JP4604457B2 - ポルフィリン化合物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポルフィリン化合物及びその製造方法に関する。該ポルフィリン化合物は、電界効果トランジスタ等の半導体材料として用いることができるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ヒドロキシメチルピロールを4量化し環化してポルフィリノーゲンとし、それを酸化してポルフィリンに変換するポルフィリン化合物の製造方法は収率の高い方法として知られている。
このうち、非特許文献1及び2には、下記構造のテトラビシクロポルフィリン化合物を合成する方法として、ピロール−2−カルボン酸エチルエステル誘導体を水素化リチウムアルミニウムで還元して生成する2−ヒドロキシメチル−ピロール誘導体を酸処理により環化し、それを酸化してテトラビシクロベンゾポルフィリンを合成する方法が報告されている。
【0003】
しかしながら、本発明者らがここに記載されている方法で合成したテトラビシクロベンゾポルフィリンを用いて有機トランジスタを作製したところ、高い移動度のデバイスを得ることが難しいことが判明した。
【0004】
【化8】
Figure 0004604457
【0005】
【非特許文献1】
J.Chem.Soc.、Perkin Trans.1、3161(1997)
【非特許文献2】
Heterocycles 52巻、399(2000)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来の方法で製造されたポルフィリン化合物は、半導体材料として用いた場合必ずしも良好な結果を得るに至っていない。これは、わずかな不純物でもその移動度等の電気特性への影響が大きい為、通常の目的ポルフィリン部分をカラムクロマトグラフィーで集め、再結晶や再沈殿法を用いても、安定して良好な電気特性を与える十分に高純度な材料を得ることが難しいためであると考えられる。
【0007】
従って、半導体材料として用いた場合にも良好な移動度を示すポルフィリン化合物の提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の製造方法で得られるポルフィリン化合物には、メソ位に置換基を有する化合物が不純物として混入し、且つ、該化合物は、目的とするテトラビシクロベンゾポルフィリンと構造が類似しているため精製で分離することは難しいこと、及び、ポルフィリノーゲン誘導体を酸化してポルフィリン化合物を製造するにあたり、酸化反応系内のアルデヒド(但し、ホルムアルデヒドを除く)及び/又は酸化によりアルデヒド(但し、ホルムアルデヒドを除く)に変換し得るアルコールの含有量を制御することにより副生するメソ位に置換基を有する化合物の量を減少させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(I’)で表されるポルフィリノーゲン誘導体を酸化してポルフィリン化合物を製造するにあたり、酸化反応前反応液及び/又は酸化反応系内の、ホルムアルデヒドを除く脂肪族アルデヒド及び芳香族アルデヒドの含有量が、ポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して20モル以下であることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法に存する。
【化9】
Figure 0004604457
(式中、Q 1' 〜Q 8' は、それぞれ独立して水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を示し、このうち、(Q 1' 及びQ 2' )、(Q 3' 及びQ 4' )、(Q 5' 及びQ 6' )、並びに、(Q 7' 及びQ 8' )は互いに結合して環構造を形成していても良い。)
本発明の別の要旨は、前記一般式(I’)で表されるポルフィリノーゲン誘導体を酸化してポルフィリン化合物を製造するにあたり、酸化反応前反応液及び/又は酸化反応系内に、酸化により、ホルムアルデヒドを除く脂肪族アルデヒド及び芳香族アルデヒドに変換し得る1級アルコールの含有量が、ポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して80モル以下であることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(ポルフィリノーゲン誘導体)
本発明において、ポルフィリノーゲン誘導体とは、2位にメチレンを有するピロール誘導体の環状4量体化合物である。具体的には、下記一般式(I’)
【0011】
【化10】
Figure 0004604457
【0012】
