JP4584981B2 - 気管支炎症疾患の処置および予防のためのトリオキソピリミジンの使用 - Google Patents

気管支炎症疾患の処置および予防のためのトリオキソピリミジンの使用 Download PDF

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Description

本発明は、気管支炎症疾患の処置および予防のためのトリオキソピリミジン化合物の使用に関するものである。
序論
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、細胞外マトリックス(ECM)および基底膜を分解できる、亜鉛およびカルシウム依存プロテアーゼのファミリーである(Egeblad, M., and Werb, Z., Nat. Rev. Cancer 2 (2002) 161-174;Overall, C.M., and Lopez-Otin, C., Nat. Rev. Cancer 2 (2002) 657-672)。これらは、胚の発生および成長(Holmbeck, K.ら、Cell 99 (1999) 81-92;Vu, T.H.ら、Cell 93 (1998) 411-422)ならびに組織のリモデリングおよび修復(Shapiro, S.D., Curr. Opin. Cell Biol. 10 (1998) 602-608;Lund, L.R.ら、EMBO J. 18 (1999) 4645-4656)において中心的役割を有すると考えられる。故にMMPの過剰または不適当な発現は、腫瘍の進行(Egeblad, M., and Werb, Z., Nat. Rev. Cancer 2 (2002) 161-174;Overall, C.M., and Lopez-Otin, C., Nat. Rev. Cancer 2 (2002) 657-672)および動脈瘤の形成(Carmeliet, P.ら、Nat. Genet. 17 (1997) 439-444)を包含する多くの組織破壊プロセスの病因に寄与し得る。MMPの作用はECM分解に限定されるものでは決してない(Chang, C. and Werb, D., Trends Cell Biol. 11 (2001) S37-43)。ECM蛋白によって捕促されたペプチド成長因子は、MMP−9により分解されると利用可能となる(Manes, S.ら、J. Biol. Chem. 274 (1999) 6935-6945)。MMPはVEGFのバイオアベイラビリティーを増大させ得る(Bergers, G.ら、Nat. Cell Biol. 2 (2000) 737-744)のみならず、プラスミノーゲンの開裂によってアンギオスタチンのような血管新生インヒビターを作り出す(Dong, Z.ら、 Cell 88 (1997) 801-810)。
天然に存在するメタロプロテアーゼの組織インヒビター(TIMP)による、または低分子量インヒビターによる、MMPの阻害は、動物モデルにおいて輝かしい抗腫瘍および抗転移効果をもたらした(Brown, P.D., Med. Oncol. 14 (1997) 1-10)。MMPの低分子量インヒビターの殆どは、ヒドロキサム酸化合物のクラスから誘導され、MMPを広汎に阻害し、腫瘍浸潤、転移の伝播、および血管新生における重要なMMPであるMMP−2およびMMP−9に選択的ではない。しかしながら、他の構造クラスのMMP阻害分子であるトリオキソピリミジン類が、例えば国際公開公報第97/23465号および国際公開公報第01/25217号に記載されている。このクラスの化合物は、MMP−2、MMP−9に対して殆ど限定的な特異性を持ち、極めて強力且つ非常に選択的である一方で、MMPプロテアーゼファミリーの他の多くのメンバーに対してはそうでない。
幅広い基質特異性を持つ幾つかのMMPインヒビター、主にヒドロキサム酸物質クラスは、抗腫瘍処置のための臨床試験が過去に行われ、一部は今なお実施中である。これらのインヒビターについての公表されている臨床結果は全て、臨床的有効性が殆どまたは全くないという、期待はずれのものであった(Fletcher, L., Nat. Biotechnol. 18 (2000) 1138-1139)。診療所におけるこの有効性欠如の理由は、広範に作用するこれらのインヒビターに随伴する副作用のため、抗腫瘍または抗転移活性に関して充分に高い用量が患者に投与され得なかったという事実である可能性が高い。これらの、用量を限定する副作用は、主として関節痛および筋肉痛であった(Drummond, A.H.ら、Ann. N.Y. Acad. Sci. 878 (1999) 228-235)。この問題を回避する可能性のある方法として、MMPインヒビターと昔からの細胞増殖抑制/細胞毒性化合物の組み合わせを動物実験で評価した。実際にこれらの実験では、細胞増殖抑制/細胞毒性薬物と組み合わせたMMPインヒビターが、高い腫瘍阻害性を示した(Giavazzi, R.ら、Clin. Cancer Res. 4 (1998) 985-992)。さらに、国際特許出願第PCT/EP02/04744号は、トリオキソピリミジンに基づくゼラチナーゼインヒビターおよび細胞毒性/細胞増殖抑制化合物、例えばシスプラチン、パクリタキセル、ゲンシタビンまたはエトポシドの組み合わせを示している。
気管支炎症疾患を防止または阻害する化合物を確認するための数多くの試みがなされてきた。吸入する合成グルココルチコステロイドは気管支喘息の処置に広く使用されており、極めて有効な一次治療を提供している。しかしながら、これらの薬物に伴う望ましくない様々な副作用およびしばしば複雑な投薬計画は、患者のコンプライアンスの低下をもたらしている。非活性代謝産物ソフトステロイドであるエタボン酸ロテプレドノールが、気道炎症に及ぼす効果について臨床試験で調査されている(Szelenyi, I.ら、Drugs Today 36 (2000) 313-320)。プロドラッグのソフトステロイドであるシクレソニドは、喘息患者において一日一回の製剤で副作用無しに有効性を表し、喘息および慢性閉塞性肺疾患の両者の処置のために開発中である(Rohatagi, S.ら、J. Clin. Pharmacol. 43 (2003) 365-378)。
故に、気管支炎症疾患の処置または予防に使用できる非常に強力な物質に対する必要性が存在する。
発明の説明
驚くべき事に、MMP−2、MMP−9およびMMP−14に対して極めて選択的なトリオキソピリミジン型MMPインヒビターが気管支炎症疾患の処置または予防に有用であることが判明した。
