心疾患もしくは心不全はなお西側世界における主要な死亡原因である。心疾患の最も普遍的な形態の一は、慢性冠動脈疾患もしくは後に続く急性心筋梗塞のいずれかのために不十分な血液灌流から生じる心筋内の虚血領域の形成である。虚血領域内の細胞は、ついにそれらを死亡させる漸次の一般に不可逆的な分解過程を受ける(非特許文献1を参照)。この過程は虚血領域の生存率の対応する漸進性悪化として表わされる。
冠動脈疾患の症状を治療するために現在利用可能なアプローチは、心外膜冠動脈樹の大きな限局された区分への血流を復旧する(血管形成術)、およびバイパス移植を実施することにより冠動脈内の閉塞を完全に迂回する方法を包含する。
薬物投与、例えば無酸素(anaerobic)の細胞の生存能力を延長させる細胞保護性化合物の投与、および冒されている心筋領域への血液供給を向上させるレーザー心筋血管再生は、虚血を治療するためのさらなる治療的アプローチ(いくつかはなお試験中)である。
新たな側副血管が心臓で成長して虚血組織への酸素の供給を増大させうることが心筋虚血の若干の症例で観察された。この現象は血管新生として知られる。血管上皮成長因子(VEGF)および線維芽細胞成長因子(FGF)のような成長因子として知られる天然に存在する物質を基礎とするこうした血管新生を支配する機構の理解における最近の進歩は、心臓に対する外因性の血管新生性成長因子の投与を基礎とする治療の新規の可能な形態を加えた。
いくつかの機構が、慢性および/もしくは急性の虚血を軽減することに対する成長因子の観察された有益な効果を説明するために提案された。これらの機構は、血管新生、筋細胞の生存能力および傷害に対する抵抗性の増大、虚血で損なわれた上皮依存性の血管運動の復旧、ならびに先在する側副血管の漸増を包含する(引用により本明細書に組み込まれる、非特許文献2を参照)。
ハラダ(Harada)ら(引用により本明細書に組み込まれる、非特許文献3)は、漸次の(人工的に誘発された)冠動脈閉塞のブタへの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の外膜周囲(periadventitial)投与が、冠動脈流の改善および梗塞の大きさの減少、ならびにペーシングに誘導される血行動態の悪化の予防をもたらしたことを報告する。成長因子は、bFGFを含有するビーズを保持する多数のカプセルを適用しそしてそれらを動脈に固定することにより、閉塞されたおよび近隣の双方の動脈に管外に投与された。ビーズは、bFGFが効果的に吸収されそして冒されている心筋領域に輸送されるために、延長された時間の期間にわたって予測可能な速度でそれらのbFGF内容物を遅延放出するよう設計された。 比較して、連続的全身注入を包含するbFGFの静脈内投与は、外膜周囲投与とは対照的に、主として希釈をもたらす血流による薬物の洗い出しおよび小さい保持時間により小さな血管新生効果のみを表わすことが報告された(引用により本明細書に組み込まれる、非特許文献4を参照)。
後の一報告(引用により本明細書に組み込まれる、非特許文献5)では、著者らはブタでの血管上皮成長因子(VEGF)の類似の有益な血管新生効果を報告する。VEGFは、アメロイド括約体(ameroid constrictor)(すなわち、その漸次の閉塞を誘発するために動脈周囲に置かれる適切な内径の外的環)に隣接して置かれかつ括約体に対し遠位の心筋系に直接固定される微小カテーテルにより投与された。この微小カテーテルは、胸壁の内側、心膜腔の外側に置かれた浸透圧ポンプ(アルザ(Alza)、カリフォルニア州パロアルト、からのアルゼット(ALZET))に連結された。
血管新生を刺激するための代替の一アプローチは遺伝子治療である。シモンズ(Simons)とウェア(Ware)(引用により本明細書に組み込まれる、非特許文献6)は、なお別の成長因子FGF−5を、導入作用物質としてアデノウイルスベクターを使用する遺伝子導入送達アプローチを使用して投与される場合にインビボで心筋の血管新生を誘発させる能力を有するとして報告する。同様に、イズナー(J.M. Isner)(引用により本明細書に組み込まれる、非特許文献7)は、血管上皮成長因子をコードする遺伝子を包含する「裸の(naked)DNA」(phVEGF)の動脈内投与による決定的な四肢の虚血の治療を報告する。プラスミドDNAの溶液が血管形成バルーンのヒドロゲルコーチングに適用され、これはバルーンが遺伝子導入の部位で膨らまされるまでDNAを保持し、導入に際してDNAが動脈壁に導入される。
上記の蓄積された背景技術の結果は、成長因子の選択すべき薬物送達アプローチが全身性(静脈内)であるよりはむしろ局所的な送達アプローチであるべきであることを示すようである。注入されたbFGFの短い半減期およびその短い保持時間が、局所送達が好ましいという結論を生じうる。bFGFの延長された全身性の静脈内送達は、治療4週間後でさえ完全に解消しなかった重大な血液学的毒性の発生ならびに低血圧性の効果をもたらすことが報告された。加えて、血流による薬物の洗い出しに関連する希釈効果により、こうしたアプローチに必要とされる薬物量が極端に高くなる(引用により本明細書に組み込まれる、非特許文献8および非特許文献9を参照)。
局所の持続性送達は、他方、前述の欠点の少なくともいくつかを免れ、そして明らかにより有効である。上に引用されたような現在利用可能な技術を使用する局所送達のアプローチの主欠点は、その広範囲に侵襲的な性質である。上に引用された論文で記述された方法は開胸手術を必要とする。明らかな生理学的および治療上の利点にもかかわらず、心臓内薬物送達のための有効な局所に標的を定められた最小限に侵襲的な技術、とりわけ制御された放出の投与を基礎とする技術のための現在利用可能な技術は存在しない。
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6(これらは全部引用により本明細書に組み込まれる)は、一般に内視鏡とともにの使用のための患者の内部器官への液体および固体のカプセルの薬物送達のためのカテーテルを記述する。これらのカテーテルは、典型的には、管を介して液体もしくは固体分注器と連絡する、その遠位端部に配備される針もしくはチューブを含んで成る。しかしながら、開示されたカテーテルのいずれも、治療薬の正確な位置を制御された送達のための手段を含まない。