上記Q1'〜Q8'の1価の有機基としては、酸化反応時に悪影響を与えない基であれば特に限定されないが、具体的には、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;ニトロソ基;シアノ基;イソシアノ基;シアナト基;イソシアナト基;チオシアナト基;イソチオシアナト基;メルカプト基;ヒドロキシ基;ホルミル基;スルホン酸基;カルボキシル基;置換されていても良いアルキル基;置換されていても良いシクロアルキル基;置換されていても良いアルケニル基;置換されていても良いシクロアルケニル基;置換されていても良いアリール基;置換されていても良い複素環基;置換されていても良いアルコキシ基;置換されていても良いアルケニルオキシ基;置換されていても良いアリールオキシ基;置換されていても良いアルキルチオ基;−COQ9で表されるアシル基;−OCOQ9で表されるアシルオキシ基;−NQ1011で表されるアミノ基;−COOQ9で表されるカルボン酸エステル基;−CONQ1213で表されるカルバモイル基;−SOQ9で表されるスルフィニル基;−SO29で表されるスルホニル基;−SO39スルホン酸エステル基;−SO2NQ1213で表されるスルファモイル基が挙げられる。このうち、置換されていても良いアルキル基;置換されていても良いシクロアルキル基;置換されていても良いアルケニル基;置換されていても良いシクロアルケニル基;置換されていても良いアリール基;置換されていても良い複素環基;置換されていても良いアルコキシ基;置換されていても良いアルケニルオキシ基;置換されていても良いアリールオキシ基;置換されていても良いアルキルチオ基;−COQ9で表されるアシル基;−OCOQ9で表されるアシルオキシ基;−NQ1011で表されるアミノ基;−COOQ9で表されるカルボン酸エステル基;−CONQ1213で表されるカルバモイル基;−SOQ9で表されるスルフィニル基;−SO29で表されるスルホニル基;−SO39スルホン酸エステル基;−SO2NQ1213で表されるスルファモイル基としては、炭素数18以下、好ましくは12以下ものが挙げられる。
【0013】
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へプチル基等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
上記シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の環状アルキル基が挙げられる。
上記アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐のアルケニル基が挙げられる。
上記シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基が挙げられる。
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
【0014】
上記複素環基としては、2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピペリジル基、モルホリノ基等の異項原子を1〜3個有する複素環基が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。
上記アルケニルオキシ基としてはプロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の直鎖または分岐のアルケニルオキシ基が挙げられる。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基又はナフチルオキシ基が挙げられる。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の直鎖または分岐のアルキルチオ基が挙げられる。
【0015】
上記アシル基、アシルオキシ基、カルボン酸エステル基、スルフィニル基、スルホニル基及びスルホン酸エステル基におけるQ9としては、置換されていても良い炭化水素基又は置換されていても良い複素環基が挙げられる。
上記アミノ基におけるQ10及びQ11としては、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、炭化水素基、複素環基、−COQ9で表されるアシル基、−COOQ9で表されるカルボン酸エステル基又は−SO29で表されるスルホニル基が挙げられる。
【0016】
上記カルバモイル基又はスルファモイル基における、Q12及びQ13としては、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基又は複素環基が挙げられる。
上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基及び炭化水素基は、酸化反応において悪影響を与えない範囲で任意の置換されていても良く、その具体例としては、上述のQ1'〜Q8'の具体例として記述したような基が挙げられる。
【0017】
また、(Q1'及びQ2')、(Q3'及びQ4')、(Q5'及びQ6')、並びに、(Q7'及びQ8')は、それぞれが互いに一体となって、プロピレン基、ブチレン基、等の2価の脂肪族炭化水素基を形成していてもよいし、ピロール環と一緒になって形成する縮合環がベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭素環となっていてもよいし、さらにこれらがヘテロ原子により置換されてピロール環、ピリジン環等の複素環基を形成していてもよいが、このうち好ましくは、脂肪族炭素環である。
【0018】
上記Q1'〜Q8'として好ましくは、(Q1'及びQ2')、(Q3'及びQ4')、(Q5'及びQ6')、並びに、(Q7'及びQ8')のうちの少なくとも1つの組が一体となって下記一般式(II)
【0019】
【化11】
Figure 0004604457
【0020】
で表される基を形成しているのが好ましく、より好ましくは2つ以上の組が上記一般式(II)で表される基を形成しているのが好ましく、特には、4つの組み合わせが全て上記一般式(II)で表される基を形成しているのが好ましい。
上記ポルフィリノーゲン誘導体は、下記式で表されるような、2−ヒドロキシピロール誘導体の酸処理、又は、ピロール誘導体とアルデヒドの縮合反応等の公知の方法によって合成できる。
