〔本発明の第一の実施の形態〕
以下、本発明の第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機を図1から図5に基づいて説明する。図1は本発明の第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機を外観斜め上方より見た概略図、図2は側方より見た概略縦断面図、図3は水槽の筒形状の軸方向(図2のC.L.に平行な方向)より見た水槽内部の構成を示す概略縦断面図、図4は正面より見た水槽の支持構造を示す概略縦断面図、図5は上方より見た概略横断面図を示す。
本発明の第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図1に示すように、その外観面を構成する外箱1を備えている。この外箱1は、その上面が天板2、その下部が底台3にて構成されるとともに、前後左右面を成す胴部4を備えている。天板2は、その後方側に一段低くした段部2aを設けており、この段部2aには後述する水道水給水口9および風呂水給水口10が配されている。また、図2に示すように、天面2の裏側(外箱1の内部側)のドラム式洗濯機の前後方向における中央部には、後述するサスペンション52、53、54の一端が連結される金属製の板材よりなるサスペンション取付部17が設けられる。
底台3は、水平断面形状が略矩形状を有し、その上部を構成する胴部4に対して前後左右方向のそれぞれの面がドラム式洗濯機本体の内側方向に向けて一段小さくなるように構成される。底台3の底面下側には、設置の際に床面と接触してドラム式洗濯機を支持する脚3aが、略矩形状の底台3のそれぞれの頂点近傍に取り付けられる。また、底台3の底面上側には、図4に示すように、後述するダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部18、19が配される。図4に示すように、ダンパー取付部18は左側、ダンパー取付部19は右側となるように配されており、側方より見てダンパー取付部18およびダンパー取付部19が同じ位置となるように構成される。なお、図2にはダンパー取付部18の符号に対してダンパー取付部19の符号が括弧書きにて示されているが、これは図示の方向である側方より見てダンパー取付部18およびダンパー取付部19が同じ位置に取り付けられることを示しており、これ以降、図面に示される括弧書きでない符号および括弧書きの符号が同じ位置を指している場合は、図示する方向より見てそれらの符号の構成が同じ位置に設けられることを示す。
胴部4は、図2に示すように、水平断面形状が略矩形状を有し、その前面側は、上方に向かうにつれて鉛直面に対して後方側へと面が傾斜するように側面から見て略円弧形状に構成される。胴部4の前面側には、図1に示すように、外箱1内外を連通する外箱開口部4aと、洗剤、漂白剤および柔軟剤を収容する洗剤ケース6と、操作キーや表示部を有する操作パネル7とが設けられる。
外箱開口部4aは、胴部4にヒンジ(図示せず)で回動自在に取り付けられた開閉扉5で開閉されるようになっている。洗剤ケース6は、胴部4内側に設けられる図示しない容器を備え、胴部4の外箱開口部4aの上方左部に前後方向にスライド自在に配される。操作パネル7は、洗剤ケース6の右側である胴部4の外箱開口部4aの上方右部に設けられており、使用者の操作により各種設定や運転指示を入力することができる。
ドラム式洗濯機の内部側である操作パネル7の背面側には、図2に示すように、ドラム式洗濯機の動作を制御する制御回路8が配置される。制御回路8は、その図示しない記憶手段に記憶された“標準コース”や“毛布コース”、“ドライコース”といった運転プログラムを適宜、使用者が設定することにより洗い工程、すすぎ工程、脱水運転(、及び乾燥工程)までを連続して若しくは各々の工程を単独で行うようにドラム式洗濯機各部の動作を制御する。
天板2の後方側の一段低くした段部2aには、図2に示すように、市水を供給する蛇口(図示せず)からの水をドラム式洗濯機内へと給水する水道水給水口9と、風呂の水をドラム式洗濯機内へと給水する風呂水給水口10とを備えている。水道水給水口9より供給された市水は、給水パイプ11、洗剤ケース6およびこの洗剤ケース6を備える給水容器12、給水容器12と後述する水槽20とを接続する給水ダクト13を経て、水槽20内に流入する。給水パイプ11には、給水弁14が設けられており、この給水弁14を制御回路8からの制御に基づき開閉動作させることにより水槽20内への市水の供給の制御がなされる。給水ダクト13は、例えばナイロンやゴム等の可撓性を有する材質により成り、水槽20の振動を外箱1に伝えにくい構成とされる。また、風呂水給水口10より吸引された風呂水は、風呂水パイプ15、洗剤ケース6およびこの洗剤ケース6を備える給水容器12、給水容器12と水槽20とを接続する給水ダクト13を経て、後述する水槽20に流入する。風呂水パイプ15には、風呂水ポンプ16が設けられており、この風呂水ポンプ16を制御回路8からの制御に基づき駆動または停止させることにより水槽20内への風呂水の供給の制御がなされる。
外箱1の内部には、図2に示すように、有底の筒形状を有する水槽20が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽20は、図3に示すように、その筒形状の軸方向(図2のC.L.に平行な方向)より見て上部側周壁は円筒状を有するとともに下部側周壁の一部が外径側に突出するように形成される。水槽20は、その軸方向に対して前方側を成す前部21と、水槽20の軸方向に対して後方側を成す後部22とをネジ29にて結合させて構成される。前部21には、その上方外周面に後述するサスペンション52、53の一端が連結されるサスペンション取付部23、24が設けられる。図5に示すように、サスペンション取付部23は左側、サスペンション取付部24は右側となるように配されており、側方より見てサスペンション取付部23および24が同じ位置となるように構成される。後部22には、図5に示すように、上方外周面の後方側中央部に後述するサスペンション54の一端が連結されるサスペンション取付部25が設けられる。また、後部22には、図4に示すように、下方外周面に後述するダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部26、27が配される。図4に示すように、ダンパー取付部26は左側、ダンパー取付部27は右側となるように配されており、側方より見てダンパー取付部26およびダンパー取付部27が同じ位置となるように構成される。
また、前部21には、図2に示すように、外箱開口部4aに対向して開口する水槽開口部21aが設けられる。水槽開口部21aには、外箱開口部4aとの間にそれぞれの開口を相互に水密に連結させるドアパッキン28が取り付けられる。ドアパッキン28は、蛇腹部28aを備え、水槽20の振動を外箱1に伝えにくいようになっている。開閉扉5を閉じた際には開閉扉5とドアパッキン28のシール部28bとが水密に密着して、水槽20内の液体が外箱開口部4aより漏れ出ることを防止できる。水槽20の上側中央部には、給水ダクト13が接続されており、この給水ダクト13を介して水道水給水口9および風呂水給水口10からの給水が水槽20内へと流入する。
一方、水槽20の下側後方部にある床面からの高さが最も低い箇所には、図2に示すように、水槽20内の水や洗濯液等の液体を水槽20の外部へと排出するための排水ダクト30が接続される。この排水ダクト30は、水槽20内から流れて来た液体中の糸屑を除去するフィルタユニット31、排水弁33を介してドラム式洗濯機本体外部へと連通する排水ホース32に接続される。排水弁33は、制御回路8の制御に基づき開閉動作させることにより水槽20内からの水の排出の制御がなされる。
水槽20の内部には、図2に示すように、有底円筒状を有するドラム34が、水槽20と同様にその円筒軸(図2のC.L.)が水平軸に対して後方側を5〜30°下降傾斜するように配される。また、図3に示すように、ドラム34の円筒軸は水槽20の上部側周壁の円筒軸とほぼ同心に配される。すなわち、ドラム34の下部側周壁と水槽20の外径側に突出した下部側周壁との距離は、ドラム34の上部側周壁と水槽20の上部側周壁との距離よりも大きくなるように構成されており、ドラム34の下部側周壁と水槽20の外径側に突出した下部側周壁との間の空間に後述するヒータ部40が配される。ドラム34には、外箱開口部4aおよび水槽開口部21aに対向して開口するドラム開口部34aが設けられており、これらの外箱開口部4a、水槽開口部21a、ドラム開口部34aを介してドラム34内への洗濯物の出し入れが行われる。
ドラム34は、その円筒周面の全体にわたって多数の小孔34bが設けられる(図2では12個の小孔34bだけを図示し、それ以外の小孔34bは図示省略している)。この小孔34bは、水槽20内とドラム34内とを連通させるものであり、水槽20内とドラム34内との空気や液体とが出入りできるようになっている。また、ドラム34の内壁面には、ドラム34の円筒中心軸方向に向かって突出するバッフル34cが設けられる。このバッフル34cは、周方向にn(n=2以上の自然数)回軸を有する回転対称となるように、例えば120°間隔にて3箇所(3回軸)に配置される。バッフル34cは、洗い工程またはすすぎ工程においてドラム34の回転に伴い、内包された洗濯物を持上げて洗濯水またはすすぎ水に落下させることを繰り返して洗濯物の洗浄またはすすぎを行うものである。
ドラム34の背面中央部には、その軸方向がドラム34の円筒軸と同一であるドラム軸34dが後方に突出するように設けられる。ドラム軸34dは、水槽20の後方側を形成する後部22の底面を貫通するとともに、その先端部が後部22の背面側にネジ35にて取り付けられる電動機たるモータ36に入り込む。モータ36は、その外周を覆うモータカバー36aと、ドラム軸34dを回動可能に支持する軸受36bと、ドラム軸34dを回転駆動させるロータ36cと、このロータ36cに磁力にて回転駆動力を付与するステータ36dとを備えている。モータ36は、制御回路8による制御に基づいてステータ36dを介してロータ36cを駆動させて、ドラム34を回転駆動させる。
