JP4592237B2 - 光ファイバアレイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバアレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信分野を中心として光ファイバに注目が集まっている。特にIT(情報技術)分野においては、高速インターネット網の整備に、光ファイバを用いた通信技術が必要となる。
光ファイバは、▲1▼低損失、▲2▼高帯域、▲3▼細径・軽量、▲4▼無誘導、▲5▼省資源等の特徴を有しており、この特徴を有する光ファイバを用いた通信システムでは、従来のメタリックケーブルを用いた通信システムに比べ、中継器数を大幅に削減することができ、建設、保守が容易になり、通信システムの経済化、高信頼性化を図ることができる。
【0003】
また、光ファイバでは、一つの波長の光だけでなく、多くの異なる波長の光を1本の光ファイバで同時に多重伝送することができるため、多様な用途に対応可能な大容量の伝送路を実現することができ、映像サービス等にも対応することができるという大きな利点を有する。
【0004】
また、光ファイバ通信において、光ファイバを、受光素子、端末機器(パソコン、モバイル、ゲーム等)に直接または光導波路等を介して接続するためには、複数の光ファイバを所定の間隔で離間して配列させる必要があり、これを達成するために、光ファイバアレイが用いられている。
【0005】
従来、光ファイバアレイとしては、例えば、基板に形成された複数のV溝のそれぞれに光ファイバが整列して収納され、該光ファイバが接着剤を介して固定されたものが開示されている。
また、光ファイバを収納した基板上に、さらに、蓋部が形成された光ファイバアレイも開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような光ファイバアレイは、例えば、上面に溝を形成した基板の該溝に、光ファイバを載置し、その後、光ファイバと溝との間隙に、基板の側面から未硬化の接着剤を流し込み、さらに、硬化処理を施して光ファイバを溝に収納、固定することにより光ファイバアレイを製造していた。
また、光ファイバアレイとして、基板上に蓋部が取り付けられた光ファイバアレイを製造する場合には、基板の溝に光ファイバを載置した後、基板上に蓋部を取り付け、その後、基板および蓋部の側面から、溝と光ファイバとの間隙、および、蓋部と光ファイバとの間隙に未硬化の接着剤を流し込み、さらに、硬化処理を施して光ファイバを溝に収納、固定することにより光ファイバアレイを製造していた。
【0007】
しかしながら、このような方法で製造した光ファイバアレイでは、該光ファイバアレイを光学素子に接続する際や、光ファイバアレイに外部から力が加わった際に、光ファイバの位置ズレが発生し、光ファイバアレイと受光素子や発光素子等の光学素子との間で接続不良が発生することがあった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、このような光ファイバの位置ズレは、溝と光ファイバとの間隙や、蓋部との光ファイバとの間隙に充分に接着剤が充填されていないことに起因して発生しており、溝と光ファイバとの間隙等を確実に接着剤で充填することにより、光ファイバの位置ズレが発生しないことを見出し、本発明の光ファイバアレイを完成した。
【0009】
すなわち、本発明の光ファイバアレイは、基板上の一部に複数の溝が形成され、上記溝に、接着剤を介して光ファイバが収納された光ファイバアレイであって、上記接着剤は、エポキシ系またはアクリレート系の紫外線硬化型接着剤であることを特徴とする。
【0010】
本発明の光ファイバアレイにおいては、上記基板上の少なくとも一部に、接着剤を介して上記光ファイバを覆う蓋部が取り付けられており、上記接着剤が、エポキシ系またはアクリレート系の紫外線硬化型接着剤であることが望ましい。
また、上記蓋部には、上記光ファイバの一部を一括して収納する凹部が形成されていることが望ましい。
【0011】
また、上記紫外線硬化型接着剤は、40〜50重量%のアクリレートオリゴマー、1〜10重量%のビニルエステル樹脂、45〜55重量%のアクリレート系モノマー、および、1〜10重量%の重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物であることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の光ファイバアレイは、基板上の一部に複数の溝が形成され、上記溝に、接着剤を介して光ファイバが収納された光ファイバアレイであって、
上記接着剤は、エポキシ系またはアクリレート系の紫外線硬化型接着剤であることを特徴とする。
【0013】
本発明の光ファイバアレイでは、基板上に形成された溝に、紫外線硬化型接着剤を介して光ファイバが確実に収納されており、該光ファイバアレイを光学素子に接続する際や、該光ファイバアレイに外部から力が加わった際にも、光ファイバの位置ズレが発生することがなく、正確に光信号を伝送することができる。
【0014】
本発明の光ファイバアレイについて図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の光ファイバアレイの一例を模式的に示す部分斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【0015】
図1に示すように、光ファイバアレイ100は、基板151上に、複数のV溝157が並列に形成され、このV溝157のそれぞれに、光ファイバ115が接着剤159を介して収納されている。
また、基板151上面には、溝157とは別に、光ファイバをその周囲の被覆樹脂層113、114とともに一括して保持するための被覆樹脂層保持部158が形成されている。なお、この被覆樹脂層保持部158の上面は、溝157を形成した溝形成面よりも低くなっている。また、被覆樹脂層114は、その周囲に形成した接着剤層(図示せず)により被覆樹脂層保持部158に固定されている。なお、被覆樹脂層保持部158は、必要に応じて形成すればよく、基板上にはV溝のみが形成されていてもよい。また、図中、111はコア、112はクラッドである。
【0016】
また、基板の上面に溝とともに、被覆樹脂層保持部を形成する場合、溝形成面と、被覆樹脂層保持部との境目は、図1に示すような垂直な壁面であってもよいが、被覆樹脂層保持部に向かって下るような傾斜を有する壁面であることが望ましい。光ファイバにかかる負荷を軽減することができるからである。
また、基板上には、被覆樹脂層保持部に代えて、光ファイバをその周囲の被覆樹脂層ごと収納することができる凹部が形成されていてもよい。なお、ここでいう凹部の形状としては、図1に示す被覆樹脂層保持部の側方外縁部に基板の上面と同一の高さか、または、これよりも低い壁面が設けられたような形状等が挙げられる。
【0017】
接着剤159は、エポキシ系またはアクリレート系の紫外線硬化型接着剤である。この接着剤は、光ファイバアレイを製造する際に、光ファイバと溝との間隙に確実に充填することができるため、この接着剤を介して固定された光ファイバでは、位置ズレが発生しない。また、このエポキシ系またはアクリレート系の紫外線硬化型接着剤は、被覆樹脂層を被覆樹脂層保持部に固定する接着剤としても用いることができる。
また、上記紫外線硬化型接着剤は、その一部がフッ素化されていることが望ましい。フッ素化することにより、硬化した接着剤で水が生成しにくく、耐湿性が向上することとなる。また、絶縁性、耐熱性、耐薬品性等も向上することとなる。
【0018】
上記紫外線硬化型接着剤は、40〜50重量%のアクリレートオリゴマー、1〜10重量%のビニルエステル樹脂、45〜55重量%のアクリレート系モノマー、および、1〜10重量%の重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物である。
【0019】
上記紫外線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度は、紫外線硬化型樹脂組成物を溝と光ファイバとの間隙に流し込む際の流入しやすさ等を考慮して、100〜3000mPa・sである。
【0020】
後述するように、本発明の光ファイバアレイを製造する場合、基板の側面から未硬化の接着剤(紫外線硬化型樹脂組成物)を溝と光ファイバとの間隙に流し込むと、該間隙に未硬化の接着剤が充填されることとなる。
本発明の光ファイバアレイでは、上記紫外線硬化型樹脂組成物が、40〜50重量%のアクリレートオリゴマー、1〜10重量%のビニルエステル樹脂、45〜55重量%のアクリレート系モノマー、および、1〜10重量%の重合開始剤を含んでいる。さらに、紫外線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度は、100〜3000mPa・sである。そのため、紫外線硬化型樹脂組成物が、溝と光ファイバとの間隙に流入されやすくなり、より確実に溝と光ファイバとの間隙が未硬化の接着剤(紫外線硬化型樹脂組成物)で充填されることとなる。
