JP4597665B2 - サンプル中の1種または2種以上のタンパク質を特異的に同定および定量化するための方法および試薬 - Google Patents

サンプル中の1種または2種以上のタンパク質を特異的に同定および定量化するための方法および試薬 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の方法および前記方法を実行するのに適した試薬に関し、該方法には、プロテオームについての、再現可能な、体系的な、定性的なおよび定量的な特徴付けが含まれ、この特徴付けは非同位体金属コード化マーカーおよび、特に、最新のタンデム型質量分析法によって行われる。
【背景技術】
【0002】
20世紀の最も重要な発見の1つは、すべての遺伝情報の媒体であるDNAの発見およびその特徴と三次元構造の解明であった。生物体の最初の完全DNA配列は1977年にFred Sangerによって公開された。それ以後、ゲノム研究は新しい技術と自動化されたハイスループット法の開発によって急激な進歩を経験し、これにより今日では、微生物の完全ゲノム配列の決定はルーチンな作業になっている。
【0003】
現在では、生化学は新たな非常に大きな難問に直面している:膨大な電子ライブラリに保存されている莫大な量のゲノムデータを機能的に関連づけ、これにより遺伝コードを有用な情報に翻訳可能にしなければならない。ゲノム分析の助けによってだけでは、生物学的プロセスの複雑さを理解することはできないという認識から、現代の分子細胞生物学の科学的別部門、すなわちプロテオーム研究が導入された。これは、遺伝子産物、すなわち遺伝子によってコードされるタンパク質が実際の生物学的エフェクター分子であるからであり、これは生物学的活性を妨害し、動的プロセスを制御し、かつ多面的機能を果たす。それらにより初めて、ヒトゲノムおよび細胞プロセスがいかに機能するか、ならびに疾患がいかに生じるかを理解する展望が開かれる。
【0004】
科学的部門としてのプロテオーム研究(「プロテオミクス」)では、細胞または組織内で発現されるすべてのタンパク質の体系的同定、およびその本質的特徴、例えば量、修飾の程度、マルチタンパク質複合体(multiprotein complex)への組み込み等、の特徴付けを取り扱う。タンパク質データベースまたは細胞マップが作成され、それはタンパク質配列の記録保管に役立つ。現在、何千もの配列と、多くの場合にはその研究された機能情報も入手可能である。
【0005】
しかしながら、現在では、適用されているタンパク質分析技術はいずれも、遺伝子工学のハイスループットおよび自動化の水準に達していない。さらに、プロテオーム研究において、例えばPCRに類似したタンパク質増幅技術が実現可能である見込みは全くない。より適当と思われるのは、むしろタンパク質の濃縮(enrichment)の可能性であり、目的のタンパク質を特定の性質にしたがって抽出または濃縮するものである。例えば、溶解度または、特定リガンドとの結合能のような物理的特徴を利用できる。
【0006】
従来のタンパク質化学に比較すると、高速かつ並行的な方法であるプロテオーム分析の使用は、生物学的基礎研究、生物工学および医学研究においてますます一般的になっている。数年のうちにこの種の分析学が正規に確立されることが予測される。プロテオーム分析の実際の有効性は、分析方法の、いわゆる「低コピー(low copy)」タンパク質を検出および定量する能力に大きく依存し、その理由は特に、このようなタンパク質が細胞プロセスにおいて欠くことのできない役割を果たすことがよくあるからである。
【0007】
従来最も利用され、そして最も信頼のおけるプロテオーム分析の方法は、二次元ゲル電気泳動法(2DGE)であり、この後、分離されたタンパク質種の配列が同定される。このアプローチは質量分析(mass spectrometry)およびバイオインフォマティクスが大きく進歩したために科学的に重要となった。このMS技術は、ごく最近利用可能になり非常に高感度であるが、フェムトモルの範囲の最少量のタンパク質およびペプチドでさえ検出することを可能にし、‐これらは通常の染色技術によって可視化され‐、さらにそれらをタンデム型技術によって同定することを可能にした。これらの技術は特に、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(matrix assisted laser desorption/ionisation)(MALDI)飛行時間(time-of-flight)(TOF)-MSおよびエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionisation)(ESI)-MSである。タンデム型-MS機器、例えばトリプル四極子装置、イオントラップ、およびハイブリッド四極子飛行時間(quadrupole time-of-flight)(Q-TOF)装置は、LC-MS/MS-またはナノスプレー実験においてエレクトロスプレーイオン化(ESI)と共に、ペプチド断片イオンスペクトルを生成するためにルーチンに使用されていおり、データベース配列検索によってタンパク質を同定するのに適している。
【0008】
タンパク質またはゲノムのデータベース検索は等しく重要なツールを構成し、これはプロテオーム研究の進歩に大きく貢献してきた。開発されたコンピュータ検索アルゴリズムは、今日、非常に洗練されたものになっている。Goodlettらは、ペプチドの正確な質量が、例えばこのペプチドが由来するタンパク質の分子量などを制限すること、およびこのタンパク質を分解するための特定のタンパク質分解酵素を示すこと等の検索基準と組み合わせて、データベース検索においてタンパク質を明確に同定するのに十分であり得ることを示すことができた。しかしながら、高い作業コストおよび、しばしば観察される、別の実験室間での2DGE技術の再現性欠如によって、この方法を自動化することはほぼ不可能である。今日、プロテオーム研究の分野では、ゲノム技術に匹敵する水準に達している分析技術は存在しない。上記方法を用いてタンパク質混合物の成分を分析可能であるが、これらは混合物中のタンパク質の正確な量ならびに活性状態を決定するのに適していない。前もって濃縮工程を伴わない場合、非常に少量でしか存在しないタンパク質、例えば調節タンパク質を検出することは実質的に不可能である。この理由および2DGEの別の既知の欠点のせいで、代替の方法に関する研究がますます重点的に行われ、この研究は、分離法である2DGEへの依存から大きく脱却することを目的としている。
【0009】
ゲルを使用しないシステムは、プロテオーム研究者の興味を増大させている。ゲルを使用しない多様なシステムが想像可能であり、これらはすべて、2つまたはそれ以上の異なるクロマトグラフ分離法の組み合わせに基づく。タンパク質のクロマトグラフ分離は、すべてのタンパク質研究において必須の構成要素であり、したがってプロテオーム研究において明らかである方法も構成している。長年にわたる開発および最適化により、クロマトグラフ分離は高い再現性を提供する。しかしながら、2つの異なるクロマトグラフ法を組み合わせてもプロテオーム研究に必要な分解能は可能とならず、その理由は、複合タンパク質混合物はその特徴のせいで個々の精製タンパク質画分にまで分離されることはほとんどないからである。クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせれば、別次元の分離である質量分析を提供することになるが、-タンパク質に適用する場合-非常に制限された使用利点しか有さない。以下に説明するように、このアプローチを用いたとしても、ペプチドが分析可能でなければ成功する見込みはない。