【0021】
【化12】
Figure 0004604457
【0022】
ここで、上記2−ヒドロキシピロール誘導体は、ピロールカルボン酸エステル誘導体をリチウム水素化アルミニウム等の還元剤で還元して製造することができるが、該エステル誘導体としてはメチルエステル、又は、イソプロピルエステルやt−ブチルエステル等の2級以上のアルコールのエステルを用いるのが好ましい。
また、反応終了後、余剰の還元剤は、酢酸エチル等で不活性化し、以降の反応に影響ないようにするが、このとき用いる酢酸エチルの代わりに酢酸のイソプロピルエステル、酢酸t−ブチルエステル等の2級又は3級アルコールのエステル類;酢酸メチル等のメチルエステル類;水;又は、塩化アンモニウム、硫酸水素ナトリウム等の無機塩の水溶液を用いるのが好ましい。
【0023】
さらに、得られる2−ヒドロキシピロール誘導体中への1級アルコール類(但し、メタノール、2−ヒドロキシピロール誘導体及びその多量体を除く。)の混入量を蒸留やカラムクロマトグラフィーを用いて除去する等の操作により低減するのも好ましく、特にはヒドロキシメチルピロール誘導体を減圧濃縮することで上述のアルコール類の大部分を除去することができる。
【0024】
(酸化反応)
本発明の製造方法は、上述のポルフィリノーゲン誘導体を酸化してポルフィリン化合物を製造するに当たり、酸化反応系内のアルデヒド(但し、ホルムアルデヒドを除く)の含有量が、ポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して20モル以下、好ましくは10モル以下、より好ましくは5モル以下、さらに好ましくは2モル以下、特に好ましくは1モル%以下、最も好ましくは0.1モル以下とすることを特徴とするものである。20モルより大きいと、不純物であるメソ位に置換基を有するポルフィリン化合物が増加し、高純度のポルフィリン化合物が得られない。
【0025】
さらに、酸化反応系内に、酸化によりアルデヒド(但し、ホルムアルデヒドを除く)に変換し得るアルコールの含有量が、ポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して80モル以下、好ましくは60モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは20モル以下、とりわけ好ましくは10モル以下、特に好ましくは5モル以下、最も好ましくは1モル以下とすることを特徴とするものである。80モルより大きいと、不純物であるメソ位に置換基を有するポルフィリン化合物が増加し、高純度のポルフィリン化合物が得られない。
【0026】
【化13】
Figure 0004604457
【0027】
本発明の方法では、酸化反応時にホルムアルデヒド以外のアルデヒドの含有量が少ない又は全く存在しないようにすることにより、メソ位が置換されたポルフィリン化合物の副生を押さえるものである。
また、アルコール類は酸化によりアルデヒドに変換されることとなるので、これらについても同様である。
【0028】
上記アルデヒドとしては、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール等の脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、ナフチルアルデヒド等の芳香族アルデヒドが挙げられる。
上記アルコール類としては、1級アルコールが挙げられるが、酸化によりホルムアルデヒドを生成することになるメタノール、2−ヒドロキシピロール誘導体及びその多量体は含まない。
【0029】
上記のようにアルデヒド及び/又はアルコール含有量を制御するに当たっては、上述のポルフィリノーゲン誘導体の説明の項で記載したように、原料となる2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の合成原料として使用するピロールカルボン酸エステル誘導体として、メチルエステル、又は、イソプロピルエステルやt−ブチルエステル等の2級又は3級アルコールのエステルを用いる方法、若しくは、還元反応終了後、余剰の還元剤を不活性化するに当たり酢酸メチル等の弱酸のメチルエステル、酢酸のイソプロピルエステルやt−ブチルエステル等の2級又は3級アルコールのエステル、水又は塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム等の無機塩の水溶液を用いる方法、若しくは、得られた2−ヒドロキシピロール誘導体中への1級アルコール(但し、メタノール、2−ヒドロキシピロール誘導体及びその多量体を除く。)の混入量を蒸留やカラムクロマトグラフィーを用いて除去する等の操作により低減させる方法が挙げられるが、このほかにも酸化反応前に蒸留やカラムクロマトグラフィーといった1級アルコール(但し、メタノール、2−ヒドロキシピロール誘導体及びその多量体を除く。)を除去する工程を設ける方法も挙げられる。
【0030】
さらに、反応溶媒として、安定剤としてエタノールを含有するクロロホルムを使用しない等の、アルデヒド(但し、ホルムアルデヒドを除く)及び/又は酸化によりアルデヒド(但し、ホルムアルデヒドを除く)に変換し得るアルコールを含有するか、若しくは、反応中に生成する可能性のある試薬、中間体、溶媒を使用しないことも重要である。
【0031】
