によりモード情報を取得したか否かを判定する。
受信部144がリモートコントローラより供給されるユーザ指示を受け付けておらず、そのユーザ指示に含まれる、ユーザが指定した動作モードに関する情報であるモード情報も取得していないと判定した場合、CPU145は、処理をステップS21に戻し、それ以降の処理を繰り返す。
また、ステップS22においてモード情報を取得したと判定した場合、CPU145は、そのモード情報を信号選択部151、並びに、第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nに供給し、処理をステップS23に進める。
ステップS23において、モード情報を信号選択部151、並びに、第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、供給されたモード情報に基づいてパラメータマップ153を参照する。ステップS24において、信号選択部151は、参照したパラメータマップ153のテーブル情報に従って、ユーザに指定されたモードに対応する入出力を選択し、その選択した入出力をアクティブにする(接続する)。また、第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、ステップS25において、参照したパラメータマップ153のテーブル情報に従って、ユーザに指定されたモードに対応する処理パラメータを設定し、ステップS26において、設定した処理パラメータに基づいて信号選択部151より供給される音声信号を処理する。また、第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、ステップS27において、設定した処理パラメータに基づいて信号選択部151より供給される音声信号をフィルタ処理し、出力先のパネルに適した周波数成分を抽出する。特定の周波数成分を抽出した第1信号処理部152−1乃至第N信号処理部152−Nは、その音声信号を、振動素子147−1乃至振動素子147−Nに供給し、出力させる。
振動素子53−1乃至振動素子53−Nは、ステップS28において、供給された音声信号を、透明パネル51を振動させることにより、出力する。指向性を制御しながら音声を出力させると制御部90は、制御処理を終了する。
以上のように制御することにより、ユーザはモードを指定するだけで、容易に音声出力の指向性を制御することができる。
なお、1枚のパネルに設置する振動素子の数はいくつであってもよく、また、指向性の方向は左右だけでなく、上下方向や斜め方向等、任意の方向であってもよい。
図17は、テレビジョン受像機の前面に重畳させるフラットパネルスピーカの例を示す図である。
図17に示されるように、テレビジョン受像機170の前面は、画像を表示する表示面171と、その表示面171を囲むように形成される、画像を表示しない枠172により構成される。この前面に設置されるパネル181は、表示面171による画像表示を妨げないように、ガラスやアクリル等により形成される透明のパネルである。このパネルの周囲より両矢印182により示される所定の範囲の部分には、例えば12個の振動素子183−1乃至振動素子183−12がパネル181を囲むように配置されている。なお、この両矢印182の長さは、テレビジョン受像機170の枠172の太さに対応している。すなわち、振動素子183−1乃至振動素子183−12は、パネル181がテレビジョン受像機170の前面に重畳される際に、枠172上に位置するように配置される。
つまり、振動素子183−1乃至振動素子183−12は、テレビジョン受像機170の表示面171を囲むように配置されている。制御部90は、このように配置された振動素子の中から、振動させる素子を選択する(例えば、対角線上に位置する一対の振動素子の内、一方を振動させるようにすると同時に、他方を振動させないようにする)ことにより、出力音声に対して、上下左右や斜め方向等、任意の方向に指向性を持たせることができる。なお、このときのパネル181に設置される振動素子の数はいくつであってもよい。
以上のように、1枚のフラットパネルの、上下左右等の、互いに対向する両端付近に設けられる、フラットパネルを振動させる振動素子対の振動を制御部が制御することにより、フラットパネルスピーカは、フラットパネルからの出力音声の指向性を制御することができる。なお、指向性を制御する出力音声の周波数成分は、フラットパネルの形状や材質に依存する。
上述した制御部90の一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、制御部90は、図18に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
図18において、パーソナルコンピュータ200のCPU(Central Processing Unit)201は、ROM(Read Only Memory)202に記憶されているプログラム、または記憶部213からRAM(Random Access Memory)203にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
CPU201、ROM202、およびRAM203は、バス204を介して相互に接続されている。このバス204にはまた、入出力インタフェース210も接続されている。
入出力インタフェース210には、キーボード、マウスなどよりなる入力部211、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部212、ハードディスクなどより構成される記憶部213、モデムなどより構成される通信部214が接続されている。通信部214は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
入出力インタフェース210にはまた、必要に応じてドライブ215が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア221が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部213にインストールされる。
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
この記録媒体は、例えば、図18に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア221により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM202や、記憶部213に含まれるハードディスクなどで構成される。
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
1 フラットパネルスピーカ, 2 パネル, 3 振動素子, 4 配線, 5 制御部, 41 指示受付部, 42 出力選択部, 51 フラットパネルスピーカ, 80 スケーラブルTVシステム, 81乃至89 テレビジョン受像機, 90 制御部, 91乃至99 フラットパネルスピーカ, 146 音声出力制御部, 151 信号選択部, 152−1 第1信号処理部, 153 パラメータマップ