【0010】
WO 00/11208(特許文献1)は、プロテオーム分析用の興味深い代替法を開示しており、この方法は、複合生物学的サンプル、例えば細胞および組織中のタンパク質発現の定量分析、複合タンパク質混合物中の特定タンパク質の検出および定量化およびまた、特定の酵素活性の定量測定に特に適している。この方法は新規クラスの化学試薬、コード化親和性タグ(coded affinity tag)(CAT)、この場合ではいわゆる同位体コード化親和性タグ(isotope coded affinity tag)(ICAT)および質量分析法を利用する。
【0011】
ICAT試薬は親和性タグからなり、このタグは対応する対試薬(counter-reagent)に非共有結合様式で選択的に結合し、これによりカラムクロマトグラフィーを用いて親和性タグ標識ペプチドまたは基質を残りの混合物から分離することができる。親和性タグはリンカーを介して反応基と連結され、場合によりこれに同位体標識が保持されてもよく、この反応基は特定のタンパク質官能基と選択的に反応する。
【0012】
このように、細胞から単離されたタンパク質は、特定の結合部位でICAT試薬によって標識される。ここで、試薬は、例えばスルフヒドリル基に対して特異的反応性を示す官能基を有し、これによりシステインを含有するタンパク質と排他的に結合するものであってよい。酵素による加水分解後に得られるペプチド混合物から、システイン含有ペプチドのみが選択的様式で結果的には単離される。これにより、得られるペプチド混合物の複雑さを大きく減少させることができ、その理由は、例えば全体酵母プロテオームからトリプシン分解によって遊離されたすべてのペプチドのうち、システイン含有残基を含有するのは10分の1未満であるからである。さらに別の重要な利点は、このアプローチによって、微量しか存在しないタンパク質を濃縮できることである。系の複雑さが著しく減少しても、タンパク質の定量化および同定は保証される。
【0013】
現在、1またはそれ以上のタンパク質サンプル中のタンパク質の相対量を定量的に検出するために、種々の様式で同位体コード化されたICAT試薬が使用されている。各サンプルは特定のICAT試薬で処理され、この試薬は異なる同位体標識を保持するが、その他の点では化学的に同一である。このサンプルは、例えば種々の発生段階のある種の細胞培養由来であってよく、それは次に統合され、そして酵素によって加水分解される。標識ペプチドは混合物からアフィニティークロマトグラフィーによって分離し、次いでHPLCによって分画する。同一ペプチドであるが、異なるサンプル由来のペプチド対はHPLCカラムから同時に溶出する。しかしながら、質量スペクトルでは、これらのペプチドは同一の質量/電荷比を示すのではなく、異なる同位体で標識されたタグの特徴的質量差分だけ異なる。質量スペクトル中のこのような(CAT標識)ペプチド対の相対的イオン強度の比は、起源の細胞または組織中の元のタンパク質の相対量の比を量的に反映する。次いでICAT標識ペプチドのペプチド配列がタンデム型質量分析計(MS/MS)を用いる断片化によって決定される。そしてこのタンパク質同定は、記録された配列情報に基づきコンピュータ支援ゲノムまたはタンパク質データベースの検索によって達成される。
【0014】
ICAT法の多大なる利点にもかかわらず、実行性には依然として困難になるいくつかの欠点があり、ハイスループット分析の分野での使用が妨げられている。この方法では同位体を使用する必要があるが、これにより化合物の合成費用が著しく高くなり、そして購入しやすい価格での入手の可能性は限られたものであり、したがって該方法の融通性はさらに制限される。
【特許文献1】
WO 00/11208
【発明の開示】
【0015】
したがって、本発明の目的は、改善されたCATに基づく方法を提供し、ハイスループット条件下でCATを使用することを可能とすることである。さらに別の目的は、本方法に特に適したCAT試薬を提供することである。
【0016】
本発明の第一の側面では、本発明の目的は、タンパク質混合物含有サンプル中の1種またはそれ以上のタンパク質を同定および定量化するための方法によって達成される。本発明による方法は:a)タンパク質の混合物を含有するサンプルを提供し;b)ペプチドを分析するための試薬を提供し、ここで試薬は一般式
A-Y-PRG
を有し、式中、Aは、支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための少なくとも1つの官能基を構成し、ここで前記官能基は、前記支持体材料と選択的に結合するための少なくとも1つの親和性機能を含み、式中、Yは、非同位体金属少なくとも1つキレートする機能(function)を有する基であり、そして式中、PRGは、分析対象のペプチドまたは他の生体分子と選択的に結合するための反応基である、c)ペプチドを生産するためにサンプル中のタンパク質を分解し;d)ペプチドを工程b)の試薬と連結させ;
e)支持体材料との可逆的結合または親和性標識化を利用して、支持体材料との結合および未結合ペプチドの除去により、工程d)の標識ペプチドを選択し;f)結合したペプチドを支持体材料から遊離させ、マトリクスから溶出させ;およびg)質量分析によって標識ペプチドを検出し、同定する工程を含む。
【0017】
本発明による方法は、一回の解析中に、1つ、2つまたはそれ以上の細胞、組織または体液サンプルのプロテオームについての異なる研究に役立つ。さらに、タンパク質を含有する他のサンプル、例えば細胞小器官または他の細胞区画のタンパク質画分を解析してもよい。該方法は、上述のICAT法(同位体コード化親和性タグ)に対する新規代替法であり、ICATのいくつかの欠点を回避する。この方法はプロテオーム研究に関する新規の代替的および補完的技術を構成する。本発明の方法は、以下「MeCAT」(金属キレート錯体コード化親和性タグ、Metal-chelate-complex-coded affinity-tag)と称される。
【0018】
MeCAT法では、ペプチド/タンパク質サンプルをMeCAT試薬と反応させるが、該試薬は以下の本質的特徴を有する:
− タンパク質/ペプチドまたは他の生体分子と連結するための反応基、これは以下「PRG」とも称する;
− 金属、特に低同位体性である金属(metals being low in isotopes)を(可能な限り最も安定に)キレートするための少なくとも1つのキレート形成錯体、以下「Y」とも称する;および
− 支持体材料、固相または他の化合物(例えばSH基)と連結するための少なくとも1つの親和性機能(例えばビオチン)または別の反応基(群)、以下「A」とも称する。