また、ドラム開口部34a周辺部には、ドラム34の周面を半径方向内側に向けて小径となるように形成した絞り部34eを設けるとともに、その外周に沿って液体バランサ37が固着される。液体バランサ37は、環状を有する中空の外殻と、その内部に封入される塩水等の液体により構成される。この液体バランサ37は、特に脱水工程の高速回転時において洗濯物の偏りによってアンバランスが発生した際に、内部の液体の移動によってアンバランスを打ち消すことができるものである。
水槽20の周面内側下方且つドラム34の周面外側下方の右側の空間には、図2および図3に示すように、ヒータ部40が設けられる。ヒータ部40は、通風経路を形成するヒータケース40aと、このヒータケース40a内に配されるヒータ40bを備えている。ヒータ40bは、洗い工程やすすぎ工程においては洗濯水やすすぎ水を加熱して洗浄効果やすすぎ効果を向上させ、また、乾燥工程においては水槽内の空気を加熱する。水槽20の周面内側下方且つドラム34の周面外側下方の左側の空間には、図3に示すように、除湿用の熱交換プレート41が配される。熱交換プレート41は開断面形状を有し、乾燥工程においてその上面に水道水給水口9から給水される水を流すことにより、水槽20内の空気を冷却する。水槽20の背面下部には、送風ファン42が取り付けられている。送風ファン42は、熱交換プレート41を通った空気を吸引するとともに、その吸引された空気をヒータ部40に排出する。
すなわち、第一の実施の形態のドラム式洗濯機の乾燥工程において、ヒータ部40により加熱された空気は、ドラム34内へと流れ込んで洗濯物の水分を気化させる。この気化した水分を多く含んだ湿潤空気は、熱交換プレート41にて冷却されて水分が凝縮して乾燥空気となる。この乾燥した空気は、送風ファン42を経てヒータ部40によって再加熱されて洗濯物の水分除去に供される。これらの動作が洗濯物の乾燥が終了するまで繰り返されることにより乾燥工程が進行する。また、ヒータ部40、熱交換プレート41、送風ファン42は、水槽の下部に設けられるので、洗い工程やすすぎ工程においてこれらの部材は洗濯水やすすぎ水中に水没し、これらの部材に付着した糸屑等を除去することができる。
水槽20の外側下方には、水槽20を下方より弾性的に押し上げ支持する緩衝手段たる2本のダンパー50、51が配される。図4に示すように、ダンパー50は、前方より見て水槽20の左側部を支持し、ダンパー51は、前方より見て水槽20の右側部を支持する。第一の実施の形態においては、ダンパー50およびダンパー51は、それぞれ上方にオイルを封入したシリンダ部と、下方にコイルバネを備えた弾性を備え且つ減衰機能を有する一般的なオイルダンパーを用いているが、例えばエアダンパー等の同様の性能を備える他のダンパーも採用可能である。ダンパー50およびダンパー51は、その一端をそれぞれ水槽20の外周面に設けられるダンパー取付部26、27に弾性部材50a、51aを介して連結するとともに、他端をそれぞれ底台3の底面部に設けられるダンパー取付部18、19に弾性部材50b、51bを介して連結される。このように、ダンパー50、51は、水槽20を弾性的に押し上げ支持し、また、ダンパー50、51と水槽20および外箱1との連結が弾性部材50a、51a、50b、51bを介して行われるので、水槽20からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
また、図4に示すように、前方より見て、ダンパー取付部18はダンパー取付部26に対して左側となるように、ダンパー取付部19はダンパー取付部27に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部18とダンパー取付部19およびダンパー取付部26とダンパー取付部27はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部18およびダンパー取付部19はそれぞれダンパー取付部26およびダンパー取付部27に対して鉛直下方に配置される。すなわち、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P1(図2および図4参照)とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P2(図4参照)とを結ぶP1−P2軸(図4参照)がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽20の外側上方には、水槽20を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる3本のサスペンション52、53、54が配される。図5に示すように、サスペンション52は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション53は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション54は上方より見て水槽の後方方中央部を支持する。サスペンション52、53、54は、その一端をそれぞれサスペンション取付部17の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽20の外周面に設けられたサスペンション取付部23、24、25に連結される。第一の実施の形態においては、サスペンション52、53、54は、それぞれ一般的なコイルバネを用いているが、例えばエアダンパー等の弾性的に吊り下げ支持可能なものも採用可能である。このように、サスペンション52、53、54は、弾性的に吊り下げ支持するので、水槽20からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
また、図2に示すように、サスペンション取付部17は、サスペンション取付部23(24)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部25に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図2に示すように、サスペンション52(53)はサスペンション52(53)の水槽20からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ1(0°<θ1<90°)の角度を成すように、また、サスペンション54はサスペンション54の水槽20からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ2(0°<θ2<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション52(53)およびサスペンション54はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、図2に示すように、サスペンション取付部17は、後述する振動体負荷57の重心の位置G1よりも前方となるように配されており、サスペンション52(53)による水槽20の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。また、図5に示すように、サスペンション52、53、54は、上方より見てそれぞれドラム式洗濯機の前後方向と平行となるように配置される。
このドラム式洗濯機において、外箱1内にダンパー50、51およびサスペンション52、53、54によって水槽20(ダンパー取付部26、27およびサスペンション取付部23、24、25含む)とともに弾性支持される部材として、ドラム34(バッフル34c、ドラム軸34d含む)、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート41、送風ファン42、液体バランサ37が挙げられる。以降は、洗濯工程または乾燥工程において水槽20とともに振動するこれらの部材(水槽20、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート41、送風ファン42、液体バランサ37)より成る構成を荷重負荷55と呼称する。また、洗い工程またはすすぎ工程においては、ドラム内に投入される洗濯物と、水槽20内に供給される洗濯水またはすすぎ水とがダンパー50、51およびサスペンション52、53、54に対する負荷となって水槽20とともにダンパー50、51およびサスペンション52、53、54によって弾性支持される。これらの洗い工程またはすすぎ工程においてダンパー50、51およびサスペンション52、53、54に対する負荷となる洗濯物や洗濯水またはすすぎ水より成る重量体を洗濯負荷56と呼称する。また、荷重負荷55と洗濯負荷56とを合計した重量体を振動体負荷57と呼称する。
荷重負荷55の重心の位置をg1、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重心の位置をg2、このときの振動体負荷57の重心の位置をG1として図2に示す。本発明の第一の実施の形態において、洗濯負荷56の重心の位置g2は荷重負荷55の重心の位置g1の前方且つ下方に存在する。振動体負荷57の重心は、洗濯負荷56の重心の位置g2と荷重負荷55の重心の位置g1とを結ぶ線分上の点G1となる。ここで、ダンパー50、51は、図2に示すように、荷重負荷55の重心の位置g1と振動体負荷57の重心の位置G1との間の位置を支持するように配されている。具体的には、ダンパー50およびダンパー51のそれぞれの弾性支持の方向軸と一致する鉛直平面と、荷重負荷55の重心の位置g1と振動体負荷57の重心の位置G1とを結ぶ線分とが交点を有することを意味する。
