JP4599994B2 - 車両用動力伝達装置の遊星歯車装置 - Google Patents

車両用動力伝達装置の遊星歯車装置 Download PDF

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本発明は、車両に搭載される動力伝達装置に関し、特に、動力伝達装置に備えられる回転部材を支持する支持構造に関する。
車両用動力伝達装置として、遊星歯車装置を備えた自動変速機が知られている。自動変速機に備えられる遊星歯車装置は、回転部材としてサンギヤ、リングギヤ、サンギヤおよびリングギヤと同軸で回転するキャリヤを有しており、ブレーキまたはクラッチとして機能する摩擦係合装置により、上記回転部材が互いに連結され、或いは非回転部材であるケースに固定されることによって、自動変速機の変速が達成される。また、上記摩擦係合装置は、互いに係合させられる複数の摩擦板を相対回転不能に支持するドラムなどの回転部材を有している。
上記自動変速機に備えられている回転部材を他の部材に相対回転可能に支持する場合に、両部材の間に滑り軸受(ブッシュ)が介装されることがある。たとえば、特許文献1には、クラッチドラムと、その内周に配置されたブレーキドラムとの間に滑り軸受が介装されている。滑り軸受が介装される場合には、ころがり軸受が介装される場合に比較して重量軽減及びコスト低減を図ることができる。
実開平2−103567号公報
ところで、滑り軸受とそれが圧入される部材との間に熱膨張係数差がある場合、使用中に温度が上昇することによって圧入荷重が不十分となって、滑り軸受が抜け出てしまう、すなわち、当初の圧入位置に対して軸方向に移動してしまうという恐れがあった。
この滑り軸受の抜けを防止するために、滑り軸受を長くしたり肉厚にしたりすることによって当初の圧入荷重を高くすることが考えられるが、そのようにすると、自動変速機の軸長が長くなったり、重量が増加してしまうので、自動変速機の小型化や軽量化の要請に反することになる。
本発明は、以上の事情を背景として成されたものであり、その目的とするところは、当初の圧入荷重を高くすることなく、滑り軸受が抜け出してしまうことを防止できる動力伝達装置およびその動力伝達装置の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための第1発明は、円筒状のハブ部とそのハブ部の一端から径方向外側に向かう連結部とその連結部の外周端に連結されてその連結部との間にピニオンシャフトを介してピニオンギヤを回転可能に支持する支持部とを有し、軸心まわりに回転可能に設けられたキャリヤと、前記軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ピニオンギヤと噛み合う状態でそのピニオンギヤよりも内周側に設けられたサンギヤと、前記軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ピニオンギヤと噛み合う状態でそのピニオンギヤよりも外周側に設けられたリングギヤと、前記支持部の内周面に圧入により嵌合された円筒状の滑り軸受を介してその支持部を回転可能に支持する位置固定のケースとを備えた、車両用動力伝達装置の遊星歯車装置であって、前記支持部の内周面から内周側へ、前記滑り軸受の一方の端面に対して軸心方向に隣接するように突き出された突起部と、前記突起部の内径側に径方向に隣接した状態で前記ケースと前記サンギヤとの間に設けられた第1スラストベアリングと、前記リングギヤの前記ケースとは反対側の端部から前記ハブ部に向かって設けられたフランジ部の両側面に配置された第2スラストベアリングおよび第3スラストベアリングとを、含み、前記軸心から前記突起部の内周端までの長さが、その軸心から前記第1スラストベアリングの外周までの長さよりも長く、且つ、その軸心から前記第2スラストベアリングおよび第3スラストベアリングの外周までの長さよりも短くされていることを特徴とする。
発明は、第1発明の車両用動力伝達装置の遊星歯車装置において、前記支持部に、前記滑り軸受の前記突起部が設けられている側とは反対側の端面に隣接するように突き出すかしめ部が形成されていることを特徴とする。
第1発明によれば、前記支持部の内周面から内周側へ前記滑り軸受の一方の端面に対して軸心方向に隣接するように突き出された突起部によって滑り軸受の軸方向一方の動きが制限されることから、滑り軸受が軸方向の突起部側へ抜け出してしまうことが防止される。