【0019】
比較されるサンプルは、種々の同位体を用いて標識する代わりに、MeCAT試薬と反応させるが、該試薬はキレート結合金属イオンが異なる。次いで、例えば標識生体分子を例えばビオチン-ストレプトアビジンを介してアフィニティー精製するか、または支持体材料との特異的化学反応を用いて「釣り上げ(fishing)」をしてから遊離に付する。
【0020】
次の段階では、標識された生体分子を多次元クロマトグラフィーによって分離し、その後、質量分析によるタンパク質/ペプチド量の相対的定量化を用いてオンラインまたはオフラインの差異解析に付する。個々のサンプルの対応するペプチドは、-使用する金属に応じて-異なる重量の標識を保持し、したがって定量的に個々のサンプルに帰属させることができ、この帰属をMSによる生体分子(ペプチド)の配列分析(同定)と組み合わせる。
【0021】
本発明による方法では、酵素的または化学的方法によって分解を行うのが好ましい。分解は既知のタンパク質分解酵素を用いる加水分解によって適切に行うことができ、例えばトリプシン、ASP-N-プロテアーゼ、ペプシン、Lys-C、Glu-C、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール(scatoles)、カスパーゼ、キモトリプシン、クロストリパイン(clostripain)、因子Xa、グルタミル-エンドペプチダーゼ、グランザイムB、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌ペプチダーゼA、サーモリシン、トロンビン、カルボキシペプチダーゼおよびそれらの組み合わせである。化学的分解は、部分的酸加水分解、CNBr、ギ酸、ヨードソ安息香酸、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ヒドロキシルアミン、およびそれらの組み合わせによって行うことができる。
【0022】
本発明による方法では、標識ペプチドは、支持体材料から遊離した後、かつ質量分析による分析前に、クロマトグラフィー、特にHPLCによって相互に分離するのがより好ましい。クロマトグラフ技術は、各場合ごとに、所望の分解能にしたがって選択する。
【0023】
本発明による方法は、いくつかのタンパク質および/またはペプチド含有サンプルを一緒に分析することを特徴とすることが特に好ましい。これは、例えば別の細胞材料由来の別のサンプルに異なる標識を付することによって達成できる。
【0024】
本発明による方法では、標識ペプチドを後で配列決定に付するのが特に好ましい。標識ペプチドの配列情報を用いれば、データベース検索を行って元のタンパク質についての手がかりを得ることができる。
【0025】
さらに別の側面では、本発明は、タンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現を検出するための方法であって、前記方法は:a)タンパク質を含有する生物学的サンプルを提供し;b)ペプチドを解析するための試薬を提供し、ここで該試薬は一般式
A-Y-PRG
を有し、式中、Aは、支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための少なくとも1つの官能基を構成し、式中、Yは、金属に対する少なくとも1つのキレート機能を含む基であり、そして式中、PRGは、分析されるペプチドまたは他の生体分子と選択的に結合するための反応基である;c)ペプチドを生産するためにサンプル中のタンパク質を分解し;d)ペプチドを工程b)の試薬と連結させ;e)支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための少なくとも1つの官能基を利用し、ならびに未結合ペプチドを除去して、工程d)の標識ペプチドを選択し;f)親和性結合したペプチドを支持体材料から遊離させ、マトリクスから溶出させ;およびg)質量分析によって標識ペプチドを検出し、同定し;およびh)親和性標識ペプチドが由来するタンパク質の相対的発現を決定するために、異なる標識を付したペプチドの相対的存在をイオンの別ピークとして測定する工程を含む方法を提供する。解析された発現パターンに基づき、種々の細胞状態についての結論を導くことができ、あるいはタンパク質含有サンプルから推論される診断パラメータを得ることができ、これらの結果により、従来達成できなかった解決が得られる。
【0026】
本発明に基づくさらに別の方法では、基A、YおよびPRGの配置は相互に交換してよい。MeCATの実行性のためのすべての機能的必要条件が依然満たされる限り、実際には、本発明による試薬はその成分が種々の様式で配置された状態で存在してよい。
【0027】
好ましくは、本発明による方法の標識ペプチドは、タンデム型技術、例えばマトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)飛行時間(TOF)-TOF-MSおよびエレクトロスプレーイオン化(ESI)-MSによって検出する。この目的のため、解析において内部標準を使用してよく、これはサンプルに添加可能である。
【0028】
本発明はMeCAT法ならびに新規MeCAT化合物の合成を含む。したがって、本発明のさらに別の側面により提供されるものは、ペプチドを質量分析によって分析するための試薬であって、一般式:
A-Y-PRG
を有し、式中、Aは、支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための少なくとも1つの官能基を構成し、式中Yは、低同位体性である金属に対する少なくとも1つのキレート機能を含む基であり、そして式中PRGは、分析されるペプチドまたは他の生体分子を選択的に結合するための反応基である試薬である。
【0029】
本発明による別の試薬では、基A、YおよびPRGの配置は相互に交換してよい。MeCATの実行性のためのすべての機能的必要条件が依然満たされる限り、実際には、本発明による試薬はその成分が種々の様式で配置された状態で存在してよい。
【0030】
好ましくは、官能基PRGは、スルフヒドリル反応基、アミン反応基および酵素基質から選択される。さらに好ましくは、PRGは、アミン反応性ペンタフルオロフェニルエステル基、アミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホニルハライド、イソシアネート、イソチオシアネート、活性エステル(active ester)、テトラフルオロフェニルエステル、酸ハライドおよび酸無水物、ホモセリンラクトン反応性一級アミン基およびカルボン酸反応性アミン、アルコールまたは2,3,5,6-テトラフルオロフェニルトリフルオロ-アセテート、ヨードアセチルアミド(iodine acetylamide)基、エポキシド、α-ハロアシル基、ニトリル、スルホン化アルキル、アリールチオールおよびマレイミドの群から選択される。
【0031】
特に好ましくは、本発明による試薬では、Aはビオチンまたは修飾ビオチン、1,2-ジオール、グルタチオン、マルトース、ニトリロ三酢酸基、オリゴヒスチジンまたはハプテンから選択される。ビオチンである場合、該試薬は例えばストレプトアビジン基と連結して容易に単離することができる。これ関連して、ストレプトアビジン標識カラムマトリクスまたは被覆ビーズを用いるのが特に好ましい。