洗い工程やすすぎ工程、脱水工程といった洗濯工程や、乾燥工程において、水槽20の姿勢は、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P1とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P2とを結ぶP1−P2軸に対する、振動体負荷57の重心の前後方向の位置の影響を受ける。つまり、振動体負荷57の重心がP1−P2軸に対して前方にある場合、水槽20は、P1−P2軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P1−P2軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図2に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷57にはP1−P2軸を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽20はP1−P2軸を中心として左回りに回動することとなる。
逆に、振動体負荷57の重心がP1−P2軸に対して後方にある場合、水槽20は、P1−P2軸よりも前方側にある部分が上方へ向けて、P1−P2軸よりも後方側にある部分が下方へ向けて変位しようとする。すなわち、図2に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷57にはP1−P2軸を中心とする右回り(時計回り)のモーメントが発生して、水槽20はP1−P2軸を中心として右回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽20は全体的にさらに下方に変位することとなる。
第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機においては、荷重負荷55の重心の位置g1に対して洗濯負荷56の重心が下方且つ前方にあるため、洗濯負荷56の重量が増加するにつれて振動体負荷57の重心が前方側へとシフトし、水槽20の前方側の沈み込みの変位は大きくなる。前述のようにサスペンション52、53は水槽20の前方側を上方且つ後方側、つまり、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P1とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P2とを結ぶP1−P2軸を中心として右回りへ回転させる引っ張り力を与え、また、サスペンション54は、水槽20の後方側を上方且つ前方側、つまり、P1−P2軸を中心として左回りへ回転させる引っ張り力を与えるので、効率的に水槽20のP1−P2軸を中心とする回動を防止させることができる。さらに、サスペンション52、53、54は上方へと引っ張る効果を有しており、水槽20の前方側および後方側の沈み込みを防止できる。特に、問題となりやすい水槽20の前方側の沈み込みを防止することによりドアパッキン28の過変形による傷みを防止することができる。また、外箱1の胴部4前面側上部にサスペンション52、53の取り付け部が必要ないため、外箱1の胴部4前面側上部の形状に制約を受けることがない。
また、一般的にドラム式洗濯機は、洗濯負荷56の重量がゼロの状態にて運転されることはなく、また、定格重量の洗濯物が投入された状態にて運転されることも少ない。また、振動が特に発生しやすい脱水工程においては、定格重量の洗濯物が投入された場合でも水槽20内の液体が排水された状態でドラム34が回転するので(洗濯物が吸水している液体は除く)、脱水工程での振動体負荷57の重心位置は前後方向において点G1と点g1との間に存在することとなる。このため、第一の実施の形態のように、ダンパー50、51を荷重負荷55の重心の位置g1と振動体負荷57の重心の位置G1との間の位置を支持するように配置することにより、ドラム34に投入される洗濯物の量に関わらず水槽の姿勢を維持可能なドラム式洗濯機を提供できる。
〔第一の参考例〕
次に、第一の参考例に係るドラム式洗濯機を図6に基づいて説明する。図6は、第一の参考例に係るドラム式洗濯機を側方より見た概略縦断面図を示す。なお、この第一の参考例については、上述した第一の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、第一の実施の形態と異なる部分のみ説明を行う。
第一の参考例に係るドラム式洗濯機は、図6に示すように、その外観面を構成する外箱60を備えている。この外箱60は、その上面が天板2、その下部が底台3にて構成されるとともに、前後左右面を成す胴部61を備えている。胴部61の前面側には、外箱60内外を連通する外箱開口部61aが設けられるとともに、第一の実施の形態と同様にその上部に図示しない洗剤ケースと、操作パネルが配される。また、外箱開口部61aは、胴部61にスライド溝61bにて上下方向に摺動自在に取り付けられた開閉扉62で開閉されるようになっている。外箱開口部61aの下端部には、エラストマー等の軟質且つ弾性を備えた材質にて形成される軟質部材69が取り付けられる。軟質部材69は、水槽63の前方側の大きな沈み込みに伴う水槽63と外箱60との接触による異音発生や部品の破損・傷付きを防止するためのものである。
外箱60の内部には、有底の筒形状を有する水槽63が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽63は、その軸方向に対して前方側を成す前部64と、水槽63の軸方向に対して後方側を成す後部22とをネジ29にて結合させて構成される。前部64には、外箱開口部61aに対向して開口する水槽開口部64aが設けられる。水槽開口部64aは、ヒンジ(図示せず)で回動自在に取り付けられた水槽扉65で開閉されるようになっている。また、水槽開口部64aには、その内周面から前部64前面部周辺にかけてシール部材66が取り付けられており、水槽扉65を閉じた際には水槽扉65とシール部材66とが水密に密着して、水槽63内の液体が外箱開口部61aより漏れ出ることを防止できる。
また、前部64には、その上方外周面にサスペンション52、53の一端が連結されるサスペンション取付部67、68が設けられる。サスペンション取付部67、68は、第一の実施の形態と同様にサスペンション取付部67が左側、サスペンション取付部68が右側となるように且つ側方より見てサスペンション取付部67およびサスペンション取付部68が同じ位置となるように配される。
また、水槽63の外箱60への取り付け状態においては、第一の実施の形態と同様にダンパー取付部18はダンパー取付部26に対して左側となるように、ダンパー取付部19はダンパー取付部27に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部18とダンパー取付部19およびダンパー取付部26とダンパー取付部27はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部18およびダンパー取付部19はそれぞれダンパー取付部26およびダンパー取付部27に対して鉛直下方に配置される。すなわち、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P3(図4のP1に相当)とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P4(図4のP2に相当)とを結ぶP3−P4軸がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
天面2の裏側(外箱60の内部側)のドラム式洗濯機の前後方向における中央部に配されるサスペンション取付部17は、第一の実施の形態と同様に、サスペンション取付部67(68)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部25に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図6に示すように、サスペンション52(53)はサスペンション52(53)の水槽63からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ3(0°<θ3<90°)の角度を成すように、また、サスペンション54はサスペンション54の水槽63からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ4(0°<θ4<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション52(53)およびサスペンション54はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、図6に示すように、サスペンション取付部17は、後述する振動体負荷71の重心の位置G2よりも前方となるように配されており、サスペンション52(53)による水槽63の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。また、サスペンション52、53、54は、第一の実施の形態と同様に、上方より見てそれぞれドラム式洗濯機の前後方向と平行となるように配置される。
このドラム式洗濯機において、荷重負荷70は、水槽63、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート(本実施例においては図示せず。第一の実施の形態の図3同様にヒータ部40の左側に配される)、送風ファン42、液体バランサ37より構成される。ここで、ダンパー50、51は、図6に示すように、荷重負荷70の重心の位置g3と、洗濯負荷56の荷重負荷70と定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56(重心の位置g2)とを合計した振動体負荷71の重心の位置G2との間の位置を支持するように配されている。