米国特許第4,578,061号
米国特許第4,588,395号
米国特許第4,668,226号
米国特許第4,871,356号
米国特許第5,385,148号
米国特許第5,588,432号
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心筋への薬物の心臓内投与のための正確な最小限に侵襲的な方法および装置を提供することが、本発明のいくつかの局面の一目的である。
本発明のいくつかの局面においては、上記の方法および装置が、放出が制御された薬物の正確な配置(placement)に使用される。
本発明の明細書の文脈および請求の範囲において、「制御された放出」という用語は、ポリマーを基礎とした遅延放出および局所の連続的注入の全部の形態を包含する液体もしくは可溶性化合物の持続性の制御された送達のいずれかのおよび全部の技術を指すと解釈される。
本発明のいくつかの局面は、血管新生性の成長因子が、限界の生存能力を表わす心臓の虚血領域に適正に投与される場合に、その中での血管新生を誘発および/もしくは促進し、従って血液灌流を増大させるという上述された知見を基礎とする。好ましくは、成長因子は心臓組織内の既知の予め決められた深さで投与される。
従って、本発明の好ましい態様においては、最小限に侵襲的な心臓内薬物送達(MI2D2)装置は、心室(chamber of the heart)中への挿入のための遠位端部を有するカテーテルを含んで成る。当該カテーテルは、心筋内の1個もしくはそれ以上の予め決められた位置で薬物を投与するのに使用される。当該カテーテルは、1個もしくはそれ以上の位置のそれぞれに隣接するカテーテルの進路を決めそして位置を定めるのに使用される位置センサー、およびその位置で薬物を投与するための分注器と連結された薬物送達装置を含んで成る。当該薬物送達装置はカテーテルの遠位端部にもしくはこれに隣接して配備され、そして薬物を適切な深さまで心筋中に注入もしくは別の方法で送達する。
本発明のいくつかの好ましい態様において、カテーテルは、薬物投与を必要とする心筋中の部位の診断および同定のための1個もしくはそれ以上の生理学的センサーもまた包含する。好ましくは、当該センサーは成長因子が投与されるべきである虚血領域を同定するのに使用される。最も好ましくは、生理学的センサーは、心臓組織の生存能力地図を生じさせるのに位置センサーとともに使用され、それに従って薬物が下にさらに記述されるとおり投与される。
本発明のいくつかの好ましい態様においては、カテーテルは、薬物の予め決められた量を計量かつ分注する薬物分注器、および装置の稼働を制御しそして作動させるための制御回路とともに稼働される。カテーテル中の薬物送達装置は、好ましくは、適する管、すなわちカテーテルの長さに沿って伸長する管腔もしくはチューブを介して分注器と連絡する。本発明の好ましい態様においては、カテーテルおよび関連する薬物送達装置は心筋に成長因子を投与するのに使用されるが、しかし、当該装置が同様に他の型の治療薬を正確に投与するのに類似に使用されうることが認められるであろう。
好ましくは、位置センサーは、引用により本明細書に組み込まれるPCT特許公開番号WO96/05768に記述されるような磁気位置センサーを含んで成る。さらに好ましくは、カテーテルは、例えば本発明の発明人の譲受人に譲渡されかつ引用により本明細書に組み込まれる米国暫定特許出願60/042,872に記述されるような操向機構を包含する。あるいは、この操向機構は、その全部が引用により本明細書に組み込まれる、PCT特許出願PCT/US95/01103もしくは米国特許第5,404,297、5,368,592、5,431,168、5,383,923、5,368,564、4,921,482および5,195,968号のいずれかに記述されるもののような当該技術分野で既知のいずれかの適する型のものであってよい。
上に挙げられたように、薬物投与部位の正確な位置選定(虚血領域の境界および心壁内の深さに関して)は治療を成功裏に完了させるために重要であり、また、健康な組織内での過剰量の成長因子の存在はそれに対する有害な効果を有しうる。虚血領域の境界を越える、もしくはそれが血液により洗い流されうる心内膜壁の表面近くの領域全体での成長因子の投与は、治療の治療上の有効性を傷つけ、毒性の危険を与え、そして所望の治療効果を達成するのに必要とされる薬物量を増大させるので有害である。従って、薬物投与のために示された虚血領域に関してカテーテルの進路を正確に決め、位置を定めそして方角を定めること、およびカテーテルの接触表面と心壁との間の適正な接触を保証することが重要である。
カテーテルの正確な位置および方向は上に挙げられた位置センサーおよび操向機構を使用して成し遂げられる。さらに、本発明のいくつかの好ましい態様においては、カテーテルは、カテーテルと心壁との間の接触を感知しかつ保証するための1個もしくはそれ以上の近接もしくは接触センサーを含んで成る。これらの好ましい態様のいくつかにおいては、カテーテルは、カテーテルと心壁との間の適正な接触、そして最終的には注入された薬物の所望の深さへの浸透を保証するようにカテーテルの遠位端部の表面上に配備される最低3個の接触センサーを含んで成る。
本発明のいくつかの好ましい態様においては、カテーテルは生存能力地図に関して進路を決められかつ配置され、この地図は、一方で十分に灌流された領域および他方で梗塞された非生存可能領域に対するような、虚血のしかしなお生存可能である心筋の領域を同定する。こうした地図は、例えば、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,568,809号もしくはPCT特許出願PCT/IL97/00010に記述される方法を使用して生じられることができ、ここで心の幾何学的地図が生じられて局所の生存能力レベルを示す。好ましくは、治療されるべき虚血領域が点の格子(grid of point)を伴う地
図上に印をつけられ(marked)、ここに薬物がカテーテルにより注入されることになる。好ましくは、地図および格子は、位置座標に関連して集められた局所組織の生存能力を示す心臓の生理学的活動性を基礎として決定される。