また、上記突起部の内径側に径方向に隣接した状態で前記ケースと前記サンギヤとの間に設けられた第1スラストベアリングと、前記リングギヤの前記ケースとは反対側の端部から前記ハブ部に向かって設けられたフランジ部の両側面に配置された第2スラストベアリングおよび第3スラストベアリングとが、備えられており、軸心から前記突起部の内周端までの長さが、軸心から前記第1スラストベアリングの外周までの長さよりも長く、且つ、軸心から前記第2スラストベアリングおよび第3スラストベアリングの外周までの長さよりも短くされているので、第1スラストベアリングが配置される部位に誤って第2スラストベアリングまたは第3スラストベアリングを組み付けようとしても、第2スラストベアリングまたは第3スラストベアリングは突起部に引っ掛かって組み付けることができない。従って、誤組み付けが防止されるので、より確実な品質保証につながり、また、後工程において誤組み付けが発見されて組み付け直すこともなくなるので、製造コスト削減を図ることもできる。
発明によれば、かしめ部によって、滑り軸受は軸方向のかしめ部側への動きが禁止される。従って、滑り軸受は、軸方向のいずれの側へも抜け出ることが防止される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用された自動変速機の一部を示す断面図である。
自動変速機の軸心部分には、第1入力軸10と第2入力軸12とが直列に配置されており、第1入力軸10と第2入力軸12とは、第1入力軸10の第2入力軸12側の端部の内周面に設けられたスプライン歯14と、第2入力軸12の第1入力軸10側の端部の外周面に設けられたスプライン歯16とが噛み合うことにより、軸心まわりに一体的に回転させられる。この入力軸10、12は、エンジン等の走行用駆動源によって回転駆動されるトルクコンバータのタービン軸である。
第1入力軸10の第2入力軸12側の端にはフランジ部18が形成されている。このフランジ部18の外周面には、スプライン歯20が形成されているとともに、軸方向の一方の端から外径側に突き出す突起部22が形成されている。サンギヤSは、内周面の一部に形成されたスプライン歯24が上記フランジ部18のスプライン歯20と噛み合うことにより、第1入力軸10に対して相対回転不能とされる。また、サンギヤSは、その側面が突起部22の側面に当接させられることにより、軸方向の突起部22側への移動が禁止されている。
サンギヤSにはピニオンギヤPが噛み合わせられており、また、ピニオンギヤPはリングギヤRとも噛み合わせられている。ピニオンギヤPの軸心には、ピニオンシャフト26が挿し通されており、ピニオンシャフト26は、ベアリング27を介してピニオンギヤPを自転可能に支持している。また、ピニオンシャフト26は、キャリヤCAに支持されている。これらサンギヤS、キャリヤCA、ピニオンギヤP、リングギヤR等により遊星歯車装置28が構成される。
キャリヤCAは、ハブ部30と、ハブ部30の一方の端に連結されて径方向外側に向かう連結部32と、連結部32の外周端に連結されて、軸方向のハブ部30とは反対側に延び、ピニオンギヤPを支持する円筒状の支持部34とからなる。ハブ部30は、第2入力軸12の外周側に設けられ、第2入力軸12と同軸上でその第2入力軸12に対して相対回転回転とされた第1中間軸36にスプライン嵌合されている。前記ピニオンシャフト26は、支持部34を軸方向に貫通する軸方向穴38に挿入され、且つ、その両端が支持部34に支持されているので、ピニオンギヤPは、キャリヤCAと一体回転させられる。
キャリヤCAの支持部34のハブ部30側とは反対側の端部には、支持部34の外周面と前記軸方向穴38とを連通する第1径方向穴40と、その第1径方向穴40と同軸上において支持部34の内周面と前記軸方向穴38とを連通する第2径方向穴42とが形成されている。
また、ピニオンシャフト26には、ピニオンシャフト26を径方向に貫通し、ピニオンシャフト26がキャリヤCAに支持された状態で上記第1径方向穴40および第2径方向穴42と連通する貫通穴44が形成されている。そして、第1径方向穴40に挿入されたピニオンシャフト固定ピン46の先端がその貫通穴44に嵌め入れられることにより、ピニオンシャフト26はキャリヤCAに固定されている。さらに、ピニオンシャフト26には、そのピニオンシャフト26の軸心を通り、一方の端が上記貫通穴44と連通させられている軸心穴48が設けられている。
キャリヤCAは、本実施例において第1部材として機能するものであり、キャリヤCAの支持部34の上記第1径方向穴40および第2径方向穴42が形成されている側の端部の内周面には、ブッシュ(滑り軸受)50が圧入により嵌合されている。また、支持部34のブッシュ50が圧入されている側の端部の外周面には、摩擦係合装置であるブレーキのハブ52がスプライン嵌合されている。
上記ブッシュ50の内周には、さらにスリーブ54が嵌め入れられており、第1部材であるキャリヤCAは、スリーブ54およびブッシュ50を介して、非回転部材であるケース56に相対回転可能に支持されている。従って、本実施例では、ケース56が第2部材として機能する。なお、上記ブッシュ50およびスリーブ54は鉄製である一方、キャリヤCAはアルミ製であり、ダイカストによって製造される。