【0032】
さらに別の態様では、Aは支持体材料と連結された反応基であり、この反応基は支持体材料から再度分解により遊離することが可能である。これに関して可能な選択肢には、特に、再度還元して分解させることができるところのジスルフィド結合(S-S)、または光に曝露することによって分解可能であるところの感光性結合がある。
【0033】
本発明による発明の試薬のさらに別の態様では、この試薬は、基A、Yおよび/またはPRG間に化学的および/または酵素的に分解可能なリンカーを含む。通常、このリンカーはCH2基からなることが可能であり、これは基A、Yおよび/またはPRG間に位置して、これらの基を連結する。1つまたは2つ以上のCH2基は置換可能であり、この場合、置換基の性質は基A、YおよびPRGの機能が影響を受けない限り関連性はない。しかしながら、有利には、リンカーを介してさらに機能を導入でき、例えば上記化学的および/または酵素的分解性である。可能である置換基は、アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基、アリール基であって、1つまたは2つ以上のアルキル、アルケニル、およびアルコキシ基で置換されていてもよいもの、酸性基および塩基性基である。さらに、リンカー内には二重および三重結合が存在してよく、またヘテロ原子、例えばO、SおよびNが挿入されていてよく、これは例えばジスルフィド基を含有するリンカーの型で挿入されてもよい。
【0034】
本発明による試薬の本質的機能はそのキレート形成機能である。本発明による好ましい試薬では、Yは、マクロ環ランタノイドキレート錯体、官能化テトラアザ-マクロ環、ポリアザ-ポリ酢酸、DOTA、DOTA誘導体、NOTA、NOTA誘導体、EDTA、DTPA-BP、DTPA、DO3A、HP-DO3AおよびDTPA-BMAから選択される。特に好ましい化合物は、1,4,7,10,13,16,19,22-オクタアザシクロテトラコサン-1,4,7,10,13,16,19,22-八酢酸(OTEC)、および1,4,7,10,14-17,20,23-オクタアザシクロヘキサコサン-1,4,7,10,14,17,20,23-八酢酸(OHEC)である。
【0035】
本発明による試薬のキレート形成機能によって結合可能な金属は、多様な金属から選択でき、これにより本発明による試薬を使用する場合、融通性が大きく改善される。したがって、キレート錯体が結合する金属は、Ag、Al、As、Au、Be、Cd、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hg、Ho、In、La、Li、Lu、Mn、Na、Nd、Ni、Pb、Pr、Rb、Rd、Sb、Sm、Sn、Tb、Tl、Tm、V、W、Y、YbおよびZnから選択できる。本発明では、キレート形成基はいくつかの異なる金属で標識できる。
【0036】
本発明のさらに別の側面は、生物学的サンプル中のペプチドの検出、および/またはタンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現の測定のための、本発明による試薬の使用に関する。これに関連して、生物学的サンプルは、採取されたままのサンプルまたはあらかじめ分画されたサンプルであり得、これは1つ、2つまたはそれ以上の細胞、組織または体液サンプルのプロテオームについてその差異を研究するためのものである。しかしながら、研究対象は他のタンパク質含有サンプルでもあり得、例えば細胞小器官または他の細胞区画由来のタンパク質画分である。この方法は、好ましくは、動物、特にヒトの疾患を診断またはモニターする過程に適用し、動物から採取されたタンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現を検出することによって行う。タンパク質発現の差異を分析および解明することによって、細胞レベルで疾患に関与するタンパク質についての結論を導くことができ、このタンパク質は治療物質の標的として役立つ可能性があり、あるいは治療の診断およびモニタリングに有用であり得る。
【0037】
本発明のさらに別の側面は、診断用分析セット(キット)に関し、本発明による少なくとも1つの試薬を、生物学的サンプル中のペプチドの検出、および/またはタンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現の測定に適した別の物質ならびに/あるいは酵素とともに含有し;特に内部標準を含有するセットに関する。このキットを用いて、例えばプロテオーム標識化を実行でき、その後、この標識化の生成物を質量分析によって分析するために中央分析研究室に送ることができる。
【0038】
本発明による方法のさらに別の変型では、放射性金属イオンの使用を考慮してよく、これは例えばシンチレーション計数によって非常に高感度の検出を提供することができる。放射化学の分野の専門家は各イオンに非常に精通しており、これらのイオンは任意の一般的な化学の教科書、例えばRoempp-Lexikon Chemie, 10th edition, Thieme Verlag, Stuttgartから得られてもよい。
【0039】
化学者の視点から考えれば、ICAT法は、高速かつ定量的なタンパク質分析またはタンパク質機能の分析についての全可能性を使い果たすにはほど遠い。本明細書中に記載の試薬のクラスについての基礎となる発想は、以下3つの異なる機能を1分子中でうまく組み合わせることである;i)タンパク質と特異的に結合する能力、ii)酵素的または化学的加水分解後に標識ペプチドを非標識ペプチドから容易に分離する能力、およびiii)種々のサンプル由来(例えば、ある種の様々な発生段階の細胞由来)のペプチド対を質量スペクトル中の対応するペプチドの質量差によって相対的に定量化する能力。
【0040】
最初の二つの機能は、通常の分析用分離法の多くで使用されている。第三の機能は、最新のコンピュータ支援データベース検索プログラムと組み合わせた最新のMS技術と関連しており、これによれば、単一ペプチドまたは少数のペプチド(例えばシステイン含有ペプチド)のアミノ酸配列に基づいてタンパク質を同定することが可能となる。
【0041】
この方法の利点は明らかである:各々の入手可能な量の出発物質を処理できることである。最少量でしか存在しないタンパク質もまた検出可能であり、定量可能であり、というのもこれはシステイン特異的選択によってそれらが濃縮(enrich)されるためである。この分析で、MeCAT試薬中、他のアミノ酸特異的または基質特異的官能基を用いることにより、更なるタンパク質を確実に測定できる。ペプチド混合物の複雑さをこのように減少させれば、作業の支出を大きく減少させ、かつデータベース検索プログラムによって非常に高速に首尾良くタンパク質を同定することが可能となる。
【0042】
同位体標識の代わりに、本発明では、試薬内に金属キレート錯体を組み込むことを代替法として提供する。これらの試薬の設計方法について、その概念図を図1および2に示す。
