JP4583159B2 - 電動車ブレーキ受量器 - Google Patents
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Description
図示の如く、接線力の最大値を超えないトルクを主電動機で発生している場合は、空転・滑走は発生せず、接線力の最大値より左側の微小なすべり速度の粘着領域で電気車は走行する。もし最大値より大きなトルクを発生するとすべり速度は増大し、接線力が低下するのでますますすべり速度が増大する空転・滑走状態になるが、車輪およびレールが乾燥状態では主電動機で発生するトルクは接線力の最大値を超えないように車両の性能が設定されるので、空転・滑走は発生しない。
なおブレーキ時には、電力回生ブレーキ(以下単に回生ブレーキと称する)を用いる電気車が多いが、この場合電気ブレーキ力は回生エネルギーを吸収してくれる負荷車両の在線状態によって絶えず変動するので、図4に示すように、電動車ブレーキ受量器BCU(以下、単にブレーキ受量器という)において電気ブレーキ力と空気ブレーキ力とでブレーキ指令に対応したブレーキ力になるように制御している(図8に常用最大ブレーキ特性の例を示すように、一般に高速度域において空気ブレーキ力を補足する特性を用いることが多いので、この特性をブレーキ受量器で持っている)。すなわち、その時の速度に応じて、ブレーキ受量器BCUでは、ブレーキ指令に対応したブレーキ力を発生するために、電気ブレーキで発生すべき電気ブレーキ力と補足すべき空気ブレーキ力を演算して、電気車制御装置INVに対して、ブレーキ指令とともに、電気ブレーキで発生すべき電気ブレーキ力を回生ブレーキ力指令として指令する。電気車制御装置INVでは、電気ブレーキ力発生系で回生ブレーキ指令どおりの電気ブレーキ力を発生すべく、図示しない電気車推進装置を制御する。そして、再粘着制御系において滑走検知しない場合は、実際に発生している電気ブレーキ力を、切替器のa接点を介して回生ブレーキフィードバック信号RBとしてブレーキ受量器に出力する。ブレーキ受量器では、また回生ブレーキ有効信号CR(ブレーキ受量器BCUに入力される回生ブレーキフィードバック信号RBが正しい値を示していることを意味する)この回生ブレーキフィードバック信号RBをもとに、補足すべき空気ブレーキ力を修正して、空気ブレーキ指令として図示しない電動車(以下M車という)の空気ブレーキ発生装置に対して出力する。なお、この制御過程中に、再粘着制御系において滑走を検知した場合は、切替器のb接点を介して再粘着制御に伴う電気ブレーキ力を回生ブレーキフィードバック信号としてブレーキ受量器に出力する。
以上のような制御系の構成で、例えば上記の最小次元外乱オブザーバを用いて車輪・レール間の接線力に対応した主電動機トルクを制御周期毎に推定して、空転・滑走検知時の推定トルクを用いて主電動機の発生トルクを制御する方式を用いると、電気ブレーキ力をもとに滑走検知時の車輪・レール間の接線力対応トルクを高精度で推定できるので、図8中の曲線Aに示すように粘着係数がそれ程低下しない場合(冬期の降雨・降雪時を除くとほぼこの場合に該当する)には、図9に示した滑走再粘着制御時の電空協調制御状態の例に見るように、電気ブレーキ力の短時間における高速制御によって確実に再粘着させるとともに、再粘着させるために必要な電気ブレーキ力の最小値が、各滑走検知時において電制失効する可能性のある電気ブレーキ力のレベルを下回ることなく、この間電気ブレーキ力の高速制御により空気ブレーキ力の変動を抑制できるので、全体のブレーキ力が変動することのない良好な乗り心地を実現できている。また、電気ブレーキ力を用いて車輪・レール間の接線力を推定しながら再粘着制御を行っているので、空気ブレーキ力を含めたトータルの粘着力の有効利用ができている。
図8中の曲線Bは、このような場合の粘着係数特性の例を示したものである。このように粘着係数が大きく低下している状態で、高速度から常用最大ブレーキを作用させる運転操作が行われた場合、指令ブレーキ力中補足空気ブレーキ力が分担する割合が電気ブレーキ力が分担する割合よりも大きいので、現状のブレーキ制御系の構成では、いくら上記のような再粘着制御方式を用いても、途中で電制失効してしまう事象が発生する可能性がある。