【0021】
また、上記アクリレートオリゴマーや上記アクリレート系モノマーは、その一部がフッ素化されている。
このように、紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる成分の一部がフッ素化されている場合、紫外線硬化型樹脂組成物は透光性に優れるため、紫外線照射時に、樹脂組成物全体が短時間で硬化することとなる。
【0022】
上記紫外線硬化型樹脂組成物の具体例としては、例えば、ダイキン工業社製、オプトダインUV−1000、オプトダインUV−2000、オプトダインUV−3000、オプトダインUV−4000等が挙げられる。
【0023】
上記紫外線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて、樹脂粒子、無機粒子、金属粒子等の粒子、光沢剤、反応安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤を含むことにより、流動性の向上や硬化度の調整等を図ることができる。
【0024】
上記樹脂粒子としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、具体的には、例えば、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等からなるものが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、上記樹脂粒子としては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム等のゴムからなる粒子を用いることもできる。
【0025】
上記無機粒子としては、アルミナ、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等のカルシウム化合物、炭酸カリウム等のカリウム化合物、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、シリカ、ゼオライト等のケイ素化合物等からなるものが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい
また、上記無機粒子としては、リンやリン化合物からなるものを用いることもできる。
【0026】
上記金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、スズ、亜鉛、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、鉛等からなるものが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの粒子を含むことにより、熱膨張係数の調整や難燃性の向上等を図ることができる。
【0027】
なお、図1に示す光ファイバアレイ100においては、4本の光ファイバが収納されているが、本発明の光ファイバアレイに収納される光ファイバの本数は4本に限定されるわけではなく、3本以下であってもよいし、5本以上であってもよい。
【0028】
また、本発明の光ファイバアレイでは、基板上の少なくとも一部に、接着剤を介して光ファイバを覆う蓋部が形成されていることが望ましい。
上記蓋部の形状は、光ファイバアレイの上面を保護することができるものであれば特に限定されず、例えば、板状体であってもよいが、光ファイバの一部を一括して収納する凹部が形成されているものが望ましい。
以下、蓋部を有する光ファイバアレイについて、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図2(a)は、蓋部が形成された本発明の光ファイバアレイの一例を模式的に示す部分斜視図であり、(b)は、光ファイバアレイに取り付けた蓋部のみを示す斜視図であり、(c)は、(a)のA−A線断面図である。
図2に示すように光ファイバアレイ101では、光ファイバリボン110を収納した基板151上に、蓋部160が取り付けられており、この蓋部160には、光ファイバ115の一部(光ファイバのうち溝157に収納されなかった部分)を一括して収納する凹部161が形成されている。
また、この凹部161と光ファイバとの間隙にも接着剤169が充填されている。また、基板151の外縁部と蓋部160の外縁部とは、接着剤(図示せず)を介して密着している。
【0030】
ここで、蓋部に形成された凹部と光ファイバの間隙とに充填された接着剤もまた、エポキシ系またはアクリル系の紫外線硬化型接着剤であることが望ましく、その具体例としては、上述したような、基板に形成した溝と光ファイバとの間隙に充填する接着剤と同様のもの等が挙げられる。
【0031】
また、蓋部の形状を光ファイバを一括して収納する凹部を有する形状とする場合、該凹部の深さは、光ファイバの直径の95%以下であることが望ましい。上記凹部の深さが、光ファイバの直径の95%を超えると、基板上面に形成した溝の深さによっては、凹部中の光ファイバの占める部分が少なく、光ファイバが上下方向に位置ズレを起すことがある。なお、上記凹部の深さは、光ファイバの該凹部に収納される部分の高さと同一であることが望ましい。
【0032】
図1および2に示したような本発明の光ファイバアレイにおいて、被覆樹脂層113、114が除去された光ファイバの表面には、粗化面(図示せず)が形成されていることが望ましい。光ファイバと接着剤との密着性が向上することとなるからである。
上記粗化面は、その平均粗度Raが1〜100nmであることが望ましい。
平均粗度Raが、1nm未満では、光ファイバと接着剤との密着性はほとんど向上せず、一方、平均粗度Raが100nmを超えると、光ファイバの表面の凹凸が大きくなるため、光ファイバの断面の形状が円形状からはずれ、光ファイバの位置ズレが発生しやすくなり、光信号の伝送に悪影響を及ぼすことがある。より望ましい粗化面の平均粗度は、10〜50nmである。
【0033】
また、上記粗化面を形成する方法は特に限定されないが、フッ化物を含む粗化液を用いて形成されていることが望ましい。
上記範囲の平均粗度Raを有する粗化面を、短時間で形成することができるからである。
【0034】
上記フッ化物を含む粗化液としては、例えば、HF水溶液、HF−NH4F混合液、NaF水溶液、BaF2水溶液、KF水溶液、CaF2水溶液、XeF2水溶液等が挙げられる。
これらのなかでは、HFを含む溶液が望ましい。光ファイバに悪影響(光ファイバの変形等)を及ぼすことなく、所望の平均粗度Raを有する粗化面を短時間で形成することができるからであり、特に、石英系光ファイバや多成分系光ファイバの表面に粗化面を形成するのに適している。
【0035】
また、図1および2に示す光ファイバアレイ100、101においては、複数のV溝157が形成された基板151に、一端部の被覆樹脂層が除去されることにより光ファイバが露出した光ファイバリボン110が収納されている。
上記光ファイバリボンとしては特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、図1に示すようなコア111とクラッド112とからなる光ファイバ115の周囲に一次被覆樹脂層113が形成され、この一次被覆樹脂層113で被覆された光ファイバ115が並列に配置された状態で二次被覆樹脂層114により一括して被覆されている光ファイバリボン110を用いることができる。
【0036】
光ファイバリボンを構成する光ファイバ115としては、例えば、石英ガラス(SiO2)を主成分とする石英系光ファイバ、ソーダ石灰、ガラス、ホウ硅ガラス等を主成分とする多成分系光ファイバ、シリコーン樹脂やアクリル樹脂等のプラスチックを主成分とするプラスチック系光ファイバ等が挙げられる。これらのなかでは、石英系光ファイバが望ましい。
【0037】
一次被覆樹脂層113は、光ファイバが傷付いたりすること等を防止する保護層としての役割を果たしている。また、その材料としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂や、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、上述した熱硬化性樹脂の熱硬化基を(メタ)アクリル化反応させた感光性樹脂等が挙げられる。
なお、上記一次被覆樹脂層の層数は1層に限定されず、2層以上であってもよい。
【0038】
また、二次被覆樹脂層114は、一次被覆樹脂層がその周囲に形成された光ファイバを保護するとともに、光ファイバが並列に配置された光ファイバリボンの形態を保持する役割を果たしている。また、その材料としては特に限定されず、上記一次被覆樹脂層の材料と同様の熱硬化性樹脂や感光性樹脂等が挙げられる。
なお、上記二次被覆樹脂層の層数は1層に限定されず、2層以上であってもよい。
【0039】
また、光ファイバアレイ100、101においては、その一端部の被覆樹脂層が除去された光ファイバリボンが基板に収納されているが、基板の溝に収納される光ファイバは、複数本の単心の光ファイバであってもよいし、複数の光ファイバリボンが積み重ねられた積層光ファイバリボンであってもよい。