振動体負荷71の重心がP3−P4軸に対して前方にある場合、水槽63は、P3−P4軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P3−P4軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図6に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷71にはP3−P4軸を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽63はP3−P4軸を中心として左回りに回動することとなる。逆に、振動体負荷71の重心がP3−P4軸に対して後方にある場合、水槽63は、P3−P4軸よりも前方側にある部分が上方へ向けて、P3−P4軸よりも後方側にある部分が下方へ向けて変位しようとする。すなわち、図6に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷71にはP3−P4軸を中心とする右回り(時計回り)のモーメントが発生して、水槽63はP3−P4軸を中心として右回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽63は全体的にさらに下方に変位することとなる。
第一の実施の形態ではドアパッキン28の蛇腹部28aにて水槽20の振動が外箱1に伝わらないように緩衝するわけであるが、この蛇腹部28aは若干の剛性を有するために水槽20の振動がドアパッキン28を介して外箱1に伝わってしまう。そこで、第一の参考例のドラム式洗濯機では、外箱開口部61aと水槽開口部64aとを直接連結する部材を介在させないことにより水槽20の振動が外箱1に伝わりにくい構造としている。逆に言えば、第一の実施の形態では水槽開口部21aは、外箱開口部4aとの間にて若干の剛性を有する蛇腹部28aにて懸架されていたことになる。つまり、第一の参考例のドラム式洗濯機は、第一の実施の形態のものよりも水槽開口部64aの上方への浮き上がりや下方への沈み込みが大きいといえる。このようなドラム式洗濯機において、水槽開口部64aの上方への浮き上がりや下方への沈み込みにより大きな変位が発生すると、水槽と外箱の干渉、ダンパー、弾性部材への過荷重が加わり、また、水槽開口部64aを水密に閉塞する水槽扉65が開放できなくなり、61aの開口部から水槽扉65の位置がそれるため洗濯物の途中追加ができない、洗濯終了時に衣類を取り出すさい扉が開かない等使用性を大きく損なうこととなる。
第一の参考例のドラム式洗濯機は、第一の実施の形態と同様に、荷重負荷70の重心の位置g3に対して洗濯負荷56の重心が下方且つ前方にあるため、洗濯負荷56の重量が増加するにつれて振動体負荷71の重心が前方側へとシフトし、水槽63の前方側の沈み込みの変位は大きくなる。サスペンション52、53は水槽63の前方側を上方且つ後方側、つまり、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P3とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P3とを結ぶP3−P4軸を中心として右回りへ回転させる引っ張り力を与え、また、サスペンション54は、水槽63の後方側を上方且つ前方側、つまり、P3−P4軸を中心として左回りへ回転させる引っ張り力を与えるので、効率的に水槽63のP3−P4軸を中心とする回動を防止させることができる。また、サスペンション52、53、54は上方へと引っ張る効果を有しており、水槽63の前方側および後方側の沈み込みを防止できる。すなわち、第一の参考例のドラム式洗濯機の構成によれば、水槽63からの外箱60への振動の伝播を防止する効果を損なうことなく、水槽扉65の開放が確実に可能な使用性の高いドラム式洗濯機を提供できる。
〔第二の参考例〕
次に、第二の参考例に係るドラム式洗濯機を図7に基づいて説明する。図7は、第二の参考例に係るドラム式洗濯機を側方より見た概略縦断面図を示す。なお、この第二の参考例については、上述した第一の参考例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、第一の参考例と異なる部分のみ説明を行う。
第二の参考例に係るドラム式洗濯機は、図7に示すように、その外観面を構成する外箱60を備えている。外箱60の下部を構成する底台3の底面上側には、図7に示すように、後述するダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部72、73が配される。ダンパー取付部72は左側、ダンパー取付部73は右側となるように配されており、第一の実施の形態と同様に、側方より見てダンパー取付部72およびダンパー取付部73が同じ位置となるように構成される。
また、外箱60の内部には、有底の筒形状を有する水槽74が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽74は、その軸方向に対して前方側を成す前部64と、水槽74の軸方向に対して後方側を成す後部75とをネジ29にて結合させて構成される。後部75には、第一の実施の形態と同様に、上方外周面の後方側中央部に後述するサスペンション81の一端が連結されるサスペンション取付部76が設けられる。また、後部75には、第一の実施の形態と同様に、下方外周面にダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部77、78が配される。ダンパー取付部77は左側、ダンパー取付部78は右側となるように配されており、第一の実施の形態と同様に、側方より見てダンパー取付部77およびダンパー取付部78が同じ位置となるように構成される。
ダンパー50およびダンパー51は、その一端をそれぞれ水槽74の外周面に設けられるダンパー取付部77、78に弾性部材50a、51aを介して連結するとともに、他端をそれぞれ底台3の底面部に設けられるダンパー取付部72、73に弾性部材50b、51bを介して連結される。このように、ダンパー50、51は、水槽74を弾性的に押し上げ支持し、また、ダンパー50、51と水槽74および外箱60との連結が弾性部材50a、51a、50b、51bを介して行われるので、水槽74からの外箱60への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
ダンパー取付部72はダンパー取付部77に対して左側となるように、ダンパー取付部73はダンパー取付部78に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部72とダンパー取付部73およびダンパー取付部77とダンパー取付部78はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部72およびダンパー取付部73はそれぞれダンパー取付部77およびダンパー取付部78に対して鉛直下方に配置される。すなわち、ダンパー取付部77とダンパー50との接続位置P5(図4のP1に相当)とダンパー取付部78とダンパー51との接続位置P6(図4のP2に相当)とを結ぶP5−P6軸がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽74の外側上方には、水槽74を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる3本のサスペンション79、80、81が配される。サスペンション79は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション80は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション81は上方より見て水槽の後方方中央部を支持する。サスペンション79、80、81は、その一端をそれぞれサスペンション取付部17の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽74の外周面に設けられたサスペンション取付部67、68、76に連結される。
天面2の裏側(外箱60の内部側)のドラム式洗濯機の前後方向における中央部に配されるサスペンション取付部17は、第一の実施の形態と同様に、サスペンション取付部67(68)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部76に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図7に示すように、サスペンション79(80)はサスペンション79(80)の水槽74からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ5(0°<θ5<90°)の角度を成すように、また、サスペンション81はサスペンション81の水槽74からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ6(0°<θ6<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション79(80)およびサスペンション81はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、図7に示すように、サスペンション取付部17は、後述する振動体負荷83の重心の位置G3よりも前方となるように配されており、サスペンション79(80)による水槽74の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。また、サスペンション79、80、81は、第一の実施の形態と同様に、上方より見てそれぞれドラム式洗濯機の前後方向と平行となるように配置される。