電気車の運転士は、通常は停止ブレーキを作用させるときは、もっと弱いブレーキの操作を行うので、上記のような事象は頻繁に発生する訳ではないが、粘着係数が大きく低下した状態でやむを得ず常用最大ブレーキを高速度から作用させなければならないことが発生することは十分に想定される。ブレーキ操作時の良好な乗り心地の維持、粘着力・回生ブレーキエネルギーの有効利用、ブレーキシュー摩耗量低減のためには、このような事象の発生を極力抑制することが望まれる。
門脇悟志、大石潔、宮下一郎、保川忍著:「外乱オブザーバと速度センサレスベクトル制御による電気車(2M1C)の空転再粘着制御の一方式」、電気学会論文誌D、平成13年11月号、pp1192-1198 畑正、廣瀬寛、門脇悟志、大石潔、飯田哲史、高木正志、佐野孝、保川忍著:「速度センサレスベクトル制御・外乱オブザーバによる空転再粘着制御の実車両への適用とその評価-205系5000番代電車における実例-」、平成15年電気学会産業応用部門大会論文集、ppIII-93〜98
1)請求項1において、
オブザーバなどの手法を用いて電気ブレーキ力F_eをもとに滑走を検知したときの車輪・レール間の接線力に対応した主電動機軸上で見たトルクを推定し、前記推定トルクをもとに滑走を検知した場合に滑走している動輪を再粘着させるに必要なトルク指令値の最小値および再粘着後に指令する前記推定トルクに対応したトルク指令値を演算してトルク制御を行うようにした再粘着制御機能を有する電気車制御装置INVから滑走検知信号slipをブレーキ受量器BCUに入力するようにして、電気車制御装置INVが滑走検知したときに、ブレーキ受量器BCUにおいて、滑走検知時点における空気ブレーキ力指令値Fair_slipを記憶保持し、この時点以降予め設定した期間中は空気ブレーキ力指令Fair_comを滑走検知時点における空気ブレーキ力指令値Fair_slip以上に増大させないようにしたことを特徴とするブレーキ受量器である。
2)請求項2において、
オブザーバなどの手法を用いて電気ブレーキ力をもとに滑走を検知したときの車輪・レール間の接線力に対応した主電動機軸上で見たトルクを推定し、前記推定トルクをもとに滑走を検知した場合に滑走している動輪を再粘着させるに必要なトルク指令値の最小値および再粘着後に指令する前記推定トルクに対応したトルク指令値を演算してトルク制御を行うようにした再粘着制御機能を有する電気車制御装置INVからブレーキ受量器BCUに入力される回生ブレーキフィードバック信号RBの変化状況から滑走の発生を認識して、滑走を認識した時点における空気ブレーキ力指令値Fair_slip_zzを記憶保持し、この時点以降予め設定した期間中は空気ブレーキ力指令値Fair_slip_zzを滑走を認識した時点における空気ブレーキ指令値Fair_slip_zz以上に増大させないようにしたことを特徴とするブレーキ受量器である。
そして、図1に示すように、時刻ゼロでブレーキ指令がなされると、速やかに電気ブレーキ力F_eが立ち上がるとともに、空気ブレーキ力Fairが増大してくる。そのため、時刻t0より少し前の時点で滑走が始まり、時刻t0で滑走検知が行われる。そうすると、この時点における車輪・レール間の接線力に対応した主電動機軸上で見たトルクを推定し、この推定トルクをもとに滑走している動輪を再粘着させるに必要なトルク指令値の最小値τmin0と、再粘着後に指令するトルク指令値τad0を演算する。この場合、τmin0は電気ブレーキが失効する可能性のある電気ブレーキ力のレベルより大きいので、トルク指令値の最小値τmin0までトルクを絞って再粘着させ、次いでトルク指令値τad0を指令し、回生ブレーキフィードバック信号RBとして、τmin0次いでτad0に対応した実際に発生している電気ブレーキ力F_eを、図5に示すようにブレーキ受量器BCUに送信する。