本発明のいくつかの好ましい態様においては、生存能力地図作成が、同一のカテーテルを使用して薬物の投与とともに実施される。これらの態様においては、カテーテルは心筋組織の生存能力もしくは非生存能力を測定するためのセンサーを含んで成る。こうしたセンサーは1個もしくはそれ以上の電気もしくは機械生理学的検出器を含んでよく、これらは前述の‘809特許および‘010PCT出願に記述されるとおりそれぞれ局所心筋の電気的もしくは機械的活動性を感知する。あるいは、もしくは加えて、当該センサーは、好ましくはカテーテル内に適する光源および光ファイバー光導波路に連結された光学センサーを含んでよく、これは、当該技術分野で既知であるとおり、生存能力の指標としての心筋組織中のNADHの自己蛍光を検出する。
あるいは、生存能力地図は、上で挙げられた方法の一を使用して薬物投与に先立って生じられることができ、そしてMI2D2装置の制御回路構成要素(circuitry)に供給される。
本発明のいくつかの好ましい態様においては、薬物送達装置は、例えば上で挙げられた米国特許第4,578,061、4,668,226および5,588,432号に記述されるような好ましくは収納可能な中空の針を包含する。この針は心臓中へのカテーテルの挿入およびそれからの除去の間に収納されるが、しかし、カテーテルの遠位端部から伸長して薬物を心臓の内側に送達する。好ましくは、この針は、針が複数回突出かつ収納されることを可能にしつつ、カテーテル中への血液の逆流を予防するように、当該技術分野で既知であるようなシリコン隔壁のようないずれかの適する封止装置を使用して封止される開口部を通って外へ伸長する。場合によっては、針それ自身が、例えば上に挙げられた米国特許第4,871,356号に記述されるようなバルブを使用して、血液成分がその中に進入することを予防するよう封止されてよい。
好ましくは、当該薬物送達装置は、それぞれ薬物送達前および後にカテーテル中におよびこれから針を突出かつ収納しそして複数の突出/収納周期が可能である、針に連結された収納機構を含んで成る。従って、当該収納機構は、束縛される行程長さをもつピストンもしくは当該技術分野で既知であるような別の適する装置を含んでよい。好ましくは、センサーが、針が薬物投与に先立ちカテーテルからかつ心壁中に十分に突出された場合に感知するように、収納機構もしくは針それ自身に連結される。最も好ましくは、センサーは、針がカテーテル中に十分に収納された場合にもまた感知して、カテーテルが一位置から別の位置まで安全に動かされ得ることを確実にする。好ましくは、薬物投与は、カテーテルが心壁と適切に接触しかつ針が所望の長さに突出される場合を除き自動的に無能力にされる。あるいは、もしくは加えて、装置の使用者が自動的な無能力(disablement)を伴いもしくは伴わずに針の位置を通知される。
さらに好ましくは、当該薬物送達装置もしくは分注器は、閉塞検出器、例えば当該技術分野で既知であるような圧センサー、超音波変換器もしくは流量計を含んで成り、これは針のいかなる閉塞もしくは管に沿った流れの閉塞の発生を感知する。こうした閉塞検出は薬物の流路に沿った破裂を引き起こしうる圧の増大を予防し、そして示された位置での薬物の信頼できる投与を保証する。
典型的には、心筋の虚血領域は10cm2までの面積の全域で広がる一方、局所の成長因子注入の影響の典型的面積はただ数mm2である。冒されている領域全体への成長因子の投与に単一の針を使用することは、この処置を単調で退屈かつ時間のかかるものにする。従って、本発明の代替の好ましい態様においては、薬物送達装置は、管により供給されかつ集合的もしくは独立した突出−収納の動きが可能な薬物供給マニホールドに連結された、相互から適切に空間を空けられた複数の針を含んで成る。
本発明のいくつかの好ましい態様においては、当該カテーテルによる薬物の投与が心律動に応答して制御される(gated)。好ましくは、薬物送達装置は、心律動に応答して周期的に変動する心壁の厚さに応答して制御される。従って、薬物が拡張終期に送達される場合、例えば心壁が一般に最も薄い場合には、薬物は一般に心筋中に最も深く分散されることができる。
1個のこうした好ましい態様においては、カテーテルはその遠位端部に隣接する超音波センサーを含んで成り、これは例えば前述のPCT出願PCT/US95/01103に記述されたとおり心壁の局所の厚さを測定するのに使用される。厚さの測定値は薬物の放出を制御するのに使用され、その結果薬物は上述されたとおり心筋内の至適の深さ、好ましくは2〜3mmに投与される。好ましくは、薬物投与部位の心壁厚さが心周期のいくつかの点で測定され、そして、厚さの測定値は、周期のどの点で薬物を投与するかの決定、および薬物をそれに応じて放出するための薬物送達装置の制御において使用される。
本発明の好ましい態様は主として薬物投与に言及して本明細書に記述されるとは言え、心壁厚さに対するこれらの制御方法が他の型の心臓治療にもまた当てはまりうることが真価を認められるであろう。例えば、厚さ制御は、不整脈の治療のための心臓組織の切除、もしくはレーザー心筋血管再生(LMR)で有利に使用されうる。LMRのための方法および装置は、例えばPCT特許出願PCT/IL97/00011に記述され、その開示は引用により本明細書に組み込まれる。経皮心筋血管再生(PMR)として普遍的に知られるこれらの方法のいくつかにおいては、カテーテルが心臓中に挿入され、そしてレーザー光線がカテーテル中の導波管により運ばれて心内膜を通って心筋に溝を創製する。経心筋血管再生(TMR)として知られるこれらの方法の他者においては、プローブが胸壁を通って挿入され、そして心外膜および心筋を通って心室に貫通する溝を創製するのに使用される。
従って、本発明のいくつかの好ましい態様においては、LMRで使用されるレーザーが心壁厚さに応答して制御される。好ましくは、LMRがPMR法を使用して実施される場合には、レーザーは、心壁が全般に最も薄い収納期の間に、レーザーの溝が心壁を通りそして心外膜を通って出る間ずっと貫通することができるという危険を最小限にするように発射する(fire)ように制御される。他方、TMR法が使用される場合には、レーザーは、最小の消費されるレーザーエネルギーで心壁を通って貫通するように拡張期の間に発射するよう制御されうる。