ポルフィリノーゲン誘導体を酸化するに当たっては、公知の方法に従って、飽和炭化水素環あるいは不飽和炭化水素環をベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環に酸化するのに通常用いるようなクロラニル、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)等の、酸化剤を用いることができる。
又、エタノール、プロパノール等のアルコール類への酸化が非常に遅く、実質的にポルフィリノーゲン誘導体のみを酸化するような酸化剤や酸化条件を用いることもできる。すなわち、ポルフィリノーゲン誘導体を酸化する反応速度とアルコールを酸化する反応速度との間に、100倍以上というような十分な差がある酸化剤や酸化条件であれば、用いることができる。
【0032】
アルコール類への酸化が非常に遅く、実質的にポルフィリノーゲン誘導体のみを酸化するような酸化剤や酸化条件としては、例えば酸化反応前溶液よりポルフィリノゲーン誘導体を除いて酸化剤を加えた後、一定時間経過後に生成するアルデヒド量が、除去したポルフィリノゲーン誘導体に対して20倍モルしか生成しないものが挙げられ、例えば、そのような酸化剤としては、酸素(空気)等も挙げられる。
【0033】
アルコール類への酸化が非常に遅く、実質的にポルフィリノーゲン誘導体のみを酸化するような酸化剤や酸化条件を用いれば、酸化反応前反応液に、アルコールの含有量が、ポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して80モルより多く入っいても、アルデヒドを生成しないので問題ない。
反応終了後の処理は、公知の方法に従って、抽出、精製、単離を行う事が出来る。例えば、シリカゲルあるいはアルミナゲルをもちいたクロマトグラフィーを用いることにより目的ポルフィリンの単離ができる。さらに、クロロホルムーメタノールを溶媒に用いた再沈殿操作を行うことにより、高純度品へ精製することができる。
【0034】
(ポルフィリン化合物)
上述の製造方法で得られる本発明のポルフィリン化合物は、メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物の含有量が0.36%以下、好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは0.05%以下のものである。メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物の含有量が0.36%より大きいと移動度、オンオフ比等の半導体特性が悪くなる。
【0035】
メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物は、公知に知られている液体クロマトグラフィー、マススペクトル、NMR、IR等の分析により同定できる。
メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物の定量は、通常の方法であれば特に限定しないが、例えば、NMRあるいは液体クロマトグラフィーにより組成比を分析することができる。NMRスペクトルにおける、対応するプロトンに対するピークの積分比から、メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物とメソ位に置換基を有しないポルフィリン化合物との組成比(=モル比)を求めることができる。また、NMR測定に用いたと同じサンプルを、液体クロマトグラフィーを用い、汎用に使用されるUV254nmで検出し、そのピーク面積をモル比に換算することができる。
【0036】
メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物の副生するメカニズムは、詳細は不明であるが、本発明の製造方法の結果を勘案すると、以下の様であると考えられ、ポルフィリン化合物としてポルフィリンを例にして以下に説明する。
2−ヒドロキシメチルピロールを酸触媒により環化することにより、ピロールの4量体であるポルフィリノーゲンが生成するが、この中間体は酸と水の存在下において、メソ位のメチレン基がホルムアルデヒドとして脱離したものとの平衡状態であると考えられる。一方で、ポルフィリノーゲンを酸化してポルフィリンに変換する際に、エタノールの様な1級アルコールが存在すると、そのアルコールがが酸化されて例えば、アセトアルデヒド等のアルデヒド類が生成することとなる。これが上記平衡によりピロール4量体に取りこまれた後に酸化されることによりメソ位に上記アルコールに由来する基が結合したポルフィリン化合物が副生すると考えられる。
【0037】
上述のような方法で製造される本発明のポルフィリン化合物は、下記一般式(III)で表される化合物である。
【化14】
Figure 0004604457
【0038】
【化15】
Figure 0004604457
【0039】
で表される基を形成しているのが好ましく、より好ましくは2つ以上の組が上記一般式(II)で表される基を形成しているのが、好ましく、特には、4つの組み合わせが全て上記一般式(II)で表される基を形成しているのが好ましい。
また、Mは、2個の水素原子又は1ないし2個の金属原子を示し、該金属原子は、他の原子若しくは原子団が結合していても良い。
【0040】