また、同じく図5に示すようにブレーキ受量器BCUに電気車制御装置INVから滑走検知信号slipが送信されるので、図1において電気車制御装置INVが時刻t0において滑走検知すると、ブレーキ受量器BCUでは、その時点で滑走が発生したことを認識できるので、時刻t0以降Tsacの間、時刻t0における空気ブレーキ力指令値Fair_slip_z11以上に空気ブレーキ力指令を増大させないようにする(図5に示すように、滑走検知信号slipがブレーキ受量器BCUの空気ブレーキ力増大抑制機能に入力され、空気ブレーキ力指令の増大抑制が行われる)。図1の場合、このように空気ブレーキ力の増大をTsacの間抑制して確実に再粘着できるように制御しているが、それでも途中の時刻t1において再び滑走検知して、トルク指令値の最小値τmin1までトルクを絞って再粘着させ、次いでトルク指令値τad1を指令し、また時刻t1以降Tsacの間再び時刻t1における空気ブレーキ力指令値Fair_slip_z12以上に空気ブレーキ力指令Fair_comを増大させないようにする。このようにブレーキ受量器BCUにおいて滑走検知時点における空気ブレーキ力指令値Fair_slip_z11あるいはFair_slip_z12など以上に空気ブレーキ力指令Fair_comが増大するのを抑制することによって、時刻t2においてTsacの期間が経過して、空気ブレーキ力指令Fair_comの増大抑制が解除されても、その間車両速度の低下によって粘着係数が増大してくるため、再粘着後電気ブレーキ力F_eを増大させても、すぐに滑走が発生することはなくなる。図1の場合、電気ブレーキ力F_eがかなり大きくなった時刻t3まで、滑走が発生しない。この間(t2以降)電気ブレーキ力F_eの増大に伴って空気ブレーキ力指令Fair_comが減少し、空気ブレーキ力Fairの分担割合が減少してくる。このため、たとえ時刻t3において滑走検知しても、電気ブレーキ力F_eが失効することなく、電気ブレーキ力F_eの高速制御によって確実に再粘着制御ができるようになる。
図6において、公知のM車のブレーキ受量器BCUでは、図8に例示したような常用最大ブレーキなどの速度・ブレーキ力特性を持っていて、運転士のブレーキ指令に対応して車両で発生すべき回生ブレーキによる電気ブレーキ力F_eと空気ブレーキ力Fairを演算して、電気ブレーキ力F_eは電気車制御装置INVに回生ブレーキ指令B_comとして出力され、空気ブレーキ力Fairは空気ブレーキ力指令Fair_comとして図示しないM車の空気ブレーキ発生装置に対して出力し(図6に示すように、速度・ブレーキ力特性をもとに空気ブレーキ力Fairを演算してこれを、空気ブレーキ力増大抑制機能に対して、空気ブレーキ力指令_A、Fair_com_Aとして出力する。空気ブレーキ力増大抑制機能では滑走認識信号slip_recの状態を参照しながら、入力されてきた空気ブレーキ力指令_A、Fair_com_Aの増大を抑制する必要がある場合、すなわち、滑走認識信号slip_recがオンになった場合には、増大を抑制して、空気ブレーキ力指令Fair_comとして出力するのである)、電気車制御装置INVでは、電気ブレーキ発生系においてブレーキ受量器BCUから受信した回生ブレーキ指令B_comどおりの電気ブレーキ力F_eを発生すべく、図示しない電気車推進装置を制御して、ブレーキシステム全体として、電気ブレーキ力F_eと空気ブレーキ力Fairを合計したものが運転士のブレーキ指令に対応したブレーキ力になるように制御することは、図5の場合と同じである。
請求項1の場合と異なる点は、ブレーキ受量器BCUにおける滑走発生の認識方法である。
図2に示すように、時刻ゼロでブレーキ指令がなされると、速やかに電気ブレーキ力F_eが立ち上がるとともに、空気ブレーキ力Fairが増大してくる。そのため、時刻t0より少し前の時点で滑走が始まり、時刻t0で電気車制御装置INVにおいて滑走検知が行われる。そうすると、この時点における車輪・レール間の接線力に対応した主電動機軸上で見たトルクを推定し、この推定トルクをもとに滑走している動輪を再粘着させるに必要なトルク指令値の最小値τmin0と、再粘着後に指令するトルク指令値τad0を演算する。この場合、τmin0は電気ブレーキが失効する可能性のある電気ブレーキ力のレベルより大きいので、トルク指令値の最小値τmin0までトルクを絞って再粘着させ、次いでトルク指令値τad0を指令し、回生ブレーキフィードバック信号RBとして、τmin0次いでτad0に対応した実際に発生している電気ブレーキ力F_eを、ブレーキ受量器BCUに送信する。