積層光ファイバリボンを用いる場合には、基板の溝に、複数の光ファイバを高密度で並列に配置することができる。
【0040】
図3は、積層光ファイバリボンを用いた本発明の光ファイバアレイの一例を模式的に示す部分斜視図である。
図3に示すように、光ファイバアレイ200では、積層光ファイバリボン210の一端部の露出した光ファイバ235、245が基板251上のV溝257に接着剤(図示せず)を介して収納され、積層光ファイバリボン210の一部が被覆樹脂層ごと被覆樹脂層保持部258に保持されている。
その一端の露出した光ファイバは、その表面に粗化面(図示せず)が形成されている。
また、被覆樹脂層保持部258に保持された被覆樹脂層の周囲には接着剤層(図示せず)が形成されている。
また、このような、積層光ファイバリボンを用いた光ファイバアレイにおいても、基板上に被覆樹脂層保持部に代えて、積層光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと一括して収納することができる凹部が形成されていてもよい。
【0041】
また、積層光ファイバリボン210は、それぞれ一端部の光ファイバが露出した2本の光ファイバリボン230、240が積み重ねられ、下段の光ファイバリボン240の露出した光ファイバ245と、上段の光ファイバリボン230の露出した光ファイバ235とが交互に配置されている。
【0042】
また、積層光ファイバリボン210では、露出した光ファイバ235、245が同一の高さに配置されるように、露出した光ファイバ235、245は、それぞれが、その一部で曲げられている。
なお、積層光ファイバリボン210では、上段の光ファイバリボン230の露出した光ファイバ235、および、下段の光ファイバリボン240の露出した光ファイバ245のそれぞれの一部が曲げられているが、両者の光ファイバを同一の高さに配置することができるのであれば、上段の光ファイバリボンの露出した光ファイバのみが曲げられていてもよいし、下段の光ファイバリボンの露出した光ファイバのみが曲げられていてもよい。
【0043】
また、上記積層光ファイバリボン210においては、上段の光ファイバリボン230と、下段の光ファイバリボン240とが、接着剤等を介して固定されていることが望ましい。高密度で並列に配置した光ファイバの位置ズレがより発生しにくくなるからである。
【0044】
次に、本発明の光ファイバアレイの製造方法について説明する。ここでは、光ファイバリボンを用いた光ファイバアレイの製造方法について説明する。
(1)上記光ファイバアレイを製造するには、まず、基板に複数の溝を形成する。
上記基板の材料としては特に限定されず、外形加工を施した際の平坦性に優れ、鏡面加工を施し易く、かつ、形状保持性に優れるものであればよい。具体的には、例えば、シリコン、炭化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、セラミック、ガリウム砒素、ジルコニア、石英、ガラス等の無機材料;銅、鉄、ニッケル等の金属材料;熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂、これらの複合体等の有機材料やこれらの有機材料にガラス繊維等の補強材を含浸させたもの等が挙げられる。
【0045】
これらのなかでは、熱や湿度による伸縮(変形)が少なく、機械的強度に優れる点から無機材料が望ましい。このような特性を有する無機材料からなる基板では、光ファイバを収納した際に、特に、光ファイバの変形やうねりが発生しにくく、光ファイバを介して光信号を伝送する際に特に不都合が発生しにくいからである。
【0046】
上記基板に溝を形成する方法としては、例えば、下記(i)〜(vi)の工程を経る方法等を用いることができる。
図4(a)〜(f)は、基板に溝を形成する方法の一例を示す断面図である。
【0047】
(i)まず、基板151上にマスク層152(152a、152b)を形成する(図4(a)参照)。なお、上記マスク層の層数は、図4に示すような2層に限定されず、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
【0048】
マスク層152を形成する方法としては、例えば、スパッタリング、CVD、めっき等により薄膜を形成する方法、熱酸化等により酸化膜を形成する方法、これらを組み合わせた方法等を用いることができる。これらのなかでは、例えば、シリコンからなる基板上にマスク層を形成する場合には、まず、熱酸化により酸化膜(SiO2膜)を形成し、次に、この酸化膜上に、CVDにより薄膜を形成する方法が望ましい。
このようなマスク層を形成することにより、後工程で任意の部分にエッチング処理を施すことにより、任意の形状のマスクを形成することができる。
【0049】
(ii)次に、マスク層152上にレジスト用樹脂層154を形成する(図4(b)参照)。
具体的には、予め粘度を調整しておいたレジスト用樹脂組成物をスピンコータ、カーテンコータ、ロールコータ、印刷等により塗布する方法や、予めフィルム状に成形しておいたレジスト用樹脂フィルムを貼り付ける方法等を用いることができる。
【0050】
上記レジスト用樹脂組成物やレジスト用樹脂フィルムとしては、例えば、樹脂成分と、必要に応じて配合された硬化剤、粒子、ゴム成分、添加剤、反応安定剤、溶剤等とからなるものが挙げられる。
上記樹脂成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂、熱硬化性樹脂の一部が感光性基で置換された樹脂、これらの複合樹脂等が挙げられる。
【0051】
具体的には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂;これらの熱硬化性樹脂の熱硬化基(例えば、エポキシ樹脂におけるエポキシ基)にメタクリル酸やアクリル酸等を反応させ、アクリル基(感光性基)を付与した樹脂;フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルホン(PPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPES)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PI)等の熱可塑性樹脂;アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂等の感光性樹脂等が挙げられる
これらのなかでは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂が望ましい。後工程で、レジスト用樹脂層下のマスク層にエッチング液を用いた処理を施す際に、該エッチング液に対する耐性に優れるからである。
上記硬化剤としては、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。
【0052】
また、上記レジスト用樹脂層の厚さは10〜50μmが望ましい。
また、上記レジスト用樹脂層は、硬化状態であってもよいし、半硬化状態であってもよい。具体的には、例えば、後工程で露光、現像処理により、基板に形成する溝に相当する部分のレジスト用樹脂層を除去する場合には、半硬化状態であることが望ましく、レーザ処理等により、上記溝に相当する部分のレジスト用樹脂層を除去する場合には、硬化状態であってもよいし、半硬化状態であってもよい。
なお、完全に硬化した状態や、半硬化状態のレジスト用樹脂層を形成する場合、硬化処理は、例えば、70〜200℃に加熱することにより行うことが望ましい。また、段階的に加熱温度を変化させるステップ硬化を行ってもよい。
【0053】
(iii)次に、レジスト用樹脂層154の一部、すなわち、基板151に形成する溝に相当する部分を除去し、エッチングレジスト155とする(図4(c)参照)。
レジスト用樹脂層154の除去は、例えば、露光、現像処理により行うことができる。具体的には、例えば、半硬化状態のレジスト用樹脂層上にマスクを載置した後、露光処理を施し、その後、アルカリ溶液や有機溶剤等の薬液による現像処理を施す。
上記現像処理は、上記薬液中に上記レジスト用樹脂層を形成した基板を浸漬したり、上記薬液をスプレーしたりすることにより行うことができる。
また、上記マスクとしては、上記レジスト用樹脂層の除去部分に相当する部分に溝のパターンが描画されたマスクを用いることができる。
【0054】
また、レジスト用樹脂層154の除去は、レーザ処理を用いて行ってもよい。
上記レーザ処理に用いるレーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。
これらのレーザは、上記レジスト用樹脂層の除去部分の形状や、上記レジスト用樹脂層の組成等を考慮して使い分ければよい。
なお、この工程で形成するエッチングレジストの形状を調整することにより、後工程を経て形成する溝の形状を調整することができる。
【0055】