上記金属原子としては、ポルフィリン化合物と結合できるものであれば、すべて用いることができる。このうち好ましくは2価あるいは3価の価数をもつ金属であるが、2価の金属としては、例えば、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の周期律表(IUPAC無機化学命名法1990年規則)の8族、9族、10族、11族又は12族より選ばれる金属が挙げられる。また、上記金属原子が3価以上の場合には、ハロゲン原子、酸素原子等の他の原子、又は、アルキル基、アルコキシ基等の原子団が結合していても良く、例えば、Fe−X、Al−X、Ti=O、Si−X1X2(ここで、X、X1及びX2は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等の1価の基を示す。)等が挙げられる。その例としては、KARL M. KADISH KEVIN M.SMITH ROGER GUILARD著、THE PORPHYRIN HANDBOOK VOL.1〜10、ACADEMIC PRESS(2000)等に挙げられた様な公知のものを用いることができる。
【0041】
このようなポルフィリン化合物の好ましい具体例としては、以下の例が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化16】
Figure 0004604457
【0043】
上記化合物の中心(N原子)に各種金属を導入する場合には、例えば酢酸銅のような金属塩を、クロロホルムーメタノールのような混合有機溶媒中で反応させることにより容易に行うことができる。
(ポルフィリン化合物の応用)
上記で得られるポルフィリン化合物は結晶状態で半導体特性を示すが、その半導体特性の指標ともなる移動度は、結晶の欠陥で制限される事も良く知られている。このような欠陥は、不純物の存在や結晶構造の欠陥が考えられ、メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物は正孔のトラップや構造欠陥の要因となる可能性が考えられるが、本発明のポルフィリン化合物はこのような副生物を減少させることにより、良好な半導体性能を得ることが可能となったものである。
【0044】
また、本発明における高純度ポルフィリン化合物を用いると、電気伝導や光起電力等の半導体特性が向上するので、トランジスタ、発光ダイオード、太陽電池等の電気、光機能素子に応用することができ、特に有機トランジスタには好適に用いることができる。
上記用途に用いられる好ましいポルフィリン化合物の具体例としては、下記式に示される様なものを挙げることができる。すなわち、塗布時には、ポルフィリン化合物中に平面性の悪い構造が存在することにより、高い溶解性及び製膜性を有しており、一方、製膜後に加熱することにより平面性の高い構造に変換することで、半導体特性を有する膜となる。
【0045】
【化17】
Figure 0004604457
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例においてポルフィリノーゲン誘導体及びポルフィリン化合物の定量は、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。用いたカラムはSHISEIDO FINE CHEMICALS製、CAPCELL PAKC18であり、THF/水=60:40の混合溶媒を流速0.6ml/分、圧力150kgf/cm2で流しながら、UV254nmで検出し、サンプルのクロロホルム溶液を分析した。
【0047】
(実施例1)
窒素雰囲気下、水素化アルミニウムリチウム(4.41g、116mmol)をテトラヒドロフラン(THF、100ml)に懸濁させた。0℃に冷却し、4,7-ジヒドロ-4,7-エタノ-2H-イソインドール-1-カルボン酸エチル (6.22g、28.6mmol)のTHF(60ml)溶液を滴下した。その後10℃に昇温し、全体で約3時間程度攪拌した。HPLCにより、反応の進行を確認し、飽和塩化アンモニウム水溶液に反応液を加えて反応を停止した。その後、クロロホルム(和光純薬工業製、安定化剤にアミレンを使用)により抽出を行い(300mlずつ3回)、抽出したクロロホルム溶液を濃縮した。これとは別に、p-トルエンスルホン酸(770.2mg、4.47mmol)のクロロホルム溶液(700ml)(和光純薬工業製、安定化剤にアミレンを使用)を用意し、攪拌しながら圧縮空気を10分程度バブリングした。この酸性の溶液に、先ほど濃縮しておいた溶液を、攪拌とバブリングを続けながら、室温で滴下した。LCで確認すると、還元反応により生成した4,7-ジヒドロ-4,7-エタノ-1-ヒドロキシメチル-2H-イソインドールのピークが消失して新たに大きく現れるピークがあり、このピークのマススペクトルを測定すると、分子量が628であり対応するビシクロポルフィリノーゲンである事が確認された。1時間ほど攪拌とバブリングを継続した後、反応液のうち一部(10ml)を後述の比較例2のために取り分けた。クロラニル(263.7mg、10.7mmol)を室温で加え、1時間ほど攪拌とバブリングを行った後、一夜放置した。翌日反応液を水に注いで反応を停止し、有機層を分離した。炭酸水素ナトリウム水溶液で洗滌し(3回)、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はクロロホルム)により精製することにより、目的のビシクロポルフィリン誘導体を得た(305.0mg、収率6.8%)。
【0048】
本実施例においては、ポルフィリノーゲンからポルフィリンへの酸化反応が定量的に進行したと仮定すれば、原料であるテトラヒドロ−2H−イソインドール−1−カルボン酸エチル由来のエタノールがポルフィリノーゲンに対して58.8倍モル量存在したことになる。実際には抽出の過程を含んでおり、これより減少していた可能性はある。
得られたポルフィリンのHPLCのチャートを図1に示す。27.033分の位置のピークは目的のビシクロポルフィリンであり、メソ位に置換されたポルフィリンの含有量は検出限界以下(0.1%以下、0.05mol%以下)であった。