すなわち、図3(a)に示すように、電気車制御装置INVが滑走検知すると、オブザーバなどの手法を用いて電気ブレーキ力F_eをもとに滑走を検知したときの車輪・レール間の接線力に対応した主電動機軸上で見たトルクを推定し、前記推定トルクをもとに滑走を検知した場合に滑走している動輪を再粘着させるに必要なトルク指令値の最小値および再粘着後に指令する前記推定トルクに対応したトルク指令値を演算してトルク制御を行う。このときの再粘着させるためのトルクの引き下げ量は小さく、しかも短時間トルクを引き下げた後、時刻t1aには再粘着後に指令するトルクに復帰するトルク制御が行われる。そしてトルク引き下げ開始の時刻t1から再粘着後に指令するトルクに復帰終了する時刻t1aまでの時間はせいぜい0.3(秒)程度と短い。このように滑走検知に伴う再粘着制御のためのトルク制御は、上記のような特徴を持って行われるので、時刻t1aより若干遅れた時刻t2において再粘着制御に伴うトルク変化であることを確認したとき、すなわち滑走認識期間T_slipが経過した時点で、ブレーキ受量器BCUにおいて回生ブレーキフィードバック信号RBの変化状況から、滑走が発生したことを認識できる。因みに、当該車両で発生していた回生ブレーキエネルギーを今まで吸収してくれていた当該車両近傍の力行車両が急に力行状態ではなくなったことが原因で回生失効状態になるときの電気車制御装置INVにおける電気ブレーキ力F_eの変化状況は、例えば図3(b)に示すようであり、トルクの絞込み量が非常に大きく(図3(b)の場合は電気ブレーキ力F_eがゼロになるまで絞り込んではいないが、実際にはゼロになってしまう例が圧倒的に多い)、絞り込んだ後(上記滑走検知時のようには)再びトルクが上昇してくることはないので、滑走検知に伴うトルク変化と回生失効との識別は容易にできる。
INV 電気車制御装置
BR 回生ブレーキフィードバック信号
CR 回生ブレーキ有効信号
F_e 電気ブレーキ力
Fair 空気ブレーキ力
Fair_com 空気ブレーキ指令
Fair_com_A 空気ブレーキ指令_A
slip 滑走検知信号
slip_rec
滑走認識信号
Fair_slip 滑走検知信号slipがオンになったときの空気ブレーキ力指令値
Fair_slip_zz ブレーキ受量器が滑走の発生を認識した時点の空気ブレーキ力指令値全体の総称
Fair_slip_z11 ブレーキ受量器が滑走の発生を検知した時点の空気ブレーキ力指令値(その1)
Fair_slip_z12 ブレーキ受量器が滑走の発生を検知した時点の空気ブレーキ力指令値(その2)
Fair_slip_z21 ブレーキ受量器が滑走の発生を認識した時点の空気ブレーキ力指令値(その1)
Fair_slip_z12 ブレーキ受量器が滑走の発生を認識した時点の空気ブレーキ力指令値(その2)
Claims (2)
- 電車などの電気車を駆動するインバータ制御装置INVから滑走検知信号slipを入力し、前記滑走検知信号slipがオンになった時点から予め定めた時間Tsacだけ、前記滑走検知信号slipがオンになった時点における空気ブレーキ力指令値Fair_slip以上には空気ブレーキ力指令値Fairを増大しないようにしたことを特徴とする電動車ブレーキ受量器。
- 電車などの電気車を駆動するインバータ制御装置INVより入力した回生ブレーキフィードバック信号RBをもとに、前記インバータ制御装置INVが滑走検知したことを認識し、前記インバータ制御装置INVが滑走検知した時点から予め定めた時間Tsacだけ、前記インバータ制御装置INVが滑走検知した時点における空気ブレーキ力指令値Fair_slip以上には空気ブレーキ力指令値Fairを増大しないようにしたことを特徴とする電動車ブレーキ受量器。
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