よって本発明は、気管支炎症疾患の処置を必要とする宿主哺乳動物において当該疾患の処置又は予防のための、
a)MMP−2、MMP−9およびMMP−14についてのIC50値が各々5μM未満であり;
b)MMP−1:MMP−2、MMP−1:MMP−9、MMP−1:MMP−14についてのIC50値の比が100より大であり;そして、
c)MMP−3:MMP−2、MMP−3:MMP−9、MMP−3:MMP−14についてのIC50値の比が10より大である、
として定義されるMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−9およびMMP−14に対する阻害活性を有するトリオキソピリミジン化合物の使用を提供する。
IC50値はMMP酵素活性のためのインビトロアッセイによって測定する。このようなアッセイは、Stack, M.S., and Gray, R.D., J. Biol. Chem. 264 (1989) 4277-4281に記載されている。このアッセイは、ジニトロフェノール基質に対するMMP酵素活性の測定およびMMPによる開裂後の基質の蛍光測定に基づいている。
本発明はさらに、気管支炎症疾患に罹患している患者において当該疾患を処置する医薬を製造するための、前記トリオキソピリミジン化合物の使用を提供する。
マトリックスメタロプロテイナーゼは当技術分野で周知であり、例えばEC番号により定義されている(MMP−1 EC3.4.24.7;MMP−2 EC3.4.24.24;MMP−3 EC3.4.24.17、MMP−9 EC3.4.24.35、MMP−14 EC3.4.24)。
本発明にとって有用なトリオキソピリミジンは周知の構造クラスの化合物である。このような化合物は例えば、米国特許第6242455号および6110924号;国際公開公報第97/23465号、国際公開公報第98/58915号、国際公開公報第01/25217号(これらは引用により本明細書の一部とする)、ならびにGrams, F.ら、Biol. Chem. 382 (2001) 1277-1285に記載されており、MMP−2、MMP−9、およびMMP−14に対して有効且つ極めて選択的である。
本発明によれば、以下の化合物が特に好ましい:
5−ビフェニル−4−イル−5−[4−(4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]ピリミジン−2,4,6−トリオン(化合物I)、
5−(4−フェノキシ−フェニル)−5−(4−ピリミジン−2−イル−ピペラジン−1−イル)−ピリミジン−2,4,6−トリオン(化合物II)、
5−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−フェニル]−5−(4−ピリミジン−2−イル−ピペラジン−1−イル)−ピリミジン−2,4,6−トリオン(化合物III)、
5−[4−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−フェニル]−5−(4−ピリミジン−2−イル−ピペラジン−1−イル)−ピリミジン−2,4,6−トリオン(化合物IV)、
5−[4−(4−ブロモ−フェノキシ)−フェニル]−5−(4−ピリミジン−2−イル−ピペラジン−1−イル)−ピリミジン−2,4,6−トリオン(化合物V)。
本発明によれば、このトリオキソピリミジン型インヒビターは、前記疾患に罹患し、係る治療を必要とする患者に数ヶ月または数年(特に予防の場合)投与せねばならない。このトリオキソピリミジン化合物は、マイクロ〜ナノモル濃度の間の範囲の非毒性用量を好ましくはスプレーとして投与する。
本発明は、気管支炎症疾患、好ましくは喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置を必要とする宿主哺乳動物、例えば係る疾患に罹患している患者において、本発明に係るトリオキソピリミジン化合物の薬学的有効量を患者に適用することにより該疾患を処置するために使用する方法に関するものである。喘息は、アレルゲン暴露に関連する、または関連しない、気管支樹の炎症性疾患である。この炎症は、気管支平滑筋を刺激して収縮させ、粘液分泌を亢進させ、そしてこの疾患の経過に関して悪化因子となると考えられている気管支の形態学的変化を誘発することによって患者に症状を引き起こす。気道過敏性がこの疾患の特徴であり、殆どの症状の原因である。気管支樹は多くの細胞型(上皮細胞、平滑筋細胞、炎症細胞、神経、粘液産生細胞、線維芽細胞など)を伴う非常に複雑な組織であり、多くの局面を含む気管支リモデリング事象は、主として気管支壁への細胞外マトリックス成分の沈着および粘液産生細胞の過形成より成る。本発明のトリオキソピリミジン化合物の使用は、気管支肺胞洗浄の区画および気管支周辺組織への炎症細胞の流入を阻害し、そして、メタコリンのような刺激物質に対する異常反応として定義される過敏性を阻害する。この疾患および現行の処置は、例えばGINA Workshop Report, Global Strategy for Asthma Management and Prevention (NIH Publication No. 02-3659) およびFabbri, L.M., and Hurd, S.S., Eur. Respir. J. 22 (2003) 1-2に概説されている。
したがって本発明はさらに、気管支炎症疾患に罹患している患者において、治療有効量の本発明に係るトリオキソピリミジン化合物を使用して、当該疾患を処置する方法に関するものである。
好ましくは、本発明はさらに、気腫に罹患している患者において、本発明のトリオキソピリミジン化合物を使用して、当該疾患を処置する方法に関するものである。この疾患では、肺胞壁が蛋白分解プロセスによって破壊され、この破壊が血液への酸素の移送を妨げる。呼吸筋機能不全の惹起による換気異常を引き起こす過膨脹が誘導されるため、そして進行期には心不全を導く肺動脈高血圧症のため、生理的問題もまた起こる。
本発明によれば、このトリオキソピリミジン化合物は、治療を必要とする患者に数ヶ月または数年にわたって投与されねばならない。このトリオキソピリミジン化合物は、好ましくは1kg・1日あたりマイクロモル〜ナノモル濃度の間の範囲の非毒性用量を、液体または粉末製剤のエアロゾル化によって投与される。
MMPインヒビターの正確な用量は様々であるが、容易に決定できる。一般に、このインヒビターの好ましい1日用量は1μmol/kg・日ないし100nmol/kg・日の間の範囲となる。