【0049】
次に、このビシクロポルフィリン化合物を用いて、電界効果トランジスタの素子を作製した。300nmの酸化膜を形成したN型のシリコン基板(Sbドープ、抵抗率0.02Ωcm以下、住友金属工業社製)上に、フォトリソグラフィーで長さ(L)2.5〜50μm、幅(W)250、1000μmのギャップを有する金電極(ソース、ドレイン電極)を形成した。また、この電極と異なる位置の酸化膜をフッ酸/フッ化アンムニウム液でエッチングし、むき出しになったSi部分に金を蒸着し、これをシリコン基板(ゲート電極)に電圧を印加するための電極とした。
【0050】
以下、FETの作製、特性評価は窒素雰囲気下(湿度、酸素共に2%以下)で行った。得られたビシクロポルフィリン化合物をクロロホルム1mLに溶解し、これをソースおよびドレイン電極間にたらしてスピンコートして良好な膜を得た。この基板を、210℃のホットプレート上で5分間加熱してビシクロポルフィリン化合物をテトラベンゾポルフィリンに変換した。
【0051】
こうして得られた電界効果トランジスタの特性を、アジレントテクノロジー社製半導体パラメータアナライザー4155Cを用いて測定した。その測定結果を図8に示す。ソースとドレイン間に印加された電圧Vdに対して流れる電流Idを、ソースとゲートに印加される電圧Vg、閾値電圧をVt、絶縁膜の単位面積当たりの静電容量をCi、ソース電極とドレイン電極の間隔をL、幅をW、半導体の移動度をμとすると、その動作は、次の様に表すことができる。
【0052】
【数1】
Figure 0004604457
【0053】
従って、μは素子の特性を支配する重要な材料パラメータであり、高特性の素子を得るためには、高いμの材料が必要になる。逆に、素子の電流電圧特性から求めることができる。このμを求めるには、式(1)あるいは(2)を用いるが、あるVgに対してId−Vdの傾きから求める有効移動度μeff、あるVdに対してId−Vgの傾きから求める電界効果移動度μFE、(2)式の飽和電流部分のId1/2−Vgの傾きから求める飽和移動度μsatがある。これらは上記式を求めたモデルでは同じ値になるはずであり、実際にもきれいにFET特性が得られるものに関しては同じ程度の値が得られるが、現実とモデルの差から異なる値になることもある。
作製した電界効果トランジスタの飽和移動度は2.32×10-2cm2/Vs、オンオフ比は3.12×104であった
【0054】
(実施例2)
窒素雰囲気下、水素化アルミニウムリチウム(1.43g, 37.4mmol)をテトラヒドロフラン(THF、50ml)に懸濁させた。0℃に冷却し、実施例1の4,7-ジヒドロ-4,7-エタノ-2H-イソインドール-1-カルボン酸エチルに代えて、4,7-ジヒドロ-4,7-エタノ-2H-イソインドール-1-カルボン酸メチル (1.9681mg, 9.84mmol)のTHF(60ml)溶液を滴下した。その後10℃に昇温し、全体で約3時間程度攪拌した。HPLCにより、反応の進行を確認し、飽和塩化アンモニウム水溶液(300ml)に反応液を加えて反応を停止した。その後、クロロホルム(和光純薬工業製、安定化剤にアミレンを使用)により抽出を行い(200mlずつ3回)、抽出したクロロホルム溶液を濃縮した。これとは別に、p-トルエンスルホン酸(260mg, 1.5mmol)のクロロホルム(和光純薬工業製、安定化剤にアミレンを使用)溶液(500ml)を用意し、攪拌しながら圧縮空気を10分程度バブリングした。この酸性の溶液に、先ほど濃縮しておいた溶液を、攪拌とバブリングを続けながら、室温で滴下した。1時間ほど攪拌とバブリングを継続し、LCによりポルフィリノーゲンの生成を確認した。
【0055】
以上の方法で作られた反応液には、使用が許容されるアルコールであるメタノールが最大で13.3倍モル量含まれている可能性があるが、エタノールは全く含まれていない。さらに、クロラニル(613.7mg, 2.46mmol)を室温で加えた。LCにより確認したところ、中間体が残存していたので、さらに、クロラニル(294.4mg, 1.20mmol)を室温で加えた。再びLCにより確認したところ、中間体は消失していた。酸化反応がすべて終了するように一夜放置した。翌日、反応液を水に注いで反応を停止し、有機層を分離した。炭酸水素ナトリウム水溶液で洗滌し(3回)、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はクロロホルム)により精製し、さらに再沈殿を行うことにより、目的のポルフィリン誘導体を得た(445.8mg、収率30%)。LCにより分析し、メソ位にメチル基を有する不純物が検出限界以下しか含まないことを確認した。
【0056】
(比較例1)
窒素雰囲気下、水素化アルミニウムリチウム(646.9mg, 17.02mmol)をテトラヒドロフラン(THF、23ml)に懸濁させた。0℃に冷却し、 4,7-ジヒドロ4,7-エタノ-2H-イソインドール-1-カルボン酸エチル(1001.8mg, 4.6mmol)のTHF(46ml)溶液を滴下した。その後10℃に昇温し、全体で約3時間程度攪拌した。HPLCにより、反応の進行を確認して、実施例1の飽和塩化アンモニウム水溶液に代えて酢酸エチル(4.6ml)を加えて反応を停止した。抽出のため飽和塩化アンモニウム水溶液に反応液を加えた後、実施例1のクロロホルム(和光純薬工業製、安定化剤にアミレンを使用)に代えて、クロロホルム(和光純薬工業製、安定化剤にエタノールを使用)により抽出を行った(460mlずつ3回)。抽出したクロロホルム溶液を濃縮し、再びクロロホルムを加えて70mlとした。この溶液をp-トルエンスルホン酸(129.7mg, 0.75mmol)のクロロホルム(和光純薬工業製、安定化剤にエタノールを使用)溶液(1400ml)に室温で滴下した。1時間ほど攪拌し、一夜放置した。