(iv)次に、エッチングレジスト155非形成部に露出したマスク層152を除去し、基板151の溝を形成する部分を露出させたマスク156を形成する(図4(d)参照)。
マスク層152の除去は、例えば、酸素プラズマや窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ処理、逆スパッタリング等のドライエッチング処理により行うことができる。具体的には、例えば、真空下または減圧下において、マスク層に酸素プラズマを照射することにより行うことができる。このようなドライエッチング処理を行うことにより、エッチングレジストに損傷や変形等を発生させることなく、選択的にレジスト非形成部分のマスク層のみを除去することができる。
【0056】
また、マスク層152の除去は、例えば、エッチング液や酸溶液に、マスク層152が形成された基板を浸漬したり、溶液中に浸漬するとともに超音波処理を施したり、エッチング液や酸溶液をマスク層にスプレーしたりすることによっても行うことができる。
具体的にどのような除去方法を選択するかは、マスク層の材質や厚さ等を考慮して適宜決定すればよく、例えば、マスク層が酸化膜からなる場合には、プラズマ処理やエッチング液による処理を選択し、マスク層が金属層からなる場合には、逆スパッタリングやエッチング液による処理を選択すればよい。
【0057】
(v)次に、上記エッチングレジスト155を剥離除去する(図4(e)参照)。
エッチングレジスト155の剥離除去は、NaOH、KOH等のアルカリ溶液、硫酸、酢酸、炭酸等の酸溶液、メタノール、エタノール等のアルコール類、アミン類、ケトン、アセトン等の有機溶剤等を用いて行うことができる。
これにより、基板151上に、溝を形成する部分に相当する部分が開口したマスク156のみが形成されることとなる。
【0058】
(f)次に、基板151に溝157を形成する(図4(f)参照)。
溝157は、例えば、基板151にマスク156を介して、エッチング液を吹き付けたり、マスク156が形成された基板151をエッチング液中に浸漬したりすることにより形成することができる。
上記エッチング液としては、例えば、NaOH、KOH等のアルカリ、硝酸、燐酸、硫酸等の酸、フッ化水素、フッ化臭素等のフッ素系化合物、ハロゲン化物、過酸化水素水、メタノール、エタノール等のアルコール類等を用いることができる。
これらのエッチング液を用いて溝を形成した場合、溝の断面の形状は、V字状や倒立台形状、矩形状、これらを組み合わせた形状等となる。
【0059】
上記エッチング液の濃度は、10〜50重量%が望ましい。
上記濃度が、10重量%未満ではエッチング処理に長時間を要することがあり、一方、50重量%を超えてもエッチング速度はほとんど変化しない。
また、上記エッチング液の温度は20〜90℃が望ましく、エッチング速度は0.5〜5.0μm/分が望ましい。
上記エッチング液の温度が20℃未満では、充分にエッチングできないことがあり、エッチング液の温度が90℃を超えてもエッチング量はほとんど変わらず、作業時の安全性が低下することとなる。
【0060】
ここで、その材質がシリコンやガリウム砒素の基板に溝を形成する場合には、KOH等のアルカリ溶液を用いたエッチング処理を行うことが望ましい。
シリコンやガリウム砒素からなる基板に、エッチング処理を行う場合、エッチング面、エッチング液の種類、および、エッチングレジスト非形成部の形状として適宜なものを選択することにより、所望の形状の溝を形成することができる。
【0061】
すなわち、KOHを含むエッチング液を用いてシリコン基板をエッチングする場合、シリコン基板の(100)面が、(111)面および(110)面に比べて優先的にエッチングされ、それぞれの結晶面のエッチング速度比がほぼ一定であるため、所望の形状の溝を形成することができる。具体的には、シリコン基板の(100)面にエッチング処理を施す場合には、断面の形状がV字状や倒立台形状の溝を形成することができ、(110)面にエッチング処理を施す場合には、断面の形状が矩形状の溝を形成することができる。
【0062】
また、KOHを含むエッチング液を用いてガリウム砒素基板をエッチングする場合には、(111)Ga面のエッチング速度が最も遅く、(111)As面のエッチング速度が最も速いことを利用することにより、所望の形状の溝を形成することができる。
【0063】
この工程で、エッチング処理を施す際には、エッチング液中に界面活性剤等を添加しておいてもよい。エッチング処理時に激しく発泡する場合には、この発泡によりエッチング面に凹凸が形成されることがあるが、界面活性剤を添加しておくことによりエッチング処理時の発泡を抑えることができるからである。
また、上記エッチング処理を超音波を印加しながら行ってもよい。超音波を印加することによっても発泡を抑えることができるからである。
【0064】
また、基板をエッチング液中に浸漬してエッチング処理を行う場合には、基板を揺動したり、エッチング液を攪拌したりしながらエッチング処理を行ってもよい。
このような(i)〜(vi)工程を経ることにより、基板に所望の形状の溝を形成することができる。
【0065】
また、この(1)の工程では、基材層上に樹脂層が形成された積層体を基板とし、この積層体の樹脂層に溝を形成してもよい。
上記基材層としては、例えば、シリコン、炭化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、セラミック、ガリウム砒素、ジルコニア、石英、ガラス等の無機材料;銅、鉄、ニッケル等の金属材料;熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂、これらの複合体等の有機材料やこれらの有機材料にガラス繊維等の補強材を含浸させたもの等からなるものが挙げられる。
【0066】
上記樹脂層としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂、および、熱硬化性樹脂のうちの一部が感光性基で置換された樹脂のうちの少なくとも一種を含む樹脂組成物等からなるものが挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0067】
また、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルホン(PPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPES)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PI)等が挙げられる。
上記感光性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂等が挙げられる。
また、上記熱硬化性樹脂のうちの一部が感光性基で置換された樹脂としては、上記熱硬化性樹脂の熱硬化基に(メタ)アクリル酸等を反応させ、感光性基を付与した樹脂等が挙げられる。
【0068】
このような基材層と樹脂層とからなる積層体に溝を形成する方法としては、例えば、露光、現像処理や、レーザ処理等を用いることができる。
具体的には、露光、現像処理を行う場合には、例えば、樹脂層上に、形成する溝に対応したパターンが描画されたマスクを載置した後、露光処理を施し、その後現像液を用いて現像処理を施すことにより樹脂層に複数の溝を一括して形成することができる。なお、露光、現像処理を行う場合、露光処理前の樹脂層は半硬化状態であること望ましく、また、現像処理後には、溝が形成された樹脂層を完全に硬化させるために、加熱処理等を施してもよい。
【0069】
また、レーザ処理を行う場合には、レーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、YAGレーザ等を用いることができる。上記レーザ処理では、樹脂層の材質を問わず溝を形成することができる。なお、レーザ処理を行う場合、レーザ処理前の樹脂層は半硬化状態であってもよいし、完全に硬化した状態であってもよい。
【0070】
また、この(1)の工程においては、基板に溝を形成するとともに、光ファイバや光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと保持するための被覆樹脂層保持部を形成することが望ましい。
上記被覆樹脂層保持部の形成方法としては特に限定されず、例えば、ダイヤモンド刃を備えた装置を用いる方法等が挙げられる。また、上記被覆樹脂層保持部の形成は、一回で行ってもよいし、二回以上に分けて行ってもよい。
【0071】
上記被覆樹脂層保持部を形成した際に、該被覆樹脂層保持部の上面は凹凸を有することがある。この場合、凹凸を平坦化するための研磨処理を行ってもよいが、光ファイバリボン等を収納した際に光ファイバリボンが大きく傾いたりするほどの凹凸でなければ、特に、研磨処理等を施すことなく、そのままにしておくことが望ましい。これは、上記被覆樹脂層保持部に接着剤を塗布した場合に、アンカー効果により基板と接着剤との密着性が向上するからである。