上記スリーブ54およびブッシュ50には、周方向の複数箇所に、それらを径方向に貫通する貫通穴54aおよび50aが形成されており、それら貫通穴54aおよび50aが互いに連通するように、スリーブ54およびブッシュ50は組み付けられている。また、キャリヤCAの支持部34の内周面には、上記ブッシュ50の貫通穴50aと対向する位置に、環状溝58が形成されている。また、図示しないが上記ケース56には、スリーブ54の貫通穴54aに向けて開口する油路が形成されており、その油路から供給される潤滑油は、スリーブ54の貫通穴54a、ブッシュ50の貫通穴50aを通ってキャリヤCAの支持部34の環状溝58に供給され、そこからさらに、第2径方向穴42、ピニオンシャフト26の貫通穴44を経て軸心穴48に供給される。そして、軸心穴48に導かれた潤滑油は、図示しない径方向の穴を通ってベアリング27等の潤滑に供される。なお、環状溝58が形成されているために、ブッシュ50に形成された貫通穴50aの周方向の位置に関係なく、その貫通穴50aからキャリヤCAの支持部34への潤滑油の供給がスムーズに行われる。なお、環状溝58は、ブッシュ50を圧入するために支持部34の内周面を切削加工する際に同時に形成するようになっている。
キャリヤCAの支持部34には、さらに、内周面から径方向内側へ突き出し、上記ブッシュ50のサンギヤS側の端面に隣接する突起部60が形成されている。従って、使用中の温度上昇により、ブッシュ50の圧入荷重が低下してしまい、それによりブッシュ50が軸方向に移動可能となった場合にも、突起部60に当たることにより、ブッシュ50のサンギヤS方向への移動は制限される。なお、前述のようにキャリヤCAは、ダイカストによって製造され、上記突起部60は、その製造時に形成されるようになっているため、突起部60が形成されることに伴うコストアップはない。
一方、ブッシュ50に対して突起部60とは反対側となる支持部34の一方の側面の内周縁には、径方向内側へ突き出すかしめ部62が形成されている。すなわち、ブッシュ50とキャリヤCAとはかしめ部62においてかしめられている。従って、温度上昇によりブッシュ50の圧入荷重が低下しても、ブッシュ50が当初の圧入位置からかしめ部62方向に移動すること、すなわち、ブッシュ50がかしめ部62方向に抜け出ることが防止されるとともに、ブッシュ50がキャリヤCAに対して回転してしまうことも防止される。
図2は、ブッシュ50が圧入された状態におけるキャリヤCAを、図1の右側から見た側面図である。図2に示されるように、本実施例では、前記突起部60およびかしめ部62は、いずれも、周方向に等間隔に4つ形成されている。
図1に戻って、突起部60の内周側には、サンギヤSの側面およびケース56に当接させられた第1スラストベアリング64が配置されている。本実施例ではこの第1スラストベアリング64が第1軸受として機能する。
リングギヤRのドラム部56の外周面には、ピン66によりブレーキハブ68が固定されている。ブレーキハブ68はフランジ部68aを備えており、フランジ部68aの内周端の両側面には、第2スラストベアリング70および第3スラストベアリング72が配置されている。これら第2スラストベアリング70および第3スラストベアリング72は、いずれも、本実施例においては第2軸受であり、自動変速機の軸心Cから第2スラストベアリング70の外周面までの長さ(すなわち外径の1/2)および自動変速機Cから第3スラストベアリング72の外周面までの長さは、いずれも、自動変速機の軸心Cから前記突起部60の内周端までの長さよりも長くなっている。
図3は、前記ブッシュ50をキャリヤCAに圧入するための圧入機80の上側部分の構成を示す概略図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。なお、図3では、キャリヤCAおよびブッシュ50は簡略化して示されている。
圧入機80は、上側ラム82および図示しない下側ラムを備えており、上側ラム82の下面に、圧入パンチ84およびかしめパンチ86が図示しないボルト等により固定される。一方、図示しない下側ラムに、キャリヤCAが載置される。
圧入パンチ84は円柱形であり、その外径が、ブッシュ50の外径と略等しいか、それよりも僅かに小さい程度となっている。かしめパンチ86も円柱形であり、圧入パンチ84の側面に接し、且つ、圧入パンチ84と平行に設けられている。そのかしめパンチ86の先端には、キャリヤCAにかしめ部62を形成するための刃88が固定されている。この刃88は、図3(b)に示すように、圧入パンチ84の側面に接するように、且つ、刃先が圧入パンチ84の下面よりも僅かに上側となるように設けられている。
このように構成された圧入機80において、上側ラム82が下降していくと、まず、圧入パンチ82がブッシュ50の端面を押圧するので、ブッシュ50がキャリヤCAに圧入されていく。そして、ブッシュ50の端面がキャリヤCAの側面よりも下側まで下がった状態となると、かしめパンチ86の先端に取り付けられた刃88が円筒状のキャリヤCAの側面の内周縁部分に当たって、かしめ部62が形成される。このように、図3の圧入機80を用いることにより、ブッシュ50をキャリヤCAに圧入する工程において、同時にかしめ部62を形成することができる。