この薬学的組成物は生理的適合性を持つ水性組成物である。さらにこの組成物は、補助物質、緩衝剤、保存剤、溶媒および/または粘度調節剤を含有する。適切な緩衝系は、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは硼酸ナトリウムに基づいている。使用中のこの薬学的組成物の微生物汚染を防ぐため、保存剤が必要である。好適な保存剤は、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、ソルビン酸である。このような保存剤を典型的には0.01ないし1%重量/容量の量で使用する。
好適な補助物質および薬用製剤が、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th ed., 1980, Mack Publishing Co. (Osloら編)に記載されている。典型的には、その製剤を等張とするため、製剤に適切量の薬学的に許容される塩を使用する。薬学的に許容される物質の例は、生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液を包含する。溶液のpHは好ましくは約5ないし約8、より好ましくは約7ないし約7.5である。
本発明のさらなる好ましい目的は、トリオキソピリミジンまたはその塩およびシクロデキストリン、好ましくは水溶性シクロデキストリン誘導体(水溶性とは、25℃において少なくとも0.5g/100ml(水)の溶解度と定義する)で形成されたトリオキソピリミジン−シクロデキストリン複合体(シクロデキストリン中へのトリオキソピリミジンの包接体)を含有する、気管支炎症疾患の処置のための、本発明に係るトリオキソピリミジンの薬学的組成物、ならびにその使用である。この複合体において、好ましくは1molのトリオキソピリミジンが、1モルのα、β、もしくはγ−シクロデキストリンまたはその誘導体により複合体形成し且つ取り囲まれている。好ましいシクロデキストリンは、
− α−シクロデキストリンおよびその合成誘導体、例えばHPαCD、メチル化αCD、ヒドロキシブチルαCD、マルトシルαCD、グルコシルαCD、
− β−シクロデキストリンおよびその合成誘導体、例えばHPβCD、SBEβCD、RMβCD、DIMEβCD、TRIMEβCD、ヒドロキシブチルβCD、グルコシルβCD、マルトシルαCD、
− γ−シクロデキストリンおよびその合成誘導体、例えばHPγCD、RMγCDおよびDIMEγCD、ヒドロキシブチルγCD、グルコシルγCD、マルトシルγCD、
である。
本発明による有用なシクロデキストリンは、デンプンの酵素分解により生成される環状オリゴ糖であって、可変な数、ほとんどが6、7または8個のグルコピラノース単位より成り、これらのシクロデキストリンはそれぞれα、β、およびγシクロデキストリン(αCD、βCDおよびγCD)と称されている。本発明のシクロデキストリンは、シクロデキストリン自身、またはシクロデキストリン誘導体であり、これらは25℃で少なくとも0.5gr/100mlの量が水に溶解する。
本発明において好ましく使用される水溶性シクロデキストリン誘導体とは、少なくともβ−シクロデキストリンの水溶解度を有する誘導体を指す。このような水溶性シクロデキストリン誘導体の例は、スルホブチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、およびこれらの塩である。特にスルホブチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、およびこれらの塩である。
本発明による好ましい誘導体はさらに、メチルシクロデキストリン(シクロデキストリンのメチル化産物)、ジメチルシクロデキストリン(DIMEB)(好ましくは2および6位で置換されている)、トリメチルシクロデキストリン(好ましくは2、3および6位で置換されている)、「ランダムメチル化」シクロデキストリン(RAMEB)(好ましくは2、3および6位でランダムに置換されているが、ユニットグルコピラノースにより幾つかの1,7ないし1,9メチルを伴う)、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン(HPCD、好ましくは主に2および3位(HP−βCD、HP−γCD)でランダムに置換されているヒドロキシプロピル化シクロデキストリン)、スルホブチルエーテルシクロデキストリン(SBECD)、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、カルボキシメチルエチルシクロデキストリン、エチルシクロデキストリン、ヒドロキシ基に炭化水素化した鎖をグラフト化により得られ、ナノ粒子を形成できる、両親媒性シクロデキストリン、コレステロールシクロデキストリンおよびモノアミノ化されたシクロデキストリンを(スペーサーアームで)グラフト化することにより得られるトリグリセリドシクロデキストリンである。
本発明のトリオキソピリミジン−シクロデキストリン複合体は、トリオキソピリミジン化合物および水溶性シクロデキストリン誘導体を含有する水溶液を製造することにより得られる。水溶性シクロデキストリン誘導体は、好ましくはトリオキソピリミジン1molあたり1molまたはそれ以上、より好ましくは1〜10mol、特に好ましくはトリオキソピリミジン1molあたりシクロデキストリン1〜2molの量で使用する。
水溶性シクロデキストリン誘導体の濃度が高いほどトリオキソピリミジンの溶解度が増す。この水溶液の製造方法には特に制限は課せられず、例えば水または緩衝液を使用し、およそ−5ないし35℃の温度範囲で製造する。
シクロデキストリン水溶液を過剰のトリオキソピリミジンと共に攪拌すると、これら2分子の間に複合体が形成される。この溶液を濾過すると、溶液中の複合体トリオキソピリミジンが濾液に回収でき、この複合体は水に可溶性である。この複合体はまた、水溶液中に可溶化した既知量のトリオキソピリミジンを、適切な比率を算出することにより、可溶化した既知量のCDと混合することによっても取得できる。
複合体を取得するもう一つの方法は、溶媒(例えばアルコール、アセトンなど)中のトリオキソピリミジン溶液をシクロデキストリン水溶液に添加することである。充分な攪拌の後に、溶媒の蒸発後であっても、または溶媒の存在下であっても、この複合体が形成し得る。