このドラム式洗濯機において、荷重負荷82は、水槽74、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート(本実施例においては図示せず。第一の実施の形態の図3同様にヒータ部40の左側に配される)、送風ファン42、液体バランサ37より構成される。ここで、荷重負荷82の重心の位置をg4、洗濯負荷56の荷重負荷82と定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56(重心の位置g2)とを合計した振動体負荷83の重心の位置G3をとすると、ダンパー50、51は、図7に示すように、荷重負荷82の重心の位置g4を支持するように配される。
このドラム式洗濯機では、洗濯負荷56が投入された場合、振動体負荷83の重心はP5−P6軸よりも前方に存在するため、水槽74はP5−P6軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P5−P6軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図7に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷83にはP5−P6を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽74はP5−P6軸を中心として左回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽74は全体的にさらに下方に変位することとなる。
第二の参考例のドラム式洗濯機においては、荷重負荷82の重心の位置g4に対して洗濯負荷56の重心が下方且つ前方にあるため、洗濯負荷56の重量が増加するにつれて振動体負荷71の重心が前方側へとシフトし、水槽74の前方側の沈み込みの変位は大きくなる。サスペンション79、80は水槽74の前方側を上方且つ後方側、つまり、ダンパー取付部77とダンパー50との接続位置P5とダンパー取付部78とダンパー51との接続位置P6とを結ぶP5−P6軸を中心として右回りへ回転させる引っ張り力を与えるので、効率的に水槽74のP5−P6軸を中心とする左回り(反時計回り)の回動を防止させることができる。また、サスペンション79、80、81は上方へと引っ張る効果を有しており、水槽74の前方側の沈み込みを防止できる。また、このドラム式洗濯機においては、洗濯負荷56の重心の位置の瞬間的な移動を除き、水槽74のP5−P6軸を中心とする右回り(時計回り)の回動が起こることはないといえる。つまり定常的な水槽74の後方側の沈み込みは発生しないので、サスペンション81に対して低いばね定数のコイルバネの使用や、またはサスペンション81を廃止する等の構成を可能とできる。
〔第三の参考例〕
次に、第三の参考例に係るドラム式洗濯機を図8に基づいて説明する。図8は、第三の参考例に係るドラム式洗濯機を側方より見た概略縦断面図を示す。なお、この第三の参考例については、上述した第二の参考例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、第二の参考例と異なる部分のみ説明を行う。
第三の参考例に係るドラム式洗濯機は、図8に示すように、その外観面を構成する外箱60を備えている。外箱60の下部を構成する底台3の底面上側には、図8に示すように、後述するダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部84、85が配される。ダンパー取付部84は左側、ダンパー取付部85は右側となるように配されており、第一の実施の形態と同様に、側方より見てダンパー取付部84およびダンパー取付部85が同じ位置となるように構成される。
また、外箱60の内部には、有底の筒形状を有する水槽86が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽86は、その軸方向に対して前方側を成す前部64と、水槽86の軸方向に対して後方側を成す後部87とをネジ29にて結合させて構成される。後部87には、第一の実施の形態と同様に、上方外周面の後方側中央部に後述するサスペンション93の一端が連結されるサスペンション取付部88が設けられる。また、後部87には、第一の実施の形態と同様に、下方外周面にダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部89、90が配される。ダンパー取付部89は左側、ダンパー取付部90は右側となるように配されており、第一の実施の形態と同様に、側方より見てダンパー取付部89およびダンパー取付部90が同じ位置となるように構成される。
ダンパー50およびダンパー51は、その一端をそれぞれ水槽74の外周面に設けられるダンパー取付部89、90に弾性部材50a、51aを介して連結するとともに、他端をそれぞれ底台3の底面部に設けられるダンパー取付部84、85に弾性部材50b、51bを介して連結される。このように、ダンパー50、51は、水槽86を弾性的に押し上げ支持し、また、ダンパー50、51と水槽86および外箱60との連結が弾性部材50a、51a、50b、51bを介して行われるので、水槽86からの外箱60への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
ダンパー取付部84はダンパー取付部89に対して左側となるように、ダンパー取付部85はダンパー取付部90に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部84とダンパー取付部85およびダンパー取付部89とダンパー取付部90はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部84およびダンパー取付部85はそれぞれダンパー取付部89およびダンパー取付部90に対して鉛直下方に配置される。すなわち、ダンパー取付部89とダンパー50との接続位置P7(図4のP1に相当)とダンパー取付部90とダンパー51との接続位置P8(図4のP2に相当)とを結ぶP7−P8軸がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽86の外側上方には、水槽86を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる3本のサスペンション91、92、93が配される。サスペンション91は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション92は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション93は上方より見て水槽の後方方中央部を支持する。サスペンション91、92、93は、その一端をそれぞれサスペンション取付部17の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽86の外周面に設けられたサスペンション取付部67、68、88に連結される。
天面2の裏側(外箱60の内部側)のドラム式洗濯機の前後方向における中央部に配されるサスペンション取付部17は、第一の実施の形態と同様に、サスペンション取付部67(68)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部88に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図8に示すように、サスペンション91(92)はサスペンション91(92)の水槽86からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ7(0°<θ7<90°)の角度を成すように、また、サスペンション93はサスペンション93の水槽86からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ8(0°<θ8<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション91(92)およびサスペンション93はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、図8に示すように、サスペンション取付部17は、後述する振動体負荷95の重心の位置G4よりも前方となるように配されており、サスペンション91(92)による水槽86の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。また、サスペンション91、92、93は、第一の実施の形態と同様に、上方より見てそれぞれドラム式洗濯機の前後方向と平行となるように配置される。
このドラム式洗濯機において、荷重負荷94は、水槽86、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート(本実施例においては図示せず。第一の実施の形態の図3同様にヒータ部40の左側に配される)、送風ファン42、液体バランサ37より構成される。ここで、荷重負荷94の重心の位置をg5、洗濯負荷56の荷重負荷94と定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56(重心の位置g2)とを合計した振動体負荷95の重心の位置G4をとすると、ダンパー50、51は、図8に示すように、振動体負荷95の重心の位置G4を支持するように配される。