【0043】
同位体標識リンカーの合成は非常に高価であり、そして常に可能なわけではなく、その理由は、一般に知られているように、例えば2H、13Cまたは15Nのような安定した同位体試薬が非常に限られた数しか存在しないからである。これは例えば、タンパク質生産の動的変化を定量的および定性的に検出する場合に関して、種々の条件に晒されていた細胞培養のうち、非常に限られた数の細胞培養由来のサンプルしか研究し比較できないことを意味する。文献には、1Hおよび2H標識ICATを用いる2つのサンプル間の比較に関する例が記載されている。
【0044】
金属イオンは、非常に多様に、より低価格で入手可能である。それは、適切なイオンを見出し、それらをアミノ酸特異的試薬内に適切にパッキングし、解離または交換反応によってそれらイオンが失われるのを防ぐことができればよい。
【0045】
錯体が全過程で完全に無傷のままであること、pHが非常に大きく変化した場合でもその安定性が保証されること、ならびに潜在的リガンドであるペプチドとの交換過程が生じ得ないこと、を満たすように、キレートリガンドの候補は、金属イオンを十分に安定化しなければならない。錯体の溶解性が試薬の他の成分、すなわちタンパク質反応性官能基およびクロマトグラフ分離用の分子部分の溶解性と大きく異なることは許容されない。分子全体は、好ましくは、サンプル溶液中で可溶性でなければならず、これはタグと特異的タンパク質結合部位との効率的な相互作用を確実にするためである。
【0046】
高速かつ明確にタンパク質を同定するため、タンパク質反応性試薬内に金属イオンを包含させることができ、この金属イオンは、通常、タンパク質中に見出せず、そして非常に特徴的な同位体パターンを有するものである。このような金属イオンは標識ペプチドの質量スペクトル中で非常に容易に検出できる。コンピュータアルゴリズムにより、実験で観察されたマスフラグメントの同位体パターンは自動的に比較可能であり、それは金属のイオンまたは質量に特異的な標識の有無にはかかわらない。これにより、使用する質量分析計の感度についての要求は大きくならない。対照的に、ペプチドと結合した錯体試薬は検出感度に好影響を与えるが、その理由は、錯体形成試薬はペプチドの質量分析において強力な汚染物質として既知であり、したがって通常は、最も低い濃度であっても、これら回避することが必要であるからである。2DLCまたは別の適切な方法によって分離されたすべてのペプチドの質量スペクトルを自動的にスクリーニングすれば、システイン残基を含まないペプチドを主に含有するペプチド混合物から、その同位体パターンによって、システイン含有ペプチドを非常に高速かつ明確に選択することが可能なはずである。これらの選択ペプチドについて正確に測定された質量のみを使用し、実験データをゲノムおよびタンパク質データベース由来のデータと相関させてタンパク質を同定する。CID-MSによってペプチドの配列を決定すれば、同定が可能となる。
【0047】
いくつかのタンパク質サンプル中のタンパク質の相対的な定量化および特徴付けのためには、リガンド部分は同一であるが金属イオンが異なるいくつかの金属キレート錯体が問題になり、この場合、これらの錯体はその熱力学的安定性および速度論的動態が類似しており、その結果錯体間での金属交換過程が排除可能でなければならない。マッチングしているペプチド対を質量スペクトル中で容易に検出するためには、金属イオンの相対的な原子量の相違が10ダルトンを越えないのが望ましい。さらに、帰属を不必要に複雑にするのを避けるためには、金属イオンは低同位体性であるのが望ましい。金属イオン特異的試薬には、タンパク質反応性官能基以外に、タンパク質加水分解後の標識ペプチドをカラムクロマトグラフィーによって分離するための分子成分が含まれていてよい。図1は、金属特異的標識試薬(MeCAT/MeCOD)を用いてタンパク質発現を定量するための好ましい戦略を模式的に説明している。
【0048】
マクロ環リガンドは、熱力学的安定性が高く、解離の速度論的動態が不活性であることを特徴とするため、金属イオンの効率的な結合のために、キレートとして特に適している。その位相幾何学的特徴により、マクロ環は多数の戦略的に分布されたドナー原子を提供しており、このリガンドの構造および寸法が適していれば、金属イオンと効率的な様式で相互作用可能である。すべての金属-リガンド-ドナー-結合が同時に分解する確率は非常に低いので、「統計的安定化(statistical stabilization)」が生じる。酵素のレセプター結合部位と同様に、単独の相互作用としては弱くても、多数が配位結合の相互作用があれば、金属イオンの結合を導き、分子構築が適切であれば、安定であるばかりか、選択的でもある。この結果、リガンド鎖が開いているリガンドとは対照的に、生物学的に関連のある金属イオンとの交換が効果的に阻止される(表1参照)。
【0049】
本発明は、方法および前記方法を実行するのに適した試薬に関し、この方法には、再現可能で、体系的、定性的および定量的なプロテオームについての特徴付けが含まれ、これは非同位体金属コード化マーカーおよび特に、最新のタンデム型質量分析法によって行う。
【0050】
金属コードは、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)に基づくマクロ環ランタノイドキレート錯体またはNOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)に基づく遷移金属錯体であり、これはアミノ酸特異的官能基および、標識ペプチドをクロマトグラフ分離するための別の分子成分を備えている必要がある。合成されるマーカーは良好な水溶性および高い速度論的安定性を示さなければならない。種々のランタノイドイオンを持つ化合物はその化学的反応性および物理的性質に関して、大きく異なってはならない。金属コード化マーカーはその構造、水溶液中の熱力学的性質およびペプチドに対する反応性動態に関して特徴付けられる。プロテオーム分析における再現可能な適用に関しては、モデル実験および現実のサンプルにおいて、多次元クロマトグラフィー、MS/MSおよびデータベース分析と組み合わせて試験する必要がある。
【0051】
金属コード化マーカーは、細胞可溶化液のタンパク質と「部位特異的」様式で共有結合する。このタンパク質をタンパク質分解した後、金属標識ペプチドをクロマトグラフィーによって単離し、そしてさらに分画するが、これは次に質量分析によって定量化し、そして第二段階で配列決定するためである。首尾良く決定された状態を直接定量比較することによって、タンパク質組成の差異を特徴付け、この差異は次いで生物学的効果と相関させる必要がある。
【0052】
データベース検索と組み合わせて、単一またはほんの少数のペプチドによって目的の元のタンパク質を同定することが可能である。
【0053】
配位化学のこの分野では、最近の15〜20年で得られた多数の成果があり、その開示内容は本発明との関連で容易に使用することができる(表1参照)。
【0054】