本発明の複合体溶液の凍結乾燥または噴霧化により、この複合体を固体形態で取得できる。このようにして複合体をアモルファス粉末の形態で取得できる。CDおよびトリオキソピリミジンを適切な有機溶媒に溶解し、溶媒を蒸発させた後に、この複合体を固体状態で取得することも可能である。
固体複合体を調整するために他の方法も使用できる。その方法とは、トリオキソピリミジンおよびCDをごく少量の水に入れた懸濁液を激しく攪拌し、次いで、乾燥後に複合体を集める、または、超臨界状態のCO2存在下にトリオキソピリミジンおよびCDを混合するために、超臨界状態のCO2を使用することである。
本発明に係る複合体は、例えばそれ自体既知の方法で、溶液から、またはペースト法を用いて調整でき、この場合、シクロデキストリン対トリオキソピリミジンの重量比は2ないし540の間、好ましくは2ないし25の間、特に好ましくは2.6ないし3.5(シクロデキストリンとの1:1複合体)または5.2ないし6.2(シクロデキストリンとの1:2複合体)とすべきである。
この複合体は、濃縮水性シクロデキストリン調製物から調整するのが好ましい。この調製物のシクロデキストリン濃度は、好ましくは50および400mMの間である。100ないし250nMのシクロデキストリン濃度が好ましい。稠度に応じてこの混合物を強く攪拌するかもしくは練る。シクロデキストリンの重量パーセントは水性シクロデキストリン調製物の総重量を基準にする。
反応温度は通常20℃および80℃の間、好ましくは20℃および60℃の間、特に好ましくは25℃および45℃の間である。反応時間は温度により、1時間から数日の間である。複合体形成の平衡状態に到達させるための反応時間は少なくとも7日間が好ましい。
本発明に従って、トリオキソピリミジンおよびシクロデキストリンの複合体が、トリオキソピリミジンの水溶性を驚くほど増大させることが立証された。この複合体の形成がトリオキソピリミジンの薬理学的性質を妨げないこともまた見いだされた。
これらすべての性質は、注射用または噴霧用溶液としての液体製剤の調整を可能にし、バイオアベイラビリティーを、特に経口において改善できる。本発明のトリオキソピリミジン−シクロデキストリン複合体は、そのまま、または、共存する水を除去して得られる粉末形態で使用できる。水分除去方法の例は、凍結乾燥および減圧乾燥を包含する。凍結乾燥で得られる粉末製品が特に好ましい。
本発明のトリオキソピリミジン−シクロデキストリン複合体は、経口投与または非経口投与のいずれによってもその効果を現し、非経口投与用製剤、特に注射用製剤または局所投与用製剤、特にエアロゾル製剤に製剤化するのが好ましい。
剤型の例は、錠剤、カプセル剤、散剤、および顆粒剤を包含する。これらは、賦形剤、潤滑剤、および結合剤といった典型的な添加物を使用して、既知の技術で製造できる。
噴霧化にとって好ましい薬用製剤は、トリオキソピリミジン、シクロデキストリン(CD)、NaClおよび水を含有する。トリオキソピリミジン0.05〜0.2g、好ましくは0.1g;CD 10〜50g、好ましくは20gのCD、好ましくはHPβCD;塩化ナトリウム1.2〜1.5g、好ましくは1.42g(等張性)および水、好ましくは発熱性物質を含まない滅菌精製水(加えて200mlとする)の組み合わせ(溶液200mlに対して)が特に好ましい。
このような製剤は気管支炎症疾患の処置に有用である。
CDを精製水100mlに溶解し、トリオキソピリミジンおよびNaClを攪拌しながら加えてこれらを溶解し、水を加えて200mlの溶液を得ることによって、この溶液を調整する。好ましくはこの溶液を0.22μmポリプロピレンメンブレンで濾過、または蒸気滅菌プロセスによって滅菌する。
本発明の理解を助けるために以下の実施例、参考文献および図を供するが、本発明の真の範囲は付記する請求項に開示する。本発明の精神を逸脱することなく、開示する方法に修飾を施し得ることが理解できるであろう。
略語
CD シクロデキストリン
HPβCDまたはHP−β−CD ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン
I.V. 静脈内
MMP マトリックスメタロプロテアーゼ
OVA オボアルブミン
PBS リン酸緩衝化生理食塩水β−シクロデキストリン
実施例1
化合物Iおよびシクロデキストリン(CD)の可溶性複合体の調製
1.1 20mgの化合物Iを秤量する。HPβCD200mMの溶液2mlを加える。37℃で24時間攪拌する。ミリポアフィルターMillex HV0.45μmで濾過する。濾過後に得られる溶液は、化合物I−CD複合体を溶液中に含有する。
1.2 2.5mgの化合物Iを秤量する。HPβCD200mMの溶液2mlを加える。37℃で24時間、または化合物Iが完全に溶解するまで攪拌する。このようにして得た溶液は、化合物I−CD複合体を含有する。
実施例2
L−リジン溶液添加による化合物Iおよびシクロデキストリン(CD)の可溶性複合体の溶解度の増大
Higuchi, T., and Connors, K.A., Advances in Analytical Chemistry and Instrumentation 4 (1965) 117-212に記載のように溶解度の研究を実施した。過剰量の化合物Iを、精製水またはL−リジン溶液(50mMまたは500mM)いずれかの溶解媒質5ml中の漸増濃度のHP−β−CD(0〜200mM)に加えた。ガラス容器を密封し、この懸濁液を、複合体形成が平衡に達するまで(7日間)25℃の水浴中で振盪した。アリコートを0.45μm PVDFメンブレンフィルターで濾過し、実証された液体クロマトグラフィー(LC)法により化合物Iの含有量について検定した。
図4は、HP−β−CDの存在下で25℃において得られた、精製水、50mM L−リジン溶液および500mM L−リジン溶液に入れた化合物Iの相溶解度図を示す。これら3つの場合において、化合物Iの水溶解度はCD濃度の関数として増大する。L−リジン不在下で得られた溶解度図は、先に述べた結果を裏付ける:200mM HP−β−CD溶液中の化合物Iの溶解度は約5.5mg/ml(11mM)であり、これは化合物Iの水溶解度のおよそ10000倍の増大に相当する。
L−リジン存在下では、HP−β−CD溶液中の化合物Iの溶解度はさらに高い。200mM HP−β−CD溶液中での溶解度は、50mMおよび500mMのL−リジン存在下では各々約2および7倍増大する。表8は、異なる媒質中での化合物Iの溶解度のデータを示す。結果は、L−リジンおよびHP−β−CDの間の相乗効果を示している。500mM L−リジンおよび200mM HP−β−CD(38.14mg/ml)両者の存在下での溶解度は、HP−β−CDおよびL−リジン(5.53mg/mlおよび0.09mg/ml)の効果を別々に加えることで予想される溶解度より高い。L−リジンおよびHP−β−CD間のこの相乗効果は、化合物Iの水溶解度の重要な増大を可能にする(500mM L−リジンおよび200mM HP−β−CDにより70000倍)。