このドラム式洗濯機では、定格容量の洗濯負荷56が投入されない場合、振動体負荷95の重心はP7−P8軸よりも後方に存在するため、水槽86はP7−P8軸よりも前方側にある部分が上方へ向けて、P7−P8軸よりも後方側にある部分が下方へ向けて変位しようとする。すなわち、図8に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷95にはP7−P8を中心とする右回り(時計回り)のモーメントが発生して、水槽86はP7−P8軸を中心として右回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽86は全体的にさらに下方に変位することとなる。
第三の参考例のドラム式洗濯機においては、サスペンション93は水槽86の後方側を上方且つ前方側、つまり、ダンパー取付部89とダンパー50との接続位置P7とダンパー取付部90とダンパー51との接続位置P8とを結ぶP7−P8軸を中心として左回りへ回転させる引っ張り力を与えるので、効率的に水槽86のP7−P8軸を中心とする右回り(時計回り)の回動を防止させることができる。また、サスペンション91、92、93は上方へと引っ張る効果を有しており、水槽86の前方側の沈み込みを防止できる。また、このドラム式洗濯機においては、洗濯負荷56の重心の位置の瞬間的な移動を除き、水槽86のP7−P8軸を中心とする左回り(反時計回り)の回動が起こることはないといえる。つまり定常的な水槽86の前方側の沈み込みは発生しないので、サスペンション91、92に対して低いばね定数のコイルバネの使用や、またはサスペンション91、92を廃止する等の構成を可能とできる。
また、上述した本発明の第一の実施の形態から第三の参考例までのドラム式洗濯機においては、水槽を下方より弾性的に押し上げ支持する緩衝手段として2本のダンパーを用いているが、水槽の左右方向の振動を考慮する必要がなければ1本のダンパーにて荷重負荷の重心の位置gm(m=1、3、4、5)と振動体負荷の重心の位置Gn(n=1、2、3、4)との間の位置を鉛直上方に向けて支持することも可能である。
〔本発明の第二の実施の形態〕
次に、本発明の第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機を図9および図10に基づいて説明する。図9は、本発明の第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機を側方より見た概略縦断面図、を示す。なお、この第二の実施の形態については、上述した第一の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、第一の実施の形態と異なる部分のみ説明を行う。
本発明の第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図9に示すように、その外観面を構成する外箱1を備えている。外箱1の下部を構成する底台3の底面上側には、図9に示すように、後述するダンパー50、51、96の一端が連結されるダンパー取付部97、98、99が配される。ダンパー取付部97は後方左側、ダンパー取付部98は後方右側、ダンパー取付部99は前方中央部となるように配されており、側方より見てダンパー取付部97およびダンパー取付部98は同じ位置となるように構成される。
また、外箱1の内部には、有底の筒形状を有する水槽100が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽100は、その軸方向に対して前方側を成す前部21と、水槽100の軸方向に対して後方側を成す後部101とをネジ29にて結合させて構成される。後部101には、第一の実施の形態と同様に、上方外周面の後方側中央部にサスペンション54の一端が連結されるサスペンション取付部102が設けられる。また、後部101には、下方外周面にダンパー50、51、96の一端が連結されるダンパー取付部103、104、105が配される。ダンパー取付部103は後方左側、ダンパー取付部104は後方右側、ダンパー取付部105は前方中央部となるように配されており、側方より見てダンパー取付部103およびダンパー取付部104が同じ位置となるように構成される。
水槽100の外側下方には、水槽100の後方部を下方より弾性的に押し上げ支持する緩衝装置たる2本のダンパー50、51と、水槽100の前方部を下方より弾性的に押し上げ支持する別の緩衝装置たるダンパー96が配される。図10に示すように、ダンパー50は、前方より見て水槽100の左側部を支持し、ダンパー51は、前方より見て水槽100の右側部を支持する。ダンパー50、51、96は、その一端をそれぞれ水槽100の外周面に設けられるダンパー取付部103、104、105に弾性部材50a、51a、96aを介して連結するとともに、他端をそれぞれ底台3の底面部に設けられるダンパー取付部97、98、99に弾性部材50b、51b、96bを介して連結される。このように、ダンパー50、51、96は、水槽100を弾性的に押し上げ支持し、また、ダンパー50、51、96と水槽100および外箱1との連結が弾性部材50a、51a、96a、50b、51b、96bを介して行われるので、水槽100からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
図10に示すように、前方より見て、ダンパー取付部97はダンパー取付部103に対して左側となるように、ダンパー取付部98はダンパー取付部104に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部97とダンパー取付部98およびダンパー取付部103とダンパー取付部104はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部97およびダンパー取付部98はそれぞれダンパー取付部103およびダンパー取付部104に対して鉛直下方に配置される。また、図9および図10に示すように、前方および側方より見てダンパー取付部99はダンパー取付部105に対していずれも鉛直下方となるように配される。すなわち、ダンパー取付部103とダンパー50との接続位置P9(図9および図10参照)とダンパー取付部104とダンパー51との接続位置P10(図10参照)とを結ぶP9−P10軸(図10参照)がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽100の外側上方には、水槽100を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる3本のサスペンション52、53、54が配される。第一の実施の形態と同様に、サスペンション52は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション53は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション54は上方より見て水槽の後方方中央部を支持する。サスペンション52、53、54は、その一端をそれぞれサスペンション取付部17の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽100の外周面に設けられたサスペンション取付部23、24、102に連結される。このように、サスペンション52、53、54は、弾性的に吊り下げ支持するので、水槽100の回動を抑え、水槽100からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
第二の実施の形態および後述する第三の参考例において水槽の前方側を下方より支持するダンパー96と、第一の実施の形態から第三の参考例において水槽の前方側を上方より支持するサスペンション52、53、67、68の一実施形態を図11に基づいて説明する。図11(a)および(b)はダンパー96の伸長状態および短縮状態における概略断面図を、図11(c)および図11(d)はサスペンション52の短縮状態および伸長状態における概略断面図を示す。なお、サスペンション53、67、68はサスペンション52と同様の構造を備えており、説明は省略する。ダンパー96は、図11(a)に示すように、その上端部および下端部にそれぞれ水槽および外箱に接続される弾性部材96aおよび96bを備える。また、ダンパー96は、弾性部材96aおよび96bとの間にオイルが内封されたシリンダ96cと、その先端がシリンダ96c内部に入り込むするとともに減衰可能に摺動するピストン96dと、ピストン96dをその内径部に通してシリンダ96c外面下端部と弾性部材96b上端部との間を弾性的に支持するコイルばね96eとを備えている。水槽の前方側の一定の距離以上の下方への変位によってダンパー96が図11(a)の伸長状態から図11(b)の短縮状態へと移行すると、コイルばね96eを構成する上下の線材が接触して、それ以上縮まないようになる。つまり、ダンパー96は、前方側の下方への変位を制限するように作用するとともに、コイルばね96eがこのストッパー機能を有する。
また、サスペンション52は、図11(c)に示すように、その上端部および下端部にそれぞれ外箱および水槽に接続される接続部52aおよび52bを備える。また、サスペンション52は、接続部52aおよび52bとの間に接続部52aの下端部が突入するシリンダ52cと、シリンダ52cに内包されて接続部52aの下端部に配される鍔部52dと、シリンダ52c内面上端部と鍔部52d上面との間を弾性的に支持するコイルばね52eとを備えている。水槽の前方側の一定の距離以上の下方への変位によってサスペンション52が図11(c)の短縮状態から図11(d)の伸長状態へと移行すると、コイルばね52eを構成する上下の線材が接触して、それ以上伸びないようになる。つまり、サスペンション52は、上述したダンパー96と同様に水槽の前方側の下方への変位を制限するように作用するとともに、コイルばね52eがこのストッパー機能を有する。このように、ダンパー96およびサスペンション52のストッパー機能により、水槽は図2、図6、図7、図8、図9、図12に示す側面概略図における左回り(反時計回り)の回動が制限されて水槽の振動による外箱への接触を防止できる。