また、ここで被覆樹脂層保持部を形成する場合、該被覆樹脂層保持部には、保持する光ファイバリボン等の形状に追従するように、高さの異なる複数の保持面を形成してもよい。
また、基板上に、被覆樹脂層保持部に代えて、光ファイバをその周囲の被覆樹脂層ごと収納することができる凹部を形成する場合にも、ここで、基板に切削加工を施すことにより該凹部を形成すればよい。
【0072】
(2)ここでは、基板の作製とは別に、一部の被覆樹脂層が除去され、光ファイバが露出した光ファイバリボンを作製する。
ここで、除去する被覆樹脂層は、光ファイバリボンの一端部の被覆樹脂層であってよいし、光ファイバリボンの両端部以外の一部の被覆樹脂層であってもよいが、光ファイバリボンの両端部以外の一部の被覆樹脂層であることが望ましい。
このような両端部以外の一部の被覆樹脂層を除去した光ファイバリボンでは、露出した光ファイバの両端が固定されているため、より光ファイバの軸方向のバラツキが発生しにくく、後工程で、基板に収納するのに適しているからである。
【0073】
上記被覆樹脂層の除去は、例えば、ストリッパ等の被覆樹脂剥離装置を用いて機械的に除去する方法や、有機溶剤を用いて被覆樹脂層を溶解することにより化学的に除去する方法等を用いることができる。
また、レーザ光を照射することにより除去する方法を用いてもよい。
【0074】
以下、レーザ光を照射することにより被覆樹脂層を除去する方法について説明する。
上記被覆樹脂層の除去は、例えば、光ファイバリボンを銅張積層板等の支持体上に水平に固定した後、レーザ光を照射することにより行う。
【0075】
この場合、まず、光ファイバリボンの主面に垂直な一の方向からレーザ光を照射し、その後、上記光ファイバリボンの主面に垂直な一の方向と反対の方向からレーザ光を照射することが望ましい。
レーザ光を光ファイバリボンの主面に垂直な一の方向からのみ照射すると、光ファイバの影となる部分の被覆樹脂層を充分に除去することができず、この部分の被覆樹脂層を完全に除去するには、高出力のレーザ光を長時間照射しなければならないため、光ファイバ表面を傷つけるおそれが高まることとなり、また、経済的にも不利である。これに対し、上述した方法でレーザ光を照射する場合には、被覆樹脂層を、確実にかつ効率よく除去することができ、さらに、除去後の被覆樹脂層の形状、特に、被覆樹脂層の非除去部分の端面の形状を精度よく制御することができる。
【0076】
上記レーザ光の照射は、例えば、CO2レーザ、エキシマレーザ等を用いて行うことができる。
これらのなかでは、CO2レーザを用いることが望ましい。光ファイバ(クラッド)を傷付けるおそれがより少なく、所望の部分の被覆樹脂層のみを除去することができるからである。
なお、エキシマレーザを用いて石英系光ファイバの被覆樹脂層を剥離する場合にも特に大きな問題は発生せず、炭酸ガスレーザに比べて、ランニングコストが安価であるが、被覆樹脂層の剥離後、光ファイバの表面に被覆樹脂の炭化物が残るおそれがある。
【0077】
上記CO2レーザを用いてレーザ光を光ファイバリボンに照射する場合、レーザ光は、連続的に照射してもよいが、間欠的に照射(以下、パルス照射という)することが望ましい。パルス照射する場合、連続的に照射する場合に比べて、その出力を高くすることができるため、効率よく被覆樹脂層を除去することができ、また、被覆樹脂層を徐々に除去するため、その除去状態を確認しながら加工を行うことができ、光ファイバ(クラッド)を傷付けるおそれがさらに少ない。
【0078】
このようにCO2レーザを用いてレーザ光をパルス照射する場合、そのパルス幅は、10〜100μsであることが望ましい。パルス幅が10μs未満であると、被覆樹脂層を充分に除去するためにレーザ光の照射回数を増やす必要があり、あまり効率的でなく、一方、パルス幅が100μsを超えると、光ファイバ(クラッド)を傷付けるおそれがある。
【0079】
また、CO2レーザを用いてレーザ光を照射する場合、その照射条件は、被覆樹脂層の材料、厚さ等を考慮して適宜選択すればよいが、通常、その積算エネルギーは、2.0〜9.0mJ/cm2であることが望ましい。積算エネルギーが2.0mJ/cm2未満であると、被覆樹脂層を完全に除去することができない場合があり、一方、積算エネルギーが9.0mJ/cm2を超えると、光ファイバ(クラッド)を傷付けるおそれがある。
【0080】
また、レーザ光の照射回数は、被覆樹脂層の材料、厚さ、および、CO2レーザの出力等に応じて適宜選択すればよく、例えば、クラッド径が125μmで、隣合うクラッド同士の外縁部の最短距離(以下、クラッド間隔ともいう)が250μmの光ファイバリボンに、上記した範囲のパルス幅および積算エネルギーでレーザ光を照射する場合には、3〜8回程度であることが望ましい。上記照射回数が3回未満であると、被覆樹脂層を完全に除去することが困難な場合があり、一方、8回を超えると、光ファイバリボンの一の主面にレーザ光を照射した際にほとんどの被覆樹脂層が除去され、光ファイバリボンの一の主面と反対の面にレーザ光を照射する前に光ファイバがバラバラになってしまい、上記反対の面にレーザ光を照射することが困難となることがある。
【0081】
図5(a)は、光ファイバリボンの被覆樹脂層を剥離する方法の一例を模式的に示す正面図であり、(b)はその側面図である。
図5(a)および(b)に示すように、レーザ光を照射することにより被覆樹脂層を剥離する場合、レーザ照射装置20を光ファイバリボン110の一の主面の上方に配置し、レーザ照射装置20から光ファイバリボン110に向かって、光ファイバリボン110の一の主面に垂直なレーザ光21を照射して、このレーザ光21を照射した部分の被覆樹脂層を除去しながら、光ファイバリボン110をその幅方向に移動させる。
【0082】
この場合、初めに光ファイバリボン110の厚さの1/2程度の被覆樹脂層を除去した後、光ファイバリボン110を反転してレーザ光21を照射し、残りの被覆樹脂層を除去することが望ましい。
初めに除去する被覆樹脂層が多すぎると、その時点で、それぞれの光ファイバ115がバラバラになってしまい、次に、光ファイバリボン110を反転した後、再度、レーザ光21を照射する際に、レーザ光21を正確に照射することが困難となることがあり、また、光ファイバ115に直接照射されるレーザ光の照射量も多くなり、光ファイバ115を傷付けるおそれがより高まることとなるからである。
【0083】
また、光ファイバリボンの幅方向への移動は、光ファイバリボン110の厚さの1/4程度の被覆樹脂層を除去するごとに、レーザ照射エリアの半径分行うことが望ましい。
光ファイバリボンをこのように移動させることで、初めにレーザ光21を照射した領域と、次にレーザ光21を照射した領域との重なっている領域の被覆樹脂層が、光ファイバリボン110の厚さの1/2程度除去されることとなり、かつ、このような厚さの被覆樹脂層を、光ファイバリボン110の幅方向の全体に渡って確実に除去することができるからである。
なお、図5(a)における右端の被覆樹脂層(初めにレーザ光を照射する部分)は、レーザ光の照射エリアの半径分だけ照射し、光ファイバリボンの厚さの1/4程度の被覆樹脂層を除去しておけばよい。
【0084】
また、上述した方法で光ファイバリボンの厚さの1/2程度の被覆樹脂層を幅方向に除去した後、光ファイバリボン110をその軸線方向にズラし、その厚さの1/2程度の被覆樹脂層を幅方向に除去する工程を繰り返すことで、レーザ光21の照射径よりも広い領域の被覆樹脂層を除去することができる。その後、光ファイバリボン110を反転した後、同様に残りの被覆樹脂層を除去することで、レーザ光21の照射径よりも広い領域の被覆樹脂層を完全に除去することができる。
【0085】
この場合、先に除去した被覆樹脂層領域と、後のレーザ光の照射領域とが重ならないように、レーザ照射領域を制御することが望ましい。先に除去した被覆樹脂層領域と、後のレーザ照射領域とが重なると、この重なった部分の被覆樹脂層が除去されすぎ、光ファイバがバラバラになってしまうことがあるからである。
また、レーザ照射領域の制御は、光ファイバリボンの位置合わせによって行ってもよいし、マスクやレンズ等を介してレーザ光を照射することによって行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。
【0086】
なお、ここでは、光ファイバリボンを移動させながら被覆樹脂層を除去する方法について説明したが、レーザ照射装置を移動させながら被覆樹脂層を除去してもよい。
また、被覆樹脂層を除去する領域の大きさや、レーザ光の照射径等によっては、被覆樹脂層を除去する全領域に一度にレーザ光を照射してもよい。
【0087】
(3)次に、上記(1)の工程で作製した基板の溝に、光ファイバリボンの露出した光ファイバを収納した後、該光ファイバを接着剤を介して基板に固定する。ここで、その一端部の被覆樹脂層が除去された光ファイバリボンを収納する場合、それぞれの光ファイバの端面と基板の側面とが揃うように収納してもよいし、それぞれの光ファイバが基板の側面から一定長さだけ突出するように収納してもよい。
【0088】
