JP4592371B2 - 作物栽培における培地の温度調節方法及びその装置 - Google Patents

作物栽培における培地の温度調節方法及びその装置 Download PDF

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Description

本発明は、ロックウール培地を用いた培養液かけ流し方式のトマト等の作物の養液栽培に係り、特にその培地を冷却或いは保温するためトマト等の作物栽培における培地の温度調整方法及びその装置に関するものである。
トマトは、一つの株から数ヶ月以上の長期間にわたって収穫することができる土地生産性の高い集約作物であり、水耕栽培の中でも、ロックウール培地を用いた培養液かけ流し方式のトマトのハウス栽培が広く行われている。
ハウストマトの高品質安定多収栽培には、光、温度、養水分などの環境要因をバランスよく調整することが重要であり、温度に関しては、ハウス内気温を昼温25〜30℃、夜温10〜20℃の範囲に調整することが生育適温とされている。
しかし、夏季においては、ハウス内は容易に30℃以上となるために、花芽分化が十分に行えず、収穫量が減少し、安定した生産が行えない。
そこで、ハウス内を空調機で適正温度に下げて収穫量を上げることが試みられているが、ハウス内を空調しても、雰囲気温度は適正に保たれるものの、培地の温度は適正な温度に保たれる保証はないため、生育に適した環境を整えることは困難であり、しかもコスト高となってしまう問題もある。
このため、特許文献1に示されるように、培地を水の蒸発潜熱で冷却したり、特許文献2に示されるように、冬場の作物の花芽分化をさせるために、栽培床の近傍に冷気を滞留させることが試みられている。
特開2000−262161号公報 特開平8−242701号公報
しかしながら、ロックウール培地を用いた培養液かけ流し方式のトマトハウス栽培においは、培地自体は、ロックウール、ガラスウールなどで形成され、培養液は雰囲気内で蒸発可能であるにもかかわらず、実際には培地の温度は下がらず、特許文献1のように蒸発潜熱で冷却することは困難である。また特許文献2のように冷気を滞留させて冷却させても、茎の部分は冷却されるものの培養液を吸い上げる根が伸びている培地自体の温度は下がりにくいため効果がないという問題がある。
さらに培養液自体を冷却してかけ流すことも考えられるが、培養液の量は僅かであり、培地を適正温度にすべく、培養液を冷却したのでは、根が冷却され過ぎてしまい生育に悪影響が生じる問題がある。
本発明の目的は、ロックウール等の培地を用いた培養液かけ流し方式でトマト等の作物をハウス栽培するにおいて、培地を適正に冷却できるトマト等の作物栽培における培地の温度調節方法及びその装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ハウス内で、ロックウールなどの培地を用い、その培地に培養液をかけ流して作物を栽培する作物栽培における培地冷却システムにおいて、冷水が流れる樋部とその樋部の内側に向けて伝熱フィンを備えた蓋部からなる蓋付き樋を、床上に設置し、その蓋付き樋の蓋部上に培地を載置し、その蓋付き樋に冷水を供給して培地を冷却するようにした作物栽培における培地の温度調節方法である。
請求項2の発明は、蓋付き樋が金属製であり、蓋部に設けられた伝熱フィンが、樋部を流れる冷水と接するように設けられる請求項1記載の作物栽培における培地の温度調節方法である。
請求項3の発明は、上記培地間に位置した蓋部にファンを設け、蓋付き樋に7〜10℃の冷水を供給し、上記ファンで樋部内空気を吸引排気して培地の近傍に冷風を吹き出すようにした請求項1記載の作物栽培における培地の温度調節方法である。
請求項4の発明は、培地が低温の時、蓋付き樋に、冷水に替えて温水を供給して培地を保温するようにした請求項1記載の作物栽培における培地の温度調節方法である。
請求項5の発明は、冷水或いは温水が流れる樋部とその樋部の内側に向けて伝熱フィンを備えた蓋部からなる蓋付き樋を床上に設置し、その蓋付き樋の蓋部上の長手方向に、作物を植栽するロックウール等からなる培地を所定スペースをおいて複数載置するようにした作物栽培における培地の温度調節装置である。
請求項6の発明は、培地間に位置した蓋部に、樋部内空気を吸引排気するファンを設けた請求項5記載の作物栽培における培地の温度調節装置である。
請求項7の発明は、蓋付き樋が金属製であり、蓋部に設けられた伝熱フィンが、樋部を流れる冷水と接するように設けられる請求項5又は6記載の作物栽培における培地の温度調節装置である。
請求項8の発明は、蓋部に設けられる伝熱フィンは、幅方向に複数枚、長手方向に沿って設けられる請求項5〜7いずれかに記載の作物栽培における培地の温度調節装置である。
請求項9の発明は、幅方向両側の伝熱フィンは、その下部が樋部の底面に着座して蓋部にかかる荷重を受けるようにされる請求項8に記載の作物栽培における培地の温度調節装置である。
本発明は、収穫が落ちる夏季に、培地を確実に適正温度に冷却することができるため、季節毎の収穫量を一定にすることができる。
以下本発明の実施形態を添付図面により説明する。
図1,図2は、トマトのハウス栽培の全体図を示し、図1は正面図を、図2はその側面図を示している。