好ましくは官能化テトラアザ-マクロ環、すなわちDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)の誘導体またはトリアザ-マクロ環、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)の誘導体であってよい環状リガンドは、アミノ酸から構築するか、あるいは非常に効率的な鋳型支援環化反応にしたがって合成し、これは出願人らの研究グループで最近開発されたものである。タンパク質反応基およびペプチド単離用機能部分(例えばイソチオシアネート基を含有するカラムと共有結合するための特定アミノ酸またはアフィニティークロマトグラフィー用ビオチン)は、マクロ環リガンドの炭素骨格内に組み込むことができ、あるいは金属キレート錯体はリンカーを介してタンパク質反応基およびペプチド単離用機能部分と適切に連結する。
【0055】
NOTAリガンドに適した金属イオンは遷移金属イオン、例えば銅(II)、ニッケル(II)および亜鉛(II)である。
【0056】
DOTA様リガンドに適した金属イオンはランタノイドイオンであり、これは非常に安定な錯体を形成し、この錯体はこのクラスのリガンドに匹敵する高い錯体安定性定数および非常に類似した分子量を有する(表2参照)。これらはその化学的性質が非常に類似しており、非常によく研究されているランタノイド-DOTA-錯体(DOTA = 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)の場合、質量増加によるイオン半径の収縮はランタノイドキレート錯体の速度論的安定性に対してごくわずかな影響しか有さない。これらの化合物はインビボ安定性が高いため、磁気共鳴断層撮影法における造影剤としてDOTA-ガドリニウム(III)-錯体を使用することに成功した。インビボ適用では、錯体の速度論的安定性がその熱力学的安定性よりずっと重要である。熱力学的安定性定数があまり高くない場合であっても、不活性錯体はいかなるリガンドまたは金属交換反応をも示さない。DOTA-ランタノイド-錯体が非常に安定かつ不活性である理由の1つは、リガンドによって提供される空洞(cavity)と金属イオンとの間のサイズ関係が最適であることである。金属イオンおよびリガンドは、十分にロックされた固定構造を構成し、これは生理条件下では非常に緩徐な解離を示し、酸性溶媒中ではプロトンによる攻撃を受ける場合があるのみである。[Gd(DOTA)(H2O)]-はpH 5の水溶液中で200日の半減期を示し、pH 2では85日の半減期を示す。pH 3,2〜5,0の範囲での[Gd(DOTA)]-および[Eu(DOTA)]-間の金属交換反応はよく研究されており、これにより、この交換反応の律速段階は[Gd(DOTA)]-のプロトン支援解離であることが示されている。プロトン化が酢酸基において生じる場合であっても、これらのモノ-およびジ-プロトン化錯体は反応性ではなく、この理由は、金属イオンが配位構造(coordination cage)内に位置するからである。この構造の破壊を達成するためには、プロトンはN原子に伝達される必要がある。この過程は、錯体全体の再配置を介して非常に緩徐にしか生じない。この研究に基づいて、関連性のある時間間隔およびpH範囲でのDOTA-ランタノイド錯体間の金属交換反応が非常に高い確率で排除可能である。
【0057】
【表1】
Figure 0004597665
【0058】
【表2】
Figure 0004597665
【0059】
治療および診断の両目的での医学的使用が成功したことにより、マクロ環でランタノイド特異的なリガンドの開発は80年代の初めから著しく進歩した。1999年発行のLaufferらの総説は、磁気共鳴断層撮影法(magnetic resonance tomography)(MRT)用の造影剤としてのGd(III)-キレートを論じ、過去10年間の最も重要な研究結果を印象的にまとめている。
【0060】
本発明の重要な側面は、二核性マクロ環ランタノイドキレート錯体についての合成、特徴付けおよび使用目的の研究であり、この錯体は医学的診断用の潜在的なMRI造影剤であると理解されてきた。非常によく研究されている、リガンドDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸塩)およびDOTAから導かれた化合物とのランタノイド錯体とは対照的に、非常に良好な水溶性および水安定性を有する多核性マクロ環ランタノイドキレート錯体については非常に限られた数しか知られていないのが現状である。
【0061】
この目的で、我々は2つのリガンド、1,4,7,10,13,16,19,22-オクタアザシクロテトラコサン-1,4,7,10,13,16,19,22-八酢酸(OTEC)、および1,4,7,10,14-17,20,23-オクタアザシクロヘキサコサン-1,4,7,10,14,17,20,23-八酢酸(OHEC)を合成することに成功し、これらは単核および二核性ランタノイド錯体を形成することができる。これらの存在はFAB-質量分析によって首尾良く検出された。配位化学における最重要点として、OHEC-リガンドの二核性キレート錯体(Ln = Y, La, Eu, Gd, Tb, Yb, Lu)の固体状態の構造の決定は、X線構造解析によって行った。構造情報に加えて、X線解析では、第一配位圏内に配位する多数の水分子についての手がかりが得られ、これは造影剤としての有効性に本質的に寄与する。我々は、金属のイオン半径の寸法が錯体中のリガンドの高次構造に決定的に共同して影響し、したがってMRI造影剤としての性質にも決定的に影響することを発見した。
【0062】
動的NMR測定によって、我々は溶液中の錯体の高次構造平衡を研究した。OHECのイットリウムおよびユーロピウム錯体に関して、一次元および二次元NMR法より、成功した合成の測定をさらに行った。OHECを伴う単核および二核性ユーロピウム錯体は、ポーラログラフィーによって首尾良くさらに特徴付けすることが可能であった。Gd錯体の緩和性(relaxivity)の測定は、NMRD測定(核磁気緩和分散(nuclear magnetic relaxation dispersion))によって行った。我々は緩和性を測定したが、これは臨床分野で使用される造影剤の緩和性より有意に高い。したがって我々は、医学的診断用の改善された特徴を有する新規クラスの潜在的な造影剤を見出したとの根拠ある展望を有する。
【0063】
実施例により、添付の図面を参照して本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例および図面に限定されない。
【0064】
図1:ICATで使用する例示的な試薬の構造。XはHまたはキレート基のいずれかである。
図2:MeCAT法の概略図であり、1)酵素による分解;2)MeCAT試薬との連結;3)標識ペプチドの選択;4)選択ペプチドの溶出;5)標識ペプチドの分離;続いて、質量分析を伴う。
*ここで、サンプルAおよびBをプールすることが可能である。
【0065】
合成計画−予備実験