Figure 0004584981
実施例3
MMP酵素活性の決定
Stack, M.S., and Gray, R.D., J. Biol. Chem. 264 (1989) 4277-4281に記載のようにして、改良蛍光検定でインヒビターを試験した。ヒトMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−9およびMMP−14は市販品(例えばCalbiochem)である。試験の直前に1mM APMAでプロ酵素を活性化した(37℃で30分間のインキュベーション)。活性化した酵素をインキュベーション緩衝液(50mMトリス、100mM NaCl、10mM CaCl2、pH7.6)で100ng/mlに希釈する。化合物は100%DMSOに溶解した。IC50決定のために、0.5〜1000nM間の最低8の希釈段階を用意した。DNP基質(Bachem M 1855、255μM)はインキュベーション緩衝液に溶解した。
試験管にインキュベーション緩衝液970μl、インヒビター溶液10μlおよび酵素溶液10μlを入れる。基質溶液10μlの添加により反応を開始させた。
FluoroMax(登録商標)(Spex Industries Inc., Edison, NJ, USA)上で励起280nmおよび放出346nmを用いて120秒間測定することにより、活性の動態を決定した。インヒビター溶液の代わりにDMSOをコントロールとして使用した。
正の酵素コントロールの50%のシグナルを生ずるインヒビター濃度としてIC50を定義する。
IC50値(nM)を表1に示す。
Figure 0004584981
実施例4
薬学的組成物
異なる組成物の製剤を、すべてではないが例として記載する。
注射用製剤の好ましい例:
− HP−βCD 200mM;化合物I 1mg/ml;注射用滅菌水適量。
25mlの溶液のために:
a)溶液の調製
HPβCD(4.2%のH2O)6.77gを秤量し、これを注射により水25mlに溶解する。化合物I 25mgを加え、これが完全に溶解するまで水浴中で加熱する。この溶液を濾過滅菌する。
b)溶液の特性
この溶液の浸透圧は308mOs/kgである。pHは7.2である。
化合物Iおよび/またはCDの濃度は必要に応じて改変できる。NaClを添加して張性を調節するのが好ましい。
好ましい噴霧用製剤:
200mlの溶液のために:
− 化合物I 0.1g
− 発熱性物質を除去したHPβCD 20.15g(75mM)
− 塩化ナトリウム 1.42g(等張性)
− 発熱性物質を含まない滅菌精製水 200mlになる量
a)発熱性物質を除去したHPβCD(3.2%H2O、ROQUETTE)20.15gを秤量し、精製水100mlに溶解する。
b)化合物I 0.1gおよび塩化ナトリウム1.42gを秤量し、これらを強く攪拌することにより溶液(a)に加えて溶解させる。
c)水を加えて200mlの溶液を得る。
d)0.22μmポリプロピレンメンブレンで濾過滅菌する。
実施例5
喘息モデルマウスにおけるアレルゲン誘発気道炎症および気管支過敏症治療のための、化合物IおよびHPβCDを含有する製剤の使用
材料
HP−β−CD(置換度=0.64)はRoquette(France)からのものである。非発熱性リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)はBio-Wittaker(Verviers, Belgium)から、そしてメタコリンはSigma-Aldrich(Germany)から購入した。他の材料はすべて分析等級のものであった。この実験全体を通じて注射用滅菌水を使用した。滅菌、非発熱性および等張性のCD溶液を20、50および75mMで調製した。市販の吸入用フルチカゾン溶液(Flixotide(登録商標) 1mg/ml)はGlaxo-Smithkline(Genval, Belgium)から購入した。
感作、アレルゲン暴露および治療プロトコル
化合物Iの腹腔内注射による気道炎症の調節を調べるため、アルミン吸着させオボアルブミン(aluminject, perbio, Erembodegem, Belgium)10μg腹腔内注射でマウスを0日目および7日目に感作し、その後21日目から24日目までOVA1%またはPBSエアロゾルに30分間暴露した。腹腔内注射をOVA吸入の30分前に実施した。注射された異なる製剤は、クレモフォル10%−DMSO 10%−PBS 80%−化合物I 30mg/kg(懸濁液);クレモフォル10%−DMSO 10%−PBS 80%−化合物I 3.75mg/kg(溶液);HPβCD 200mM 化合物I 7.5mg/kg(溶液);HPβCD 200mMであった。すべての結果を、感作しPBSに暴露したマウス、およびOVAで処理しPBSを腹腔内注射したマウスと比較した。吸入した化合物Iによる気道炎症の調節を調べるため、マウスを前記のように感作した。短期間暴露チャレンジおよび長期間暴露チャレンジと称する二つのプロトコルを使用した。短期間暴露チャレンジでは、プレクシガラスの暴露試験箱(30 × 20 × 15cm)中で、21日目から27日目まで、マウスを水溶液中の活性化合物濃度0.03および0.3mg/mlの化合物I複合体のエアロゾルに30分間暴露させた。23日目から27日目まで、マウスを化合物I吸入の30分後にOVAエアロゾルに暴露させた。いわゆる長期間吸入チャレンジでは、マウスを、水溶液中のHPβCDと複合体形成させた濃度0.03および0.3mg/mlの化合物Iのエアロゾルに、30分間ずつ奇数週に5日間、そしてOVAエアロゾルに奇数週に3日間、11週間の間、暴露させた。偶数週には吸入を行わなかった。
エアロゾルは、振動数2.4MHz、振動強度および換気レベルが可変性の超音波ネブライザーSYSTAM(Systeme Assistance Medical, Le Ledat, France)を用いて製造した。振動強度を6の位置に固定し、換気レベルは25(ν1/2)l/分とした。
気道反応性測定