また、ここで、その両端部以外の一部の被覆樹脂層が除去された光ファイバリボンを収納した場合には、光ファイバリボンを収納した後、基板に収納しなかった光ファイバリボンの一端部を切断除去することとなる。
なお、光ファイバリボンの一端部を切断除去する場合、それぞれの光ファイバの端面と基板の側面とが揃うように切断除去してもよいし、それぞれの光ファイバが基板の側面から一定長さだけ突出するように切断除去してもよい。
上記光ファイバリボンの切断除去は、カッター等を用いた切削加工により行うことができる。また、機械研磨により行ってもよい。
【0089】
また、上記(1)の工程で、光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと保持するための被覆樹脂層保持部を形成した場合には、この工程で、溝に光ファイバを収納するとともに、該被覆樹脂層保持部で光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと保持する。
【0090】
なお、上記(1)の工程において、上記(i)〜(vi)の工程を経ることにより溝を形成した場合には、基板上にマスクが形成されているため、本工程で光ファイバを収納する部分は、厳密には、マスク非形成部分と基板に設けた溝とを合わせた部分であるが、本明細書においては、基板に溝を形成した後には、この両者を合わせた部分を溝ということとする。
【0091】
このように、光ファイバリボンの露出した光ファイバを溝に収納した後、該光ファイバを固定する。具体的には、例えば、溝の端部から未硬化の接着剤を流し込み、その後、該接着剤を硬化させることにより光ファイバを固定する。
また、基板に被覆樹脂層保持部を形成し、該被覆樹脂層保持部で光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと保持する場合には、該被覆樹脂層保持部の周囲にも未硬化の接着剤を塗布し、被覆樹脂層を固定することが望ましい。
【0092】
本発明の光ファイバアレイでは、上述したように、接着剤としてエポキシ系、または、アクリレート系の紫外線硬化型接着剤を用いている。そのため、基板の側面から光ファイバと溝との間隙に未硬化の接着剤を流し込んだ場合、光ファイバと溝との間隙が未硬化の接着剤で確実に充填されることとなる。
特に、上述した紫外線硬化型樹脂組成物、すなわち、40〜50重量%のアクリレートオリゴマー、1〜10重量%のビニルエステル樹脂、45〜55重量%のアクリレート系モノマー、および、1〜10重量%の重合開始剤を含む樹脂組成物を用いることにより、上述した効果が、より確実に得られることとなる。
【0093】
また、ここでは、未硬化の接着剤に紫外線を照射することにより、接着剤を介して光ファイバを固定する。この場合、照射する紫外線の強度は特に限定されず、未硬化の接着剤の組成等を考慮して適宜選択すればよい。
また、紫外線を照射した後には、必要に応じて、加熱処理を施してもよい。
【0094】
また、上記光ファイバリボンの露出した光ファイバを収納、固定した後、少なくとも露出した光ファイバのうちの溝に収納した部分を覆う蓋部を形成することが望ましい。
上記蓋部の形状は、上述したように板状体であってもよいし、上記基板と対向する面に、それぞれの光ファイバを別々に収納する溝が形成された形状であってもよいが、上記基板と対向する面に、溝内に収納されなかった光ファイバを一括して収納する凹部が形成された形状であることが望ましい。光ファイバを一括して収納するための凹部は、その形成が容易であり、また、上記凹部に収納された光ファイバ同士の間には空隙が存在するため、光ファイバの相対的な位置ズレが発生しにくく、さらに、該空隙内には、接着剤等を充填しやすい。
【0095】
また、光ファイバアレイを製造する際には、通常、基板上に蓋部を取り付けた後、この蓋部の端面と光ファイバや基板の端面とを揃えるために研磨処理を施すこととなるが、ここで、蓋部の形状が、光ファイバを一括して収納する凹部を有する形状である場合には、光ファイバアレイの側面付近のみが大きく削り取られたり、光ファイバの一部が斜めに研磨されたりすることがなく、光ファイバアレイの端面を所望の形状に研磨しやすい。
【0096】
また、上記蓋部に光ファイバを一括して収納するための凹部が形成されている場合、該凹部の形状としては、ほぼ直角に交わる平面のみを組み合わせた形状、曲面により形成された形状、平面と曲面とを組み合わせた形状等が挙げられる。
【0097】
上記蓋部の材質としては、例えば、上記基板の材質と同様のもの等が挙げられ、それらのなかでもガラスまたは石英が望ましい。ガラスや石英からなる蓋部は、紫外線を透過させるため、紫外線硬化型接着剤と組み合わせて用いるのに適している。なお、上記蓋部の材質と上記基板の材質とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、上記凹部の形成は、上記蓋部が無機材料や金属材料からなる場合は、これらからなる板状体に切削加工を施すことにより行えばよく、上記蓋部が有機材料からなる場合には、該有機材料を板状体に成形した後、露光現像処理やレーザ処理を施したり、または、完全に硬化した有機材料からなる板状体に切削加工を施すことにより行えばよい。
【0098】
また、上記蓋部の大きさは、基板の全面を覆う大きさ(溝を形成した領域および被覆樹脂層保持部を一体的に覆う大きさ)であってもよい。
また、基板上に、基板の溝を形成した領域のみを覆う形状の蓋部とともに、被覆樹脂層保持部のみを覆う形状の蓋部が別途取り付けられていてもよい。
【0099】
このような蓋部を形成した場合には、該蓋部と光ファイバとの間隙にも、未硬化の接着剤を流し込み、接着剤を硬化させることにより蓋部と光ファイバとを固定することが望ましい。
また、光ファイバを基板の溝に収納した後、光ファイバを溝に固定する前に、先に蓋部の形成を行い、その後、溝と光ファイバとの間隙、および、凹部と光ファイバとの間隙に同時に接着剤を流し込むことが望ましい。接着剤を塗布した後、この接着剤上に蓋部を形成した場合、接着剤と蓋部との間に空気が入りこみやすくなるからである。
【0100】
また、この(3)の工程において、その両端部以外の一部の被覆樹脂層が除去された光ファイバリボンを収納し、該光ファイバリボンの基板に収納されなかった部分を切断除去する場合、この切断除去は蓋部を形成した後に行ってもよい。
【0101】
また、その一端部が露出した光ファイバリボンを収納した後や、両端部以外の一部の露出した光ファイバの収納と、光ファイバリボンの一端部の切断除去とを行った後には、光ファイバの端面に研磨処理を施すことが望ましい。ここで、研磨処理を施す場合には、光ファイバ、基板および蓋部の端面に傾斜を持たすように研磨処理を施すことが望ましい。光信号伝送時のもどり光の発生を抑制することができるからである。
また、この場合、光ファイバの端面に研磨処理を施すとともに、基板や蓋部の側面に研磨処理を施してもよい。
【0102】
このような工程を経ることにより、本発明の光ファイバアレイを製造することができる。
なお、ここでは、光ファイバリボンを用いて光ファイバアレイを製造する方法について説明したが、本発明の光ファイバアレイは、単心の光ファイバを用いたり、積層光ファイバリボンを用いても製造することができる。
【0103】
具体的には、単心の光ファイバを用いて光ファイバアレイを製造する場合には、例えば、一端部の被覆樹脂層を剥離した複数本の光ファイバを整列器を用いて並列に整列させた後、上記(3)の工程で、整列器で保持したまま、基板に収納し、その後、上記した方法と同様の方法を用いて光ファイバの固定や蓋部の形成等を行うことにより光ファイバアレイを製造することができる。
【0104】
また、積層光ファイバリボンを用いて光ファイバアレイを製造する場合には、例えば、図6に示すような、その一部の被覆樹脂層が除去された積層光ファイバリボン300を作製し、その後、この積層光ファイバリボンを基板に収納、固定させることにより光ファイバアレイを製造することができる。
図6は、積層光ファイバリボンの一実施形態を模式的に示す部分斜視図である。
【0105】
図6に示すように、積層光ファイバリボン300は、その両端部以外の一部の光ファイバ345aが露出した第二の光ファイバリボン(下段の光ファイバリボン)340の露出した光ファイバ345aの間に、その一端部の光ファイバ335aが露出した第一の光ファイバリボン(上段の光ファイバリボン)330の露出した光ファイバ335aが配置されるように、第一の光ファイバリボン330と第二の光ファイバリボン340とが積み重ねられている。
【0106】
また、積層光ファイバリボン300では、露出した光ファイバ335a、345aが同一の高さに配置されるように、露出した光ファイバ335a、345aは、それぞれが、その一部で曲げられている。このように、光ファイバ335aおよび光ファイバ345aを同一の高さに配置することより、基板の溝に収納するのに適した形状となる。
【0107】