本発明のいくつかの好ましい態様においては、LMRが、血管新生効果を高めるように成長因子の投与とともに使用される。これらの態様においては、統合された(integrated)カテーテルは、上述された心臓内薬物送達のための要素とともにカテーテルの遠位端部でLMRレーザー源および適する光学素子に連結された導波管を含んで成る。レーザーは、心筋中でLMR溝を生じるよう稼働され、そしてある用量の成長因子がその後溝のいくつかもしくは全部に挿入される。LMRとともにの成長因子の使用は、心虚血領域内の血管新生をさらに助長すると考えられる(例えば上に引用されたウェア(J.A. Ware)とシモン
ズ(M. Simons)を参照)。
これらの好ましい態様においては、成長因子薬物は、好ましくは、例えば上に挙げられた米国特許第4,588,395もしくは4,578,061号に記述されたような適切な固体薬物送達媒体から作成される遅延放出カプセル中に含有される。当該カプセルは、LMR溝中に挿入されるか、もしくは、あるいは、LMRの使用を伴わず心筋中に押し込まれうる。好ましくは、カプセルは、その寸法が、カプセルを示された位置で正しい場所に固定しかつ偶然の移動を排除して従って治療の持続期間を通じて薬物の適切な限局された投与を保証するように、治療期間を通じて本質的に一定なままであるように設計される。
本発明の他の好ましい態様においては、成長因子もしくは他の薬物が、他の型の輻射、例えばRFもしくは超音波照射を用いる心組織の照射とともに投与される。
成長因子もしくは他の薬物が液体の形態でもしくは液体担体中に分散された遅延放出マイクロカプセルとして心筋中に注入される、本発明のいくつかの好ましい態様においては、薬物分注器は、カテーテルの近位端部に連結される液体計量ポンプを含んで成る。こうしたポンプは当該技術分野で既知であり、例えば回転および往復ピストン計量ポンプ、蠕動ポンプもしくは高正確性で微小体積の液体を分注することが可能ないずれかの他の容量形ポンプを包含する。あるいは、分注器は装置の使用者により手動で操作される医学用シリンジを含んでよい。
本発明の他の好ましい態様、とりわけ制御された放出のカプセルを使用するものにおいては、分注器は別個の供給装置を含んで成る。好ましくは、供給装置は、カプセル溜め、カプセルの通過を制御するためのバルブ、チューブに沿ったカプセルの通過を検出する検出器、および溜めからカテーテルの遠位端部までチューブに沿ってカプセルを運ぶための制御された生理学的液体供給を包含する。
代替の好ましい態様においては、成長因子の投与は、カテーテルもしくはその一部を、延長された期間の間心筋内に埋込むもしくは別の方法で固定することにより実施される。分注器、例えば浸透圧ポンプが、好ましくは、患者の胸内に埋込まれ、そして延長された期間にわたって治療を提供するように心に残存するカテーテルの部分に連結される。場合によっては、分注器は患者の身体に対し外に置かれ、そしてカテーテルの近位端部が体外で分注器に連結される。
従って、本発明の好ましい一態様に従えば、心室に挿入されかつ心壁のある部位との接触に導かれるカテーテルを包含する心臓内薬物投与のための装置が提供され、当該カテーテルは、
心臓内のカテーテルの位置に応答して信号を発する最低1個の位置センサー;および
位置センサーからの信号に応答して決定される部位で所望の用量の治療薬を投与する薬物送達装置、
を包含する。
好ましくは、治療薬は成長因子を包含する。薬物は、最も好ましくは、好ましくは固体のカプセルを包含する遅延放出マトリックスに含有される。
好ましい一態様において、カテーテルは、心壁との表面の接触を感知する、カテーテルの遠位表面上に配備される接触センサーを包含する。好ましくは、接触センサーは圧センサーを包含する。
好ましくは、位置センサーは、外的に適用される磁場に応答した信号を発する磁気位置センサーを包含する。
好ましくは、位置センサーの信号は位置および方向座標を生じるのに使用され、これに応答して薬物用量が送達される。
好ましい一態様においては、カテーテルは、その部位で心臓組織の生存能力を示す信号を発する、最低1個の生理学的センサーを包含する。好ましくは、最低1個の生理学的センサーは電極を包含する。さらに好ましくは、当該装置は信号を基礎として心臓組織の生存能力地図を生じさせ、そしてそれに応答して薬物を投与する。
別の好ましい態様においては、当該装置は心筋組織の照射のための放射線源を包含し、ここでカテーテルは放射線源と連絡する導波管を包含する。好ましくは、当該薬物送達装置は、照射により、最も好ましくは固体のカプセルの形態で、組織中に生じられた溝に薬物を投与する。
好ましくは、当該薬物送達装置は、カテーテルから遠位に伸長しそして心臓組織を貫通して薬物用量を送達する中空の針を包含する。
好ましい一態様においては、当該針はらせん形状を有し、そして針の回転の動きにより心壁のその部位に固定される。
好ましくは、当該針は薬物用量が送達される前および後にカテーテル中に収納される。さらに好ましくは、当該針はカテーテル中の開口部を通ってカテーテルから伸長し、この開口部は穿刺封止装置により覆われる。好ましくは、当該薬物送達装置は針を伸長および収納する移動機構を包含し、ここで移動機構は、好ましくは、心壁内の予め決められた深さに薬物を投与するように、針がカテーテルから伸長する距離を制御する。
好ましい一態様においては、薬物投与はその部位での心壁の厚さの変動に応答して制御される。好ましくは、当該カテーテルは心壁の厚さを示す信号を発する超音波変換器を包含し、また、当該薬物送達装置は壁が予め決められた厚さの場合に薬物を投与するよう制御される。
本発明の別の好ましい態様に従い、
心壁への治療的治療(therapeutic treatment)の投与のため心室に挿入されるカテーテル;
心壁の厚さに応答した信号を発するセンサー;および
センサーからの信号を受領しそして心壁の厚さに応答して治療を制御する制御装置、
を包含する、心臓内治療のための装置がさらに提供される。
好ましくは、センサーは、好ましくはその遠位端部に隣接してカテーテルに固定される超音波変換器を包含する。
あるいは、もしくは加えて、センサーは、その遠位端部に隣接してカテーテルに固定される位置センサーを包含する。
好ましい一態様において、カテーテルは薬物送達装置を包含し、そして治療は心壁のある部位での治療物質の投与を包含する。
別の好ましい態様においては、当該装置は放射線源を包含し、ここで治療は線源を使用する心筋組織の照射を包含し、また、ここでカテーテルは放射線源と連絡する導波管を包含する。