最後のアレルゲン暴露の24時間後に、Hamelmann, E.ら、Am. J Respir. Crit. Care Med. 156 (1997) 766-775により提唱されたように、気圧プレチスモグラフを用いてPenhを測定することにより気管支過敏性を測定した。Penhを、ベースライン、および漸増用量(25、50、75および100mM)のメタコリン(Mch)吸入の5分後に測定した。
気管支肺胞洗浄(BAL)および組織像
気道反応性の評価直後にマウスを殺処理し、イオン化カルシウムおよびマグネシウムを含まず0.05mMEDTAナトリウムを添加したPBS 1mlを気管カニューレから4回滴注し、穏やかに手動吸引することにより回収した。回収した気管支肺胞洗浄液(BAL)を遠心した(4℃、1800rpmで10分間)。この細胞ペレットを2回洗浄し、最後にPBS 1mlに再懸濁した。総細胞数の計数をThoma chamber中で実施し、少なくとも400個の細胞について、Diff-Quick(Dade, Germany)で染色後に、標準的形態学基準を用いて細胞遠心調製物に対する個別細胞計数を行った(Cytospin 2; Cytospin, Shandon td., Runcorn, Cheshire, U.K.)。BALの後、胸郭を切開し、左主気管支をクランプで止めた。左肺を切除し、蛋白化学反応およびmRNA抽出のために液体N2中で直ちに凍結し、右肺は組織像用に処理した。上述したように(Cataldo, D.D.ら、Am. J. Pathol. 161 (2002) 491-498)、右肺に4%パラホルムアルデヒドを注入し、パラフィン包埋した。すべての裂片から取った厚さ5μmの切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。気管支周囲の浸潤程度を炎症スコアによって評価した。スライドを暗号化し、気管支周囲の炎症を、他所(Cataldo, D.D.ら、Am. J. Pathol. 161 (2002) 491-498)に記載された再現性ある採点系を用いてブラインド方式で等級付けた。採点した各組織切片について、1基準あたり0ないし3の値で判定した。炎症が検出できない場合に値0、時折見られる炎症細胞を伴うカフィングに値1、殆どの気管支が炎症細胞の薄層(1ないし5個の細胞)に取り囲まれている場合に値2、そして殆どの気管支が炎症細胞の厚層(>5個の細胞)に取り囲まれている場合に値3と判定した。マウス1匹につき5−7枚の無作為に選択した組織切片を採点するので、炎症スコアを1動物あたりの平均値で表し、群間で比較することができた。気管支壁に浸潤している好酸球の量を具体的に反映する、組織好酸球浸潤スコアと称するもう一つのスコアを以下のように測定した:コンゴーレッド染色の後、マウス1匹につき7個の気管支を調べた。気道壁の範囲内で気管支周辺の好酸球を計数し、上皮基底膜の周長を測定して結果を好酸球数/mm(基底膜)として表した。左肺を液体窒素で迅速凍結し、Mikro-Dismembrator S(Braun Biotech International, Melsungen, Germany)を用いて圧搾し、抽出物を研究前に−80℃で保存した。腎臓を切除してパラフィン包埋し、5μm切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。心臓穿刺により血液をサンプリングし、分析を実施するまで血清を−80℃で保存した。
すべてのインビボ操作は地域のVeterinarian Ethics Committeeにより認可された。
化合物Iの腹腔内注射
化合物I(溶液または沈殿物)の腹腔内注射は、プラセボと比較した場合、3.75ないし30mg/kgの用量でBALのアレルゲン誘発気道好酸球性炎症を低下させた(図1a)。同用量において、気管支周辺の炎症スコアもまた、化合物Iによって著明に低下し、これはすべての被検製剤について同等の有効性であった(図1b)。組織好酸球浸潤スコアは、7.5および25mg/kg用量の化合物Iの腹腔内注射により著明に低下した。
化合物Iおよび化合物I−HPβCD複合体への吸入暴露
短期間暴露に40mg/mlの化合物Iの純DMSO溶液を用いることにより、まず、局所活性抗炎症薬としての化合物Iの固有活性を評価した。DMSOのみの吸入と比較した場合、この製剤の吸入は、BAL好酸球(p<0.005)、気管支周辺炎症スコア(p<0.01)、および気管支過敏性(p<0.05)の著明な低下を導いた。
短期間暴露プロトコルにおいて、本発明者等は、HP−β−CD化合物I複合体含有製剤の、気道炎症および過敏性に及ぼす効果を評価した。化合物I−HPβCD複合体含有製剤の吸入効果を、プラセボ(PBS)または対照治療に用いたフルチカゾン(1mg/ml)と比較した。化合物Iの0.03および0.3mg/ml用量を含有する製剤の吸入は、プラセボと比較した時にフルチカゾンの効果に匹敵する程度で、BALにおける好酸球性炎症の著明な減少を誘導した(p<0.0001)(図2a)。気管支周辺の炎症スコアもまたプラセボと比較して低下し(p<0.0001)(図2b)、組織好酸球浸潤スコアもまた同様であった(p<0.01)(図2c)。
アレルゲンの長期間暴露の後、化合物I−HPβCD含有製剤の吸入処置後のBAL好酸球増加は、フルチカゾンの効果と同程度に著しく減少した(p<0.001)(図3a)。気管支周辺の炎症スコアもまた、化合物I−HPβCD含有製剤の吸入によってフルチカゾンと同様に著しく減少した(p<0.0001)(図3b)。組織好酸球浸潤スコアもまた、化合物Iの吸入処置後に、フルチカゾン処置マウスに匹敵する程度に減少した(p<0.01)(図3c)。
実施例6
バイオアベイラビリティーに関する薬物動態学的研究
生体適合性のpH値で高い化合物Iの濃度を実現する、HP−β−CDおよびL−リジンの組み合わせを有する、薬物動態学研究のための溶液を開発した。
投薬形態の調製
HP−β−CD(200mM)、L−リジン(20mM)および注射用水を含む溶液に化合物I(10mg/ml)を溶解することにより、化合物I/HP−β−CD静脈用溶液を得た。この溶液の浸透圧(約325mOsmol/kg)およびpH(約8.2)値は、静脈注射に適合する。この溶液を無菌条件下で0.20μm滅菌酢酸セルロースフィルターを通過させることにより滅菌した。
HP−β−CD(200mM)、L−リジン(50mM)および水を含む溶液に化合物I(15mg/ml)を溶解することにより、化合物I/HP−β−CD経口溶液を調製した。