なお、積層光ファイバリボン300では、第一の光ファイバリボン330の露出した光ファイバ335a、および、第二の光ファイバリボン340の露出した光ファイバ345aのそれぞれの一部が曲げられているが、両者の光ファイバを同一の高さに配置することができるのであれば、第一の光ファイバリボンの露出した光ファイバのみが曲げられていてもよいし、第二の光ファイバリボンの露出した光ファイバのみが曲げられていてもよい。
【0108】
また、積層光ファイバリボン300において、第一の光ファイバリボン330と第二の光ファイバリボンとは、接着剤を介して固定されていることが望ましい。なお、図6に示す積層光ファイバリボン300においては、8本の光ファイバが同一の高さに配置されているが、積層光ファイバリボンにおける光ファイバの本数は8本に限定されず、7本以下であってもよいし、9本以上であってもよい。また、上記第一および第二の光ファイバリボンのそれぞれの光ファイバの本数は、図6に示す光ファイバリボンのように同数か、第一の光ファイバリボンのほうが1本多いか、または、第二の光ファイバリボンのほうが1本多いことが望ましい。このような場合、光ファイバを最も高密度で配列させることができるからである。
【0109】
上記積層光ファイバリボンの作製は、例えば、まず、光ファイバリボンの一端部の被覆樹脂層を、上述したような、工具を用いる方法、有機溶剤で溶解させる方法、レーザ光を照射する方法等を用いて除去することにより第一の光ファイバリボンを作製し、これとは別に、上記と同様の被覆樹脂層の除去方法を用いて、光ファイバリボンの両端部以外の一部の被覆樹脂層を除去することにより第二の光ファイバリボンを作製し、次に、光ファイバの一部を曲げた後、両者の光ファイバが、交互に等間隔で配置されるように、第一および第二の光ファイバリボンを接着剤を介して積み重ねることにより行うことができる。
【0110】
このような積層光ファイバリボンを基板に収納、固定させる方法としては、上記(3)の工程で用いた方法と同様の方法を用いることができる。なお、上記積層光ファイバリボンを用いて光ファイバアレイを製造する場合も、上記基板に積層光ファイバリボンを収納、固定した後、第二の光ファイバリボンの一端部の切断除去と光ファイバの端面等の研磨処理とを行う。
【0111】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0112】
(実施例1)
A.一部の被覆樹脂層が除去された光ファイバリボンの作製
直径250μmの光ファイバ115が、クラッド間隔250μmで8本並列に配置され、該光ファイバの周囲にアクリレート系紫外線硬化型樹脂からなる被覆樹脂層(一次被覆層113および二次被覆層114)が被覆された光ファイバリボン(住友電気工業社製)を準備し、この光ファイバリボンの一端部から5〜50mmのところの部分の被覆樹脂層(一次被覆層および二次被覆層)を下記の方法で剥離した(図7(a)参照)。
【0113】
すなわち、まず、上記光ファイバリボンを銅張積層板上に固定した後、パルス発振型CO2レーザ照射装置(三菱電機社製)を用いて以下の条件でレーザ光を照射し、その後、レーザ光の照射位置をその照射径の半径分(200μm)ズラし、再度、下記の条件でレーザ光の照射を行う工程を繰り返して、被覆樹脂層をその厚さの約1/2除去をし、次に、光ファイバリボンを反転させた後、上記と同様にして残りの約1/2の被覆樹脂層を除去して光ファイバを露出させた。なお、図7に示した光ファイバリボン110Aは、4本の光ファイバが並列に配置されているが、この図は模式図であり、実際には、上述したように8本の光ファイバが並列に配置された光ファイバリボンを用いた。
【0114】
レーザ照射条件
レーザマスク径 φ5.1mm
レンズ位置 190mm
パルス幅 15μs
レーザ光の照射径 φ400μm
ショット回数 5回
積算エネルギー 3.2mJ/cm2
【0115】
B.蓋部の作製
石英ガラスからなる基板に、ダイヤモンドカッターを用いた切削加工を施すことにより、露出した光ファイバを収納するための凹部161を形成し、蓋部160とした(図8(a)参照)。なお、該凹部は、その断面の形状が矩形状である。
【0116】
C.光ファイバアレイの作製
(1)その表面に研磨処理を施した厚さ0.7mmのシリコン基板151を出発材料とし、このシリコン基板151上に下記の方法によりマスク層152を形成した(図4(a)参照)。
すなわち、まず、シリコン基板151の表面に熱酸化炉中で、厚さ0.04μmのSiO2膜152aを形成し、次に、このSiO2膜上に減圧CVD法を用いて、厚さ0.1μmのSi3N4膜152bを形成することにより、SiO2膜152aとSi3N4膜152bとの2層からなるマスク層152を形成した。
【0117】
(2)次に、マスク層52上に、厚さ25μmのレジスト用樹脂フィルムを貼り付けることによりレジスト用樹脂層154を形成した(図4(b)参照)。
【0118】
(3)次に、上記レジスト用樹脂層154上に溝パターンが描画されたマスクを載置し、800mJ/cm2で露光し、その後、アクリル溶液で現像処理することにより、マスク層上にエッチングレジスト155を形成した(図4(c)参照)。
【0119】
(4)次に、上記エッチングレジスト155非形成部に露出したマスク層を下記の方法により除去し、基板151の一部を露出させたマスク156を形成した(図4(d)参照)。
すなわち、まず、露出したSi3N4膜を、酸素プラズマを用いたドライエッチング処理により除去することによりSiO2膜を露出させ、さらに、このSiO2膜をHF系のエッチング液を用いたウェットエッチング処理により除去し、シリコン基板を露出させた。
【0120】
(5)次に、10重量%のNaOH溶液を用いてエッチングレジストを剥離除去した(図4(e)参照)。これにより、シリコン基板151上には、溝を形成する部分に相当する部分が開口したマスク156のみが形成されていることとなった。
【0121】
(6)次に、マスク156が形成されたシリコン基板151を、KOH濃度25重量%、液温度78℃のエッチング液(KOH:100g、H2O:300g)中に浸漬することにより、深さ90μmのV溝を8本形成した(図4(f)参照)。
その後、基板151の一部に光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと保持するための被覆樹脂層保持部158(図7(a)参照)を、ダイヤモンドカッターを用いた切削加工を施すことにより形成した。なお、図7に示した基板には、溝は4本しか形成されていないが、この図は模式図であり、実際には、上述したように、基板上に8本の溝を形成した。
【0122】
(7)次に、上記Aで作製した光ファイバリボン110Aの光ファイバ115の露出した部分を、V溝157に載置し(図7(a)、(b)参照)、さらに、上記Bで作製した蓋部160を基板151上に接着剤(ダイキン工業社製、UV−3000)を介して取り付けた(図8(a)参照)。なお、上記接着剤は、蓋部の外縁部に予め塗布しておいた。
さらに、溝157と光ファイバ115との間隙、および、蓋部160と光ファイバ115との間隙に、未硬化の接着剤(ダイキン工業社製、UV−3000)を流し込んだ。また、被覆樹脂層保持部158に載置した被覆樹脂層の周囲にも上記未硬化の接着剤(UV−3000)を塗布した。
【0123】
次に、蓋部160を設けた基板151の上部から、高圧水銀ランプを用いて、10J/cm2の紫外線を照射し、その後、60℃で1時間加熱することにより、接着剤を完全に硬化させた(図8(b)参照)。
【0124】
(8)次に、光ファイバリボン110Aの一端部の基板に収納しなかった被覆樹脂層114aと、この被覆樹脂層に覆われた光ファイバとをダイヤモンドカッターにより切断除去し、さらに、光ファイバの端面と、基板および蓋部の側面とが揃うように研磨処理を施し、光ファイバアレイ101を製造した(図2(a)参照)。なお、上記研磨処理は、光ファイバ、基板および蓋部の端面が基板の底面に対して8°の傾斜を持つように行った。
【0125】
(実施例2)
実施例1のBの工程(蓋部の作製)において、硼珪酸ガラス(パイレックス(R))からなる基板に、ダイヤモンドカッターを用いた切削加工を施すことにより、深さの異なる、露出した光ファイバを収納するための凹部171と、光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと収納するための凹部172とを有する蓋部170を作製し(図9(a)参照)、実施例1のCの(7)の工程において、この蓋部170を基板に取り付けた以外は、実施例1と同様にして光ファイバアレイ102を製造した(図9(b)参照)。
【0126】
(実施例3)
A.一部の被覆樹脂層が除去された積層光ファイバリボンの作製
直径250μmの光ファイバが、クラッド間隔250μmで8本並列に配置され、該光ファイバの周囲にアクリレート系紫外線硬化型樹脂からなる被覆樹脂層(一次被覆層および二次被覆層)が被覆された光ファイバリボン(住友電気工業社製)を2本準備し、それぞれの光ファイバリボンに下記(i)および(ii)の加工を施した。
【0127】
(i)まず、光ファイバの一端部から30mmまでの部分の被覆樹脂層(一次被覆層および二次被覆層)を、実施例1のAの工程と同様の条件で除去することにより光ファイバを露出させた。