好ましくは、制御装置は、治療が心周期の一部の間投与されるように治療を制御する。好ましくは、制御装置は、治療が厚さが最大である場合、もしくは、あるいは厚さが最小である場合に投与されるように治療を制御する。
本発明の好ましい一態様に従えば、
カテーテルを心室に導入すること;
カテーテルの位置座標を感知すること;
座標を使用してカテーテルを所望の部位での心壁との接触に位置を定めること;そして
カテーテルを使用してその部位で治療薬を投与すること、
を包含する、心臓内薬物投与方法がさらに提供される。
好ましくは、治療薬を投与することは成長因子を投与することを包含する。好ましくは、成長因子は線維芽細胞成長因子(FGF)、もしくは、あるいは、血管上皮成長因子(VEGF)を包含する。好ましい一態様においては、成長因子は成長因子をコードする遺伝子を包含する。
好ましくは、治療薬を投与することは薬物の遅延放出製剤を心筋中に注入することを包含する。好ましくは、遅延放出製剤は液体を包含する。あるいは、遅延放出製剤は心筋中に挿入される薬物を含有するカプセルを包含する。
好ましい一態様においては、当該方法は、心筋の血管再生を発生させるために、好ましくはレーザー輻射で心壁を照射することを包含する。好ましくは、心壁を照射することは、心筋に溝を生じさせることを包含し、また、治療薬を投与することは薬物をその溝に挿入することを包含する。
別の好ましい態様において、カテーテルの位置を定めることは、カテーテル上に配備された接触センサーにより発せられる信号を受領することによりカテーテルと心壁との間の接触を実証することを包含する。
好ましくは、当該方法は、心臓から生理学的信号を受領することを包含し、ここで治療薬を投与することは生理学的信号に応答して薬物を投与することを包含する。好ましくは、生理学的信号は、機械生理学的信号、または、あるいはもしくは加えて、電気生理学的信号を包含する。
好ましくは、治療薬を投与することは、生理学的信号から決定される心臓組織の生存能力の尺度に応答して薬物を投与することを包含し、その結果、治療薬を投与することは、好ましくは、本質的に心臓の虚血のしかし生存可能な領域にのみ薬物を投与することを包含する。さらに好ましくは、治療薬を投与することは、心臓組織の生存能力の地図に応答して薬物を投与することを包含する。
好ましくは、位置座標を感知することはカテーテルの方向座標を感知することを包含し、また、カテーテルの位置を定めることは座標に応答して心壁に関して所望の方向にカテーテルの方角を定めることを包含する。
さらに好ましくは、カテーテルの位置を定めることは、心臓の幾何学的地図上での薬物投与のための領域の輪郭を描く点の格子に関してカテーテルの位置を定めることを包含する。好ましくは、薬物が投与された部位が地図上に印をつけられる。
本発明の好ましい一態様に従えば、
心壁の厚さの変動を示す信号を受領すること;そして
厚さの変動に応答して心壁のある部位に治療的治療を投与すること、を包含する、心臓内治療方法が加えて提供される。
好ましくは、治療を投与することは、カテーテルを心臓中に挿入しそしてカテーテルをその部位の近接にもたらすことを包含する。
さらに好ましくは、治療を投与することは、カテーテルを介して運ばれるレーザー輻射で心壁を照射することを包含する。
加えて、もしくは、あるいは、治療を投与することは、カテーテルを使用して治療薬を心壁に導入することを包含する。
好ましくは、信号を受領することは、カテーテルに固定されたセンサーから、最も好ましくはカテーテルに固定された位置センサーから信号を受領することを包含する。
好ましい一態様においては、信号を受領することは超音波信号を受領することを包含する。
別の好ましい態様においては、信号を受領することは電気生理学的信号を受領することを包含する。
好ましくは、治療を投与することは心壁の厚さの変動に応答して治療を制御することを包含する。好ましくは、治療を制御することは、厚さが心周期の間の本質的にその最大である場合、もしくは、あるいは、厚さが心周期の間の本質的にその最大である場合に治療を投与することを包含する。
加えて、もしくは、あるいは、治療を制御すること(gating)は、治療が心壁内の所望の深さに適用されるように治療を制御すること(controlling)を包含する。
本発明は、図面と一緒に利用されるその好ましい態様の以下の詳細な記述からより十分に理解されることができる。
引用が今や図1Aおよび1Bになされ、これらは、本発明の好ましい一態様に従った最小限に侵襲的な心臓内薬物送達のためのカテーテル20の図解の部分的に断面の具体的説明である。カテーテル20は、心筋中への薬物の注入のため、カテーテルの遠位端部22内に中空の針24を含んで成る。図1Aにおいて、針は第一の配置で示され、ここでそれはカテーテル20の内側の鞘26中に収納される一方、図1Bにおいては、針は薬物の注入のため遠位端部22から遠位に伸長する。
好ましくは、薬物は、上述されたとおり、成長因子、例えばVEGFもしくはbFGFを含んで成る。好ましい一態様において、薬物はFGF−4もしくはFGF−5を含んで成る。別の好ましい態様において、薬物はphVEGFのような遺伝子治療剤を含んで成る。針24は、薬物を含有しかつそれを針を通って予め決められた用量で分注する分注器54(図2)に管46を介して連結される。
針24は、好ましくは、ほぼ1mmの程度もしくはより小さい外径を有する。図1Bの伸長された配置において、針は、好ましくは、カテーテル20の遠位端部22の先端を2〜3mm越えて伸長する。鞘26は針の外径よりわずかにより幅広く、そして適する封止装置28、例えばシリコン隔壁によりその遠位端部で封鎖され、これは針がカテーテルから遠位に繰り返して伸長かつ収納されることをなお可能にしつつ、鞘およびカテーテル中への血液の逆流を排除する。針24が収納される限りは、図1Aに示されるようにそれは鞘26内に完全に含有され、その結果針と身体組織との間のいかなる接触も本質的に排除される。針は心臓へのカテーテル20の挿入およびそれからの除去の間、ならびに下に記述されるようにカテーテルが心内で点から点まで進路を決められている際に、この収納された位置に維持される。