先ず、トマトTをハウス10内で栽培するにあたり、各トマトTが、ロックウールやグラスウール等の培地11に植栽され、その培地11に培養液注入パイプPから培養液が適宜流し込まれて栽培され、茎Sの上部が紐12にて支持フレーム13に吊され、茎Sの生長と共に上方に誘引され、茎Sが支持フレーム13近くまで生長したならば、茎Sを下に降ろして、茎Sの下部を水平方向に巻き回して管理可能な高さに保持しながら栽培すると共に果実Fを収穫するようになっている。
さて、ハウス10の床14上には、発泡スチロール等の断熱材15が敷設され、その断熱材15上に、蓋付き樋16が設けられ、その蓋付き樋16上にロックウール、グラスウール等で形成された培地11が載置される。
培地11は、横長のブロック状に成形されたスラブ11sとそのスラブ11s上に、所定間隔をおいて設けられたポット11pからなる。
ポット11pには、トマトTが植栽され、トマトTの根がポット11pを通してスラブ11s内にまで伸び、各ポット11pに設けた培養液注入パイプPから培養液が適宜流し込まれてスラブ11sに含浸され、その培養液をトマトTの根が吸収して生長するようになっている。
蓋付き樋16は、図4(b)、図5(b)に示すように、SUSなどの金属板で形成され、冷水wが流れる樋部17と、その樋部17の上部を閉じるSUSなどの金属板で形成された蓋部18と、蓋部18の内側に設けられ冷水wと接する伝熱フィン19とからなる。
伝熱フィン19のうち、幅方向両側に位置した伝熱フィン19sは、樋部17の底面に着座するような長さに形成されて蓋部18にかかる荷重を受けるようにされ、中央部の伝熱フィン19cは、伝熱フィン19c間を連通するように、樋部17の底面からやや離れる長さに形成される。
蓋付き樋16上に載置する培地11は、図2、図3に示すように蓋部18上の長手方向に、所定スペースSをおいて複数載置し、その培地11間のスペースSに位置した蓋部18には、蓋付き樋16内の空気を吸引排気するファン20が設けられる。このファン20は詳細は示していないがソーラーバッテリで駆動されるようになっている。
図4(a)、図5(a)に示すように、蓋付き樋16の一端には冷水供給管21が設けられ、樋部17には、冷水供給管21から供給された冷水wを分散するパンチング板22が設けられる。また蓋付き樋16の他端には、蓋付き樋16内の冷水wを所定のレベルに保って排水する排水管23が接続される。
次に本発明の作用を説明する。
夏季などにおいて、培地11の温度が30℃以上になる際には、冷水供給管21より7〜10℃の冷却水を蓋付き樋16に供給する。蓋付き樋16を冷水が流れる間に、伝熱フィン19の熱伝導により蓋部18の温度が下がり、培地11のスラブ11sは、蓋部11に載置されているために、適正な温度まで冷却することが可能となる。
この培地11の冷却は、蓋付き樋16から直接熱伝導で行われるため、空調機で培地11の周囲を冷却するよりも、少ないエネルギでより効率よく冷却することができる。
また、ファン20にて蓋付き樋16内の空気を吸引し、これを培地11の近傍に冷風を吹き出すため、空調空気と違って湿度の高い冷風を吹き出すことができ、培地11を保湿しながら温度を下げることが可能となる。
図6は夏季において、同一ハウス内で、培地11を冷却したものと、培地11を冷却しないものとの一日の温度の経時変化を測定(測定時はファンの駆動無し)したもので、冷水は、日照に合わせて、朝5時から夜7時までの間、流して測定した。
図において、■は無冷却時のスラブ中心部、●はポット中心部、▲はスラブ上部、×はスラブ中心部、△はスラブ下部の温度を示している。また冷却時に、蓋付き樋に供給する冷水温度は10℃とした。なお、測定時は、ハウス内を充分に換気したが、ハウス内温度は最高で35℃となった。
図6から分かるように、■の無冷却の場合には、培地温度は最大33℃まで上昇したが、蓋付き樋で冷却することで、●のポット中心部で最大25℃、▲のスラブ上部で最大22℃、×のスラブ中心で最大20℃、△のスラブ下部で最大17℃の温度にすることが可能となる。また、スラブ温度は、冷水供給(朝5時)と共に30分程度で一定の冷却温度に下げることができ、冷水供給停止後(夜7時)は、1時間程度で、スラブの上下での温度差はなくなる。
また、両者とも冷却を行っていない夜間には、■の無冷却と●のポットとは、本来であれば同じ温度となるが、●のポットの場合には、夜間の無冷却時においても、蓋付き樋に冷却水が貯留されており、■の蓋付き樋では、水は充填されておらず空気であるため、両者の温度に3,4℃程度の温度差が生じていた。
このことは、夜間時に運転を停止していても、蓋付き樋中に貯留される冷水で、夜間の温度上昇を防ぐことが可能であり、また夏季において気温があまり上がらない場合でも、蓋付き樋16内に水を張っておくだけで、温度変化が緩やかとなるため、培地11の日中や夜間の急激な温度変化を抑えることもできる。
上述の実施の形態においては、蓋付き樋16に冷水を通して冷却するシステムとして説明したが、冬季でのトマトのハウス栽培では、培地11の温度が適温より下がる場合には、蓋付き樋16に温水を流して培地11を保温するように使用してもよいことは勿論である。
本発明の一実施の形態を示す全体正面図である。 図1の側面図である。 図1における蓋付き樋の平面図である。 本発明における蓋付き樋の詳細を示す正断面図である。 本発明における蓋付き樋の詳細を示す側断面図である。 本発明におけるハウス内の培地の温度の経時変化を示す図である。
符号の説明
10 ハウス
11 培地
16 蓋付き樋
17 樋部
18 蓋部
19 伝熱フィン
20 ファン
T トマト