以上、説明したように、上述の実施例によれば、突起部60によってブッシュ50の軸方向一方の動きが制限されることから、ブッシュ50が軸方向の突起部60側へ抜け出てしまうことが防止される。また、かしめ部62によって、ブッシュ50は軸方向の他方への動きも禁止される。従って、ブッシュ50は、軸方向のいずれの側へも抜け出ることが防止される。
また、上述の実施例によれば、第1スラストベアリング64が配置される部位に誤って第2スラストベアリング70または第3スラストベアリング72を組み付けようとしても、それら第2、3スラストベアリング70、72は突起部60に引っ掛かって組み付けることができない。従って、誤組み付けが防止されるので、より確実な品質保証につながり、また、後工程において誤組み付けが発見されて組み付け直すこともなくなるので、製造コスト削減を図ることもできる。
また、上述の実施例によれば、ブッシュ50がキャリヤCAに圧入される工程において、かしめ部62が同時に形成されるので、製造工程数が減少し、製造コストの低減を図ることができる。
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施例では、突起部60およびかしめ部62は、それぞれ、周方向に4つ形成されていたが、突起部60およびかしめ部62の数は前述の実施例のものに限定されず、たとえば、それぞれ1つずつであってもよく、また、突起部60とかしめ部62の数が同数でなくてもよい。
また、前述の実施例では、動力伝達装置として自動変速機の例を説明したが、本発明は、遊星歯車装置を備えた前進後進切り替え装置にも適用することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明が適用された自動変速機の一部を示す断面図である。 ブッシュが圧入された状態におけるキャリヤを、図1の右側から見た側面図である。 ブッシュをキャリヤに圧入するための圧入機の上側部分の構成を示す概略図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
符号の説明
50:ブッシュ(滑り軸受)
56:ケース(第2部材)
60:突起部
62:かしめ部
64:第1スラストベアリング(第1軸受)
70:第2スラストベアリング(第2軸受)
72:第3スラストベアリング(第2軸受)
80:圧入機
84:圧入パンチ
86:かしめパンチ
CA:キャリヤ(第1部材)

Claims (2)

  1. 円筒状のハブ部と該ハブ部の一端から径方向外側に向かう連結部と該連結部の外周端に連結されて該連結部との間にピニオンシャフトを介してピニオンギヤを回転可能に支持する支持部とを有し、軸心まわりに回転可能に設けられたキャリヤと、
    前記軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ピニオンギヤと噛み合う状態で該ピニオンギヤよりも内周側に設けられたサンギヤと、
    前記軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ピニオンギヤと噛み合う状態で該ピニオンギヤよりも外周側に設けられたリングギヤと、
    前記支持部の内周面に圧入により嵌合された円筒状の滑り軸受を介して該支持部を回転可能に支持する位置固定のケースとを備えた、車両用動力伝達装置の遊星歯車装置であって、
    前記支持部の内周面から内周側へ、前記滑り軸受の一方の端面に対して軸心方向に隣接するように突き出された突起部と、
    前記突起部の内径側に径方向に隣接した状態で前記ケースと前記サンギヤとの間に設けられた第1スラストベアリングと、
    前記リングギヤの前記ケースとは反対側の端部から前記ハブ部に向かって設けられたフランジ部の両側面に配置された第2スラストベアリングおよび第3スラストベアリングとを、含み、
    前記軸心から前記突起部の内周端までの長さが、該軸心から前記第1スラストベアリングの外周までの長さよりも長く、且つ、該軸心から前記第2スラストベアリングおよび第3スラストベアリングの外周までの長さよりも短くされている
    ことを特徴とする車両用動力伝達装置の遊星歯車装置
  2. 前記支持部に、前記滑り軸受の前記突起部が設けられている側とは反対側の端面に隣接するように突き出すかしめ部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の車両用動力伝達装置の遊星歯車装置
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