移動機構30が、針24を、図1Bに示される配置で薬物を投与するために遠位端部22から遠位に駆動し、そして針を投与の間に図1Aで示される位置に引き戻す。機構30は、好ましくは、適して束縛される行程長さをもつ水圧ピストン、もしくはソレノイドのような電気機械的装置、もしくは、例えば前述の米国特許第4,578,061号に記述されかつ引用により本明細書に組み込まれるような当該技術分野で既知のいずれかの他の適する遠隔で駆動される機構を含んで成る。あるいは、機構30は、ばねで負荷される機構を含んでよく、これは、作動される場合に心内膜中に針24を駆動し、そしてその後、薬物投与後に針を鞘26中に引き戻す。
針センサー40は、好ましくは機構30および/または針24もしくは管46に連結される。センサー40は、好ましくは、針のいかなる閉塞もしくは管中の流れの閉塞を感知しそして適正な投薬量が針を通って送達されることを確実にするように、当該技術分野で既知であるように圧変換器もしくは他の流れ計量装置を含んで成る。加えて、もしくは、あるいは、センサー40は、針24が薬物の注入前に十分に伸長されそして/もしくはカテーテルが動かされる前に十分に収納されることを実証するためのマイクロスイッチもしくは他の機械的センサーを含んで成る。
好ましくは、カテーテル20は、遠位端部22を操向しかつ進路を決めるための先端撓み機構44を含んで成る。好ましくは、機構44は、前述の米国暫定特許出願60/042,872に記述されるような1個もしくはそれ以上の引きワイヤ(図中に示されない)により稼働される。あるいは、機構44は、前述のPCT特許出願PCT/US95/01103、もしくは米国特許第5,404,297、5,368,592、5,431,168、5,383,923、5,368,564、4,921,482および5,195,968号に記述されるようである、当該技術分野で既知のいずれかの適する型のものであってよい。
カテーテル20は、遠位端部22の位置および方向座標の決定のための位置センサー32をさらに含んで成る。好ましくは、センサー32は、コイル34を包含する磁気位置センサーを含んで成り、これは前述のPCT公開WO96/05768に記述されるとおり、外的に適用される磁場に応答して信号を発する。カテーテルは、心内膜の示された正確に選ばれた部位で薬物、好ましくは選ばれた成長因子を送達するように、位置センサーを使用して進路を決められかつ位置を定められる。カテーテル20は、かように、当該技術分野で既知の装置および方法を使用して成し遂げられ得ない最小限に侵襲的な様式での成長因子の有効な投与に必要とされる薬物の正確な局所送達を可能にする。
好ましくは、カテーテル20は、遠位端部22と心壁との間の接触に応答して信号を発しそうして針24の伸長前のカテーテルと壁との間の適正な接触を保証する、1種もしくはそれ以上の接触センサー36、例えば圧センサーもまた含んで成る。加えて、カテーテルは、心臓組織の局所の生存能力を評価しかつ地図を作成するために心壁の電気的活動性を測定するのに使用される1個もしくはそれ以上の電極38を含んでよい。生存能力地図作成の方法は、例えば上で挙げられたPCT特許出願PCT/IL97/00010および米国特許第5,568,809号により詳細に記述される。生存能力地図は、下述されるように薬物投与に先立ちもしくはこれと同時にかのいずれかで生じられうる。
図1Cは、本発明の代替の好ましい一態様に従った心臓内薬物送達のためのカテーテル45の図解の部分的に断面の具体的説明である。カテーテル45は、カテーテル45がらせん状針47を包含することを除き上述されたカテーテル20に本質的に類似である。カテーテルが薬物が送達されるべきである心壁の部位との接触に導かれた後に、針47がコルク栓抜き様の回転の動きにより壁中にひねられる。この動きは、カテーテル内の針の回転もしくはカテーテル全体の回転のいずれかにより達成されうる。針を心壁中にひねることは、カテーテル45が薬物投与の間正しい位置にしっかりと留まることができることを確実にする。
図に示されない別の好ましい態様においては、カテーテル45は遠位端部22にらせん状もしくは円筒状の空洞を有し、これは、針47が、心臓へのカテーテルの挿入の間、そして好ましくは心の内側の1薬物送達部位から別へのカテーテルの動きの間、カテーテル中に収納されることを可能にする。
図2は、本発明の好ましい一態様に従った心臓内薬物送達のための系48を示す図解の絵で表わした具体的説明である。系48は、それにカテーテル20がその近位端部で連結されるコンソール50を含んで成る。コンソールは、好ましくはコンピュータを含んで成る制御回路構成要素52を包含し、このコンピュータに、使用者入力装置56およびディスプレイ58が、好ましくは、使用者、一般には医師がこの系と情報を交換しかつ操作することを可能にするように連結される。回路構成要素は、図1Aおよび1Bに示されるとおり、センサー32、36、38および40ならびに機構30および44を包含するカテーテル20の要素にワイヤ42を介して連結される。
コンソール50は、管46を介して連結されて針24を通って予め決められた用量の薬物を分注する分注器54もまた含んで成る。好ましくは、分注器54は、それに薬物が液体の形態で満たされる溜め、および溜めと連絡する液体計量ポンプを含んで成る。ポンプは、回転もしくは往復ピストン計量ポンプ、蠕動ポンプまたは当該技術分野で既知のいずれかの他の適する容量形ポンプ、例えばニューヨーク州オイスターベイのフルイド メータリング インク(Fluid Metering Inc.)により製造されるPiPバルブなしピストンポ
ンプを含みうる。あるいは、分注器54は、当該技術分野で同様に既知であるようなカテーテルを通る溜めからのマイクロカプセルの通過を制御するための別個の供給装置を含みうる。マイクロカプセルは、例えば下の図6Aに示されかつそれへの言及でさらに記述されるとおり、心筋中に埋込まれる。
好ましくは、回路構成要素52は、ディスプレイ58に表示される心臓の地図、好ましくは生存能力地図を生じさせる。こうした生存能力地図は、薬物投与に適する候補領域、すなわち心臓組織の虚血のしかしなお生存可能な領域の同定で有用であり、これに、それに対し成長因子療法が役に立たないもしくは毒性のいずれかでありうる梗塞されかつ非生存可能の領域もしくは十分に灌流されかつ健康な領域とは対照的に、成長因子療法が最も有用に適用され得る。回路構成要素52は、候補領域を所望の密度で(点から点への間隔)包括する地図上の点の格子を決定しかつ印をつけ、ここに薬物が投与されることになる。生存能力地図は、薬物の投与のためのカテーテル20の挿入前に別個の処置で生じられてよいが、しかし、好ましくは、心臓の電気的活動性の地図を作成するために位置センサー32および電極38を利用して薬物投与と同時にもしくはその直前に生じられる。