この合成の目的は、二重C-置換テトラアザ-マクロ環を製造することである。アミノ保護リジン-ヒドロキシスクシンイミドエステル(2)から出発し、2当量の前記エステル(2)を1当量のエチレンジアミンと反応させることによって、ペプチド結合によって内部連結された二リジン-誘導体(3)を得る。2つのアミノ官能基から保護基を除去して、環化反応用の1成分を得、エチレングリコールをメシル化して他方の成分を得る。次の[1+1]-環縮合において、二重C-置換テトラアザジカルボニル-環(4)を得る。2つのカルボニル官能基を還元して、最終的にテトラアザ-環(1)を得るが、この環は両側鎖にさらに別の官能基を有することができる。
【0066】
【化1】
Figure 0004597665
【0067】
実験の構想:
これらの実験の目的は、細胞タンパク質を同定および定量化するための新規機能的マーカーを合成および適用することであった。これらのマーカーは、1.変性タンパク質の特定アミノ酸基と結合可能であること、2.大きなペプチドプールからアフィニティークロマトグラフィーおよび他の分離法によって単離可能であること、および3.標識ペプチド断片に基づき、質量分析およびデータベース分析を使用して、元のタンパク質を同定および定量化可能であること、が望ましい。
【0068】
この目的のため、以下の要素を1分子内で組み合わせる必要があった:
1.アミノ酸特異的またはスルフヒドリル特異的基、例えばアミン反応性ペンタフルオロフェニルエステル基、アミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホニルハライド、イソシアネート、イソチオシアネート、活性エステル、テトラフルオロフェニルエステル、酸ハライドおよび酸無水物、ホモセリンラクトン反応性一級アミン基およびカルボン酸反応性アミン、アルコールまたは2,3,5,6-テトラフルオロフェニルトリフルオロ-アセテート、ヨードアセチルアミド基、エポキシド、α-ハロアシル基、ニトリル、スルホン化アルキル、アリールチオールまたはマレイミド、であるが、これらはタンパク質中の官能基、この例ではシステインのSH基、またはタンパク質結合部位と相互作用(リガンド-レセプター相互作用)する官能基と選択的に反応する。
【0069】
2.支持体材料と結合するための(例えば後でのペプチド結合を伴うカラム材料と複合体を結合するための)反応基、またはビオチンまたはアフィニティークロマトグラフィー由来の既知の他の分子と結合するための反応基であって、これらは標識ペプチドを分離することができるように対応する対試薬と結合しており、ここで分離工程後に再びこれらの基/分子が、残りの分子から容易に切断することができ、反応基が、酸ハライド、アルデヒド、イソシアネート誘導体、スクシンイミド誘導体、イミダゾリルカルバメート誘導体、トラウト試薬(Traut's reagent)-誘導体、スルホン酸クロライド誘導体、オキシラン誘導体、イミデート、ヒドラジン、スルホスクシンイミジル誘導体、ジイミド誘導体、マレイミド誘導体および7-スルホベンゾフラザン誘導体から選択可能である。
【0070】
3.新規マーカーの本質的部分である、速度論的および熱力学的安定性が高い金属錯体形成マクロ環。
【0071】
最新の質量分析の性能を利用するプロテオーム分析において、これらのマーカーの適用可能性を試験した。この目的のため、我々は5〜10種のタンパク質の試験混合物および多数の「実在サンプル(real life sample)」を用いた。
【0072】
一般的アプローチ
提唱するマーカーの本質的部分は、ポリアザ-ポリ-酢酸(DOTA/NOTA)に基づくマクロ環であり、その金属錯体は必要な安定性を有する。これらのマクロ環は十分な量を合成し、これにより、それらに別のマーカー要素のための1つまたは2つの結合部位を付与するか、あるいは適切なリンカーを介してマクロ環を残りのMeCAT成分と連結することが必要であった。好ましい方法はアミノ酸から出発し、この場合、MeCAT成分の導入はマクロ環のC原子とそれらを連結することによって行う。代替法では、適切なリンカーによってマクロ環を残りのMeCAT成分と連結する。第三の方法では、ペプチド合成装置で固相ペプチド合成を行い、その後トシルアミド環を分子内閉環して合成を行う。この場合もMeCAT試薬はアザ-マクロ環のC原子に再び連結した。ぺプチドの精製は調製用HPLCによって行った。
【0073】
このリガンドを三価ランタノイドイオンと錯体形成させ、広範に特徴付けを行い、そして所望の性質を有するMeCAT試薬としてこれらを適用する可能性について試験した。この試薬に関して以下の要望条件を作成した:
− 錯体は十分な速度論的安定性を有さなくてはならず、すなわち金属交換反応は無視できるほど小さいのが望ましい。
− 種々の金属イオンを用いるこのコード化技術を、種々のサンプル由来の異なる標識を付した成分の相対濃度を測定するための内部標準法として使用した。したがって、異なる金属イオンを伴うMeCAT試薬の化学的および物理的性質が可能な限り同一である必要があり、特に、タンパク質との反応性およびそのクロマトグラフ分離動態に関して同一性が必要であった。
− モル質量はICAT試薬のモル質量を大きく超えないのが望ましい。
【0074】
次いで以下の研究を行った:
a)MSおよびNMRによるMeCAT試薬の特徴付け;
b)約10ペプチドを含む小さい物質プールを用いた、MeCAT試薬のアミノ酸特異的または基質特異的結合性および質量分析計での標識ペプチド動態の試験;
c)アフィニティークロマトグラフィーおよび他のクロマトグラフ分離法(イオン交換クロマトグラフィー、RP-クロマトグラフィー)における、標識および非標識ペプチドの動態についての体系的研究および最適化、特に再現性および標識ペプチドの回収率についての研究;
d)質量スペクトル中の各マッチングペプチドピークの相対シグナル/強度-比に基づいて行う、種々の金属イオンで標識されているが、それ以外の点では化学的に同一であるペプチドの相対濃度条件(適切な質量分析法によって測定)の再現性の検証;
e)実際のサンプル中でのMeCAT試薬の特性の研究。
【0075】
適切なリンカーの作製およびMeCAT成分へのそれらの連結
a)アビジンとの結合を目的として、リンカーをビオチン単位と連結した。
b)イソチオシアネート基を介してクロマトグラフ用カラムと共有結合することを目的として、リンカーをグリシンと連結した。非標識ペプチドがカラムから制限されない様式で解離することを可能にするため、この場合では、すべてのアミノ基をフェニルイソチオシアネートであらかじめ誘導体化することが必要であった。
c)システイン含有ペプチドを選択的に標識することを目的として、リンカーをヨード酢酸単位と連結した。
d)アミン含有ペプチドを標識することを目的として、リンカーを無水コハク酸単位に連結した。
【0076】
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【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】 ICATで使用する典型的試薬の構造を示す。
【図2】 MeCAT法の概略図を示す。

Claims (20)

  1. タンパク質混合物含有サンプル中の1種または2種以上のタンパク質を同定および定量化するための方法であって:
    a)タンパク質の混合物を含有するサンプルを提供し;