また、図9に示すように、サスペンション取付部17は、サスペンション取付部23(24)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部102に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図9に示すように、サスペンション52(53)はサスペンション52(53)の水槽100からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ9(0°<θ9<90°)の角度を成すように、また、サスペンション54はサスペンション54の水槽100からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ10(0°<θ10<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション52(53)およびサスペンション54はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、図9に示すように、サスペンション取付部17は、後述する振動体負荷107の重心の位置G5よりも前方となるように配されており、サスペンション52(53)による水槽100の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。また、第一の実施の形態と同様に、サスペンション52、53、54は、上方より見てそれぞれドラム式洗濯機の前後方向と平行となるように配置される。
このドラム式洗濯機において、荷重負荷106は、水槽100、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート(本実施例においては図示せず。第一の実施の形態の図3同様にヒータ部40の左側に配される)、送風ファン42、液体バランサ37より構成される。ここで、荷重負荷106の重心の位置をg6、洗濯負荷56の荷重負荷106と定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56(重心の位置g2)とを合計した振動体負荷107の重心の位置をG5とすると、ダンパー50、51は、図9に示すように、荷重負荷106の重心の位置g6の後方側を支持するように配される。具体的には、ダンパー50、51のそれぞれの弾性支持の方向軸を通る鉛直平面と、振動体負荷107の重心の位置G5から荷重負荷106の重心の位置g6へと向かう直線と、の交点が位置g6よりも後方に存在することを意味する。
また、ダンパー96は、図9に示すように、振動体負荷107の重心の位置G5の前方側を支持するように配される。具体的には、ダンパー96の弾性支持の方向軸と振動体負荷107の重心の位置G5を通る水平面との交点が、振動体負荷107の重心の位置G5より前方に存在することを意味する。
このドラム式洗濯機では、振動体負荷107の重心はP9−P10軸に対して前方にあるため、水槽100は、P9−P10軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P9−P10軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図9に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷107にはP9−P10軸を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽100はP9−P10軸を中心として左回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽100は全体的にさらに下方に変位することとなる。このため、水槽100の前方側の沈み込みの変位は大きくなりやすく、この水槽100の前方側の沈み込みを抑えることが特に重要となる。
第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機においては、第一の実施の形態と同様に、効率的に水槽100のP9−P10軸を中心とする回動や沈み込みを防止できるとともに、ダンパー96にて水槽100の前方側の振動を減衰するので、異常な振動が発生した場合においても早期に振動を抑えることができる。
〔第三の参考例〕
次に、第三の参考例に係るドラム式洗濯機を図12に基づいて説明する。図12は、第三の参考例に係るドラム式洗濯機を側方より見た概略縦断面図、を示す。なお、この第三の参考例については、上述した第一の参考例および第二の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、第一の参考例および第二の実施の形態と異なる部分のみ説明を行う。
第三の参考例に係るドラム式洗濯機は、図12に示すように、その外観面を構成する外箱60を備えている。外箱60の下部を構成する底台3の底面上側には、図12に示すように、後述するダンパー50、51、96の一端が連結されるダンパー取付部97、98、99が配される。
また、外箱60の内部には、有底の筒形状を有する水槽108が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽108は、その軸方向に対して前方側を成す前部63と、水槽108の軸方向に対して後方側を成す後部101とをネジ29にて結合させて構成される。
水槽108の外側下方には、水槽108の後方部を下方より弾性的に押し上げ支持する第2の緩衝装置たる2本のダンパー50、51と、水槽108の前方部を下方より弾性的に押し上げ支持する第1の緩衝装置たるダンパー96が配される。第二の実施の形態と同様に、ダンパー50は、前方より見て水槽108の左側部を支持し、ダンパー51は、前方より見て水槽108の右側部を支持する。ダンパー50、51、96は、その一端をそれぞれ水槽108の外周面に設けられるダンパー取付部103、104、105に弾性部材50a、51a、96aを介して連結するとともに、他端をそれぞれ底台3の底面部に設けられるダンパー取付部97、98、99に弾性部材50b、51b、96bを介して連結される。このように、ダンパー50、51、96は、水槽108を弾性的に押し上げ支持し、また、ダンパー50、51、96と水槽108および外箱60との連結が弾性部材50a、51a、96a、50b、51b、96bを介して行われるので、水槽108からの外箱60への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
第二の実施の形態と同様に、前方より見て、ダンパー取付部97はダンパー取付部103に対して左側となるように、ダンパー取付部98はダンパー取付部104に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部97とダンパー取付部98およびダンパー取付部103とダンパー取付部104はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部97およびダンパー取付部98はそれぞれダンパー取付部103およびダンパー取付部104に対して鉛直下方に配置される。また、第二の実施の形態と同様に、前方および側方より見てダンパー取付部99はダンパー取付部105に対していずれも鉛直下方となるように配される。すなわち、ダンパー取付部103とダンパー50との接続位置P11(図10のP9に相当)とダンパー取付部104とダンパー51との接続位置P12(図10のP10に相当)とを結ぶP11−P12軸がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽108の外側上方には、水槽108を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる3本のサスペンション52、53、54が配される。第二の実施の形態と同様に、サスペンション52は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション53は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション54は上方より見て水槽の後方中央部を支持する。サスペンション52、53、54は、その一端をそれぞれサスペンション取付部17の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽108の外周面に設けられたサスペンション取付部67、68、102に連結される。このように、サスペンション52、53、54は、弾性的に吊り下げ支持するので、水槽108からの外箱60への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
また、図12に示すように、サスペンション取付部17は、サスペンション取付部67(68)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部102に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図12に示すように、サスペンション52(53)はサスペンション52(53)の水槽108からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ11(0°<θ11<90°)の角度を成すように、また、サスペンション54はサスペンション54の水槽108からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ12(0°<θ12<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション52(53)およびサスペンション54はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、図12に示すように、サスペンション取付部17は、後述する振動体負荷110の重心の位置G6よりも前方となるように配されており、サスペンション52(53)による水槽108の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。また、第二の実施の形態と同様に、サスペンション52、53、54は、上方より見てそれぞれドラム式洗濯機の前後方向と平行となるように配置される。