図3は、本発明の好ましい一態様に従った系48およびカテーテル20を使用する、同時の生存能力地図作成および薬物投与の方法を示す流れ図である。カテーテルが心臓に、好ましくは経皮的に挿入され、そして自動的にもしくは使用者の制御下のいずれかに薬物投与の候補領域に進路を決められる。位置センサー32を使用すれば、遠位端部22は、薬物投与の候補位置で心内膜に対し、一般にはその表面に垂直に位置を定められる。好ましくは、回路構成要素52が、接触センサー36からの信号を受領しかつ分析してカテーテルの遠位端部と心内膜との間の明確な(positive)接触を確実にする。あるいは、もしくは加えて、回路構成要素52が、いくつかの心周期にわたって位置センサーからの読みを受領することができ、そしてかように決定される位置座標が(心周期のいずれかの所定の期の間)本質的に一定のままである程度まで、遠位端部22が心内膜と明確な接触にあると想定される。
遠位端部22が確かに位置を定められれば、回路構成要素52が、好ましくは電極38により受領される電気記録図信号の波形および振幅を基礎として、遠位端部の位置での心組織の生存能力を評価する。その位置での心壁の動きの特徴もまた、心周期の複数の期でセンサー32からの位置の読みを調べることにより生じられてよく、そして、生存能力が同様にそうであるように使用されうる。この様式で、回路構成要素52は、好ましくは、遠位端部22の位置の近接の心臓組織がその位置に薬物を投与する前に虚血のしかしなお生存可能であることを実証する。上に示されたとおり、心臓の非虚血領域への成長因子のような薬物の投与は有害な効果を有し得、そして、一般的に言って、ただ、可能な全身性の毒性を避けるために必要とされる正確な投薬量を適用することが望ましい。これらの理由上、回路構成要素52は、好ましくは、上述された生存能力の基準に合致しない位置での薬物の投与を予防するか、もしくは少なくともこうした位置の生存能力の状態を使用者に通知する。
カテーテル20の遠位端部22が虚血部位にしっかりと位置を定められたことが確かめられれば、針24が図1Bに示されるように鞘26から伸長され、そしてある用量の薬物が投与される。回路構成要素52は、心臓の地図上に位置、生存能力の状態および投薬量の情報の印をつけ、そしてカテーテルが格子上の次の点に移される。この手順は、好ましくは、候補領域全体が踏破されるまで継続し、踏破に際してカテーテルが心臓から引き抜かれる。生存能力地図作成の手順は、薬物治療の有効性を評価し、そして必要な場合はその付加的投薬量を投与するために後日反復されうる。
カテーテル20は、加えて、もしくは、あるいは、薬物投与の制御および/もしくは監視ならびに心臓組織の生存能力地図作成での使用のために他の型のセンサーを包含しうる。多様な型のセンサーを有する地図作成カテーテルは、例えば前述のPCT特許出願PCT/IL97/00010および米国特許第5,568,809号に記述される。他の生理学的検出器、例えば局所の微小循環の血流速度を測定する灌流検出器、もしくは局所の血液灌流に関する蛍光放出を感知する光学検出器が同様に使用されてよい。
図4は、本発明の好ましい一態様に従った心臓内薬物注入のための別のカテーテル64の図解の部分的に断面の具体的説明である。カテーテル64は全般的に上述されたカテーテル20に類似であるが、しかし、超音波輻射62の光線を放出しかつ心壁から反射される超音波を受領する超音波変換器60もまた包含する。変換器60は、好ましくは、前述のPCT特許出願PCT/US95/01103に記述されるとおり、心壁の厚さを測定しかつ地図を作成するのに使用される。あるいは、もしくは加えて、変換器は、心内膜および/もしくは心内膜表面の超音波画像を生じさせるのに使用されうる。この場合、変換器は、好ましくは夥しい数の変換器要素を含んで成り、その結果詳細な画像が高解像度で生じられ得る。
図5は、それに薬物を投与するためにそれにカテーテル64が挿入される心臓70の図解の断面の具体的説明である。上述されたとおり、カテーテル64の遠位端部22は心内膜72との接触に導かれる。変換器60により受領される超音波信号が、心内膜から心外膜74の外側表面までの距離を測定するのに使用され、その結果心壁の厚さWが決定される。遠位端部22が薬物投与に適する生存可能な位置に適正に位置を定められると想定すれば、針24がカテーテルから心筋76中に伸長される。
好ましくは、針24を通る薬物の分注は心壁の厚さの変化に応答して制御される。心筋76内の薬物の至適な分注および保持は、一般に、針が心筋を通ってほぼ中央に薬物を分注する場合に達成されると考えられる。心壁の厚さは、しかしながら、心臓が収縮および拡張する際に変動し、そして、この変動は変換器60を使用して測定されうる。針の長さが未知であるため、薬物は、好ましくは、壁の厚さWが図5に示されるとおりカテーテルから伸長する針の長さの最低2倍にほぼ等しい場合に分注される。あるいは、薬物の分注はいずれかの所望の壁厚さで制御されることができ、また、薬物は心壁内の本質的にいずれかの所望の深さで分注されうる。さらにあるいは、もしくは加えて、針24の挿入の深さは厚さWに応答して制御されることができ、その結果厚さが大きくなるほど針が深く挿入される。
図6Aは、本発明の別の好ましい態様に従った、レーザー心筋血管再生(LMR)および心臓内薬物投与の組み合わせられた実施のためのカテーテル78の遠位端部22を図解で具体的に説明する。図6Bは、カテーテル78を使用する組み合わせられたLMRおよび薬物療法のための系96の図解の絵で表わした具体的説明である。系96は、系96においてコンソールがLMR処置での使用のためのレーザー源94もまた包含することを除いて本質的に図2への言及で上述されたような制御コンソール50を含んで成る。
図6Aおよび6Bの態様においては、好ましくは成長因子を含んで成る投与されるべき薬物は、好ましくは、固体のポリマー性マトリックスカプセル88内に組み込まれる。当該カプセルは、カテーテルに沿って走る溝92を通って、適して加圧された担体液体内で分注器54から進められ、そしてカテーテルを使用して心壁中に挿入される。一方向バルブ90は、好ましくは溝92の遠位端部を封鎖して、カプセル88がそれから出ることを可能にするがしかし血液もしくは破片が進入することそしておそらく溝をつまらせることを予防する。