Claims (9)

  1. ハウス内で、ロックウールなどの培地を用い、その培地に培養液をかけ流して作物を栽培する作物栽培における培地冷却システムにおいて、冷水が流れる樋部とその樋部の内側に向けて伝熱フィンを備えた蓋部からなる蓋付き樋を、床上に設置し、その蓋付き樋の蓋部上に培地を載置し、その蓋付き樋に冷水を供給して培地を冷却することを特徴とする作物栽培における培地の温度調節方法。
  2. 蓋付き樋が金属製であり、蓋部に設けられた伝熱フィンが、樋部を流れる冷水と接するように設けられる請求項1記載の作物栽培における培地の温度調節方法。
  3. 上記培地間に位置した蓋部にファンを設け、蓋付き樋に7〜10℃の冷水を供給し、上記ファンで樋部内空気を吸引排気して培地の近傍に冷風を吹き出すようにした請求項1記載の作物栽培における培地の温度調節方法。
  4. 培地が低温の時、蓋付き樋に、冷水に替えて温水を供給して培地を保温するようにした請求項1記載の作物栽培における培地の温度調節方法。
  5. 冷水或いは温水が流れる樋部とその樋部の内側に向けて伝熱フィンを備えた蓋部からなる蓋付き樋を床上に設置し、その蓋付き樋の蓋部上の長手方向に、作物を植栽するロックウール等からなる培地を所定スペースをおいて複数載置することを特徴とする作物栽培における培地の温度調節装置。
  6. 培地間に位置した蓋部に、樋部内空気を吸引排気するファンを設けた請求項5記載の作物栽培における培地の温度調節装置。
  7. 蓋付き樋が金属製であり、蓋部に設けられた伝熱フィンが、樋部を流れる冷水と接するように設けられる請求項5又は6記載の作物栽培における培地の温度調節装置。
  8. 蓋部に設けられる伝熱フィンは、幅方向に複数枚、長手方向に沿って設けられる請求項5〜7いずれかに記載の作物栽培における培地の温度調節装置。
  9. 幅方向両側の伝熱フィンは、その下部が樋部の底面に着座して蓋部にかかる荷重を受けるようにされる請求項8に記載の作物栽培における培地の温度調節装置。
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