このドラム式洗濯機において、荷重負荷109は、水槽108、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート(本実施例においては図示せず。第一の実施の形態の図3同様にヒータ部40の左側に配される)、送風ファン42、液体バランサ37より構成される。ここで、荷重負荷109の重心の位置をg7、洗濯負荷56の荷重負荷109と定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56(重心の位置g2)とを合計した振動体負荷110の重心の位置G6をとすると、ダンパー50、51は、図12に示すように、荷重負荷109の重心の位置g7の後方側を支持するように配される。具体的には、ダンパー50、51のそれぞれの弾性支持の方向軸を通る鉛直平面と、振動体負荷110の重心の位置G6から荷重負荷109の重心の位置g7へと向かう直線と、の交点が位置g7よりも後方に存在することを意味する。
また、ダンパー96は、図12に示すように、振動体負荷110の重心の位置G6の前方側を支持するように配される。具体的には、ダンパー96の弾性支持の方向軸と振動体負荷110の重心の位置G6を通る水平面との交点が、振動体負荷110の重心の位置G6より前方に存在することを意味する。
このドラム式洗濯機では、振動体負荷110の重心はP11−P12軸に対して前方にあるため、水槽108は、P11−P12軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P11−P12軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図12に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷110にはP11−P12軸を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽108はP11−P12軸を中心として左回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽108は全体的にさらに下方に変位することとなる。このため、水槽108の前方側の沈み込みの変位は大きくなりやすく、この水槽108の前方側の沈み込みを抑えることが特に重要となる。
第三の参考例に係るドラム式洗濯機においては、第二の実施の形態と同様に、効率的に水槽108のP11−P12軸を中心とする回動や沈み込みを防止できるとともに、ダンパー96にて水槽108の前方側の振動を減衰するので、異常な振動が発生した場合においても早期に振動を抑えることができる。さらには、外箱開口部61aと水槽開口部64aとを直接連結する部材を介在させないことにより水槽108の振動が外箱60に伝わりにくい構造を確保するとともに、水槽扉65の開放が確実に可能な使用性の高いドラム式洗濯機を提供できる。
なお、第二の実施の形態および第三の参考例に係るドラム式洗濯機において、洗濯負荷56の投入によって振動体負荷107(110)の重心は前方且つ下方へと移動するので、ダンパー50、51は荷重負荷106(109)の重心の位置g6(g7)を支持するように配してもよい。また、2本のダンパー50、51が荷重負荷106(109)の重心の位置g6(g7)の後方を、1本のダンパー96が振動体負荷107(110)の重心G5(G6)の前方を支持したが、逆に1本のダンパーにて荷重負荷106(109)の重心の位置g6(g7)の後方を、2本のダンパーにて振動体負荷107(110)の重心G5(G6)の前方を支持してもよい。また、それぞれ複数本のダンパーにて荷重負荷106(109)の重心の位置g6(g7)の後方および振動体負荷107(110)の重心G5(G6)の前方を支持してもよく、それぞれ1本のダンパーにて荷重負荷106(109)の重心の位置g6(g7)の後方および振動体負荷107(110)の重心G5(G6)の前方を支持してもよい。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、2本のサスペンションにて水槽の前方側を、1本のサスペンションにて水槽の後方側の支持を行っているが、逆に1本のサスペンションにて水槽の前方側を、2本のサスペンションにて水槽の後方側の支持を行ってもよい。また、それぞれ複数本のサスペンションにて水槽の前方側および水槽の後方側を支持してもよく、水槽の左右方向の振動を考慮する必要がなければ、それぞれ1本のサスペンションにて水槽の前方側および水槽の後方側を支持してもよい。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、水槽の後方側を支持するサスペンションの弾性支持の方向軸と水平面とがなす角度(各実施例に於けるθx(x=2、4、6、8、10、12))よりも水槽の前方側を支持するサスペンションの弾性支持の方向軸と水平面とがなす角度(各実施例に於けるθy(y=1、3、5、7、9、11))の方が大きくなるようにすると、水槽の前方部を上方に持ち上げる効果が高まり、水槽の前方側の沈み込みを抑えることができる。また、水槽の後方側を支持するサスペンションのばね定数よりも水槽の前方側を支持するサスペンションのばね定数の方が大きくなるようにすると、水槽の前方部を上方に持ち上げる効果が高まり、水槽の前方側の沈み込みを抑えることができる。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、水槽の前方部を2本のサスペンションにて、水槽の後方部を1本のサスペンションにて懸架支持したが、例えば、水槽の前方部を1本のサスペンションにて、水槽の後方部を1本のサスペンションにて懸架支持する、または、水槽の前方部を1本のサスペンションにて、水槽の後方部を2本のサスペンションにて懸架支持する、または、水槽の前方部および後方部をそれぞれ複数本のダンパーにて懸架支持するなど適宜変更可能である。
また、第一の実施の形態および第一の参考例から第三の参考例における水槽を支持する2本のダンパーならびに第二の実施の形態および第三の参考例における水槽の後方側を支持する2本のダンパー(本発明の各実施の形態におけるダンパー50、51)は、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けているが、これらの2本のダンパーは前方より見てそれぞれ鉛直となるように取り付けてもよい。また、第二の実施の形態および第三の参考例において水槽の前方側を支持する1本のダンパー(各実施の形態におけるダンパー96)は、側方より見て鉛直となるように取り付けているが、底台側のダンパー取付部(各実施の形態におけるダンパー取付部99)に対して水槽側のダンパー取付部(各実施の形態におけるダンパー取付部105)が後方となるように、すなわち、水槽の前方側を支持する1本のダンパーの取り付け方向と前方から後方へと向かう水平軸とがなす角度が0度より大きく90度未満となるように取り付けてもよい。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、サスペンション取付部23(24)またはサスペンション取付部67(68)は水槽の外周面に取り付けられる(図2、図6、図7、図8、図9、図12参照)が、サスペンション取付部23´(24´)またはサスペンション取付部67´(68´)のように水槽の前面側に設ける(図2、図6、図7、図8、図9、図12参照)こともできる。このように水槽の前方側を支持するサスペンションの水槽側のサスペンション取付部を水槽の外周面から前面側に変更することにより、水槽の前方側を支持するサスペンションの水槽側の支持位置と、ダンパーの水槽側の支持位置との前後方向の距離が大きくなるので、小さな引張応力にて水槽の前方側を懸架支持できるようになる。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、サスペンションまたはダンパーの水槽側への取付部を水槽に一体に設けることにより部品点数の削減および原価の低減を可能とできる。また、水槽の前方部および後方部を支持するサスペンションの外箱側への取付位置を左右方向に対してほぼ一列となるように配すると、外箱側のサスペンション取付部は前後方向の幅を小さくできるのでサスペンション取付部の小型化や軽量化が可能となる。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、ダンパーは弾性支持だけでなく減衰機能を備えるが、このダンパーのすべてまたは一部を減衰機能を有しないものとし、代わりにサスペンションのすべてまたは一部に減衰機能を設けてもよい。例えば、第一の実施の形態および第一の参考例から第三の参考例においてダンパーは減衰機能を有しないもの、サスペンションは減衰機能を有するものとする。または、第二の実施の形態もしくは第三の参考例において水槽の後方側を支持するダンパーは減衰機能を有するもの、水槽の前方側を支持するダンパーおよびサスペンションは減衰機能を有しないものとする。または、第二の実施の形態もしくは第三の参考例においてすべてのダンパーは減衰機能を有しないもの、サスペンションは減衰機能を有するものとするなど適宜変更可能である。