【0128】
(ii)光ファイバの一端部から5〜50mmのところの部分の被覆樹脂層(一次被覆層および二次被覆層)を、実施例1のAの工程と同様の条件で除去することにより光ファイバを露出させた。
【0129】
(2)次に、上記(ii)の処理を施した第二の光ファイバリボン340の上に、上記(i)の処理を施した第一の光ファイバリボン330を積み重ねた。さらに、両者の光ファイバの露出した部分335a、345aの高さが同一となるように、それぞれの光ファイバの一部を曲げ、積層光ファイバリボン300とした(図6参照)。
【0130】
なお、この工程で、第一の光ファイバリボン330を第二の光ファイバリボン340上に積み重ねる際には、光ファイバの一部を曲げた後、両者の光ファイバ335、345が、交互に等間隔で配置されるように積み重ねた。
また、この工程では、第二の光ファイバリボン340上に第一の光ファイバリボン330を積み重ねる前に、予め、第二の光ファイバリボン340の二次被覆樹脂の上面の一部に未硬化の接着剤(図示せず)を塗布しておき、該接着剤を介して第二の光ファイバリボン340上に第一の光ファイバリボン330を積み重ね、その後、上記接着剤を硬化させることにより、両者を固定した。
【0131】
B.蓋部の作製
凹部の大きさを、積層光ファイバリボンの溝に収納した光ファイバの一部を収納することができる大きさにした以外は、実施例1のBと同様にして蓋部を形成した。
【0132】
C.光ファイバアレイの作製
(1)形成する溝の本数を16本とした以外は、実施例1のCの(1)〜(6)の工程と同様にして、基板にV溝を形成し、さらに、基板の一部に積層光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと保持するための被覆樹脂層保持部を、ダイヤモンドカッターを用いた切削加工を施すことにより形成した。
【0133】
(2)次に、上記Aで作製した積層光ファイバリボンの露出した光ファイバを、V溝に載置し、さらに、上記Bで作製した蓋部を基板上に接着剤(ダイキン工業社製、UV−3000)を介して取り付けた。なお、上記接着剤は、蓋部の外縁部に予め塗布しておいた。ここで、蓋部は、基板の溝形成面に取り付けられていることとなる。
さらに、溝と光ファイバとの間隙、および、蓋部と光ファイバとの間隙に、未硬化の接着剤(ダイキン工業社製、UV−3000)を流し込んだ。また、被覆樹脂層保持部に載置した被覆樹脂層の周囲にも、上記未硬化の接着剤(UV−3000)を塗布した。
【0134】
次に、蓋部を設けた基板の上部から、高圧水銀ランプを用いて、10J/cm2の紫外線を照射し、その後、60℃で1時間加熱することにより、接着剤を完全に硬化させた。
【0135】
(3)次に、積層光ファイバリボンの一端部の基板に収納しなかった被覆樹脂層と、この被覆樹脂層に覆われた光ファイバとをダイヤモンドカッターにより切断除去し、さらに、光ファイバの端面と、基板および蓋部の側面とが揃うように研磨処理を施し、光ファイバアレイを製造した。上記研磨処理は、光ファイバ、基板および蓋部の端面が基板の底面に対して8°の傾斜を持つように行った。
【0136】
(実施例4)
蓋部を形成する際に、深さの異なる、露出した光ファイバを収納するための凹部と、光ファイバリボンを被覆樹脂層ごと収納するための凹部を有する蓋部を形成した以外は実施例2と同様にして蓋部を形成し、この蓋部を用いて、実施例3のCの(2)の工程を行った以外は、実施例3と同様にして光ファイバアレイを製造した。
【0137】
実施例1〜4で得た光ファイバアレイについて、光ファイバアレイ側の光ファイバの端面に検出器を載置し、光ファイバの他の端面から光発光素子を用いて光を導入した際の光の検出位置から、光ファイバの収納位置の設計からのズレを算出することにより光ファイバの収納精度を評価した。
また、光ファイバアレイを上方から20Paの押圧力で20分間押圧した後、上記と同様にして光ファイバの収納精度を測定した。
【0138】
その結果、実施例1〜4の光ファイバアレイにおいて、光ファイバの収納位置の設計からのズレは、押圧前、押圧後ともに5%以下であり、光ファイバは高精度で所定の位置に収納されていた。
さらに、実施例1〜4の光ファイバアレイを8個または16個の受光素子を配設した受光装置に接続し、結合損失を測定したところ、その結合損失は低く、製品として要求される品質を充分に満足していた。
【0139】
さらに、上記収納精度および上記結合損失の測定後、光ファイバアレイ分解したところ、溝と光ファイバとの間隙には、確実に接着剤が充填されていた。
【0140】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ファイバアレイは、上述した構成からなるため、基板に形成された溝に紫外線硬化型接着剤を介して光ファイバが確実に収納されており、該光ファイバアレイを光学素子に接続する際や、該光ファイバアレイに外部から力が加わった際にも、光ファイバの位置ズレが発生することがなく、正確に光信号を伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の光ファイバアレイの一例を模式的に示す部分斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)は、蓋部が形成された本発明の光ファイバアレイの一例を模式的に示す部分斜視図であり、(b)は、光ファイバアレイに取り付けた蓋部のみを示す斜視図であり、(c)は、(a)のA−A線断面図である。
【図3】積層光ファイバリボンを用いた本発明の光ファイバアレイの一例を模式的に示す部分斜視図である。
【図4】(a)〜(f)は、基板に溝を形成する方法の一例を示す断面図である。
【図5】(a)は、光ファイバリボンの被覆樹脂層を剥離する方法の一例を模式的に示す正面図であり、(b)はその側面図である。
【図6】積層光ファイバリボンの一実施形態を模式的に示す部分斜視図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明の光ファイバアレイの製造工程の一部を模式的に示す斜視図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の光ファイバアレイの製造工程の一部を模式的に示す斜視図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明の光ファイバアレイの製造工程の一部を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
135、235、245 光ファイバ
151、251 基板
157、257 溝
160、170 蓋部
100、200 光ファイバアレイ
110 光ファイバリボン
210 積層光ファイバリボン
Claims (5)
- 基板の上面に複数の溝が形成され、前記溝に、接着剤を介して光ファイバが収納された光ファイバアレイであって、
前記接着剤は、エポキシ系またはアクリレート系の紫外線硬化型接着剤であり、
前記紫外線硬化型接着剤は、40〜50重量%のアクリレートオリゴマー、1〜10重量%のビニルエステル樹脂、45〜55重量%のアクリレート系モノマー、および、1〜10重量%の重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物であり、
前記紫外線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度は、100〜3000mPa・sであり、
前記紫外線硬化型樹脂組成物において、前記アクリレートオリゴマー及び前記アクリレート系モノマーは、その一部がフッ素化されていることを特徴とする光ファイバアレイ。 - 前記基板上の少なくとも一部に、接着剤を介して前記光ファイバを覆う蓋部が取り付けられており、
前記接着剤が、エポキシ系またはアクリレート系の紫外線硬化型接着剤である請求項1に記載の光ファイバアレイ。 - 前記蓋部には、前記光ファイバのうち前記溝に収納されなかった部分を一括して収納する凹部が形成されている請求項2に記載の光ファイバアレイ。
- 前記紫外線硬化型樹脂組成物は、樹脂粒子、無機粒子、金属粒子、光沢剤、および、反応安定剤の少なくとも1つを含む請求項1、2または3に記載の光ファイバアレイ。
- 前記基板の上面には、前記光ファイバの周囲を被覆する被覆樹脂層を保持するための被覆樹脂層保持部がさらに形成されており、
前記被覆樹脂層保持部の上面は、前記溝が形成されている溝形成面よりも低くなっており、
前記被覆樹脂層保持部により、複数の光ファイバリボンが2段に積み重ねられた積層光ファイバリボンが被覆樹脂層ごと保持されており、
前記複数の溝には、下段の光ファイバリボンの露出した光ファイバと上段の光ファイバリボンの露出した光ファイバとが交互に配置されている請求項1、2、3または4に記載の光ファイバアレイ。
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