    b)ペプチドを分析するための試薬を提供し、ここで試薬は一般式
    A-Y-PRG
    を有し、式中、
    Aは、支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための少なくとも1つの官能基を構成し、
    Yは、放射性核種ランタノイドのキレート錯体であり、かつ、
    PRGは、分析されるペプチドまたは他の生体分子と選択的に結合するための反応基である;
    c)ペプチドを生産するためにサンプル中のタンパク質を分解し;
    d)ペプチドを工程b)の試薬と連結させ;
    e)支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための官能基を利用して、未結合ペプチドを除去して、工程d)の標識ペプチドを選択し;
    f)結合したペプチドを支持体材料から遊離させ、マトリクスから溶出させ;および
    g)質量分析によって標識ペプチドを検出し、同定する
    工程を含む方法。
  2. ペプチドの分解を酵素的にまたは化学的に行う、請求項1に記載の方法。
  3. 標識ペプチドを、支持体材料から遊離後かつ質量分析による分析前にHPLCによって、相互に分離する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 複数のタンパク質-および/またはペプチド-含有サンプルを共に分析することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 標識ペプチドの配列を決定することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. タンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現を検出するための方法であって:
    a)タンパク質を含有する生物学的サンプルを提供し;
    b)ペプチドを分析するための試薬を提供し、ここで試薬は一般式
    A-Y-PRG
    を有し、式中、
    Aは、支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための少なくとも1つの官能基を構成し、
    Yは、放射性核種ランタノイドのキレート錯体であり、かつ、
    PRGは、分析されるペプチドまたは他の生体分子と選択的に結合するための反応基である;
    c)ペプチドを生産するためにサンプル中のタンパク質を分解し;
    d)ペプチドを工程b)の試薬と連結させ;
    e)支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための官能基を利用して、かつ未結合ペプチドを除去して、工程d)の標識ペプチドを選択し;
    f)結合したペプチドを支持体材料から遊離させ、マトリクスから溶出させ;および
    g)質量分析によって標識ペプチドを検出し、同定し;
    h)親和性標識ペプチドが由来するタンパク質の相対的発現を決定するために、異なる標識を付したペプチドの相対的存在をイオンの別ピークとして測定する
    工程を含む方法。
  7. 基A、YおよびPRGの配置が相互に交換されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. タンデム型技術、例えばマトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)飛行時間(TOF)-TOF-MSおよびエレクトロスプレーイオン化(ESI)-MSによって標識ペプチドを検出することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. ペプチドの質量分析のための試薬であって、一般式
    A-Y-PRG
    を有し、式中
    Aは、支持体材料と可逆的に共有結合または非共有結合するための少なくとも1つの官能基を構成し、
    Yは、放射性核種ランタノイドのキレート錯体であり、かつ、
    PRGは、分析対象のペプチドまたは他の生体分子を選択的に結合するための反応基である試薬。
  10. 基A、YおよびPRGの配置が相互に交換されている、請求項9に記載の試薬。
  11. PRGが、スルフヒドリル反応基、アミン反応基および酵素基質からなる群から選択される、請求項9または10に記載の試薬。
  12. PRGが、アミン反応性ペンタフルオロフェニルエステル基、アミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホニルハライド、イソシアネート、イソチオシアネート、活性エステル、テトラフルオロフェニルエステル、酸ハライドおよび酸無水物、ホモセリンラクトン反応性一級アミン基およびカルボン酸反応性アミン、アルコールまたは2,3,5,6-テトラフルオロフェニルトリフルオロ-アセテート、ヨードアセチルアミド基、エポキシド、α-ハロアシル基、ニトリル、スルホン化アルキル、アリールチオールおよびマレイミドからなる群から選択される、請求項11に記載の試薬。
  13. Aが、ビオチンまたは修飾ビオチン、1,2-ジオール、グルタチオン、マルトース、ニトリロ三酢酸基、オリゴヒスチジンおよびハプテンまたは、支持体材料との可逆的結合が可能な他の反応性試薬からなる群から選択される、請求項9〜12のいずれか一項に記載の試薬。
  14. 基A、Yおよび/またはPRG間にリンカーをさらに含み、該リンカーが化学的および/または酵素的な方法で、ならびに/あるいは放射線または光に曝露することによって分解可能である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の試薬。
  15. リンカーがジスルフィド基を含有する、請求項14に記載の試薬。
  16. ランタノイドCeDy、Er、EuGdHoLaLuNdPrSmTbTmおよびYbから選択される、請求項9〜15のいずれか一項に記載の試薬。
  17. Yがいくつかの異なる金属で標識されている、請求項9〜16のいずれか一項に記載の試薬。
  18. 生物学的サンプル中のペプチドを検出し、および/またはタンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現を測定するための、請求項9〜16のいずれか一項に記載の試薬の使用。
  19. 動物から採取されたタンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現を検出することによる、動物またはヒトの疾患を診断するための、請求項9〜16のいずれか一項に記載の試薬の使用。
  20. 請求項9〜16のいずれか一項に記載の試薬を、生物学的サンプル中のペプチドの検出、および/またはタンパク質含有サンプル中のタンパク質の相対的発現の測定に適した追加の物質ならびに/あるいは酵素とともに含有し内部標準を含有する、診断用キット。
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