化合物Iの懸濁液は、化合物I(15mg/ml)、湿潤剤としてのポリソルベート80(0.1mg/ml)、シマルドラート(VEEGUM HV(登録商標)、1% m/v)および増粘剤としてのメチルセルロース(METHOCEL A400(登録商標)、0.4% m/v)で構成されていた。
動物実験プロトコルおよび薬物投与
体重45ないし82kgの範囲の6頭の健康なヒツジ(雄2頭、雌4頭)を実験動物に使用した。試験中、動物には餌と水を自由に摂らせた。
表3の計画に従って実施した実験研究は、経口投与とその後の静脈内投与による無作為化二元クロスオーバー法を含んでいた。各投与の間に3週間のウォッシュアウト期間を設けた。
Figure 0004584981
経口投薬形態については、各動物に15mg/kg(体重)と同等の用量の化合物Iを、両方の製剤から投与した。投薬形態の量を適合させるため、薬物投与の日にヒツジの体重を測定した。経口投与の前、および0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、24、28、32、48、72、96、120、144、168時間後に、頸静脈から血液試料を採取した。
静脈内投薬形態については、6頭のヒツジすべてに5mg/kg(体重)の化合物Iを投与した。この溶液を左頸静脈から投与し、静脈内投与開始の前、および5、10、15、20、30、45分、1、1.5、2、3、4、5、6、8、10、12、24、28、32、48、72、96、120、144、168時間後に、右頸静脈から血液試料を採取した。
すべての血液試料を遠心し、検定するまで血清を−80℃で保存した。
生物分析法
血清中のこの化合物のLC測定のために完全自動化法を開発した。限定アクセス材料(RAM)、即ちLiChrospher RP-8 ADS(アルキルジオールシリカ)を充填したプレカラムを、カラムスイッチング法によって分析カラムにオンライン結合させることにより、試料のクリーンアップを実施した。ADS吸着剤は内表面逆相支持体の群に属し、LC分析前の生体試料のクリーンアップにうまく適用されている(Yu, Z., and Westerlund, D., Chromatographia 44 (1997) 589-594;Hubert, Ph.ら、S. T. P. Pharma Pratiques 9 (1999) 160-180;Souverain, S.ら、Journal of Chromatography B 801 (2004) 141-156)。稼働条件は過去の文献に記載されている(Chiap, P.ら、Journal of Chromatography B 817 (2005), 109-117)。この方法を、全測定誤差を考慮した、正確性プロファイルに基づく新規なアプローチに従って完全にバリデーションした(Hubert, P.ら、Analytica Chimica Acta 391 (1999) 135-148;Hubert, Ph.ら、S. T. P. Pharma Pratiques 13 (2003) 27-64;Hubert, Ph.ら、J. Pharm. Biomed. Anal. 36 (2004) 579-586)。
生物分析学的研究については、高濃度を測定するため、この方法の用量範囲を50μg/mlまで増加させねばならなかった。部分的な再バリデーションを行い、応答関数、真実性、精密性、正確性および直線性に関して良好な結果を得た。
薬物動態学および統計学的解析
静脈内投与の研究のため、一次分布および排出を伴う線型2−コンパートメントモデルを用いて、各動物について薬物動態パラメータを決定した(Boroujerdi, M., Pharmacokinetics, Principles and Applications. McGrow-Hill Companies, USA, 2002)。線型台形公式により、サンプリング期間中の曲線下面積値(AUC0-168)を算出した。コンパートメント分析に随伴する従来の等式を用いて、無限大まで外挿したAUC(AUC0-∞)、全身クリアランス値(Clt)、生物学的半減期(T1/2β)および総分布容積(Vdt)を算出した(Boroujerdi, M., Pharmacokinetics, Principles and Applications, McGrow-Hill Companies, USA, 2002)。
経口投与の研究のため、一次インプットおよび一次アウトプットを伴う線型1−コンパートメントモデルを用いて、各動物について、そして懸濁液および溶液の両者について、薬物動態パラメータを決定した(Boroujerdi, M., Pharmacokinetics, Principles and Applications. McGrow-Hill Companies, USA, 2002)。台形加算により上記の通りAUC0-168を算出した。AUC0-∞は以下の等式(等式1)によって推定した:
Figure 0004584981
[式中、Kおよびkaは各々総排出速度定数および吸収速度定数であり、C0は外挿された初期濃度である]。
薬物の最大血漿中濃度(Cmax)および対応時刻(Tmax)を各動物について2つの異なる手段で決定した:濃度−時間のグラフから直接(Cmax experimentalおよびTmax experimental)および以下の等式(等式2および3)を用いて算出(Cmax calculatedおよびTmax calculated):
Figure 0004584981
絶対バイオアベイラビリティー(Fabsol)を以下の関係(等式4)を用いて評価した:
Figure 0004584981
[式中、DoralおよびDI.V.は、各々経口およびI.V.投与された薬物の量である]。
すべての薬物動態パラメータを、平均AUC0−∞から算出した絶対バイオアベイラビリティーを除いて平均値±標準偏差として示す。
個々のAUC値が平均値±2標準偏差より高いまたは低い時にはそのデータを異常とみなした。これに基づき、経口溶液投与後の薬物動態パラメータの決定および統計学的解析から、1頭のヒツジを除外した。
2つの経口投薬形態について、二元配置分散分析(two−wayANOVA)を用いて薬物動態パラメータの比較を実施した。分布を正規化するための対数変換の後、算出された各パラメータの平均値を比較した。結果は5%臨界レベルで有意と考えられた(p<0.05)。
静脈内投与後の化合物Iの薬物動態
ヒツジへの静脈用溶液(5mg/kg)1回投与後に得られた化合物Iの平均血清中濃度対時間曲線を、図5aに示す。図5b(化合物Iの平均血清中濃度の対数対時間曲線)は、化合物Iの薬物動態が2−コンパートメントモデルに従うことを示している。この静脈内投与後に算出された異なる薬物動態パラメータを表4に列挙する。