【0057】
以上の方法で作られた反応液には出発原料のエチルエステル、水素化リチウムアルミニウムの処理に用いた酢酸エチル、クロロホルムに含まれているエタノールに由来するエタノールが混入しており、その量はポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して100倍以上である。(この値は、ポルフィリノーゲンからポルフィリンへの変換が定量的に起こると仮定して、後述の収率から計算した。)翌日攪拌を再開し、反応開始約24時間後、クロラニル(568.6mg, 2.31mmol)を室温で加えた。1時間ほど攪拌し、一夜放置した。翌日攪拌を再開し、反応開始約24時間後、反応液を水に注いで、反応を停止し、有機層を分離した。炭酸水素ナトリウム水溶液で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はクロロホルム)により精製することにより、約300mgの目的のビシクロポルフィリン化合物を得た。
【0058】
得られたビシクロポルフィリンのHPLCのチャートを図2に示す。目的のポルフィリン化合物の後に、メソ位の水素が1個メチル基に置換されたポルフィリンが観測され、その量はLCチャートのピーク面積比で1%であった。
メソ位の水素が1個メチル基に置換されたポルフィリンについて、前述の方法により、液体クロマトグラフィーのピーク面積をモル比に換算するための測定を行い、この置換ポルフィリンのピーク面積に0.453を乗じればよいという結果を得た。これにより換算するとメチル置換ポルフィリンの含有量は0.455mol%となる。
【0059】
メソ位に置換基を有する不純物の同定には、LCマススペクトル法とNMR法を用いた。LCマススペクトルを測定すると不純物の精密質量は637.3335であり、候補組成式はC45414とC424524であった。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、不純物が64%含まれるポルフィリン化合物を得、これを重クロロホルムに溶解し、Varian社製INOVA500分光計を用い、25℃にて各種NMRスペクトルを測定した。その結果、ポルフィリン環に直接メチル基が結合している事、メソ位のHのシグナルがシフトして2:1の強度比の2本に分離し、ビシクロ環部分は変化しなかった事、NOESYでメチル基とビシクロ環が空間的に近いこと等から、4箇所のメソ位のうち、1箇所のみがメチル基で置換された下記構造のものと決定された。
【0060】
【化18】
Figure 0004604457
【0061】
このようにして作製したポルフィリン化合物を用いて、実施例1と同様に電界効果トランジスタ素子を作製し評価した。その結果、飽和移動度は3.9×10-4cm2・Vs、オンオフ比は3.03×103となり、どちらも実施例1よりも低い値が得られた。
【0062】
(比較例2)
実施例1のビシクロポルフィリノーゲンを含む反応液の一部(10ml)を取り分けた。この10mlの溶液にベンズアルデヒド(19.1mg, 0.18mmol)を加えて、さらに1時間ほど攪拌した後、一夜放置した。翌日攪拌を再開し、HPLCにより反応を追跡した。平衡に達したと判断された時点で攪拌を停止し、さらに数日間放置した。以上の方法で作られた反応液にはポルフィリノーゲンに対して25.9倍モル量のベンズアルデヒドが含まれている。(この値は、前述の実施例1のビシクロポルフィリンの収率から計算した。)このような小スケールの反応では空気中の酸素のみによる酸化だけで十分に反応が進行し、ポルフィリノーゲンはポルフィリンに変換される。LCMSにより、反応液を分析し、目的とするビシクロポルフィリン(分子量622, λmax=380nm)、メソ位にフェニル基が入ったモノフェニル体(分子量698, λmax=390nm)及びジフェニル体(分子量774, λmax=398nm)に対するピークが確認された。各ピークのモル吸光度系数が等しいと仮定し、各λmaxにおける面積の比から、生成比を求めた。無置換体:モノフェニル体:ジフェニル体=87.0:10.7:2.3であり、比較例1と比較してもメソ置換体の含有量が高くなっていることがわかる。
(比較例3)
窒素雰囲気下、水素化アルミニウムリチウム(142.8mg, 3.76mmol)をテトラヒドロフラン(THF、5ml)に懸濁させた。0℃に冷却し、 4,7-ジヒドロ-4,7-エタノ-2H-イソインドール-1-カルボン酸エチル(216.6mg, 1.00mmol)のTHF(5ml)溶液を滴下した。その後0℃から5℃の間に保ち、約2時間程度攪拌した。酢酸エチル(1ml)を加えて反応を停止し、得られた反応液のうちの半分を分取し飽和塩化アンモニウム水溶液に加えた後クロロホルム(和光純薬工業製、安定化剤にアミレンを使用)により抽出を行った(50mlずつ3回)。この抽出液にp-トルエンスルホン酸(42.2mg, 0.25mmol)を加え、1時間ほど攪拌し、一夜放置した。
【0063】