カテーテル78は、近位でレーザー源94にかつ遠位でレーザー源からの心壁への輻射を集中させる光学素子82に連結される導波管80もまた含んで成る。カテーテル78は、好ましくは、上述されたとおり、位置センサー32ならびに1個もしくはそれ以上の接触センサー36および/もしくは電極38、ならびに操向機構(図6Aで示されない)を含んで成る。カテーテル78は、好ましくは、大動脈のような血管を通って心室に経皮的に送られ、そして操向機構および位置センサーを使用して心臓の虚血領域に進路を決められる。
制御回路構成要素52により心臓の地図上で決定されかつ示されるような虚血領域の格子上の各点で、レーザー源94が、例えば前述のPCT/IL97/00011特許出願に記述されるとおり、心筋内に血管再生する溝を生じるよう作動される。溝の発生に際して、LMR溝内に嵌まるよう設計された遅延放出カプセル88が、適して湾曲した遠位部分を提供される管92からバルブ90を通って排出される。あるいは、薬物は、例えば上で挙げられた米国特許第4,588,395および4,578,061号に記述されるような当該技術分野で既知のいずれかの他の適する型の固体カプセル送達系を使用して分注されてよい。
好ましくは、カプセル88は、その寸法が、カプセルを示された位置で正しい場所に固定しかつ偶然の移動を排除してかように治療の持続期間を通じての薬物の適切に限局された投与を保証するように、治療期間を通じて本質的に一定のままであるように設計される。さらに好ましくは、その中に成長因子が埋込まれる媒体は、ハラダ(Harada)らおよびイズナー(Isner)による前述の論文で記述されたとおり、他の補助物質、例えばヘパリンとともに生物適合性ポリマー性マトリックスを含んで成る。成長因子は、カプセルと周囲の組織との間の浸透圧勾配のため、心筋の血液循環によりカプセルから浸出され、そして組織内に分散される。好ましくは、カプセルは適する機構を使用することにより治療の完了に際して崩壊するよう設計される。例えば、マトリックスの溶解性は薬物拡散速度で調整されることができるか、もしくは、迅速なマトリックス溶解性が予め決められた成分のある濃度レベルに応答して引き起こされうる。かように、治療の終点に到達する際に、カプセルは迅速に溶解されそしてその成分が洗い流される。
カテーテル78はLMR照射に付随して固体の薬物カプセルを送達するとして上述されるとは言え、これらの要素のそれぞれが薬物投与プロトコルで他と独立して使用され得ることが理解されるであろう。例えば、カプセル88は、針(適して適合された針24のような)もしくは他の顕微手術の道具を使用して、または管92を通る圧のバーストによって心壁中に埋め込まれうる。
さらにあるいは、LMR療法は、液体マトリックス中の成長因子のような薬物の投与とともに実施されうる。この場合、針24のような針が心壁を穿刺し、そして、溝の境界が薬物の治療寿命の少なくとも主要部分の間は成長因子の影響の範囲内にあるようなLMRの溝の近接の部位で薬物を投与する。成長因子およびLMRの一緒の使用は上で挙げられたとおり血管新生をさらに助長すると考えられる。
図7は、本発明の好ましい一態様に従った、レーザー源94の制御で使用される信号を図解で具体的に説明する調時線図である。レーザー源は、治療を受けている患者の皮膚上の身体表面電極、もしくはカテーテル78上の電極38のいずれかから受領されるECG信号に応答して作動される。この様式でレーザーを作動させることは、レーザーパルスが、心壁が収縮期の間ある所望の厚さ、好ましくはその最大の厚さにある場合に、心筋に発射されることができることを確実にする。
図7に示されるとおり、カテーテル78が心筋に対し適して位置を定められた後に、ECGのR波のピークが検出され、そして位置の読みが短い時間、好ましくはその後20〜50m秒以内に位置センサー32から調べられる。R波が連続したいくつかの心周期の間検出されかつ位置の読みが調べられる。回路構成要素52は、連続した周期のR−R間隔を試験し、そして連続した位置の読みもまた比較する。この比較の目的は、患者の心律動および遠位端部22の位置決めの双方がレーザーを発射する前に安定であることを確実にすることである。従って、回路構成要素52は、R−R間隔が2個もしくはそれ以上の先行する周期の間隔の予め決められた制限内、好ましくは±12%もしくは120m秒以内にある場合のみ、そして、センサー32からの位置の読みが、好ましくは0〜12mmの範囲、最も好ましくは3〜6mmの範囲の予め決められた距離より大きいだけ移動していない場合に、レーザー源94を可能にする。
回路構成要素52が安定な心律動およびカテーテル位置を実証した後に、それが各周期でのR波の検出後に予め決められた遅れで心周期毎に1度レーザーを可能にするパルス(laser enable pulse)を提供する。遅れは、回路構成要素52により自動的にもしくは系96の使用者によりのいずれかで調節され、その結果レーザーは心壁が所望の厚さを有する心周期の1点でのみ発射することができる。使用者がコンソール50のレーザースイッチを起動させる場合は、レーザーは、回路構成要素52により提供される各レーザーを可能にするパルスに応答して一列の1個もしくはそれ以上の輻射パルスを発射する。レーザー源94を駆動させるのに使用される高電圧電子装置(electronics)に固有の遅れのため、レーザーパルスの列は、一般に、レーザーを可能にするパルスの上昇する縁(rising edge)に関して些細な無作為の遅れ、一般に約5〜25m秒だけ遅らせられることができる。
場合によっては、図4に示される変換器60のような超音波変換器が、それに応じてレーザー源94を作動させるように厚さを測定するのに使用される。超音波変換器に変えて、もしくはこれに加えて、心周期の間にセンサー32から受領される位置の読みの変動が、心壁厚さを推定しそして/もしくはレーザーを作動させるのに使用されうる。いずれの場合にも、レーザーは、好ましくは、溝が心外膜を通って貫通することができるという危険を減少させつつ心筋中に比較的幅広い溝を創製するように、心壁がその最も厚い場合に発射するよう制御される。