Figure 0004584981
分布相は短く(約30分間)、化合物Iが生体に急速に分布することを示している。総分布容量は少なく(約8リットル)、この事は、化合物Iの分布が細胞外液に限定され、組織内への化合物Iの拡散がそれほど重要でないことを示している。これに対して、化合物Iの生物学的半減期は長く(約15.5時間)、したがって薬物排出は非常に緩徐である。分布容量が少ないことを考えると、生体への蓄積は、例えば脂肪への貯蔵による訳ではなく、おそらくは蛋白質またはその他の血漿成分との強い結合によって起こるのであろう。全身クリアランス値もまた算出したが、これは358.5ml/h前後であった。
懸濁液および溶液の経口投与後の化合物Iの薬物動態
化合物1の溶液および懸濁液の単一用量(15mg/kg)を経口投与した後に得られた化合物Iの平均血清中濃度対時間のプロファイルを図6aに示す。平均血清中濃度の対数変換の後、経口投与後の薬物動態は1−コンパートメントモデルに従うようである(図6b)。薬物動態パラメータを表5にまとめる。
Figure 0004584981
溶液の投与後の化合物Iの血清中濃度は、同用量を懸濁液で投与して得られた血清中濃度よりも明らかに高い。溶液で観察された吸収相(約4時間)は、懸濁液投与後に達成されたもの(約10時間)より短い。溶液および懸濁液の薬物動態パラメータが有意に異なっている(P<0.05)こともまた観察できる(表5)。化合物Iの平均血清中ピーク濃度は、溶液および懸濁液の投与後で各々約54および5μg/mlである。溶液のCmaxは懸濁液のCmaxより約10倍高い。懸濁液(約11時間)に比較して溶液(約3.8時間)では3倍早いTmaxが得られる。AUC値はCmax値と同じ傾向に従い、溶液投与後のAUCは懸濁液投与後のAUC値より約10倍高い。したがって、I.V.溶液と比較した絶対バイオアベイラビリティーは、懸濁液(8%)より溶液(80%)の方が遙かに高い。
Figure 0004584981
BAL好酸球数に及ぼす化合物I懸濁液の腹腔内注射の効果を示す。対照は、アレルゲンには暴露させずPBSにのみ暴露させたマウス(PBS)、および、吸入によりovaに、そして腹腔内注射によりプラセボに暴露させたマウス(OVA)である。 気管支周辺の炎症スコアに及ぼす化合物I懸濁液の腹腔内注射の効果を示す。対照は、アレルゲンには暴露させずPBSにのみ暴露させたマウス(PBS)、および、吸入によりovaに、そして腹腔内注射によりプラセボに暴露させたマウス(OVA)である。 短期(5日間)アレルゲン暴露モデルにおける、BAL好酸球増加に及ぼす、エアロゾルで投与した化合物I−HP−β−CD複合体、フルチカゾンおよびプラセボ(PLAC)の治療効果を示す。 短期(5日間)アレルゲン暴露モデルにおける、気管支周辺の炎症スコアに及ぼす、エアロゾルで投与した化合物I−HP−β−CD複合体、フルチカゾンおよびプラセボ(PLAC)の治療効果を示す。 短期(5日間)アレルゲン暴露モデルにおける、組織好酸球浸潤スコアに及ぼす、エアロゾルで投与した化合物I−HP−β−CD複合体、フルチカゾンおよびプラセボ(PLAC)の治療効果を示す。 長期(11週間)アレルゲン暴露モデルにおける、BAL好酸球増加に及ぼす、エアロゾルで投与した化合物I−HP−β−CD複合体、フルチカゾンおよびプラセボ(PBS)の治療効果を示す。感作させたがアレルゲンに暴露させていないマウス(PBS)および感作させOVAに暴露させたマウス(PLAC)をPBS吸入により処置した。 長期(11週間)アレルゲン暴露モデルにおける、気管支周辺の炎症スコアに及ぼす、エアロゾルで投与した化合物I−HP−β−CD複合体、フルチカゾンおよびプラセボ(PBS)の治療効果を示す。感作させたがアレルゲンに暴露させていないマウス(PBS)および感作させOVAに暴露させたマウス(PLAC)をPBS吸入により処置した。 長期(11週間)アレルゲン暴露モデルにおける、組織好酸球浸潤スコアに及ぼす、エアロゾルで投与した化合物I−HP−β−CD複合体、フルチカゾンおよびプラセボ(PBS)の治療効果を示す。感作させたがアレルゲンに暴露させていないマウス(PBS)および感作させOVAに暴露させたマウス(PLAC)をPBS吸入により処置した。 精製水(●)、L−リジン50mM(x)またはL−リジン500mM(▲)中の、HP−β−CDを伴う化合物Iの相溶解度図を示す。 ヒツジ(n=6)に静脈内投与(5mg/kg)した後の、化合物Iの平均(±S.D.)血清中濃度対時間の曲線を示す。 ヒツジ(n=6)に静脈内投与(5mg/kg)した後の、化合物Iの平均血清中濃度の対数対時間の曲線を示す。 ヒツジ(溶液ではn=5、懸濁液ではn=6)に溶液(▲)および懸濁液(●)を経口投与(15mg/kg)した後の、化合物Iの平均(±S.D.)血清中濃度対時間の曲線である。 ヒツジ(溶液ではn=5、懸濁液ではn=6)に溶液(▲)および懸濁液(●)を経口投与(15mg/kg)した後の、化合物Iの平均血清中濃度の対数対時間の曲線である。

Claims (2)

  1. 気管支炎症疾患の処置を必要とする宿主哺乳動物において該疾患を処置する医薬を製造するための、水溶性シクロデキストリンと複合体を形成しており、そしてMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−9およびMMP−14に対する阻害活性を有するトリオキソピリミジン化合物の使用であって、該トリオキソピリミジン化合物が、5−ビフェニル−4−イル−5−[4−(4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]ピリミジン−2,4,6−トリオンである、使用
  2. 気管支炎症疾患の処置を必要とする宿主哺乳動物において該疾患を処置または予防するための、水溶性シクロデキストリンと複合体を形成しており、そしてMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−9およびMMP−14に対する阻害活性を有するトリオキソピリミジン化合物の使用であって、該トリオキソピリミジン化合物が、5−ビフェニル−4−イル−5−[4−(4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]ピリミジン−2,4,6−トリオンである、使用
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