以上の方法で作られた反応液には出発原料のエチルエステル、水素化リチウムアルミニ ウムの処理に用いた酢酸エチルに由来するエタノールが混入しており、その量はポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して最大184倍と見積もられた。(この値は、ポルフィリノーゲンへの変換が30%の収率であると仮定して計算した。)翌日攪拌を再開し、反応開始約24時間後、クロラニル(62.3mg, 0.25mmol)を室温で加えた。1時間ほど攪拌し、一夜放置した。翌日反応液を水に注いで、反応を停止し、有機層を分離した。炭酸水素ナトリウム水溶液で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0064】
得られた抽出液を液体クロマトグラフィーにより分析すると、メソ位の水素が1個メチル基に置換されたポルフィリンが観測され、その量はLCチャートのピーク面積比で1.1%であった。これを前述の方法により、モル比に換算すると、0.5mol%と計算される 。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、高純度なポルフィリン化合物を得ることができ、半導体材料としてこのポルフィリン化合物を用いた場合にも、良好な特性を示す材料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたポルフィリン化合物のLCクロマトグラムを示す。
【図2】比較例1で得られたポルフィリン化合物のLCクロマトグラムを示す。
【図3】比較例2で得られたポルフィリノーゲン誘導体のLCクロマトグラムを示す。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I’)で表されるポルフィリノーゲン誘導体を酸化してポルフィリン化合物を製造するにあたり、酸化反応前反応液及び/又は酸化反応系内の、ホルムアルデヒドを除く脂肪族アルデヒド及び芳香族アルデヒドの含有量が、ポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して20モル以下であることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法。
    Figure 0004604457
    (式中、Q1'〜Q8'は、それぞれ独立して置換されていても良いアルキル基を示し、このうち、(Q1'及びQ2')、(Q3'及びQ4')、(Q5'及びQ6')、並びに、(Q7'及びQ8')は互いに結合して環構造を形成していても良い。)
  2. 下記一般式(I’)で表されるポルフィリノーゲン誘導体を酸化してポルフィリン化合物を製造するにあたり、酸化反応前反応液及び/又は酸化反応系内に、酸化により、ホルムアルデヒドを除く脂肪族アルデヒド及び芳香族アルデヒドに変換し得る1級アルコールの含有量が、ポルフィリノーゲン誘導体1モルに対して80モル以下であることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法。
    Figure 0004604457
    (式中、Q1'〜Q8'は、それぞれ独立して置換されていても良いアルキル基を示し、このうち、(Q1'及びQ2')、(Q3'及びQ4')、(Q5'及びQ6')、並びに、(Q7'及びQ8')は互いに結合して環構造を形成していても良い。)
  3. ポルフィリノーゲン誘導体が、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を酸処理することにより合成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポルフィリン化合物の製造方法。
  4. ポルフィリノーゲン誘導体が前記一般式(I’)における、(Q1'及びQ2')、(Q3'及びQ4')、(Q5'及びQ6')、並びに、(Q7'及びQ8')のうちの少なくとも1つの組が一体となって下記一般式(II)
    Figure 0004604457
    で表される基を形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポルフィリン化合物の製造方法。
  5. ポルフィリン化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポルフィリン化合物の製造方法。
    Figure 0004604457
    (式中、Q1 〜Q8 は、それぞれ独立して置換されていても良いアルキル基を示し、このうち、(Q1 及びQ2 )、(Q3 及びQ4 )、Q5 及びQ6 )、並びに、(Q7 及びQ8 )のうちの少なくとも1つの組が一体となって下記一般式(II)
    Figure 0004604457
    で表される基を形成したものである。Mは、2個の水素原子又は金属原子を示し、該金属原子は、他の原子若しくは原子団が結合していても良い。)
  6. メソ位に置換基を有するポルフィリン化合物の含有量が0.36モル%以下である下記一般式(III)
    Figure 0004604457
    (式中、Q1 〜Q8 は、それぞれ独立して置換されていても良いアルキル基を示し、このうち、(Q1 及びQ2 )、(Q3 及びQ4 )、Q5 及びQ6 )、並びに、(Q7 及びQ8 )のうちの少なくとも1つの組が一体となって下記一般式(II)
    Figure 0004604457
    で表される基を形成したものである。Mは、2個の水素原子又は金属原子を示し、該金属原子は、他の原子若しくは原子団が結合していても良い。)
    で表されるポルフィリン化合物を変換して得られたものであることを特徴とする半導体。
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